加熱機器
【課題】並列接続した複数のヒータの異常加熱を確実に防止する。
【解決手段】外装体１０の内部に被加熱物を収容する容器２２を配設し、容器２２に内部の被加熱物を加熱する加熱手段を配設した加熱機器において、加熱手段として、容器２２の底に底ヒータ３４と、容器２２の側部に底ヒータ３４と並列に接続した胴ヒータ４４とを配設するとともに、並列接続した底ヒータ３４と胴ヒータ４４との分岐接続部の上流側に、胴ヒータ４４および底ヒータ３４の異常加熱を防止する温度ヒューズ８０Ａを介設し、温度ヒューズ８０Ａを、胴ヒータ４４の表面に配設した構成としている。
【解決手段】外装体１０の内部に被加熱物を収容する容器２２を配設し、容器２２に内部の被加熱物を加熱する加熱手段を配設した加熱機器において、加熱手段として、容器２２の底に底ヒータ３４と、容器２２の側部に底ヒータ３４と並列に接続した胴ヒータ４４とを配設するとともに、並列接続した底ヒータ３４と胴ヒータ４４との分岐接続部の上流側に、胴ヒータ４４および底ヒータ３４の異常加熱を防止する温度ヒューズ８０Ａを介設し、温度ヒューズ８０Ａを、胴ヒータ４４の表面に配設した構成としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、電気ポット、加湿器および炊飯器などの加熱機器に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
この種の加熱機器は、被加熱物を収容する容器を備え、該容器に加熱手段としてヒータを配設することにより、前記容器を介して被加熱物を加熱するものである。具体的には、電気ポットでは、容器の内部に被加熱物として水が収容され、ヒータが動作されることにより、水を沸騰させ、所定温度に保温する。加湿器では、容器の内部に被加熱物として水が収容され、ヒータが動作されることにより、水を沸騰させ、その蒸気を室内に供給することにより、室内を加湿する。炊飯器では、着脱可能な容器（鍋）の内部に被加熱物として米と水とが収容され、容器を本体の収容部（容器）にセットしてヒータを動作することにより、水を沸騰させ、米を炊き上げる。
【０００３】
そして、この加熱機器では、前記ヒータは、容器の底に配設されている。
【特許文献１】特開平１０−１４７６８号公報
【０００４】
この特許文献１の加熱機器では、ヒータによる加熱量を大きくするには、底ヒータの形状が大きくなるため、大幅な設計変更が必要になる。そこで、筒状をなす容器の側部に新たなヒータ（胴ヒータ）を配設する構成が考えられる。
【０００５】
しかしながら、マイコンが故障（暴走）した際の安全対策である温度ヒューズは、底ヒータの側に設けられているため、底ヒータと胴ヒータとを並列に接続した場合には不都合が生じる。即ち、マイコンが故障し、更に底ヒータが断線している状態では、胴ヒータの熱が温度ヒューズに伝わり難いため、胴ヒータの異常加熱により周辺の樹脂部品を溶損させる可能性がある。
【０００６】
そこで、この場合には、商用電源（電源ユニット）に対して並列に接続した底ヒータおよび胴ヒータの両方の接続ラインにそれぞれ温度ヒューズを介設することが考えられる。しかし、この場合には、一方の温度ヒューズが溶断（遮断）しても、他方の温度ヒューズが溶断されないため、その他方のヒータは加熱され続けるという不都合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたもので、並列接続した複数のヒータの異常加熱を確実に防止するとともに、温度ヒューズの削減も可能な加熱機器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
前記課題を解決するため、本発明の加熱機器は、外装体の内部に被加熱物を収容する容器を配設し、該容器に内部の被加熱物を加熱する加熱手段を配設した加熱機器において、前記加熱手段として、前記容器の底に底ヒータと、前記容器の側部に前記底ヒータと並列に接続した胴ヒータとを配設するとともに、並列接続した前記底ヒータと胴ヒータとの分岐接続部の上流側に、該胴ヒータおよび前記底ヒータの異常加熱を防止する温度ヒューズを介設し、該温度ヒューズを、前記胴ヒータの表面に配設した構成としている。
【０００９】
なお、前記底ヒータと胴ヒータとは、定格電力（加熱量）が異なり、底ヒータの方が加熱量が大きいものである。また、胴ヒータとは、マイカ板に電熱線を巻回した実質的なヒータと、該ヒータを配設するための部材を含む。
【００１０】
このように構成した加熱機器は、底ヒータと胴ヒータとが非断線状態で異常加熱が発生した場合には、胴ヒータの表面に配設した温度ヒューズが両方のヒータの熱で溶損し、両方のヒータを加熱不可能とする。また、底ヒータが断線した状態で異常加熱が発生した場合には、胴ヒータの熱で温度ヒューズが溶損し、残りの胴ヒータを加熱不可能とする。さらに、胴ヒータが断線した状態で異常加熱が発生した場合には、定格電力が大きい底ヒータの熱で温度ヒューズが溶損し、残りの底ヒータを加熱不可能とすることができる。
【００１１】
このように、本発明の加熱機器によれば、並列に接続した底ヒータと胴ヒータとが異常加熱状態になると、確実に加熱不可能な状態とすることが可能である。また、１個の温度ヒューズで両方のヒータの異常加熱を防止できるため、温度ヒューズの設置数を削減でき、コストダウンを図ることができる。
【００１２】
この加熱機器では、前記温度ヒューズを、前記胴ヒータを構成する電熱線上に位置しないように配設することが好ましい。このようにすれば、胴ヒータの熱を直接温度ヒューズが受けることはないため、確実に異常加熱時のみ、温度ヒューズを溶断させることができる。
【００１３】
また、前記温度ヒューズを保持する取付金具を設け、該取付金具を、前記胴ヒータを前記容器に固定する固定金具に対してネジにより一体的に締め付けて取り付けることが好ましい。このようにすれば、温度ヒューズの取付作業性を向上できる。
【００１４】
この場合、前記取付金具は弾性を有する金属板からなり、前記温度ヒューズを保持する保持部と、前記固定金具に対して固定するための取付部とを備え、前記保持部を、前記固定金具に対する取付状態で、前記胴ヒータに向けて弾性的に付勢することが好ましい。このようにすれば、胴ヒータの熱を確実に温度ヒューズで検出することができる。
【発明の効果】
【００１５】
本発明の加熱機器では、並列接続した底ヒータと胴ヒータとの分岐接続部の上流側に温度ヒューズを介設し、この温度ヒューズを胴ヒータの表面に配設しているため、１個の温度ヒューズで両方のヒータの異常加熱を防止できる。よって、必要な温度ヒューズの設置数を削減でき、コストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１６】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【００１７】
図１は、本発明の実施形態に係る加熱機器である電気ポットを示す。この電気ポットは、外装体１０の内部に被加熱物である水を収容する容器２２を配設し、この容器２２内の水を複数の沸騰ヒータ３４，４４で加熱するとともに、給湯ポンプ２６を動作させることにより、揚水管２８を介して吐出部３０からお湯を吐出するものである。
【００１８】
前記外装体１０は、筒状をなす胴体１１と、該胴体１１の上部に装着された肩体１７と、該肩体１７に開閉可能に取り付けた蓋体２１を備えている。
【００１９】
前記胴体１１は、その下端開口部が下板１２により閉塞されている。また、胴体１１には、正面に外向きに突出するノーズ部１３が設けられ、その先端近傍に下向きに開口した吐出用開口部１４が設けられている。さらに、胴体１１の正面側には、矩形状の開口部１５が設けられ、この開口部１５に内部を透視可能な透明の窓部材１６が配設されている。
【００２０】
前記肩体１７は、前記胴体１１の上端開口と一致する下端形状をなし、その背面側には蓋体２１を着脱可能でかつ回動可能に取り付けるためのヒンジ接続部１８が設けられている。この肩体１７は、ノーズ部１３の上側に位置する部分が先端に向けて下向きに湾曲した形状をなし、その部分に操作パネル部１９が設けられている。この操作パネル部１９の背面側には、下向きに窪む蓋配設部２０が設けられ、この蓋配設部２０に容器２２の内部を露出させる開口部（図示せず）が設けられている。
【００２１】
前記蓋体２１は、肩体１７の蓋配設部２０と同一形状をなし、ヒンジ接続部１８に軸着されることにより、容器２２の上端開口を開閉可能に密閉するものである。この蓋体２１は、肩体１７に開放不可能な状態にロックし、開放操作によりロックを解除する操作部材（図示せず）を備えている。
【００２２】
前記容器２２は、肩体１７の開口部に装着される円筒状の容器胴体２３と、該容器胴体２３の下端開口を閉塞する容器底体２４とからなる金属製（ステンレス（ＳＵＳ４３６Ｌ））のものである。容器底体２４には、給湯ポンプ２６を接続する接続孔２５が設けられている。また、給湯ポンプ２６には、略Ｌ字形状をなす継手部材２７を介して窓部材１６の背部に位置する揚水管２８が接続されている。そして、この揚水管２８の上端には、転倒時の漏水を防止するための弁セット２９が接続され、この弁セット２９に吐出用開口部１４内に配置される吐出部３０が設けられている。また、容器２２には、容器底体２４における接続孔２５を除く位置に容器２２内に向けて上向きに窪むヒータ取付部３１が設けられ、このヒータ取付部３１の中心に更に円形状をなすように上向きに窪むセンサ配設部３２が設けられている。
【００２３】
そして、前記容器２２のヒータ取付部３１には、容器２２内に貯留された水を沸騰および保温するための加熱手段として底ヒータユニット３３が配設されている。また、本実施形態の容器２２には、側部下端である容器胴体２３の外周部に、水を沸騰させる加熱手段として胴ヒータユニット４３が更に配設されている。なお、本発明の胴ヒータとは、後述する実質的な胴沸騰ヒータ４４を含む、胴ヒータユニット４３を含む。
【００２４】
前記底ヒータユニット３３は、図２に示すように、底沸騰ヒータ３４と、底保温ヒータ３５と、各ヒータ３４，３５間および両端を絶縁する絶縁板３８と、これらを内部に積層配置するヒータカバー３９とを備えている。底沸騰ヒータ３４は、沸騰処理時に動作（通電）されるもので、例えば９０５Ｗの出力が可能なものである。底保温ヒータ３５は、保温処理時に動作されるもので、例えば６５Ｗの出力が可能なものである。これらヒータ３４，３５は、中央に貫通孔３６ａを備えたマイカ板３６にニクロム線３７（電熱線）を巻回したものである。絶縁板３８は、中央に貫通孔３８ａを備えたマイカ板である。ヒータカバー３９は金属（アルミ）製であり、内部のヒータ３４，３５の発熱を平均化して容器底体２４に供給する放熱板の役割をなすもので、ヒータ取付部３１より僅かに小さい形状をなすベース板部４０と、折り曲げにより該ベース板部４０と略同形状をなす３枚の折曲板部４１ａ，４１ｂ，４１ｃとを備えている。そして、この底ヒータユニット３３は、ヒータ取付部３１に収容するように配設され、その表面（底側）が金属製の被覆部材４２によって離脱不可能に接合されている。
【００２５】
前記胴ヒータユニット４３は、図３に示すように、矩形（バンド）状をなす胴沸騰ヒータ４４と、平面視Ｃ字形状をなす保持枠４７と、胴沸騰ヒータ４４を保護する保護部材５１とを備えている。胴沸騰ヒータ４４は、沸騰処理時に動作されるもので、例えば底沸騰ヒータ３４と合わせて１２００Ｗとなるように２９５Ｗの出力が可能なものである。この胴沸騰ヒータ４４は、板状をなすマイカ板４５に対して螺旋状をなすようにニクロム線４６（電熱線）を巻回したものである。保持枠４７は、金属（アルミ）製であり、放熱板の役割をなすもので、内面部４８と外面上枠部４９と外面下枠部５０とを備えた断面略Ｃ字形状をなす。保護部材５１は、金属（鉄）製であり、容器胴体２３の外形より僅かに小さい直径のものである。この保護部材５１の両端には、先端縁からＵ字形状をなすように打ち抜いたネジ挿通溝５２ａを有する被締付部５２Ａ，５２Ｂが外向きに突出するように設けられている。また、保護部材５１には、内側に位置する胴沸騰ヒータ４４の接続部４６ａを露出させる露出孔５３が設けられている。
【００２６】
前記胴ヒータユニット４３は、図４および図５に示すように、容器２２の側部下端に固定金具５４によってネジ締めされることにより装着される。この固定金具５４は、図６に示すように、一対の板状部材５５，６０からなる。第１板状部材５５は、ネジを挿通する挿通孔５６ａを有する挿通部５６と、該挿通部５６の外端縁から屈曲したカバー部５７とを有する平面視Ｌ字形状のものである。挿通部５６の内端縁には、一対の突片５８が内向きに突出するように設けられている。また、挿通部５６の外面には、座金板５９が固着されている。第２板状部材６０は、挿通部５６と同一形状をなす長方形状のものである。この第２板状部材６０には、ネジ７１を締め付けるためのネジ孔６１が設けられている。また、第１板状部材５５と同様に、内端縁には一対の突片６２が内向きに突出するように設けられている。
【００２７】
そして、本実施形態では、図４および図５に示すように、前記固定金具５４に、胴ヒータユニット４３の表面に該胴ヒータユニット４３および前記底ヒータユニット３３の異常加熱を防止する温度ヒューズ８０Ａを配設するための取付金具６３が、共締めにより一体的に取り付けられている。この取付金具６３は、図６に示すように、温度ヒューズ８０Ａを保持するもので、弾性を有する金属（ステンレス）板からなる。この取付金具６３は、温度ヒューズ８０Ａを保持する保持部６４と、固定金具５４に対して固定するための取付部６９とを備えている。保持部６４は、容器２２の外形より小さい曲率で湾曲し、かつ、保護部材５１の一方の被締付部５２Ａから露出孔５３までの寸法より短尺な湾曲板部６５を備えている。そして、この湾曲板部６５の先端両側縁には、同一の湾曲方向で、かつ、温度ヒューズ８０Ａの外形より小さい曲率で湾曲する一対の保持片６６，６６が設けられている。また、これら保持片６６の先端には、温度ヒューズ８０Ａを差し込んで保持させるための屈曲部６７が設けられている。さらに、これら保持片６６，６６の中間位置には、温度ヒューズ８０Ａが外向きに変形して胴ヒータユニット４３の表面から離反することを防止するために、同一曲率で湾曲した押圧片６８が設けられている。取付部６９は、湾曲板部６５において保持片６６と逆側の端縁から、該湾曲板部６５の略径方向外向きに突出するように屈曲されたものである。この取付部６９には、保護部材５１のネジ挿通溝５２ａと同様に、先端縁からＵ字形状をなすように打ち抜いたネジ挿通溝７０が設けられている。
【００２８】
前記取付金具６３は、容器２２の側部の所定位置に胴ヒータユニット４３を位置決めした状態で、被締付部５２Ａに対して取付部６９が重畳するように位置決めする。そして、一対の板状部材５５，６０に対してネジ７１を仮締めした状態の固定金具５４を外側から配置し、ネジ７１を各挿通溝５２ａ，７０に挿通させる。この状態でネジ７１を締め付ける。これにより、一対の被締付部５２Ａ，５２Ｂを近接させ、内側に位置する胴沸騰ヒータ４４および保持枠４７を一緒に容器２２の側部を圧接することにより、胴ヒータユニット４３を容器２２に対して固定する。また、同時に、取付金具６３の取付部６９が締め付けられることにより、保護部材５１に保持片６６が当接した曲率が小さい湾曲板部６５が外向きに弾性的に変形した状態で取り付けられる。これにより、保持部６４に保持させた温度ヒューズ８０Ａが、胴沸騰ヒータ４４を被覆（保護）している保護部材５１に向けて弾性的に付勢される。また、保持部６４に保持された温度ヒューズ８０Ａは、保持部６４の寸法設定により、保護部材５１における胴沸騰ヒータ４４が配設されていない部分、即ち、胴沸騰ヒータ４４を構成するニクロム線４６上に位置しないように配設される。
【００２９】
このように構成した電気ポットには、図１に示すように、容器２２を介して内部の水温を検出するための温度検出手段であるサーミスタ７２が、底ヒータユニット３３を貫通してセンサ配設部３２に接触するように配設されている。また、容器２２と外装体１０の底との間には、容器２２の底を覆うように底遮熱部材７３が配設され、制御基板ケース７４に対する底ヒータユニット３３の熱を遮断するように構成している。さらに、容器２２と外装体１０の側部との間には、容器胴体２３を覆うように胴遮熱部材７５が配設され、揚水管２８などの近接した樹脂製品に対する胴ヒータユニット４３の熱を遮断するように構成している。
【００３０】
また、制御基板ケース７４内には、電源ユニットを含む制御基板７６が配設され、この制御基板７６に実装した制御手段であるマイコン７７により、予め記憶されたプログラムに従って沸騰処理、再沸騰処理および保温処理が実行される。具体的には、このマイコン７７は、図７に示すように、ユーザが電源コードを商用電源７９に接続したことを検出すると、または、サーミスタ７２によって保温処理中にユーザが水を継ぎ足すことにより１０℃以上の温度低下を検出すると、沸騰処理を実行した後、続いて保温処理を実行する。また、操作パネル部１９のスイッチ操作に従って再沸騰処理を実行し、続いて保温処理を実行する。さらに、スイッチ操作に従って給湯ポンプ２６を動作させて給湯処理を実行する。なお、商用電源７９からの交流電力は、図示しない電源ユニットによって直流電力に整流および変換されて各構成部品に供給されることは言うまでもない。
【００３１】
また、再沸騰を含む沸騰処理は、切換手段であるリレー７８Ａにオン信号を出力することにより、前記沸騰ヒータ３４，４４に対して商用電源７９からの電力を通電させて実行する。また、保温処理は、同様にリレー７８Ｂにオン信号を出力することにより、底保温ヒータ３５に対して商用電源７９からの電力を通電させて実行する。
【００３２】
そして、本実施形態では、リレー７８Ａ，７８Ｂと商用電源７９との間には、一対の温度ヒューズ８０Ａ，８０Ｂが介設されている。即ち、これらの温度ヒューズ８０Ａ，８０Ｂは、リレー７８Ａを分岐接続部として並列に接続した底沸騰ヒータ３４と胴沸騰ヒータ４４において前記分岐接続部の上流側、かつ、並列に接続に接続した沸騰ヒータ３４，４４および底保温ヒータ３５の分岐接続部の上流側に介設されている。なお、一方の温度ヒューズ８０Ａは、取付金具６３によって胴ヒータユニット４３の表面に位置するように配設されるものである。また、他方の温度ヒューズ８０Ｂは、底ヒータユニット３３の表面に位置するように配設されるものである。そして、本実施形態では、胴沸騰ヒータ４４は定格電力が２９５Ｗに構成され、底沸騰ヒータ３４は定格電力が９０５Ｗに構成されているため、各温度ヒューズ８０Ａ，８０Ｂは、温度ヒューズ８０Ａが温度ヒューズ８０Ｂより容量が小さいものを適用している。
【００３３】
このように構成した電気ポットは、底沸騰ヒータ３４と胴沸騰ヒータ４４とが非断線状態で沸騰処理または再沸騰処理を実行した場合には、両方の沸騰ヒータ３４，４４の熱が、合わさって温度ヒューズ８０Ａ，８０Ｂに伝熱される。具体的には、温度ヒューズ８０Ａには、胴沸騰ヒータ４４の熱が保護部材５１を介して伝熱されるとともに、底沸騰ヒータ３４の熱が容器２２、保持枠４７および保護部材５１を介して伝熱される。また、温度ヒューズ８０Ｂには、底沸騰ヒータ３４の熱が底保温ヒータ３５、絶縁板３８、ヒータカバー３９および被覆部材４２を介して伝熱されるとともに、胴沸騰ヒータ４４の熱が容器２２、ヒータカバー３９および被覆部材４２を介して伝熱される。
【００３４】
この状態で、マイコン７７が故障するなどの原因で沸騰ヒータ３４，４４が異常加熱した場合には、両方の沸騰ヒータ３４，４４の熱で容量が小さい温度ヒューズ８０Ａが溶損する。これにより、商用電源７９から電力供給が遮断されるため、両方の沸騰ヒータ３４，４４が加熱不可能となる。
【００３５】
また、底沸騰ヒータ３４が断線した状態で異常加熱が発生した場合には、胴沸騰ヒータ４４が加熱され続けることによる過熱で温度ヒューズ８０Ａが溶損され、胴沸騰ヒータ４４が加熱不可能となる。
【００３６】
さらに、胴沸騰ヒータ４４が断線した状態で異常加熱が発生した場合には、底沸騰ヒータ３４が加熱され続けることによる過熱で温度ヒューズ８０Ｂが溶損され、底沸騰ヒータ３４が加熱不可能となる。そして、温度ヒューズ８０Ｂが何らかの原因で溶損（遮断）しなかった場合には、底沸騰ヒータ３４が加熱され続けることによる過熱が、容器２２、保持枠４７および保護部材５１を介して容量が小さい温度ヒューズ８０Ａに伝熱されることにより、該温度ヒューズ８０Ａが溶損し、底沸騰ヒータ３４が加熱不可能となる。
【００３７】
このように、本発明の加熱機器によれば、並列に接続した底沸騰ヒータ３４と胴沸騰ヒータ４４とが異常加熱状態になると、温度ヒューズ８０Ａ，８０Ｂにより確実に加熱不可能な状態とすることが可能である。具体的には、全ての沸騰ヒータ３４，４４が正常な場合には、胴側の温度ヒューズ８０Ａにより異常加熱を防止できる。また、底沸騰ヒータ３４に異常（断線）が生じている場合には、同様に胴側の温度ヒューズ８０Ａにより異常加熱を防止できる。さらに、胴沸騰ヒータ４４に異常が生じている場合には、基本的には底側の温度ヒューズ８０Ｂにより異常加熱を防止し、この温度ヒューズ８０Ｂに異常が生じている場合でも、確実に胴側の温度ヒューズ８０Ａで異常加熱を防止できる。即ち、１個の温度ヒューズ８０Ａで確実に異常加熱を防止できるため、温度ヒューズの設置数を削減でき、コストダウンを図ることができる。言い換えれば、底側の温度ヒューズ８０Ｂは、安全性に鑑みて迅速に異常加熱を停止するには必要であるが、必ずしも設ける必要はない。
【００３８】
また、前記実施形態では、温度ヒューズ８０Ａを胴沸騰ヒータ４４を構成するニクロム線４６上に位置しないように配設しているため、該胴沸騰ヒータ４４の熱を直接受けることはない。よって、確実に異常加熱時のみ、温度ヒューズ８０Ａを溶断させることができる。
【００３９】
さらに、温度ヒューズ８０Ａは、取付金具６３に保持させた状態で、胴ヒータユニット４３を固定するための固定金具５４によって一体的に取り付けられるため、取付作業性を向上できる。しかも、この取付金具６３は弾性を有する金属板からなり、取付状態では、温度ヒューズ８０Ａを胴沸騰ヒータ４４に向けて弾性的に付勢するように構成しているため、胴沸騰ヒータ４４の熱は勿論、容器を介して底沸騰ヒータ３４の熱を確実に温度ヒューズ８０Ａで検出することができる。
【００４０】
なお、本発明の加熱機器は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【００４１】
例えば、前記実施形態では、温度ヒューズ８０Ａは、取付金具６３によって胴沸騰ヒータ４４が配設されていない部分に位置するように配設したが、図４において隣接するニクロム線４６，４６間に位置するように配設してもよい。
【００４２】
また、前記実施形態では、胴ヒータ４４を増設する機器として電気ポットを例に挙げて説明したが、加湿器や炊飯器など、容器２２にヒータを取り付ける加熱機器であればいずれでも適用可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【００４３】
【図１】本発明の実施形態に係る加熱機器である電気ポットを示す断面図である。
【図２】容器の底に配設するヒータを示す分解斜視図である。
【図３】容器の側部に配設するヒータを示す分解斜視図である。
【図４】容器に胴ヒータを配設した状態を示す正面図である。
【図５】図４の部分拡大底面図である。
【図６】図４の部分拡大分解斜視図である。
【図７】電気ポットの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【００４４】
１０…外装体
２２…容器
３３…底ヒータユニット
３４…底沸騰ヒータ
３５…底保温ヒータ
４３…胴ヒータユニット
４４…胴沸騰ヒータ
４７…保持枠
５１…保護部材
５４…固定金具
６３…取付金具
６４…保持部
６９…取付部
７８Ａ，７８Ｂ…リレー
８０Ａ，８０Ｂ…温度ヒューズ
【技術分野】
【０００１】
本発明は、電気ポット、加湿器および炊飯器などの加熱機器に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
この種の加熱機器は、被加熱物を収容する容器を備え、該容器に加熱手段としてヒータを配設することにより、前記容器を介して被加熱物を加熱するものである。具体的には、電気ポットでは、容器の内部に被加熱物として水が収容され、ヒータが動作されることにより、水を沸騰させ、所定温度に保温する。加湿器では、容器の内部に被加熱物として水が収容され、ヒータが動作されることにより、水を沸騰させ、その蒸気を室内に供給することにより、室内を加湿する。炊飯器では、着脱可能な容器（鍋）の内部に被加熱物として米と水とが収容され、容器を本体の収容部（容器）にセットしてヒータを動作することにより、水を沸騰させ、米を炊き上げる。
【０００３】
そして、この加熱機器では、前記ヒータは、容器の底に配設されている。
【特許文献１】特開平１０−１４７６８号公報
【０００４】
この特許文献１の加熱機器では、ヒータによる加熱量を大きくするには、底ヒータの形状が大きくなるため、大幅な設計変更が必要になる。そこで、筒状をなす容器の側部に新たなヒータ（胴ヒータ）を配設する構成が考えられる。
【０００５】
しかしながら、マイコンが故障（暴走）した際の安全対策である温度ヒューズは、底ヒータの側に設けられているため、底ヒータと胴ヒータとを並列に接続した場合には不都合が生じる。即ち、マイコンが故障し、更に底ヒータが断線している状態では、胴ヒータの熱が温度ヒューズに伝わり難いため、胴ヒータの異常加熱により周辺の樹脂部品を溶損させる可能性がある。
【０００６】
そこで、この場合には、商用電源（電源ユニット）に対して並列に接続した底ヒータおよび胴ヒータの両方の接続ラインにそれぞれ温度ヒューズを介設することが考えられる。しかし、この場合には、一方の温度ヒューズが溶断（遮断）しても、他方の温度ヒューズが溶断されないため、その他方のヒータは加熱され続けるという不都合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたもので、並列接続した複数のヒータの異常加熱を確実に防止するとともに、温度ヒューズの削減も可能な加熱機器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
前記課題を解決するため、本発明の加熱機器は、外装体の内部に被加熱物を収容する容器を配設し、該容器に内部の被加熱物を加熱する加熱手段を配設した加熱機器において、前記加熱手段として、前記容器の底に底ヒータと、前記容器の側部に前記底ヒータと並列に接続した胴ヒータとを配設するとともに、並列接続した前記底ヒータと胴ヒータとの分岐接続部の上流側に、該胴ヒータおよび前記底ヒータの異常加熱を防止する温度ヒューズを介設し、該温度ヒューズを、前記胴ヒータの表面に配設した構成としている。
【０００９】
なお、前記底ヒータと胴ヒータとは、定格電力（加熱量）が異なり、底ヒータの方が加熱量が大きいものである。また、胴ヒータとは、マイカ板に電熱線を巻回した実質的なヒータと、該ヒータを配設するための部材を含む。
【００１０】
このように構成した加熱機器は、底ヒータと胴ヒータとが非断線状態で異常加熱が発生した場合には、胴ヒータの表面に配設した温度ヒューズが両方のヒータの熱で溶損し、両方のヒータを加熱不可能とする。また、底ヒータが断線した状態で異常加熱が発生した場合には、胴ヒータの熱で温度ヒューズが溶損し、残りの胴ヒータを加熱不可能とする。さらに、胴ヒータが断線した状態で異常加熱が発生した場合には、定格電力が大きい底ヒータの熱で温度ヒューズが溶損し、残りの底ヒータを加熱不可能とすることができる。
【００１１】
このように、本発明の加熱機器によれば、並列に接続した底ヒータと胴ヒータとが異常加熱状態になると、確実に加熱不可能な状態とすることが可能である。また、１個の温度ヒューズで両方のヒータの異常加熱を防止できるため、温度ヒューズの設置数を削減でき、コストダウンを図ることができる。
【００１２】
この加熱機器では、前記温度ヒューズを、前記胴ヒータを構成する電熱線上に位置しないように配設することが好ましい。このようにすれば、胴ヒータの熱を直接温度ヒューズが受けることはないため、確実に異常加熱時のみ、温度ヒューズを溶断させることができる。
【００１３】
また、前記温度ヒューズを保持する取付金具を設け、該取付金具を、前記胴ヒータを前記容器に固定する固定金具に対してネジにより一体的に締め付けて取り付けることが好ましい。このようにすれば、温度ヒューズの取付作業性を向上できる。
【００１４】
この場合、前記取付金具は弾性を有する金属板からなり、前記温度ヒューズを保持する保持部と、前記固定金具に対して固定するための取付部とを備え、前記保持部を、前記固定金具に対する取付状態で、前記胴ヒータに向けて弾性的に付勢することが好ましい。このようにすれば、胴ヒータの熱を確実に温度ヒューズで検出することができる。
【発明の効果】
【００１５】
本発明の加熱機器では、並列接続した底ヒータと胴ヒータとの分岐接続部の上流側に温度ヒューズを介設し、この温度ヒューズを胴ヒータの表面に配設しているため、１個の温度ヒューズで両方のヒータの異常加熱を防止できる。よって、必要な温度ヒューズの設置数を削減でき、コストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１６】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【００１７】
図１は、本発明の実施形態に係る加熱機器である電気ポットを示す。この電気ポットは、外装体１０の内部に被加熱物である水を収容する容器２２を配設し、この容器２２内の水を複数の沸騰ヒータ３４，４４で加熱するとともに、給湯ポンプ２６を動作させることにより、揚水管２８を介して吐出部３０からお湯を吐出するものである。
【００１８】
前記外装体１０は、筒状をなす胴体１１と、該胴体１１の上部に装着された肩体１７と、該肩体１７に開閉可能に取り付けた蓋体２１を備えている。
【００１９】
前記胴体１１は、その下端開口部が下板１２により閉塞されている。また、胴体１１には、正面に外向きに突出するノーズ部１３が設けられ、その先端近傍に下向きに開口した吐出用開口部１４が設けられている。さらに、胴体１１の正面側には、矩形状の開口部１５が設けられ、この開口部１５に内部を透視可能な透明の窓部材１６が配設されている。
【００２０】
前記肩体１７は、前記胴体１１の上端開口と一致する下端形状をなし、その背面側には蓋体２１を着脱可能でかつ回動可能に取り付けるためのヒンジ接続部１８が設けられている。この肩体１７は、ノーズ部１３の上側に位置する部分が先端に向けて下向きに湾曲した形状をなし、その部分に操作パネル部１９が設けられている。この操作パネル部１９の背面側には、下向きに窪む蓋配設部２０が設けられ、この蓋配設部２０に容器２２の内部を露出させる開口部（図示せず）が設けられている。
【００２１】
前記蓋体２１は、肩体１７の蓋配設部２０と同一形状をなし、ヒンジ接続部１８に軸着されることにより、容器２２の上端開口を開閉可能に密閉するものである。この蓋体２１は、肩体１７に開放不可能な状態にロックし、開放操作によりロックを解除する操作部材（図示せず）を備えている。
【００２２】
前記容器２２は、肩体１７の開口部に装着される円筒状の容器胴体２３と、該容器胴体２３の下端開口を閉塞する容器底体２４とからなる金属製（ステンレス（ＳＵＳ４３６Ｌ））のものである。容器底体２４には、給湯ポンプ２６を接続する接続孔２５が設けられている。また、給湯ポンプ２６には、略Ｌ字形状をなす継手部材２７を介して窓部材１６の背部に位置する揚水管２８が接続されている。そして、この揚水管２８の上端には、転倒時の漏水を防止するための弁セット２９が接続され、この弁セット２９に吐出用開口部１４内に配置される吐出部３０が設けられている。また、容器２２には、容器底体２４における接続孔２５を除く位置に容器２２内に向けて上向きに窪むヒータ取付部３１が設けられ、このヒータ取付部３１の中心に更に円形状をなすように上向きに窪むセンサ配設部３２が設けられている。
【００２３】
そして、前記容器２２のヒータ取付部３１には、容器２２内に貯留された水を沸騰および保温するための加熱手段として底ヒータユニット３３が配設されている。また、本実施形態の容器２２には、側部下端である容器胴体２３の外周部に、水を沸騰させる加熱手段として胴ヒータユニット４３が更に配設されている。なお、本発明の胴ヒータとは、後述する実質的な胴沸騰ヒータ４４を含む、胴ヒータユニット４３を含む。
【００２４】
前記底ヒータユニット３３は、図２に示すように、底沸騰ヒータ３４と、底保温ヒータ３５と、各ヒータ３４，３５間および両端を絶縁する絶縁板３８と、これらを内部に積層配置するヒータカバー３９とを備えている。底沸騰ヒータ３４は、沸騰処理時に動作（通電）されるもので、例えば９０５Ｗの出力が可能なものである。底保温ヒータ３５は、保温処理時に動作されるもので、例えば６５Ｗの出力が可能なものである。これらヒータ３４，３５は、中央に貫通孔３６ａを備えたマイカ板３６にニクロム線３７（電熱線）を巻回したものである。絶縁板３８は、中央に貫通孔３８ａを備えたマイカ板である。ヒータカバー３９は金属（アルミ）製であり、内部のヒータ３４，３５の発熱を平均化して容器底体２４に供給する放熱板の役割をなすもので、ヒータ取付部３１より僅かに小さい形状をなすベース板部４０と、折り曲げにより該ベース板部４０と略同形状をなす３枚の折曲板部４１ａ，４１ｂ，４１ｃとを備えている。そして、この底ヒータユニット３３は、ヒータ取付部３１に収容するように配設され、その表面（底側）が金属製の被覆部材４２によって離脱不可能に接合されている。
【００２５】
前記胴ヒータユニット４３は、図３に示すように、矩形（バンド）状をなす胴沸騰ヒータ４４と、平面視Ｃ字形状をなす保持枠４７と、胴沸騰ヒータ４４を保護する保護部材５１とを備えている。胴沸騰ヒータ４４は、沸騰処理時に動作されるもので、例えば底沸騰ヒータ３４と合わせて１２００Ｗとなるように２９５Ｗの出力が可能なものである。この胴沸騰ヒータ４４は、板状をなすマイカ板４５に対して螺旋状をなすようにニクロム線４６（電熱線）を巻回したものである。保持枠４７は、金属（アルミ）製であり、放熱板の役割をなすもので、内面部４８と外面上枠部４９と外面下枠部５０とを備えた断面略Ｃ字形状をなす。保護部材５１は、金属（鉄）製であり、容器胴体２３の外形より僅かに小さい直径のものである。この保護部材５１の両端には、先端縁からＵ字形状をなすように打ち抜いたネジ挿通溝５２ａを有する被締付部５２Ａ，５２Ｂが外向きに突出するように設けられている。また、保護部材５１には、内側に位置する胴沸騰ヒータ４４の接続部４６ａを露出させる露出孔５３が設けられている。
【００２６】
前記胴ヒータユニット４３は、図４および図５に示すように、容器２２の側部下端に固定金具５４によってネジ締めされることにより装着される。この固定金具５４は、図６に示すように、一対の板状部材５５，６０からなる。第１板状部材５５は、ネジを挿通する挿通孔５６ａを有する挿通部５６と、該挿通部５６の外端縁から屈曲したカバー部５７とを有する平面視Ｌ字形状のものである。挿通部５６の内端縁には、一対の突片５８が内向きに突出するように設けられている。また、挿通部５６の外面には、座金板５９が固着されている。第２板状部材６０は、挿通部５６と同一形状をなす長方形状のものである。この第２板状部材６０には、ネジ７１を締め付けるためのネジ孔６１が設けられている。また、第１板状部材５５と同様に、内端縁には一対の突片６２が内向きに突出するように設けられている。
【００２７】
そして、本実施形態では、図４および図５に示すように、前記固定金具５４に、胴ヒータユニット４３の表面に該胴ヒータユニット４３および前記底ヒータユニット３３の異常加熱を防止する温度ヒューズ８０Ａを配設するための取付金具６３が、共締めにより一体的に取り付けられている。この取付金具６３は、図６に示すように、温度ヒューズ８０Ａを保持するもので、弾性を有する金属（ステンレス）板からなる。この取付金具６３は、温度ヒューズ８０Ａを保持する保持部６４と、固定金具５４に対して固定するための取付部６９とを備えている。保持部６４は、容器２２の外形より小さい曲率で湾曲し、かつ、保護部材５１の一方の被締付部５２Ａから露出孔５３までの寸法より短尺な湾曲板部６５を備えている。そして、この湾曲板部６５の先端両側縁には、同一の湾曲方向で、かつ、温度ヒューズ８０Ａの外形より小さい曲率で湾曲する一対の保持片６６，６６が設けられている。また、これら保持片６６の先端には、温度ヒューズ８０Ａを差し込んで保持させるための屈曲部６７が設けられている。さらに、これら保持片６６，６６の中間位置には、温度ヒューズ８０Ａが外向きに変形して胴ヒータユニット４３の表面から離反することを防止するために、同一曲率で湾曲した押圧片６８が設けられている。取付部６９は、湾曲板部６５において保持片６６と逆側の端縁から、該湾曲板部６５の略径方向外向きに突出するように屈曲されたものである。この取付部６９には、保護部材５１のネジ挿通溝５２ａと同様に、先端縁からＵ字形状をなすように打ち抜いたネジ挿通溝７０が設けられている。
【００２８】
前記取付金具６３は、容器２２の側部の所定位置に胴ヒータユニット４３を位置決めした状態で、被締付部５２Ａに対して取付部６９が重畳するように位置決めする。そして、一対の板状部材５５，６０に対してネジ７１を仮締めした状態の固定金具５４を外側から配置し、ネジ７１を各挿通溝５２ａ，７０に挿通させる。この状態でネジ７１を締め付ける。これにより、一対の被締付部５２Ａ，５２Ｂを近接させ、内側に位置する胴沸騰ヒータ４４および保持枠４７を一緒に容器２２の側部を圧接することにより、胴ヒータユニット４３を容器２２に対して固定する。また、同時に、取付金具６３の取付部６９が締め付けられることにより、保護部材５１に保持片６６が当接した曲率が小さい湾曲板部６５が外向きに弾性的に変形した状態で取り付けられる。これにより、保持部６４に保持させた温度ヒューズ８０Ａが、胴沸騰ヒータ４４を被覆（保護）している保護部材５１に向けて弾性的に付勢される。また、保持部６４に保持された温度ヒューズ８０Ａは、保持部６４の寸法設定により、保護部材５１における胴沸騰ヒータ４４が配設されていない部分、即ち、胴沸騰ヒータ４４を構成するニクロム線４６上に位置しないように配設される。
【００２９】
このように構成した電気ポットには、図１に示すように、容器２２を介して内部の水温を検出するための温度検出手段であるサーミスタ７２が、底ヒータユニット３３を貫通してセンサ配設部３２に接触するように配設されている。また、容器２２と外装体１０の底との間には、容器２２の底を覆うように底遮熱部材７３が配設され、制御基板ケース７４に対する底ヒータユニット３３の熱を遮断するように構成している。さらに、容器２２と外装体１０の側部との間には、容器胴体２３を覆うように胴遮熱部材７５が配設され、揚水管２８などの近接した樹脂製品に対する胴ヒータユニット４３の熱を遮断するように構成している。
【００３０】
また、制御基板ケース７４内には、電源ユニットを含む制御基板７６が配設され、この制御基板７６に実装した制御手段であるマイコン７７により、予め記憶されたプログラムに従って沸騰処理、再沸騰処理および保温処理が実行される。具体的には、このマイコン７７は、図７に示すように、ユーザが電源コードを商用電源７９に接続したことを検出すると、または、サーミスタ７２によって保温処理中にユーザが水を継ぎ足すことにより１０℃以上の温度低下を検出すると、沸騰処理を実行した後、続いて保温処理を実行する。また、操作パネル部１９のスイッチ操作に従って再沸騰処理を実行し、続いて保温処理を実行する。さらに、スイッチ操作に従って給湯ポンプ２６を動作させて給湯処理を実行する。なお、商用電源７９からの交流電力は、図示しない電源ユニットによって直流電力に整流および変換されて各構成部品に供給されることは言うまでもない。
【００３１】
また、再沸騰を含む沸騰処理は、切換手段であるリレー７８Ａにオン信号を出力することにより、前記沸騰ヒータ３４，４４に対して商用電源７９からの電力を通電させて実行する。また、保温処理は、同様にリレー７８Ｂにオン信号を出力することにより、底保温ヒータ３５に対して商用電源７９からの電力を通電させて実行する。
【００３２】
そして、本実施形態では、リレー７８Ａ，７８Ｂと商用電源７９との間には、一対の温度ヒューズ８０Ａ，８０Ｂが介設されている。即ち、これらの温度ヒューズ８０Ａ，８０Ｂは、リレー７８Ａを分岐接続部として並列に接続した底沸騰ヒータ３４と胴沸騰ヒータ４４において前記分岐接続部の上流側、かつ、並列に接続に接続した沸騰ヒータ３４，４４および底保温ヒータ３５の分岐接続部の上流側に介設されている。なお、一方の温度ヒューズ８０Ａは、取付金具６３によって胴ヒータユニット４３の表面に位置するように配設されるものである。また、他方の温度ヒューズ８０Ｂは、底ヒータユニット３３の表面に位置するように配設されるものである。そして、本実施形態では、胴沸騰ヒータ４４は定格電力が２９５Ｗに構成され、底沸騰ヒータ３４は定格電力が９０５Ｗに構成されているため、各温度ヒューズ８０Ａ，８０Ｂは、温度ヒューズ８０Ａが温度ヒューズ８０Ｂより容量が小さいものを適用している。
【００３３】
このように構成した電気ポットは、底沸騰ヒータ３４と胴沸騰ヒータ４４とが非断線状態で沸騰処理または再沸騰処理を実行した場合には、両方の沸騰ヒータ３４，４４の熱が、合わさって温度ヒューズ８０Ａ，８０Ｂに伝熱される。具体的には、温度ヒューズ８０Ａには、胴沸騰ヒータ４４の熱が保護部材５１を介して伝熱されるとともに、底沸騰ヒータ３４の熱が容器２２、保持枠４７および保護部材５１を介して伝熱される。また、温度ヒューズ８０Ｂには、底沸騰ヒータ３４の熱が底保温ヒータ３５、絶縁板３８、ヒータカバー３９および被覆部材４２を介して伝熱されるとともに、胴沸騰ヒータ４４の熱が容器２２、ヒータカバー３９および被覆部材４２を介して伝熱される。
【００３４】
この状態で、マイコン７７が故障するなどの原因で沸騰ヒータ３４，４４が異常加熱した場合には、両方の沸騰ヒータ３４，４４の熱で容量が小さい温度ヒューズ８０Ａが溶損する。これにより、商用電源７９から電力供給が遮断されるため、両方の沸騰ヒータ３４，４４が加熱不可能となる。
【００３５】
また、底沸騰ヒータ３４が断線した状態で異常加熱が発生した場合には、胴沸騰ヒータ４４が加熱され続けることによる過熱で温度ヒューズ８０Ａが溶損され、胴沸騰ヒータ４４が加熱不可能となる。
【００３６】
さらに、胴沸騰ヒータ４４が断線した状態で異常加熱が発生した場合には、底沸騰ヒータ３４が加熱され続けることによる過熱で温度ヒューズ８０Ｂが溶損され、底沸騰ヒータ３４が加熱不可能となる。そして、温度ヒューズ８０Ｂが何らかの原因で溶損（遮断）しなかった場合には、底沸騰ヒータ３４が加熱され続けることによる過熱が、容器２２、保持枠４７および保護部材５１を介して容量が小さい温度ヒューズ８０Ａに伝熱されることにより、該温度ヒューズ８０Ａが溶損し、底沸騰ヒータ３４が加熱不可能となる。
【００３７】
このように、本発明の加熱機器によれば、並列に接続した底沸騰ヒータ３４と胴沸騰ヒータ４４とが異常加熱状態になると、温度ヒューズ８０Ａ，８０Ｂにより確実に加熱不可能な状態とすることが可能である。具体的には、全ての沸騰ヒータ３４，４４が正常な場合には、胴側の温度ヒューズ８０Ａにより異常加熱を防止できる。また、底沸騰ヒータ３４に異常（断線）が生じている場合には、同様に胴側の温度ヒューズ８０Ａにより異常加熱を防止できる。さらに、胴沸騰ヒータ４４に異常が生じている場合には、基本的には底側の温度ヒューズ８０Ｂにより異常加熱を防止し、この温度ヒューズ８０Ｂに異常が生じている場合でも、確実に胴側の温度ヒューズ８０Ａで異常加熱を防止できる。即ち、１個の温度ヒューズ８０Ａで確実に異常加熱を防止できるため、温度ヒューズの設置数を削減でき、コストダウンを図ることができる。言い換えれば、底側の温度ヒューズ８０Ｂは、安全性に鑑みて迅速に異常加熱を停止するには必要であるが、必ずしも設ける必要はない。
【００３８】
また、前記実施形態では、温度ヒューズ８０Ａを胴沸騰ヒータ４４を構成するニクロム線４６上に位置しないように配設しているため、該胴沸騰ヒータ４４の熱を直接受けることはない。よって、確実に異常加熱時のみ、温度ヒューズ８０Ａを溶断させることができる。
【００３９】
さらに、温度ヒューズ８０Ａは、取付金具６３に保持させた状態で、胴ヒータユニット４３を固定するための固定金具５４によって一体的に取り付けられるため、取付作業性を向上できる。しかも、この取付金具６３は弾性を有する金属板からなり、取付状態では、温度ヒューズ８０Ａを胴沸騰ヒータ４４に向けて弾性的に付勢するように構成しているため、胴沸騰ヒータ４４の熱は勿論、容器を介して底沸騰ヒータ３４の熱を確実に温度ヒューズ８０Ａで検出することができる。
【００４０】
なお、本発明の加熱機器は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【００４１】
例えば、前記実施形態では、温度ヒューズ８０Ａは、取付金具６３によって胴沸騰ヒータ４４が配設されていない部分に位置するように配設したが、図４において隣接するニクロム線４６，４６間に位置するように配設してもよい。
【００４２】
また、前記実施形態では、胴ヒータ４４を増設する機器として電気ポットを例に挙げて説明したが、加湿器や炊飯器など、容器２２にヒータを取り付ける加熱機器であればいずれでも適用可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【００４３】
【図１】本発明の実施形態に係る加熱機器である電気ポットを示す断面図である。
【図２】容器の底に配設するヒータを示す分解斜視図である。
【図３】容器の側部に配設するヒータを示す分解斜視図である。
【図４】容器に胴ヒータを配設した状態を示す正面図である。
【図５】図４の部分拡大底面図である。
【図６】図４の部分拡大分解斜視図である。
【図７】電気ポットの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【００４４】
１０…外装体
２２…容器
３３…底ヒータユニット
３４…底沸騰ヒータ
３５…底保温ヒータ
４３…胴ヒータユニット
４４…胴沸騰ヒータ
４７…保持枠
５１…保護部材
５４…固定金具
６３…取付金具
６４…保持部
６９…取付部
７８Ａ，７８Ｂ…リレー
８０Ａ，８０Ｂ…温度ヒューズ
【特許請求の範囲】
【請求項１】
外装体の内部に被加熱物を収容する容器を配設し、該容器に内部の被加熱物を加熱する加熱手段を配設した加熱機器において、
前記加熱手段として、前記容器の底に底ヒータと、前記容器の側部に前記底ヒータと並列に接続した胴ヒータとを配設するとともに、
並列接続した前記底ヒータと胴ヒータとの分岐接続部の上流側に、該胴ヒータおよび前記底ヒータの異常加熱を防止する温度ヒューズを介設し、該温度ヒューズを、前記胴ヒータの表面に配設したことを特徴とする加熱機器。
【請求項２】
前記温度ヒューズを、前記胴ヒータを構成する電熱線上に位置しないように配設したことを特徴とする請求項１に記載の加熱機器。
【請求項３】
前記温度ヒューズを保持する取付金具を設け、該取付金具を、前記胴ヒータを前記容器に固定する固定金具に対してネジにより一体的に締め付けて取り付けるようにしたことを特徴とする請求項１または請求項２に記載の加熱機器。
【請求項４】
前記取付金具は弾性を有する金属板からなり、前記温度ヒューズを保持する保持部と、前記固定金具に対して固定するための取付部とを備え、前記保持部を、前記固定金具に対する取付状態で、前記胴ヒータに向けて弾性的に付勢するようにしたことを特徴とする請求項３に記載の加熱機器。
【請求項１】
外装体の内部に被加熱物を収容する容器を配設し、該容器に内部の被加熱物を加熱する加熱手段を配設した加熱機器において、
前記加熱手段として、前記容器の底に底ヒータと、前記容器の側部に前記底ヒータと並列に接続した胴ヒータとを配設するとともに、
並列接続した前記底ヒータと胴ヒータとの分岐接続部の上流側に、該胴ヒータおよび前記底ヒータの異常加熱を防止する温度ヒューズを介設し、該温度ヒューズを、前記胴ヒータの表面に配設したことを特徴とする加熱機器。
【請求項２】
前記温度ヒューズを、前記胴ヒータを構成する電熱線上に位置しないように配設したことを特徴とする請求項１に記載の加熱機器。
【請求項３】
前記温度ヒューズを保持する取付金具を設け、該取付金具を、前記胴ヒータを前記容器に固定する固定金具に対してネジにより一体的に締め付けて取り付けるようにしたことを特徴とする請求項１または請求項２に記載の加熱機器。
【請求項４】
前記取付金具は弾性を有する金属板からなり、前記温度ヒューズを保持する保持部と、前記固定金具に対して固定するための取付部とを備え、前記保持部を、前記固定金具に対する取付状態で、前記胴ヒータに向けて弾性的に付勢するようにしたことを特徴とする請求項３に記載の加熱機器。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【公開番号】特開２００９−２７９３１５（Ｐ２００９−２７９３１５Ａ）
【公開日】平成２１年１２月３日（２００９．１２．３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−１３６５９１（Ｐ２００８−１３６５９１）
【出願日】平成２０年５月２６日（２００８．５．２６）
【出願人】（０００００２４７３）象印マホービン株式会社 (440)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年１２月３日（２００９．１２．３）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年５月２６日（２００８．５．２６）
【出願人】（０００００２４７３）象印マホービン株式会社 (440)
【Ｆターム（参考）】
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