説明

加熱蒸散器

【課題】組立性の向上と組立工数の削減を図り、安価な加熱蒸散器を提供する。
【解決手段】本加熱蒸散器は、薬液を吸上げる吸液芯を備えた液体容器が収容され、上部に前記吸液芯を加熱する発熱体が取り付けられた本体と、この本体を囲い、本体と異なる材質からなるケース体と、本体の上側に位置し、かつケース体の上側開口を塞ぎ、蒸散孔が設けられた蓋体とを備え、本体と蓋体を固定手段により固定することで、ケース体が本体に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱蒸散器に係り、特に組立が容易になるように構造を改良した加熱蒸散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部屋の消臭や芳香等に適した薬液等を気化、蒸散させる加熱蒸散器が広く用いられている。
【0003】
この種の加熱蒸散器は、内部の薬液を吸上げる吸液芯を備えた液体容器を蒸散器本体の下部に設置し、蒸散器本体内部に設けられたヒータ等の発熱体によって、この吸液芯を加熱することで、薬液の気化、蒸散を促し、蒸散器本体の上方に設けられた蒸散口から外部へ拡散する構造となっている。
従来の加熱蒸散器は、構成部品や締結用螺子の数が多く、組立工程が複雑になるという問題があった。
【0004】
そこで、加熱蒸散器を螺子受ボスを備えた本体前ケースと、発熱体を固定支持するとともに螺子受ボスが挿入される貫通孔を備えた取付部材と、貫通孔に挿入された螺子受ボスを螺子で締結するためのボス受部を備えた本体後ケースとで構成した提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−200153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の加熱蒸散器は、蒸散器本体が、本体前ケースと本体後ケースとに2分割された構成とし、発熱体が螺着された取付部材とともに、水平方向の螺子によって本体前ケースと本体後ケースを一体化する構造であり、部品点数、螺子数も多く、高価であり改良の余地がある。
【0007】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、組立性の向上と組立工数の削減を図り、安価な加熱蒸散器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明に係る加熱蒸散器は、薬液を吸上げる吸液芯を備えた液体容器が収容され、上部に前記吸液芯を加熱する発熱体が取り付けられた本体と、この本体を囲い、本体と異なる材質からなるケース体と、前記本体の上側に位置し、かつ前記ケース体の上側開口を塞ぎ、蒸散孔が設けられた蓋体とを備え、前記本体と前記蓋体を固定手段により固定することで、前記ケース体が前記本体に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る加熱蒸散器によれば、組立性の向上と組立工数の削減を図り、安価な加熱蒸散器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る加熱蒸散器の一実施形態を上方から見た斜視図。
【図2】本発明に係る加熱蒸散器の一実施形態を下方から見た斜視図。
【図3】本発明に係る加熱蒸散器の一実施形態の側面を示す縦断面図。
【図4】本発明に係る加熱蒸散器の一実施形態の底面図。
【図5】本発明に係る加熱蒸散器の一実施形態の背面図。
【図6】本発明に係る加熱蒸散器の一実施形態の使用状態を上方から見た分解斜視図。
【図7】本発明に係る加熱蒸散器の一実施形態の使用状態を下方から見た底面図。
【図8】本発明に係る加熱蒸散器の一実施形態に用いるケース体の底面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る加熱蒸散器の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1〜図5に示すように、本実施形態の加熱蒸散器1は、液体容器Vが収容される本体2と、この本体2を囲うケース体3と、本体2の上側に位置し、ケース体3の上側開口3aを塞ぐ蓋体4と、ケース体3に収容される発熱体5と、本体2の上部および発熱体5を囲う内カバー6と、発熱体5に給電するプラグ7とを備える。
【0013】
本体2は合成樹脂製、例えばポリプロピレン製で側面視略凸状をなし、内部に略ドーム状の容器収容部21が設けられる本体上部(本体主部)22と、この本体上部22から下方に延びる本体下部23からなる。
【0014】
本体上部22には、容器取付用の容器頭部Va(図6)が収容される略円筒状の頭部収容部221が設けられ、本体下部23には、液体収容用の容器本体Vbが収容される略正方形筒状の容器本体収容部231が設けられる。
【0015】
さらに、本体下部23の下端から外方に延びる外向きフランジ部232a、232bが設けられ、外向きフランジ部232aには、係合長孔233aが2個ずつ設けられ、電気部品取付用の半楕円切欠部234、半円切欠部235が設けられた立上236が形成された外向きフランジ部232bには、係合丸孔233bが立上236を挟むように2個設けられる。
【0016】
立上236に対向する本体下部23の側面は内側にわずかに膨出して、電気部品収容部237を形成している。
【0017】
一方、頭部収容部221の外周に設けられる連結部226には、本体取付部222が90°間隔で4個設けられ、この本体取付部222は頭部収容部221から離間状態で、頭部収容部221に沿ってこれより高い位置まで上方に延びている。そして、この本体取付部222の上面には、本発明の固定手段の一部をなす螺子Sが貫通する、同じく固定手段の一部をなす螺子貫通孔223が設けられる。
【0018】
また、連結部226には、本体上部22と一体状態で、頭部収容部221に沿ってこの頭部収容部221より高い位置まで上方に延びる一対の発熱体取付部224が設けられ、この発熱体取付部224に発熱体5が螺着される。さらに、連結部226には、多数の連通孔227が設けられ、外気及び凝縮した薬液が通過できるようになっている。
【0019】
発熱体5が発熱体取付部224に螺着された状態で、頭部収容部221の上面に設けた液芯貫通孔225が、発熱体5に設けた液芯挿入孔52と一致し、吸液芯Pが液芯貫通孔225および液芯挿入孔52を貫通可能になっている。
【0020】
また、本体下部23の上部には、内カバー6を固定する係止突条238が正方形状に立設されている。
【0021】
図3、図4および図6に示すように、ケース体3は透明合成樹脂、例えばアクリルやAS樹脂(アクリロニトリル・スチレン共重合体)等で成形されている。特にアクリルは、無色透明の樹脂の中でも比較的耐薬品性能が高く、高級感もあるため、ケース本体3の材料として好ましい。略正方形の面をL字状に2面連設してなる分割ケース体31a、31bが、正方形状の筒状になるように連続してなり、加熱蒸散器1の組立時には2個の分割ケース体31a、31bは分離状態である。
【0022】
そして、分割ケース体31a、31bの上端には、組立時に口字状をなすように係合溝条32が設けられる。
【0023】
また、分割ケース部材31a、31bの下端には、この下端を切欠することで脚部33が設けられ、下端近傍には、分割ケース体31a、31bを本体2に固定するための内向きフランジ部34a、34bが各々設けられ、この各々の内向きフランジ部34a、34bの終端には、図8に示す接合用の傾斜面341が形成されている。
【0024】
さらに、内向きフランジ部34a及び内向きフランジ部34bの一方側には、下方に突出し、係合長孔233aに係合し、扁平長円形状の係合突起342が設けられ、内向きフランジ部34bの他方側には、図8に示すように、この他方側に設けたフランジ切欠部343を挟んで円柱状の係合突起344が設けられている。
【0025】
また、他方側にはフランジ切欠部343の上方に、電気部品を押さえ固定するための半楕円切欠部345と、半円切欠部346が設けられている。
【0026】
ケース体3の内面側には、このケース体3に沿って内側ケース部材8が設けられ、内側ケース部材8はSUS製で、1枚の長尺板を3稜で正方形状に折り曲げられ、1稜は不連続である筒状をなし、その一面下部に電気部品用切欠部81が設けられている。
【0027】
加熱蒸散器1が組立てられた状態では、ケース体3と内側ケース部材8は密接状態を保っている。
【0028】
図3、図6及び図7に示すように、蓋体4は合成樹脂製、例えばポリプロピレン製で略正方形板状をなし、中央部には正方形状の蒸散孔41が設けられ、下面には本体取付部222に設けた螺子貫通孔223に対向して、4本の取付柱42が立設され、螺子貫通孔223を貫通する螺子Sが螺合し固定手段の一部をなす螺子孔43が設けられ、また、大径の透光孔44に連通して下方に僅かに延びる収容リング部45が設けられる。
【0029】
さらに、下面には蒸散孔41を囲うように下方に向かって突設された蒸散塔46が正方形状に設けられ、下面外周には係合溝条32に係合する係止突条47が口字状に設けられている。
【0030】
発熱体5は合成樹脂製の発熱体取付部材51で囲われ、この発熱体取付部材51には、略中央部に金属リングで形成される液芯挿入孔52が設けられ、両側に延びる取付片53には螺子S1が貫通する取付孔(図示せず)が設けられ、この取付孔を貫通する螺子S1を発熱体取付部材51の螺子孔(図示せず)に螺合することで、発熱体5が螺着される。
【0031】
内カバー6は、合成樹脂製、例えばポリプロピレン製で、正方形状筒体をなし、首部収容部221と発熱体5を囲い、蓋体4の下面と本体下部23間に設けられる。
【0032】
さらに、内カバー6の下端には、本体下部23の上端に設けた係止突条238に係合する係止溝61が設けられ、上端には、組立状態で蓋体4の下面に当接する支持部62が外方に水平に延びて設けられ、支持部62の一つ隅部には、円弧状の膨出部63が設けられる。
【0033】
この膨出部63は、本体下部23に立設されたLED取付柱239の先端に取付けられたLED9を囲う透明リング状の反射部材10が収容される収容リング部45を囲うものであり、反射部材10の先端に取付けられ、蓋体4と同色で同一材質の円板11により、透光孔44はリング状に透光させる。
【0034】
再び、図3〜図5に戻り、加熱蒸散器1の下部には、プラグ7と、電源スイッチ12が設けられ、この電源スイッチ12は電源コード71の先端に設けたコードプロテクター72に近接して電気部品収容部237に収容され、コードプロテクター72及び電源スイッチ12の操作部121は外部に露出する。
【0035】
次に、本実施形態の加熱蒸散器の組立について説明する。
【0036】
図3、図6および図7に示すように、電源スイッチ12(図5)およびコードプロテクター72の一部を電気部品収容部237に収容し、電源スイッチ12およびプラグ7を本体2に、予め取付ける。
【0037】
また、発熱体取付部材51の取付孔を貫通した螺子S1を発熱体取付部224の螺子孔に螺合して、予め発熱体5を本体2に螺着する。
【0038】
しかる後、内カバー6を上方から本体2に空間を設けて外挿し、本体上部22および発熱体5を周囲から覆う。
【0039】
このとき、内カバー6の係止溝61を本体下部23の係止突条238に係合することで、内カバー6を本体2に仮固定する。
【0040】
そして、電気部品用切欠部81を電源スイッチ12およびコードプロテクター72に対向させた状態で、内側ケース部材8を上方から空間を設けて外挿する。
【0041】
さらに、内側ケース部材8をわずかに持ち上げた状態で、2個に分割された分割ケース体31a及び分割ケース体31bを、内側ケース部材8を抱くように周囲から密接状態で囲う。このとき、半楕円切欠部345と、半円切欠部346が設けられた分割ケース体31bを、半楕円切欠部345と、半円切欠部346が、コードプロテクター72及び電源スイッチ12を押圧するように電気部品側に位置させる。
【0042】
分割ケース体31a及び分割ケース体31bにより内側ケース部材8を囲うように正方形状にケース体3を組立てる過程で、内向きフランジ部34a、34bに傾斜面341が形成されているので、組立が容易になり、またケース体3が強固になり、隙間の発生も防止できる。
【0043】
内側ケース部材8をケース体3で囲った状態で、内向きフランジ部34aは外向きフランジ部232aに、内向きフランジ部34bは外向きフランジ部232bに対向する。
【0044】
この状態で係合突起342を係合長孔233aに、係合突起344を係合丸孔233bに係合させる。
【0045】
さらに、収容リング部45が膨出部63に対向するようにして、蓋体4でケース体3の上側開口3aを塞ぐ。
【0046】
この状態で口字状に配された係止突条47が係合溝条32に凹凸結合し、収容リング部45は膨出部63に収容され、LED9は収容リング部45に収容された反射部材10に挿入される。また、取付柱42に設けた螺子貫通孔223が、本体取付部222に設けた螺子貫通孔223に対向する。
【0047】
外向きフランジ部232aと内向きフランジ部34bの接合、係合突起342と係合長孔233a、係合突起344と係合丸孔233bの係合、及び係止突条47と係合溝条32の係合により、係合部が外部から視認されず、美観に優れる。
【0048】
このような組立工程により、加熱蒸散器1は仮固定される。
【0049】
この仮固定された加熱蒸散器1を天地逆にし、螺子Sを螺子貫通孔223を貫通させて、螺子貫通孔223に螺合し、本体2に蓋体4を強固に固定する。この蓋体4の本体2への固定により、ケース体3は外向きフランジ部232a、232bと下面外周(係合溝条32)間で狭持され強固に固定される。
【0050】
本実施形態において、ケース体は複数の分割ケース体に分割されているので、型が簡素化され、さらにケース体の製造が容易になる。また、蓋体とケース体はリブ及び溝による凹凸結合で固定されるので、組立が容易で強固である。ケース体は透明であるのでクリアー感が出、内側ケース部材がSUS製であるので高級感が出て美観に優れる。
【0051】
また、電源コードと電源スイッチが近接して設けられるので、電源スイッチ用の配線を短くできるとともに、加熱蒸散器を部屋壁に向けて近付けて使用しても、部屋壁にはコードプロテクターが先に当たり、電源スイッチの操作部が当たり、蒸散動作が停止されることを防ぐことができる。
【0052】
本発明における固定手段は、本実施形態では螺子貫通孔223と螺子Sからなる螺子固定構造であるが、合成樹脂の弾性を利用した係合孔と係止爪を利用した弾性結合構造など、本実施形態に限定されるものではない。
【0053】
本実施形態の加熱蒸散器によれば、組立性の向上と組立工数の削減を図り、安価な加熱蒸散器が実現する。
【符号の説明】
【0054】
1 加熱蒸散器
2 本体
21 容器収容部
22 本体上部
23 本体下部
221 頭部収容部
222 本体取付部
223 螺子貫通孔
224 発熱体取付部
225 液芯貫通孔
226 連結部
227 連通孔
231 容器本体収容部
232a、232b 外向きフランジ部
233a 係合長孔
233b 係合丸孔
234 半楕円切欠部
235 半円切欠部
236 立上
237 電気部品収容部
238 係止突条
239 LED取付柱
3 ケース体
3a 上側開口
31a、31b 分割ケース体
32 係合溝条
33 脚部
34a、34b 内向きフランジ部
341 傾斜面
342 係合突起
343 フランジ切欠部
344 係合突起
345 半楕円切欠部
346 半円切欠部
4 蓋体
41 蒸散孔
42 取付柱
43 螺子孔
44 透光孔
45 収容リング部
46 蒸散塔
47 係止突条
5 発熱体
51 発熱体取付部材
52 液芯挿入孔
53 取付片
6 内カバー
61 係止溝
62 支持部
63 膨出部
7 プラグ
71 電源コード
72 コードプロテクター
8 内側ケース部材
81 電気部品用切欠部
9 LED
10 反射部材
11 円板
12 電源スイッチ
121 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を吸上げる吸液芯を備えた液体容器が収容され、上部に前記吸液芯を加熱する発熱体が取り付けられた本体と、
この本体を囲い、本体と異なる材質からなるケース体と、
前記本体の上側に位置し、かつ前記ケース体の上側開口を塞ぎ、蒸散孔が設けられた蓋体とを備え、
前記本体と前記蓋体を固定手段により固定することで、前記ケース体が前記本体に固定されることを特徴とする加熱蒸散器。
【請求項2】
前記ケース体は複数の分割ケース体に分割されることを特徴とする請求項1に記載の加熱蒸散器。
【請求項3】
前記蓋体と前記ケース体はリブ及び溝による凹凸結合で固定されることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱蒸散器。
【請求項4】
前記分割ケース体の下端近傍には、この分割ケース体を前記本体に固定するための内向きフランジ部が各々設けられ、この各々の内向きフランジ部の終端には、接合用の傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の加熱蒸散器。
【請求項5】
前記ケース体は透明であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の加熱蒸散器。
【請求項6】
前記ケース体の内面側には、このケース体に沿って内側ケース部材が設けられ、この内側ケース部材はSUS製であることを特徴とする請求項5に記載の加熱蒸散器。
【請求項7】
前記本体には、電源コードと電源スイッチが近接して設けられることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の加熱蒸散器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−183063(P2011−183063A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53578(P2010−53578)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【出願人】(000164140)金澤工業株式会社 (54)
【Fターム(参考)】