説明

加熱蒸散用製剤

【課題】煙の発生がほとんどなく、なおかつ、殺虫原体を効率良く蒸散させることのできる加熱蒸散用製剤を提供する。
【解決手段】加水発熱剤が収納され、かつ底部および/または側面の底部近傍に通水部分を有する加水発熱剤収納部と、該加水発熱剤収納部の上部に加熱により蒸散する殺虫原体が発泡剤を含まない状態で収納された薬剤収納部とを有する加熱蒸散用製剤であって、前記薬剤収納部の深さが20mm以下、かつ前記加水発熱剤収納部の底部と薬剤収納部の底部との間隔が60mm以下であることを特徴とする加熱蒸散用製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱蒸散用製剤に関するものであり、詳しくは、煙の発生がほとんどなく、殺虫原体を効率良く蒸散させることができる加熱蒸散用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から加熱蒸散用製剤は、屋内の害虫駆除のためなどによく用いられている。
【0003】
特許文献1に記載の加熱蒸散用製剤は加熱手段を用いて有効成分を蒸散させるもので、例えば図2に示されるような、自己発熱装置21の形態で使用されている。断面略図として示される自己発熱装置21は、有底円筒状の外容器22を備えており、その底部から側部にかけて加水発熱剤28が収容されている。外容器22は、底部に複数の通水孔を有し、通水孔は通水性を有する部材、例えば不織布シート23によって塞がれている。また、外容器22の内部は、仕切部材24により2つの空間に区画されている。仕切部材24は、円筒状で底部が略中空半球状を呈しており、その側壁が外容器22の周壁と同心状に配置されている。
加水発熱物質28は、外容器22の周壁、仕切部材24及び不織布シート23とで形成される空間に充填され、仕切部材24の内部に有効成分、熱分解してガスを発泡する発泡剤、発泡助剤およびその他の添加剤からなる加熱蒸散用薬剤27が収容される。また、外容器22の上部開放面には、仕切部材24の上部開放面に相当する領域に複数の開口部が形成された蓋部材25が被冠されており、更に蓋部材25の開口部は通気孔を有する熱溶融フィルム26によって塞がれている。
【0004】
加水発熱剤28は水との反応により自己発熱する物質であり、例えば酸化カルシウム(生石灰)が用いられている。従って、使用に際して、自己発熱装置21を水Wが入った容器29に入れることにより、水Wが通水孔を通じて外容器22に流入し、加水発熱剤28と接触し、そのとき発生した反応熱により加熱蒸散用薬剤27が加熱されて有効成分が蒸散し、熱溶融フィルム26の通気孔を通じて外部(室内等)に放出される。また、熱溶融フィルム26は加熱蒸散用薬剤27からの放熱、缶の熱並びに蒸散した有効成分との接触により熱溶融するため、蒸散の比較的早い時期から、蒸散した有効成分は蓋部材25の開口部を通じて効率良く外部に放出される。
【特許文献1】特開2005−120028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の加熱蒸散用製剤は、加熱蒸散用薬剤27に含まれる発泡剤によって、室内の汚染、観葉植物等の枯死等が生じることがあるという問題点があった。そのため、従来技術の加熱蒸散用製剤を使用する場合は金属に袋を被せる、観葉植物を室外に出す、等の作業が必要となり、使用前の準備が面倒であった。また、煙の発生による火災報知器の誤作動の危険性があった。
【0006】
そこで本発明は、室内の汚染、観葉植物等の枯死等の従来の問題点を解決し、上記の使用前の準備もとくに必要とせず、なおかつ、煙の発生がほとんどなく、殺虫原体を効率良く蒸散させることのできる加熱蒸散用製剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
(1)加水発熱剤が収納され、かつ底部および/または側面の底部近傍に通水部分を有する加水発熱剤収納部と、該加水発熱剤収納部の上部に加熱により蒸散する殺虫原体が発泡剤を含まない状態で収納された薬剤収納部とを有する加熱蒸散用製剤であって、前記薬剤収納部の深さが20mm以下、かつ前記加水発熱剤収納部の底部と薬剤収納部の底部との間隔が60mm以下であることを特徴とする加熱蒸散用製剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加熱蒸散用製剤は、室内の汚染、観葉植物等の枯死等の従来の問題点が解決され、使用前の準備もとくに必要とせず、煙の発生もほとんどないため、室内の煙の濃度が一時的に高くなることがなく火災報知器などが誤作動する危険性を低減できる。そして、薬剤収納部の深さ、加水発熱剤収納部の底部と薬剤収納部の底部との間隔のバランスを制御することで、発泡剤を含まなくとも殺虫原体を効率良く蒸散させることのできる加熱蒸散用製剤を提供することができる。
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
本発明の加熱蒸散用製剤は、加水発熱剤が収納され、かつ底部および/または側面の底部近傍に通水部分を有する加水発熱剤収納部と、該加水発熱剤収納部の上部に加熱により蒸散する殺虫原体が発泡剤を含まない状態で収納された薬剤収納部とを有する加熱蒸散用製剤であって、前記薬剤収納部の深さが20mm以下、かつ前記加水発熱剤収納部の底部と薬剤収納部の底部との間隔が60mm以下であることを特徴としている。
【0011】
本発明における殺虫原体は、加水発熱剤による加熱時に均一に加熱され、素早く蒸散しやすいようにする観点から、本発明の殺虫原体は適度な粘度を有する液状のもの、例えば液体、ゲル、ゾル、ペースト等、であることが好ましい。また、粉末の場合は、例えば適量の溶剤を加えて液状にしたり、周囲に飛散しないようにすることが安全性や取り扱いやすい点から好ましく、粘着剤により薬剤収納部の内部の底面に固定するなどの処理を行ってもよい。
【0012】
また本発明によれば、薬剤収納部の深さが20mm以下、かつ加水発熱剤収納部の底部と薬剤収納部の底部との間隔が60mm以下である。これら条件を満たすことにより、殺虫原体が発泡剤を含まなくとも、殺虫原体の蒸散率が有意に改善される。薬剤収納部の深さは、好ましくは5〜20mm、より好ましくは10〜20mmである。加水発熱剤収納部の底部と薬剤収納部の底部との間隔は、好ましくは20〜60mm、より好ましくは40〜60mmである。
【0013】
本発明者らの研究によれば、殺虫原体は、加水発熱剤による加熱により蒸散するが、このとき、薬剤収納部の深さのサイズが大き過ぎると、薬剤収納部の内部で一旦蒸散した殺虫原体が外部に放出されず、薬剤収納部の内部にこもった熱により分解される傾向にあることがわかった。さらに、薬剤収納部の深さが20mm以下であれば、上記現象はほとんど起こらず、有効量の殺虫原体を外部に蒸散させることができる。
また、加水発熱剤は、殺虫原体への効率的な熱伝達、蒸散効率、さらに製造コスト等を勘案してその充填量が決定される。上記の深さと間隔との関係において、所定量の加水発熱剤を充填した場合に、間隔が20mm以上60mm以下であるときに、最も殺虫原体の蒸散率が優れることを本発明者らは見出した。間隔が20mm未満であると殺虫原体への熱伝達が急激となり、殺虫原体が分解する恐れがある。逆に間隔が60mmを超えると殺虫原体への熱伝達が減少したり、加熱に時間を要して、殺虫原体の蒸散が十分に得られず、抑制される恐れがある。
なお、この形態は、加水発熱剤収納部の底部の直径が5cm以上が好ましく、5〜10cmである場合にとくに好ましい。
また、薬剤収納部の容積は、10cm3以上であることが好ましく、10cm3以上50cm3以下であることがより好ましい。加水発熱剤収納部の容積は、40cm3以上であることが好ましく、40cm3以上480cm3以下であることがより好ましい。
加熱温度は300〜400℃であることが好ましく、このときの加水発熱剤の含有量は40g〜400g程度とすることができる。
また、薬剤収納部の底部は、本発明の効果を示す限り、半球状でも、湾曲していても、凹凸を有していてもよい。
【0014】
殺虫原体としては、例えば、天然ピレトリン、ピレトリン、ビフェントリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、プラレトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、イミプロトリン、エンペントリン、エトフェンプロックス等のピレスロイド系化合物;プロポクサー、カルバリル等のカーバメイト系化合物;フェニトロチオン、DDVP等の有機リン系化合物;メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系化合物;フィプロニル等のフェニルピラゾール系化合物;アミドフルメト等のスルホンアミド系化合物;ジノテフラン、イミダクロプリド等のネオニコチノイド等、メトプレン、ハイドロプレン等の昆虫幼若ホルモン剤、プレコセン等の抗幼若ホルモン剤、エクダイソン等の脱皮ホルモン剤等のホルモン剤;フィットンチッド、ハッカ油、オレンジ油、桂皮油、ベンジルアルコール、丁子油等の精油類;IBTA、IBTE、四級アンモニウム塩、サリチル酸ベンジル等の殺虫・殺ダニ成分などが挙げられ、中でもペルメトリン、フェノトリン、エトフェンプロックス、シフェノトリンを使用したときにその効果が高い。
また、必要に応じて上記殺虫成分の他に、ロテノン、p−メンタン−3,8−ジオール、ジエチルメタトルアミド、ジ−n−ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール等の忌避剤;PCMX、IPBC、TBZ、イソプロピルメチルフェノール等の殺菌剤;ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトネート、カテキン等の消臭剤;バラ油、ラベンダー油、ハッカ油等の精油;ピネン、リモネン、リナロール、メントール、オイゲノール等の香料等が挙げられる。また、殺虫原体としてグルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン等のグアニジン系殺菌剤を使用することもできる。
【0015】
更に、発明の効果を奏する限り、殺虫原体には公知の各種添加剤を使用できるが、上記のように、発泡剤は含まない。
【0016】
また、加水発熱剤収納部、薬剤収納部の構成部材としては、例えば、上記加熱温度で使用できる耐熱性のプラスチック容器、紙容器、金属容器、セラミック容器、ガラス容器等が挙げられる。また、加水発熱剤としては、前記の酸化カルシウム以外にも、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化鉄、ミョウバン、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、塩化ニッケル等が使用できる。
【0017】
本発明の加熱蒸散用製剤は、害虫駆除、必要に応じて、さらに殺菌、消臭、芳香等の目的に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の加熱蒸散用製剤の構造の一実施形態を説明するための略断面図である。
図1において、本発明の加熱蒸散用製剤は、自己発熱装置1の形態で使用され得る。自己発熱装置1は、有底円筒状の加水発熱剤収納部2を備えており、その底部から側部にかけて加水発熱剤3が収容されている。加水発熱剤収納部2は、底部に複数の通水部分(通水孔4)を有し、通水孔4は通水性を有する部材、例えば不織布シート23によって塞がれている。また、加水発熱剤収納部2の上部は、薬剤収納部5が設けられ、その中に加熱により蒸散する殺虫原体6が収納されている。殺虫原体6は、発泡剤を含まない。薬剤収納部5は、円筒状で平らな底部を有し、その側壁が加水発熱剤収納部2の周壁と同心状に配置されている。なお、薬剤収納部5の上部開放面は通気孔を有する熱溶融フィルムによって塞がれていてもよい。
【0019】
加水発熱剤3は水との反応により自己発熱する物質であり、例えば酸化カルシウム(生石灰)が用いることができる。使用に際して、自己発熱装置1を水Wが入った容器8に入れることにより、容器8の脚部9により形成された隙間より、水Wが加水発熱剤収納部2の底部に設けられた通水孔4から流入し、加水発熱剤3と接触し、そのとき発生した反応熱により殺虫原体6が加熱されて蒸散し、外部(室内等)に放出される。また、熱溶融フィルムを貼った場合は、熱溶融フィルムは缶の熱及び殺虫原体6からの放熱並びに蒸散した殺虫原体との接触により熱溶融するため、蒸散の比較的早い時期から、蒸散した殺虫原体は前記蓋部材の開口部を通じて効率良く外部に放出される。
なお、加水発熱剤収納部2は通水部分を、底部ではなく側面の底部近傍に有していてもよい。ここで、側面の底部近傍とは、加水発熱剤収納部2の側面のうち、水中または水面に接している部分のことであり、水が通水部分を通じて加水発熱剤収納部2に流入することができる範囲を表す。加水発熱剤収納部2の側面の底部近傍に通水部分がある場合は、容器8は脚部9を有さなくても水を流入させることができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0021】
[試験例1]
図1に記載の加熱蒸散用製剤を用いて下記実験を行った。
すなわち、試験例1で使用した加熱蒸散用製剤は、直径68mmの有底円筒状の加水発熱剤収納部2を備え、その底部から側部にかけて酸化カルシウムからなる加水発熱剤3が140g収容されている。加水発熱剤収納部2は、底部に複数の通水部分(通水孔4)を有し、通水孔4は不織布シート23によって塞がれている。また、加水発熱剤収納部2の上部は、薬剤収納部5が設けられ、その中にペルメトリン殺虫原体6(液状、200mg)が収納されている。薬剤収納部5は、円筒状で平らな底部(直径53mm)を有し、その側壁が加水発熱剤収納部2の周壁と同心状に配置されている。
薬剤収納部5の深さLは下記表1に示すように10〜30mm、かつ加水発熱剤収納部2の底部と薬剤収納部5の底部との間隔hは40mmに設定した。
【0022】
続いて、上記の加熱蒸散用製剤を、水Wが入った容器8に入れ、酸化カルシウムからなる加水発熱剤3を発熱させ(380℃:測定箇所は薬剤収納部5の底部中央)、ペルメトリン殺虫原体6を蒸散させ、蒸散率を測定した。蒸散率は、図3に示したような捕集装置を用いて、以下の手順により行った。図示される捕集装置は、水Wが入った容器8に入れた加熱蒸散用製剤10は台座11の上に載置して、加熱蒸散用製剤10の上部及び側部のほぼ全体を覆うように捕集用ロート12を被せ、捕集用ロート12にシリカゲル13を充填した金属製の捕集管14を連結し、捕集管14の他端から吸引する構成となっている。また、捕集管14は内径5cmで全長13cmの円筒であり、シリカゲル13を110g充填し、脱脂綿(8×17cmのサイズのものを2つ折りにしたもの)15,15でシリカゲル13の充填部の上下を閉塞している。
【0023】
測定は、まず、捕集装置に加熱蒸散用製剤10を設置し、ペルメトリン殺虫原体の蒸散が完全に終了するまで加熱蒸散させ、蒸散物を吸引してシリカゲル13に吸着させる。その後、捕集用ロート12と捕集管14を回収し、ビーカーにシリカゲル13及び脱脂綿15を移し、捕集用ロート12と捕集管14の内面をアセトンで十分に洗浄する。このとき、洗浄液は全て回収する。次に、ビーカーにシリカゲル13が十分に浸る量のアセトンを加え、そこにセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルを添加して超音波洗浄機にて1時間抽出を行う。そして、得られた抽出液をガスクロマトグラフにより定量分析し、次式により蒸散率(%)を算出する。
蒸散率(%)=(殺虫原体の蒸散量/加熱蒸散用製剤中の殺虫原体の含有量)×100
結果を表1に示す。なお、各試験例は2回づつ行い、平均の蒸散率を算出した。
【0024】
【表1】

【0025】
表1から、本発明の加熱蒸散用製剤は、実用上十分な殺虫原体の蒸散率を有することが明らかとなった。なお、深さLは20mm以下である場合、蒸散率がとくに良好であった。深さLが25mmよりも深い場合は、いったん蒸散した殺虫原体が容器内で熱分解するためか蒸散率が低下すると考えられる。
【0026】
[試験例2]
試験例1において、薬剤収納部5の深さLを10mmに、かつ加水発熱剤収納部2の底部と薬剤収納部5の底部との間隔hを下記表2に示すように20〜70mm、また酸化カルシウム充填量を表2に示すように変更したこと以外は、試験例1と同様に行った。結果を表2に示す。なお、各試験例は2回づつ行い、平均の蒸散率を算出した。
【0027】
【表2】

【0028】
表2から、本発明の加熱蒸散用製剤は、実用上十分な殺虫原体の蒸散率を有することが明らかとなった。なお、間隔hは40mm以上60mm以下である場合、蒸散率がとくに良好であった。実施例3、4は、発熱剤の量が比較例1、2と比べて約30〜50%少なく、発熱量が少ないが、より優れた蒸散率が得られた。間隔hを70mmとして酸化カルシウム量を多くして発熱量を増やしても、ペルメトリン殺虫原体の平均蒸散率は上がらず、逆に大きく減少した。
これは間隔hを大きくすることで発熱剤量を多くできるが、発熱剤全体に水が行き渡るのに時間がかかり、発熱のロスが発生するためであると考えられる。
なお、試験例1および2において、加水発熱剤収納部2を直径53.2mm、間隔h=50mm、酸化カルシウム量を100gとし、薬剤収納部5を、直径38mm、L=10mmと変更してもほぼ同様の結果が得られた。
【0029】
[参考例]
市販の加熱蒸散用製剤(商品名「アースレッドW」内容量30g)に使用されている自己発熱装置(加水発熱剤収納部の外径68mm、薬剤収納部の内径53mm、薬剤収納部の深さ55mm、加水発熱剤収納部の底部と薬剤収納部の底部との間隔20mm)を用いて、試験例1と同様にしてペルメトリン殺虫原体(液状、200mg)を加熱蒸散させて蒸散率を算出した。なお、加水発熱剤として酸化カルシウム140gを使用した。試験は2回繰り返して行い、蒸散率は平均値とした。
試験の結果、ペルメトリンの平均蒸散率は、21.7%であった。
【0030】
上記結果より、薬剤収納部の深さLと、加水発熱剤収納部の底部と薬剤収納部の底部との間隔hが本発明の範囲外のものでは、本発明のものに比べて低い蒸散率に留まった。これは、いったん蒸散した殺虫原体が容器内で熱分解したためと考えられる。
【0031】
[試験例3]
加水発熱剤収納部2の外径68mm、薬剤収納部5の内径53mm、薬剤収納部の深さL10mm、加水発熱剤収納部2の底部と薬剤収納部5の底部との間隔h40mmとした自己発熱装置を用意し、同薬剤収納部5内にペルメトリン殺虫原体(液状、1000mg)を収納した加熱蒸散用製剤を製造し、加熱蒸散させて煙の量を測定した(本発明)。
また、上記参考例に記載した自己発熱装置を用いて、同薬剤収納部内にペルメトリンを配合した顆粒剤10g(ペルメトリン10質量%、澱粉2質量%、アゾジカルボンアミド88質量%を混合、造粒したもの)を収納した加熱蒸散用製剤を製造し、加熱蒸散させて煙の量を測定した(比較例)。
そして、両者の煙の量から本発明の加熱蒸散用製剤の減煙率を算出した。煙の量の測定方法及び減煙率は、以下のとおりに実施、算出した。
試験は、各加熱蒸散用製剤を8畳チャンバー(32m3)中央に設置し蒸散させた。蒸散終了後、チャンバー内の煙が均一になるように、扇風機で2分間撹拌した。蒸散開始から、30分、1時間、2時間後の煙の量(単位:c.p.m)を粉塵計(shibata scientific technology社)を用いて測定した。下記式より比較例に対する本発明の減煙率を求めた。結果を下記表3に示す。
減煙率(%)=(比較例の煙の量−本発明の煙の量)/(比較例の煙の量)×100
【0032】
【表3】

【0033】
本発明の加熱蒸散用製剤は比較例の加熱蒸散用製剤に対して、減煙率が80%程度と高く、煙の発生が大きく減少していることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の加熱蒸散用製剤の構造の一実施形態を説明するための断面略図である。
【図2】従来技術の加熱蒸散用製剤の構造を説明するための断面略図である。
【図3】実施例で用いた補集装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0035】
1,21 自己発熱装置
2 加水発熱剤収納部
3,28 加水発熱剤
4 通水孔
5 薬剤収納部
6 殺虫原体
8,29 容器
9 脚部
W 水
L 薬剤収納部5の深さ
h 通水孔4と薬剤収納部5の底部との間隔
10 加熱蒸散用製剤
11 台座
12 捕集用ロート
13 シリカゲル
14 補集管
15 脱脂綿
22 外容器
23 不織布シート
24 仕切部材
25 蓋部材
26 熱溶融フィルム
27 加熱蒸散用薬剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水発熱剤が収納され、かつ底部および/または側面の底部近傍に通水部分を有する加水発熱剤収納部と、該加水発熱剤収納部の上部に加熱により蒸散する殺虫原体が発泡剤を含まない状態で収納された薬剤収納部とを有する加熱蒸散用製剤であって、前記薬剤収納部の深さが20mm以下、かつ前記加水発熱剤収納部の底部と薬剤収納部の底部との間隔が60mm以下であることを特徴とする加熱蒸散用製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−82101(P2009−82101A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258678(P2007−258678)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】