説明

加煙試験器

【課題】操作レバーが円滑に操作できるようにするとともに、開口部からの煙の漏出を規制する。
【解決手段】火災感知器が収容されるハウジング3と、火災感知器の試験を行う発煙剤を封入したガスボンベ5と、ガスボンベ5からハウジング3内に発煙剤を放出するノズル7と、ノズル7を押下するノズル押下体9と、ノズル押下体9を操作する操作レバー11と、を備えた加煙試験器1であって、操作レバー11は、ノズル7を挟む2本の柱状体を備えており、操作レバー11の基端部は、ハウジング3内に回転可能に支持され、その自由端部は、加煙試験器1の側面に設けた開口部4から外部に向かって突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災感知器の動作を試験するために用いる、加煙試験器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加煙試験器は、天井に設置された火災感知器が収容されるハウジングと、発煙剤を封入したガスボンベと、該ガスボンベから前記ハウジング内に発煙剤を放出するノズルと、該ノズルを押下するノズル押下体と、該ノズル押下体を操作する操作ワイヤーと、前記火災感知器が設置された天井付近まで前記加煙試験器を近づけるための支持棒と、を備えている。
【0003】
前記火火災感知器の試験を行うときには、前記支持棒を押し上げて前記ハウジングを被検査対象の火災感知器に近づけるとともに、該ハウジング内に収容する。その後、ハウジング内に設置されたコンタクト板を前記火災感知器に押し付けてノズル押下体を押し下げるか、又は、操作ワイヤーを引いて前記ノズル押下体を押し下げると、前記ボンベ内の発煙剤が前記ノズルから前記ハウジング内に放出される。そのため、ハウジング内は火災の様な状態(擬似火災状態)となるので、火災感知器の作動状態を試験することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−161171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例では、操作レバーの板状の基端部がねじで固定されているので、基端部の反対側にある自由端部を引き下げる時に前記基端部側に大きな反力が発生する。そのため、操作レバーの操作をスムーズに行えないことがある。また、加煙試験器には、操作レバー摺動用の開口部が設けられているが、この開口部からハウジング内の煙が漏れてしまい、必要以上に発煙剤を放出する必要がある。そのため、効率良く試験ができないことがある。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑み、操作レバーが円滑に操作できるようにすることを目的とする。他の目的は、開口部からの煙の漏出を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、火災感知器が収容されるハウジングと、該火災感知器の試験を行う発煙剤を封入したガスボンベと、該ガスボンベから前記ハウジング内に発煙剤を放出するノズルと、該ノズルを押下するノズル押下体と、該ノズル押下体を操作する操作レバーと、を備えた加煙試験器であって、前記操作レバーは、前記ノズルを挟む2本の柱状体を備えており、該操作レバーの基端部は、前記ハウジング内に回転可能に支持され、その自由端部は、前記加煙試験器の側面に設けた開口部から外部に向かって突出していることを特徴とする。
【0008】
この発明の前記2本の柱状体の基端には、軸受部に嵌着される外向き突起部が設けられ、その自由端は、連結部材により連結されていることを特徴とする。この発明の前記開口部には、遮蔽部材が設けられていることを特徴とする。この発明の前記遮蔽部材は、前記ハウジングの一部によって形成された、垂れ幕であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、以上のように構成したので、操作レバーを引くと、その基端が回転するため、円滑に操作できる。また、開口部に遮蔽部材を設けたので、ハウジング内の煙が前記開口部から流出するのを抑制することができる。そのため、従来例に比べ、効率良く試験結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示す平面図である。
【図3】ハウジングの拡大正面図である。
【図4】操作レバーの拡大平面図である。
【図5】操作レバーの拡大正面図である。
【図6】操作レバーの拡大斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図8】本体の開口部の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1実施の形態を図1〜図8により説明する。加煙試験器1は、火災感知器(図示省略)が収容されるハウジング3と、該火災感知器の試験を行う発煙剤を封入したガスボンベ5と、該ガスボンベ5から前記ハウジング3内に発煙剤を放出するノズル7と、該ノズル7を押下するノズル押下体9と、該ノズル押下体9を操作する操作レバー11と、を備えている。
【0012】
加煙試験器1の本体13には、前記ハウジング3が固定されているが、このハウジング3は、煙感知器の全体、又は、検出部のみを覆える大きさで、外周は蛇腹状に形成された樹脂製の円筒状体であり、中心軸方向に伸縮可能である。このハウジング3の下端には、遮蔽部材が設けられている。例えば、遮蔽部材として、垂れ幕6が垂設されているが、この垂れ幕6は、例えば、シリコン等の樹脂からなる前記ハウジング3の一部によって形成されている(図3参照)。前記垂れ幕6は、加煙試験器1の本体13の側面13sに形成された開口部4を閉鎖し、前記ハウジング3内の煙が外部に漏出するのを防止する。なお、垂れ幕6は、薄い板状の物でも、厚い板状の物でも、どちらでも良い。
【0013】
また、この垂れ幕6は、前記ハウジング3を前記本体13に取付ける際、互いに平行な2本の柱状体からなる操作レバー11の間に挿入することで、位置合わせなどの為の目印となるので、生産性を向上させることができる。前記垂れ幕6は、例えば、前記開口部4の形状に対応した、長方形状に形成されており、前記開口部4の両側には前記操作レバー11の柱体が通る隙間(通路空間)11a,11aが設けられている。従って、前記開口部4は、前記垂れ幕6により、前記通路空間11aを残して封鎖されることになる。
【0014】
前記ガスボンベ5は、本体13に螺着されるボンベカバー2に収容されている。前記本体13は、支持フレーム12に一方向にだけ45°回動可能に支持されている。この支持フレーム12の取付部12aには、所定の長さを有するロッドなどの支持棒が取付けられる。この取付部12aには、楕円形に貫通した取付孔が設けられ、支持棒に形成された突状の取付部に嵌合することで、ワンタッチで取付けられる。
【0015】
前記ノズル7は、本体13の中心軸上に上下動可能に支持されている。このノズル7の先端側には、火災感知器と接触するコンタクト板15が設けられている。コンタクト板15は、上下方向に貫通した孔が同心状に8つ設けてあり、平面が略蓮状に形成されている。これにより、ノズル7から放出された発煙剤がコンタクト板15に妨害されることなく、火災感知器の試験部に流入する。前記ノズル押下体9は、前記本体13の底部に上下動可能に支持されている。
【0016】
操作レバー11は、ノズル7を挟む、互いに平行な2本の柱状体、例えば、円柱により形成されている。この操作レバー11は、図4〜図6に示すように、本体部11aと、該本体部11aの一端側の基端部11bと、その他端側の自由端部11cと、を備えている。
【0017】
前記2本の柱状体の基端部11bには、外方に突出する外方突起16が設けられ、この外方突起16は、本体13内に設けられた軸受20の軸穴に嵌着されている(軸支)。これにより、操作レバーの基端部11bは、ハウジング3内に回動可能に支持される。この軸穴は、前記外方突起16と略同径に形成されている。前記軸穴を前記外方突起16の径より大きく形成するとともに、縦長に形成し、該外方突起16を遊嵌合させるようにしてもよい。このように遊嵌合させることで、軸支持部に遊びができ、操作レバーを押下げた時の力が全てノズル押下体9に伝わるので、ねじで固定されているものよりも操作感が向上する。
【0018】
前記本体部11aの基端部11b寄りには、U字状の作用点部18が設けられている。この作用点部18から自由端部11c側の端までの長さは、その基端部11b側の端までの長さよりも長く形成されている。その自由端部11cは、加煙試験機1の本体13側面に設けた開口部4から外部に向かって突出しており、その自由端部11cは連結部材17により連結されている。前記自由端部11cの連結部材17の中央には、操作レバー11の引っ張り部材(図示省略)、例えば、ワイヤー、が連結されている。
【0019】
次に、本実施形態の作動について説明する。本件加煙試験器1では、試験の際に、(1)コンタクト板15を火災感知器に押し付けてノズル押下体9を押下げる操作をする場合と、(2)操作レバー11に連結されたワイヤーを引いて前記ノズル押下体9を押し下げる操作をする場合と、がある。通常、火災感知器は天井に配設されているが、点検作業者が、該火災感知器の真下に立つことができる場合には、前者(1)の操作方法が用いられる。しかし、前記火災感知器の真下に棚や工作機械等が設置された場合には、点検作業者は、該火災感知器の真下に立つことができない。そのため、前者(1)の操作方法である、コンタクト板15を火災感知器に押し付けてもうまく力が伝わらず、ガスボンベ内の発煙剤をハウジング内に放出することができない。そこで、この場合には、後者(2)の操作方法が用いられる。ここでは、前者(1)についての説明は省略し、後者(2)についてのみ説明する。
【0020】
点検作業者は、天井に配設されている、検査対象の火災感知器の真下近傍に移動し、該火災感知器に向かって支持フレーム12に連結されている支持棒を突き上げる。そして、該加煙試験器1のハウジング3を該天井に当接させることで、火災感知器をハウジング3で覆う。この時、開口部4は、垂れ幕6により閉鎖されているので、該火災感知器はハウジング3内により隙間が少ない状態で収容される。
【0021】
この状態で、操作レバー11のワイヤを引くと、該操作レバー11は、基端部11bの外方突起16を中心にして回転しながら、操作レバー11の作用点部18がノズル押下体9を押下げる。この時、操作レバー11の自由端部11cは、通路空間11a内を下降し、図8の実線の位置から一点鎖線の位置(開口部4の下辺)まで移動する。
【0022】
そうすると、ノズル7が開放され、発煙剤がハウジング3内に放出されるので、該ハウジング3内に煙が充満し、擬似火災状態となる。この時における前記火災感知器の作動の有無をチェックする。即ち、前記火災感知器が作動すれば、正常であり、作動しなければ、異常である。
【0023】
前述のように、開口部4は、垂れ幕6により通路空間11aを残して封鎖されているので、従来例と異なり、ハウジング3内の煙が外部へ漏出するのを抑制することができる。そのため、従来例に比べ、効率良く試験を行うことができる。
【0024】
また、前記操作レバー11は、軸支されているので、その自由端を引き下げると、基端部が回動し、円滑にノズル押下体を押し下げることができる。そのため、従来例に比べ、操作性の向上を図ることができる。
【0025】
この発明の実施形態は、上記に限定されるものではなく、例えば、次の様にしてもよい。
(1)遮蔽部材として、ハウジングの一部をなす垂れ幕を用いる代わりに、該ハウジングと別体に形成した遮蔽体を操作レバーの上側に固定し、該操作レバーの上下動に伴って該遮蔽板を本体内面に沿って摺動させ、開口部を開閉させる。
【0026】
(2)操作レバーの基端部に外方突起を設ける代わりに、両基端部を連結部材で連結し、該連結部材を回動可能に支持する。
(3)操作レバー11は、2本の柱状体を連結部材17で連結して形成されているが、1本の円柱を折り曲げて形成しても良い。
(4)操作レバー11の形状は、円柱状に限定される必要はなく、角柱や板材等で形成しても良い。
(5)ノズル7及びノズル押下体9は別体である必要はなく、一体で形成しても良い。
【符号の説明】
【0027】
1 加煙試験器
3 ハウジング
4 開口部
5 ガスボンベ
7 ノズル
9 ノズル押下体
11 操作レバー
13 加煙試験器の本体
13s 本体の側面
16 外方突起
17 連結部材
20 軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災感知器が収容されるハウジングと、該火災感知器の試験を行う発煙剤を封入したガスボンベと、該ガスボンベから前記ハウジング内に発煙剤を放出するノズルと、該ノズルを押下するノズル押下体と、該ノズル押下体を操作する操作レバーと、を備えた加煙試験器であって、
前記操作レバーは、前記ノズルを挟む2本の柱状体を備えており、
該操作レバーの基端部は、前記ハウジング内に回転可能に支持され、その自由端部は、前記加煙試験器の側面に設けた開口部から外部に向かって突出していることを特徴とする加煙試験器。
【請求項2】
前記2本の柱状体の基端には、軸受に嵌着される外向突起が設けられ、その自由端部は、連結部材により連結されていることを特徴とする請求項1記載の加煙試験器。
【請求項3】
前記開口部には、遮蔽部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の加煙試験器。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、前記ハウジングの一部によって形成された、垂れ幕であることを特徴とする請求項3記載の加煙試験器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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