説明

加熱調理器

【課題】扉が開いていることを検出し、扉が開いていることによる周辺への加熱の影響を防止する。
【解決手段】被加熱調理物を上下ヒータ15、17で加熱調理する加熱空間10の前部に設けられている前扉1aの外側上方の前板23に取り付けられている温度検知器11a、11bで前扉1aの外部の周囲温度を検知し、この温度検知器11a、11bで検知した温度に基づき前扉1aが開いていることを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、グリル庫を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器としてビルトイン型や据付型のIHクッキングヒータ又はガスレンジの内部には魚などの被加熱調理物を焼くためにグリル庫が設けられている。このグリル庫は、被加熱調理物を加熱する加熱空間内に被加熱調理物を設け、この被加熱調理物の上下に設けられたヒータ等で被加熱調理物を加熱調理するものであり、このようなグリル庫では被加熱調理物を出し入れする加熱空間の前側に前扉が取り付けられ、この前扉を開けて、被加熱調理物の出し入れを行うとともに、被加熱調理物をヒータ等で加熱調理するときには、前扉を閉じて、加熱空間の熱が外部に漏れないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010―15763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この前扉を不完全に閉じた状態、つまり僅かな隙間がある半開き状態で加熱調理を行うと、加熱空間の熱が前扉の隙間を通って外部に熱風として漏れ出し、この前扉の周辺に影響を与える可能性がある。この不具合を防止するため、押圧式やホールIC等を用いたドアスイッチを用いれば、半開きであることを検知することはできるが、構造が複雑になるといった課題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ドアスイッチを用いずに扉が開いていることを検出し、扉が開いていることによる周辺への加熱の影響を防止することができる加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、グリル庫を有し、このグリル庫内にある被加熱調理物を加熱調理する加熱手段と、該グリル庫の前部に被加熱調理物を出し入れするための前扉が設けられている加熱調理器であって、前記前扉の外部の周囲温度を検知する温度検知器と、この温度検知器で検知された温度に基づき前記前扉が開いていることを検出する扉開検出手段とを有することを特徴とする加熱調理器において、例えば温度検知手段で前扉の外側の周囲温度を検知し、この温度検知器で検知された温度に基づき前記前扉が開いていることを検出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態に係わるグリル庫を組み込んだIHクッキングヒータの全体を示す斜視図である。
【図2】図1に示すIHクッキングヒータのトッププレートを取り除いた全体を示す斜視図である。
【図3】図1における線A−Aに沿った断面図である。
【図4】図1に示すグリル庫の入力電力および温度特性を示す図である。
【図5】図1に示すグリル庫の作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係わるグリル庫を組み込んだIHクッキングヒータの全体を示す斜視図である。同図に示すIHクッキングヒータ100は、キッチンカウンタ200に形成された所定の大きさの開口部に筺体を落とし込むようにして嵌合させて組み込まれているものであり、このように組み込まれたIHクッキングヒータ100の前側の左上部には、グリル庫として組み込まれている本実施形態のグリル庫1の前扉の前面が見えている。
【0010】
このグリル庫1は、加熱空間10内に収容される、例えば魚などの被加熱調理物を引出し式に取り出し得るように構成され、この引出し部の前扉が符号1aで示される。この引出し部の前扉1aの下側には、この引出し部を手前に引き出すための横に長い取っ手1bが前方に突出して取り付けられている。なお、引出し部の前扉1aには、透明な耐熱ガラスで覆われた矩形の窓部1cが形成され、この透明な耐熱ガラスの窓部1cを通して、グリル庫内で加熱調理されている被加熱調理物の加熱状態を直接目視で観察することができる。
【0011】
また、グリル庫1の窓部1cを含むグリル庫前面の開口部を囲む筐体前面の周囲部分には、パッキン1dが貼り着けられて設けられる。このパッキン1dによりグリル庫1の前扉1aをグリル庫1の引出し部の奥へ押し込んで前扉1aを完全に閉じたときには、パッキン1dによりグリル庫の前扉1a側は完全に密封状態に閉塞され、グリル庫内の熱や煙が前扉1a側から漏出することが防止されている。
【0012】
なお、キッチンカウンタ200に組み込まれたIHクッキングヒータ100の上面には、耐熱ガラスで構成されるトッププレート103が載置されている。そして、このトッププレート103の内側表面上には、2つの大きな円形の加熱領域表示マーク105、107と小さな円形の加熱領域表示マーク109が描かれる。
【0013】
これらの加熱領域表示マーク105、107、109は、鍋などの調理器具を載置し、調理が行われる際の目標とされる。すなわち、それぞれの加熱領域表示マーク105、107、109の真下のIHクッキングヒータ100の内部に、それぞれ2個の大きな誘導加熱コイルと1個の小さな例えばラジエントヒータなどからなる加熱手段が設けられており、これらの加熱領域表示マークの上に鍋などの調理器具を載置することにより、その真下に設けられた誘導加熱コイルまたはラジエントヒータにより調理器具が加熱され、調理が行われる。
【0014】
また、加熱領域表示マーク105、107の前側のトッププレート103の上には、上述した誘導加熱コイルやラジエントヒータなどからなる複数の加熱手段をオンオフ操作したり、その加熱状態などを制御および表示するための表示操作部111の一部が複数の矩形マーク等で図示される。この複数の矩形マークの下方のIHクッキングヒータ100内には、表示操作部111の本体部分であるLEDや静電感知スイッチなどが配設されている。
【0015】
なお、この表示操作部111を構成するLEDや静電感知スイッチなどの一部、すなわち前扉1aの上部に位置する表示操作部111の一部分は、半開き状態のときに、加熱空間内の熱風が前扉1aとの間隙から漏れ出し、この熱風が表示操作部111の一部分に影響を与える可能性が考えられる。本実施形態では、後述するように、このような可能性についても防止しているものである。
【0016】
また、図1において、トッププレート103の後部左側には、多数の孔のあいた排気口カバー121aが載置されているが、この排気口カバー121aの下側には、グリル庫1の加熱空間に連通する後述する排気路121が形成され、グリル庫1の加熱空間で加熱調理されることで、被加熱調理物から出てくる煙や水蒸気などを排気路121を通し、排気口カバー121aの孔から外部に排出するようになっている。更に、グリル庫1の右側のIHクッキングヒータ100の前側には、操作部3が隣接して設けられているが、この操作部3は、ワンプッシュでせり出すように構成され、IHクッキングヒータ100の全体の電源ボタン、各加熱手段のオンオフ操作ボタン、温度調整ボタン、タイマなどが設けられているものである。
【0017】
図2は、図1に示すIHクッキングヒータ100のトッププレート103を取り除いて、その下方の2個の大きな誘導加熱コイル115、117と1個の小さなラジエントヒータ119および前記排気口カバー121aの下方の排気路121を図示しているものである。誘導加熱コイル115、117およびラジエントヒータ119は、それぞれ図1に示した加熱領域表示マーク105、107,109の位置に対応して設けられるものである。なお、図2において、誘導加熱コイル115、117の前側には、前記表示操作部111が設けられていることが図示されている。
【0018】
更に、図2においては、グリル庫1の透明な耐熱ガラスの窓部1cの上部の右側および左側には、温度検知器11a、11b、例えばサーミスタがそれぞれ1個ずつ設けられている。これらの温度検知器11a、11bは、後述する図3からも分かるように、前扉1aの外部の周囲温度、ここではグリル庫1の前扉1aの外方上部の温度を、前板23を介して検知しうるように、前扉1a上部の前板23部分に設けられる。このように前板23の背面に取り付けることで、前板23に穿設して温度検知器11a、11bを取り付ける必要がないため、取り付け構造を簡易にすることができる。
【0019】
具体的な検知方法は、グリル庫1の加熱空間10に被加熱調理物を収容し、上下のヒータで被加熱調理物を加熱調理する場合に、グリル庫1の前扉1aが完全に閉じられず、前扉1aに隙間G1が生じてしまった半開き状態の場合に、この隙間G1を通して、グリル庫1の加熱空間10から漏出する熱風W3によって周囲の温度が上昇するため、この周囲温度を温度検知器11a、11bで検出して半開き状態か否かを検知する。
【0020】
図3は、図1における線A−Aに沿った断面図であり、グリル庫1の内部の構造およびこのグリル庫1の周囲に配置される誘導加熱コイル117などを図示している。図3において、グリル庫1の加熱空間10の上下には、下ヒータ15および上ヒータ17が設けられ、これらの下ヒータ15、上ヒータ17の上下方向のほぼ真ん中に図示しない魚などの被加熱調理物が配置される。つまり下ヒータ15と上ヒータ17とで上下方向から同時に加熱調理が可能なように構成される。
【0021】
なお、下ヒータ15の下方には、グリル皿13が設けられ、下ヒータ15と上ヒータ17で加熱調理されて被加熱調理物から落下する油などをグリル皿13で受けるようになっている。また、グリル皿13は、一端が前記前扉1aの下部に連結され、前扉1aの取っ手1bに指などを引っ掛けて、外部に引き出した場合には、グリル皿13も同様に外部に引き出されるようになっている。また、加熱空間10の中央において被加熱調理物が載置される図示しない焼網などの載置台の一端も前扉1aに連結されていて、前扉1aを外部に引き出した時には、焼網も同様に外部に引き出され、下ヒータ15と上ヒータ17で加熱調理された被加熱調理物を取り出すことができる。
【0022】
図3に示すように、グリル庫1の加熱空間10の後部は、前記排気路121に連通する排気水平路125に連結され、この排気水平路125と排気路121との間には、例えばパラジウム触媒で構成される脱臭手段123が設けられている。加熱空間10において、下ヒータ15と上ヒータ17で加熱調理されて魚などの被加熱調理物から出る煙などは、矢印W1、W2で示すように、排気水平路125および排気路121を通過した際に脱臭手段123で脱臭された後、排気口カバー121aに形成された多数の孔を通って外部に排出される。
【0023】
図3において、グリル庫1の上側のトッププレート103下面には、前記誘導加熱コイル117が設けられている。また、トッププレート103の前側(図3中、右側)は、キッチンカウンタ200の上面を構成するワークトップ201の上面にかかるように載置されている。さらに、このワークトップ201と誘導加熱コイル117との間であって、トッププレート103の下側には、前記表示操作部111の表示部や処理部を実装するPC基板21が設けられ、このPC基板21に実装される前記温度検知器11a、11bの検知部分は、ワークトップ201によって支持されるキッチンカウンタ200の筐体の前側上部部分を構成する前板23に設置される。
【0024】
このように温度検知器11a、11bがPC基板21に直接実装されていることから、当該温度検知器11a、11bの取り付けや配線及び検証に係るコストを大幅に低減できるものである。
【0025】
なお、温度検知器11a、11bは、図3では温度センサとしてサーミスタが用いられることから、前板23の裏面(筐体内側面)に接触した状態でリードの弾性若しくは接着剤や接着テープによって固定されるが、このように設置方法に限定されることなく、使用する温度センサに最適な方法によって設置されるものである。例えば離間計測が可能な放射温度センサを用いる場合には前板23に穿孔して設けた開口から計測方向を後述する隙間G1に向けて設置されるものであってもよい。
【0026】
以上のようにキッチンカウンタ200にビルトインされたIHクッキングヒータ100にグリル庫として組み込まれたグリル庫1において、グリル庫1の加熱空間10の下ヒータ15と上ヒータ17の間に被加熱調理物を設け、下ヒータ15と上ヒータ17とで加熱する場合、グリル庫1の下ヒータ15、上ヒータ17は、図4の下側に示すパルス状の入力電力のうちの実線で示す入力電力aを供給され、被加熱調理物を加熱調理する。
【0027】
このような入力電力aで駆動される下ヒータ15、上ヒータ17による被加熱調理物の加熱調理において、グリル庫1の前扉1aが完全に閉じられ、隙間がない場合には、グリル庫1の加熱空間10は、図4の上側に示す温度特性のうち実線の庫内温度aで示すように、例えば250゜C程度に加熱制御され、加熱空間10の被加熱調理物は、この約250゜Cで正常に加熱調理されるとともに、この加熱調理で被加熱調理物から出る煙などは、加熱空間10から後方の排気水平路125、脱臭手段123、排気路121を通って、脱臭されながら、排気口カバー121aの多数の孔から外部に排出される。
【0028】
この場合において、グリル庫1の前扉1aの上方の前記前板23に取り付けられている温度検知器11a、11bで検知される前板温度Toは、図4の上側に示す温度特性のうちの実線の前板温度aで示すように50゜C程度と比較的低い温度となり、この前板23の周囲の例えば表示操作部111や家具などに温度の影響がないようになっている。なお、この前板温度aは、前板23に取り付けられている温度検知器11a、11bで検知され、グリル庫1の図示しない制御部に供給されるが、制御部は、この温度検知器11a、11bで検知した前板温度Toが50゜C程度と比較的低い温度である場合には、下ヒータ15、上ヒータ17による被加熱調理物の加熱調理を続けて行う。
【0029】
一方、上述したと同じ条件での被加熱調理物の加熱調理において、グリル庫1の前扉1aが完全に閉じられず、前扉1aに隙間がある半開きの場合、すなわち図3に示すように、前扉1aとグリル庫1の前側との間に隙間G1が発生し、この隙間G1から矢印W3で示すように加熱空間10からの熱が熱風として外部に排出されると、この熱風W3により前扉1aの周囲、すなわち前扉1aに近い前板23などを含む周囲が加熱され、この周囲に対して影響が与えられる。
【0030】
具体的には、前扉1aの隙間G1から熱風W3が排出されると、前板23の前板温度Toは、徐々に上昇し、最終的には図4の上側に示す温度特性のうちの点線の前板温度bで示すように約120゜C程度まで上昇するが、この前板温度bは、温度検知器11a、11bで検知され、グリル庫1の制御部に供給される。
【0031】
制御部は、扉開検出手段を構成するものであるが、この前板温度bを第1の所定の温度Tos1と比較し、前板温度bが第1の所定の温度Tos1になると、グリル庫1の前扉1aが完全に閉じられていないものと判断し、図示しないブザーを鳴動するかまたは図示しないLED表示ランプを点灯するかまたはブザーの鳴動とLED表示ランプの点灯を同時に行い、グリル庫1の前扉1aが完全に閉じてないことを使用者に通知する。なお、ブザー、LED表示ランプは、通知手段を構成するものである。
【0032】
更に、制御部は、ブザーの鳴動、LED表示ランプの点灯などで前扉1aが完全に閉じてないことを通知するも、前板温度bが更に上昇することを温度検知器11a、11bで検知し、前板温度bが第1の所定の温度Tos1よりも高い第2の所定の温度Tos2になると、図示しない入力電力低減停止手段により下ヒータ15、上ヒータ17に対する入力電力の供給を停止して下ヒータ15、上ヒータ17による加熱を停止したり、または下ヒータ15、上ヒータ17に対する入力電力を低減するなどして、加熱空間10の温度および前板23の温度を低下させる。
【0033】
なお、上述したように、前扉1aの隙間G1から熱風W3が排出される場合には、この熱風W3の分だけ、グリル庫1の加熱空間10の温度が低下することになるので、前記制御部は、前記入力電力aの代わりに、図4の下側に示すパルス状の入力電力のうちの点線で示すように通電時間の長い入力電力bを下ヒータ15、上ヒータ17に供給し、すなわち下ヒータ15、上ヒータ17に対する平均入力電力を増大し、これによりグリル庫1の加熱空間10の温度を図4の上側に示す温度特性のうち点線の庫内温度bで示すように、前とほぼ同じ例えば250゜C程度の一定の温度に維持するように制御する。
【0034】
なお、前扉1aの隙間G1から熱風W3が排出されることによるグリル庫1の加熱空間10の温度の低下は、グリル庫1の加熱空間10内に設けられている図示しない庫内温度検知サーミスタにより検知されるが、この検知した加熱空間10の温度の低下を補うべく上述したように通電時間の長い入力電力bを下ヒータ15、上ヒータ17に供給し、これによりグリル庫1の加熱空間10の温度をほぼ一定の温度に維持するように制御する。
【0035】
また、上述したように、前板温度bが第1の所定の温度Tos1よりも高い第2の所定の温度Tos2になると、庫内温度検知サーミスタで検知している加熱空間10内の温度を制御目標温度以下に低下させるように下ヒータ15、上ヒータ17に対する入力電力を低減して、加熱空間10の温度や前板23の温度を低下させたり、または下ヒータ15、上ヒータ17による加熱を停止してもよい。
【0036】
次に、図5に示すフローチャートを参照して、本実施形態のグリル庫1の動作を説明する。
【0037】
上述したように、グリル庫1の加熱空間10に置いた被加熱調理物を下ヒータ15、上ヒータ17で加熱している加熱調理において、温度検知器11a、11bで前板温度Toを検出すると(ステップS101)、この前板温度Toを前記第1の所定の温度Tos1と比較し、前板温度Toが第1の所定の温度Tos1よりも高いか否かを判定する(ステップS103)。
【0038】
前板温度Toが第1の所定の温度Tos1よりも低い場合には、次のステップS107に進むが、前板温度Toが第1の所定の温度Tos1よりも高い場合には、グリル庫1の前扉1aが完全に閉じられていないと判断し、ブザーを鳴動するかまたはLED表示ランプを点灯するかまたはブザの鳴動とLED表示ランプの点灯を同時に行い、グリル庫1の前扉1aが完全に閉じてないことを使用者に報知する(ステップS105)。
【0039】
ステップS103の判定において、前板温度Toが第1の所定の温度Tos1よりも低い場合には、前板温度Toを第1の所定の温度Tos1よりも高い第2の所定の温度Tos2と比較し、前板温度Toが第2の所定の温度Tos2よりも高いか否かを判定する(ステップS107)。前板温度Toが第2の所定の温度Tos2以上に高い場合、加熱空間10内の設定温度Tisを前扉1aが閉じている時の設定温度である扉閉設定温度Tis2よりも低い設定温度Tis1に設定し、この低い設定温度Tis1になるように下ヒータ15、上ヒータ17に対する入力電力を低減し、これにより加熱空間10内の温度および前板23の前板温度Toを低下させる(ステップS109)。
【0040】
一方、ステップS107の判定において、前板温度Toが第2の所定の温度Tos2よりも低い場合には、ステップS111に進み、加熱空間10内の設定温度Tisを前扉1aが閉じている時の設定温度である扉閉設定温度Tis2に設定し、加熱調理を同じように継続する。
【0041】
次に、ステップS113において、加熱空間10内の温度Tiを検出し、この温度Tiが前板温度Toに応じて設定される設定温度Tisよりも高いか否かを判定する(ステップS115)。加熱空間10内の温度Tiが設定温度Tisよりも低い場合には、下ヒータ15、上ヒータ17をオンにして、そのまま加熱調理を継続するが(ステップS119)、加熱空間10内の温度Tiが設定温度Tis以上に高い場合には、下ヒータ15及び上ヒータ17をそれぞれオフにして、加熱調理を停止する(ステップS117)。
【0042】
上述したように、本実施形態では、グリル庫1の前扉1aの外方上部の前板23に温度検知器11a、11bを設け、この温度検知器11a、11bで前扉1aの外側の温度を検知し、この検知した温度によりグリル庫1の前扉1aが開いていることを検出し、前扉1aが開いている場合には、例えばブザーを鳴動するかまたはLED表示ランプを点灯するかまたはブザーの鳴動とLED表示ランプの点灯を同時に行って、前扉1aが閉じてないことを通知するため、完全に閉じられていない前扉1aの隙間から加熱空間10内の熱風が外部に漏出し、これにより前扉1aの外部の周囲が熱の影響を受けることを防止することができる。
【0043】
このため、前扉1aの上方や、左右に操作表示部を備えている形態においては、これらの操作表示部への温度の影響を防止することができると共に、前扉1aの周囲の家具等への温度の影響を防止することができる。
【0044】
さらに、前扉1aの半開き状態では、ヒータによる被加熱調理物の加熱調理が十分に行われないが、本実施形態によれば、使用者に半開きであることを適切に報知することができるため、このような不具合も抑制することができる。
【0045】
さらにまた、本実施形態によれば、押圧式やホールICといったドアスイッチを必要としないため、構造を容易にすることができる。
【0046】
温度検知器11a、11bは前扉1aの外側に複数設けているため、周囲の温度を精度良く検知することができる。この場合、温度検知器11a、11bを前扉1aの外側の左と右のそれぞれに設けていることで、左右のいずれから熱風が漏れても検知することができ、より検知精度を高くすることができる。
【0047】
扉開検出手段は、温度検知器11a、11bで検知された温度が第1の所定の温度よりも高いとき、半開きであると見做して、前扉1aが開いていることを通知するため、使用者はこの通知により半開きであることに気が付き、前扉1aを正常な位置へ配置することを促すことができる。
【0048】
扉開検出手段は、温度検知器11a、11bで検知された温度が第1の所定の温度よりも高い第2の所定の温度よりも高いとき、被加熱調理物を加熱調理する加熱手段に対する入力電力を低減するかまたは加熱手段に対する入力電力の供給を停止することで、周囲への熱影響を抑制することができる。
【0049】
なお、上記実施形態では、温度検知器11a、11bは、前板23に取り付けられているが、これに限定されるものでなく、前扉1aの外部であって、前扉1aの隙間からの熱風の影響を受け、前扉1aが完全に閉じていないことを検知し得る場所であればよく、例えば中心部に配置したり、前扉1aの周囲に露出するように取り付けたり、前扉1aに取り付けてもよい。
【0050】
また、温度検知器11a、11bは、前扉1aの上方の左側と右側のそれぞれに1箇所、計2個、設けられているものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば複数個ずつ離間させて設けるようにしてもよいのは言うまでもない。なお、この温度検知器11a、11bは、前扉1aの周囲温度を検知出来れば良いため、サーミスタに限定されることなく、熱電対式温度センサ、白金測温抵抗体式温度センサ等の任意の温度センサを用いることができるのは言うまでもない。
【0051】
また、実施形態はビルトイン型のIHクッキングヒータを例示して説明したが、据付型でも、ガスレンジでも、グリル庫を備えた加熱調理器であれば、本発明を種々の調理器に転用が可能である。
【0052】
なお、実施形態は例示であり、発明の範囲はそれらに限定されない。
【符号の説明】
【0053】
1 グリル庫
1a 前扉
1b 取っ手
1c 窓部
1d パッキン
10 加熱空間
11a、11b 温度検知器
15 下ヒータ
17 上ヒータ
21 PC基板
23 前板
100 IHクッキングヒータ(加熱調理器)
103 トッププレート
111 表示操作部
121 排気路
121a 排気口カバー
123 脱臭手段
125 排気水平路
115、117 誘導加熱コイル
119 ラジエントヒータ
200 キッチンカウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫を有し、このグリル庫内にある被加熱調理物を加熱調理する加熱手段と、該グリル庫の前部に被加熱調理物を出し入れするための前扉が設けられている加熱調理器であって、
前記前扉の外部の周囲温度を検知する温度検知器と、
この温度検知器で検知された温度に基づき前記前扉が開いていることを検出する扉開検出手段と
を有することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記温度検知器は、前記前扉の外側に複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記温度検知器は、前記前扉の外側の左と右のそれぞれに設けられていることを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記扉開検出手段は、前記温度検知器で検知された温度が第1の所定の温度よりも高いとき、前記前扉が開いていることを通知する通知手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記扉開検出手段は、前記温度検知器で検知された温度が前記第1の所定の温度よりも高い第2の所定の温度よりも高いとき、被加熱調理物を加熱調理する前記加熱手段に対する入力電力を低減するかまたは前記加熱手段に対する入力電力の供給を停止する入力電力低減停止手段を有することを特徴とする請求項4記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−157437(P2012−157437A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17954(P2011−17954)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】