説明

加速度センサおよび加速度センサの製造方法

【課題】正確な加速度を検出することが可能な加速度センサおよび加速度センサの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】加速度センサC1は、圧電素子2と、圧電素子2の表面に形成された第1,第2外部電極4,5とを備える。圧電素子2は、第1〜第3圧電体層24,18,34を有している。第1圧電体層24の第1領域24aは、圧電素子2の積層方向に対して垂直な方向に分極されている。第2圧電体層18の第2領域18aは、圧電素子2の積層方向に分極されている。第3圧電体層34の第3領域34aは、圧電素子2の積層方向に分極されると共に、第2領域18aの分極を打ち消す方向に分極されている。更に、第3領域34aは、第2領域18aと比べて圧電素子2の積層方向から付与される荷重が小さくなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサおよび加速度センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加速度センサとして、例えば特許文献1に記載されているように、分極方向が異なる複数の圧電セラミック素子を備えたものが知られている。この加速度センサに加速度が加わると、加速度と圧電セラミック素子の質量とによって慣性力が発生し、かかる慣性力によって生じる動荷重が圧電セラミック素子に付与されて、圧電セラミック素子に歪みが発生する。以下、この動荷重を単に「荷重」と呼ぶこととする。各圧電セラミック素子は、それぞれ分極方向からの荷重に応じた量の電荷を出力する。各圧電セラミック素子から出力された電荷量を合計することによって、加速度が検出される。
【特許文献1】実開平7−72167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の加速度センサが備える各圧電セラミック素子は、荷重に応じた量の電荷とともに、周囲温度が変化した場合にはパイロ効果による焦電荷、すなわち周囲温度の変化に応じた量の焦電荷を出力することがある。この場合には、焦電荷がノイズとなり、正確な加速度の検出が困難となる。
【0004】
そこで、本発明は、正確な加速度を検出することが可能な加速度センサおよび加速度センサの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る加速度センサは、圧電素子と、圧電素子の表面に沿って形成された外部電極と、を備える加速度センサであって、圧電素子は、第1圧電体層、第2圧電体層、および第3圧電体層と、第1、第2、および第3圧電体層それぞれを挟むように形成されて外部電極に接続される内部電極と、を有し、第1圧電体層において、当該第1圧電体層を挟む内部電極と重なる第1領域は、圧電素子の積層方向に対して垂直な方向に分極されており、第2圧電体層において、当該第2圧電体層を挟む内部電極と重なる第2領域は、圧電素子の積層方向に分極されており、第3圧電体層において、当該第3圧電体層を挟む内部電極と重なる第3領域は、第2領域の分極を打ち消す方向に分極されており、第3領域に付与される荷重が第2領域に付与される荷重と比べて小さいことを特徴とする。
【0006】
本発明の加速度センサによれば、圧電素子は第1圧電体層と第2圧電体層とを有している。第1圧電体層の第1領域は圧電素子の積層方向に対して垂直な方向に分極されており、第2圧電体層の第2領域は圧電素子の積層方向に分極されている。したがって、第1領域は圧電素子の積層方向に対して垂直な方向からの荷重に応じた量の電荷を、第2領域は圧電素子の積層方向からの荷重に応じた量の電荷を、それぞれ出力することができる。
【0007】
第2領域のように圧電素子の積層方向に分極された領域は、荷重による電荷だけでなく、周囲温度が変化した場合にはパイロ効果による焦電荷、すなわち温度変化の傾きに応じた量の焦電荷を出力することが従来から知られている。本発明の加速度センサが備える圧電素子は、第1圧電体層および第2圧電体層だけでなく、第3圧電体層を有している。第3圧電体層は第3領域を含んでいる。この第3領域は、圧電素子の積層方向に分極されており、しかも付与される荷重が小さいため、荷重による電荷よりも周囲温度の変化に応じた量の焦電荷を主に出力する。周囲温度の変化に応じた量の焦電荷を主に出力するこの第3領域は、第2領域の分極を打ち消す方向に分極されているため、第2領域により出力された電荷から、焦電荷の分をキャンセルすることができる。このように、本発明の加速度センサでは、焦電荷を効果的に除去することができる。その結果、正確な加速度を検出することが可能となる。
【0008】
また、第3領域と内部電極との接触面積は、第2領域と内部電極との接触面積と略同一であることが好ましい。この場合、第3領域から出力される焦電荷の量は、第2領域から出力される焦電荷の量と略同等となる。よって、第2領域から出力された電荷のうち、焦電荷の分をより確実にキャンセルすることができる。その結果、より正確な加速度を検出することが可能となる。
【0009】
また、圧電素子は基体部とおもり部とを更に有しており、第1、第2、および第3圧電体層およびおもり部は基体部上に形成され、第1および第2圧電体層は基体部とおもり部との間に形成されていることが好ましい。この場合、おもり部に慣性力が働くため、第1圧および第2圧電体層に対して十分な荷重を付与することができる。その結果、加速度を精度よく検出することができる。
【0010】
また、圧電素子の積層方向に対して垂直な方向から見て、第2圧電体層は第3圧電体層よりも基体部側に位置していることが好ましい。この場合、第3圧電体層は第2圧電体層の上に配されることとなるため、第2圧電体層に付与される荷重と比べて、第3圧電体層に付与される荷重を確実に小さくすることができる。その結果、第3領域が荷重による電荷を出力する可能性を、確実に低減することができる。
【0011】
また、圧電素子の積層方向に対して垂直な方向から見て、第2圧電体層は第1圧電体層よりも基体部側に位置していることが好ましい。
【0012】
加速度センサは、回路基板に半田付けされることによって、回路基板と電気的および機械的に接続される。このとき、加速度センサの基体部と回路基板とは対向し、外部電極と回路基板とにわたって半田フィレットが形成される。加速度センサは、この半田フィレットによって、特に積層方向に対して垂直な方向への伸縮(変位)が制限されてしまうことがある。積層方向に対して垂直な方向への伸縮が制限されると、第1圧電体層から出力される電荷量が、この方向から付与された荷重を正確に反映したものではなくなってしまう。本発明の圧電素子では、第1圧電体層と基板部との間に第2圧電体層を介在させることによって、第1圧電体層回路基板からより遠ざけている。この場合、第1圧電体層は、半田フィレットからも遠ざかることとなるため、半田フィレットにより伸縮を制限されることが少なくなる。よって、第1圧電体層は、荷重を正確に反映した量の電荷を出力することができる。その結果、より正確な加速度を検出することが可能となる。
【0013】
また、圧電素子の積層方向から見て、第1圧電体層と基体部との間に位置する層の大きさが基体部の大きさよりも小さいことが好ましい。この場合、圧電素子は、第1圧電体層と基体部との間が内側に凹んだ外形を呈することとなる。外部電極は圧電素子の表面に沿って形成されるため、かかる外部電極もまた内側に凹んだ外形を呈することとなる。このように内側に凹んだ部分には、半田フィレットが形成されにくい。したがって、第1圧電体層が半田フィレットによって伸縮を制限される可能性を、より低減することができる。
【0014】
また、圧電素子の積層方向から見て、第1圧電体層の大きさが基体部の大きさよりも小さいことが好ましい。この場合、圧電素子は、第1圧電体層の部分が内側に凹んだ外形を呈することとなる。外部電極は圧電素子の表面に沿って形成されるため、かかる外部電極もまた内側に凹んだ外形を呈することとなる。このように内側に凹んだ部分には、半田フィレットが形成されにくい。したがって、第1圧電体層が半田フィレットによって伸縮を制限される可能性を、更に低減することができる。
【0015】
また、本発明は、圧電素子と、圧電素子の表面に沿って形成された外部電極と、を備える加速度センサの製造方法であって、層が延びる方向に分極された第1圧電体層と、第1圧電体層を挟むように位置する一対の内部電極と、を有する第1部材を形成する第1工程と、層の厚み方向に分極された第2圧電体層と、第2圧電体層を挟むように位置する一対の内部電極と、を有する第2部材を形成する第2工程と、層の厚み方向に分極された第3圧電体層と、第3圧電体層を挟むように位置する一対の内部電極と、を有する第3部材を形成する第3工程と、第1部材が第2部材と第3部材との間に位置するように第1、第2、および第3部材を積層して圧電素子を形成する第4工程と、圧電素子の表面に、第1、第2、および第3部材の内部電極と接続される外部電極を形成する第5工程と、を有し、第3工程では、第3圧電体層と当該第3圧電体層を挟んで重なる内部電極との接触面積が、第2圧電体層と当該第2圧電体層を挟んで重なる内部電極との接触面積と略同一になるように内部電極を配置し、第4工程では、第1部材から見て第2圧電体層の分極方向と第3圧電体層の分極方向とが同一となるように第2部材および第3部材を配置する、ことを特徴とする。
【0016】
このようにして製造された加速度センサでは、第1および第3圧電体層は圧電素子の積層方向に対して垂直な方向に分極されており、第2圧電体層は圧電素子の積層方向に分極されている。第1部材は、第2部材と第3部材との間に位置している。この第1部材から見ると、第2圧電体層の分極方向と第3圧電体層の分極方向とは同一となっている。すなわち、第3圧電体層の分極方向は、第2圧電体層の分極を打ち消す方向となっている。このように積層された加速度センサを、例えば回路基板等に第2部材側が接するようにして搭載した場合、第1圧電体層および第2圧電体層は、各分極方向からの荷重に応じた量の電荷を出力する。付与される荷重が少ない第3部材の第3圧電体層は、周囲温度の変化に応じた焦電荷を主に出力することとなる。そのため、第2部材の第2圧電体層により出力された電荷から、焦電荷の分をキャンセルすることができる。その結果、正確な加速度を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、正確な加速度を検出することが可能な加速度センサおよび加速度センサの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また先述したように、本実施形態では、加速度と質量とに起因する慣性力によって生じる動荷重を、単に「荷重」と呼ぶこととする。
【0019】
(第1実施形態)
【0020】
まず、図1〜図3に基づいて、第1実施形態に係る加速度センサC1の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係る加速度センサを示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る加速度センサに含まれる圧電素子を示す分解斜視図である。図3は、第1実施形態に係る加速度センサと接続される検出回路の回路構成を示す図である。
【0021】
図1に示されるように、加速度センサC1は、積層型の圧電素子2と、圧電素子2の表面に沿って形成された1対の電極である第1外部電極4および第2外部電極5と、を備えている。この加速度センサC1は、回路基板50上に搭載される。加速度センサC1の第1外部電極4および第2外部電極5は、回路基板50に形成された配線(図示せず)を介して、検出回路54と接続される。図3に示されるように、検出回路54はチャージアンプとして機能し、加速度センサC1から出力された電荷を電圧に変換した後、外部回路に出力する。
【0022】
圧電素子2は、略直方体を呈している。圧電素子2は、当該圧電素子2の積層方向(以下、単に「積層方向」という)から見て互いに対向するように位置する側面2aおよび側面2bと、側面2aおよび側面2bと垂直で互いに対向するように位置する側面2cおよび側面2dと、側面2cおよび側面2dと隣り合い互いに対向するように位置する2つの側面と、を有している。なお、この圧電素子2を回路基板50上に搭載するときには、圧電素子2の側面2bが回路基板50と対向するようにする。
【0023】
図2に示されるように、圧電素子2は、第1部材8、第2部材6、および第3部材10といった、略直方体を呈する3つの部材から成っている。これら3つの部材は、圧電素子2の側面2bから2aに向かって、第2部材6、第1部材8、第3部材10の順で積層されている。
【0024】
第2部材6は、基体部14と、基体部14上に形成された第2圧電体層18とを有している。基体部14と第2圧電体層18との間には、第2内部電極16が形成されている。また、第2圧電体層18の上には、第3内部電極20が形成されている。すなわち、第2圧電体層18を挟むように、第2内部電極16および第3内部電極20が形成されている。なお、基体部14において、第2圧電体層18が形成された側と反対側に位置する面は、圧電素子2の側面2bに相当する。側面2bには、一対の第1内部電極12が形成されている。
【0025】
一対の第1内部電極12、第2内部電極16、および第3内部電極20は、それぞれ略平行となるように設けられている。一方の第1内部電極12は、圧電素子2の側面2bのうち側面2c側の端部に位置している。他方の第1内部電極12は、圧電素子2の側面2bのうち側面2d側の端部に位置している。第2内部電極16は、一端が圧電素子2の側面2cに露出するように形成されている。第3内部電極20は、一端が圧電素子2の側面2dに露出するように形成されている。
【0026】
さらに、第2内部電極16と第3内部電極20とは、これらの一部が積層方向に重なり合うように配置されている。ここで、第2圧電体層18は、積層方向であって圧電素子2の側面2bから側面2aに向かう方向、すなわち図1に示される矢印A1方向に分極されている。そのため、第2圧電体層18において、第2内部電極16および第3内部電極20の間に挟まれた第2領域18aは、矢印A1方向および当該方向と逆方向から荷重が付与されたときに伸縮(変位)して電荷を出力する圧電活性領域として機能する。
【0027】
基体部14および第2圧電体層18は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を主成分とするセラミック材料で形成されている。第1内部電極12、第2内部電極16、および第3内部電極20は、例えばAg、Pdを主成分とする導電材料で形成されている。
【0028】
上述した構成を有する第2部材6の上には、第1部材8が積層されている。第2部材6と第1部材8とは、エポキシ樹脂系接着剤により接合される。第1部材8は、第1圧電体層24を有している。
【0029】
第1圧電体層24は、その一方の主面に第4内部電極22が形成されており、他方の主面に第5内部電極26が形成されている。すなわち、第1圧電体層24は、第4内部電極22および第5内部電極26によって挟まれている。また、第1圧電体層24の一端部には、一対の第1分極用電極28が形成されている。一対の第1分極用電極28は、第1圧電体層24を両主面側から挟んで対向するように配されている。第1圧電体層24の他端部には、一対の第2分極用電極30が形成されている。一対の第2分極用電極30は、第1圧電体層24を両主面側から挟んで対向するように配されている。
【0030】
第4内部電極22は第2部材6と対向しており、第5内部電極26は後述する第3部材10と対向している。第4内部電極22および第5内部電極26は、それぞれ略平行となるように設けられている。第4内部電極22は、一端が圧電素子2の側面2dに露出するように形成されている。第5内部電極26は、一端が圧電素子2の側面2cに露出するように形成されている。また、一対の第1分極用電極28は、それぞれの一端が圧電素子2の側面2cに露出するように形成されている。一対の第2分極用電極30は、それぞれの一端が圧電素子2の側面2dに露出するように形成されている。
【0031】
第4内部電極22と第5内部電極26とは、これらの一部が積層方向に重なり合うように配置されている。ここで、第1圧電体層24は、積層方向に対して垂直な方向、すなわち図1に示される矢印C方向に分極されている。そのため、第1圧電体層24において、第4内部電極22および第5内部電極26の間に挟まれた第1領域24aは、矢印C方向および当該方向と逆方向から荷重が付与されたときに伸縮して電荷を出力する圧電活性領域として機能する。
【0032】
第1圧電体層24は、第2圧電体層18と同様に、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を主成分とするセラミック材料で形成されている。第4内部電極22および第5内部電極26は、例えばCuを主成分とする導電材料で形成されている。第1分極用電極28、および第2分極用電極30は、例えばCuあるいはAgを主成分とする導電材料で形成されている。
【0033】
上述した構成を有する第1部材8の上には、第3部材10が積層されている。第1部材8と第3部材10とは、エポキシ樹脂系接着剤により接合される。第3部材10のうち、第1部材8と対向する面と反対側に位置する面は、圧電素子2の側面2aに相当する。第3部材10は、第3圧電体層34と、第3圧電体層34を挟むように形成された第6内部電極32および第7内部電極36とを有している。
【0034】
第6内部電極32は第1部材8側に形成されており、第7内部電極36は側面2a側に形成されている。側面2aには、第8内部電極38が形成されている。第6内部電極32、第7内部電極36、および第8内部電極38は、それぞれ略平行となるように設けられている。第6内部電極32は、一端が圧電素子2の側面2cに露出するように形成されている。第7内部電極36は、一端が圧電素子2の側面2dに露出するように形成されている。第8内部電極38は、圧電素子2の側面2aのうち側面2d側の端部に位置している。
【0035】
第6内部電極32と第7内部電極36とは、これらの一部が積層方向に重なり合うように配置されている。ここで、第3圧電体層34は、第2領域18aの分極を打ち消す方向に分極されている。より具体的には、第3圧電体層34は、積層方向であって圧電素子2の側面2aから側面2bに向かう方向、すなわち図1に示される矢印A2方向に分極されている。そのため、第3圧電体層34において、第6内部電極32および第7内部電極36の間に挟まれた第3領域34aは、矢印A2方向および当該方向から荷重が付与されたときに伸縮して電荷を出力する圧電活性領域として機能する。第3領域34aと第5内部電極26および第6内部電極32との接触面積は、第2圧電体層18の第2領域18aと第2内部電極16および第3内部電極20との接触面積と、略同一である。
【0036】
第3圧電体層34は、第1圧電体層24および第2圧電体層18と同様に、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を主成分とするセラミック材料で形成されている。第6内部電極32、第7内部電極36、および第8内部電極38は、例えばAg、Pdを主成分とする導電材料で形成されている。なお、第3部材10は、第1部材8および第2部材6よりも大きな質量を有している。そのため、第3部材10は、第1部材8および第2部材6に対するおもり部としての役割を果たす。
【0037】
第1外部電極4は、圧電素子2の側面2c全体と、側面2bのうち側面2c側に位置する端部とを覆うように設けられている。第2外部電極5は、圧電素子2の側面2d全体と、側面2aのうち側面2d側に位置する端部と、側面2bのうち側面2d側に位置する端部とを覆うように設けられている。第1外部電極4は、一方の第1内部電極12、第2内部電極16、第5内部電極26、第1分極用電極28、および第6内部電極32に接続されている。第2外部電極5は、他方の第1内部電極12、第3内部電極20、第4内部電極22、第2分極用電極30、第7内部電極36、および第8内部電極38に接続されている。
【0038】
第1外部電極4および第2外部電極5は、第1〜第8内部電極12,16,20,22,26,32,36,38を構成している金属と電気的に良好に接続できる金属材料からなっている。第1,第2外部電極4,5の表面には、当該第1,第2外部電極4,5を覆うように、Niめっき層(図示省略)およびSnめっき層(図示省略)等が順に形成されている。これらのめっき層は、主として加速度センサC1と回路基板とを半田付けする際の、はんだ耐熱性やはんだ濡れ性を向上することを目的として形成されるものである。なお、第1,第2外部電極4,5の表面に形成させるめっき層は、はんだ耐熱性やはんだ濡れ性を向上する目的が達成される限り、必ずしも上述した材料の組み合わせに限定されない。
【0039】
続いて、図4〜11を参照して、上述した構成を有する加速度センサC1の製造方法について説明する。図4および図5は、本実施形態に係る加速度センサの製造方法を説明するためのフロー図である。
【0040】
まず、セラミックグリーンシートS1を作製する(ステップS100)。セラミックグリーンシートS1を作製するにあたって、例えばPZTを主成分としたセラミック粉体に有機バインダ樹脂および有機溶剤等を混合したペーストを作製する。そして、例えばドクターブレード法によって、上記ペーストをキャリアフィルム(図示せず)上に塗布することにより、セラミックグリーンシートS1(以下、グリーンシートS1という)を複数枚作製する。ここで作製されるグリーンシートS1は、焼成後の厚さが例えば0.05mmとなるものである。
【0041】
次に、グリーンシートS1を用いて、第1部材8を形成する。より具体的には、第1部材8となる第1積層体G1を形成する(ステップS101)。第1積層体G1を形成するにあたって、図6(a)に示されるように、電極パターンが印刷されていないグリーンシートS1を複数枚積層する(図4、ステップS102)。積層したグリーンシートS1を、60℃程度で加熱しながら100MPa程度の圧力で積層方向にプレス加工する。プレス加工の後、400℃で10時間程度の加熱処理を施して脱バインダを行い、更に950℃で2時間程度の焼成を行う(ステップS103)。これにより、第1圧電体層24となる焼結基板B1が得られる。
【0042】
一方、CuあるいはAgを主成分とする導電材料を含むペーストを用意しておく。この導電材料を、図6(b)に示されるように、焼結基板B1の両主面に対してスパッタする。これにより、上記の第1分極用電極28に相当する電極パターンE9、および第2分極用電極30に相当する電極パターンE10が交互に形成される(図4、ステップS104)。そして、形成した電極パターンE9と電極パターンE10との間に所定の電圧を印加することにより、分極処理を行う(ステップS105)。これにより、第1圧電体層24となる焼結基板B1は、当該焼結基板B1が延びる方向、すなわち第1圧電体層24が延びる方向に分極されることとなる。電極パターンE9,E10を、例えばAgを主成分とする導電材料を用いて形成した場合には、分極後、洗浄により電極パターンE9,E10を除去することができる。
【0043】
分極後、焼結基板B1の主面に第4内部電極22および第5内部電極26に相当する電極パターンE4,E5を形成する(ステップS106)。より具体的には、図6(c)および図7(a)に示されるように、焼結基板B1の一方の主面に、Cuを主成分とする導電材料をスパッタし、第5内部電極26に相当する電極パターンE5を形成する。また、図6(c)および図7(b)に示されるように、焼結基板B1の他方の主面にCuを主成分とする導電材料をスパッタし、第4内部電極22に相当する電極パターンE4を形成する。これらの工程を経て、第1積層体G1が得られる。
【0044】
次に、グリーンシートS1を用いて第2部材6を形成する。より具体的には、第2部材6となる第2積層体G2を形成する(ステップS107)。第2積層体G2を形成するにあたって、例えばAg:Pd=85:15の比率で構成された導電材料に有機バインダ樹脂および有機溶剤等を混合したペーストを作製する。そして、そのペーストをスクリーン印刷することにより、上記の第1内部電極12に相当する電極パターンE1、第2内部電極16に相当する電極パターンE2、および第3内部電極20に相当する電極パターンE3を、別々のグリーンシートS1の上面に形成する(ステップS108)。
【0045】
続いて、グリーンシートS1を積層する(ステップS109)。より具体的には、図8に示されるように、まず、電極パターンE3が印刷されたグリーンシートS1の上に、電極パターンが印刷されていない複数枚のグリーンシートS1と、電極パターンE2が印刷されたグリーンシートS1とを順次積層する。電極パターンが印刷されていない複数枚のグリーンシートS1および電極パターンE2が印刷されたグリーンシートS1は、第2部材6の第2圧電体層18となる。その上に、電極パターンが印刷されていない複数枚のグリーンシートS1と、電極パターンE1が印刷されたグリーンシートS1とを順次積層する。電極パターンが印刷されていない複数枚のグリーンシートS1および電極パターンE1が印刷されたグリーンシートS1は、第2部材6の基体部14となる。なお、積層されたグリーンシートS1において、電極パターンE2および電極パターンE3と重なる領域が生じる。この領域は、先に説明した第2領域18aとなる。
【0046】
グリーンシートS1をこのように積層したものを、60℃程度で加熱しながら100MPa程度の圧力で積層方向にプレス加工する。プレス加工の後、400℃、10時間程度の加熱処理を実施して脱バインダを行う。脱バインダ後、950℃で2時間程度の焼成を行う(図4、ステップS110)。
【0047】
焼成後、分極処理を行って(ステップS111)第2積層体G2を得る。より具体的には、電極パターンE2と電極パターンE3との間に所定の電圧を印加して、第2圧電体層18となる層を電極パターンE2から電極パターンE3へ向かう方向に分極する。
【0048】
次に、グリーンシートS1を用いて、第3部材10を形成する。より具体的には、第3部材10となる第3積層体G3を形成する(ステップS112)。第2積層体G2を形成する際に作製したペーストをスクリーン印刷することにより、上記の第6内部電極32に相当する電極パターンE6、第7内部電極36に相当する電極パターンE7、および第8内部電極38に相当する電極パターンE8を、別々のグリーンシートS1の上面に形成する(ステップS113)。
【0049】
続いて、グリーンシートS1を積層する(ステップS114)。より具体的には、図9に示されるように、まず、電極パターンE6が印刷されたグリーンシートS1の上に、電極パターンが印刷されていない複数枚のグリーンシートS1と、電極パターンE7が印刷されたグリーンシートS1とを順次積層する。電極パターンが印刷されていない複数枚のグリーンシートS1および電極パターンE7が印刷されたグリーンシートS1は、第3部材10の第3圧電体層34となる。その上に、電極パターンE8が印刷されたグリーンシートS1を積層する。このとき、積層されたグリーンシートS1において、電極パターンE6および電極パターンE7と重なる領域が生じる。この領域は、先に説明した第3領域34aとなる。第3領域34aとなる部分と電極パターンE6および電極パターンE7との接触面積は、第2領域18aとなる部分と電極パターンE2および電極パターンE3との接触面積との接触面積と、略同一である。
【0050】
グリーンシートS1をこのように積層したものを、60℃程度で加熱しながら100MPa程度の圧力で積層方向にプレス加工する。プレス加工の後、400℃、10時間程度の加熱処理を実施して脱バインダを行う。脱バインダ後、950℃で2時間程度の焼成を行う(図4、ステップS115)。
【0051】
焼成後、分極処理を行って(ステップS116)第3積層体G3を得る。より具体的には、電極パターンE6と電極パターンE7との間に所定の電圧を印加して、第3圧電体層34となる層を電極パターンE7から電極パターンE6へ向かう方向に分極する。
【0052】
次に、第1〜第3積層体G1,G2,G3を積層し、積層体L1を得る(図4、ステップS117)。より具体的には、図10(a)に示されるように、第2積層体G2、第1積層体G1、第3積層体G3の順で積層する。このとき、図11に示されるように、第2積層体G2の電極パターンE3と第1積層体G1の電極パターンE4とが対向し、第3積層体G3の電極パターンE6と第1積層体G1の電極パターンE6とが対向しように積層する。積層後、各積層体の間をエポキシ樹脂系接着剤によって接着する。そして、得られた積層体L1を、例えばダイヤモンドブレードにより所定の寸法に切断する(図5、ステップS118)。このとき、図11に示されるように、電極パターンE1の中央および電極パターンE8の中央が切断位置となるように切断する。これにより、帯状の積層体L2が複数得られる。この状態では、帯状の積層体L2の一方の側面から電極パターンE1,E2,E5,E6,E9が露出しており、他方の側面から電極パターンE1,E3,E4,E7,E8,E10が露出している。
【0053】
続いて、帯状の積層体L2の側面に例えばCuを主成分とする導電材料をスパッタすることにより、図10(b)に示されるように、第1外部電極4となる電極パターンE11と,第2外部電極5となる電極パターンE12とを形成する(図5、ステップS119)。
【0054】
スパッタによる成膜後、電極パターンE11,E12を覆うようにNiおよびSnをめっきする(ステップS120)。そして、めっきが施された積層体L2を、ダイヤモンドブレードにより切断する。このとき、帯状の積層体L2の延びる方向に対して垂直な方向に沿って切断する(ステップS121)。以上により、図1に示されるような加速度センサC1が完成する。
【0055】
このようにして製造された加速度センサC1の動作について説明する。図12は、第1〜第8内部電極12,16,20,22,26,32,36,38および第1外部電極4および第2外部電極5を介した、第1〜第3領域24a,18a,34aの電気的な接続を説明するための図である。
【0056】
まず、図1に示されるように、回路基板50上に加速度センサC1を搭載する。加速度センサC1を搭載する際には、第1部材8の基体部14が回路基板50と対向するようにする。搭載された加速度センサC1に加速度が加わると、加速度センサC1において最も上に位置する第3部材10に慣性力が働く。第3部材10に慣性力が働くと、第3部材10と基体部14との間に位置する第1圧電体層24および第2圧電体層18には、荷重が付与される。第3部材10の質量は大きいため、第1圧電体層24および第2圧電体層18には、十分な荷重が付与されることとなる。
【0057】
第1圧電体層24および第2圧電体層18に荷重が付与されると、第1領域24aおよび第2領域18aが伸縮して電荷を出力する。第1領域24aは、回路基板50と平行な方向から付与された荷重に応じた量の電荷を出力する。第2領域18aは、回路基板50と垂直な方向から付与された荷重に応じた量の電荷を出力する。また、第2領域18aは、積層方向に分極されているため、周囲温度が変化した場合にはパイロ効果による焦電荷を出力する。出力される焦電荷の量は、温度変化の傾きに応じた量となる。
【0058】
第3部材10には自重分の荷重が作用するが、第1部材8および第2部材6に作用する荷重に比べると十分小さい。加速度センサC1において最も上に位置しているからである。したがって、第3圧電体層34の第3領域34aから出力される荷重による電荷量は、第2圧電体層18の第2領域18aから出力されるそれと比べて小さい。その一方で、第3領域34aは積層方向に分極されているため、第2領域18aと同様に、周囲温度の変化に応じた量の焦電荷を出力する。
【0059】
このように、第1領域24aは回路基板50と平行な方向からの荷重に応じた量の電荷を出力し、第2領域18aは回路基板50と垂直な方向からの荷重に応じた量の電荷および周囲温度の変化に応じた量の焦電荷を出力し、第3領域34aは周囲温度の変化に応じた量の焦電荷を出力する。
【0060】
図12に示されるように、外部電極4および外部電極5から見て、矢印A1方向に分極された第2領域18aと、矢印A2方向に分極された第3領域34aとは、出力電荷を打ち消しあう関係となっている。したがって、第1外部電極4および第2外部電極5からは、第2領域18aの出力電荷(回路基板50と垂直な方向からの荷重に応じた量の電荷と周囲温度の変化に応じた量の焦電荷)から第3領域34aの出力電荷(周囲温度の変化に応じた量の焦電荷)を差し引いたものに、第1領域24aの出力電荷(回路基板50と平行な方向からの荷重に応じた量の電荷)を合計したもの、つまり、回路基板50と垂直な方向および回路基板50と平行な方向からの荷重に応じた量の電荷、が出力されることとなる。第1外部電極4および第2外部電極5によって出力された電荷は、図3に示されるように、検出回路54によって電荷電圧変換された後、外部回路に出力される。
【0061】
以上述べたように、本第1実施形態に係る加速度センサC1は圧電素子2を備えており、この圧電素子2は、第1圧電体層24、第2圧電体層18、および第3圧電体層34を有している。第1圧電体層24は第1領域24aを、第2圧電体層18は第2領域18aを、第3圧電体層34は第3領域34aを、それぞれ圧電活性領域として有している。
【0062】
外部から加速度を受けると、第1領域24aと第2領域18aとに荷重が付与される。第1領域24aは、積層方向に対して垂直な方向からの荷重に応じた量の電荷を、第1外部電極4および第2外部電極5に出力する。また、第2領域18aは、積層方向からの荷重に応じた量の電荷を、第1外部電極4および第2外部電極5に出力する。
【0063】
積層方向に分極された領域は、荷重による電荷だけでなく、周囲温度が変化した場合にはパイロ効果による焦電荷を多く出力することが従来から知られている。これによると、第2領域18aは、荷重に応じた量の電荷のほかに周囲温度の変化に応じた量の焦電荷を出力する。一方、第3圧電体層34の第3領域34aもまた、積層方向に分極されているため、周囲温度の変化に応じた量の焦電荷を第1外部電極4および第2外部電極5に出力することとなる。なお、第3領域34aは、付与される荷重が第2領域18aのそれと比べて小さいので、荷重による電荷ではなく周囲温度の変化に応じた量の焦電荷を主に出力する。
【0064】
第3領域34aの分極方向は第2領域18aの分極方向と逆となっている。そのため、第2領域18aの出力電荷から焦電荷分をキャンセルすることができる。その結果、第1外部電極4および第2外部電極5からは、積層方向からの荷重と、積層方向に対して垂直な方向からの荷重とに応じた量の電荷が出力されることとなる。このように、加速度センサC1では、周囲温度の変化に応じた量の焦電荷を効果的に除去することができるので、正確な加速度を検出することが可能となる。
【0065】
第3領域34aと第5内部電極26および第6内部電極32との接触面積は、第2圧電体層18の第2領域18aと第2内部電極16および第3内部電極20との接触面積と、略同一となっている。そのため、第3領域34aから出力される焦電荷の量と、第2領域18aから出力される焦電荷の量とは、略同一となる。したがって、第2領域18aから出力された電荷のうち、焦電荷の分をより確実にキャンセルすることができる。その結果、より正確な加速度を検出することが可能となる。
【0066】
第1圧電体層24および第2圧電体層18は、第3部材10と基体部14との間に形成されている。第3部材10は大きな質量を有しているため、第1部材8および第2部材6に対するおもり部として機能する。このような第3部材10に慣性力が働くと、第1圧電体層および第2圧電体層には十分な荷重が付与されることとなる。その結果、加速度を精度よく検出することができる。
【0067】
図2に示されるように、第2圧電体層24は第3圧電体層18よりも基体部14側に位置している。この場合、第2圧電体層24に付与される荷重と比べて、第3圧電体層18に付与される荷重を確実に小さくすることができる。その結果、第3領域18が荷重による電荷を出力する可能性を、確実に低減することができる。
【0068】
図2に示されるように、第2圧電体層24は第1圧電体層24よりも基体部14側に位置している。図1に示されるように、加速度センサC1を回路基板50に搭載する際、第1,第2外部電極4,5と回路基板50との間に半田フィレット52が形成されるが、第2圧電体層24よりも回路基板50から離れたところに位置する第1圧電体層24は、半田フィレット52により伸縮を制限されることが少ない。よって、第1圧電体層24は、積層方向に対して垂直な方向からの荷重を正確に反映した量の電荷を出力することとなる。その結果、より正確な加速度を検出することができる。
【0069】
(第2実施形態)
【0070】
次に、第2実施形態に係る加速度センサC2について説明する。図13は、第2実施形態に係る加速度センサを示す側面図である。
【0071】
第2実施形態に係る加速度センサC2は、積層方向に沿った2つの対向する側面が段差形状を呈する点で、第1実施形態に係る加速度センサC1と相違する。第2実施形態に係る加速度センサC2は、圧電素子2と、圧電素子2の表面に形成された1対の電極である第1外部電極4および第2外部電極5とを備えている。
【0072】
圧電素子2の構成要素は、第1実施形態に係る加速度センサC1の構成要素と同一である。ただし、図13に示されるように、積層方向から見て、第1圧電体層24を有する第1部材8および第3圧電体層34を有する第3部材10の大きさが、第2部材6における基体部14の大きさよりも小さくなっている。このような圧電素子2の側面2cおよび側面2dは、上部がそれぞれ内側に凹んだ段差形状を呈している。第1外部電極4および第2外部電極5は、圧電素子2の側面2cおよび側面2dに沿うように形成されている。
【0073】
上述した形状を有する加速度センサC2の製造方法について、図14を参照して説明する。
【0074】
第1部材8となる第1積層体G1と、第2部材6となる第2積層体G2と、第3部材10となる第3積層体G3を形成する。これらの形成方法は、本実施形態の加速度センサC2における第1〜3積層体G1〜G3の形成方法と同様である。形成した第1〜3積層体G1〜G3を、図14(a)に示されるように、第2積層体G2、第1積層体G1、第3積層体G3の順で積層し、積層体L3を得る。第2積層体G2、第1積層体G1、第3積層体G3は、エポキシ樹脂系接着剤によってそれぞれ接着される。
【0075】
次に、積層体L3を、例えばダイヤモンドブレードにより所定の寸法に切断する。切断するにあたって、刃幅の異なる2つのブレードを用意する。まず、刃幅が大きい第1のブレードによって、図14(b)に示されるように、所定の深さの溝42を形成する。所定の深さとは、第3積層体G3の上面から第2積層体G2の上部にまで到達する程度の深さである。形成される溝42の幅は、第1のブレードの幅と同一となる。次に、溝42の内側に刃幅の小さい第2のブレードを進入させ、積層体L3を切断する。ダイシング幅(切断しろ)44は、第2のブレードの幅と同一であるため、溝42よりも狭くなる。したがって、切断により得られる略帯状の積層体は、側面に段差を有するものとなる。
【0076】
得られた略帯状の積層体の側面にCuを主成分とする導電材料をスパッタすることにより、第1外部電極4となる電極パターンと,第2外部電極5となる電極パターンとを形成する。スパッタ後、第1外部電極4および第2外部電極5を覆うようにNiおよびSnをめっきする。そして、めっきが施された積層体を、ダイヤモンドブレードにより積層体の延びる方向に対して垂直な方向に沿って切断する。以上により、図13に示されるような加速度センサC2が完成する。
【0077】
このように、本第2実施形態に係る加速度センサC2では、積層方向から見て、第1圧電体層24および第3圧電体層34が基体部14よりも小さくなっている。第1外部電極4および第2外部電極5は、第1圧電体層24および第3圧電体層34の部分において内側に凹んだ段差形状となっている。このような側面を有する加速度センサC2を回路基板50上に半田付けする際には、半田フィレット52は内側に凹んだ部分よりも下部、すなわち第1圧電体層24よりも基体部14側に形成されるか、もしくは凹んだ部分にまで到達したとても薄く形成されることとなる。よって、第1圧電体層24は伸縮の制限をより受けにくくなる。その結果、より正確な加速度を検出することが可能となる。
【0078】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0079】
例えば、上記第2実施形態では、積層方向から見たときの第1圧電体層24の大きさを基体部14の大きさよりも小さくするとしたが、第1圧電体層24だけでなく、第1圧電体層24の下に位置する第2圧電体層18の大きさも基体部14の大きさより小さくする、としてもよい。圧電素子2の側面2cおよび側面2dは、第1圧電体層24および第2圧電体層18の部分において、内側に凹んだ段差形状を呈することとなる。これにより、第1外部電極4および第2外部電極5もまた、第1圧電体層24および第2圧電体層18に対応する部分が内側に凹んだ段差形状を呈することとなる。この場合、第2圧電体層18の上に形成されている第1圧電体層24は、半田フィレットによる動作の制限をいっそう受けにくくなる。
【0080】
また、上記第1実施形態では、第2圧電体層18は積層方向であって圧電素子2の側面2bから側面2aに向かう方向に分極され、第3圧電体層34は積層方向であって圧電素子2の側面2aから側面2bに向かう方向に分極されている、としたが、第2圧電体層18および第3圧電体層34は、それぞれ逆であってもよい。
【0081】
また、上記第1,2実施形態では、基体部14、第2圧電体層18、第1圧電体層24、第3圧電体層34、はこの順で積層されているが、積層順はこれに限られない。ただし、第2圧電体層18および第1圧電体層24は、基体部14と第3圧電体層34との間に位置するものとする。したがって、例えば、図15に示される加速度センサC3のように、基体部14の上に第1圧電体層24を配し、第1圧電体層24の上に第2圧電体層18を配し、第2圧電体層18の上に第3圧電体層34を配するとしてもよい。この場合、第2圧電体層18および第3圧電体層34の間に位置する内部電極56から見て、第2圧電体層18と第3圧電体層34とは互いに逆となる方向(矢印A3方向)に分極されることとする。
【0082】
また、上記第1実施形態における加速度センサC1において、図16に示されるように、圧電素子2の側面2a全体と、側面2cおよび側面2dのうち第1部材8および第3部材10に対応する部分とを、樹脂等でコーティングするとしてもよい。コーティングは、第1外部電極4および第2外部電極5の外側から施すものとする。この場合、加速度センサC1の側面において、コーティングされた部分とコーティングされていない部分との間に段差が生じる。側面に段差を有する加速度センサC1を回路基板50上に半田付けする際には、半田フィレット52はコーティングされた部分よりも下部、すなわち第1部材8の第1圧電体層24よりも基体部14側に形成されるか、もしくはコーティングされた部分にまで到達したとても薄く形成されることとなる。よって、第1圧電体層24は半田フィレット52による伸縮の制限をいっそう受けにくくなる。
【0083】
また、上記実施形態では、第3圧電体層34はおもり部として機能するとしたが、おもり部を第3圧電体層34とは別個に備えてもよい。この場合、おもり部は、第3圧電体層34よりも基体部14側に配されることが好ましい。おもり部は、基体部14と同様に電極パターンが印刷されていないグリーンシートで作製することができる。
【0084】
また、上記実施形態では、基体部14および第2圧電体層18を一体成形しているが、これらを別々に成形した後に接着剤その他の適当な手段を用いて互いに結合するとしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、基体部14をグリーンシートにより作製するとしたが、例えば成形型等を用いて作製するとしてもよい。また、上記実施形態では、基体部14は、PZTを主成分とするセラミック材料で形成されるとしたが、基体部14を形成する材料はこれに限られない。基体部14を第1〜第3圧電体層24,18,34と比べて高い硬度を有する材料で形成した場合には、外力に対する圧電素子2の強度を高めることができる。
【0086】
また、第1〜第3圧電体層24,18,34、第1〜第8内部電極12,16,20,22,26,32,36,38、第1,第2分極用電極28,30、および第1,第2外部電極4,5に用いられる材料は、上述したものに限られない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】第1実施形態に係る加速度センサを示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る加速度センサに含まれる圧電素子を示す分解斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る加速度センサと接続される検出回路の回路構成を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る加速度センサの製造方法を説明するためのフロー図である。
【図5】第1実施形態に係る加速度センサの製造方法を説明するためのフロー図である。
【図6】第1部材となる第1積層体を製造する工程を示す斜視図である。
【図7】第1積層体の平面図である。
【図8】第2部材となる第2積層体を製造する工程を示す斜視図である。
【図9】第3部材となる第3積層体を製造する工程を示す斜視図である。
【図10】圧電素子を製造する工程を示す斜視図である。
【図11】第1〜第3積層体を積層したものを示す側面図である。
【図12】第1〜第3領域の電気的な接続を説明するための図である。
【図13】第2実施形態に係る加速度センサを示す側面図である。
【図14】圧電素子を製造する工程を示す斜視図である。
【図15】加速度センサの変形例を示す側面図である。
【図16】加速度センサのその他の変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0088】
C1,C2,C3・・・加速度センサ、2・・・圧電素子、4・・・第1外部電極、5・・・第2外部電極、6・・・第2部材、8・・・第1部材、10・・・第3部材、12・・・第1内部電極、14・・・基体部、16・・・第2内部電極、18・・・第2圧電体層、18a・・・第2領域、20・・・第3内部電極、22・・・第4内部電極、24・・・第1圧電体層、24a・・・第1領域、26・・・第5内部電極、28・・・第1分極用電極、30・・・第2分極用電極、32・・・第6内部電極、34・・・第3圧電体層、34a・・・第3領域、36・・・第7内部電極、38・・・第8内部電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と、前記圧電素子の表面に沿って形成された外部電極と、を備える加速度センサであって、
前記圧電素子は、
第1圧電体層、第2圧電体層、および第3圧電体層と、
前記第1、第2、および第3圧電体層それぞれを挟むように形成されて前記外部電極に接続される内部電極と、
を有し、
前記第1圧電体層において、当該第1圧電体層を挟む前記内部電極と重なる第1領域は、前記圧電素子の積層方向に対して垂直な方向に分極されており、
前記第2圧電体層において、当該第2圧電体層を挟む前記内部電極と重なる第2領域は、前記圧電素子の積層方向に分極されており、
前記第3圧電体層において、当該第3圧電体層を挟む前記内部電極と重なる第3領域は、前記第2領域の分極を打ち消す方向に分極されており、
前記第3領域に付与される荷重が前記第2領域に付与される荷重と比べて小さいことを特徴とする加速度センサ。
【請求項2】
前記第3領域と前記内部電極との接触面積は、前記第2領域と前記内部電極との接触面積と略同一であることを特徴とする請求項1に記載の加速度センサ。
【請求項3】
前記圧電素子は基体部とおもり部とを更に有しており、前記第1、第2、および第3圧電体層および前記おもり部は前記基体部上に形成され、前記第1および第2圧電体層は前記基体部と前記おもり部との間に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の加速度センサ。
【請求項4】
前記圧電素子の積層方向に対して垂直な方向から見て、前記第2圧電体層は前記第3圧電体層よりも前記基体部側に位置していることを特徴とする請求項3に記載の加速度センサ。
【請求項5】
前記圧電素子の積層方向に対して垂直な方向から見て、前記第2圧電体層は前記第1圧電体層よりも前記基体部側に位置していることを特徴とする請求項3又は4に記載の加速度センサ。
【請求項6】
前記圧電素子の積層方向から見て、前記第1圧電体層と前記基体部との間に位置する層の大きさが前記基体部の大きさよりも小さいことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の加速度センサ。
【請求項7】
前記圧電素子の積層方向から見て、前記第1圧電体層の大きさが前記基体部の大きさよりも小さいことを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の加速度センサ。
【請求項8】
圧電素子と、前記圧電素子の表面に沿って形成された外部電極と、を備える加速度センサの製造方法であって、
層が延びる方向に分極された第1圧電体層と、前記第1圧電体層を挟むように位置する一対の内部電極と、を有する第1部材を形成する第1工程と、
層の厚み方向に分極された第2圧電体層と、前記第2圧電体層を挟むように位置する一対の内部電極と、を有する第2部材を形成する第2工程と、
層の厚み方向に分極された第3圧電体層と、前記第3圧電体層を挟むように位置する一対の内部電極と、を有する第3部材を形成する第3工程と、
前記第1部材が前記第2部材と前記第3部材との間に位置するように前記第1、第2、および第3部材を積層して前記圧電素子を形成する第4工程と、
前記圧電素子の表面に、前記第1、第2、および第3部材の内部電極と接続される前記外部電極を形成する第5工程と、
を有し、
前記第3工程では、
前記第3圧電体層と当該第3圧電体層を挟んで重なる前記内部電極との接触面積が、前記第2圧電体層と当該第2圧電体層を挟んで重なる前記内部電極との接触面積と略同一になるように前記内部電極を配置し、
前記第4工程では、
前記第1部材から見て前記第2圧電体層の分極方向と前記第3圧電体層の分極方向とが同一となるように前記第2部材および前記第3部材を配置する、
ことを特徴とする加速度センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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