説明

加速度スイッチ

【課題】感震器などに使用される加速度スイッチにおいて、外乱振動により地震と誤判定されるような連続信号が発生することを防止する。
【解決手段】加速度スイッチ1は、金属製の密閉容器内に導電性の慣性球7を有し、慣性球を囲むように可動接点6Aが非接触状態で配置される。慣性球7は加速度を受けることでハウジング内周側面との当接位置までの範囲で揺動し、可動接点と接触して電路を構成する。ハウジングの内周側面には複数の突起5Cを設け、これらの突起の頂点の内接円は可動接点よりも内側とされている。よって慣性球7が当接位置の一部である突起5Cの頂点に接触したときには慣性球はこの内接円の内側に収まるのでいずれの可動接点6Aにも接触しない。そのため加速度スイッチの慣性球が外乱振動で可動接点に沿って周回運動に入ろうとしても、慣性球は突起の位置を通過する際に可動接点との接触を解かれるので連続信号の出力が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感震器などに使用される加速度スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属容器内に慣性体として鋼球などの金属球を使用した加速度スイッチとしては例えば特許2892559号の感震器や特許2887556号の加速度応動スイッチなどがある。
【0003】
これらの加速度スイッチは一方の電極である金属製のハウジング底面に慣性球が配置され、通常この慣性球はハウジングの中央に静止している。また慣性球の周囲には他方の電極である接点部材の複数の接触部分が全周にわたって均等に配置されている。この接触部分は可撓性を有した可動接点であり、慣性球との接触を弾性的に行うようにされている。またこの可動接点は加速度スイッチの動作特性に方向性を持たせないように慣性球の周囲に比較的密に配置したことで、加速度スイッチが所定値以上の加速度を受けた際には確実に慣性球が接触する。慣性球はハウジングの中央に配置されている間はこの接点部材とは接触せず、加速度スイッチの電極間は絶縁状態とされ導通はない。
【0004】
この加速度スイッチが加減速や振動などを受け水平方向にかかる加速度が所定の値を越えると、慣性球がハウジング底面上を転動し、その周囲に設けられた可動接点と接触する。このように可動接点に慣性球が接触すると導電体である慣性球を介して、または変位した先端部が直接ハウジングに接触することで電極間は電気的に接続される。
【0005】
このような加速度スイッチを地震などの振動検出に使用する場合について説明する。地震検出において想定される振動加速度においては慣性球はハウジング内部で概ね往復運動をするので慣性球は可動接点との接触開離を繰り返し、振動の周波数や大きさに応じた信号が断続的に発生する。そのためこの信号の持続時間や回数などから判定装置が所定の大きさ以上の地震かどうかを判定する。例えば加速度スイッチが設置された機器に人や物が当たるなどして衝撃による外乱が加えられた場合、加速度スイッチに与えられる振動周波数は装置の共振周波数に依存するが、通常は地震による振動周波数よりも明らかに高いため、接点開閉時に断続する信号の持続時間は地震によるそれよりも充分に短く、判定装置は地震との区別をすることができる。また加速度装置を取付けた装置が転倒した場合にも判定が可能なように、信号が一定時間以上連続した場合には転倒または傾斜とみなして異常判定をする。
【0006】
ところが加速度スイッチが設置された機器、例えばガスメータなどに人や物が当たるなどして比較的大きな外乱が直接加えられた場合、この判定装置が地震等の異常と誤判定してしまう場合があった。これは特許2892559号のようにハウジングの内側面が単なる円筒形とされたものにおいては、衝撃加速度を受けた慣性球がハウジングの内周面に沿って回転してしまい、常にいずれかの可動接点と接触して信号が途切れることなく連続するためである。このような連続信号が所定時間以上連続すると前述した転倒状態とみなされてしまい、実際には問題の無い場合にも誤判定されてしまうことがある。
【0007】
そこで例えば特許2887556号のようにハウジングの内側面に突起などを設けており、慣性球がハウジングの内面に沿って回転しようとした際に突起がその進路を乱し慣性球がハウジング内面を安定的に周回運動しないようにすることで、慣性球が可動接点との接触開離を繰り返すようにして信号が断続するようにしたものが提案されている。
【特許文献1】特許2892559号
【特許文献2】特許2887556号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように従来の加速度スイッチは衝撃などによる外乱での信号を地震による信号と明確に区別できるような構造とし、判定装置による誤判定が起き難いようにされているが、特定の条件においてはまれに地震などによる信号と合致することがある。
【0009】
これは外乱振動により慣性球がハウジング内を転動したあとでその転動が収束する直前に起こる現象であり、慣性球の運動が収束直前に突起を含むハウジングに当たらない位置で円運動に移行したときに発生する可能性がある。つまり慣性球が周回した場合、通常は慣性球が突起に接触することで転動方向を乱されることで可動接点との接触を解くようにされているが、特に慣性球が転動の収束直前に可動接点をほとんど撓ませない範囲で周回運動すると、突起に接触することなく互いに隣接する可動接点との接触を持続することがある。このような場合に加速度スイッチからの信号が長時間持続した場合はもちろん、信号が断続した場合にもその信号の持続時間と発生回数が所定条件を満たすと地震としての判定条件と合致して誤判定が発生する。特に集合住宅などにおいては人の行き来する通路沿いにガスメータなどが置かれる事が多く、衝撃などの外乱を受ける機会も多くなる。そのため衝撃などの外乱振動による誤判定を発生させない構造の加速度スイッチが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明の請求項1に記載の加速度スイッチにおいては、導電リード端子を気密に貫通固定した蓋板と有底筒形の導電性金属ハウジングからなる密閉容器を有し、該ハウジングの底面にはほぼ中心部から外側に向かって同心円状に緩やかに上昇する傾斜面が形成され、前記リード端子の密閉容器内側端部にはほぼ同心円状に接触部を配設する複数のしなやかな弾性を有した可動接点を持つ接点部材が導電的に固着され、前記密閉容器の内部には導電性の固体の慣性球が正規姿勢において静止時には重力によりハウジング底面のほぼ中央部に位置するように収納され、振動を受ける事によりハウジング外周方向へと転動した慣性球が接点部材と接触してハウジング内面と接点部材との間を慣性球を介して電気的に接続するように構成された加速度スイッチであって、前記慣性球の転動範囲はハウジング内周側面に接触する当接位置で転動を制限されることにより慣性球の中心が接点部材の先端よりもハウジング中心方向に留まる構成とされ、少なくともその当接位置の一部において慣性球は可動接点に接触しないことを特徴とする。
【0011】
また本発明の請求項2の加速度スイッチにおいては、ハウジングの内周側面に内側に突出した衝接部を設け、慣性球がハウジング底面上を転動する際に衝接部の頂点に接触したときには慣性球と接点部材との接触が解かれ電路が遮断されることを特徴としている。
さらに本発明の請求項3の加速度スイッチにおいては、複数の衝接部がハウジング内面に均等な間隔で配設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば加速度スイッチの慣性球が地震以外の外乱によってハウジング内面に沿った周回運動に入った場合も、慣性球が可動接点と接触し続けて連続信号を出力することを防止される。またハウジング内壁に設けた突起などの衝接部により慣性球の転動進路を変えることで周回運動の継続事態を防止され、さらに複数の衝接部を均等に配置することで周回運動時の信号がより細かく分断され、また振動方向や周回運動への遷移位置による慣性球の出力時間のばらつきも抑えられる。そのため確実に地震による低い周波数振動での出力信号と外乱による高い周波数振動での出力信号とで出力パターンを変える事ができ、感震器による判定装置による誤判定を防止し地震判定を確実なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ハウジング内を円周方向に転動する慣性球が可動接点に対して連続的に接触し信号を出し続ける事を防ぐために、ハウジング内周面に突起を配置して慣性球がその突起の頂点に接触するときには可動接点の接触部に慣性球が接触しないようにした。
【実施例1】
【0014】
次に図1乃至3を参照しながら本発明の実施例について説明する。図1は本実施例の加速度スイッチの一例を示す縦断面図であり、図2は図1のA−A断面矢視図、図3は動作説明のためのA−A断面矢視図である。また図1の縦断面図は図2のB−B断面を示している。この加速度スイッチ1は金属製の円形の蓋板2を有し、この蓋板2の中央には貫通孔2Aが穿たれており、この貫通孔2Aには導電性のリード端子3が挿通されガラスなどの電気絶縁性充填材4により気密に絶縁固定されている。蓋板2の周縁部にはフランジ部2Bが設けられ、このフランジ部2Bには有底円筒形の導電金属製ハウジング5の開口端がリングプロジェクション溶接などの方法で気密に固定され、内部に封入された窒素などの汚損防止ガスが長期間にわたり漏出しないような密閉容器を構成している。ハウジング5の底面5Aは中央から外周へと傾斜し上昇する逆円錐面状とされている。
【0015】
リード端子3の密閉容器内部側の先端には導電材製の接点部材6が溶接などにより導電的に固着されている。この接点部材6は複数のしなやかな弾性を有した可動接点である羽根状部6Aを有しており、リード端子3を中心に後述の慣性球7を囲むよう羽根状部を垂直に伸ばすことによりに接触部が円形に配設されている。羽根状部6Aは慣性球の転動時の動作方向つまりハウジング底面の傾斜方向に対してほぼ垂直に伸びていることで、慣性球7の動きをよりしなやかに受けて
接触することができる。
【0016】
密閉容器内には慣性子たる導電性の慣性球7が収納されており、通常正規姿勢時で静止時には逆円錐面状のハウジング底面5Aの中央に位置している。この慣性球7は鉄や銅やその合金などの導電性の固体の球であり、地震などによる所定の大きさ以上の振動によりハウジング底面5A上を転動し、前記接点部材6の羽根状部6Aと接触−開離可能にされている。ここで慣性球7はハウジング内周側面に接触する当接位置までの範囲で転動し、この当接位置で転動を制限されることにより、慣性球の中心は常に接点部材の先端よりもハウジング中心方向に留まる。なおリード端子3と接触部材6との固着部下面には保護板8が固着されており、慣性球7の接点部材6の根元附近への衝接による接点部材の変形を防止している。
【0017】
ハウジング5の内周側面である側壁5Bには内側に向かって衝接部たる突起5Cが図2に示す如く等間隔で4ヵ所設けられている。この突起5Cは例えばプレス成形等で形成されており、少なくともハウジング内周側面の1ヶ所に設けることにより慣性球7がハウジングの内周に沿って周回運動を始めたときにもこの突起に衝接することで慣性球はその進路を変えられ、羽根状部6Aに連続的に所定時間以上接触し電路を閉じ続けることを防止できる。
【0018】
また本実施例では慣性球とハウジングとの当接位置は、最大振幅時においても慣性球が隣接する二つの突起5Cに当接する構造とされており、突起の基部である側壁5Bに直接接触はしない。そのため突起間に配置された羽根状部の位置では慣性球とハウジング側壁の間には隙間ができ、羽根状部が慣性球とハウジング内周側面とによって直接挟まれて塑性変形することはない。さらにハウジングに複数の突起5Cを均等な間隔で設けることにより、慣性球のハウジング内壁に沿った周回可能部分をさらに分断して信号の持続時間を短くしたりあるいは周回運動自体をできないようにして慣性球の周回による誤判定の発生を防止できる。突起5Cの突出量などの形状はハウジング6の内径や慣性球7の直径、接触部材の羽根状部6Aの数や間隔などによって決められる。
【0019】
本実施例の突起5Cはその形状を慣性球7が突起5Cの頂点に接触したときに慣性球と羽根状部6Aとが接触しない位置関係とされ、加速度スイッチの電路が解かれるようにされている。このように慣性球がハウジング底面に接触し且つハウジング内周面に沿って転動する際に慣性球に羽根状部が接触しない位置を少なくとも一ヵ所設けたことで、仮に慣性球7をハウジングの内壁に沿って移動させた場合にも接点部材6の羽根状部6Aと慣性球7の接触は必ず断たれるのでオン信号が持続することはない。
【0020】
次にこの加速度スイッチ1の動作について説明する。正規姿勢時で静止時には慣性球7はハウジング底面5Aの中央に位置しており、この状態では慣性球7は接点部材6とは接触せずリード端子3とハウジング5及び蓋板2の間は電気的に接続されないので信号が出力されることはない。
【0021】
加速度スイッチ1が所定の値以上の水平方向の振動をうけると慣性球7がハウジング底面5A上を転動し、例えば図1に点線で示す仮想位置7Aで接点部材6の羽根状部6Aを点線で示す6aのように撓めながら接触することにより、接点部材6とハウジング5が電気的に短絡され、リード端子3−接点部材6−慣性球7−ハウジング5−蓋板2の経路で電路が形成され信号が出力される。
【0022】
この様な慣性球の転動時に振動が一定方向への往復運動であれば、理論的には慣性球は振動方向によって決定付けられるハウジングの中心線上で往復運動を行なうことで振動周波数に応じたオン−オフ信号を繰り返すことになる。その一方で振動方向が向かい合う突起5Cの頂点を結ぶ直線上と一致した場合には、慣性球が羽根状部6Aに接触しないので信号は発生しないことになる。しかし慣性球の当接位置が突起の頂点と一致する確率は低く、さらに実際の地震等においては振動方向が完全に一方向に固定されることは無く交差する方向の加速度成分が作用することで慣性球7の転動は完全な一定方向の往復運動にはならない。そのため使用時には慣性球の主たる転動方向がどの方向であっても慣性球と羽根状部の接触条件の差は実使用上はほとんど問題にならない。
【0023】
また地震の振動のように振動周波数5ヘルツ以下と低い振動において本発明のように慣性球の移動距離が少ないものにおいては、慣性球が突起と当接した後もしばらくは同方向に加速度が働くため慣性球は突起間のくぼみに収まりやすく羽根状部と充分な接触をする。それに対して衝撃振動を受けた場合には慣性球はすぐに跳ね返されるため、羽根状部との接触をしにくくなる。そのため地震のような低周波の振動と衝撃による高周波の振動とでは信号に差が出るので判定装置で確実に区別することができる。
【0024】
またこのように振動方向と交差する方向に作用する加速度成分で慣性球7がハウジングの中心を逸れることで、慣性球が接点部材や容器に沿って楕円軌道や円軌道等の周回運動を始める可能性がある。この場合にハウジング内面が単純な円筒面だと慣性球はハウジング内面に沿って周回運動を始め、衝撃などによる高い周波数振動であっても慣性球が常にいずれかの羽根状部と接触するので信号が所定時間以上連続し対象装置が傾斜や横転したと判定されてしまうことがある。そこでハウジング内部に前述のような突起を設けて周回運動に入ろうとする慣性球の軌道を乱すことで、周回運動させないと共に羽根状部から離して信号を断続させている。しかし従来は慣性球の転動の収束直前に慣性球がハウジングの中央付近で可動接点をほとんど撓ませない範囲で円運動をした場合には、慣性球は突起に接触することなく可動接点との接触を持続することがあった。
【0025】
そこで本発明に於いては、前述したようにハウジング5の内周に設けられた衝接部たる突起5Cの形状を慣性球7が突起5Cの頂点に接触したときに慣性球と羽根状部6Aとが接触しない位置関係とした。この点について図2及び図3を参照しながら説明する。なお図3において羽根状部及び突起の一つ一つに番号を付与しているが説明の便宜上与えたものであり、それぞれの部分の形状自体は同じである。
【0026】
本実施例においては接触部材6の羽根状部6Aと慣性球7との接触部が、ハウジングの突起5Cの頂点を結ぶ内接円である仮想円7Bよりも外側に位置するようにされている。慣性球7は正規姿勢において静止状態では図2に示すようにハウジング5の中心に位置しており、振動などの加速度を受けることによってハウジング中心を外れて転動をはじめる。慣性球7は仮想円7Bよりも直径が小さいので隣接する突起間に入ったときにはその表面が仮想円の外側にまで達するので羽根状部6Aと接触可能であり、慣性球7の表面が突起5Cの頂点を結ぶ仮想円7Bの外側に達すると、その外側に配置された羽根状部6Aに接触して電路を形成する。慣性球7の最大振幅時には図3(A)に示すように2箇所の突起5C1及び5C2に当接する位置まで転動し、このとき慣性球7は突起5C1−5C2間に位置する羽根状部6A1乃至6A3を撓めながら接触している。このとき羽根状部6A4乃至6A12(一部記号省略)には慣性球7は接触していない。
【0027】
例えばこの状態から慣性球7が突起5C2を越えて羽根状部6A4側に移動しようとすると、慣性球7が突起5C2の頂点を越える際に図3(B)に示すように仮想円7Bの内側に入る。このとき慣性球の外周は仮想円7Bの内側に留まるので、羽根状部6A1乃至6A3との接触も解除される。この段階では慣性球7は羽根状部6A4とも接触しておらず、加速度スイッチ1の電路は解除され信号は確実に遮断される。
【0028】
また慣性球7がその転動の収束直前にハウジングの中心付近で羽根状部6A1乃至6A12との接触部に沿って円運動に入ったとしても、このように可動接点である一つの羽根状部の接触部から他の羽根状部の接触部に接触を移すときに必ず一旦接触を解く様に構成された部分を少なくとも1ヵ所、実施例では4ヵ所の突起5Cとして設けたことで連続的な信号の発生を防止できる。
【0029】
このように本実施例によれば、慣性球7がその転動状態を収束する直前に羽根状部6Aに沿って周回運動をしようとしても慣性球が隣接する羽根状部に連続的な接触をする前に突起にあたり運動方向が急激に変わり接点部材と慣性球の接触を一時的に断つためオン信号は途切れる。このように加速度スイッチが実際に傾斜状態となる場合以外では連続的なオン信号が出ることは無く、また回転による断続信号も地震の振動により発生するものより断続時間は短くなる。そのため信号の出力パターンが明らかに変わるので判別が確実になされ、衝撃振動のような周波数成分の高い外乱振動を受けた場合の誤判定をなくすことができる。また衝接部である複数の突起を均等な間隔で配置することで周回運動に入ろうとする動きを早めに抑えるとともに、振動方向や周回運動への遷移位置による慣性球の出力時間のばらつきも抑えられる。
【0030】
なお、本実施例では衝接部である突起5Cについてハウジング5をプレス成型する際に成型したものを例に説明したが、例えば別部品で構成した衝接部を溶接などでハウジング内部に固定することで事実上ハウジング内周側面と一体化してもよい。
【実施例2】
【0031】
次に図4及び図5を参照して本発明の加速度スイッチの第2実施例について説明する。図4は本実施例の加速度スイッチを示す縦断面図であり、図5は図4のC−C断面矢視図である。この実施例において前述した第1実施例と同一の部品には同一の記号を付し、詳細な説明は省略する。
【0032】
本実施例の加速度スイッチ11のハウジング15は突起部15Cが均等配置されると共に互いにハウジング中央をはさんで対象となる位置に配置されないようにその数は奇数とされており、実施例では3箇所とされている。接点部材16の羽根状部16Aはハウジング15の突起15Cそれぞれの間に均等になるように3本ずつ放射状に伸びており、またそれぞれを上部中心付近から斜め下方向に伸ばすことで慣性球7を覆うようにした傘型としている。このように配置することで、慣性球7は例えば図4に点線で示す仮想位置7Cで羽根状部を点線16aで示すように撓め、羽根状部の中央よりも上部で羽根状部16Aと接触する。
【0033】
本実施例においては接点部材16の可動接点である羽根状部16Aが慣性球7の中央よりも上部で接触するので羽根状部16Aの長さを抑えることができる。そのため慣性球7が図4に点線で示す仮想位置7Cで示すようにその当接位置においてハウジング15の内周側面15Aに直接当接する場合にも、羽根状部を点線16aで示すようにハウジングと慣性球に挟まみ込まれない位置関係とすることができる。そのため長期にわたる使用で羽根状部が変形してしまうこともない。また慣性球7は羽根状部16Aとの接触後、ハウジングとの当接位置までの比較的大きく移動するため、慣性球7は羽根状部16Aと摺動接触し、羽根状部の接触部分を常に清浄化することができる。
【実施例3】
【0034】
さらに図6及び図7には接点部材の羽根状部の本数を減らした本発明の加速度スイッチの第3実施例を示している。図6は本実施例の加速度スイッチを示す縦断面図であり、図7は図6のD−D断面矢視図である。また図6の縦断面図は図7のE−E断面を示している。この実施例においても前述したそれぞれの実施例と同一の部品には同一の記号を付し、詳細な説明は省略する。
【0035】
本実施例の加速度スイッチ21においては、第1の実施例と同様の金属製ハウジング5を有し、慣性球7はハウジング5との当接位置において最大振幅時においても隣接する二つの突起5Cに当接し、突起の基部である側壁5Bに直接接触はしない。接点部材26の可動接点である羽根状部26Aは4箇所の突起5Cそれぞれの中間となる4方向へと一本づつ放射状に伸びており、またそれぞれを上部中心付近から斜め下方向に伸ばすことで慣性球7を覆うようにした傘型としている。本実施例においては第1の実施例と同様に慣性球7が隣接する突起5Cに接触してハウジング内面5Bに当接しないようにされ、撓められた羽根状部26Aはその隙間に位置するようにされているので、羽根状部の長さを長くしても慣性球とハウジング側壁で羽根状部を挟み込むことはない。
【実施例4】
【0036】
次に本発明の加速度スイッチの第4実施例について説明する。図8は本実施例の加速度スイッチを示す縦断面図であり、図9には図8のF−F断面矢視図である。この加速度スイッチ31においては、前述の各実施例と同様に導電性のリード端子3が絶縁固定された金属製の蓋板2を有し、周縁のフランジ部2Bに金属製ハウジング35の開口端が気密に固定され気密容器を構成している。
【0037】
このハウジング35は底面35Aを逆円錐面状とした有底円筒形という点では前述の各実施例と同様だが、ハウジング内周側面35Bから突起などの衝接部は省略されている。また慣性球37は前述の例と同様に導電性の鋼球などが使用されるが、前述の例と比較して密閉容器の直径に対する直径の比率は小さい。本実施例でもリード端子3と接触部材36との固着部下面には保護板38が固着され、慣性球37の衝接による接点部材の変形を防止している。
【0038】
リード端子3の密閉容器内部側の先端には導電材製の接点部材36が溶接などにより導電的に固着されている。この接点部材36は複数のしなやかな弾性を有した可動接点である羽根状部36Aを有し、この羽根状部36Aが慣性球37を囲むように配設されている。
【0039】
本実施例においてはハウジングに衝接部を設ける代わりに慣性球37の直径と羽根状部36Aの位置関係を、慣性球が羽根状部の間に位置したときにどちら側の羽根状部にも接触しないようにされている。この点について説明する。この加速度スイッチ31において所定の大きさ以上の振動を受けると慣性球37は転動してハウジングの中心から離れ、接触部材36の羽根状部36Aに接触してリード端子3からハウジング35にかけての電路を接続する。さらに慣性球37はハウジング内周側面35Bと慣性球37との接触位置、つまり慣性球がそれ以上の転動を制限される当接位置によって、その中心が羽根状部の先端よりもハウジング中心方向に留まるようにされている。
【0040】
このように慣性球37は基本的に羽根状部36Aと接触するが、当接位置であってもその一部である点線で示す37Aのように二つの羽根状部の中間線G上においては、慣性球37の左右にある羽根状部36Aのどちらも慣性球に接触しないように羽根状部の位置が決められている。そのため、例えば制御対象機器に人や物が当たった衝撃振動で慣性球37がハウジング内周側面35Bに沿って周回運動を始めたとしても、慣性球が隣接する羽根状部に移る際には中間線上を通過するときに必ず一度接触を解くので連続的な信号が発生することはない。また周回運動時には非常に短い信号が断続的に発生するので地震の振動などとも確実に区別することができる。
【0041】
なお本実施例においては慣性球と羽根状部との位置関係を判りやすくするために、羽根状部が慣性球の周囲に垂直に降ろされる例を示したが、この形状ではハウジング内部に突起が無く慣性球の動きが制限されないために羽根状部が慣性球とハウジングとの間に直接挟みこまれてしまう。そこで図10に示す加速度スイッチ41のように、接点部材46の羽根状部46Aを慣性球37の中央よりも上部で接触する傘型としてもよい。この場合には可動接点である羽根状部46Aの長さを抑えることで、慣性球が点線37Bに示す位置に達したときにも撓められた羽根状部は点線46A1に示すように慣性球とハウジングとの間で挟み込まれることはない。またこれに限らず図8の加速度スイッチ31のハウジング内に羽根状部の挟み込み防止の逃げをつくるため、例えば羽根状部の両脇に突起を設けて慣性球と突起との間の隙間に羽根状部を位置させる構造としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
加速度スイッチに慣性球が接点との連続的な接触をすることを防止する構造を設けたことにより、人や物がぶつかるなどの衝撃加速度を受けた場合にも地震などによる振動と誤判定することが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の加速度スイッチの第1実施例を示す縦断面図
【図2】図1の加速度スイッチの横断面図
【図3】図1の加速度スイッチの横断面図
【図4】本発明の加速度スイッチの第2実施例を示す縦断面図
【図5】図4の加速度スイッチの横断面図
【図6】本発明の加速度スイッチの第3実施例を示す縦断面図
【図7】図6の加速度スイッチの横断面図
【図8】本発明の加速度スイッチの第4実施例を示す縦断面図
【図9】図8の加速度スイッチの横断面図
【図10】本発明の加速度スイッチの他の実施例を示す縦断面図
【符号の説明】
【0044】
1、11、21、31、41:加速度スイッチ
2:蓋板
3:リード端子
5、15、35:ハウジング
5C、15C:突起(衝接部)
6、16、26、36,46:接点部材
6A、16A、26A、36A,46A:羽根状部(可動接点)
7、37:慣性球


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ円形の金属板のほぼ中心に穿たれた孔に電気絶縁性の充填材によって導電リード端子を貫通し気密に固定した蓋板と、
有底筒形の導電性のハウジングを有し、
該ハウジングの底面にはほぼ中心部から外側に向かって同心円状に緩やかに上昇する傾斜面が形成され、
前記蓋板の周縁部にハウジングの開口端が気密に固着されて密閉容器を形成し、
蓋板の容器内側の前記リード端子端部には導電端子ピンを中心としてほぼ同心円状に接触部を配設する複数のしなやかな弾性を有した可動接点を持つ導電材製の接点部材が導電的に固着され、
前記密閉容器の内部には導電性の固体の慣性球が正規姿勢において静止時には重力によりハウジング底面のほぼ中央部に位置するように収納され、
振動を受ける事により慣性球がハウジングの内周側面方向へと転動し容器の中心側から接点部材と接触してその可動接点を変位させるとともにハウジングと接点部材との間を慣性球を介して電気的に接続するように構成された加速度スイッチであり、
前記慣性球の転動範囲はハウジング内周側面に接触する当接位置で転動を制限されることにより慣性球の中心が接点部材の先端よりもハウジング中心方向に留まる構成とされ、
少なくともその当接位置の一部において慣性球は可動接点に接触しないことを特徴とする加速度スイッチ。
【請求項2】
前記ハウジングの内周側面には内側に突出した衝接部が設けられ、
慣性球がハウジング底面上を転動する際に衝接部の頂点に接触したときには慣性球と接点部材との接触が解かれ電路が遮断されることを特徴とする請求項1に記載の加速度スイッチ。
【請求項3】
複数の衝接部がハウジング内面に均等な間隔で配設されていることを特徴とする請求項2に記載の加速度スイッチ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−226957(P2006−226957A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44155(P2005−44155)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(591071274)株式会社生方製作所 (17)
【Fターム(参考)】