説明

加熱調理容器

【課題】容器内の脱気を確実に行うとともに、脱気後に安定した蒸らし効果を得ることができる加熱調理容器を提供すること。
【解決手段】調理用の内容物Fを収容し、貫通孔又はスリットからなる開口部2Aが設けられた容器本体2と、容器部2に対して粘着層3Aを介して着離可能に貼着され、開口部2Aを塞ぐ封止材3と、を備え、内容物Fの加熱により容器本体2の内圧が高められることで、封止材3の一部が容器本体2から離間され、開口部2Aを介して容器本体2の内部と外部とを連通する脱気通路が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理に際して、加熱調理機器に投入される加熱調理容器に関する。
【背景技術】
【0002】
水分や、加熱によって揮発する物質を含む内容物を加熱調理容器に収容し、電子レンジ等の加熱調理機器を使用して内容物を加熱する調理が、日常的に行われている。ここで、従来から、加熱時に内容物から発生する水蒸気等のガスを効率よく容器外に逃がして加熱調理容器の破損を防ぐために、特別に製造された脱気バルブが装着された加熱調理容器が使用される。
【0003】
しかし、このような加熱調理容器は、高価なバルブを容器に装着しなければならず容器全体の製造コストアップとなる。また、バルブ装着のための加工条件の変動が、脱気機能を変動させる可能性がある。さらに、水蒸気を好適に逃がすためには、容器の容積、内容物の水分含有率、加熱速度などに応じて、通気度の異なる脱気バルブに変更する必要がある。また、バルブが装着される蓋材又は包装体フィルムにバルブを接着するための特別の加工プロセスが必要となる。
【0004】
そこで、冷凍食品等の内容物を密封する収納容器を構成するプラスチックフィルムのシール部の少なくとも一ヶ所に、加熱時に熱収縮により剥離する部位が設けられた加熱調理容器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、包装袋に脱気口が設けられ、ヒートシール強度が調整されてシールされたイージーピール部分が、脱気口の近傍に形成されたものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この加熱調理容器では、加熱調理機器によって加熱されて高まる内圧によりイージーピール部分が剥離して、脱気される。
【特許文献1】特開平10−278975号公報
【特許文献2】特開2005−280736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、内容物の重量、含水量、包装体の容積、加熱調理機器の容量等の種々の要素により、加熱温度や水蒸気等の発生速度が変動する。そのため、上記特許文献1に開示された加熱調理容器では、収縮フィルムの収縮率、収縮速度に変動が生じて、脱気機能が変動し、調理品質も安定しない。また、水蒸気等が外部に排出された後、内容物の蒸らし効果も変動してしまう。
【0007】
また、上記特許文献2に記載の加熱調理容器にてヒートシール強度の調整を行う場合、加熱温度、シール時間、シール圧力、及び容器を形成する材料の厚みの違いによる熱伝導差を考慮する必要があり、極めて煩雑となる。その結果、確実な脱気機能を得ることが困難となる。さらに、脱気終了後の蒸らしのコントロールも難しい。また、脱気後の密封が不十分なので、外部からの汚染を抑えることが困難である。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、容器内の脱気を確実に行うとともに、脱気後に安定した蒸らし効果を得ることができる加熱調理容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る加熱調理容器は、調理用の内容物を収容し、貫通孔又はスリットからなる開口部が設けられた容器本体と、該容器部に対して粘着層を介して着離可能に貼着され、前記開口部を塞ぐ封止材と、を備え、前記内容物の加熱により前記容器本体の内圧が高められることで、前記封止材の一部が前記容器本体から離間され、前記開口部を介して前記容器本体の内部と外部とを連通する脱気通路が形成されることを特徴とする。
【0010】
この発明は、内容物を収納した容器本体を加熱調理機器内に導入して加熱調理した際、容器本体内の空気が膨張して容器本体の内圧が容器本体の外部の気圧よりも高くなる。高められた容器本体の内圧は、開口部を介して封止材に一部に作用して押し上げられるため、その封止材の一部が剥がれて容器本体から離間される。これにより、開口部を介して容器本体の内部と外部とを連通する脱気通路が形成される。この脱気通路を通って、加熱された内容物から生じる蒸気等のガスが、容器本体の外部に好適に排出される。
なお、開口部は、最初から開けられたものであってもよく、或いは、内圧の上昇により容器本体が膨張されることで、拡げられるように開口部するものであってもよい。
一方、加熱が停止されると、容器本体内が減圧状態になるため、容器本体から離間した封止材の一部が再び容器本体に密着され、封止材の形状が復元される。これにより、容器本体が再密封される。
【0011】
また、本実施形態に係る加熱調理容器は、前記容器本体の内圧が高められることで、前記封止材の両端部が前記容器本体に貼着されまま前記封止材の中間部が離間されることを特徴とする。
【0012】
この発明は、加熱による容器本体の内圧の上昇により、封止材の両端部が剥離されずに封止材の中間部が剥離されるため、加熱停止後に、封止材の中間部は再び容器本体に密着され易く、容器本体を確実に再密封させることができる。
【0013】
また、本実施形態に係る加熱調理容器は、前記容器本体の内部から前記脱気通路を介して前記容器本体の外部へと抜ける蒸気により前記脱気通路から発信音が発信されることを特徴とする。
【0014】
この発明は、調理の進行中は、脱気通路から発信音を発生し続けることができ、ガスの噴出が収まって調理が終了する際には、封止部の復元とともに脱気通路が消滅して発信音を消すことができる。そのため、調理の進行が判断でき、聞き逃しを防ぐことができる。
【0015】
また、本実施形態に係る加熱調理容器は、前記封止材の曲げ剛性が、1×10−4kg/mm以上、かつ、0.7kg/mm以下であることを特徴とする。
【0016】
この発明は、粘着層を含む封止材のヤング率と慣性二次モーメントとの積によって定義される曲げ剛性が、上述した範囲内なので、容器本体内の内圧により封止材の一部を好適な状態で剥離させることができる。これに対して、1×10−4kg/mm未満では、粘着加工が困難となり、かつ貼着作業性が悪化して密封性が低下する。一方、0.7kg/mmを超えた場合には、封止材の柔軟性が低下して脱気通路の確保が困難になる。
【0017】
また、本実施形態に係る加熱調理容器は、前記封止材の粘着層の厚さが、1μm以上、かつ、100μm以下であることを特徴とする。
【0018】
この発明は、粘着層が十分な機能を発揮する。すなわち、常温領域では、十分な粘着力と密封性を発揮し、高温状態では、封止材に作用する内圧により剥離される。
【0019】
また、本実施形態に係る加熱調理容器は、前記開口部の最大寸法が、1mm以上、かつ、50mm以下であることを特徴とする。
【0020】
この発明は、開口部からのガスの噴出圧力を所定の圧力範囲に調節することができ、水蒸気等を好適な量に調整することができる。これに対し、本寸法が1mm未満の場合には、脱気性が悪化して、封止部の破裂や、容器部内の過剰な水蒸気の残量による内容物のベタつきが生じて、好ましい調理状態が得られなくなる。一方、50mmを超えた場合には、調理の初期段階の発生ガスが少ない状態から封止部が持ち上がってしまい、短時間で水蒸気が脱気して蒸らし効果が低減される。
【0021】
また、本実施形態に係る加熱調理容器は、前記封止材が、矩形シート形状であり、該封止材の長辺寸法及び短辺寸法が、それぞれ10mm以上、かつ、100mm以下であり、該封止材の端部が、前記開口部の外周縁から少なくとも2mm以上離される
【0022】
この発明は、封止材の端部が開口部の外周縁(エッジ)から少なくとも2mm以上離されるので、封止材による密封の確実性が向上する。これに対し、開口部の外周縁から2mm未満の位置に封止材の端部があると、密封性に欠けたり、漏れが発生するおそれがある。
【0023】
また、本実施形態に係る加熱調理容器は、前記封止材の基材が、熱可塑性プラスチックフィルム、合成紙、パルプ紙、金属箔、又はこれらの複合フィルムのうちの少なくとも一つからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、容器内の脱気を確実に行うとともに、脱気後に安定した蒸らし効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る一実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
本実施形態に係る加熱調理容器1は、図1から図3に示すように、調理用の内容物Fを収容し、貫通孔(開口部)2Aが設けられた容器本体2と、容器本体2に対して着離可能な粘着層3Aを有して、貫通孔2Aを塞ぐ粘着ラベル(封止材)3と、を備えている。
【0026】
容器本体2は、トレー形容器包装として構成されており、開口して内容物Fを底部5Aに載置する硬質のプラスチック製容器部5と、容器部5の開口端と係合して容器本体2の天頂部分を構成し、内容物Fを容器内に密封する蓋部6とを備えている。
容器部5は、プラスチック容器、金属層を有する容器、紙、合成紙、不織布を構成要素とした容器などでよく、材質は限定されない。
【0027】
蓋部6は、プラスチック、紙、金属箔など、防湿性、ガスバリア性、酸素吸収性などのアクティブ機能を有する材料で構成されている。
貫通孔2Aは、蓋部6の中央部分に略円形に設けられている。容器本体2内に収容された内容物Fを加熱調理した場合に発生する水蒸気又は揮発性ガスは、この貫通孔2Aから脱気される。なお、貫通孔2Aの形状は円形のものに限らず、半円形、楕円形、十字形など任意の形状でよい。また、貫通孔2Aの代わりに、スコア加工により形成されたスリット、或いはミシン目のように穴の一部が物理的につながった状態に加工された穴等、内容物Fの加熱により高められた内圧によって開口するものでもよい。
【0028】
貫通孔2Aの最大寸法は、1mm以上、かつ50mm以下となっている。これは、本寸法が1mm未満の場合には、脱気性が悪化して、粘着ラベル3の破裂や、容器本体2内の過剰な水蒸気の残量による内容物Fのベタつきが生じて、好ましい調理状態が得られなくなるからである。一方、50mmを超えた場合には、発生ガスが少ない調理の初期段階の状態から、粘着ラベル3が蓋部6から持ち上がってしまい、短時間で水蒸気が脱気して蒸らし効果が低減されるからである。なお、好ましくは2mm以上、かつ20mm以下、更に好ましくは2.5mm以上、かつ15mm以下がよい。
【0029】
また、貫通孔2Aは1個に限らず複数設けられていてもよい。このときの貫通孔2Aの個数をn個、1個の孔の直径をdmmとした場合、1個の状態とほぼ等価状態にするためには、複数の孔の1個あたりの直径はd/√n mmとなる。
【0030】
粘着ラベル3は、熱可塑性プラスチックフィルム、合成紙、パルプ紙、金属箔、又はこれらの複合フィルムからなるフィルム状の粘着ラベル基材(基材)3Bを備え、蓋部6の貫通孔2Aを覆うように粘着層3Aが密着されている。粘着層3Aは、ファウンテンコート、ダイコート、リバースコート、グラビアコート、ブレードコート、バーコートなどのコーティング方式によって、粘着ラベル基材3Bの一面に配されている。ただし、粘着層3Aの性質に基づいて均一な塗布が可能な方式であれば、これらの方法に限定されるものではない。
【0031】
粘着ラベル3は、長さ(長辺寸法L)及び幅(短辺寸法W)が10mm以上かつ100mm以下の矩形シート状に形成されている。この粘着ラベル3と貫通孔2Aとの位置関係は下記の如く設定する。すなわち、粘着ラベル3の端部が、貫通穴2Aの外周縁(エッジ)から少なくとも2mm以上離されるように設定される。言い換えれば、貫通孔2Aの直径をd、貫通孔2Aの中心位置Oから粘着ラベル3の長さ方向端部までの距離をl、幅方向端部までの距離をwとしたとき、l≧d/2+2(mm)、w≧d/2+2(mm)となるように形成されている。
【0032】
粘着層3Aを含めた粘着ラベル3は、内容物Fの加熱にともなう、容器本体2内の内圧の変動範囲内で弾性変形して、粘着層3Aの一部を蓋部6から離間させる曲げ剛性を有している。この曲げ剛性は、1×10−4kg/mm以上、かつ、0.7kg/mm以下となっている。これは、曲げ剛性が1×10−4kg/mm未満では、粘着加工が困難となり、かつ貼着作業性が悪化して密封性が低下するからである。一方、0.7kg/mmを超えた場合には、粘着ラベル3の柔軟性が低下して脱気が困難になるからである。
【0033】
上述した曲げ剛性を実現するため、例えば、粘着ラベル基材3Bの厚みは、使用される材料に依存するものの、一般的に9μm以上、かつ200μm以下、好ましくは18μm以上、かつ150μmとなっている。これは、現在一般的とされるフレキシブル面状素材を使用する場合、9μmよりも薄い場合には、粘着ラベル3を貼着する場合に皺が入りやすく、好ましい密封状態が得られ難く、流通中の安全性にも問題を残すからである。また、200μmを超えた場合には、粘着ラベル3の柔軟性がなくなり、加熱調理により発生した水蒸気又は揮発性ガスをより完全に排出する脱気通路の確保が不安定となり、場合によっては瞬間的な剥離により破裂状態を招くことになるからである。そのため、これらの問題を生じないようにするために、好ましくは18μmから150μmの範囲で厚みが選ばれる。
【0034】
また、例えば、粘着層3Aの厚みは、1μm以上、かつ100μmの範囲となっている。粘着層3Aに使用可能な粘着剤の特性は、常温領域では充分な粘着力と密封性を備えることが重要であり、流通中に剥離しないことが大切である。また加熱調理中には再剥離する必要があることから、粘着剤の軟化点は、35℃以上、好ましくは40℃以上、かつ100℃以下が良い。即ち、高温状態で粘着力が粘着面に作用する作用力(単位面積当たりの圧力×受圧面積)よりも弱い条件で剥離できる性質を満たしていることが重要となる。
【0035】
粘着剤は、上記の機能を有する観点から、例えば、一般的なアクリル系、ウレタン系、天然ゴム系、ポリイソブチレン系などの高分子タイプのものが材質として選定される。なお、材質的には特にこれらに限定されるものではないが、再剥離性、再封性を備え、且つ衛生性、安全性を基準に選定される。
【0036】
次に、本実施形態に係る加熱調理容器1の作用について説明する。
まず、内容物Fを容器部5の底部5Aに載置して、粘着ラベル3が貫通孔2Aに貼り付けられた蓋部6と容器部5とを係合して、内容物Fを容器内に密封する。
【0037】
加熱調理容器1を電子レンジ等の図示しない加熱調理機器内に投入して、所定の時間で加熱調理を行う。
この際、内容物Fが加熱されるにしたがって、内容物Fから水蒸気及び揮発性ガスGが発生し、加熱調理容器1内部の圧力が徐々に高められる。
【0038】
所定の圧力まで高められた後、貫通孔2Aに負荷された圧力が粘着層3Aの粘着力に打ち勝ち、粘着層3Aの一部が蓋部6から離間して、粘着ラベル3の一部が蓋部6から浮き上がる。このとき、図4に示すように、貫通孔2Aを介して外気と容器本体2内とを連通する脱気通路7が、内圧の変動範囲内で弾性変形した粘着ラベル3に形成される。
【0039】
ここで、粘着ラベル3の寸法、曲げ剛性等の特性が上述のように調節されている。そのため、口笛又は草笛のような局部的な開口部を勢いよく空気、又はガスが通過したときに生じる空気音のように、脱気通路7をガスGが通過するときの粘着ラベル3の振動によって発信音が発せられる。この間、脱気通路7の大きさが自動的に調節される。そして、この発信音は、内圧が所定の値以上の間継続する。即ち、調理の進行中は発信音が発し続けられる。この間、脱気量も自動的に調節される。
【0040】
加熱調理を終了した後、又は水蒸気等の所定量が脱気された後は、容器本体2の内圧が所定の値を下回る。そのため、水蒸気等が粘着ラベル3を押し上げる力が弱められ、粘着ラベル3の曲げ剛性によって粘着ラベル3の形状が復元されて脱気通路7が消え、発信音も消える。そして、図5に示すように、粘着層3Aが再び蓋部6の表面と密着し、貫通孔2Aが再び塞がれる。さらに内容物Fの温度低下にともなって、容器本体2内圧が外気よりも低くなり、粘着ラベル3が貫通孔2A内に吸引されて蓋部6に密着し、容器本体2を密封する。
【0041】
ここで、蒸発した水蒸気が蓋部6から離間した粘着層3Aの表面に付着していても、再封時の減圧にともなう吸引力により、水分が粘着ラベル3の外部に押しのけられ、粘着ラベル3が蓋部6と密着する。また、水分が粘着層3Aに残ったとしても、その部分が水封される。何れにしても、蒸らし効果が得られ、外部からの汚染物の侵入が抑えられる。
【0042】
この加熱調理容器1によれば、内容物Fを収納した容器本体2を加熱調理機器内に導入して加熱調理した際、内容物Fから生じる水蒸気等のガスGの圧力によって粘着ラベル3を弾性変形させ、貫通孔2A周辺の一部の粘着層3Aを蓋部6から剥離させることができる。このとき、外気と容器本体2内とを連通する脱気通路7を形成して、ガスGを容器本体2外に好適に排出することができる。この際、粘着ラベル3が所定の曲げ剛性を備えているので、内圧に応じて脱気通路7の大きさを所定の大きさに自動的に調節することができる。従って、脱気量を調節することができ、かつ、調理時間の間、脱気通路7から発信音を発し続けることができる。
【0043】
また、調理終了後に容器本体2内圧が所定値以下に低下したときには、粘着ラベル3の形状が復元して粘着層3Aを蓋部6に再び密着させることができ、容器本体2内を外部よりも負圧にして貫通孔2Aを再び封止することができる。さらに、加熱調理機器から粘着ラベル3が蓋部6に貼着したままの状態で取り出すことができ、粘着ラベル3が内容物Fに混入することがなく、容器本体2とともに廃棄することができる。
【0044】
従って、加熱調理機器に入れる前に、容器に予め手でガス抜き部を作る必要がなく、そのまま挿入しても容器内の脱気を確実に行うとともに、脱気後の安定した蒸らし効果を得ることができる。そして、加熱終了後も外部からの汚染物の混入を好適に抑えることができる。
【0045】
特に、脱気中は発信音が発生し続けるように脱気通路7の大きさが自動的に調節されるので、調理の進行を容易に把握することができ、聞き逃しを防ぐことができる。
また、この加熱調理容器1は、脱気量が内容物Fの重量、含水率、容器本体2の体積、加熱装置の加熱能力などで変化した場合でも、粘着ラベル3の曲げ剛性、粘着層3Aの軟化特性が許容する範囲内で、容器内の内圧に応じて粘着ラベル3を蓋部6から浮き上げさせ、脱気通路7の大きさを自動的に調節することができる。その結果、脱気量を自動調節し、粘着ラベル3を破裂することなく確実に脱気させると共に、過剰な脱気もなく充分な蒸らし効果を得ることができる。
【0046】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、容器本体2が容器部5と蓋部6とを備えたものとしているが、これに限らず、積層包装材料からなる一体の包装袋でもよい。この場合、包装袋に貫通孔を設け、貫通孔を封止するように密着ラベルを貼り付けることにより、本実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例】
【0047】
厚さ50μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを粘着ラベル基材3Bとし、その片面に、軟化温度が45℃の再剥離性、再封性を有する粘着剤を粘着層3Aとして固形分が8g/m2にてコ―テイングして粘着ラベル3を作製した。そして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムと線状ポリエチレンフィルムとのドライラミネートフィルムからなる蓋部6に直径5mmの貫通孔2Aを設け、貫通孔2Aを塞ぐように上記粘着ラベル3を貼着した。
【0048】
このとき、粘着ラベル3の貼着位置を表1に示すように、二通りの異なる位置として実施例1、実施例2とした。
このような加熱調理容器1に内容物Fとして米飯を100g充填して電子レンジにて加熱調理した。
合わせて本発明の効果を明確にするために、比較例1,2として、従来用いられている粘着テープを使用して、貫通孔に貼着する貼着位置を変えてテストを行った。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1及び2では、加熱処理が進むとともに蓋部6がやや持ち上がって膨らんだ形状になった段階から、粘着ラベル3が貫通孔2A周辺でブリッジ状に浮き上がり、該部分から水蒸気が噴出した。そして、ピーという発信音により調理の開始を知らせながら、発信音を出し続け、発信音の終了に伴い粘着ラベルは復元して再度密封状態に戻った。
このように、実施例1及び2では、加熱終了後の蒸らし効果が良好で、米飯がふっくらと仕上がり、脱気、再封とも極めて良好であった。また、発信音が明確に聞こえ、発信音にて調理を知らせるコミュニケーション包装としての役割が得られた。
一方、比較例1及び2では、粘着テープが蓋部から浮き上がって水蒸気が早く抜けてしまい、発信音も発信されなかった。米飯の蒸らし効果も悪く、やや乾燥気味となった。
【0051】
次に、実施例3として、粘着ラベル3の粘着ラベル基材3Bの厚みのみを100μmに変更した。それ以外は、実施例1と同様の条件で包装した。一方、比較例3として、蓋部の一部のヒートシール強度を弱くして弱シール部とし、他の部分は通常のシール強度にした。このとき、通常のヒートシール部分のシール強度は2.3kg/15mmであり、弱シール部分は800g/15mmであった。また、比較例4として、弱シール部分のみ300g/15mmまで低くしたものを用意した。結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
粘着ラベル基材3Bの厚みを100μmとしても、本発明に係る加熱調理容器では、実施例1,2と同様の良好な結果が得られた。一方、特に比較例3では、弱シール部分のシール強度がある一定値に安定的に得られることが困難なために脱気のタイミングが遅れ、包装袋が膨張し、破裂状態になることが多かった。
【0054】
次に、粘着ラベルの曲げ剛性度を数種類変更しながら、実施例1と同様の条件で電子レンジ加熱調理を行った。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
曲げ剛性度を1.0×10−2kg/mm、0.15kg/mm、0.4kg/mmに設定した場合では、表3に示すように極めて良好であった。曲げ剛性度が1.0×10−4kg/mmの場合では、発信音は小さいものの、脱気性、再封性は良好であった。
【0057】
一方、曲げ剛性度が0.7×10−4kg/mmの場合では、粘着ラベルの剛性が低く、皺が生じて平面状に貼着出来ず、そのために脱気が早く起こり、蒸らし効果が少なく、発信音も得られなかった。また、粘着ラベルが復元したものの、皺のために冷却後の密封性が悪かった。
【0058】
また、曲げ剛性度が0.8kg/mmの場合には、粘着ラベルの剛性度が高すぎるために容器内圧力が著しく上昇し、蓋部が膨張してしまい、破裂には至らなかったものの突如として脱気され、安定した蒸らし効果が得られなかった。また、突如の脱気によりシューという音を発したものの、聞き取り難く、十分なコミュニケーション機能は得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る加熱調理容器を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る加熱調理容器を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る加熱調理容器を示す正面の断面図である。
【図4】図3のA部拡大図であり、本発明の一実施形態に係る加熱調理容器の作用を示す説明図である。
【図5】図3のA部拡大図であり、本発明の一実施形態に係る加熱調理容器の作用を示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 加熱調理容器
2 容器本体
2A 貫通孔(開口部)
3 粘着ラベル(封止材)
5 容器部
7 脱気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理用の内容物を収容し、貫通孔又はスリットからなる開口部が設けられた容器本体と、
該容器部に対して粘着層を介して着離可能に貼着され、前記開口部を塞ぐ封止材と、
を備え、
前記内容物の加熱により前記容器本体の内圧が高められることで、前記封止材の一部が前記容器本体から離間され、前記開口部を介して前記容器本体の内部と外部とを連通する脱気通路が形成されることを特徴とする加熱調理容器。
【請求項2】
前記容器本体の内圧が高められることで、前記封止材の両端部が前記容器本体に貼着されまま前記封止材の中間部が離間されることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理容器。
【請求項3】
前記容器本体の内部から前記脱気通路を介して前記容器本体の外部へと抜ける蒸気により前記脱気通路から発信音が発信されることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱調理容器。
【請求項4】
前記封止材の曲げ剛性が、1×10−4kg/mm以上、かつ、0.7kg/mm以下であることを特徴とする請求項1から3の何れか一つに記載の加熱調理容器。
【請求項5】
前記封止材の粘着層の厚さが、1μm以上、かつ、100μm以下であることを特徴とする請求項1から4の何れか一つに記載の加熱調理容器。
【請求項6】
前記開口部の最大寸法が、1mm以上、かつ、50mm以下であることを特徴とする請求項1から5の何れか一つに記載の加熱調理容器。
【請求項7】
前記封止材が、矩形シート形状であり、
該封止材の長辺寸法及び短辺寸法が、それぞれ10mm以上、かつ、100mm以下であり、
該封止材の端部が、前記開口部の外周縁から少なくとも2mm以上離されることを特徴とする請求項1から6の何れか一つに記載の加熱調理容器。
【請求項8】
前記封止材の基材が、熱可塑性プラスチックフィルム、合成紙、パルプ紙、金属箔、又はこれらの複合フィルムのうちの少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1から7の何れか一つに記載の加熱調理容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−253481(P2008−253481A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98240(P2007−98240)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(507110073)有限会社テクノワールド (6)
【出願人】(593074857)北越パッケージ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】