説明

加熱調理型畜肉加工食品用組成物

【課題】畜肉加工食品に配合することにより、加熱調理後に畜肉加工食品にジューシーでやわらかい優れた食感を与えることができる加熱調理型畜肉加工食品用組成物を提供する。
【解決手段】食用油脂5〜70質量%、20℃における2質量%水溶液の粘度が3〜600mPa・sであるメチルセルロース2〜10質量%、乳化剤0.5〜5質量%、及び水15〜92.5質量%からなる水中油型乳化組成物である加熱調理型畜肉加工食品用組成物。
乳化剤がカゼイン蛋白質、またはホエー蛋白質である加熱調理型畜肉加工食品用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理型畜肉加工食品用組成物に関するものであり、詳しくは畜肉加工食品に配合することにより、加熱調理後に畜肉加工食品にジューシーでやわらかい優れた食感を与えることができる加熱調理型畜肉加工食品用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンバーグ、ミートボール、肉団子、ミートローフ、ミートパテ、チキンナゲット、ミートコロッケ、メンチカツ、シュウマイの具、ギョウザの具、肉まんの具、つくね、ハム、ソーセージなどの加熱調理する畜肉加工食品は、食味、風味とともに、食感が重要な要素となっており、過剰な粘り気やパサツキ感、硬さはその食品の価値を損なわせるものである。例えば、ハンバーグ等の畜肉加工食品などでは、ジューシー感やソフト感が必要とされている。しかし、これらの畜肉加工食品は加熱調理時に油脂成分を含む肉汁が流出してしまうことにより旨味の劣化、食感が硬くなる等の問題があった。
【0003】
そこで、油脂を補うため、加熱調理前の具材に油脂を単独であるいは乳化物として配合し調理することがなされているが、加熱時には油脂あるいは乳化物が液状となるため、折角配合した油脂が流出していまい、十分な改良効果が得られない。
従来こうした液状化による油脂の流出を防ぐため、乳化物に澱粉や粉状植物性蛋白質等を添加する方法が用いられているが、喫食時に糊っぽい食感やねちゃつき感、粉っぽい食感が感じられ、好ましい方法とは言い難い。
そこで、最近では乳化物にゼラチン、寒天、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロースなど種々のハイドロコロイドや蛋白素材を組み合わせ含ませゲルを形成したり(特許文献1)、アルギン酸、乳成分、カルシウムから可塑性のある組織を形成したりして(特許文献2)、食感の改良や加熱時における油脂の流出を防止する方法が考案されている。
しかし、特許文献1において、組成物単独では加熱調理時に液状化してしまうためドリップの抑制効果が乏しい。
また、特許文献1、特許文献2いずれの方法においても、喫食時の組成物の形態は固形物であるために畜産加工品の食感に影響し、畜産加工品本来の食感が得られない。さらに、特許文献1の組成物をあらかじめ加熱してゲルとして使用する場合や特許文献2の組成物はいずれも固体物であるので、カッティング等の処理が必要となり製造工程中の計量や具材混合タンクへの投入がしにくいなど操作性の面でも問題となる場合がある。
【特許文献1】特開2001−000118号公報
【特許文献2】特開2005−46090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように畜産加工品の加熱調理時に、具材に配合された油脂組成物からの油脂の流出を抑制することは、ゲルを用いて油脂組成物をネットワーク化することによりある程度可能であるが、形成されたゲルが加熱により液状化して油脂が流れ出てしまったり、ゲルが粒状物として残ることにより畜産加工品の食感に影響することになる。また、固形状の組成物を添加する場合では操作性に課題が残る。
そこで、本発明では、加熱によって油脂が流出しやすい高温時においてのみゲルを形成し、具材との混合時、加熱調理後においてゲルを形成しない乳化組成物があれば、操作性に優れ加熱調理時には油脂の流出を防止できる一方で、喫食時に畜肉本来の食感を維持できるものと考えた。そして、特定のメチルセルロースを特定量含む水中油型乳化組成物においてこのような特性があることを見出して本発明を完成したものである。
すなわち、本発明の課題は、畜肉加工食品に配合することにより、加熱調理後に畜肉加工食品にジューシーで優れた食感を与えることができる加熱調理型畜肉加工食品用組成物を提供することにある。
次に、畜肉加工食品を加熱調理後に冷凍しこれを解凍・加熱後、食してもジューシーでやわらかい優れた食感を与えることのできる加熱調理型畜肉加工食品用組成物を提供することにある。
すなわち、流通が発達した今日では、調理後の畜肉加工食品を冷凍し、流通後に店や家庭等でこれを解凍しレンジアップして食することがある。本発明はこのような場合でもジューシーでやわらかい優れた食感の畜肉加工食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明を以下に記す。
(1)食用油脂5〜70質量%、20℃における2質量%水溶液の粘度が3〜600mPa・sであるメチルセルロース2〜10質量%、乳化剤0.5〜5質量%及び水15〜92.5質量%からなる水中油型乳化組成物である加熱調理型畜肉加工食品用組成物。
(2)乳化剤がカゼイン蛋白質、またはホエー蛋白である前記(1)の加熱調理型畜肉加工食品用組成物。
(3)前記(1)の水中油型乳化組成物が粉末油脂を水に分散して製造したものである加熱調理型畜肉加工食品用組成物。
(4)前記(1)から(3)のいずれか1つの加熱調理型畜肉加工食品用組成物を具材中に1〜20質量%配合した畜肉加工食品。
【発明の効果】
【0006】
本発明の前記(1)によれば、畜肉加工食品に配合することにより、加熱調理後に畜肉加工食品にジューシーで優れた食感を与えることができる加熱調理型畜肉加工食品用組成物を提供できる。畜肉加工食品を加熱調理後に冷凍しこれを解凍後、食してもジューシーでやわらかい優れた食感を与えることのできる加熱調理型畜肉加工食品用組成物を提供できる。
本発明の前記(2)によれば、前記(1)において、畜肉加工食品によりジューシーで優れた食感を与えることができる加熱調理型畜肉加工食品用組成物を提供できる。
本発明の前記(3)によれば、前記(1)において、より水中油型乳化組成物を製造しやすい加熱調理型畜肉加工食品用組成物を提供できる。
本発明の前記(4)によれば、加熱調理後にジューシーでやわらかい優れた食感の畜肉加工食品を提供できる。さらに、加熱調理後にこれを冷凍・解凍してもジューシーでやわらかい優れた食感の畜肉加工食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、食用油脂、メチルセルロース、乳化剤及び水からなる水中油型乳化物である加熱調理型畜肉加工食品用組成物である。
ここで、加熱調理型畜肉加工食品用組成物とは、 ハンバーグ、ミートボール、肉団子、ミートローフ、ミートパテ、チキンナゲット、ミートコロッケ、メンチカツ、シュウマイの具、ギョウザの具、肉まんの具、つくね、ハム、ソーセージなどの加熱調理型畜肉加工食品の具材にジューシー感や食感・食味の改良を目的として配合される組成物である。
【0008】
(メチルセルロース)
本発明は、特定のメチルセルロースを特定量含む水中油型乳化組成物を使用する。
本発明の水中油型乳化物はメチルセルロースを含むので、加熱調理時にゲルを形成し油脂の流出を防止できる一方で、これを食するとき、ゲルが消失して粒状物を残さずに畜肉加工食品本来の食感を維持できる。
本発明で使用するメチルセルロースとは、パルプをアルカリで処理した後、これを塩化メチルにてメチル化し、セルロースの水酸基の一部をメチル基でエーテル置換したもので,分子内に親油基であるメトキシ基と親水基である水酸基を有し、水溶性としたものである。
メチルセルロースは水に溶解するが、温度が上昇しゲル化温度(約50℃)以上になるとゲル化する。ゲルは可逆性であり、温度が下がりゲル化温度以下となると水溶液に戻りゲルが消滅する。
メチルセルロースは食品添加物として市販されており、一般に2質量%水溶液の粘度により、各種のグレードが規格化されている。
本発明では、2質量%水溶液を20℃にて測定したときの粘度が3〜600mPa・sのものを使用する。好ましくは、3〜120mPa・s、さらに好ましくは、13〜30mPa・sである。粘度は、JIS K2283−1993に規定されるウベローデ粘度計で測定できる。
この粘度が3mPa・s未満のものを使用した場合は、加熱時にゲル形成が十分に行なわれないため、ドリップ流出の抑制効果が乏しくジューシー感に満足な効果が得られないことが多い。600mPa・sを超える場合では乳化物の流動性が失われて固形状の組成物となるため、食感が好ましくない。また、粘度が高くなると製造工程中の計量や具材混合タンクへの投入などがしにくくなるなど操作性が悪くなり易い。
【0009】
本発明の水中油型乳化組成物は、メチルセルロースを2〜10質量%含むものである。より好ましくは3〜10質量%である。2質量%未満では、ゲル形成が十分に行なわれないためジューシー感、ソフト感において満足な効果が得られず、10質量%を超えると流動性が失われて固形状の組成物となり、操作性が悪くなる場合があり、また、製造される畜肉加工食品の食感が好ましくない。
【0010】
(油脂)
本発明の水中油型乳化組成物は油脂を含有することから、これを含む加熱調理型畜肉加工食品用組成物を畜肉加工食品に配合したときに、調理後の加熱調理型畜肉加工食品においてジューシー感が得られることになる。
油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、サル脂、魚油、鯨油等の各食用種植物油脂、動物油脂ならびにこれらを水素添加、分別およびエステル交換から選択される一または二以上の処理を施した加工油脂、油脂を含有する乳製品、乳製品類似食品が挙げられる。畜肉加工食品用途としては特に牛脂や豚脂が風味の点で好ましい。
本発明の水中油型乳化組成物は、油脂を5〜70質量%含むものである。好ましくは、20〜60質量%、さらに好ましくは40〜50質量%である。
5質量%未満では十分なジューシー感、ソフト感が得られず、70質量%を超えると乳化安定性が悪くなる場合や、粘度が増加する場合があり好ましくない。
【0011】
(乳化剤)
本発明の水中油型乳化組成物は、乳化剤を含むことから安定に油脂を水に分散することができる。
乳化剤としては、カゼイン蛋白質、ホエー蛋白質、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等が挙げられる。製造される粉末油脂の安定性、水中油型乳化物の乳化安定性や耐熱性、また風味の点からは、カゼイン蛋白質もしくはホエー蛋白質が好ましい。
カゼイン蛋白には、これらをナトリウム塩としたカゼインナトリウム、又はその酵素分解物が含まれる。また、ホエー蛋白質として、無脂乳固形分から乳蛋白質を分離、濃縮した蛋白濃縮物を挙げることができる。乳化安定性の点からは、カゼイン蛋白が優れている。
本発明の水中油型乳化組成物は、乳化剤を0.5〜5質量%含むものである。0.5質量%未満では乳化が不安定であり、油層部の分離やクリーミング、並びに凝集を生じ易くなる。5質量%を超えると乳の風味が強くなり好ましくない場合がある。
【0012】
(水)
本発明において、水はイオン交換水、蒸留水、水道水、緩衝液等を使用できる。本発明の水中油型乳化物における水の量は、油、メチルセルロース及び乳化剤を除いた残分として算出できる。
【0013】
(水中油型乳化組成物の製造方法)
本発明の水中油型乳化組成物は、以下のようにして製造できる。
まず、水にメチルセルロース、乳化剤を溶解する。次に、油脂を混合して、乳化する。
また、水にメチルセルロース、乳化剤、油脂を同時に加えて乳化してもかまわない。
乳化において、下記のように均質化してもかまわない。
また、製造される乳化組成物は、加熱殺菌処理や、可塑化のための冷却処理してもかまわない。
【0014】
該均質化処理としては、ホモゲナイザー、コロイドミル、スタティックミキサー、インラインミキサー、ディスパーミル等を使用し、好ましくは1〜200MPa、さらに好ましくは10〜100MPaの均質化圧力にて均質化を行なう。この均質化処理は、特に2段式ホモゲナイザーを用いて、各段階で均質化圧力を変えて均質化しても良い。
また、加熱殺菌処理をした後、均質化処理を行ない、さらに必要に応じ冷却処理をおこなうことによって得ることができる。
【0015】
該加熱殺菌方法としては、UHT、HTST、LTLT等の他、インジェクション式、インフュージョン式等の直接加熱方式、又は、掻き取り式等の間接加熱方式により70〜180℃の加熱処理を行なえば良い。
【0016】
また、該冷却方法としては、適当な容器に充填した後に、放冷、冷蔵庫、で冷却してもかまわない。もしくは、充填前にパーフェクター、コンビネーター等の急冷可塑化機にて冷却しても良い。
【0017】
なお、本発明において、予め油脂を粉末化した粉末油脂を使用して水中油型乳化物を製造すると保管や計量時の操作性が優れているので適している。
粉末油脂は、例えばデキストリン、コーンシロップなどの糖類等の粉末化基材を乳化組成物中の油脂含量に対し10〜100質量%添加し、製造される。
水中油型乳化物を乾燥粉末化するには、一般的に知られている噴霧乾燥法、真空凍結乾燥法、真空乾燥法等用いることができる。
このような粉末油脂は、水に加え、攪拌するだけで、水に再分散し水中油型乳化物を容易に製造できる。
【0018】
(畜肉加工食品用組成物)
本発明の水中油型乳化物はそれ自体単独で加熱調理型畜肉加工食品用組成物として使用できるが、さらにこれに、糖類、有機酸、増粘剤等を加えてもよい。
糖類として、特に限定されないが、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖、ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。また、上記甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、アスパルテーム等が挙げられる。これらの糖類および甘味料は、単独で用いることもでき、または二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0019】
有機酸として、クエン酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、氷酢酸、フィチン酸、アジピン酸、コハク酸、グルコノデルタラクトン、アスコルビン酸、柑橘類の果汁等の各種果汁等が挙げられ、これらを単独で用いるか、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
増粘剤としては、アルギン酸、LMペクチン、HMペクチン、ジェランガム、キサンタンガム、グアーガム、カラギナン、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガントガム、アラビアガム、タマリンドガム、セルロース、微小繊維状セルロース、発酵セルロース、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、コンニャクマンナン、グルコマンナン、大豆多糖類、寒天、ゼラチン、大豆蛋白質、食物繊維、澱粉、α化澱粉、オクテニルコハク酸デンプン、プルラン等を加えても良い。
【0021】
(加熱調理型畜肉加工食品)
本発明の畜肉加工食品用組成物は加熱調理型畜肉加工食品の具材に配合して使用できる。
その配合量は具材中1〜30質量%、好ましくは3〜15質量%が適当であり、この範囲未満では効果が十分に発揮されずこの範囲を超えると過度に軟化してしまい好ましくない。
こうして製造される加熱調理型畜肉加工食品は、一般的な方法で加熱調理される。加熱方法としては特に限定されず、電子レンジ、オーブン、焼き、フライ、蒸しなどほぼ全ての加熱形態が許容されるが、具材の中心温度が70℃以上で1分間以上の保持ができるよう加熱温度と加熱時間、具材の厚みを調整することが望ましい。特に本発明の畜肉加工食品用組成物のゲル化特性や外観の面からはオーブンで加熱調理することが好ましく、加熱温度は、70〜250℃、加熱時間は5分〜30分が適している。
さらに、加熱調理型畜肉加工食品は、加熱調理して製造されるが、流通時において冷凍保存されるものであってもよい。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を示す。
実施例1−1〜1−8、及び比較例1−1〜1−3
表2の配合(質量部)で、本発明の加熱調理型畜肉加工食品用組成物を製造し、その物性を検討した。
メチルセルロース(MC)を含有する乳化組成物(実施例1−1〜1−8)、高分子を含有しない乳化組成物(比較例2−1)、カルボキシメチルセルロース(CMC)を含有する乳化組成物(比較例1−2)、アルギン酸Na含有する乳化組成物(比較例1−3)を用いた例を示す。メチルセルロース(MC)は信越化学工業(株)製のSMシリーズ(商標:メトローズ)を使用した。メチルセルロース(MC)は表1に示した粘度(2質量%水溶液をJISK2283−1993に規定されるウベローデ粘度計で20℃にて測定)であるものを使用し、粘度が低い順にそれぞれMC−A、B、C、Dとした。
カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸Naは、日本製紙株式会社製(商品名サンローズA−A02SH)、株式会社キミカ社製(商品名IL−2)の市販品をそれぞれ使用した。
【0023】
表2に示した配合で、配合槽にて60℃に加熱した水相部に固形分を添加して攪拌溶解後、70℃に調温した油脂を添加して予備乳化を行なった。これをホモジナイザーにて15MPaの均質化圧力で均質化処理後、乳化組成物を得た。
【0024】
こうして作成した水中油型乳化物をポリエチレンチューブに充填し、これを水浴に浸けけ、熱による物性変化、操作性、及び油の分離状態を評価した。得られた乳化組成物の評価基準を表2に示した。
<評価基準>
(物性変化)
加熱前、加熱時、加熱後の乳化組成物についてゲル化が起こるかどうかを観察した。
○:ゲル状、×:液状
(操作性)
◎:流動性が高い、○:粘性があり流動性が低い、△:粘性が高く流動性がない。
(油の分離状態)
加熱後の乳化組成物に油浮きや分離があるかどうかを目視により観察した。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
これらの結果から明らかなように、本発明のメチルセルロースを使用した乳化組成物は、加熱時においてのみゲル化する性質を有していることがわかる。操作性は良好であり、油の分離も観察できなかった。
【0028】
実施例2−1〜2−4、及び比較例2−1〜2−3
表3に示したハンバーグ具材を準備し混合後、具材90質量部に対し20℃に冷却した実施例1−1〜1−4、及び比較例1−1〜1−3の水中油型乳化組成物10質量部をそれぞれ添加してよく混練した。これらの混合具材70gをモールド板にて成型後、200℃のオーブンにて10分焼成した。
【0029】
こうして得られたハンバーグについて、10名のパネラーによってジューシー感、ソフト感、ドリップ量を評価した。得られたハンバーグの評価を表3に示した。
<評価基準>
(ジューシー感)
◎:8割以上が良好と評価、○:5割以上8割未満が良好と評価、△:2割以上5割未満が良好と評価、×:2割未満が良好と評価
(ソフト感)
◎:8割以上が良好と評価、○:5割以上8割未満が良好と評価、△:2割以上5割未満が良好と評価、×:2割未満が良好と評価
(ドリップ量)
焼成時にハンバーグから流れ出る肉汁の量について目視にて観察した。
◎:少ない、○:やや多い、△:多い。
得られたハンバーグの評価を表4に示した。
【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
メチルセルロースを含有する本発明の水中油型乳化組成物をハンバーグに使用した場合、ハンバーグにジューシー感、ソフト感を与え、ドリップ量を少なくできることがわかった。
さらに乳化組成物においては、メチルセルロースの2質量%水溶液の粘度が4〜100mPa・sのものがソフト感を付与するうえで好ましく、さらに15mPa・s以上のものがジューシー感を付与するうえで好ましかった。
また、喫食時にはゲルによるざらつきや硬い食感は感じられなかった。
【0033】
実施例3−1〜3−4、及び比較例3−1〜3−3
次に実施例2−1〜2−4、比較例2−1〜2−3において焼成したハンバーグを−30℃にて急速冷凍し、一週間冷凍保管した。これらを電子レンジ(600W)で、中心温度が約80℃になるまで加熱調理した。
【0034】
こうして得られたハンバーグを、上記と同じ基準で10名のパネラーによってジューシー感、ソフト感、ドリップ量を評価した。
なお、ドリップ量は目視にて観察した。
◎:少ない、○:やや多い、△:多い。
得られたハンバーグの評価を表5に示した。
【0035】
【表5】

【0036】
メチルセルロースを含有する本発明の水中油型乳化組成物をハンバーグに使用した場合、加熱調理後に冷凍保存したハンバーグにおいてもジューシー感、ソフト感を与え、ドリップ量を少なくできることがわかった。
【0037】
実施例4−1〜4−4、及び比較例4−1〜4−2
次にメチルセルロースを使用した粉末油脂の実施例について記載する。
表6に示す配合(質量部)にてメチルセルロースを含有する粉末油脂を製造し、これらをそれぞれ実施例4−1〜4−4とした。また、比較例として高分子を含まない粉末油脂、カルボキシメチルセルロース(CMC)を含有する粉末油脂を製造し、それぞれ比較例4−1、比較例4−2とした。
粉末油脂の製造は、表6に示すように配合し、配合槽にて60℃に加熱した水相部に固形分を添加して攪拌溶解後、70℃に調温した油脂を添加して予備乳化を行なった。これをホモジナイザーにて15MPaの均質化圧力で均質化処理後、スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製、L−8型スプレードライヤー)にて入り口温度195℃、出口温度95℃の条件下で粉末化し粉末油脂を得た。
こうして得られた粉末油脂について、水への再分散性、水溶液の乳化安定性、及び水溶液の熱による物性変化について評価した。得られた乳化組成物の評価を表6に示した。
<評価基準>
(水への分散性)
20℃の水50質量部に対し、粉末油脂50質量部を添加し、小型プロペラ攪拌機を用いて400rpm、3分間攪拌し分散性を評価した。
○:沈殿物なし、△:沈殿物あり
(水溶液の乳化安定性)
○:良好、△:油の分離あり
(物性変化)
加熱前、加熱時、加熱後の乳化組成物についてゲル化が起こるかどうかを観察した。
○:ゲル状、×:液状
【0038】
【表6】

【0039】
これらの結果から明らかなように、メチルセルロースを使用した本発明の乳化組成物は、粉末油脂にしても再分散性が良く、その乳化液は、加熱時にのみゲル化がおこる性質を有していることがわかる。
【0040】
実施例5−1〜5−4、及び比較例5−1〜5−2
実施例2−1〜2−4、比較例2−1〜2−3と同様にして、実施例4−1〜4−4、比較例4−1〜4−2で製造した水中油型乳化組成物(水へ再分散したもの)を具材に添加してよく混練した。これをモールド板にて成型後、200℃のオーブンにて10分焼成した。
結果を表7に示す。
【0041】
【表7】

【0042】
粉末油脂を原料としたメチルセルロースを含有する本発明の水中油型乳化組成物をハンバーグに使用した場合、ハンバーグにジューシー感、ソフト感を与え、ドリップ量を少なくできることがわかった。また、喫食時にはゲルによるざらつきや硬い食感は感じられなかった。
【0043】
実施例6−1〜6−4、及び比較例6−1〜6−2
実施例3−1〜3−4、比較例3−1〜3−3と同様にして、実施例5−1〜5−4、比較例5−1〜5−2において焼成したハンバーグを−30℃にて急速冷凍し、一週間冷凍保管した。これらを電子レンジ(600W)で、中心温度が約80℃になるまで加熱調理した。
結果を表8に示す。
【0044】
【表8】

【0045】
粉末油脂を原料とする本発明の水中油型乳化組成物をハンバーグに使用した場合も、加熱調理後に冷凍保存したハンバーグにおいてもジューシー感、ソフト感を与え、ドリップ量を少なくできることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂5〜70質量%、20℃における2質量%水溶液の粘度が3〜600mPa・sであるメチルセルロース2〜10質量%、乳化剤0.5〜5質量%、及び水15〜92.5質量%からなる水中油型乳化組成物である加熱調理型畜肉加工食品用組成物。
【請求項2】
乳化剤がカゼイン蛋白質、またはホエー蛋白質である請求項1に記載の加熱調理型畜肉加工食品用組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の水中油型乳化組成物が、粉末油脂を水に分散して製造したものである加熱調理型畜肉加工食品用組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱調理型畜肉加工食品用組成物を具材中に 1〜20質量%配合した畜肉加工食品。