説明

加煙試験器

【課題】超音波振動子の表面から液面までの距離を安定化して、安定した霧化ができる加煙試験器を得る。
【解決手段】加煙試験器は、発煙材5が貯留された貯留槽7内で超音波振動子11によって発煙材5を霧化してエアロゾルを発生させ、発生したエアロゾルを送風によって貯留槽7から外部に排出させて煙感知器の試験を行う加煙試験器1であって、貯留槽7は、天井面側に給排気筒39を備えてなり、給排気筒39は、天井面37から下方に延出するように形成されて下部に開口部43を有する外筒体45と、外筒体45の内側に隙間35を介して挿入されてエアロゾルの排出路となる内筒体47と、内筒体47の下端面と外筒体45の下端面と隙間を塞ぐ底板49とを備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙感知器の加煙試験に用いられる加煙試験器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
煙感知器の加煙試験は、煙又は疑似的な煙を煙感知器に供給してその作動試験を行うというものである。このような加煙試験に用いられる加煙試験器の一例として、特許文献1には、液槽内の流動パラフィン(以下、「発煙材」という。)を液槽の底部に設置した超音波振動子によって霧化させて疑似的な煙(以下、「エアロゾル」という。)を発生させ、これを煙感知器に供給する「煙感知器の試験装置」が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の煙感知器の試験装置においては、電動ファンによる送風を液槽に設けた搬送空気供給口から液槽内に取り込み、この送風によって液槽内で発生したエアロゾルを搬送パイプから排出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−186093平号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1においては、送風を液槽内に取り込み、液槽内で発生したエアロゾルを搬送パイプから排出するようにしている。このため、液槽は搬送空気供給口及び搬送パイプによって液槽の外部と連通する構造になっている。
このような構造では、搬送空気供給口や搬送パイプから液槽内の発煙材が外部に排出されないようにする必要があるが、特許文献1においては、この点について何らの記載もされていない。
この点、搬送空気供給口や搬送パイプに逆止弁のようなものを設けることも考えられるが、構造が複雑になるし、逆止弁のようなものでは発煙材の外部への流出を確実に防止できるとは限らない。
【0006】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、発煙材を貯留する貯留槽から発煙材が外部に流出するのを確実に防止できる加煙試験器を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る加煙試験器は、発煙材が貯留された貯留槽内で超音波振動子によって前記発煙材を霧化してエアロゾルを発生させ、該発生したエアロゾルを送風によって前記貯留槽から外部に排出させて煙感知器の試験を行う加煙試験器であって、
前記貯留槽は、天井面側に給排気筒を備えてなり、該給排気筒は、天井面から下方に延出するように形成されて下部に開口部を有する外筒体と、該外筒体の内側に隙間を介して挿入されてエアロゾルの排出路となる内筒体と、該内筒体の下端面と前記外筒体の下端面と隙間を塞ぐ底板とを備えて構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記超音波振動子の振動面の中心と、前記給排気筒の中心軸とがずれるように、前記超音波振動子と前記給排気筒を配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、貯留槽が天井面側に給排気筒を備えてなり、該給排気筒は、天井面から下方に延出するように形成されて下部に開口部を有する外筒体と、該外筒体の内側に隙間を介して挿入されてエアロゾルの排出路となる内筒体と、内筒体の下端面と前記外筒体の下端面と隙間を塞ぐ底板とを備えて構成されている。
このため、逆止弁等を設けることなく、貯留槽内の発煙材が貯留槽から外部に流出するのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係る加煙試験器の説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る加煙試験器の使用状態の説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る加煙試験器の動作説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る加煙試験器の使用状態における動作説明図である(その1)。
【図5】本発明の一実施の形態に係る加煙試験器の使用状態における動作説明図である(その2)。
【図6】本発明の一実施の形態に係る加煙試験器の給排気筒の効果を説明する説明図である(その1)。
【図7】本発明の一実施の形態に係る加煙試験器の給排気筒の効果を説明する説明図である(その2)。
【図8】本発明の一実施の形態に係る加煙試験器の給排気筒の効果を説明する説明図である(その3)。
【図9】本発明の一実施の形態に係る加煙試験器の給排気筒の効果を説明する説明図である(その4)。
【図10】本発明の一実施の形態に係る加煙試験器の給排気筒の効果を説明する説明図である(その5)。
【図11】本発明の一実施の形態に係る加煙試験器の区画槽の配置に関する効果を説明する説明図である(その1)。
【図12】本発明の一実施の形態に係る加煙試験器の区画槽の配置に関する効果を説明する説明図である(その2)。
【図13】本発明の一実施の形態に係る加煙試験器の区画槽の配置の他の態様の説明図である。
【図14】図13の矢視A―A方向から見た図である。
【図15】図13の平面図である。
【図16】本発明の一実施の形態に係る加煙試験器の区画槽の配置の他の態様の説明図である。
【図17】本発明の一実施の形態に係る加煙試験器の他の態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態に係る加煙試験器1の主な構成を説明すると、図1に示されるように、取手23が取り付けられた筺体3と、筺体3内に収容されて発煙材5を貯留する貯留槽7と、貯留槽7に立設された上端が開口した筒体からなる区画槽9と、区画槽9の下方に設置された超音波振動子11と、貯留槽7側の発煙材5を吸入して区画槽9内に供給することで、貯留槽7側と区画槽9側との間で発煙材5を循環させる循環ポンプ13と、超音波振動子11の動作を制御する制御手段が搭載された制御基板15と、送風ファン17と、送風ファン17が設置された送風室19とを備えている。
そして、加煙試験器1は、発煙材5を貯留した貯留槽7内で超音波振動子11によって発煙材5を霧化してエアロゾルを発生させ、発生したエアロゾルを送風ファン17の送風によって貯留槽7から煙感知器のある外部に排出させて試験を行う。
【0012】
<筺体>
筺体3は、例えば矩形の箱状体からなり、その中に貯留槽7、循環ポンプ13、制御基板15、送風ファン17、バッテリ21等の機器類を収容している。
筺体3の一側面には、作業者が筺体3を持つための取手23が設けられている。取手23は、略コ字状に形成され、その上部に操作用の操作スイッチ25が設けられている。
筺体3の側面には、外気を筺体3内に取り込むための給気口27が設けられ、給気口27に連通する部位に送風ファン17が設置される送風室19が設けられている。
【0013】
<貯留槽>
貯留槽7は、加煙試験器1の筺体3内に設けられて、天井面37及び底部28を有し、所定量の発煙材5が貯留される略円筒状の容器である。貯留槽7の底部28側には底部28より高い位置に底面を有する台部29が設けられ、台部29の上に上部が開口した区画槽9が設置されている。
台部29の中央部には区画槽9と連通する凹陥部31が設けられ、凹陥部31の底面に超音波振動子11が設置されている。台部29の側面には凹陥部31と連通し、横方向に延びる貫通孔33が設けられ、貫通孔33が発煙材5の供給路になっている。
この貫通孔33は発煙材5を区画槽9に供給できれば良く、例えば区画槽9の側面に設けても良い。
【0014】
貯留槽7は、天井面側に天井面37から下方に延出するように形成された給排気筒39を備えている。給排気筒39は、送風ファン17からの送風を貯留槽7に供給すると共に、後述する貯留槽7で生成されたエアロゾル41を外部に排出する機能を有している。
給排気筒39は、天井面37から下方に延出するように形成され、上端が開口すると共に下部側面に開口部43を有する外筒体45と、外筒体45と隙間35を介して外筒体45に挿入されるように配置されてエアロゾル41の排出路となる内筒体47と、内筒体47の下端面と外筒体45の下端面との間を塞ぐ底板49とを備えて構成されている。
より詳しく述べると、外筒体45は、貯留槽7の天井面37から貯留槽7の高さ方向中央付近まで下方に延出するように形成されており、その下部側面に開口部43を有している。つまり開口部43は、貯留槽7の高さ方向中央付近に、貯留槽7の側面を向くように形成されている。更に内筒体47は、その中心軸が環状の隙間35を介して外筒体45の中心軸と略同一となる位置に挿入されるように配置され、その上端は筐体3より外部に露出する程度の長さに形成されている。
【0015】
内筒体47の出側は、例えば伸縮性のある管部材51が連結されてエアロゾル41を煙感知器53側に案内できるようになっている。
管部材51は、図2に示すように、先端先細りの形状をしており、作業者は管部材51の基端側を保持し、先端側を煙感知器53の煙流入口へ近づけることで作動試験を行う。
貯留槽7には所定量の発煙材5が封入されている。この所定量は、後述する筐体3を傾けた際に、発煙材5が外部に流出しない程度の量となっている。発煙材5を所定の量だけ封入するために、貯留槽7の側面に封入された発煙材5の量を確認するための封入量確認手段を設けると良い。封入量確認手段は、例えばアクリルのような透明な素材によって形成され、筐体3と貯留槽7を連通する窓部と、この窓部に目盛を設けたものや、水位センサなど発煙材5の封入量が確認できるものであれば何でも良い。
【0016】
貯留槽7に貯留される発煙材5は、エアロゾル41を生成するための溶液であり、例えば従来例に挙げられた流動パラフィンのようなものでもよいが、一般的には水(水道水等)あるいはグリセリンやプロピレングリコールといった地球温暖化係数の小さい薬剤に水を混合した物等を用いるのが好ましい。
【0017】
<区画槽>
区画槽9は、貯留槽7における台部29に立設されている。区画槽9は、上端が開口しており、区画槽9の上端面9aは、取手23側が低く、これに対向する側が高くなるような傾斜面になっている。区画槽9の上端面9aを傾斜面にしたのは、加煙試験器1の使用状態においては、図2、図4に示すように、取手23側を持って筺体3を傾斜状態にするので、傾斜状態において下側になる方の側壁を高くすることで、液面がほぼ水平に保持できるようにするためである。
また、この実施の形態では、区画槽9に設置した超音波振動子11はその中心軸が、給排気筒39の内筒体47の中心軸より取手23側にずれるように配置されている。超音波振動子11をこのように配置したことの作用効果は後述する。
区画槽9の内面には、区画槽9内の液位の下限を検知する液位センサ55が設置されている。
液位センサ55は、区画槽9の内面側に周方向に距離を離して配置されたプラス電極55aと、マイナス電極55bを備えて構成されている。そしてこれらの電極が発煙材5によって通電されることで発煙材5があることが検知され、他方、液位が下がり、何れかの電極が発煙材5から露出すると通電が遮断されて液位が下がったことが検知される。
【0018】
<超音波振動子>
超音波振動子11は、区画槽9の下方であって、台部29における凹陥部31の底に設置されている。超音波振動子11は、区画槽9内の発煙材5に超音波振動を与えることで発煙材5を霧化してエアロゾル41を発生させる。
【0019】
<循環ポンプ>
循環ポンプ13は、筺体3内における貯留槽7の下方に設置されている。循環ポンプ13には、貯留槽7内の発煙材5を吸入する吸入路57と、吸入した発煙材5を排出する排出路59が連結されている。排出路59は、台部29に形成された貫通孔33に連結されている。
循環ポンプ13は、操作スイッチ25を入れることで、常に駆動した状態となる。循環ポンプ13を駆動することで、貯留槽7内の発煙材5が吸入路57を介して吸入され、排出路59、貫通孔33を介して区画槽9内に供給され続ける。区画槽9に供給された発煙材5は、区画槽9の上部の開口から溢れて貯留槽7内に戻される。このように、発煙材5は、循環ポンプ13によって、貯留槽7内と区画槽9内を循環する。このため、区画槽9内の液面の高さは、常時、区画槽9の開口の最も低い高さに保持される。そのため、超音波振動子11の表面から液面までの距離が常時一定に保持され、それ故に常に安定した霧化ができる。
【0020】
<制御基板>
制御基板15は、筺体3内における貯留槽7の下方に設置されている。制御基板15には、超音波振動子11の動作を制御する図示しない制御手段が搭載されている。制御手段は、液位センサ55によって区画槽9内の液位が下限より下がったことが検知されると超音波振動子11を停止する。
なお、制御基板15には、循環ポンプ13、送風ファン17を駆動制御する図示しない他の制御手段も搭載されている。
【0021】
<送風ファン>
送風ファン17は、給気口27から外部の空気を筺体3内に取り込んで、送風する。筐体3内と貯留槽7は、隙間35を介して連通しているので、送風ファン17の送風は、筺体3内を通過して、貯留槽7の上部に設けられた給排気筒39における外筒体45と内筒体47との隙間35を通過して、開口部43から貯留槽7内に供給される。貯留槽7内に供給された送風は、貯留槽7内で発生したエアロゾル41を伴って給排気筒39を構成する内筒体47から排出される。
また、送風ファン17によって発生した送風は、筺体3内に設置されている循環ポンプ13、制御基板15、送風ファン17、バッテリ21等の機器類を空冷する機能を備えている。
【0022】
以上のように構成された本実施の形態の加煙試験器1の動作を説明する。
操作スイッチ25を入れることにより、送風ファン17と循環ポンプ13が駆動する。
送風ファン17が駆動することにより、給気口27から外気が筺体3内に取り入れられ、取り入れられた空気は給排気筒39の外筒体45と内筒体47の隙間35を通過して、開口部43から貯留槽7内に供給される。
また、循環ポンプ13が駆動することにより、貯留槽7内の発煙材5が区画槽9に供給される。発煙材5が区画槽9に供給され、区画槽9内の液面が上昇して発煙材5によって液位センサ55のプラス電極55aとマイナス電極55bが通電されると、液位センサ55が検知信号を制御手段に送信する。制御手段は、液位センサ55の検知信号を入力すると、超音波振動子11を駆動する制御信号を超音波振動子11に送信し、これによって超音波振動子11が駆動する。
【0023】
超音波振動子11が駆動することにより、区画槽9内の発煙材5が霧化してエアロゾル41が発生する。発生したエアロゾル41は、貯留槽7内に供給された送風ファン17による風により、給排気筒39の内筒体47を介して、管部材51に供給され、さらに管部材51を介して煙感知器53に誘導される。
【0024】
超音波振動子11を駆動してエアロゾル41を生成することにより区画槽9内の発煙材5が消費されるが、区画槽9には常時循環ポンプ13によって発煙材5が供給され、区画槽9の上部から溢れているので、超音波振動子11の表面から液面までの距離が常時一定に保持され、それ故に常に安定した霧化ができる。
なお、超音波振動子11の駆動中に、加煙試験器1を大きく傾けてから元に戻すと、図5に示すように、区画槽9内の発煙材5の液面のレベルが低下する。この場合には、液位センサ55によって区画槽9内に発煙材5が所定量より少ないことが検出されるので、循環ポンプ13によって液位センサ55の位置まで発煙材5が供給される間、超音波振動子11は停止する。
超音波振動子11が停止することで、発煙材5が少ない状態での超音波振動子11の駆動が防止される。
【0025】
以上のように、本実施の形態に係る加煙試験器1は、貯留槽7内に区画槽9を設け、貯留槽7側と区画槽9側との間で発煙材5を循環させるようにしたので、超音波振動子11の表面から液面までの距離が常時一定に保持され、それ故に常に安定した霧化ができる。
【0026】
加煙試験器1は、送風を貯留槽7に供給すると共に貯留槽7で発生したエアロゾル41を外部に排出することから、送風の吸入口やエアロゾル41の排出口を設ける必要があり、その一方、これら吸入口や排出口から貯留槽7内の発煙材5が流出するのを防止する必要がある。しかも、加煙試験器1は、持ち歩くものであるため、その過程で筺体3が傾く場合や、あるいは仮置きしているときに筺体3が倒れる場合もあることから、貯留槽7内の発煙材5の流出を確実に防止する必要がある。
【0027】
この点、本実施の形態の貯留槽7に設けた給排気筒39は、前述したように、貯留槽7の37から高さ方向中央付近まで下方に延出すると共に下部側面に開口部43を有する外筒体45と、外筒体45の内側に外筒体45と平行して配置されてエアロゾル41の排出路となる内筒体47と、内筒体47の下端面と外筒体45の下端面との間を塞ぐ底板49とを備えて構成されているので、貯留槽7内の発煙材5が貯留槽7から外部に流出することがない。
この点、図面を参照しながら、筺体3の傾き具合に応じて以下説明する。
図6、図7、図9及び図10は、本実施の形態の加煙試験器1を、筐体3の中心を基点として筐体3を縦に45度ずつ連続して回転させた状態を表している。
【0028】
図6に示すように、筐体3が約45度傾き、区画槽9内の発煙材5が貯留槽7側に排出された状況の場合、発煙材5は貯留槽7内に所定量しか封入されておらず、さらに内筒体47の下端は貯留槽7の高さ方向中央付近までしか延出していないので、発煙材5の液面が内筒体47の下端に掛からないので、外部に流出することはない。また、このときも循環ポンプ13から発煙材5は供給され続けているが、発煙材5は区画槽9内から排出されるため液位センサ55が通電しないので、制御手段によって超音波振動子11が停止制御されるため水柱は発生しない。従って、外筒体45の側面に設けられた開口部43からも発煙材5が外部に流出することはない。
次に、図7に示すように、筐体3が90度傾き、横倒しの状態について考える。この際、筐体3の略中心軸状に設けられた内筒体47の下端は、貯留槽7内に所定量だけ封入された発煙材5の液面より高い位置にある。つまり、筐体3の略中心軸上に設けられているので、発煙材5の液面は内筒体47に掛かることなく貯留槽7内の側壁側に溜まるので、外部に流出することはない。
なお、図7に示す状態から、筺体3を取手23が横になるように回転させたとしても、図8に示すように、内筒体47の下端が貯留槽7の中心軸上に設けられているので、発煙材5の液面は貯留槽7の側壁と外筒体45との隙間にあり、外部に流出することはない。また、図8の左側に示す状態から筺体3をさらに回転させて開口部43が下側になっても、発煙材5は貯留槽7内に所定の量しか封入されていないため、発煙材5の液面は貯留槽7の側壁と外筒体45との隙間にあり、開口部43に流入しないので外部に流出することはない。
【0029】
筺体3をさらに傾け、斜め下方45度にした状態、すなわち貯留槽7の側壁及び天井面37を底にしたような状態では、図9に示すように、発煙材5は、貯留槽7内の側壁側及び天井面37側に溜まるが、この場合であっても、むりやり発煙材5を外筒体45の開口部43に流入させない限り、発煙材5は貯留槽7内に所定の量しか封入されておらず、内筒体47の下端が貯留槽7の高さ方向中央付近まで延出しているので、外部に流出することはない。
また、筺体3を逆さまにした状態、すなわち貯留槽7の天井面37を下にした状態では、図10に示すように、発煙材5は天井面37を底面として貯留槽7内に貯留されるが、この場合であっても、発煙材5は貯留槽7内に所定の量しか封入されておらず、内筒体47の下端が貯留槽7の高さ方向中央付近まで延出しているので、発煙材5の液面は外筒体45の開口部43に達しないので、外部に流出することはない。
つまり、開口部43及び内筒体47の下端は、筐体3を回転させた際、貯留槽7に封入された所定量の発煙材5の液面より高い位置に設けられているので、発煙材5が外部に流出することはない。さらに、発煙材5の所定量を、筐体3を回転させた際、開口部43及び内筒体47の下端よりもその液面が低い位置となる量としたので、発煙材5が外部に流出することはない。
このように、開口部43及び内筒体47の下端と、発煙材5の量の関係によって、発煙材5が外部に流出しにくくなっている。
【0030】
次に、区画槽9の底側に設置する超音波振動子11を、超音波振動子11の中心が、給排気筒39の中心軸から取手23側にずれるように配置したことの作用効果について説明する。
図11は、超音波振動子11を内筒体47の真下、すなわち超音波振動子11の鉛直方向の中心軸と内筒体47の軸線が一致するように配置した状態を示している。超音波振動子11を駆動すると、図11に示すように、区画槽9の液面から液柱61が立つ。この液柱61の表面から発煙材5が霧化されるので、表面積が広いほど効率良く霧化が行える。そのため、内筒体47と外筒体45の底面に当たらないようにする必要がある。このため、図11の例では、筺体3の縦方向の長さを大きくして、底面と区画槽9との距離を離すようにしている。しかしながら、このようにすると、筺体3が縦長になり、全体として大型化してしまう。
そこで、本実施の形態のように、区画槽9を、区画槽9の中心が、天井面37側に設ける内筒体47の中心から取手23側にずれるように配置し、これによって超音波振動子11の中心が内筒体47の中心軸からずれるようにした。これにより、図12に示すように、液柱61が外筒体45と貯留槽7の側壁との間に立ち上がり、液柱61が給排気筒39の底板49に当接しない。このため、区画槽9と外筒体45との距離を、図11の例よりも近づけることができ、その結果、安定した液柱61を形成でき、かつ筺体3を小型化することができる。
より具体的に述べると、区画槽9の軸線が、給排気筒39、または外筒体45の外周より外側になる位置に配置することで、区画槽9より立ち上がる液柱61が給排気筒39に当接しないので、筐体3を高さ方向に小型化できる。さらに、筐体3の横方向は、液柱61に当たらない程度まで小さくできる。
つまり、区画槽9の軸線は、給排気筒39の軸線からずれていればよく、更に言えば、区画槽9の軸線は、給排気筒39の外周より外側かつ筐体3の内周の間にあることが好ましい。更に言えば、給排気筒39の外周から筐体3の内周の間は、区画槽9から立ち上がる液柱61程度の空間であると良い。
【0031】
なお、上記の例では、超音波振動子11を取手23側にずらした例を示したが、超音波振動子11をずらす方向としては、図13、図14、図15に示すように、取手23方向と直交する方向にずらすようにしてもよい。このようにすることで、液柱61と貯留槽7の側面との距離を大きくすることができ、加煙試験器1の使用状態のように筺体3を傾けた際にも、液柱61が貯留槽7の側面に当接しにくくなるので、エアロゾル41を効果的に生成できる。
また、超音波振動子11をずらす方向としては、上記のような場合に限られず、図16に示すように、液柱の噴出方向が貯留槽7の側面と給排気筒39の外筒体45との間になるように調整して決定すればよい。
【0032】
以上のように、本実施の形態では、逆止弁等を設けることなく、簡易な構造によって、貯留槽7内の発煙材5が外部へ流出するのを確実に防止できる。
【0033】
なお、貯留槽7の底部に図示しない別の液位センサを設け、液位センサが貯留槽7内の発煙材2が少なくなったことを検知できるようにしてもよい。この液位センサにより、発煙材5が所定量よりも少なくなったことが検知された場合、図示しない発光手段を発光させることにより、作業員に貯留槽内に発煙材を補充するよう促すようにしても良い。
また、上記の発煙材5の貯留槽7における残りを検知する水位センサによる貯留槽7内の液量が少なくなった信号と、区画槽9の液位センサ55の液位低下の信号のAND信号を検知すると、図示しない制御手段によって自動で電源を切るようにしても良い。これにより、加煙試験器1内の発煙材5が完全に無くなった場合でも、送風ファン17を動かしたままにしなくてもよいので、電源を必要以上に利用せず、効率よく試験が行える。
【0034】
また、上記の実施の形態においては、筺体3に取手23を取り付けた例を示したが、例えば図17に示すように、取手を設けずに、肩吊紐63を設けるようにしてもよい。
また、図17に示すように、管部材51の基端側のみを可撓性を有する部材で形成してもよく、このようにすれば管部材51の操作性が向上する。
また、管部材51全体を、可撓性を有するような部材で形成してもよく、その場合は天井面37に取り付けられた煙感知器53で先端部分を保持するための保持手段を別途設けるようにすればよい。
【符号の説明】
【0035】
1 加煙試験器 3 筺体 5 発煙材
7 貯留槽 9 区画槽 9a 上端面
11 超音波振動子 13 循環ポンプ 15 制御基板
17 送風ファン 19 送風室 21 バッテリ
23 取手 25 操作スイッチ 27 給気口
28 底部 29 台部 31 凹陥部
33 貫通孔 35 隙間 37 天井面
39 給排気筒 41 エアロゾル 43 開口部
45 外筒体 47 内筒体 49 底板
51 管部材 53 煙感知器 55 液位センサ
55a プラス電極 55b マイナス電極 57 吸入路
59 排出路 61 液柱 63 肩吊紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発煙材が貯留された貯留槽内で超音波振動子によって前記発煙材を霧化してエアロゾルを発生させ、該発生したエアロゾルを送風によって前記貯留槽から外部に排出させて煙感知器の試験を行う加煙試験器であって、
前記貯留槽は、天井面側に給排気筒を備えてなり、該給排気筒は、天井面から下方に延出するように形成されて下部に開口部を有する外筒体と、該外筒体の内側に隙間を介して挿入されてエアロゾルの排出路となる内筒体と、該内筒体の下端面と前記外筒体の下端面と隙間を塞ぐ底板とを備えて構成されていることを特徴とする加煙試験器。
【請求項2】
前記超音波振動子の振動面の中心と、前記給排気筒の中心軸とがずれるように、前記超音波振動子と前記給排気筒を配置したことを特徴とする請求項1記載の加煙試験器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−198755(P2012−198755A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62204(P2011−62204)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】