説明

加熱調理装置

【課題】良好に加熱対象物の両面加熱を行えるものでありながらも、清掃性に優れたグリル庫を有する加熱調理装置を提供する。
【解決手段】グリル庫40内において、側面バーナB2、B2がグリル庫40の両側壁面41、41に設けられた凹部41p、41pに引退して配設され、且つ、側面バーナB2、B2が、グリル庫40の夫々の側壁面41、41における凹部41p、41pからグリル庫40内部に向けて燃焼ガスを噴出して加熱するように構成され、側面バーナB2、B2からグリル庫40内部に向けて燃焼ガスを加熱対象物載置部70の加熱対象物の下方に誘導する燃焼ガス誘導手段64が、グリル本体に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル庫を備えた加熱調理装置本体と、加熱対象物載置部としての焼網及びその焼網からの落下物を受ける受け皿を少なくとも備えるとともに、摺動手段に沿う前記グリル庫内からの引出し操作又はグリル庫内への挿入操作が自在に構成されたグリル本体と、前記加熱対象物載置部に載置した加熱対象物を加熱する加熱手段とを備え、前記加熱手段が、少なくとも前記グリル庫内の左右の両側壁面に配設されて前記加熱対象物の下面側を加熱する側面バーナを備えて構成されている加熱調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガステーブルなどの加熱調理装置には、従来より魚等の調理対象物を加熱調理するグリルを備えたものが多く利用されている。このような加熱調理装置におけるグリルは、グリル庫からの引出し操作又は挿入操作が自在に構成されたグリル本体を備えて構成され、そのグリル本体を案内する摺動手段(ガイド手段)が、グリル庫内の底面或いはグリル庫内の左右の両側壁面に、そのグリル庫の底面や両側壁面から突設する状態に備えられている(例えば、特許文献1参照)。
また、近年、調理対象物を加熱調理するグリルとして、加熱手段としての上面バーナと側面バーナとを備え、グリル本体に載置支持される加熱対象物載置部としての焼網に載置された加熱対象物を、その上面及び下面から加熱可能に構成された両面焼グリル付の加熱調理装置が実用化されている。上記のような両面焼グリルでは、上面バーナによって加熱対象物をその上面から加熱するに加えて、グリル庫の左右の両側壁面から突設して設けられた側面バーナが焼網の下方に向けて燃焼ガスを噴出して、加熱対象物をその下面から加熱するように構成されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−065391号公報
【特許文献2】特開2004−261280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、グリルを備えた加熱調理装置においては、そのグリルにおける加熱調理に伴って、調理対象物から油滴が飛散したり、加熱によって発生した蒸気中の成分が凝縮する等して、グリル庫内の壁面に付着することがある。加熱対象物から飛散した油滴や蒸気(以下油滴等という)は、グリル庫上面(すなわち上面バーナの設置部分)においては、上面バーナの火炎によって燃焼されるため付着する虞は少ないが、グリル庫の底面或いは左右の両側壁面においては、それらの油滴等は燃焼せずに凝縮されて固化し、そのまま固着する可能性がある。
【0005】
上記特許文献1又は2のような加熱調理装置においては、グリル本体を案内する摺動手段(ガイド手段)や側面バーナがその底面或いは左右の両側壁面から突設する状態で備えられているため、加熱調理に伴ってその加熱対象物から飛散した油滴等による汚れがグリル庫の底面或いは左右の両側壁面における摺動手段や側面バーナの設置箇所(突設箇所)の近傍に付着した場合、付着して固化した汚れが清掃し難いものとなっていた。なお、前記固着を放置すると、見た目に不快であるだけでなく、摺動手段の摺動性の悪化によりグリル本体の引出し操作又は挿入操作が困難になる場合もある。従って、良好に両面加熱ができるものでありながらも、グリル庫全体に亘って清掃性に優れたグリル庫を備える加熱調理装置が要請されていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好に加熱対象物の両面加熱を行えるものでありながらも、清掃性に優れたグリル庫を有する加熱調理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る加熱調理装置は、グリル庫を備えた加熱調理装置本体と、加熱対象物載置部としての焼網及びその焼網からの落下物を受ける受け皿を少なくとも備えるとともに、摺動手段に沿う前記グリル庫内からの引出し操作又はグリル庫内への挿入操作が自在に構成されたグリル本体と、前記加熱対象物載置部に載置した加熱対象物を加熱する加熱手段とを備え、
前記加熱手段が、少なくとも前記グリル庫内の左右の両側壁面に配設されて前記加熱対象物の下面側を加熱する側面バーナを備えて構成されているものであって、
その第1特徴構成は、前記グリル庫内において、前記側面バーナが前記グリル庫の前記両側壁面に設けられた凹部に引退して配設され、且つ、前記側面バーナが、前記グリル庫の夫々の側壁面における前記凹部から前記グリル庫内部に向けて燃焼ガスを噴出して加熱するように構成され、
前記側面バーナから前記グリル庫内部に向けて燃焼ガスを前記加熱対象物載置部の前記加熱対象物の下方に誘導する燃焼ガス誘導手段が、前記グリル本体に設けられている点にある。
【0008】
すなわち、グリル庫内において、側面バーナがグリル庫の左右の両側壁面に設けられた凹部に引退して配設されているものであるから、グリル庫の両側壁面には、付着した汚れが清掃し難い部分(特に側壁面から突出する突出部分)が実質的に存在しないものとなり、汚れを払拭清掃することが容易となる。ところで、側面バーナは、グリル庫の夫々の側壁面側からグリル庫内中央方向に向けて燃焼ガスを噴出して加熱するように構成されている。しかしながら、上記のように側面バーナをグリル庫の両側壁面に設けられた凹部に引退させて配設すると、側面バーナから焼網までの距離が大きくなり、その結果、側面バーナから加熱対象物までの距離も大きくなるため、側面バーナの燃焼ガスは焼網の中央部分に届かず、焼網における両側壁面近傍部分を主に加熱するように燃焼ガスが通流する虞がある。
そこで、側面バーナの燃焼ガスを加熱対象物載置部の加熱対象物の下方に誘導する燃焼ガス誘導手段をグリル本体に設ける。その結果、側面バーナがグリル庫の両側壁面に設けられた凹部に引退して配設されるものでありながらも、その側面バーナが噴出する燃焼ガスを適切に加熱対象物載置部の加熱対象物の下方に誘導することが可能となり、加熱対象物の下面側を良好に加熱調理することができるものとなる。
従って、良好に加熱対象物の両面加熱を行えるものでありながらも、清掃性に優れたグリル庫を有する加熱調理装置を提供することができるものとなった。
【0009】
本発明に係る加熱調理装置の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記燃焼ガス誘導手段が、前記焼網の両側部に一体に取り付けられて形成されている点にある。
【0010】
すなわち、燃焼ガス誘導手段が、焼網の両側部に一体に取り付けられて形成されているので、焼網をグリル庫内に収めた状態で、上述のように側面バーナが噴出する燃焼ガスを確実に加熱対象物載置部の加熱対象物の下方に誘導することが可能となり、グリル庫内部を清掃製の高いものとしながらも、加熱対象物の下面側を良好に加熱調理することができるものとなった。
【0011】
本発明に係る加熱調理装置の第3特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記燃焼ガス誘導手段が、前記受け皿の両側部に一体に取り付けられて形成されている点にある。
【0012】
すなわち、燃焼ガス誘導手段が、受け皿の両側部に一体に取り付けられて形成されているので、受け皿をグリル庫内に収めた状態で、上述のように側面バーナが噴出する燃焼ガスを確実に加熱対象物載置部の加熱対象物の下方に誘導することが可能となり、グリル庫内部を清掃製の高いものとしながらも、加熱対象物の下面側を良好に加熱調理することができるものとなった。
【0013】
本発明に係る加熱調理装置の第4特徴構成は、上記第1〜第3のいずれかの特徴構成に加えて、前記摺動手段が、前記加熱調理装置本体に対して備えられる固定部と、前記グリル本体に取り付けられ、前記固定部に対して相対移動可能に嵌合する摺動部とを備えて構成され、且つ、前記摺動手段が、前記加熱調理装置本体に備える前記グリル庫とは別に前記加熱調理装置本体に備えられる摺動手段格納室に設けられている点にある。
【0014】
すなわち、加熱調理装置本体に対して備えられる固定部と、グリル本体に取り付けられ、固定部に対して相対移動可能に嵌合する摺動部とを備えて構成される摺動手段が設けられて、グリル本体のグリル庫内からの引出し操作又はグリル庫内への挿入操作を的確に行うことを可能としながらも、その摺動手段が前記加熱調理装置本体に備える前記グリル庫とは別の摺動手段格納室に設けられているものであるから、グリル庫内には摺動手段による凹凸部が形成されず、グリル庫内に付着した汚れを払拭清掃することが容易となる。
従って、清掃性に優れたグリル庫を有する加熱調理装置を提供できるものとなった。
【0015】
本発明に係る加熱調理装置の第5特徴構成は、上記第1〜第4のいずれかの特徴構成に加えて、前記グリル庫内に、前記側壁面に向かってスチーム又は熱水を噴霧する清掃補助手段を備えた点にある。
【0016】
すなわち、グリル庫内に、側壁面に向かってスチーム又は熱水を噴霧する清掃補助手段を備えるものであるから、側壁面に向かって噴霧するスチーム又は熱水によって、主に油より構成されるグリル庫内の汚れを溶融させ、或いは軟化させて、払拭清掃し易い状態とすることができる。
従って、更に清掃性に優れたグリル庫を有する加熱調理装置を提供できるものとなった。
【0017】
本発明に係る加熱調理装置の第6特徴構成は、上記第1〜第5のいずれかの特徴構成に加えて、前記両側壁面が、鉛直方向に立設される平面状の部材にて構成されている点にある。
【0018】
すなわち、両側壁面が、鉛直方向に立設される平面状の部材にて構成されているものであるから、グリル庫内を清掃するにしても、そのグリル庫内に凹凸部が形成されず、汚れを払拭清掃し易いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の加熱調理装置の一例としてのガステーブルの斜視図
【図2】グリル庫内を前面側より見た平行透視図
【図3】グリル本体の背面斜視図
【図4】グリル本体をグリル庫及び摺動手段格納室から引き出した状態を示す側面図
【図5】図4におけるV−V線一部断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔加熱調理装置の全体構成〕
以下、本発明に係る加熱調理装置について、図面(図1〜図5)に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る加熱調理装置の一例としてのガステーブルAの斜視図である。ガステーブルAの天板10には、大火力バーナを備えたコンロ11、標準火力バーナを備えたコンロ12、及び小火力バーナを備えたコンロ13が設けられている。また、図2等に示すように、ガステーブルAの本体内部には、加熱手段Kとして上面バーナB1と側面バーナB2とを備えた両面加熱式のグリルが設けられている。天板10における前面板30に対向する側部(背面側の端部)には、グリルのグリル庫40にて発生する燃焼ガスをガステーブルA外部に排出する排気口14が設けられている。
以降、このガステーブルAにおいて、前面板30と平行な方向であるガステーブルAの横幅方向をX方向、平面視において前面板30と直交する方向であるガステーブルAの前後方向をY方向、そして、X方向及びY方向に直交するガステーブルAの高さ方向をZ方向と称する。Z方向は単に高さ方向と称することもある。また、特にY方向においては、前面板30側を前面側、前面板30に対向する側を背面側と称し、X方向においては、中央に向かう方向を中央側、両側部に向かう方向を外方側と称することとする。
【0021】
図1及び図2に示すように、前面板30には、コンロ11、12、13、及びグリルGのそれぞれの加熱手段Kの点火及び消火や火力調節を指令する加熱状態調整手段100a、100b、100c、及び100dが設けられている。そして、マイクロコンピュータを備えて各種の制御を実行するように構成された制御部H(制御手段の一例)が、上記加熱状態調整手段100a、100b、100c、及び100dにて指令された指令状態に基づいて、上記夫々の加熱手段Kの加熱状態(具体的には、図示しないガス開閉弁の開閉、ガス調整弁の開度、及び点火プラグの作動等)を制御するように構成されている。又、従来周知の技術であるので詳述はしないが、上記コンロ11、12、13、及びグリルGには、その加熱手段Kによる加熱状態(加熱対象物の温度等)を検出する加熱状態検出手段が設けられ、その検出情報に基づいて、前記制御部Hがガス調整弁の開度やガス開閉弁の開閉等を指令し、加熱手段Kによる加熱状態が指令された状態となるように制御を実行するようになっている。
【0022】
前面板30におけるX方向中央寄りに位置して、グリル庫40に連通する開口部45が設けられている。グリル本体Mは、この開口部45を介してグリル庫40からの引出し又は挿入操作が自在に構成されている。また、このガステーブルA本体における開口部45の下部には、図2に示すように、摺動手段格納室50に連通する開口部55が設けられている。摺動手段格納室50は、後述する摺動手段をその内部に備えるように構成される。また、前面板30の左端側の一部に、水タンク21が、その前面板30から離脱可能となる状態で装着されている。この水タンク21は水道水等の水を貯留可能に構成され、後述する清掃補助手段としてのスチームパイプから噴出するスチームを生成するための水を供給するようになっている。
【0023】
〔グリル庫の構成〕
図1に示すように、本発明のガステーブルA本体に備えられるグリルGは、グリル庫40と、そのグリル庫40内からの引出し操作又はグリル庫40内への挿入操作が自在に構成されたグリル本体Gとを備えて構成されている。グリル庫40は、上述のように、ガステーブルA本体の前面板30に設けられた開口部45を介してガステーブルA外部と連通するように設けられている。
【0024】
図2及び図5に示すように、グリル庫40は、正面視においてX方向左右両側に備えられる側壁面41、下面に備えられる底板42、及び上面側に備えられる上面板43によって囲まれて形成されている。また、図4に示すように、Y方向背面側は終端壁にて閉塞され、且つ、その終端壁の一部には、排気口14に連通する排気口連通部40hが設けられている。
【0025】
図2及び図5に示すように、グリル庫40における底板42は、グリル庫40内において、凹凸のない平板状の部材として構成されている。
上面板43は、正面視においてZ方向上方に突出する台形状に形成され、最上面部分に上面バーナB1が設けられている。この上面バーナB1は、下方に向けて、すなわちグリル庫40内方に向けて燃焼ガスを噴出するように構成されている。
グリル庫40のX方向左右に設けられる両側壁面41、41は、鉛直方向に立設される平面状の部材にて構成され、その側壁面41の高さ方向(Z方向)における中央よりも下方に、Y方向に沿って凹部41pが設けられている。左右両側壁面41において、凹部41pには、側面バーナB2が側壁面41よりも凹部41p側に引退する状態で設けられている。この左右夫々の側面バーナB2は、左右夫々の側壁面41における凹部41pから、グリル庫40の内方側に向けて燃焼ガスを噴出するように構成されている。上面バーナB1及び左右の両側面バーナB2からグリル庫40内に噴出された燃焼ガスは、排気口連通部40hから排気口14に排出される。
【0026】
また、グリル庫40内における、両側壁面41、41の上端近傍には、Y方向に沿って、清掃補助手段としてのスチームパイプ90が備えられている。このスチームパイプ90は、Y方向における前面側、つまりグリル庫40の開口部45側の端部が閉塞され、且つ、Y方向における背面側(グリル庫40の背面側)の端部が、図示しない水蒸気生成部に連通する水蒸気供給管に接続されている。そして、左右のスチームパイプ90は、夫々の近接する側壁面41に向けて斜め下方向きに水蒸気(スチーム)を噴出するように、スチームパイプ90の管周において近接する側壁面41側のやや下向き位置に、水蒸気噴出孔がその長手方向に沿って一列状に設けられている。水蒸気生成部は、前記水タンク21から供給される水を加熱して水蒸気を生成し、水蒸気供給管を介してスチームパイプ90に供給するようになっている。なお、図示はしていないが、水蒸気供給管には水蒸気を供給する状態と供給しない状態とを切換える開閉弁が設けられ、この開閉弁は前記制御部Hからの指令によって開閉されるように構成されている。なお、上記水蒸気に代えて、スチームパイプ90から熱水を噴霧するように構成してもよい。この場合には、熱水を圧送するためのポンプを別途設けるように構成する。
すなわち、グリル庫40内に、側壁面41に向かってスチーム又は熱水を噴霧する清掃補助手段が備えられている。
【0027】
〔摺動手段格納室の構成〕
摺動手段格納室50は、図2に示すように、ガステーブルA本体における開口部45の下部に設けられた開口部55を前面開口として、グリル庫40の下部に、そのグリル庫40とは別個独立に設けられている。摺動手段格納室50は、そのX方向の寸法がグリル庫40のX方向の寸法と略等しくなるように、且つ、そのY方向の寸法がグリル庫40のY方向の寸法と略等しく又はそれよりやや長くなるように構成されている。
そして、図2及び図5に示すように、摺動手段格納室50内部には、X方向の左右両壁面に対して備えられる固定部としての一対の固定レール51が、左右両壁面に固定される状態で備えられている。左右夫々の固定レール51は、ガステーブルAの正面視にて断面コの字状の長尺部材にて構成されている。そして、左右の固定レール51は、夫々その長手方向がY方向と平行となる状態で摺動手段格納室50の壁面に沿わせて、摺動手段格納室50の左右両壁面に固定されている。
また、図2及び図4に示すように、摺動手段格納室50における開口部55近傍の位置で且つX方向においてその両側壁面41から夫々所定距離離間した位置に、左右一対の抜落ち防止部材54が設置されている。これは、後述する摺動手段としての可動レール52が、所定の引出し量以上引き出されないように制限することによって、グリル本体Mのグリル庫40からの抜け落ちを阻止するものである。
【0028】
〔グリル本体の構成〕
グリル本体Mは、図3及び図4に示すように、ガステーブルA本体の外部側となる面(以降外面と称する。)にグリッパ31Gを備えたグリル扉31を備え、そのグリル扉31裏面(ガステーブルA本体の内部側となる面。以降内面と称する。)に、加熱対象物載置部としての焼網70及びその焼網70からの落下物を受ける受け皿60が取付けられている。また、受け皿60の下方には、その受け皿60から離間して、前記固定レール51に対して相対移動可能に嵌合する摺動部としての可動レール52が取付けられている。
【0029】
受け皿60は、凹状に形成され且つその周縁にフランジ状の周縁部を備えた皿部61を備えている。皿部61の周縁部におけるY方向前面側と背面側とには、後述する焼網70の前面側の一対の爪部72tに嵌合する一対の嵌合孔、及び、背面側の一対の爪部73tに嵌合する一対の嵌合孔が形成されている。また、皿部61の周縁部におけるX方向両側(すなわち、皿部61の周縁部のうち、X方向両端にY方向に沿って設けられる部分)には、そのうちY方向前面側寄り位置と背面側寄り位置とに、周縁部の側壁面41側の端部から夫々立ち上がる状態で、一対の支持部材63が設けられている。そして、その支持部材63に支持される状態で、燃焼ガス誘導手段としての燃焼ガス誘導板64が設けられている。なお、支持部材63のY方向における幅は、燃焼ガス誘導板64を支持するに十分な強度を備える程度(例えば1〜2cm、あるいはそれ前後の幅)に設定され、Y方向の前面側寄り位置と背面側より位置との一対の支持部材63の間は十分に離間した状態に構成されている。これは、その一対の支持部材63の間に側面バーナB2の燃焼ガスを通流させるためである。
【0030】
夫々の燃焼ガス誘導板64は、そのY方向の寸法が受け皿60のY方向の寸法と略同じとなるように形成されている。また、図5に示すように、X方向の寸法が、側面バーナB2の燃焼ガスをグリル庫40のX方向中央部に誘導するに十分な長さ(例えば受け皿60のX方向の寸法の1/4〜1/6程度或いはそれ以上又はそれ以下の長さ)となるように形成されている。
すなわち、燃焼ガス誘導手段(燃焼ガス誘導板64)が、受け皿60の両側部に一体に取り付けられて形成されている。
【0031】
図3及び図5に示すように、左右の両燃焼ガス誘導板64は、そのX方向中央側の端部において、Y方向前面側及び背面側夫々の支持部材63の上端部と接続されて支持されている。
また、図5に示すように、一対の支持部材63の夫々は、上方がX方向中央寄りとなるように傾斜して設けられ、左右夫々の燃焼ガス誘導板64は、支持部材63との接続箇所からX方向における側壁面41寄りとなるに従って、Z方向(グリル庫40の高さ方向)の高さが徐々に低くなるように設けられている(この燃焼ガス誘導板64の側壁面41側の高さは、例えば、支持部材63のZ方向の立ち上がり高さに相当する長さの半分程度の高さとなるように設定される)。左右夫々の燃焼ガス誘導板64の側壁面41側の端部は、側面バーナB2が設置されている凹部41pより若干高い位置となるように設定される。従って、側面バーナB2の燃焼ガスは、燃焼ガス誘導板64によって、X方向中央側(すなわちグリル庫40中央部)に向けて、徐々に上方に向かわせるように誘導されることとなる。
【0032】
受け皿60は、図3に示すように、グリル扉31内面に設けられた左右一対の係合部材33と係合してグリル扉31と一体にグリル庫40から引出し又はグリル庫40内へ挿入されるようになっている。左右夫々の係合部材33は、図4に示すように、グリル扉31内面から片持ち状態にY方向背面側に延出し、その端部が上方に折り曲げられて形成されている。そして、受け皿60の周縁部における、Y方向前面側の一対の嵌合孔よりもグリル扉31寄りの位置に、左右一対の取付部材33と係合する一対の係合孔が設けられている。そして、受け皿60の一対の係合孔に一対の取付部材33を係合させることによって、グリル扉31と受け皿60とがグリル庫40に対して一体移動するように構成されている。
また、図3及び図5に示すように、受け皿60の周縁部における、背面側の左右夫々の立設部材63の取付け位置の下方に、受け皿60の凹状の皿部61の底面より更に下方に突出する状態で、樹脂座62が設けられている。この樹脂座62は、耐熱性に優れ且つ摩擦係数の低い樹脂にて形成され、グリル本体Gの格納状態において、グリル庫40の底板42に載置される状態となる。
【0033】
図3に示すように、焼網70は、金属棒を平面視においてY方向に長い矩形の枠状に形成した枠部材及びその枠部のX方向両側部に亘って着設された複数の横設部材によって形成された焼網部71と、その焼網部のY方向前面側に固着された立設部材72及び焼網部のY方向背面側に固着された立設部材73と、から構成されている。
焼網部71は、X方向中央部分が水平に形成され(この部分を水平部71cと称する)、X方向における水平部71cの両側部分に、やや上方に立ち上がる左右一対の傾斜部71sが形成されている。水平部71cと左右夫々の傾斜部71sとの境界、すなわち、左右夫々の傾斜部71sのX方向中央側端部は、上述の左右夫々の燃焼ガス誘導板64のX方向中央側端部と略同位置(X方向に若干ずらした位置としてもよい)となるように設定されている。
【0034】
図3及び図4に示すように、立設部材72は、上端が折り曲げられ、上述した一対の爪部72tが下端に形成された板状の金属部材にて構成されている。そして、上端の折り曲げ部が前記焼網部71の枠部材におけるY方向前面側を構成する部分に溶接され、側面視において、焼網部71から直角をなす状態で下方に延出するように焼網部71に一体に固着される。
立設部材73は、上端が折り曲げられ下端に上述した一対の爪部73tが形成された板状の金属部材にて構成されている。そして、上端の折り曲げ部が前記焼網部71の枠部材におけるY方向背面側を構成する部分に溶接され、側面視において、焼網部71から直角をなす状態で下方に延出するように焼網部71に一体に固着される。
尚、立設部材72、73の下端側において、一対の爪部72t、73tが設けられる箇所以外の箇所は、略水平(焼網部71の水平部71cと平行)に形成されている。
【0035】
そして、焼網70は、その立設部材72の一対の爪部72t及び立設部材73の一対の爪部73tを受け皿60の周縁部におけるY方向前面側及び背面側夫々の一対の嵌合孔に嵌合させる状態で、受け皿60に対して位置決めされる。このとき、立設部材72、73下端側の水平状部分は、受け皿60の周縁部における嵌合孔が設けられていない部分に当接し、この部分にて受け皿60の周縁部に載置、支持される状態となる。従って、焼網70は受け皿60に着脱可能に支持される状態となる。
【0036】
グリル扉31内面側における下端部には、図3〜図5に示すように、受け皿60から離間する状態で、可動レール固定枠53が溶接等によって固着状に取付けられている。この可動レール固定枠53は、図3に示すように、金属棒を平面視においてY方向に長い矩形の枠状に形成して構成されている。
【0037】
図3及び図5に示すように、可動レール固定枠53のX方向両側には、摺動部としての一対の可動レール52が取り付けられている。左右夫々の可動レール52は、ガステーブルAの正面視にて断面コの字状の長尺部材にて構成されている。そして、左右の可動レール52は、可動レール固定枠53のX方向における左右両側を構成する部材に、その開口がX方向外方側を向く状態で夫々固定されている。
【0038】
なお、上述の摺動手段格納室50における抜落ち防止部材54は、図2及び図4に示すように、可動レール固定枠53のY方向前面側を構成する部材とY方向背面側を構成する部材との間に位置するように構成される。従って、グリル本体Mの引出しに伴って可動レール固定枠53がガステーブルA本体外方に引き出されると、可動レール固定枠53のY方向背面側を構成する部材が抜落ち防止部材54と当接することによって、可動レール固定枠53がそれ以上引き出されることを防止する。従って、この可動レール固定枠53に固定されている可動レール52の固定レール51からの抜け落ちを防止する(つまり、摺動手段による最大摺動可能量を規定する)こととなる。従って、この摺動手段に沿って引出し操作されるグリル本体Mのグリル庫40からの抜け落ちを防止することができるものとなる。
【0039】
尚、上記に説明した各部の寸法又は角度は、本発明を好適に実施するための一例として示したものであり、上記した以外にも、本発明を好適に実施するために調整可能であることは言うまでもない。
【0040】
〔グリル本体とグリル庫及び摺動手段格納室との関係〕
本発明に係る摺動手段は、上述のように加熱調理装置(ガステーブルA)本体に対して備えられる固定部としての固定レール51と、グリル本体Mに取り付けられ、固定レール51に対して相対移動可能に嵌合する摺動部としての可動レール52とを備えて構成されている。そして、摺動手段は、上述のように、加熱調理装置(ガステーブルA)本体に備えるグリル庫40とは別に加熱調理装置(ガステーブルA)本体に備えられる摺動手段格納室50に設けられている。固定レール51と可動レール52とは、図5に示すように、固定レール51を可動レール52が抱き込む状態で、相対移動可能に(摺動可能に)嵌合されている。従って、図4に示すように、グリル本体Mは摺動手段格納室50に設けられている上記摺動手段に沿って、グリル庫40内からの引出し操作又はグリル庫40内への挿入操作が自在に構成されていることとなる。
【0041】
また、受け皿60のY方向背面側の下部に取付けられた樹脂座62が、グリル庫40の底板42に載置される状態で備えられているので、受け皿60及びそれに載置支持される焼網70は、この樹脂座62によってグリル庫40の底板42に対して安定して載置されることとなる。さらに、樹脂座62は摩擦係数の低い樹脂にて形成されているので、平面状に形成される底板42上をスムーズに移動可能となる。
【0042】
〔本発明に係るガステーブルの使用態様〕
次に、本発明のガステーブルAの使用態様を、図面に基づいて説明する。本発明に係るグリル庫を備えた加熱調理装置本体としてのガステーブルA本体には、図5に示すように、加熱対象物載置部としての焼網70及びその焼網70からの落下物を受ける受け皿60を備えるとともに、摺動手段に沿うグリル庫40内からの引出し操作又はグリル庫40内への挿入操作が自在に構成されたグリル本体Mと、加熱対象物載置部としての焼網70に載置した加熱対象物を加熱する加熱手段K(上面バーナB1及び左右の両側面バーナB2、B2)とを備えている。
【0043】
加熱状態調整手段100dにより、グリルGに対する加熱調理の開始が指示されると、制御手段としての制御部Hは、図示しないガス開閉弁の開閉、ガス調整弁の開度、及び点火プラグの作動等を制御して、上面バーナB1及び左右の両側面バーナB2、B2の燃焼を開始させる。左右の両側面バーナB2、B2は、グリル庫40内の左右両側壁面41、41に設けられた左右一対の凹部41p、41pに引退して配設され、グリル庫40の夫々の側壁面41、41における夫々の凹部41p、41pからグリル庫40内部に向けて燃焼ガスを噴出して加熱対象物の下面側を加熱するように構成されている。このとき、側面バーナB2、B2からグリル庫40内部に向けて燃焼ガスを加熱対象物載置部(焼網70)の加熱対象物の下方に誘導する一対の燃焼ガス誘導手段(燃焼ガス誘導板64)が、グリル本体Mに設けられているものであるから、側面バーナB2、B2から噴出される燃焼ガスを、図5の矢印に示すように適切にグリル庫40内の中央側の加熱対象物の下方に誘導し、加熱対象物の下方を加熱することができるものとなる。
【0044】
また、加熱調理に伴って、加熱対象物から油滴等が飛散するが、このような油滴等による汚れがグリル庫40の底板42或いは左右の両側壁面41、41に付着したときには、グリル本体Mをグリル庫40から引出し操作して、グリル庫40内部を清掃することとなる。そのようにグリル庫40内部を清掃するに当たって、本発明の加熱調理装置は、グリル庫40内面の両側壁面41、41及び底板42が平面状に形成されるものであるため、払拭清掃し易いものとなる。また、加熱調理直後はグリル庫40内が高熱になっているため、基本的に加熱手段Kによる加熱を終了(上面バーナB1、側面バーナB2を消火)させてグリル庫40内を冷却した後に後に払拭清掃を行うこととなるが、グリル庫40内を冷却させると、底板42或いは左右の両側壁面41、41に付着した油滴等の汚れが固まって払拭し難くなる場合がある。このようなときには、図示しない清掃補助指令手段により清掃補助手段としてのスチームパイプ90からスチームを噴霧する清掃補助状態に切換えて、スチームパイプ90からスチームを両側壁面41、41に噴霧することにより、固着した汚れを溶融又は軟化させることができ、これにより払拭清掃を容易にすることができる。従って、良好に加熱対象物の両面加熱を行えるものでありながらも、汚れの払拭(清掃)が容易で清掃性に優れたグリル庫を有する加熱調理装置を提供することができるものとなった。
【0045】
〔別実施形態〕
次に、本発明の別実施形態について説明する。
(イ)上記実施形態では、燃焼ガス誘導手段としての燃焼ガス誘導板64が、受け皿60の両側部に一体に取り付けられて形成されるように構成したが、このような構成に限定されるものではない。たとえば、燃焼ガス誘導手段としての燃焼ガス誘導板64を、焼網70の両側部に一体に取り付けて形成してもよい。この場合にも、燃焼ガス誘導板64と受け皿60、焼網70、及び側面バーナB2との位置関係は、燃焼ガス誘導板64を受け皿60の両側部に一体に取り付けるように構成する場合と略同じになるように構成することが好ましい。
【0046】
(ロ)上記実施形態では、加熱手段Kとして上面バーナB1と側面バーナB2とを備える構成を説明したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば加熱手段Kとして側面バーナB2のみを備える構成としてもよい。
【0047】
(ハ)上記実施形態では、加熱調理装置として、本発明をガステーブルAに適用した構成としたが、加熱手段Kを備える加熱調理装置としてガス加熱式以外の加熱手段を備える構成(例えば電気加熱式やガス以外の燃料を燃焼させる方式)としてもよい。
【0048】
(ニ)上記実施形態では、摺動手段格納室50をグリル庫40の下部に設ける構成としたが、このような構成に限定されるものではなく、例えば摺動手段格納室50をグリル庫40の両側部に設け、その両側の摺動手段格納室50に夫々摺動手段を格納するように構成してもよい。
【0049】
(ホ)上記実施形態では、左右の両側壁面41、41を、鉛直方向に立設される平面状の側壁として構成する例を説明したが、左右の両側壁面41、41を鉛直方向に構成せず、鉛直方向から所定の角度傾斜させるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、良好に加熱対象物の両面加熱を行えるものでありながらも、清掃性に優れたグリル庫を有する加熱調理装置を提供することに好適に利用できるものである。
【符号の説明】
【0051】
40 グリル庫
40h 排気口連通部
41 側壁面
41p 凹部
42 底板
43 上面板
50 摺動手段格納室
51 固定レール
52 可動レール
53 可動レール固定枠
60 受け皿
61 皿部
62 樹脂座
63 支持部材
64 燃焼ガス誘導板
70 焼網
71 焼網部
71c 水平部
71s 傾斜部
73 立設部材
90 スチームパイプ
B1 上面バーナ
B2 側面バーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫を備えた加熱調理装置本体と、加熱対象物載置部としての焼網及びその焼網からの落下物を受ける受け皿を少なくとも備えるとともに、摺動手段に沿う前記グリル庫内からの引出し操作又はグリル庫内への挿入操作が自在に構成されたグリル本体と、前記加熱対象物載置部に載置した加熱対象物を加熱する加熱手段とを備え、
前記加熱手段が、少なくとも前記グリル庫内の左右の両側壁面に配設されて前記加熱対象物の下面側を加熱する側面バーナを備えて構成されている加熱調理装置であって、
前記グリル庫内において、前記側面バーナが前記グリル庫の前記両側壁面に設けられた凹部に引退して配設され、且つ、前記側面バーナが、前記グリル庫の夫々の側壁面における前記凹部から前記グリル庫内部に向けて燃焼ガスを噴出して加熱するように構成され、
前記側面バーナから前記グリル庫内部に向けて燃焼ガスを前記加熱対象物載置部の前記加熱対象物の下方に誘導する燃焼ガス誘導手段が、前記グリル本体に設けられている加熱調理装置。
【請求項2】
前記燃焼ガス誘導手段が、前記焼網の両側部に一体に取り付けられて形成されている請求項1に記載の加熱調理装置。
【請求項3】
前記燃焼ガス誘導手段が、前記受け皿の両側部に一体に取り付けられて形成されている請求項1に記載の加熱調理装置。
【請求項4】
前記摺動手段が、前記加熱調理装置本体に対して備えられる固定部と、前記グリル本体に取り付けられ、前記固定部に対して相対移動可能に嵌合する摺動部とを備えて構成され、且つ、前記摺動手段が、前記加熱調理装置本体に備える前記グリル庫とは別に前記加熱調理装置本体に備えられる摺動手段格納室に設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載の加熱調理装置。
【請求項5】
前記グリル庫内に、前記側壁面に向かってスチーム又は熱水を噴霧する清掃補助手段を備えた請求項1〜4の何れか1項に記載の加熱調理装置。
【請求項6】
前記両側壁面が、鉛直方向に立設される平面状の部材にて構成されている請求項1〜5の何れか1項に記載の加熱調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−206450(P2011−206450A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79596(P2010−79596)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】