説明

加熱ヘッド

【課題】金属板の端部に対してしわを生じさせることなく曲げ加工を施すことができる曲げ加工装置の加熱ヘッドを提供する。
【解決手段】高周波誘導加熱により鋼板Wを曲げる曲げ加工装置の加熱ヘッド1であって、曲げ加工装置のヘッド支持部20に装着されるベースプレート2と、鋼板Wの表面を誘導加熱する高周波管3をフェライト板4上に配置してなる加熱プレート5と、この加熱プレート5とベースプレート2との間に位置して、加熱プレート5を揺動可能に支持すると共に負荷がない状態で所定の位置に復帰させる揺動機構10を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波誘導加熱により鋼板等の金属板を曲げる曲げ加工装置に用いられる加熱ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したような曲げ加工装置としては、例えば、金属板を載置して支持する金属板載置部と、この金属板載置部を跨いで走行する門型台車と、この門型台車の横梁にその長手方向に移動可能で且つ上下方向に移動可能に設けられた加熱ヘッドを備えたものがある。
この加熱ヘッドは、金属板載置部にセットした金属板の表面に対向する高周波加熱コイル及び冷却配管を具備しており、高周波加熱コイルの周囲を金属板の表面に当接するボールプランジャを複数配置することで、高周波加熱コイルと金属板の表面との間隔を一定に保持しつつ、加熱ヘッドの金属板の表面に沿う移動を円滑に行わせることができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-090538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した従来の曲げ加工装置の加熱ヘッドでは、金属板の表面に沿って移動させることで、金属板の全体を比較的緩やかに曲げることはできるものの、曲率が大きい端部の曲げ加工に対応することがほとんどできないという問題を有しており、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、金属板の中央部はもとより、端部の曲げ加工をも行うことができる加熱ヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る発明は、高周波誘導加熱により金属板を曲げる曲げ加工装置の加熱ヘッドであって、前記曲げ加工装置のヘッド支持部に装着される基部と、金属板の表面を誘導加熱する高周波管を同一平面に配置してなる加熱プレートと、この加熱プレートと前記基部との間に位置して、該加熱プレートを揺動可能に支持すると共に負荷がない状態で所定の位置に復帰させる揺動機構を備えている構成としたことを特徴としており、この加熱ヘッドの構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0006】
また、本発明の請求項2に係る加熱ヘッドにおいて、前記揺動機構は、前記基部に設置したプレート支持部と、前記加熱プレートに適宜間隔(加熱プレートへの配管及び配線に必要な間隔)をおいて平行に固定されて前記プレート支持部と点対偶で接触する揺動プレートと、前記加熱プレートと前記基部との間で且つ前記揺動プレートの周囲の少なくとも三箇所に配置した引張りコイルばねや流体圧シリンダなどの所定位置復帰手段を具備している構成としている。
【0007】
さらに、本発明の請求項3に係る加熱ヘッドは、前記プレート支持部及び揺動プレートのうちのいずれか一方に設けたボールピンと、いずれか他方に設けたボール受けとで点対偶をなしている構成としており、このような構成を成す加熱ヘッドにおいて、プレート支持部に対する揺動プレートの回転を拘束する回転規制手段を必要に応じて講じることが望ましい。
【0008】
本発明に係る加熱ヘッドは、例えば、門型台車の横梁に設けられてその長手方向に移動可能で且つ上下方向に移動可能としたヘッド支持部に装着することができるほか、6軸多関節ロボットのハンドをヘッド支持部としてこのハンドに装着することができる。
ここで、加熱ヘッドを6軸多関節ロボットのハンドに装着する場合、2台の6軸多関節ロボットを用意し、これらの6軸多関節ロボットの各ハンドに加熱ヘッドを装着するようにして、2個の加熱ヘッドで金属板を表裏側から加熱して曲げるようにすることが可能である。
【0009】
本発明に係る加熱ヘッドでは、その加熱プレートを金属板載置部にセットした金属板の表面に対向させて加熱を開始すれば、金属板が曲がり始めるが、この際、加熱プレートと基部との間に位置する揺動機構によって、加熱プレートが金属板の曲がりに合わせて揺動することから、金属板の中央部は勿論のこと、端部においてもしわなく曲げ得ることとなる。
【0010】
そして、曲げ加工後において、加熱ヘッドの加熱プレートを金属板の表面から離間させると、加熱プレートは負荷がない状態になるので、上記揺動機構により、所定の位置に復帰することとなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係る加熱ヘッドでは、上記した構成としているので、金属板の中央部だけでなく、端部に対する曲げ加工もしわを生じさせることなく行うことができるという非常に優れた効果がもたらされる。
また、本発明の請求項2及び3に係る加熱ヘッドでは、上記した構成としたため、加熱時における金属板の曲がり動作に円滑に追従することができ、したがって、金属板の細かな形状(曲率)変化に対応することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る加熱ヘッドの一実施例を示す正面説明図である。
【図2】図1に示した加熱ヘッドの底面説明図である。
【図3】図1に示した加熱ヘッドの側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る加熱ヘッドを図面に基づいて説明する。
図1〜図3は、本発明に係る加熱ヘッドの一実施例を示しており、この実施例では、本発明に係る加熱ヘッドを曲げ加工装置のヘッド支持部に装着した場合を例に挙げて説明する。
図1及び図2に示すように、この加熱ヘッド1は、門型台車の横梁に設けられてその長手方向に移動可能で且つ上下方向に移動可能としたヘッド支持部20に装着されるベースプレート(基部)2と、冷却水を流通させつつ金属板である鋼板Wの表面を高周波誘導加熱する高周波管3を磁心材料であるフェライト板4上に渦巻状に配置してなる加熱プレート5と、この加熱プレート5に積層したガラスプレート6と、加熱プレート5及びベースプレート2の間に位置して、この加熱プレート5を揺動可能に支持すると共に、負荷がかからない状態において加熱プレート5をベースプレート2と平行を成す位置(所定位置)に復帰させる揺動機構10を備えている。
【0014】
この揺動機構10は、ベースプレート2に設置したプレート支持部11と、加熱プレート5に対して支柱7を介して配管及び配線に必要な間隔をおいて平行に固定した揺動プレート12と、加熱プレート5とベースプレート2との間で且つ揺動プレート12の周囲の四箇所に配置した引張りコイルばね(所定位置復帰手段)13を具備しており、これらの引張りコイルばね13の各端部は、ベースプレート2及びガラスプレート6にねじ8を介してそれぞれ連結してある。
【0015】
この場合、プレート支持部11にはボールピン14が設けてあると共に、揺動プレート12には上記ボールピン14と嵌合するボール受け15が設けてあり、プレート支持部11と揺動プレート12とが互いに点対偶を成して接触することで、揺動プレート12及び加熱プレート5のベースプレート2に対する揺動を許容するようになっている。
なお、プレート支持部11に対する揺動プレート12及び加熱プレート5の回転を拘束する回転規制手段を必要に応じて講じることが望ましい。
【0016】
次に、上記した本実施例に係る加熱ヘッド1の動作を説明する。
まず、本実施例に係る加熱ヘッド1が装着された曲げ加工装置のヘッド支持部20を動作させて、金属板載置部に搬入されてセットされた鋼板Wの中央部における必要部位に加熱ヘッド1を順次移動させて、その部位毎に加熱冷却を繰り返して曲げ加工を施し、鋼板Wの中央部を所定形状に湾曲させる。
【0017】
次いで、上記ヘッド支持部20を動作させて、加熱ヘッド1を金属板載置部にセットされた鋼板Wの端部の表側に接触させ、この状態で加熱冷却することによって曲げ加工を行う。
上記した曲げ加工において、本実施例に係る加熱ヘッド1では、その加熱プレート5を金属板載置部にセットした鋼板W金属板の表面に対向させて加熱を開始することで、鋼板Wを曲げることができるが、鋼板Wが曲がる過程において、加熱プレート5とベースプレート2との間に位置する揺動機構10によって、図1及び図3に仮想線で示すように、加熱プレート5が鋼板Wの曲がりに合わせて揺動することから、鋼板Wの中央部は勿論のこと、端部においてもしわなく曲げ得ることとなる。
【0018】
上記した実施例では、曲げ加工装置の門型台車の横梁に設けられてその長手方向に移動可能で且つ上下方向に移動可能としたヘッド支持部20に加熱ヘッド1を装着した場合を例に挙げて説明したが、6軸多関節ロボットのハンドをヘッド支持部としてこのハンドに加熱ヘッド1を装着するようにしてもよい。
この際、2台の6軸多関節ロボットを用意して、これらの6軸多関節ロボットの各ハンドに加熱ヘッド1を装着するようにして、2個の加熱ヘッド1で金属板を表裏側から加熱して曲げるようにすることが可能である。
【0019】
また、上記した実施例では、プレート支持部11にボールピン14を設けると共に、揺動プレート12に上記ボールピン14と嵌合するボール受け15を設けることで、プレート支持部11と揺動プレート12とを互いに点対偶を成して接触させる構成としているが、揺動プレート12にボールピン14を設けると共に、プレート支持部11に上記ボールピン14と嵌合するボール受け15を設けることで、プレート支持部11と揺動プレート12とを互いに点対偶を成して接触させる構成としてもよい。
【0020】
さらに、上記した実施例では、負荷がかからない状態において加熱プレート5をベースプレート2と平行を成す位置(所定位置)に復帰させる所定位置復帰手段として引張りコイルばね13を採用した構成としているが、所定位置復帰手段として流体圧シリンダを採用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 加熱ヘッド
2 ベースプレート(基部)
3 高周波管(加熱プレート)
4 フェライト板(加熱プレート)
5 加熱プレート
10 揺動機構
11 プレート支持部(揺動機構)
12 揺動プレート(揺動機構)
13 引張りコイルばね(所定位置復帰手段;揺動機構)
14 ボールピン
15 ボール受け
20 ヘッド支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波誘導加熱により金属板を曲げる曲げ加工装置の加熱ヘッドであって、
前記曲げ加工装置のヘッド支持部に装着される基部と、
金属板の表面を誘導加熱する高周波管を同一平面に配置してなる加熱プレートと、
この加熱プレートと前記基部との間に位置して、該加熱プレートを揺動可能に支持すると共に負荷がない状態で所定の位置に復帰させる揺動機構を備えている
ことを特徴とする加熱ヘッド。
【請求項2】
前記揺動機構は、前記基部に設置したプレート支持部と、前記加熱プレートに適宜間隔をおいて平行に固定されて前記プレート支持部と点対偶で接触する揺動プレートと、前記加熱プレートと前記基部との間で且つ前記揺動プレートの周囲の少なくとも三箇所に配置した所定位置復帰手段を具備している請求項1に記載の加熱ヘッド。
【請求項3】
前記プレート支持部及び揺動プレートのうちのいずれか一方に設けたボールピンと、いずれか他方に設けたボール受けとで点対偶をなしている請求項2に記載の加熱ヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−599(P2011−599A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144194(P2009−144194)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)
【Fターム(参考)】