説明

加熱調理済み食品の製造方法

【課題】本発明は、加熱調理やレトルト処理を行っても煮崩れずに適度な粒状感(つぶつ
ぶ感)を有する食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、馬鈴薯粉砕物を各種ソース素材と混合した後、加熱調理を施す加熱調理済み食品の製造方法であって、前記馬鈴薯粉砕物は、熱風乾燥で水分5〜15質量%まで乾燥し、次いで、粉砕したものであり、かつ、前記馬鈴薯粉砕物の粒度が1180μmパス及び600μmオンであることを特徴とする、つぶつぶ感のある加熱調理済み食品の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理済み食品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より粒状原料を添加した加工食品が知られている。
例えば、特許文献1には、目開き4750μmパス〜355μmオンの範囲に含まれる大きさの野菜、果実、果菜及びスパイスから選ばれる1種又は2種以上からなる固形粒子状の原料を、ペースト状カレールー全体に対して15〜66重量%の割合で含み、上記範囲に含まれる大きさの固形粒子状の原料がペースト状カレールーに含まれる目開き355μmオンの大きさの固形粒子状の原料全体に対して90〜100重量%の割合で含まれることを特徴とするペースト状カレールーが開示されている。特許文献1に開示された発明は、野菜、果実、果菜及びスパイスから選ばれる1種又は2種以上からなる固形粒子状の原料を使用するものであって、これを使用して粒状感のある手作りカレーのような嗜好性が付与されるというものであるが、馬鈴薯を使用していないため、馬鈴薯の粒状物を使用した場合の適度な粒状感(つぶつぶ感)の食感を付与することはできない。
また、特許文献2には、馬鈴薯の粉砕物を含有し、馬鈴薯の特有の甘味及び風味の丸みと粘性が付与されたことを特徴とするカレーソース、及び他の原料と一緒に加熱処理した後粉砕した馬鈴薯を、カレーソースに混入し、これを耐熱性容器に充填密封してレトルト処理することを特徴とするカレーソースの製造方法が開示されている。特許文献2に開示された発明は、カレーソースにホモゲナイズ処理等を施さない馬鈴薯の粉砕物を特定量含有させることで、馬鈴薯の特有の甘味及び風味の丸みと粘性が付与された新規なカレー製品が得られるというものであるが、馬鈴薯の粒度は10〜600μmと非常に小さく、適度な粒状感(つぶつぶ感)が得られない。
【0003】
さらに、特許文献3には、低粘度の流動性原料中に、加熱処理した粒状の馬鈴薯を分散させる工程、該原料に澱粉及び/又は油脂を添加した後、加熱して、該澱粉をα化させかつ/又は該油脂を溶融させる工程、次いで、該原料を冷却して、品温25℃での粘度が5,000〜100,000mPa・s(B型粘度計)とする工程を含むことを特徴とする高粘性食品の製造法が開示されている。特許文献3に開示された発明は、加熱処理された馬鈴薯が均一に分散され、該馬鈴薯の組織が良好に保たれ、粒状感や固形物感が活かされていると同時に、食品全体として特有の食感と口解けを有する新規な高粘性食品を得るというものであるが、馬鈴薯の大きさは3〜20mmと非常に大きく、馬鈴薯の粒状物を使用した場合の適度な粒状感(つぶつぶ感)の食感を付与することはできない。
またさらに、特許文献4には、粒度が500μm以上である顆粒状原材料を含む小麦粉ルウからなるルウ製品及びその製造方法が開示されている。特許文献4に開示された発明は、顆粒状原材料がルウ製品を調理する過程で溶解又は膨潤することで、喫食時のソースが均一で舌触りのよいものになるというものであるが、ルウ製品を調理する過程で溶融、分散又は膨潤することで、喫食時のソースは均一で舌触りのよいものになっている。しかし、この方法は、喫食時まで顆粒状原材料を残してつぶつぶ感を食感として付与しようとするものではなく、従って、この方法では馬鈴薯の粒状物を使用した場合の適度な粒状感(つぶつぶ感)の食感を付与することはできない。
【0004】
【特許文献1】特開平5−227917号公報
【特許文献2】特開2001−224346号公報
【特許文献3】特開2002−315544号公報
【特許文献4】特開2005−348683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、加熱調理やレトルト処理を行っても煮崩れずに適度な粒状感(つぶつぶ感)を有する食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題に対して鋭意検討を重ねた結果、特定の馬鈴薯粉砕物を添加することによって適度な粒状感(つぶつぶ感)が得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、馬鈴薯粉砕物を各種ソース素材と混合した後、加熱調理を施す加熱調理済み食品の製造方法であって、前記馬鈴薯粉砕物は、熱風乾燥で水分5〜15質量%まで乾燥し、次いで、粉砕したものであり、かつ、前記馬鈴薯粉砕物の粒度が1180μmパス及び600μmオンであることを特徴とする、つぶつぶ感のある加熱調理済み食品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、例えば、カレーソース、ホワイトソース、シチュー、ハヤシライスソース、パスタソース、デミグラソース等のソース類、コーンスープ、ポタージュースープ等のスープ類、カレーフィリング等のような加熱調理済み食品又はこれらに具材が含まれている加熱調理済み食品の製造において、乾燥状態での粒度と硬さ(最大荷重)を調整した馬鈴薯粉砕物を前記加熱調理済み食品中に加えることで、加熱調理やレトルト処理を行っても煮崩れずにやや弾力のある適度な粒状感(つぶつぶ感)を有する食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】乾燥状態における馬鈴薯粉砕物の最大荷重を示す。
【図2】水に添加して加熱処理した馬鈴薯粉砕物の最大荷重を示す。
【図3】カレーソース類中の馬鈴薯粉砕物の最大荷重を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の加熱調理済み食品の製造方法は、馬鈴薯粉砕物を各種ソース素材と混合した後、加熱調理を施すことを含む。
本発明の加熱調理済み食品の製造方法で用いる馬鈴薯はいかなる品種であってもよく、特定の品種に限定されるものではない。
馬鈴薯粉砕物の粒度は、好ましくは600μm〜1180μmであり、より好ましく850μm〜1180μmである。馬鈴薯粉砕物の粒度をこのような範囲とすることによって、外観上の見栄えもよく、適度な粒状感(つぶつぶ感)の食感を付与することができる。馬鈴薯粉砕物の粒度が600μmよりも小さいと最終製品に対して前記粒状感を付与することができなくなり、反対に1180μmよりも大きいと粒状感というよりもむしろ異物感が強くなる。
上記馬鈴薯の粒度は、JIS8801に準拠した金属製網篩(飯田製作所製)を用いて測定したものである。
馬鈴薯粉砕物は、馬鈴薯を水分15質量%以下まで乾燥させ、次いで粉砕することによって得ることができる。このように乾燥・粉砕した馬鈴薯を使用する場合には、常温で長期間の保管が可能になるため、製造工程での原料の衛生管理、鮮度管理、生産管理が容易になる。乾燥方法としては、熱風乾燥を例示することができる。
【0010】
馬鈴薯粉砕物は、乾燥状態における破断強度測定によって得られる最大荷重が740〜1910gであるのが好ましい。ここで、乾燥状態とは、水分8〜10質量%まで乾燥した状態をいう。また、前記最大荷重は、直径20mmの円筒型プランジャーを速度0.20mm/sで降下させて、歪みが80%となるまでの間の最大荷重(g)を意味する。乾燥状態における馬鈴薯粉砕物の破断強度測定によって得られる最大荷重がこのような範囲内の馬鈴薯粉砕物を使用すれば、やや弾力感のある適度な粒状感(つぶつぶ感)の食感を付与することができる。このような馬鈴薯粉砕物の製造方法としては、例えば5mmスライスや5mm角ダイスの剥皮馬鈴薯を加熱せずに、あるいは85℃の湯中で5分間加熱後、熱風乾燥等で5〜15質量%好ましくは8〜10質量%まで乾燥させた後にピンミル等で粉砕することによって得ることができる。
また、本発明で用いる馬鈴薯粉砕物は、水と混合して加熱処理した状態における破断強度測定によって得られる最大荷重が6〜64gであるのが好ましい。水と混合して加熱処理した状態における馬鈴薯粉砕物の破断強度測定によって得られる最大荷重がこのような範囲内であれば、やや弾力感のある適度な粒状感(つぶつぶ感)の食感を付与することができる。ここで、水と混合して加熱処理した状態とは、乾燥状態の馬鈴薯粉砕物と水とを混合し、レトルト耐性のパウチに充填密封して122℃で25分間加熱し、前記パウチから取り出して水で洗浄した状態を意味する。
本発明においては、上述の馬鈴薯粉砕物を各種ソース素材と混合した後、加熱調理を施す。
加熱調理の条件としては、80〜100℃で1分間〜3時間という条件であるのが好ましく、喫食可能な味覚、風味、食感を付与することができる。また、加熱調理をレトルト殺菌処理と同時に行ってもよい。レトルト殺菌処理の条件としては、110〜135℃で10〜60分間という条件を例示することができる。
【0011】
各種ソース素材と混合する馬鈴薯粉砕物は、各種ソース素材と混合する前に、予め吸水させてもよい。これによって、各種ソース素材の混合物中に分散し易くなる。
各種ソース素材と混合する馬鈴薯粉砕物の配合量は、好ましくは0.02〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。馬鈴薯粉砕物の配合量をこのような範囲とすることで、適度な粒状感を達成することができ、食感を損なうこともなく、馬鈴薯の風味が強すぎて加熱調理済み食品の風味を損なうこともない。
本発明において、加熱調理済み食品には、カレーソース、カレーフィリング等のカレー類、ホワイトソース、シチュー等のシチュー類、ハヤシライスソース、パスタソース、デミグラソース等のソース類、コーンスープ、ポタージュースープ等のスープ類又はこれらに具材を含ませた食品などが含まれる。
【実施例】
【0012】
(実施例1)
<馬鈴薯粉砕物の製法>
馬鈴薯の皮を剥き、5mm角のダイス状にして85℃の湯中に5分間浸漬を行った後、約70℃の熱風乾燥で水分10%まで乾燥し、ピンミルで粉砕した。
【0013】
<馬鈴薯粉砕物の粒度による分離方法>
馬鈴薯粉砕物の粒度による篩い分けは、JIS8801に準拠した金属製網篩(飯田製作所製)を用いて行った。すなわち、上段から、目開き1180μmの篩、目開き850μmの篩、目開き600μm篩、最下段に受け皿を重ねた。この篩の段組の最上段に、乾燥状態の馬鈴薯粉砕物1kgを載せ、5分間振とうした。次いで、目開き1180μmに残留した粒子(区分1)、目開き1180μmを通過して目開き850μmに残留した粒子(区分2)、目開き850μmを通過して目開き600μmに残留した粒子(区分3)、目開き600μmを通過した粒子(区分4)に分離した。
【0014】
<最大荷重の測定>
馬鈴薯粉砕物の最大荷重は、馬鈴薯粉砕物をクリープメーター(山電製RE‐3305)で測定し、破断強度解析を行うことで得た。クリープメーターに装着するロードセルは、乾燥状態の馬鈴薯砕物の測定には2kgf、水に添加してレトルト殺菌した馬鈴薯粉砕物およびレトルトソース類中の馬鈴薯粉砕物の測定には200gfを用いた。ロードセルに直径20mmの円筒型プランジャーを取り付けた。試料台に馬鈴薯粉砕物の粒子を載せ、プランジャーを速度0.20mm/s、歪み80%まで降下させたときの最大荷重(g)を得た。
【0015】
<乾燥状態における馬鈴薯粉砕物の最大荷重>
乾燥状態における馬鈴薯粉砕物を上記「馬鈴薯粉砕物の粒度による分離方法」で分離した区分2〜区分4について、上記「最大荷重の測定方法」に従い、最大荷重を測定した。
その結果を表1及び図1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
<水に添加して加熱処理した馬鈴薯粉砕物の最大荷重>
乾燥状態の馬鈴薯粉砕物4g(区分2〜4のうち、1区分毎)と水196gを混合し、レトルト耐性のパウチ(高さ175mm、幅126mm)に200g充填し後、レトルト殺菌機(日阪製作所製)内に収納して122℃で25分間の蒸気式加圧加熱殺菌を行った。得られた殺菌済みサンプルを5分間沸騰水中で湯煎した後、50℃の水2Lで洗浄した後、水に浸し、その中から馬鈴薯粉砕物を一粒取り出し、上記「最大荷重の測定方法」に従って最大荷重を測定した。その結果を表2及び図2に示す。なお、測定までの乾燥を防ぐために馬鈴薯粉砕物を水に浸しておく。
【0018】
【表2】

【0019】
(実施例2)
<馬鈴薯粉砕物の製法>
馬鈴薯の皮を剥き、5mm角のダイス状にして85℃の湯中に5分間浸漬を行った後、約70℃の熱風乾燥で水分10%まで乾燥し、ピンミルで粉砕した。
【0020】
<馬鈴薯粉砕物の粒度による分離方法>
馬鈴薯粉砕物の粒度による篩い分けは、JIS8801に準拠した金属製網篩(飯田製作所製)を用いて行った。すなわち、上段から、目開き1180μmの篩、目開き850μmの篩、目開き600μm篩、最下段に受け皿を重ねた。この篩の段組の最上段に、乾燥状態の馬鈴薯粉砕物1kgを載せ、5分間振とうした。次いで、目開き1180μmに残留した粒子(区分1)、目開き1180μmを通過して目開き850μmに残留した粒子(区分2)、目開き850μmを通過して目開き600μmに残留した粒子(区分3)、目開き600μmを通過した粒子(区分4)に分離した。
【0021】
<粒状感の官能評価>
レトルトソースの作製法:
小麦粉ルー10質量部、玉ねぎ20質量部、トマトペースト3質量部、リンゴペースト10質量部、ハチミツ2質量部、植物油脂5質量部、ビーフエキス5質量部、カレーパウダー2質量部、食塩1質量部、馬鈴薯粉砕物(区分1〜4のうち、1区分毎)2質量部及び水40質量部を混合し、品温90℃まで加熱してカレーソースを得た。得られたカレーソースをレトルト耐性のパウチ(高さ175mm、幅126mm)に200g充填し、レトルト殺菌機内に収納して122℃で25分間の蒸気式加圧加熱殺菌を行った。
官能評価:
得られたカレーソースを5分間沸騰水中で湯煎した後、外観、食感について官能評価を行った。その結果を表3に示す。
【0022】
【表3】

【0023】
<カレーソース類中の馬鈴薯粉砕物の最大荷重>
上記レトルトカレーソースを5分間沸騰水中で湯煎した後、50℃の水2Lで洗浄し、
上記「最大荷重の測定方法」に従って最大荷重を測定した。その結果を表4及び図3に示
す。
【0024】
【表4】

【0025】
<結果のまとめ>
以上の結果から、最大荷重が740〜1910gであり、粒度が1180μmパスで6
00μmオンである乾燥状態の馬鈴薯粉砕物をレトルトソース中に加えて加熱調理を行う
ことによって、異物感を感じない適度な大きさ及び食感であり、かつ、煮崩れずに適度な
粒状感(つぶつぶ感)を有する食品を製造できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
馬鈴薯粉砕物を各種ソース素材と混合した後、加熱調理を施す加熱調理済み食品の製造方法であって、前記馬鈴薯粉砕物は、熱風乾燥で水分5〜15質量%まで乾燥し、次いで、粉砕したものであり、かつ、前記馬鈴薯粉砕物の粒度が1180μmパス及び600μmオンであることを特徴とする、つぶつぶ感のある加熱調理済み食品の製造方法。
【請求項2】
各種ソース素材と混合する馬鈴薯粉砕物の配合量が0.02〜10質量%である、請求項1記載の加熱調理済み食品の製造方法。
【請求項3】
加熱調理済み食品がカレー類、シチュー類、ソース類及びスープ類並びにこれらに具材が含まれているものから選択される、請求項1又は2記載の加熱調理済み食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−130(P2011−130A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225460(P2010−225460)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【分割の表示】特願2006−204995(P2006−204995)の分割
【原出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】