説明

加熱装置

特にテクスチャード加工機に用いるための糸用の加熱装置が記載されており、複数の縦長の加熱通路を備えており、加熱通路は、2つの加熱群に分けられている。糸は、テクスチャード加工区間の内側で、糸一方の加熱群の加熱通路によって、かつ、後続のリラックス処理区間の内側で、他方の加熱群の加熱通路によって加熱することができる。加熱通路のコンパクトで省エネルギの配置を実現するために、本発明によれば、加熱通路は、同心的な横断面配置で保持され、加熱通路の第1の加熱群が中央域に配置されていて、加熱通路の第2の加熱群が中央域を包囲する縁部域に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、特にテクスチャード加工機に用いるための糸用の加熱装置ならびに請求項9の上位概念に記載のテクスチャード加工機に関する。
【0002】
合成繊維ヤーンを製造する際に、合成糸を溶融紡糸したあとで繊維として使用するために必要な構造を得るために、テクスチャード加工プロセスで処理することが公知である。その際、特にマルチフィラメント糸がテクスチャード加工され、延伸され、リラックス処理(弛緩)される。このような処理ステップを実施するために、テクスチャード加工区間の内側で糸に第1の熱処理を施し、リラックス処理区間の内側で第2の熱処理を施すことが公知である。このために一般的に、独立した加熱装置が用いられ、加熱装置は、糸走行経路上で相前後して配置されている。
【0003】
テクスチャード加工プロセスでこのような熱処理をできるだけエネルギ学的に効果的に行うために、先行技術において個別の2つの加熱群の縦長の加熱通路を備えた加熱装置が公知である。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第1760923号明細書において加熱装置が開示されており、加熱装置は、相互に鏡面対称的に配置された2つのテクスチャード加工機の対称軸線上に配置されている。加熱装置の内側に、3つの加熱群の、相並んで列を成して配置された加熱通路が配置されている。その際、中央列上に相並んで配置された加熱通路は、両方のテクスチャード加工機の加工箇所に対応して配置されており、テクスチャード加工区間の内側で、供給ボビンから引き出された糸が加熱される。加熱装置の内側に設けられた外側の加熱群は、それぞれテクスチャード加工機の1つに対応して配置されており、その際、加熱通路は、それぞれ糸をテクスチャード加工したあとでリラックス処理区間を形成している。
【0005】
公知の加熱装置は、多数の糸を2つのテクスチャード加工機の対象平面上で熱処理するのに適している。加熱装置が、機械の略全長にわたって延在しているので、絶縁に関して多大な手間が要求される。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第2619998号明細書において加熱装置が公知であり、ここでは4つの加熱群の相並んで列を成して配置された加熱通路が設けられており、加熱通路は、共通のハウジング内に配置されている。加熱群は、両方のテクスチャード加工機の対称軸線に対して対称的に配置されているので、機械に割り当てられている。その際、加熱通路は、相並んで列を成して配置されていて、かつ機械の略全幅にわたって延在している。その際、加熱通路は、機械の全幅にわたって絶縁する必要がある。
【0007】
背景技術において、位置的に分けられた2つの加熱群から成る加熱装置も公知である。欧州特許第0039938号においてテクスチャード加工機が公知であり、このテクスチャード加工機は、糸を熱処理するために別個の2つの加熱装置を備えている。各加熱装置は、加熱通路の個別の加熱群を備えており、加熱通路は、第1の加熱装置の内側でテクスチャード加工区間内で束状に配置されている。したがって加熱装置の内側に加熱通路をコンパクトに配置することができるが、テクスチャード加工区間およびリラックス処理区間に個別の加熱装置が必要であるという欠点が存在する。
【0008】
したがって本発明の課題は、冒頭で述べた加熱装置を改良して、複数の加熱群の加熱通路が、エネルギ学的に好適に配置して保持されているものを提供することである。
【0009】
さらに本発明の課題は、加熱装置を備えた公知のテクスチャード加工機を改良して、加熱群の加熱通路をコンパクトに配置しつつ、隣接するテクスチャード加工機に依存しない構造群の極めてフレキシブルな配置を実現することである。
【0010】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の構成を有する加熱装置ならびに請求項9の特徴部に記載の構成を有するテクスチャード加工機によって解決される。
【0011】
本発明の好適な構成は、各従属請求項に規定されている。
【0012】
本発明の利点によれば、加熱群の加熱通路を特にコンパクトに配置して保持することができるので、外向きに作用する熱絶縁部を最小限に抑えることができる。このために加熱通路は、同心的な横断面配置で保持され、第1の加熱群の加熱通路は、中央域に配置されており、第2の加熱群の加熱通路は、中央域を包囲する縁部域に配置されている。したがって加熱群の入り込んだ(入れ子式の)配置構造が得られる。加熱通路の同心的な横断面配置により、多数の糸を狭い空間でまとめて熱処理を、テクスチャード加工機のテクスチャード加工区間でもテクスチャード加工機のリラックス処理区間でも行うことができる。したがって熱絶縁部および加熱手段の使用を最小限に抑えることができる。
【0013】
空間利用に関して、一方または両方の加熱群の加熱通路を相並んで円を描くように配置して保持するような配置が特に好適である。したがって加熱装置の糸は、全面からガイドすることができる。本発明による加熱装置は、とりわけテクスチャード加工機の中央で糸の熱処理を行うために適している。
【0014】
加熱装置の加熱群において様々な熱処理を行うために、本発明の好適な別の構成では、個別に制御可能な複数の加熱手段が設けられていて、その際、加熱通路の各加熱群に対応して少なくとも1つの加熱手段が配置されている。
【0015】
加熱手段として、電気式の加熱エレメントまたは熱伝達媒体の加熱循環路またはそのような加熱手段の組み合わせが用いられる。
【0016】
同時に処理しようとする糸が多数ある場合に加工群を形成するために、本発明の別の格別に好適な構成によれば、加熱通路の複数の部分加熱群が加熱群の内側に形成されていて、加熱通路の各部分加熱群に対応して1つの加熱手段が配置されている。したがって熱処理を行う際に高い融通性が得られる。したがって加熱通路の部分加熱群は、隣接する部分加熱群とは無関係に加熱することができる。
【0017】
熱処理の要求に応じて、加熱群の加熱通路は、個々の加熱管または個々の加熱溝によって形成することができ、その際、加熱溝に対応して単数または複数のカバー手段が配置されている。
【0018】
加熱溝を備えた加熱群は、好適な構成によれば、加熱装置の縁部域に形成されているので、糸は、外側から、開いた加熱溝に導入可能である。したがって多数の糸でも、簡単に操作して、外側の加熱群の加熱通路に導入することができる。
【0019】
好適には、加熱管として形成された加熱通路に対応して、入口側でも出口側でも、ガイド管が配置されるので、糸を通すために、入口に作用する吸込流を形成するインジェクタを用いることができる。
【0020】
加熱群の相互の影響を回避するために、加熱通路の加熱手段の間に複数の絶縁エレメントが設けられている。したがって加熱群において、糸を、様々な温度範囲で処理することが保証される。
【0021】
本発明によるテクスチャード加工機の特徴によれば、従来のテクスチャード加工機と比べて所要スペースが大幅に削減されている。
【0022】
空間利用に関して、加工箇所のゴデット搬送装置は、好適には、加熱装置に対して対称的に配置されている。したがって好適には、加工箇所において糸を延伸する際に、均等な延伸長さが得られる。
【0023】
加熱装置の縁部域の加熱通路がテクスチャード加工区間の内側に位置し、加熱装置の中央域の加熱通路がリラックス処理区間の内側に位置するように、ゴデット搬送装置が加工箇所に配置されていることによって、テクスチャード加工機において特に好適な配置構造が実現される。
【0024】
このために加熱装置は好適には鉛直に方向付けされており、その際、複数のテクスチャード加工アセンブリが、加熱装置に対して間隔を有して、相並んで部分円を描くように配置して保持されている。
【0025】
加工箇所が極めて多数ある場合に全ての加工箇所で簡単で迅速な操作性を得るために、本発明によるテクスチャード加工機の別の好適な構成によれば、加工箇所が複数の加工群に分けられており、各加工群に対応して加熱装置の加熱通路の部分加熱群が配置されている。したがって加熱通路の部分加熱群、加工群の搬送装置、テクスチャード加工アセンブリを機械モジュールにまとめることができ、その際、機械モジュールは、相互に独立して制御可能である。
【0026】
本発明によるテクスチャード加工機は、極めてコンパクトで省エネルギの機械構想において優れており、自動テクスチャード加工機にも半自動のテクスチャード加工機にも使用可能である。
【0027】
以下に、図面に示す幾つかの実施の形態に基づいて、本発明による加熱装置ならびに本発明によるテクスチャード加工機を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による加熱装置の第1の実施の形態を示す概略縦断面図である。
【図2】本発明による加熱装置の第1の実施の形態を示す概略横断面図である。
【図3】本発明による加熱装置の別の実施の形態を示す概略横断面図である。
【図4】本発明によるテクスチャード加工機の1つの実施の形態を示す概略平面図である。
【図5】図4に示すテクスチャード加工機の実施の形態の加工箇所を示す概略横断面図である。
【0029】
図1には、本発明による加熱装置の第1の実施の形態を概略縦断面図で示し、図2には、概略横断面図で示す。図面についてどの図面に関するものか特記していない場合は、以下の記載は、両方の図面に当てはまる。
【0030】
加熱装置は、加熱される複数の加熱通路2.1,3.1を備えている。加熱通路2.1,3.1は、2つの加熱群2,3に分けられている。加熱群2の加熱通路2.1は、加熱装置の縁部域5に形成されている。加熱群3の加熱通路3.1は、中央域4に配置されており、中央域4は、縁部域5の中央に同心的に位置していて、縁部域5により包囲されている。加熱群2の加熱通路2.1は、加熱群3の加熱通路3.1に対して同心的に配置されていて、加熱通路3.1を包囲している。加熱群2は、本実施の形態では、全体で5本の加熱通路2.1によって形成され、加熱通路2.1は、円を描くように配置して保持されていて、縁部域5の周にわたって均等に分配されている。第2の加熱群3は、同様に5本の加熱通路3.1を備えており、加熱通路3.1は、加熱装置の中央域4の中央に配置されている。
【0031】
加熱群3の加熱通路3.1は、本実施の形態では、加熱管14によって形成されており、加熱管14は、それぞれ加熱被覆体7によって包囲されている。加熱管14は、端部で開いていて、糸入口と糸出口とを形成している。加熱管14に対応して配置された加熱被覆体7は、中空円筒形に形成されていて、外側の加熱循環路8を介して加熱被覆体7に供給される熱伝達媒体を収容する。加熱循環路8に対応して加熱循環路制御装置9が配置されており、加熱循環路制御装置9により、加熱管14において所望の処理温度を調節することができる。加熱管14および加熱被覆体7は、絶縁エレメント13.2により包囲されていて、縁部域5に対して絶縁されている。絶縁エレメント13.2は、中央域4を形成している。
【0032】
加熱群2の加熱通路2.1は、それぞれ加熱溝15によって形成されており、加熱溝15の溝底に対応して電気的な加熱エレメント6が配置されている。加熱溝15の加熱エレメント6は、加熱制御装置10と接続されており、加熱制御装置10は、これに対応して配置された電源16によって、温度の閉ループ制御および開ループ制御を行う。
【0033】
糸をガイドするために、加熱溝15の内側にガイドレール39が配置されており、ガイドレール39を備えた加熱溝15は、全長にわたって、カバー手段により、周囲に対してカバーされていて、絶縁されている。
【0034】
図2から看取されるように、カバー手段12.1〜12.4は、セグメント(円弧)状に形成されていて、加熱溝15を開放するために、それぞれ縁部域5から取り出すことができる。縁部域5は、第2の絶縁エレメント13.1によって形成されており、第2の絶縁エレメント13.1に、加熱エレメント6および加熱溝15が埋め込まれている。加熱溝15は、加熱装置の端面で開いていて、したがって糸入口と糸出口とを形成する。
【0035】
運転時には、縁部域5に形成された加熱群2の加熱溝2.1が、これに対応して配置された加熱エレメント6によって加熱され、加熱制御装置10によって、第2の加熱群3とは無関係に、個別に、加熱に関して制御される。加熱群3の加熱通路3.1は、これに対応して配置された加熱被覆体7によって加熱され、加熱循環路8の制御装置9によって制御される。したがって加熱通路2.1,3.1を通ってガイドされる糸に、好適には多様な温度処理が行われる。したがって加熱装置は、好適にはテクスチャード加工機に用いられ、複数の糸に、テクスチャード加工区間内で第1の熱処理が施され、後置のリラックス処理区間内で別の加熱が行われる。
【0036】
図1および図2に示す実施の形態では、加熱通路の数は例示したものに過ぎない。原則として、このような加熱装置は、100本を超える糸を1つの加熱群で同時に加熱するように拡張することができる。さらに図示の実施の形態では、両方の加熱群2,3における加熱通路の数は同じである。原則として、1つの加熱群に複数の糸の加熱通路を形成することもできる。したがってたとえば1本の加熱溝の内側に2本の糸のためのガイドレールを配置することができる。同様に両方の加熱群2,3の加熱通路は、様々な加熱長さに形成することもできる。したがって追加的な自由度が所与され、テクスチャード加工区間およびリラックス処理区間において糸に様々な熱処理を施すことができる。
【0037】
特に多数の糸の場合に簡単でエネルギ効率的な操作性を実現するために、1つの加熱群の複数の加熱通路を、好適には、複数の部分加熱群に分けることができ、部分加熱群に対応して個別の加熱手段が配置されている。これに関して図3には、1つの実施の形態を横概略断面図で示している。図3に示す実施の形態の基本構造は、図1および図2に示す実施の形態に対して実質的に同一であり、ここでは相違点についてだけ説明するので、その他の点については前述の記載を参照されたい。
【0038】
図3に示す実施の形態では、第1の加熱群3は、全部で9本の加熱溝3.1を備えており、加熱溝3.1は、加熱管14として形成されていて、それぞれ加熱被覆体7を介して加熱される。加熱管3.1は、絶縁エレメント13.2に埋め込まれている。絶縁エレメント13.2は、縁部域5に配置された絶縁エレメント13.1によって包囲されており、絶縁エレメント13.1には、別の加熱群の加熱通路2.1が配置されている。加熱群2.1は、本実施の形態では、加熱溝15によって形成されていて、加熱溝15は、電気的な加熱エレメント6によって加熱される。加熱装置を示す図3では、加熱溝15のためのカバー手段は図示していない。
【0039】
加熱群2の加熱通路2.1は、複数の部分加熱群11.1,11.2,11.3に分けられている。部分加熱群11.1〜11.3は、それぞれ3本の加熱通路2.1を備えており、加熱通路2.1は、それぞれ加熱エレメント6によって加熱される。第1の部分加熱群11.1の加熱通路2.1に対応して配置された加熱エレメント6は、第1の加熱制御装置10.1と接続されている。相応に部分加熱群11.2の加熱エレメント6は、別の加熱制御装置10.2を介して制御され、第3の部分加熱群11.3の加熱エレメント6は、別の加熱制御装置10.3を介して制御される。
【0040】
これに対して全体で9本の加熱通路3.1を有する加熱群3の加熱手段7は、加熱循環路の制御装置9によって制御される。
【0041】
図3に示す、本発明によるテクスチャード加工機の実施の形態は、テクスチャード加工機の内側で、とりわけそれぞれ一群の加工箇所を備えた個別に制御可能な機械モジュールを形成するのに適している。
【0042】
図3に示す、加熱群と複数の部分加熱群との組み合わせは、例示したものでしかない。原則として、両方の加熱群は、複数の部分加熱群に分けることができる。部分加熱群の数もまた例示したものでしかない。さらに部分加熱群内に設けられる加熱通路の数は、変更することができる。
【0043】
図4および図5は、本発明によるテクスチャード加工機の第1の実施の形態を示しており、ここでは供給ステーションおよび巻き取り装置は、中央に配置された加熱装置に対して同じ間隔を置いて対称的に配置されている。図4は、第1の実施の形態を示す概略平面図であり、図5は、第1の実施の形態を示す概略横断面図である。図面に基づく詳細な説明において明確に言及していない限り、後続の記載は両方の図面に当てはまるものとする。
【0044】
本発明によるテクスチャード加工機の図示の実施の形態では、全体で12個の加工部または加工箇所17.1〜17.12が、中央の加熱装置1に対応して配置されている。図4から看取されるように、加熱装置1は、機械の中央の設置部分に配置されている。加工箇所17.1〜17.12のプロセス装置は、相互に加熱装置1に対して間隔を置いて部分円を描くように配置して保持されている。加熱装置1は、機械配置構造の中心を成している。残りの全てのプロセス装置は、加熱装置1を中心として星形に分配して配置されている。たとえばテクスチャード加工アセンブリ22と同等のプロセス装置は、加工箇所17.1〜17.12で、それぞれ加熱装置1に対して同じ間隔を有しているので、同じ長さのテクスチャード加工区間が、加工箇所17.1〜17.12の内側に形成される。
【0045】
加工箇所17.1〜17.12は、プロセス装置の構造および配置において同一に形成されている。加工箇所17.1〜17.12の基本構造について、1つの加工箇所を例に挙げて以下に説明する。
【0046】
図5は、互いに反対側に位置する2つの加工箇所17.3,17.10を断面図で示す。加工箇所17.3は、供給ステーション18を備えており、供給ステーション18は、加熱装置1に対して最大間隔を有して機械の外側部分に配置されている。供給ステーション18は、供給ボビン29を備えており、供給ボビン29は、糸21を、第1のゴデット搬送装置20を介して引き出す。糸をガイドするために、第1のゴデット搬送装置20と供給ステーション18との間に、糸先端ガイド19が配置されている。第1のゴデット搬送装置20は、ゴデットと走行ローラとによって形成され、ゴデットは、ゴデットモータを介して駆動される。供給ボビン29から糸21を引き出すために必要な引張力を及ぼすために、ゴデット搬送装置20には、幾度にも糸が巻き掛けられている。
【0047】
糸の後続の走行経過において、糸21は、加熱装置1の糸入口33.1に向かってガイドされる。このために加熱装置1は、鉛直に方向付けされていて、下面に糸入口33.1を備えている。反対側の上面に、糸出口34.1が形成されている。糸入口33.1および糸出口34.1は、加熱通路2.1の端部に形成されている。加熱通路2.1は、加熱群2の内側で加熱可能に形成されている。本実施の形態では、加熱通路2.1は、加熱管14によって形成されており、加熱管14は、たとえば電気式の加熱被覆体によって加熱可能である。糸入口33.1、糸出口34.1に対応して、それぞれ入口糸ガイド31.1、出口糸ガイド32.1が配置されており、入口糸ガイド31.1、出口糸ガイド32.1によって、進入するかもしくは退出する糸21が変向される。加熱装置1の上方で、加工箇所17.3は、冷却装置23とテクスチャード加工アセンブリ22と第2のゴデット搬送装置24とを備えている。冷却装置23、テクスチャード加工アセンブリ22および第2のゴデット搬送装置24は、真っ直ぐな糸走行経過上で相前後して配置されており、テクスチャード加工アセンブリ22と入口糸ガイド31.1とは、テクスチャード加工区間を成しており、そこでは糸21がテクスチャード加工される。
【0048】
同様にゴデットと走行ローラとから形成される第2のゴデット搬送装置24は、第1のゴデット搬送装置20よりも高い周速で駆動されるので、糸21は、テクスチャード加工区間の内側でドラフトされる。各加工箇所17.1〜17.12において、糸21のテクスチャード加工区間は、同じ長さで形成されている。
【0049】
加工箇所17.3の内側において、糸21は、第2のゴデット搬送装置24で180度変向され、加熱装置1に向かって戻しガイドされる。加熱装置1の内側で、第2群の処理通路3.1が形成されており、処理通路3.1を通って、テクスチャード加工された糸のリラックス処理が実施可能である。第2の加熱群3の第2の加熱通路3.1は、加熱装置1の上面に糸入口33.2を備え、下面に糸出口34.2を備えている。したがって加熱通路2.1,3.1では、糸21が、逆向きに走行する。加熱通路3.1は、本実施の形態では、同様に加熱管14によって形成されており、加熱管14は、個別の加熱手段、たとえば蒸気を用いて加熱する加熱被覆体によって加熱可能である。
【0050】
糸21をガイドするために、加熱装置1の下方に、第3のゴデット搬送装置30が設けられており、第3のゴデット搬送装置30は、同様に被駆動のゴデットと回動可能な走行ローラとによって形成されている。その際、第2のゴデット搬送装置24と第3のゴデット搬送装置30との間に、収縮処理に必要とされる速度差が形成される。リラックス処理区間は、両方のゴデット搬送装置24,30によって規定されている。糸をガイドするために、糸入口33.2および糸出口34.2に対応して、同様に第2の糸ガイド31.2,32.2が配置されている。入口糸ガイドおよび出口糸ガイドは、変向ローラまたは変向ピンによって形成することができる。
【0051】
加工箇所17.3において、第3のゴデット搬送装置30の下流側に巻き取り装置25が配置されている。巻き取り装置25は、ボビンホルダ35を備えており、ボビンホルダ35に、糸を巻き取るためのボビン27が回動可能に保持されている。ボビン27は、周面で、駆動ローラ26に当接し、駆動ローラ26によって、ボビン27は、一定の周速度で駆動される。駆動ローラ26は、糸走行経路でみて綾巻き装置28の下流側に配置されているので、テクスチャード加工された糸21は、綾巻きパッケージに巻き取られる。
【0052】
図4および図5に示す実施の形態では、ボビン交換のための操作は、内側の操作部37から行われる。操作部37は、加熱装置1と加工箇所17.1〜17.12の巻き取り装置25との間の中間スペースに形成されている。機械の、巻き取り装置25に対向する外側には、操作部38が形成されており、操作部38は、供給ボビン29を供給ステーション18に搬送するために用いられる。プロセス開始時における加工箇所17.1〜17.12における糸の設置は、内側の操作部37から行われる。
【0053】
図4から看取されるように、加工箇所17.1〜17.12の間に、進入部36が形成されており、進入部36によって、内側の操作部37は、外側の操作部38と接続されている。
【0054】
プロセス装置の、図4および図5に示す構成は、例示したものでしかなく、糸をガイド、ドラフトおよびテクスチャード加工するための主要のプロセス装置を有しているに過ぎない。原則として、巻き取り装置25の上流側で糸21に薬品を着けることも一般的である。さらに、リラックス処理のまえでテクスチャード加工のあとで糸に撚りを掛けることが公知である。したがってたとえば第2のゴデット搬送装置と加熱装置1の糸入口との間のガイド区間に撚り装置および別の搬送装置を配置することもできる。
【0055】
本発明による加熱装置も本発明によるテクスチャード加工機も、その特徴によれば、糸を熱処理する際にエネルギ消費を大幅に節約することができる。さらに、周囲に対して十分な熱絶縁を得るために、加熱装置は、僅かな絶縁手段しか必要としない。
【符号の説明】
【0056】
1 加熱装置、 2 加熱群、 2.1 加熱通路、 3 加熱群、 3.1 加熱通路、 4 中央域、 5 縁部域、 6 加熱エレメント、 7 加熱被覆体、 8 加熱循環路、 9 加熱循環路制御装置、 10.10.1,10.2,10.3 加熱制御装置、 11.1,11.2,11.3 部分加熱群、 12.1,12.2,12.3,12.4 カバー手段、 13.1 絶縁エレメント、 13.2 絶縁エレメント、 14 加熱管、 15 加熱溝、 16 電源、 17.1,17.2,17.3,17.4,17.5,17.6,17.7,17.8,17.9,17.10.17,11,17.12 加工箇所、 18 供給ステーション、 19 糸先端ガイド 20 第1のゴデット搬送装置、 21 糸、 22 テクスチャード加工アセンブリ、 23 冷却装置、 24 第2のゴデット搬送装置、 25 巻き取り装置、 26 駆動ローラ、 27 ボビン、 28 綾巻き装置、 29 供給ボビン、 30 第3のゴデット搬送装置、 31.1,31.2 入口糸ガイド、 32.1,32.2 出口糸ガイド、 33.1 糸入口、 33.2 糸入口、 34.1 糸出口、 34.2 糸出口、 35 ボビンホルダ、 36 進入部、 37 内側の操作部、 38 外側の操作部、 39 ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にテクスチャード加工機に用いるための糸用の加熱装置であって、複数の縦長の加熱通路(2.1,3.1)を備えており、該加熱通路(2.1,3.1)は、2つの加熱群(2,3)に分けられており、一方の加熱群(2)の、相並んで位置する加熱通路(2.1)が、テクスチャード加工区間の内側で糸を加熱し、他方の加熱群(3)の、相並んで位置する加熱通路(3.1)が、リラックス処理区間の内側で糸を加熱するようになっているものにおいて、
加熱通路(2.1,3.1)は、同心的な横断面配置で保持され、加熱通路(3.1)の第1の加熱群(3)は、中央域(4)に配置されていて、加熱通路(2.1)の第2の加熱群(2)は、中央域(4)を包囲する縁部域(5)に配置されていることを特徴とする、加熱装置。
【請求項2】
一方の加熱群(2,3)または両方の加熱群(2,3)の加熱通路(2.1,3.1)は、相並んで円を描くように配置して保持されている、請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
個別に制御可能な複数の加熱手段(6,7)が設けられており、加熱通路(2.1,3.1)の各加熱群(2,3)に対応して、少なくとも1つの加熱手段(6,7)が配置されている、請求項1または2記載の加熱装置。
【請求項4】
加熱手段は、複数の電気式の加熱エレメント(6)および/または熱伝達媒体の単数または複数の加熱循環路(8)によって形成されている、請求項3記載の加熱装置。
【請求項5】
加熱通路(2.1)の複数の部分加熱群(11.1,11.2)が、加熱群(2)の1つの内に形成されており、加熱通路(2.1)の各部分加熱群(11.1,11.2)に対応して加熱手段(6)の1つが配置されている、請求項3または4記載の加熱装置。
【請求項6】
加熱通路(2.1,3.1)は、加熱管(14)および/または加熱溝(15)によって形成されており、加熱溝(15)に対応して単数または複数のカバー手段(12.1,12.2)が配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の加熱装置。
【請求項7】
加熱溝(15)は、糸が外側から開いた溝(15)に導入可能であるように、縁部域(5)に配置されている、請求項6記載の加熱装置。
【請求項8】
複数の絶縁エレメント(13.1,13.2)が設けられており、該絶縁エレメント(13.1,13.2)は、加熱通路(2.1,3.1)の加熱手段(6,7)の間に配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の加熱装置。
【請求項9】
複数の加工箇所(17.1,17.2,17.3,17.4,17.5,17.6,17.7,17.8,17.9,17.10,17.11,17.12)と、該加工箇所(17.1,17.2,17.3,17.4,17.5,17.6,17.7,17.8,17.9,17.10,17.11,17.12)に対応して配置された加熱装置とを備えた、複数のマルチフィラメント糸をテクスチャード加工するためのテクスチャード加工機において、
請求項1から8までのいずれか1項記載の加熱装置(1)が設けられていることを特徴とする、テクスチャード加工機。
【請求項10】
加工箇所(17.1,17.2,17.3,17.4,17.5,17.6,17.7,17.8,17.9,17.10,17.11,17.12)は、複数のゴデット搬送装置(20)を備えており、該ゴデット搬送装置(20)は、加熱装置(1)に対して対称的な配置で保持されている、請求項9記載のテクスチャード加工機。
【請求項11】
ゴデット搬送装置(20,24,30)が、加工箇所(17.1,17.2,17.3,17.4,17.5,17.6,17.7,17.8,17.9,17.10,17.11,17.12)に配置されており、加熱装置(1)の縁部域(5)の加熱通路(2.1)が、テクスチャード加工区間の内側に位置しており、加熱装置(1)の中央域(4)の加熱通路(3.1)が、リラックス処理区間の内側に位置している、請求項10記載のテクスチャード加工機。
【請求項12】
加熱装置(1)が、鉛直に形成されており、複数のテクスチャード加工アセンブリ(22)が、加熱装置(1)に対して間隔を置いて、相並んで部分円を描くように配置して保持されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のテクスチャード加工機。
【請求項13】
加工箇所が、複数の加工群に分けられており、各加工群に対応して加熱装置の加熱通路の部分加熱群が配置されている、請求項9から12までのいずれか1項記載のテクスチャード加工機。
【請求項14】
加工群に対応して配置された加熱通路の部分加熱群が、加工群に対応して配置された搬送装置およびテクスチャード加工アセンブリと共に、機械モジュールを形成しており、該機械モジュールが、相互に独立して制御可能である、請求項13記載のテクスチャード加工機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−508833(P2012−508833A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535959(P2011−535959)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064451
【国際公開番号】WO2010/054945
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】