加熱機能付き弁当装置
【課題】持ち運びに便利で使い勝手のよい加熱機能付き弁当装置を提供する。
【解決手段】調理物を入れる収納部を有する弁当装置10であって、重ねて配置され、周囲が密閉された上ケース17及び下ケース18と、上ケース17及び下ケース18との間に形成された空間部37に充填された潜熱蓄熱材39と、空間部37にあって、潜熱蓄熱材39に衝撃を与えて発熱を誘発する発熱トリガー部材38とを有する。
【解決手段】調理物を入れる収納部を有する弁当装置10であって、重ねて配置され、周囲が密閉された上ケース17及び下ケース18と、上ケース17及び下ケース18との間に形成された空間部37に充填された潜熱蓄熱材39と、空間部37にあって、潜熱蓄熱材39に衝撃を与えて発熱を誘発する発熱トリガー部材38とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食事の前に調理物を収納している収納部を加熱して、食事の際に温かい調理物を提供する加熱機能付き弁当装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弁当を食する場合、調理時刻と食事時刻が大きくずれているため、調理物は冷えた状態となっているのが一般的である。このため、弁当を食する前に、電子レンジで弁当を加熱することが一般的に行われている。
【0003】
しかし、野外などで電気が来ていないところでは電子レンジは使用できないために、弁当箱(弁当装置)の底部に酢酸ナトリウム水溶液が密閉された加熱バッグを配置したものがある。そして、弁当箱の弁当容器に収納された調理物を、加熱したい時に酢酸ナトリウム水溶液に衝撃を与えて発熱を誘発することにより発熱させて加熱して保温させていた。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3145971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている弁当箱は以下のような問題点があった。
特許文献1では、弁当箱の底部に加熱バッグを配置して、その上に置かれた弁当容器に収納された調理物を加熱するので、弁当容器の底面のみからしか調理物に熱を伝導することができず、調理物には十分熱が伝わり難かった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、食事の前に調理物を収納している収納部を加熱して、食事の際に温かい調理物を食することが可能な加熱機能付き弁当装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る加熱機能付き弁当装置は、調理物を入れる収納部を有する弁当装置であって、重ねて配置され、周囲が密閉された上ケース及び下ケースと、前記上ケース及び前記下ケースとの間に形成された空間部に充填された潜熱蓄熱材と、前記空間部にあって、前記潜熱蓄熱材に衝撃を与えて発熱を誘発する発熱トリガー部材とを有する。
【0007】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記収納部は、前記空間部が分けられて、前記潜熱蓄熱材によって加熱可能な第1の収納部と、前記潜熱蓄熱材によって非加熱の第2の収納部とを有していることが好ましい。
【0008】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記下ケースの内面にはスペーサとなる凸部が分散配置され該凸部が前記上ケースの外面に当接していることが好ましい。
【0009】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記上ケースと前記下ケースとの間にスペーサ部材が配置されているのが好ましい。
【0010】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記上ケース及び前記下ケースはそれぞれ周縁部を有し、該周縁部が熱溶着されているが好ましい。
【0011】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記潜熱蓄熱材に対して前記上ケースは前記下ケースより総合熱伝達率が大きいことが好ましい。
【0012】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記発熱トリガー部材は、円形又は角形の金属片からなって中央に押圧可能でかつ元の状態に復帰可能な微小突出部を有して、前記空間部の一領域に配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記潜熱蓄熱材は、酢酸ナトリウム、酢酸鉛、酢酸カルシウム四水和物、ピロリン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム及びトリメチロールエタン水和物のうちの1つからなる水溶液であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記上ケースに被さる蓋を有することが好ましい。
【0015】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、一体となった前記上ケースと前記下ケースを入れる収納ケースと、該収納ケースのケース蓋とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置は、上ケースと下ケースを重ね合わせて密閉した空間部に潜熱蓄熱材が封入されているので、収納部に入れた調理物を収納部の底面や側面から温めることができ、効率よく迅速に調理物を加熱できる。
【0017】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、加熱可能な第1の収納部と非加熱の第2の収納部を有している場合、加熱する調理物と、加熱しない調理物を混在して一つの弁当容器に盛ることができる。
【0018】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、下ケースの内面にスペーサとなる凸部が分散配置され、凸部が上ケースの外面に当接している場合、上ケースと下ケースの間に空間部を確実に確保できる。また凸部の高さを変えることで、潜熱蓄熱材の量を容易に増減させ加熱能力を変更することができる。
【0019】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、上ケースと下ケースとの間にスペーサ部材を配置する場合、スペーサ部材の配置だけで空間部が形成でき、上ケースと下ケースを同一形状とすることができるので、金型が共通化でき弁当装置の製造を容易にすることができる。
【0020】
そして、本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、上ケース及び下ケースがそれぞれ周縁部を有し、周縁部が熱溶着されている場合、容易に密封構造が達成できる。
【0021】
そして、本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、上ケースが下ケースより総合熱伝導率が大きい場合、上ケースの収納部内の調理物に迅速に熱を伝えることができ、調理物を迅速に加熱し保温することができる。
【0022】
そして、本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、発熱トリガー部材が、円形又は角形の金属片からなって中央に押圧可能でかつ元の状態に復帰可能な微小突出部を有して、空間部の一領域に配置されている場合、潜熱蓄熱部材に物理的衝撃を簡単な操作で加えることができ、弁当の加熱を容易に開始することができる。
【0023】
そして、本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、潜熱蓄熱材が、酢酸ナトリウム、酢酸鉛、酢酸カルシウム四水和物、ピロリン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム及びトリメチロールエタン水和物のうちの1つからなる水溶液である場合、最適な加熱温度がある調理物に応じた最適な潜熱蓄熱材を選択できる。
【0024】
そして、本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、上ケースに被さる蓋を有する場合、持ち運びが可能で加熱及び保温が達成できる。
【0025】
そして、本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、一体となった上ケースと下ケースを入れる収納ケースと、収納ケースのケース蓋とを有する場合、潜熱蓄熱材の放熱が収納ケースとケース蓋により抑えられ加熱及び保温の性能が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置を示す説明図である。
【図2】同加熱機能付き弁当装置の上ケースの平面図である。
【図3】同加熱機能付き弁当装置の下ケースの平面図である。
【図4】(A)は図2に示す上ケースのA−A断面図と図3に示す下ケースのC−C断面図であり、(B)は(A)に示す上ケースと下ケースを重ねた後の断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置を示す説明図である。
【図6】(A)、(B)はそれぞれ同加熱機能付き弁当装置の上ケースと下ケースを重ねる前及び重ねた後の断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置のスペーサ部材の説明図である。
【図8】(A)は同加熱機能付き弁当装置の上ケースの断面図と図7に示す下ケースのE−E断面図であり、(B)は(A)に示す上ケースと下ケースを重ねた後の断面図である。
【図9】同加熱機能付き弁当装置の上ケースと下ケースを重ねた状態における図7のF−F断面図である
【図10】(A)、(B)は発熱トリガー部材の説明図である。
【図11】発熱トリガー部材の収納状態を示す説明図であって、(A)は図2の上ケースのB−B断面と図3の下ケースのD−D断面を示し、(B)は(A)の上ケースと下ケースを重ねた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1〜図4に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置10は、調理物を入れる収納部を有する弁当装置であって、重ねて配置され、周囲が密閉された上ケース17及び下ケース18と、上ケース17及び下ケース18との間に形成された空間部37に充填された潜熱蓄熱材39と、空間部37にあって、潜熱蓄熱材39に衝撃を与えて発熱を誘発する発熱トリガー部材38(図11参照)とを有する。以下、詳細に説明する。
【0028】
加熱機能付き弁当装置10は、更に、図1に示すように、一体となった上ケース17と下ケース18からなる弁当容器11を入れる収納ケース12と、収納ケース12のケース蓋13とを有している。
弁当容器11を入れる収納ケース12は、煮沸に耐えられる耐熱性を有するプラスチック、例えばABS樹脂、プロピルピレンで形成され、弁当容器11が収納された際に、弁当容器11の側部を保護する周壁部26と、弁当容器11の底部を保護する底保護部27を有している。
【0029】
ケース蓋13は、煮沸に耐えられる耐熱性を有するプラスチック、例えばABS樹脂で形成され、弁当容器11が収納された収納ケース12に被さって、弁当容器11の収納部に収納された米飯やおかず等の調理物を覆っている。そして、ケース蓋13は、ケース蓋13が収納ケース12に被さった際に、収納部の各開口の上方を一体で覆う天板部材16と、天板部材16の縁部に下方に向けて立設され、収納ケース12の周壁部26外面の上部側領域を覆う側壁部材14とを有している。
【0030】
弁当容器11は、上ケース17及び下ケース18が重ね合わせられ形成されている。そして、上ケース17及び下ケース18はそれぞれ煮沸に耐えられる耐熱性を有するプラスチック、例えば、ABS樹脂、プロピルピレン等を用いて形成される。ここでは、上ケース17及び下ケース18は厚みが0.1〜0.3mmの樹脂シートを用いて形成されている。弁当容器11の収納部は、上ケース19の内面(上面)に形成され米飯等を収納する米飯収納部19と、おかず等を収納するおかず収納部20を備えている。また、おかず収納部20は、複数、例えば、4つの収納区画21、22、23、24に分割されている。そして、弁当容器11の隅部にトリガーカバー部25が形成されている。
【0031】
そして、弁当容器11の上ケース17に設けられた大きさの異なる米飯収納部19、おかずの収納区画21、22、23、24はそれぞれ、図2に示すように、逆四角錐形状の頂点部が切り取られた形状(載頭四角錐体状)であって、上ケース基準面15より下方に向かって形成されている。更に、上ケース17の下方に置かれる発熱トリガー部材38を保護するトリガーカバー部25は、逆円錐形状の頂点部が切り取られた形状(載頭四角錐体状)で上ケース基準面15より下方に向かって形成されている。そして、上ケース17の外周には、周縁部28が設けられている。
【0032】
また、弁当容器11の下ケース18は、図3に示すように、上ケース17の米飯収納部19と、おかず収納部20がそれぞれ被われるような逆四角錐形状の頂点部が切り取られた形状である米飯保護部29、おかず保護部30にある同様の形状である保護区画31、32、33、34が下ケース基準面36より下方に向かって形成され、更に、トリガーカバー部25との間の空間部37に発熱トリガー部材38を収納するために逆円錐形状の頂点部が切り取られた形状であるトリガー保護部35が下ケース基準面36より下方に向かって形成されている。そして、下ケース18の外周にも、周縁部40が設けられている。また、下ケース基準面36には、上方に向かって第1の凸部41が設けられ、米飯保護部29、おかず保護部30の保護区画31、32、33、34の底面にも上方に向かって第2の凸部42が設けられている。
【0033】
そして、弁当容器11は、図4(A)、(B)に示すように、上ケース17と下ケース18が重ね合わされて形成されており、上ケース17と下ケース18の間に空間部37が設けられている。この空間部37は、下ケース18の内面(上面)に設けられたスペーサとなる第1、第2の凸部41、42の高さに応じて、1〜4mm程度の間隔の隙間が確保できるようになっており、空間部37は、下ケース18に設けられた第1、第2の凸部41、42が上ケース17の外面(下面)に当接することにより、上ケース17と下ケース18の空間部37の隙間が決められる。ここでは、凸部41、42の高さは2mm程度である。
【0034】
更に、空間部37には、酢酸ナトリウム水溶液である潜熱蓄熱材39が密封され、上ケース17の周縁部28と下ケース18の周縁部40は、互いの周縁部が全周にわたって熱溶着されている。
ここで熱溶着は、2つの熱可塑性樹脂部材の接合したい面を熱板(加熱した金属板)に直接接触させ、樹脂部材を溶融させた後、2つの溶融した面を直ちに合わせ、冷却するまで圧力で押しつけ接合することにより行われる。
【0035】
また、図11に示すように、空間部37の一領域にトリガーカバー部25とトリガー保護部35で囲まれて形成されるトリガー収容部49が設けられている。ここでは、潜熱蓄熱材39として、酢酸ナトリウム水溶液が使用される。酢酸ナトリウム水溶液は、1L当たりの蓄熱量は264kJあり、35〜60℃の範囲で発熱可能である。また、他の潜熱蓄熱材としては、硫酸ナトリウム水溶液も1L当たりの蓄熱量は251kJあり、10〜35℃の範囲で発熱可能なので低い温度の加熱用途に適している。潜熱蓄熱材を使い分けることで、加熱する温度を変更することができる。更に、同様の潜熱蓄熱材として、酢酸鉛、酢酸カルシウム四水和物、ピロリン酸ナトリウム、トリメチロールエタン水和物の水溶液も用途に応じて使用できる。
【0036】
また、熱を効率よく調理物に伝えるために、上ケース17は下ケース18より総合熱伝達率が大きい方がよい。熱の伝わり方は、伝導、対流、放射などがあるが、ここでは、総合熱伝達率Aは、固体表面積Sと固体温度T1、周囲流体温度T2、熱移動量Qを用いて下記式(1)で表される。
A=Q/{(T1−T2)×S}・・・(1)
(A:総合熱伝達率W/m2・℃、Q:熱移動量W、T1:固体温度℃、T2:周囲流体温度℃、S:固体表面積m2)
この総合熱伝達率Aは、対流熱伝達率AC+放射熱伝達率ARで表される。この総合熱伝達率Aの値が大きくなる方が熱がよく伝わる。
例えば、上ケース17を、薄い金属材(例えばアルミ)で構成したり、高熱伝導性のフィラー(窒化ホウ素、黒鉛、銅、アルミ)が結合された充填剤が添加された樹脂で構成すれば、通常の樹脂に比べて熱伝導率が数十倍になる。
【0037】
また、同じ樹脂材料を使って、上ケース17を薄くして、下ケース18を厚くすることによっても、上ケース17は下ケース18より総合熱伝達率を大きくすることができる。また、収納部の底面や壁面を細かい波型や凹凸にすることで表面積Sを増加させ熱の伝導を良くすることができる。
このように、上ケース17を下ケース18より熱を伝わり易くすることによって、上ケース17に収納された調理物を迅速に加熱でき、下ケース18側には熱が伝わり難くなる。また、下ケース18を熱伝導率の低い独立気泡発泡プラスチック等を使用して、下方に熱を伝わり難くしてもよい。
【0038】
トリガー収容部49に収納された発熱トリガー部材38は、円形又は角形の金属片、例えば鋼で形成されており、図10(A)に示すように、直径が10mm〜30mm程度で、且つ板厚が0.5mm〜1mm程度のドーム状に形成されている。そして、発熱トリガー部材38の中央に形成される微小突出部44を押圧すると、外部からの負荷を受けて、一側(上方)に張出した状態から、図10(B)に示すように、他側(下方)に張出した状態に瞬時に変化する。また、図10(B)に示す他側に張出した状態の微小突出部44を押圧する外部からの荷重を負荷すると、他側に張出した状態から、図10(A)に示す一側に張出した状態に瞬時に変化し、発熱トリガー部材38の微小突出部44は、外部から微小突出部44に負荷する荷重の方向に応じて張出し状態を変化させることができる。
【0039】
従って、微小突出部44の張出し状態が瞬時に変化する際に、微小突出部44の周囲の酢酸ナトリウム水溶液に物理的衝撃を加えることができる。そして、トリガー収納部49は空間部37の一領域にあるので、微小突出部44の周囲の酢酸ナトリウム水溶液に加えられた物理的衝撃は、空間部37内の酢酸ナトリウム水溶液全体に伝播し、弁当容器11内の酢酸ナトリウム水溶液に発熱を開始させることができる。なお、図11(A)、(B)に示すように、発熱トリガー部材38は、上ケース17のトリガーカバー部25の外面と、下ケース18のトリガー保護部35の底面との間の空間部37に収納される。これは、発熱トリガー部材38をトリガーカバー部25とトリガー保護部35で挟んで配置することにより、発熱トリガー部材38を位置決めするためである。
【0040】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置10の使用方法について説明する。
先ず、弁当容器11を煮沸して、弁当容器11内の酢酸ナトリウム水溶液を完全に溶解させる。そして、弁当容器11を、例えば10℃以下に徐冷して、弁当容器11内の酢酸ナトリウム水溶液を過飽和状態にする。このとき、弁当容器11内には酢酸ナトリウム39が析出していないため、酢酸ナトリウム水溶液は過冷却状態にもなっている。
次いで、過飽和状態(過冷却状態)の弁当容器11において、米飯収納部19に米飯を、おかず収納部20におかずをそれぞれ収納して、収納ケース12に収容する。そして、弁当容器11が収納された収納ケース12にケース蓋13を被せる。これにより、加熱機能付き弁当装置10は搬送することが可能になる。
【0041】
弁当を食する場合、ケース蓋13を開けて、トリガー収納部49内に収容されている発熱トリガー部材38の微小突出部44に外部から荷重を負荷して張出し状態を瞬時に変化させる。微小突出部44の張出し状態が瞬時に変化する際に、微小突出部44周囲の酢酸ナトリウム水溶液は物理的衝撃を加えられ、トリガー収納部49は空間部37の一領域にあるため、微小突出部44の周囲の酢酸ナトリウム水溶液に加えられた物理的衝撃は、弁当容器11内の酢酸ナトリウム水溶液に伝播する。これにより、過冷却状態の酢酸ナトリウム水溶液において凝固が開始され、凝固熱が発生する。
【0042】
ここで、弁当容器11内で発生した凝固熱を米飯収納部19やおかず収納部20に効率的に伝えて米飯やおかずを加熱することができると共に、ケース蓋13をして保温も行うことができる。なお、弁当容器11の下ケース18は、熱の伝わり難い材質にしたり、収納ケース12の底部に上向きに凸部(図示せず)を分散配置して、弁当容器11の底部が収納ケース12の底部に密接するのを防止して、弁当容器11の底部から収納ケース12の底部に熱が伝達されるのを抑制してもよい。更に、収納ケース12の底部に断熱部材(図示せず)を配置して収納ケース12の底から熱が逃げるのを抑制してもよい。
【0043】
弁当容器11内の空間部37に、酢酸ナトリウム水溶液が収納されているので、米飯収納部19やおかず収納部20の収納区画21、22、23、24において、収納部19や収納区画21、22、23、24の底面や側面から直接に米飯やおかずを加熱することができ、迅速な加熱が実現できる。
【0044】
弁当を食する場合、弁当容器11は、収納ケース12内に収納した状態とすることができる。このため、弁当容器11を、収納ケース12、及びケース蓋13と共に回収することができ、弁当容器11は、収納ケース12、及びケース蓋13と共に煮沸消毒することで、弁当容器11内の酢酸ナトリウム39を完全に溶解させることができる。そして、弁当容器11を徐冷することで弁当容器11内の酢酸ナトリウム水溶液を過飽和状態(過冷却状態)にすることができ、弁当容器11の再使用が可能になる。
【0045】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置60について、図5、図6(A)(B)を用いて説明する。
加熱機能付き弁当装置60は、図5に示すように、一体となった上ケース67と下ケース68からなる弁当容器61と、蓋50とを有している。なお、第1の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置10と同一の構成部材には同一の名称を付けて詳細な説明は省略する(以下の実施の形態においても同じ)。
ここで、蓋50は、耐熱性を有するプラスチック、例えばABS樹脂で形成され、弁当容器61の上ケース67に被さって、米飯収納部54に収納された米飯及びおかず収納部55に収納されたおかずを覆っている。そして、おかず収納部55は、4つの収納区画56、57、58、59に分割されている。上ケース67の隅部にトリガーカバー部53が形成されている。
【0046】
そして、蓋50は、弁当容器61に被さった際に、米飯収納部54及びおかず収納部55の各開口の上方を一体で覆う天板部材52と、天板部材52の縁部に下方に向けて立設され、上ケース67の周縁部に当接して上部側領域を覆う側壁部材51とを有している。このため、蓋50を上ケース67に被せた場合、側壁部材51は上ケース67の上部側領域を覆った状態となる。
【0047】
また、上ケース67は、本発明の第1の実施の形態の上ケース17と同一形状及び同一構成なので詳細な説明は省くが、下ケース68は、下ケース18とは、米飯保護部29、おかず保護部30の保護区画31、32、33、34を有しない点で異なる。下ケース68は、下ケース基準面66より、下方に向かって形成されている大きな1つの逆四角錐形状の頂点部が切り取られた形状(載頭四角錐体状)で弁当保護部43が形成されている。弁当保護部43には、上ケース67の米飯収納部54、おかず収納部55の収納区画56、57、58、59が収納される。
【0048】
また、下ケース基準面66には、第1の凸部62が設けられ、弁当保護部43の底面には第2の凸部63が設けられている。このようにして、潜熱蓄熱材39の量を増加することが可能になり、発熱量を増加することができる。また、上ケース67の米飯収納部54、おかず収納部55の収納区画56、57、58、59の側面からの発熱量を大幅に増加することで、側面から強力に迅速な調理物の加熱が達成できる。
【0049】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置60の使用方法について説明する。本発明の第2の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置60は、弁当容器61と蓋50とで構成される。第1の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置10と比較して、弁当容器61の空間部65が大きくなって潜熱蓄熱材39の量を多く注入できる。
【0050】
弁当容器61は、空間部65に酢酸ナトリウム水溶液を多く注入することができるので加熱量を多く必要とする調理物に使用する用途に適している。ここで、弁当容器61は、米飯収納部54内に収容されている米飯及びおかず収納部55に収容されているおかずの温度を、40〜60℃まで加熱するのに必要な熱を発生させる必要があるので、米飯及びおかずの量に応じて、この熱量を賄うのに必要な量の酢酸ナトリウム水溶液が注入できるような空間部65が得られるようにしている。
【0051】
本発明の第3の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置について、図7、図8、図9を用いて説明する。
第3の実施の形態では、上ケース77と下ケース78は同一形状及び同一構成のケースを使用する。また、上ケース77と下ケース78は第1の実施の形態で説明した上ケース17を使用する。上ケース77には米飯収納部79、おかず収納部80の収納区画81、82、83、84が設けられている。また、下ケース78には米飯保護部89、おかず保護部90の保護区画91、92、93、94が設けられているが、上ケース77と下ケース78が同一形状なので、これらも当然に同一形状となる。
【0052】
そして、下ケース78の周縁部74上に、周縁部74に沿って第1のスペーサ部材45を置いて、補強のために更に下ケース78の下ケース基準面76の上に複数個所(ここでは2箇所)、第2のスペーサ部材46を置いて上ケース77を重ねて配置する。すると、第1、第2のスペーサ部材45、46の厚みだけ、上ケース77と下ケース78の隙間を容易に設けることが可能となる。このように、上ケース77と下ケース78は同一形状のケースを使用することで、金型が共通化でき、製造管理が容易になる。また、第1、第2のスペーサ部材45、46の断面は、直径1〜4mm程度で高さが1〜4mm程度の円筒形状である。そして、煮沸に耐えられる耐熱性を有するプラスチック、例えばABS樹脂で形成され、上下ケース77、78とともに熱溶着されて、密閉した空間部75を形成する。
【0053】
更に、本発明の第3の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置について、もう一つの特徴である収納部について説明する。一体となった上ケース77と下ケース78からなる弁当容器71には、収納した調理物が加熱される第1の収納部と、収納した調理物が加熱されない第2の収納部が設けられている。たとえば、上ケース77のおかず収納部80の収納区画84を加熱したくない場合、下ケース78のおかず保護部90の保護区画94の周部であり、下ケース基準面76の上に第3のスペーサ部材47を置いて、上ケース77を重ねて配置する。すなわち、収納区画84が第2の収納部を形成し、米飯収納部79、収納区画81、82、83が第1の収納部を形成する。
【0054】
これにより、図9に示すように、下ケース78の保護区画94の周部は第3のスペーサ部材47で囲まれ、上ケース77の収納区画84の周部と密閉した分割空間部48を形成する。そして、分割空間部48には酢酸ナトリウム水溶液が入り込まないように、空間部75のみに酢酸ナトリウム水溶液を注入するので、酢酸ナトリウム水溶液が注入された空間部75と注入されない分割空間部48が形成される。なお、発熱トリガー部材38は、酢酸ナトリウム水溶液が入ったトリガー収納部49にあり、トリガー収納部49は分割空間部48以外の空間部75の一領域である。また、第3のスペーサ部材47は、断面が直径1〜4mm程度の円筒形状で、煮沸に耐えられる耐熱性を有するプラスチック、例えばABS樹脂で形成されており、上下ケース77、78とともに熱溶着することにより、完全な密閉した分割空間部48を形成する。
【0055】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置の使用方法について説明する。
本発明の第3の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置は、第1の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置10と比較して、上ケース77と下ケース78が同じ形状なので、第1のスペーサ部材45を間に挟んで弁当容器71の空間部75を形成していること及び酢酸ナトリウム水溶液が注入された空間部75と注入されない分割空間部48が形成されていることが特徴となっている。
【0056】
弁当容器71は、この第1〜第3のスペーサ部材45、46、47の高さを変えることにより、空間部75を拡大縮小することで、注入する酢酸ナトリウム水溶液を増加したり減少させたりできる。それによって、加熱機能付き弁当装置の加熱能力を容易に可変することができる。
そして、加熱に不適なおかず(例えば、和え物、サラダ、果物等)を収納する収納区画があれば、その収納区画の周辺には、酢酸ナトリウム水溶液が注入されていない分割空間部48が形成されているので、必要な場所だけ加熱や保温を行うことができるので、加熱に適する種類のおかずを温めて保温することができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない変更等は全て本発明の適用範囲である。
また、加熱機能付き弁当装置は、弁当容器と、その収納ケースと、ケース蓋の3点で使用される場合や、弁当容器と蓋の2点で使用される場合、弁当容器のみで使用される場合も加熱機能付き弁当装置となる。
さらに、スペーサ部材を用いて、空間部を分割したが、上ケースと下ケースを異なる形状にする場合、スペーサ部材の代わりに下ケースに立設した壁部(図示せず)を形成して空間部を分割してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10:加熱機能付き弁当装置、11:弁当容器、12:収納ケース、13:ケース蓋、14:側壁部材、15:上ケース基準面、16:天板部材、17:上ケース、18:下ケース、19:米飯収納部、20:おかず収納部、21〜24:収納区画、25:トリガーカバー部、26:周壁部、27:底保護部、28:周縁部、29:米飯保護部、30:おかず保護部、31〜34:保護区画、35:トリガー保護部、36:下ケース基準面、37:空間部、38:発熱トリガー部材、39:潜熱蓄熱材(酢酸ナトリウム水溶液)、40:周縁部、41:第1の凸部、42:第2の凸部、43:弁当保護部、44:微小突出部、45:第1のスペーサ部材、46:第2のスペーサ部材、47:第3のスペーサ部材、48:分割空間部、49:トリガー収納部、50:蓋、51:側壁部材、52:天板部材、53:トリガーカバー部、54:米飯収納部、55:おかず収納部、56〜59:収納区画、60:加熱機能付き弁当装置、61:弁当容器、62:第1の凸部、63:第2の凸部、65:空間部、66:下ケース基準面、67:上ケース、68:下ケース、71:弁当容器、74:周縁部、75:空間部、76:下ケース基準面、77:上ケース、78:下ケース、79:米飯収納部、80:おかず収納部、81〜84:収納区画、89:米飯保護部、90:おかず保護部、91〜94:保護区画
【技術分野】
【0001】
本発明は、食事の前に調理物を収納している収納部を加熱して、食事の際に温かい調理物を提供する加熱機能付き弁当装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弁当を食する場合、調理時刻と食事時刻が大きくずれているため、調理物は冷えた状態となっているのが一般的である。このため、弁当を食する前に、電子レンジで弁当を加熱することが一般的に行われている。
【0003】
しかし、野外などで電気が来ていないところでは電子レンジは使用できないために、弁当箱(弁当装置)の底部に酢酸ナトリウム水溶液が密閉された加熱バッグを配置したものがある。そして、弁当箱の弁当容器に収納された調理物を、加熱したい時に酢酸ナトリウム水溶液に衝撃を与えて発熱を誘発することにより発熱させて加熱して保温させていた。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3145971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている弁当箱は以下のような問題点があった。
特許文献1では、弁当箱の底部に加熱バッグを配置して、その上に置かれた弁当容器に収納された調理物を加熱するので、弁当容器の底面のみからしか調理物に熱を伝導することができず、調理物には十分熱が伝わり難かった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、食事の前に調理物を収納している収納部を加熱して、食事の際に温かい調理物を食することが可能な加熱機能付き弁当装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る加熱機能付き弁当装置は、調理物を入れる収納部を有する弁当装置であって、重ねて配置され、周囲が密閉された上ケース及び下ケースと、前記上ケース及び前記下ケースとの間に形成された空間部に充填された潜熱蓄熱材と、前記空間部にあって、前記潜熱蓄熱材に衝撃を与えて発熱を誘発する発熱トリガー部材とを有する。
【0007】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記収納部は、前記空間部が分けられて、前記潜熱蓄熱材によって加熱可能な第1の収納部と、前記潜熱蓄熱材によって非加熱の第2の収納部とを有していることが好ましい。
【0008】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記下ケースの内面にはスペーサとなる凸部が分散配置され該凸部が前記上ケースの外面に当接していることが好ましい。
【0009】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記上ケースと前記下ケースとの間にスペーサ部材が配置されているのが好ましい。
【0010】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記上ケース及び前記下ケースはそれぞれ周縁部を有し、該周縁部が熱溶着されているが好ましい。
【0011】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記潜熱蓄熱材に対して前記上ケースは前記下ケースより総合熱伝達率が大きいことが好ましい。
【0012】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記発熱トリガー部材は、円形又は角形の金属片からなって中央に押圧可能でかつ元の状態に復帰可能な微小突出部を有して、前記空間部の一領域に配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記潜熱蓄熱材は、酢酸ナトリウム、酢酸鉛、酢酸カルシウム四水和物、ピロリン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム及びトリメチロールエタン水和物のうちの1つからなる水溶液であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、前記上ケースに被さる蓋を有することが好ましい。
【0015】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、一体となった前記上ケースと前記下ケースを入れる収納ケースと、該収納ケースのケース蓋とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置は、上ケースと下ケースを重ね合わせて密閉した空間部に潜熱蓄熱材が封入されているので、収納部に入れた調理物を収納部の底面や側面から温めることができ、効率よく迅速に調理物を加熱できる。
【0017】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、加熱可能な第1の収納部と非加熱の第2の収納部を有している場合、加熱する調理物と、加熱しない調理物を混在して一つの弁当容器に盛ることができる。
【0018】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、下ケースの内面にスペーサとなる凸部が分散配置され、凸部が上ケースの外面に当接している場合、上ケースと下ケースの間に空間部を確実に確保できる。また凸部の高さを変えることで、潜熱蓄熱材の量を容易に増減させ加熱能力を変更することができる。
【0019】
本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、上ケースと下ケースとの間にスペーサ部材を配置する場合、スペーサ部材の配置だけで空間部が形成でき、上ケースと下ケースを同一形状とすることができるので、金型が共通化でき弁当装置の製造を容易にすることができる。
【0020】
そして、本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、上ケース及び下ケースがそれぞれ周縁部を有し、周縁部が熱溶着されている場合、容易に密封構造が達成できる。
【0021】
そして、本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、上ケースが下ケースより総合熱伝導率が大きい場合、上ケースの収納部内の調理物に迅速に熱を伝えることができ、調理物を迅速に加熱し保温することができる。
【0022】
そして、本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、発熱トリガー部材が、円形又は角形の金属片からなって中央に押圧可能でかつ元の状態に復帰可能な微小突出部を有して、空間部の一領域に配置されている場合、潜熱蓄熱部材に物理的衝撃を簡単な操作で加えることができ、弁当の加熱を容易に開始することができる。
【0023】
そして、本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、潜熱蓄熱材が、酢酸ナトリウム、酢酸鉛、酢酸カルシウム四水和物、ピロリン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム及びトリメチロールエタン水和物のうちの1つからなる水溶液である場合、最適な加熱温度がある調理物に応じた最適な潜熱蓄熱材を選択できる。
【0024】
そして、本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、上ケースに被さる蓋を有する場合、持ち運びが可能で加熱及び保温が達成できる。
【0025】
そして、本発明に係る加熱機能付き弁当装置において、一体となった上ケースと下ケースを入れる収納ケースと、収納ケースのケース蓋とを有する場合、潜熱蓄熱材の放熱が収納ケースとケース蓋により抑えられ加熱及び保温の性能が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置を示す説明図である。
【図2】同加熱機能付き弁当装置の上ケースの平面図である。
【図3】同加熱機能付き弁当装置の下ケースの平面図である。
【図4】(A)は図2に示す上ケースのA−A断面図と図3に示す下ケースのC−C断面図であり、(B)は(A)に示す上ケースと下ケースを重ねた後の断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置を示す説明図である。
【図6】(A)、(B)はそれぞれ同加熱機能付き弁当装置の上ケースと下ケースを重ねる前及び重ねた後の断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置のスペーサ部材の説明図である。
【図8】(A)は同加熱機能付き弁当装置の上ケースの断面図と図7に示す下ケースのE−E断面図であり、(B)は(A)に示す上ケースと下ケースを重ねた後の断面図である。
【図9】同加熱機能付き弁当装置の上ケースと下ケースを重ねた状態における図7のF−F断面図である
【図10】(A)、(B)は発熱トリガー部材の説明図である。
【図11】発熱トリガー部材の収納状態を示す説明図であって、(A)は図2の上ケースのB−B断面と図3の下ケースのD−D断面を示し、(B)は(A)の上ケースと下ケースを重ねた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1〜図4に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置10は、調理物を入れる収納部を有する弁当装置であって、重ねて配置され、周囲が密閉された上ケース17及び下ケース18と、上ケース17及び下ケース18との間に形成された空間部37に充填された潜熱蓄熱材39と、空間部37にあって、潜熱蓄熱材39に衝撃を与えて発熱を誘発する発熱トリガー部材38(図11参照)とを有する。以下、詳細に説明する。
【0028】
加熱機能付き弁当装置10は、更に、図1に示すように、一体となった上ケース17と下ケース18からなる弁当容器11を入れる収納ケース12と、収納ケース12のケース蓋13とを有している。
弁当容器11を入れる収納ケース12は、煮沸に耐えられる耐熱性を有するプラスチック、例えばABS樹脂、プロピルピレンで形成され、弁当容器11が収納された際に、弁当容器11の側部を保護する周壁部26と、弁当容器11の底部を保護する底保護部27を有している。
【0029】
ケース蓋13は、煮沸に耐えられる耐熱性を有するプラスチック、例えばABS樹脂で形成され、弁当容器11が収納された収納ケース12に被さって、弁当容器11の収納部に収納された米飯やおかず等の調理物を覆っている。そして、ケース蓋13は、ケース蓋13が収納ケース12に被さった際に、収納部の各開口の上方を一体で覆う天板部材16と、天板部材16の縁部に下方に向けて立設され、収納ケース12の周壁部26外面の上部側領域を覆う側壁部材14とを有している。
【0030】
弁当容器11は、上ケース17及び下ケース18が重ね合わせられ形成されている。そして、上ケース17及び下ケース18はそれぞれ煮沸に耐えられる耐熱性を有するプラスチック、例えば、ABS樹脂、プロピルピレン等を用いて形成される。ここでは、上ケース17及び下ケース18は厚みが0.1〜0.3mmの樹脂シートを用いて形成されている。弁当容器11の収納部は、上ケース19の内面(上面)に形成され米飯等を収納する米飯収納部19と、おかず等を収納するおかず収納部20を備えている。また、おかず収納部20は、複数、例えば、4つの収納区画21、22、23、24に分割されている。そして、弁当容器11の隅部にトリガーカバー部25が形成されている。
【0031】
そして、弁当容器11の上ケース17に設けられた大きさの異なる米飯収納部19、おかずの収納区画21、22、23、24はそれぞれ、図2に示すように、逆四角錐形状の頂点部が切り取られた形状(載頭四角錐体状)であって、上ケース基準面15より下方に向かって形成されている。更に、上ケース17の下方に置かれる発熱トリガー部材38を保護するトリガーカバー部25は、逆円錐形状の頂点部が切り取られた形状(載頭四角錐体状)で上ケース基準面15より下方に向かって形成されている。そして、上ケース17の外周には、周縁部28が設けられている。
【0032】
また、弁当容器11の下ケース18は、図3に示すように、上ケース17の米飯収納部19と、おかず収納部20がそれぞれ被われるような逆四角錐形状の頂点部が切り取られた形状である米飯保護部29、おかず保護部30にある同様の形状である保護区画31、32、33、34が下ケース基準面36より下方に向かって形成され、更に、トリガーカバー部25との間の空間部37に発熱トリガー部材38を収納するために逆円錐形状の頂点部が切り取られた形状であるトリガー保護部35が下ケース基準面36より下方に向かって形成されている。そして、下ケース18の外周にも、周縁部40が設けられている。また、下ケース基準面36には、上方に向かって第1の凸部41が設けられ、米飯保護部29、おかず保護部30の保護区画31、32、33、34の底面にも上方に向かって第2の凸部42が設けられている。
【0033】
そして、弁当容器11は、図4(A)、(B)に示すように、上ケース17と下ケース18が重ね合わされて形成されており、上ケース17と下ケース18の間に空間部37が設けられている。この空間部37は、下ケース18の内面(上面)に設けられたスペーサとなる第1、第2の凸部41、42の高さに応じて、1〜4mm程度の間隔の隙間が確保できるようになっており、空間部37は、下ケース18に設けられた第1、第2の凸部41、42が上ケース17の外面(下面)に当接することにより、上ケース17と下ケース18の空間部37の隙間が決められる。ここでは、凸部41、42の高さは2mm程度である。
【0034】
更に、空間部37には、酢酸ナトリウム水溶液である潜熱蓄熱材39が密封され、上ケース17の周縁部28と下ケース18の周縁部40は、互いの周縁部が全周にわたって熱溶着されている。
ここで熱溶着は、2つの熱可塑性樹脂部材の接合したい面を熱板(加熱した金属板)に直接接触させ、樹脂部材を溶融させた後、2つの溶融した面を直ちに合わせ、冷却するまで圧力で押しつけ接合することにより行われる。
【0035】
また、図11に示すように、空間部37の一領域にトリガーカバー部25とトリガー保護部35で囲まれて形成されるトリガー収容部49が設けられている。ここでは、潜熱蓄熱材39として、酢酸ナトリウム水溶液が使用される。酢酸ナトリウム水溶液は、1L当たりの蓄熱量は264kJあり、35〜60℃の範囲で発熱可能である。また、他の潜熱蓄熱材としては、硫酸ナトリウム水溶液も1L当たりの蓄熱量は251kJあり、10〜35℃の範囲で発熱可能なので低い温度の加熱用途に適している。潜熱蓄熱材を使い分けることで、加熱する温度を変更することができる。更に、同様の潜熱蓄熱材として、酢酸鉛、酢酸カルシウム四水和物、ピロリン酸ナトリウム、トリメチロールエタン水和物の水溶液も用途に応じて使用できる。
【0036】
また、熱を効率よく調理物に伝えるために、上ケース17は下ケース18より総合熱伝達率が大きい方がよい。熱の伝わり方は、伝導、対流、放射などがあるが、ここでは、総合熱伝達率Aは、固体表面積Sと固体温度T1、周囲流体温度T2、熱移動量Qを用いて下記式(1)で表される。
A=Q/{(T1−T2)×S}・・・(1)
(A:総合熱伝達率W/m2・℃、Q:熱移動量W、T1:固体温度℃、T2:周囲流体温度℃、S:固体表面積m2)
この総合熱伝達率Aは、対流熱伝達率AC+放射熱伝達率ARで表される。この総合熱伝達率Aの値が大きくなる方が熱がよく伝わる。
例えば、上ケース17を、薄い金属材(例えばアルミ)で構成したり、高熱伝導性のフィラー(窒化ホウ素、黒鉛、銅、アルミ)が結合された充填剤が添加された樹脂で構成すれば、通常の樹脂に比べて熱伝導率が数十倍になる。
【0037】
また、同じ樹脂材料を使って、上ケース17を薄くして、下ケース18を厚くすることによっても、上ケース17は下ケース18より総合熱伝達率を大きくすることができる。また、収納部の底面や壁面を細かい波型や凹凸にすることで表面積Sを増加させ熱の伝導を良くすることができる。
このように、上ケース17を下ケース18より熱を伝わり易くすることによって、上ケース17に収納された調理物を迅速に加熱でき、下ケース18側には熱が伝わり難くなる。また、下ケース18を熱伝導率の低い独立気泡発泡プラスチック等を使用して、下方に熱を伝わり難くしてもよい。
【0038】
トリガー収容部49に収納された発熱トリガー部材38は、円形又は角形の金属片、例えば鋼で形成されており、図10(A)に示すように、直径が10mm〜30mm程度で、且つ板厚が0.5mm〜1mm程度のドーム状に形成されている。そして、発熱トリガー部材38の中央に形成される微小突出部44を押圧すると、外部からの負荷を受けて、一側(上方)に張出した状態から、図10(B)に示すように、他側(下方)に張出した状態に瞬時に変化する。また、図10(B)に示す他側に張出した状態の微小突出部44を押圧する外部からの荷重を負荷すると、他側に張出した状態から、図10(A)に示す一側に張出した状態に瞬時に変化し、発熱トリガー部材38の微小突出部44は、外部から微小突出部44に負荷する荷重の方向に応じて張出し状態を変化させることができる。
【0039】
従って、微小突出部44の張出し状態が瞬時に変化する際に、微小突出部44の周囲の酢酸ナトリウム水溶液に物理的衝撃を加えることができる。そして、トリガー収納部49は空間部37の一領域にあるので、微小突出部44の周囲の酢酸ナトリウム水溶液に加えられた物理的衝撃は、空間部37内の酢酸ナトリウム水溶液全体に伝播し、弁当容器11内の酢酸ナトリウム水溶液に発熱を開始させることができる。なお、図11(A)、(B)に示すように、発熱トリガー部材38は、上ケース17のトリガーカバー部25の外面と、下ケース18のトリガー保護部35の底面との間の空間部37に収納される。これは、発熱トリガー部材38をトリガーカバー部25とトリガー保護部35で挟んで配置することにより、発熱トリガー部材38を位置決めするためである。
【0040】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置10の使用方法について説明する。
先ず、弁当容器11を煮沸して、弁当容器11内の酢酸ナトリウム水溶液を完全に溶解させる。そして、弁当容器11を、例えば10℃以下に徐冷して、弁当容器11内の酢酸ナトリウム水溶液を過飽和状態にする。このとき、弁当容器11内には酢酸ナトリウム39が析出していないため、酢酸ナトリウム水溶液は過冷却状態にもなっている。
次いで、過飽和状態(過冷却状態)の弁当容器11において、米飯収納部19に米飯を、おかず収納部20におかずをそれぞれ収納して、収納ケース12に収容する。そして、弁当容器11が収納された収納ケース12にケース蓋13を被せる。これにより、加熱機能付き弁当装置10は搬送することが可能になる。
【0041】
弁当を食する場合、ケース蓋13を開けて、トリガー収納部49内に収容されている発熱トリガー部材38の微小突出部44に外部から荷重を負荷して張出し状態を瞬時に変化させる。微小突出部44の張出し状態が瞬時に変化する際に、微小突出部44周囲の酢酸ナトリウム水溶液は物理的衝撃を加えられ、トリガー収納部49は空間部37の一領域にあるため、微小突出部44の周囲の酢酸ナトリウム水溶液に加えられた物理的衝撃は、弁当容器11内の酢酸ナトリウム水溶液に伝播する。これにより、過冷却状態の酢酸ナトリウム水溶液において凝固が開始され、凝固熱が発生する。
【0042】
ここで、弁当容器11内で発生した凝固熱を米飯収納部19やおかず収納部20に効率的に伝えて米飯やおかずを加熱することができると共に、ケース蓋13をして保温も行うことができる。なお、弁当容器11の下ケース18は、熱の伝わり難い材質にしたり、収納ケース12の底部に上向きに凸部(図示せず)を分散配置して、弁当容器11の底部が収納ケース12の底部に密接するのを防止して、弁当容器11の底部から収納ケース12の底部に熱が伝達されるのを抑制してもよい。更に、収納ケース12の底部に断熱部材(図示せず)を配置して収納ケース12の底から熱が逃げるのを抑制してもよい。
【0043】
弁当容器11内の空間部37に、酢酸ナトリウム水溶液が収納されているので、米飯収納部19やおかず収納部20の収納区画21、22、23、24において、収納部19や収納区画21、22、23、24の底面や側面から直接に米飯やおかずを加熱することができ、迅速な加熱が実現できる。
【0044】
弁当を食する場合、弁当容器11は、収納ケース12内に収納した状態とすることができる。このため、弁当容器11を、収納ケース12、及びケース蓋13と共に回収することができ、弁当容器11は、収納ケース12、及びケース蓋13と共に煮沸消毒することで、弁当容器11内の酢酸ナトリウム39を完全に溶解させることができる。そして、弁当容器11を徐冷することで弁当容器11内の酢酸ナトリウム水溶液を過飽和状態(過冷却状態)にすることができ、弁当容器11の再使用が可能になる。
【0045】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置60について、図5、図6(A)(B)を用いて説明する。
加熱機能付き弁当装置60は、図5に示すように、一体となった上ケース67と下ケース68からなる弁当容器61と、蓋50とを有している。なお、第1の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置10と同一の構成部材には同一の名称を付けて詳細な説明は省略する(以下の実施の形態においても同じ)。
ここで、蓋50は、耐熱性を有するプラスチック、例えばABS樹脂で形成され、弁当容器61の上ケース67に被さって、米飯収納部54に収納された米飯及びおかず収納部55に収納されたおかずを覆っている。そして、おかず収納部55は、4つの収納区画56、57、58、59に分割されている。上ケース67の隅部にトリガーカバー部53が形成されている。
【0046】
そして、蓋50は、弁当容器61に被さった際に、米飯収納部54及びおかず収納部55の各開口の上方を一体で覆う天板部材52と、天板部材52の縁部に下方に向けて立設され、上ケース67の周縁部に当接して上部側領域を覆う側壁部材51とを有している。このため、蓋50を上ケース67に被せた場合、側壁部材51は上ケース67の上部側領域を覆った状態となる。
【0047】
また、上ケース67は、本発明の第1の実施の形態の上ケース17と同一形状及び同一構成なので詳細な説明は省くが、下ケース68は、下ケース18とは、米飯保護部29、おかず保護部30の保護区画31、32、33、34を有しない点で異なる。下ケース68は、下ケース基準面66より、下方に向かって形成されている大きな1つの逆四角錐形状の頂点部が切り取られた形状(載頭四角錐体状)で弁当保護部43が形成されている。弁当保護部43には、上ケース67の米飯収納部54、おかず収納部55の収納区画56、57、58、59が収納される。
【0048】
また、下ケース基準面66には、第1の凸部62が設けられ、弁当保護部43の底面には第2の凸部63が設けられている。このようにして、潜熱蓄熱材39の量を増加することが可能になり、発熱量を増加することができる。また、上ケース67の米飯収納部54、おかず収納部55の収納区画56、57、58、59の側面からの発熱量を大幅に増加することで、側面から強力に迅速な調理物の加熱が達成できる。
【0049】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置60の使用方法について説明する。本発明の第2の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置60は、弁当容器61と蓋50とで構成される。第1の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置10と比較して、弁当容器61の空間部65が大きくなって潜熱蓄熱材39の量を多く注入できる。
【0050】
弁当容器61は、空間部65に酢酸ナトリウム水溶液を多く注入することができるので加熱量を多く必要とする調理物に使用する用途に適している。ここで、弁当容器61は、米飯収納部54内に収容されている米飯及びおかず収納部55に収容されているおかずの温度を、40〜60℃まで加熱するのに必要な熱を発生させる必要があるので、米飯及びおかずの量に応じて、この熱量を賄うのに必要な量の酢酸ナトリウム水溶液が注入できるような空間部65が得られるようにしている。
【0051】
本発明の第3の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置について、図7、図8、図9を用いて説明する。
第3の実施の形態では、上ケース77と下ケース78は同一形状及び同一構成のケースを使用する。また、上ケース77と下ケース78は第1の実施の形態で説明した上ケース17を使用する。上ケース77には米飯収納部79、おかず収納部80の収納区画81、82、83、84が設けられている。また、下ケース78には米飯保護部89、おかず保護部90の保護区画91、92、93、94が設けられているが、上ケース77と下ケース78が同一形状なので、これらも当然に同一形状となる。
【0052】
そして、下ケース78の周縁部74上に、周縁部74に沿って第1のスペーサ部材45を置いて、補強のために更に下ケース78の下ケース基準面76の上に複数個所(ここでは2箇所)、第2のスペーサ部材46を置いて上ケース77を重ねて配置する。すると、第1、第2のスペーサ部材45、46の厚みだけ、上ケース77と下ケース78の隙間を容易に設けることが可能となる。このように、上ケース77と下ケース78は同一形状のケースを使用することで、金型が共通化でき、製造管理が容易になる。また、第1、第2のスペーサ部材45、46の断面は、直径1〜4mm程度で高さが1〜4mm程度の円筒形状である。そして、煮沸に耐えられる耐熱性を有するプラスチック、例えばABS樹脂で形成され、上下ケース77、78とともに熱溶着されて、密閉した空間部75を形成する。
【0053】
更に、本発明の第3の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置について、もう一つの特徴である収納部について説明する。一体となった上ケース77と下ケース78からなる弁当容器71には、収納した調理物が加熱される第1の収納部と、収納した調理物が加熱されない第2の収納部が設けられている。たとえば、上ケース77のおかず収納部80の収納区画84を加熱したくない場合、下ケース78のおかず保護部90の保護区画94の周部であり、下ケース基準面76の上に第3のスペーサ部材47を置いて、上ケース77を重ねて配置する。すなわち、収納区画84が第2の収納部を形成し、米飯収納部79、収納区画81、82、83が第1の収納部を形成する。
【0054】
これにより、図9に示すように、下ケース78の保護区画94の周部は第3のスペーサ部材47で囲まれ、上ケース77の収納区画84の周部と密閉した分割空間部48を形成する。そして、分割空間部48には酢酸ナトリウム水溶液が入り込まないように、空間部75のみに酢酸ナトリウム水溶液を注入するので、酢酸ナトリウム水溶液が注入された空間部75と注入されない分割空間部48が形成される。なお、発熱トリガー部材38は、酢酸ナトリウム水溶液が入ったトリガー収納部49にあり、トリガー収納部49は分割空間部48以外の空間部75の一領域である。また、第3のスペーサ部材47は、断面が直径1〜4mm程度の円筒形状で、煮沸に耐えられる耐熱性を有するプラスチック、例えばABS樹脂で形成されており、上下ケース77、78とともに熱溶着することにより、完全な密閉した分割空間部48を形成する。
【0055】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置の使用方法について説明する。
本発明の第3の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置は、第1の実施の形態に係る加熱機能付き弁当装置10と比較して、上ケース77と下ケース78が同じ形状なので、第1のスペーサ部材45を間に挟んで弁当容器71の空間部75を形成していること及び酢酸ナトリウム水溶液が注入された空間部75と注入されない分割空間部48が形成されていることが特徴となっている。
【0056】
弁当容器71は、この第1〜第3のスペーサ部材45、46、47の高さを変えることにより、空間部75を拡大縮小することで、注入する酢酸ナトリウム水溶液を増加したり減少させたりできる。それによって、加熱機能付き弁当装置の加熱能力を容易に可変することができる。
そして、加熱に不適なおかず(例えば、和え物、サラダ、果物等)を収納する収納区画があれば、その収納区画の周辺には、酢酸ナトリウム水溶液が注入されていない分割空間部48が形成されているので、必要な場所だけ加熱や保温を行うことができるので、加熱に適する種類のおかずを温めて保温することができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない変更等は全て本発明の適用範囲である。
また、加熱機能付き弁当装置は、弁当容器と、その収納ケースと、ケース蓋の3点で使用される場合や、弁当容器と蓋の2点で使用される場合、弁当容器のみで使用される場合も加熱機能付き弁当装置となる。
さらに、スペーサ部材を用いて、空間部を分割したが、上ケースと下ケースを異なる形状にする場合、スペーサ部材の代わりに下ケースに立設した壁部(図示せず)を形成して空間部を分割してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10:加熱機能付き弁当装置、11:弁当容器、12:収納ケース、13:ケース蓋、14:側壁部材、15:上ケース基準面、16:天板部材、17:上ケース、18:下ケース、19:米飯収納部、20:おかず収納部、21〜24:収納区画、25:トリガーカバー部、26:周壁部、27:底保護部、28:周縁部、29:米飯保護部、30:おかず保護部、31〜34:保護区画、35:トリガー保護部、36:下ケース基準面、37:空間部、38:発熱トリガー部材、39:潜熱蓄熱材(酢酸ナトリウム水溶液)、40:周縁部、41:第1の凸部、42:第2の凸部、43:弁当保護部、44:微小突出部、45:第1のスペーサ部材、46:第2のスペーサ部材、47:第3のスペーサ部材、48:分割空間部、49:トリガー収納部、50:蓋、51:側壁部材、52:天板部材、53:トリガーカバー部、54:米飯収納部、55:おかず収納部、56〜59:収納区画、60:加熱機能付き弁当装置、61:弁当容器、62:第1の凸部、63:第2の凸部、65:空間部、66:下ケース基準面、67:上ケース、68:下ケース、71:弁当容器、74:周縁部、75:空間部、76:下ケース基準面、77:上ケース、78:下ケース、79:米飯収納部、80:おかず収納部、81〜84:収納区画、89:米飯保護部、90:おかず保護部、91〜94:保護区画
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理物を入れる収納部を有する弁当装置であって、
重ねて配置され、周囲が密閉された上ケース及び下ケースと、前記上ケース及び前記下ケースとの間に形成された空間部に充填された潜熱蓄熱材と、前記空間部にあって、前記潜熱蓄熱材に衝撃を与えて発熱を誘発する発熱トリガー部材とを有することを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項2】
請求項1記載の加熱機能付き弁当装置において、前記収納部は、前記空間部が分けられて、前記潜熱蓄熱材によって加熱可能な第1の収納部と、前記潜熱蓄熱材によって非加熱の第2の収納部とを有していることを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の加熱機能付き弁当装置において、前記下ケースの内面にはスペーサとなる凸部が分散配置され該凸部が前記上ケースの外面に当接していることを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の加熱機能付き弁当装置において、前記上ケースと前記下ケースとの間にスペーサ部材が配置されていることを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱機能付き弁当装置において、前記上ケース及び前記下ケースはそれぞれ周縁部を有し、該周縁部が熱溶着されていることを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱機能付き弁当装置において、前記潜熱蓄熱材に対して前記上ケースは前記下ケースより総合熱伝達率が大きいことを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の加熱機能付き弁当装置において、前記発熱トリガー部材は、円形又は角形の金属片からなって中央に押圧可能でかつ元の状態に復帰可能な微小突出部を有して、前記空間部の一領域に配置されていることを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の加熱機能付き弁当装置において、前記潜熱蓄熱材は、酢酸ナトリウム、酢酸鉛、酢酸カルシウム四水和物、ピロリン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム及びトリメチロールエタン水和物のうちの1つからなる水溶液であることを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱機能付き弁当装置において、前記上ケースに被さる蓋を有することを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱機能付き弁当装置において、一体となった前記上ケースと前記下ケースを入れる収納ケースと、該収納ケースのケース蓋とを有することを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項1】
調理物を入れる収納部を有する弁当装置であって、
重ねて配置され、周囲が密閉された上ケース及び下ケースと、前記上ケース及び前記下ケースとの間に形成された空間部に充填された潜熱蓄熱材と、前記空間部にあって、前記潜熱蓄熱材に衝撃を与えて発熱を誘発する発熱トリガー部材とを有することを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項2】
請求項1記載の加熱機能付き弁当装置において、前記収納部は、前記空間部が分けられて、前記潜熱蓄熱材によって加熱可能な第1の収納部と、前記潜熱蓄熱材によって非加熱の第2の収納部とを有していることを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の加熱機能付き弁当装置において、前記下ケースの内面にはスペーサとなる凸部が分散配置され該凸部が前記上ケースの外面に当接していることを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の加熱機能付き弁当装置において、前記上ケースと前記下ケースとの間にスペーサ部材が配置されていることを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱機能付き弁当装置において、前記上ケース及び前記下ケースはそれぞれ周縁部を有し、該周縁部が熱溶着されていることを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱機能付き弁当装置において、前記潜熱蓄熱材に対して前記上ケースは前記下ケースより総合熱伝達率が大きいことを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の加熱機能付き弁当装置において、前記発熱トリガー部材は、円形又は角形の金属片からなって中央に押圧可能でかつ元の状態に復帰可能な微小突出部を有して、前記空間部の一領域に配置されていることを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の加熱機能付き弁当装置において、前記潜熱蓄熱材は、酢酸ナトリウム、酢酸鉛、酢酸カルシウム四水和物、ピロリン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム及びトリメチロールエタン水和物のうちの1つからなる水溶液であることを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱機能付き弁当装置において、前記上ケースに被さる蓋を有することを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱機能付き弁当装置において、一体となった前記上ケースと前記下ケースを入れる収納ケースと、該収納ケースのケース蓋とを有することを特徴とする加熱機能付き弁当装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−28354(P2013−28354A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164634(P2011−164634)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(508250350)ベストフーズ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(508250350)ベストフーズ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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