説明

加速管コンディショニング装置および加速管コンディショニング方法

【課題】加速管の自動的コンディショニングであって、安定して確実に、また加速管の損傷を防止する加速管コンディショニング装置および加速管コンディショニング方法の提供。
【解決手段】加速管で反射した反射波の反射波電力を計測するセンサから反射波電力を収集する反射波電力収集部33と、その反射波電力に基づいて高周波周波数を生成する高周波周波数調整部34と、コンディショニング用高周波の周波数が高周波周波数になるように高周波源を制御する高周波源制御部35とを備えている。高周波周波数は、反射波電力が所定値より小さいときに一定の値を示し、反射波電力が所定値より大きいときにコンディショニング用高周波が加速管で共振するような値となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速管コンディショニング装置および加速管コンディショニング方法に関し、特に、荷電粒子を加速する加速管をコンディショニングするときに利用される加速管コンディショニング装置および加速管コンディショニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子に例示される荷電粒子を加速する加速管が知られている。このような加速管は、放射線治療装置、非破壊検査装置、滅菌装置に適用されている。その放射線治療装置は、その加速された電子の制動放射により生成される治療用放射線を患部(腫瘍)に照射することにより、患者を治療する。その非破壊検査装置は、その加速された荷電粒子の制動放射により生成される放射線を検査対象に透過して撮像される透過画像を用いて、その検査対象を検査する。その滅菌装置は、その加速された荷電粒子を滅菌対象に照射することにより、または、その加速された荷電粒子の制動放射により生成される放射線を滅菌対象に照射することにより、その滅菌対象を滅菌する。
【0003】
このような加速管は、複数の電極を備え、加速管に高周波が入射されることにより、加速管に入射される荷電粒子を加速する。このような加速管は、荷電粒子を利用する前にコンディショニング(枯らし運転)が実行されることが知られている。そのコンディショニングは、加速管が備える電極が配置される雰囲気を真空引きしながら加速管に高周波を入射することにより、その電極の表面(または加速管の内壁の表面)に適度なアーク放電を発生させ、その表面に吸着された汚染物を除去してその表面を清浄にする処理である。(たとえば、S.M.Hanna,et.al,Proceedings of EPAC2004,「Automated High−Power conditioning of medical accelerators」参照。)
【0004】
このようなコンディショニングは、昼夜連続して実施することにより、加速管の表面活性が高い状態を継続維持することができ、処理が効率良く行うことができる。このようなコンディショニングは、手動処理され、目視にてRF反射波を検知し、加速管に設けられたイオンポンプの電流量をモニターして放電発生を確認し、加速管への高周波入力条件を変更している。このような手動操作では、労働負荷が高く、変更時間及び変更量に個人のばらつきがあり、一定の処理条件を継続することが困難である。このようなコンディショニングは、自動的に実行されることが望まれ、加速管は、より確実にコンディショニングされることが望まれている。自動的にコンディショニングされるときに加速管の損傷を防止することが望まれている。
【0005】
米国特許第6483263号明細書には、放射線治療装置に適用される線形加速器を自動的にコンディショニングする方法とシステムとが開示されている。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6483263号明細書
【非特許文献1】S.M.Hanna,et.al,Proceedings of EPAC2004,「Automated High−Power conditioning of medical accelerators」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管をより安定して自動的にコンディショニングする加速管コンディショニング装置および加速管コンディショニング方法を提供することにある。
本発明の他の課題は、高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管をより確実に自動的にコンディショニングする加速管コンディショニング装置および加速管コンディショニング方法を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管を自動的にコンディショニングするときに加速管の損傷を防止する加速管コンディショニング装置および加速管コンディショニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、発明を実施するための最良の形態・実施例で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための最良の形態・実施例の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明による加速管コンディショニングシステム(2)は、加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管(3)をコンディショニングするときに加速管(3)に入射されるコンディショニング用高周波を生成する高周波源(5)と、加速管(3)に入射する進行波の進行波電力を計測するセンサ(6、7)と、進行波電力に基づいて高周波源(5)を制御する加速管コンディショニング装置(1)とを備えている。このような加速管コンディショニングシステム(2)によれば、加速管コンディショニング装置(1)は、高周波源(5)の運転条件に基づいて高周波源(5)を制御することより、加速管(3)をより安定してコンディショニングすることができる。たとえば、加速管コンディショニング装置(1)は、加速管(3)が目標とする状態までコンディショニングされていることを高周波源(5)の運転条件に基づいて確認することより、加速管(3)が目標とする状態までコンディショニングされていることをより確実に確認することができ、加速管(3)をより確実に自動的にコンディショニングすることができる。
【0010】
本発明による加速管コンディショニング装置(1)は、加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管(3)に高周波源(5)により生成されるコンディショニング用高周波を入射して加速管(3)をコンディショニングするときに利用される加速管コンディショニング装置(1)である。本発明による加速管コンディショニング装置(1)は、加速管(3)で反射した反射波の反射波電力を計測するセンサ(6、7)から反射波電力を収集する反射波電力収集部(33)と、反射波電力に基づいて高周波周波数を生成する高周波周波数調整部(34)と、コンディショニング用高周波の周波数が高周波周波数になるように高周波源(5)を制御する高周波源制御部(35)とを備えている。高周波周波数は、反射波電力が所定値より小さいときに一定の値を示し、反射波電力が所定値より大きいときにコンディショニング用高周波が加速管(3)で共振するような値を示している。その共振周波数は、加速管コンディショニング装置(1)と別途に設けられる高周波自動周波数調整装置(8)により、または、加速管コンディショニング装置(1)が備える高周波周波数演算部により、進行波電力及び反射波電力に基づいて求められる。共振変化判断は、一般的に、その反射波電力が小さいときに、困難である。このような加速管コンディショニング装置(1)は、その反射波電力が小さいときに、共振変化判断をしないことにより、加速管(3)をより安定してコンディショニングすることができる。
【0011】
本発明による加速管コンディショニング装置(1)は、加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管(3)に高周波源(5)により生成されるコンディショニング用高周波を入射して加速管(3)をコンディショニングするときに利用される加速管コンディショニング装置(1)である。本発明による加速管コンディショニング装置(1)は、加速管(3)に入射する進行波の進行波電力を計測するセンサ(6、7)から進行波電力を収集する進行波電力収集部(32)と、進行波電力に基づいて高周波周波数を生成する高周波周波数調整部(34)と、コンディショニング用高周波の周波数が高周波周波数になるように高周波源(5)を制御する高周波源制御部(35)とを備えている。高周波周波数は、進行波電力が所定値より小さいときに一定の値を示し、進行波電力が所定値より大きいときにコンディショニング用高周波が加速管(3)で共振するような値を示している。その共振周波数は、加速管コンディショニング装置(1)と別途に設けられる高周波自動周波数調整装置(8)により、または、加速管コンディショニング装置(1)が備える高周波周波数演算部により、進行波電力及び反射波電力に基づいて求められる。共振変化判断は、一般的に、その進行波電力が小さいときに、困難である。このような加速管コンディショニング装置(1)は、その進行波電力が小さいときに、共振変化判断をしないことにより、加速管(3)をより安定してコンディショニングすることができる。
【0012】
本発明による加速管コンディショニング装置(1)は、加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管(3)に高周波源(5)により生成されるコンディショニング用高周波を入射して加速管(3)をコンディショニングするときに利用される加速管コンディショニング装置(1)である。本発明による加速管コンディショニング装置(1)は、高周波源(5)がコンディショニング用高周波を間欠的に周期的に生成するときの繰り返し周波数に基づいて高周波周波数を生成する高周波周波数調整部(34)と、コンディショニング用高周波の周波数が高周波周波数になるように高周波源(5)を制御する高周波源制御部(35)とを備えている。高周波周波数は、繰り返し周波数が所定値より小さいときに一定の値を示し、繰り返し周波数が所定値より大きいときにコンディショニング用高周波が加速管(3)で共振するような値を示している。その共振周波数は、加速管コンディショニング装置(1)と別途に設けられる高周波自動周波数調整装置(8)により、または、加速管コンディショニング装置(1)が備える高周波周波数演算部により、進行波電力及び反射波電力に基づいて求められる。共振変化判断は、一般的に、その進行波電力が小さいときに、困難である。このような加速管コンディショニング装置(1)は、その進行波電力が小さいときに、共振変化判断をしないことにより、加速管(3)をより安定してコンディショニングすることができる。
【0013】
本発明による加速管コンディショニング装置(1)は、加速管(3)のコンディショニング用高周波が入射される雰囲気の真空度を外部装置(11)から収集する真空度収集部(31)をさらに備えている。高周波源制御部(35)は、真空度が所定値より劣化したときにコンディショニング用高周波の状態が変更するように高周波源(5)を制御する。加速管(3)の真空度は、加速管(3)でアーク放電が発生したときに、劣化する。すなわち、加速管コンディショニング装置(1)は、加速管(3)で初期的なアーク放電が発生したときに、コンディショニング用高周波の状態を変更することにより加速管(3)が損傷するような大きなアーク放電が発生することを防止することができる。
【0014】
本発明による加速管コンディショニング装置(1)は、加速管(3)のコンディショニング用高周波が入射される雰囲気の真空度を外部装置(11)から収集する真空度収集部(31)をさらに備えている。高周波源制御部(35)は、真空度が所定値より劣化したときに加速管(3)にコンディション用高周波を入射することが停止するように高周波源(5)を制御する。このような加速管コンディショニング装置(1)は、加速管(3)で初期的なアーク放電が発生したときに、コンディショニング用高周波の入射を停止することにより加速管(3)が損傷するような大きなアーク放電が発生することを防止することができる。
【0015】
本発明による加速管コンディショニング方法は、加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管(3)に高周波源(5)により生成されるコンディショニング用高周波を入射して加速管(3)をコンディショニングするときに利用される加速管コンディショニング方法である。本発明による加速管コンディショニング方法は、加速管(3)で反射した反射波の反射波電力を計測するセンサ(6、7)から反射波電力を収集するステップと、反射波電力に基づいて高周波周波数を生成するステップと、コンディショニング用高周波の周波数が高周波周波数になるように高周波源(5)を制御するステップとを備えている。高周波周波数は、反射波電力が所定値より小さいときに一定の値を示し、反射波電力が所定値より大きいときにコンディショニング用高周波が加速管(3)で共振するような値を示している。共振変化判断は、一般的に、その反射波電力が小さいときに、困難である。このような加速管コンディショニング方法は、その反射波電力が小さいときに、共振変化判断をしないことにより、加速管(3)をより安定してコンディショニングすることができる。
【0016】
本発明による加速管コンディショニング方法は、加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管(3)に高周波源(5)により生成されるコンディショニング用高周波を入射して加速管(3)をコンディショニングするときに利用される加速管コンディショニング方法である。本発明による加速管コンディショニング方法は、加速管(3)に入射する進行波の進行波電力を計測するセンサ(6、7)から進行波電力を収集するステップと、進行波電力に基づいて高周波周波数を生成するステップと、コンディショニング用高周波の周波数が高周波周波数になるように高周波源(5)を制御するステップとを備えている。高周波周波数は、進行波電力が所定値より小さいときに一定の値を示し、進行波電力が所定値より大きいときにコンディショニング用高周波が加速管(3)で共振するような値を示している。共振変化判断は、一般的に、その進行波電力が小さいときに、困難である。このような加速管コンディショニング方法は、その進行波電力が小さいときに、共振変化判断をしないことにより、加速管(3)をより安定してコンディショニングすることができる。
【0017】
本発明による加速管コンディショニング方法は、加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管(3)に高周波源(5)により生成されるコンディショニング用高周波を入射して加速管(3)をコンディショニングするときに利用される加速管コンディショニング方法である。本発明による加速管コンディショニング方法は、高周波源(5)がコンディショニング用高周波を間欠的に周期的に生成するときの繰り返し周波数に基づいて高周波周波数を生成するステップと、コンディショニング用高周波の周波数が高周波周波数になるように高周波源(5)を制御するステップとを備えている。高周波周波数は、繰り返し周波数が所定値より小さいときに一定の値を示し、繰り返し周波数が所定値より大きいときにコンディショニング用高周波が加速管(3)で共振するような値を示している。共振変化判断は、一般的に、その進行波電力が小さいときに、困難である。このような加速管コンディショニング方法は、その進行波電力が小さいときに、共振変化判断をしないことにより、加速管(3)をより安定してコンディショニングすることができる。
【0018】
本発明による加速管コンディショニング方法は、加速管(3)のコンディショニング用高周波が入射される雰囲気の真空度を外部装置(11)から収集するステップと、真空度が所定値より劣化したときにコンディショニング用高周波の状態が変更するように高周波源(5)を制御するステップとをさらに備えている。加速管(3)の真空度は、加速管(3)でアーク放電が発生したときに、劣化する。すなわち、加速管コンディショニング装置(1)は、加速管(3)で初期的なアーク放電が発生したときに、コンディショニング用高周波の状態を変更することにより加速管(3)が損傷するような大きなアーク放電が発生することを防止することができる。
【0019】
本発明による加速管コンディショニング方法は、加速管(3)のコンディショニング用高周波が入射される雰囲気の真空度を外部装置(11)から収集するステップと、真空度が所定値より劣化したときに加速管(3)にコンディション用高周波を入射することが停止するように高周波源(5)を制御するステップとをさらに備えている。このような加速管コンディショニング装置(1)は、加速管(3)で初期的なアーク放電が発生したときに、コンディショニング用高周波の入射を停止することにより加速管(3)が損傷するような大きなアーク放電が発生することを防止することができる。
【0020】
本発明による加速管コンディショニング方法は、加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管(3)に高周波源(5)により生成されるコンディショニング用高周波を入射して加速管(3)をコンディショニングするときに利用される加速管コンディショニング方法である。本発明による加速管コンディショニング方法は、コンディショニングするときに高周波源(5)に入力される高周波のRFパワーが変更するように高周波源(5)を制御する第1ステップと、第1ステップの後に、コンディショニング用高周波を生成するときに利用される電圧が変更するように高周波源(5)を制御する第2ステップと、第2ステップの後に、高周波源(5)がコンディショニング用高周波を間欠的に周期的に生成するときの、コンディショニング用高周波が生成される繰り返し周波数が変更するように、または、コンディショニング用高周波が生成されるパルス幅が変更するように、高周波源(5)を制御する第4ステップとを備えている。このような加速管コンディショニング方法によれば、処理エネルギーが急激に増加することを防止することができ、安定したコンディショニングを実行することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明による加速管コンディショニング装置および加速管コンディショニング方法は、高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管をより安定してコンディショニングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図面を参照して、本発明による加速管コンディショニング装置の実施の形態を記載する。その加速管コンディショニング装置1は、図1に示されているように、加速管コンディショニングシステム2に適用されている。加速管コンディショニングシステム2は、加速管3をコンディショニングするときに利用され、加速管コンディショニング装置1とクライストロン電源システム5と入射波反射波電力モニター素子6とオシロスコープ7と高周波自動周波数調整装置8とイオンポンプ11と加速管負荷用電子銃電源システム12とを備えている。
【0023】
クライストロン電源システム5は、加速管コンディショニング装置1によりRFパワーとクライストロン電圧と繰り返し周波数とパルス幅と高周波周波数とが制御されて所定の高周波を生成し、導波管14を介してその高周波を加速管3に出力する。クライストロン電源システム5は、さらに、クライストロンモニタ信号を加速管コンディショニング装置1に出力する。そのクライストロンモニタ信号は、RFパワーとクライストロン電圧とクライストロン電流とパルス幅と繰り返し周波数と高周波周波数とを示している。入射波反射波電力モニター素子6は、導波管14のうちの加速管3の近傍に配置され、導波管14をクライストロン電源システム5から加速管3に進行する進行波の電力を測定し、導波管14を加速管3からクライストロン電源システム5に進行する反射波の電力を測定し、その計測結果をオシロスコープ7に出力する。オシロスコープ7は、表示装置を備え、入射波反射波電力モニター素子6により測定された進行波の電力の変化を示す波形を算出し、入射波反射波電力モニター素子6により測定された反射波の電力の変化を示す波形を算出し、それらの波形をその表示装置に表示し、それらの波形を加速管コンディショニング装置1に出力する。高周波自動周波数調整装置8は、加速管コンディショニング装置1に制御されて、入射波反射波電力モニター素子6により測定された電力に対応する高周波周波数を算出して加速管コンディショニング装置1に出力する。その高周波周波数は、その高周波が加速管3で共振するように、または、共振ずれを抑制するように算出される。または、高周波自動周波数調整装置8は、加速管コンディショニング装置1に制御されて、入射波反射波電力モニター素子6により測定された電力に独立で一定である高周波周波数を出力する。
【0024】
加速管3は、円筒形に形成され、その円筒の内部に適切な間隔で並ぶ複数の電極(図示されていない)を備えている。加速管3は、電子銃15を備えている。電子銃15は、図示されていないカソードとグリッドとを備えている。加速管負荷用電子銃電源システム12は、加速管コンディショニング装置1により制御されて、そのカソードに電力を供給する。加速管負荷用電子銃電源システム12は、さらに、加速管コンディショニング装置1により制御されて、そのグリッドとそのカソードとの間に所定の電圧を印加する。電子銃15は、加速管負荷用電子銃電源システム12により、そのカソードに適切な電力が供給され、そのグリッドとそのカソードとの間に適切な電圧が印加されることにより、加速管3の円筒の内部に所定量の電子を放出する。加速管3は、その円筒の内部に高周波が入射されることにより、複数の電極に所定の電圧が印加され、電子銃15から放出される電子を加速する。
【0025】
イオンポンプ11は、加速管コンディショニング装置1により制御されて、加速管3の円筒の内部の気体を電離することにより、加速管3の円筒の内部の気体を排気する。イオンポンプ11は、さらに、その電離に用いられたイオンポンプ電流を出力する。そのイオンポンプ電流は、加速管3の円筒の内部の真空度に対応し、すなわち、その真空度に概ね比例している。
【0026】
図2は、入射波反射波電力モニター素子6の一部を示している。入射波反射波電力モニター素子6は、ベーテホール21とアッテネータ22とクリスタル素子23と同軸ケーブル24とを備えている。ベーテホール21は、図示されていない計測用の副導波管を備えている。その副導波管と導波管14との広い面を重ねあわせた面には、円形の小さな結合穴が設けられている。ベーテホール21は、導波管14からその結合穴を介して漏れ出た進行波の高周波電力信号をその副導波管から出力する。その高周波電力信号の電力は、導波管14を伝送される高周波の電力に比例している。アッテネータ22は、ベーテホール21の出力口に配置され、ベーテホール21から出力される高周波電力信号を減衰させる。クリスタル素子23は、ベーテホール21から出力される高周波電力信号出力をモニター電力信号に変換する。同軸ケーブル24は、クリスタル素子23から出力されるモニター電力信号をオシロスコープ7に伝送する。なお、入射波反射波電力モニター素子6は、導波管14を進行する進行波と反射波との電力を測定することができる他のセンサに置換されることもできる。そのセンサとしては、ベーテホール21を除く方向性結合器を備えたものが例示される。
【0027】
加速管コンディショニング装置1は、コンピュータであり、図3に示されているように、複数のコンピュータプログラムがインストールされている。すなわち、加速管コンディショニング装置1は、図示されていないCPUと記憶装置と入力装置と出力装置とインターフェースとを備えている。そのCPUは、加速管コンディショニング装置1にインストールされるコンピュータプログラムを実行して、その記憶装置と入力装置と出力装置とを制御する。その記憶装置は、そのコンピュータプログラムを記録し、そのCPUにより生成される情報を一時的に記録する。その入力装置は、ユーザに操作されることにより生成される情報をそのCPUに出力する。その入力装置としては、キーボード、マウスが例示される。その出力装置は、そのCPUにより生成された情報をユーザに認識可能に出力する。その出力装置としては、そのCPUにより生成された画面を表示するディスプレイが例示される。そのインターフェースは、加速管コンディショニング装置1に接続される外部機器により生成される情報をそのCPUに出力し、そのCPUにより生成された情報をその外部機器に出力する。その外部機器は、クライストロン電源システム5と入射波反射波電力モニター素子6とオシロスコープ7と高周波自動周波数調整装置8とイオンポンプ11と加速管負荷用電子銃電源システム12を含んでいる。
【0028】
加速管コンディショニング装置1は、設定部30と真空度収集部31と進行波電力収集部32と反射波電力収集部33と高周波周波数調整部34と高周波源制御部35と電子銃電源制御部36とがインストールされている。
【0029】
設定部30は、ユーザにより入力装置が操作されて入力される複数の値を複数の設定値にそれぞれ設定する。その複数の設定値は、RFパワー初期値とクライストロン電圧初期値とパルス幅初期値と繰り返し周波数初期値と第1イオンポンプ電流上限と第2イオンポンプ電流上限と第1反射波形上限と第2反射波形上限と持続時間とRFパワー上限と目標入射電力と目標クライストロン電圧と目標パルス幅と進行波電力規定レベルと反射波電力規定レベルと繰り返し周波数規定レベルと目標繰り返し周波数とから形成されている。
【0030】
真空度収集部31は、イオンポンプ11からイオンポンプ電流を収集し、そのイオンポンプ電流に基づいて、加速管3の円筒の内部の真空度を算出する。進行波電力収集部32は、オシロスコープ7から進行波の電力の変化を収集する。反射波電力収集部33は、オシロスコープ7から反射波の電力の変化を収集する。
【0031】
高周波周波数調整部34は、進行波電力収集部32により収集された進行波の電力が設定部30により設定された進行波電力規定レベルより小さいときに、または、反射波電力収集部33により収集された反射波の電力が設定部30により設定された反射波電力規定レベルより小さいときに、または、クライストロン電源システム5から収集された繰り返し周波数が設定部30により設定された繰り返し周波数規定レベルより小さいときに、高周波自動周波数調整装置8が入射波反射波電力モニター素子6により測定された電力に独立で一定である高周波周波数を出力するように高周波自動周波数調整装置8を制御する。高周波周波数調整部34は、さらに、進行波電力収集部32により収集された進行波の電力が設定部30により設定された進行波電力規定レベルより大きく、かつ、反射波電力収集部33により収集された反射波の電力が設定部30により設定された反射波電力規定レベルより大きく、かつ、クライストロン電源システム5から収集された繰り返し周波数が設定部30により設定された繰り返し規定レベルより大きいときに、高周波自動周波数調整装置8が入射波反射波電力モニター素子6により測定された電力に対応する高周波周波数を出力するように高周波自動周波数調整装置8を制御する。高周波周波数調整部34は、さらに、その高周波周波数を高周波自動周波数調整装置8から収集する。
【0032】
高周波源制御部35は、ユーザによる入力装置の操作に応答して、クライストロン電源システム5を起動する。高周波源制御部35は、さらに、設定部30により設定される複数の設定値と真空度収集部31により収集される真空度と進行波電力収集部32により収集される進行波の電力と反射波電力収集部33により収集される反射波の電力とクライストロン電源システム5から収集されるRFパワーとクライストロン電圧とクライストロン電流とパルス幅と繰り返し周波数とに基づいてRFパワーとクライストロン電圧と繰り返し周波数とパルス幅とを制御する。高周波源制御部35は、さらに、高周波周波数調整部34により収集された高周波周波数の高周波を出力するように、クライストロン電源システム5を制御する。
【0033】
電子銃電源制御部36は、加速管3をコンディショニングするときに、電子銃15が加速管3の円筒の内部に所定量の電子を放出するように、加速管負荷用電子銃電源システム12を制御する。なお、加速管3をコンディショニングするときに、必ずしも、加速管3の円筒の内部に電子を放出する必要はなく、このとき、電子銃電源制御部36は、電子銃15が加速管3の円筒の内部に電子を放出しないように、加速管負荷用電子銃電源システム12を制御する。
【0034】
このような加速管コンディショニングシステム2によれば、加速管コンディショニング装置1は、入射波反射波電力モニター素子6により計測された計測結果を用いてクライストロン電源システム5を制御することができ、クライストロン電源システム5の運転条件に基づいてクライストロン電源システム5を制御することより、加速管3をより安定してコンディショニングすることができる。
【0035】
図4Aと図4Bとは、本発明による加速管コンディショニング方法の実施の形態を示している。本発明による加速管コンディショニング方法は、加速管コンディショニングシステム2により実行される。ユーザは、まず、加速管コンディショニング装置1の入力装置を操作して、複数の設定値にそれぞれ設定される複数の値を入力する。その複数の値は、RFパワー初期値とクライストロン電圧初期値とパルス幅初期値と繰り返し周波数初期値と第1イオンポンプ電流上限と第2イオンポンプ電流上限と第1反射波形上限と第2反射波形上限と持続時間とRFパワー上限と目標入射電力と目標クライストロン電圧と目標パルス幅と進行波電力規定レベルと反射波電力規定レベルと繰り返し周波数規定レベルと目標繰り返し周波数とから形成されている。ユーザは、次いで、イオンポンプ11を起動して、加速管3の内部の気体を排気する。
【0036】
加速管コンディショニング装置1は、ユーザによる入力装置の操作に応答してクライストロン電源システム5を起動し、RFパワーがそのRFパワー初期値になり、クライストロン電圧がそのクライストロン電圧初期値になり、パルス幅がそのパルス幅初期値になり、繰り返し周波数がその繰り返し周波数初期値になるようにクライストロン電源システム5を設定する(ステップS1)。
【0037】
加速管コンディショニング装置1は、クライストロン電源システム5が起動すると、RFパワーを微小に増加させる(ステップS2)。加速管コンディショニング装置1は、イオンポンプ11から収集されたイオンポンプ電流が第1イオンポンプ電流上限より大きいときに、または、入射波反射波電力モニター素子6により計測された反射波の電力が第1反射波形上限より大きいときに(ステップS3、YES)、この加速管コンディショニング方法を一時停止する(ステップS4)。このとき、ユーザは、その真空度が所定の真空度まで十分に低下するまで一時停止させ、加速管3の内部の真空度が所定の真空度まで十分に低下したことを確認した後に、再度ステップS1を実行するように加速管コンディショニング装置1を操作する。
【0038】
加速管コンディショニング装置1は、イオンポンプ11から収集されたイオンポンプ電流が第1イオンポンプ電流上限より小さく、かつ、入射波反射波電力モニター素子6により計測された反射波の電力が第1反射波形上限より小さい場合で(ステップS3、NO)、そのイオンポンプ電流が第2イオンポンプ電流上限より大きく、または、その反射波の電力が第2反射波形上限より大きいときに(ステップS5、YES)、クライストロン電源システム5の設定値を変更する(ステップS6)。その設定値の変更は、加速管3に発生するアーク放電が抑制されるようなものである。このような設定値の変更としては、RFパワーを微小に減少させること、クライストロン電圧を下げる事、コンディショニング用高周波の周波数を加速管の共振周波数から遠ざける事が例示される。加速管コンディショニング装置1は、ステップS6が実行された後に再度ステップS2を実行する。
【0039】
加速管コンディショニング装置1は、イオンポンプ11から収集されたイオンポンプ電流と入射波反射波電力モニター素子6により計測された反射波の電力との状態がその持続時間以上に維持されていないときに(ステップS7、NO)、再度ステップS2を実行する。その状態は、イオンポンプ11から収集されたイオンポンプ電流が第2イオンポンプ電流上限より大きく、かつ、そのイオンポンプ電流が第1イオンポンプ電流上限より小さく、かつ、入射波反射波電力モニター素子6により計測された反射波の電力が第2反射波形上限より大きく、かつ、その反射波の電力が第1反射波形上限より小さいことを示している。
【0040】
加速管コンディショニング装置1は、状態がその持続時間以上に維持された場合で(ステップS7、YES)、RFパワーがRFパワー上限まで増加していないときに(ステップS8、NO)、再度ステップS2を実行する。
【0041】
加速管コンディショニング装置1は、RFパワーがRFパワー上限まで増加した場合で(ステップS8、YES)、オシロスコープ7から収集される進行波電力が目標入射電力まで増加していないときに、または、クライストロン電源システム5から収集されるクライストロン電圧が目標クライストロン電圧まで増加していないときに(ステップS9、NO)、RFパワーをリセットして0に落とし(ステップS10)、クライストロン電圧を増加させ(ステップS11)、再度ステップS2を実行する。
【0042】
加速管コンディショニング装置1は、オシロスコープ7から収集される進行波電力が目標入射電力まで増加し、かつ、クライストロン電源システム5から収集されるクライストロン電圧が目標クライストロン電圧まで増加した場合で(ステップS9、YES)、クライストロン電源システム5から収集されるパルス幅が目標パルス幅まで増加していないときに(ステップS12、NO)、RFパワーをリセットして0に落とし、クライストロン電圧をリセットして0に落とし、(ステップS13)、パルス幅を増加させ(ステップS14)、再度ステップS2を実行する。
【0043】
加速管コンディショニング装置1は、クライストロン電源システム5から収集されるパルス幅が目標パルス幅まで増加した場合で(ステップS12、YES)、入射波反射波電力モニター素子6により計測された進行波の電力が進行波電力規定レベルより小さいときに、または、入射波反射波電力モニター素子6により計測された反射波の電力が反射波電力規定レベルより小さいときに、または、クライストロン電源システム5から収集された繰り返し周波数が繰り返し周波数規定レベルより小さいときに(ステップS15、YES)、高周波自動周波数調整装置8が入射波反射波電力モニター素子6により測定された電力に独立で一定である高周波周波数を出力するように高周波自動周波数調整装置8を制御する(ステップS17)。加速管コンディショニング装置1は、その進行波の電力が進行波電力規定レベルより大きく、かつ、その反射波の電力が反射波電力規定レベルより大きく、かつ、その繰り返し周波数が繰り返し規定レベルより大きいときに(ステップS15、NO)、高周波自動周波数調整装置8が入射波反射波電力モニター素子6により測定された電力に対応する高周波周波数を出力するように高周波自動周波数調整装置8を制御する(ステップS16)。加速管コンディショニング装置1は、高周波自動周波数調整装置8から出力された高周波周波数の高周波を出力するように、クライストロン電源システム5を制御する。
【0044】
加速管コンディショニング装置1は、クライストロン電源システム5から収集された繰り返し周波数が目標繰り返し周波数まで増加していないときに(ステップS18、NO)、繰り返し周波数を増加させる(ステップS19)。加速管コンディショニング装置1は、ステップS1〜ステップS19を実行することにより、RFパワーとクライストロン電圧とパルス幅と繰り返し周波数との全部がそれぞれ目標とする状態になるまで加速管3をコンディショニングすることになる。
【0045】
図5は、クライストロン電源システム5から出力される高周波の電力の変化を示している。その変化41は、その電力が周期42ごとに同様の変化が繰り返すことを示している。周期42は、クライストロン電源システム5の繰り返し周波数に設定される値の逆数に対応し、期間43と期間44とから形成されている。変化41は、期間43でその電力がピーク値45と0との間を振動することを示している。その振動の周期は、周期42に比較して十分に小さい。期間43は、加速管コンディショニング装置1により制御されるパルス幅に対応している。変化41は、期間44でその電力が概ね0を示すことを示している。
【0046】
図6は、クライストロン電源システム5から出力される高周波が加速管3で反射してクライストロン電源システム5に入射する反射波の電力の変化を示している。その変化51は、その電力が周期52ごとに同様の変化が繰り返すことを示している。周期52は、周期42と等しく、期間53と期間54とから形成されている。変化51は、期間53でその電力がピーク値55と0との間を振動することを示し、期間54でその電力が概ね0を示すことを示している。その振動の周期は、周期52に比較して十分に小さい。期間53は、加速管コンディショニング装置1により制御されるパルス幅に対応している。変化51は、さらに、ピーク値55がピーク値45より小さいことを示している。
【0047】
図7は、入射波反射波電力モニター素子6により計測される進行波の電力の変化を示し、すなわち、オシロスコープ7により算出される進行波の電力の波形を示している。その変化61は、その電力が周期62ごとに同様の変化が繰り返すことを示している。周期62は、周期42と等しく、期間63と期間64とから形成されている。変化61は、期間63でその電力がピーク値65を示し、期間64でその電力が概ね0を示すことを示している。期間63は、加速管コンディショニング装置1により制御されるパルス幅に対応している。変化61は、さらに、ピーク値65がピーク値45に概ね等しいことを示している。
【0048】
共振変化判断は、一般的に、その進行波電力が小さいときに、または、その反射波電力が小さいときに、または、その繰り返し周波数が小さいときに、より困難である。加速管3は、その進行波電力が大きいときに、または、その反射波電力が大きいときに、または、その繰り返し周波数が大きいときに、電力負荷が大きくなり、温度上昇が顕著となり、大きく熱変形し、共振周波数が大きく変化する。このような加速管コンディショニング方法によれば、その進行波電力が小さいときに、または、その反射波電力が小さいときに、または、その繰り返し周波数が小さいときに、共振変化判断をしないことにより、加速管3をより安定してコンディショニングすることができる。このような加速管コンディショニング方法によれば、その進行波電力が大きいときに、または、その反射波電力が大きいときに、または、その繰り返し周波数が大きいときに、共振変化判断をすることにより、高周波の高周波周波数をより有効に変更することができ、加速管3をより安定してコンディショニングすることができる。
【0049】
加速管3の真空度は、加速管3でアーク放電が発生したときに、劣化する。このような加速管コンディショニング方法によれば、加速管コンディショニング装置1は、加速管3で初期的な微小なアーク放電が発生したときに、アーク放電が抑制されるようにコンディショニング用高周波の状態を変更することにより、加速管3が損傷するような大きなアーク放電が発生することを防止することができる。このため、加速管コンディショニング装置1は、ステップS1〜ステップS19を実行することにより、RFパワーとクライストロン電圧とパルス幅と繰り返し周波数との全部がそれぞれ目標とする状態になるまで、加速管3が損傷するような大きなアーク放電が発生することを防止することができ、加速管3をより確実にコンディショニングすることができる。
【0050】
加速管3をコンディショニングするときに、最初に、クライストロン電圧を増加させると、入射電力に対する依存性が大きく、急激なパワー増加をもたらし、放電頻発の恐れが高い。また、加速管3をコンディショニングするときに、最初に、パルス幅を増加させると、放電が持続しやすく、放電発生の場合のダメージが大きくなる。また、加速管3をコンディショニングするときに、最初に、繰り返し周波数を上げると、加速管内面の電界強度は変わらない状態で、電界印加頻度を増加させる事になるため、低電界強度で処理出来ない脱ガスや表面の活性向上に時間を要する事になる。本発明による加速管コンディショニング方法は、最初にRFパワーを増加させる事により、適度なパワー増分での処理が可能になる。
【0051】
RFパワーを増加させた直後に、パルス幅を増加させると、放電が持続しやすく、放電発生の場合のダメージが大きくなる。RFパワーを増加させた直後に、繰り返し周波数を上げると、加速管内面の電界強度は変わらない状態で、電界印加頻度を増加させる事になるため、低電界強度で処理出来ない脱ガスや表面の活性向上に時間を要する事になる。
本発明による加速管コンディショニング方法は、RFパワーを増加させた直後に、コンディショニングが達成されたレベルよりも少し上回る電力レベルとなるようにクライストロン電圧を増加させることにより、適度なパワー増分での処理が可能である。
【0052】
本発明による加速管コンディショニング方法は、充分な電力レベル迄コンディショニングが終了した後に、パルス幅を増加させ、また繰り返し周波数を上げる事により、実使用条件のパルス幅及び繰り返し周波数条件迄の安定した加速管のコンディショニング処理を実現することができる。すなわち、本発明による加速管コンディショニング方法は、RFパワー→クライストロン電圧→繰り返し周波数→パルス幅の順に調整する事により、急激な処理エネルギー増加を抑えながら、段階的な処理を行うことができる。
【0053】
なお、本発明による加速管コンディショニング方法は、ステップS12〜ステップS14のパルス幅を増加させる動作とステップS15〜ステップS19の繰り返し周波数を増加させる動作との順番を入れ替えることもできる。このような加速管コンディショニング方法は、既述の実施の形態における加速管コンディショニング方法と同様にして、急激な処理エネルギー増加を抑えながら、段階的な処理を行うことができる。
【0054】
なお、加速管コンディショニング装置1は、ステップS15で、入射波反射波電力モニター素子6により計測された進行波の電力のみに基づいて、高周波周波数を固定にするか変動させるかを判別することもできる。さらに、加速管コンディショニング装置1は、ステップS15で、入射波反射波電力モニター素子6により計測された反射波の電力のみに基づいて、高周波周波数を固定にするか変動させるかを判別することもできる。さらに、加速管コンディショニング装置1は、ステップS15で、入射波反射波電力モニター素子6により計測された反射波の電力のみに基づいて、高周波周波数を固定にするか変動させるかを判別することもできる。このような加速管コンディショニング方法によれば、既述の実施の形態における加速管コンディショニング方法と同様にして、加速管3をより確実にコンディショニングすることができる。
【0055】
本発明による加速管コンディショニング装置の実施の他の形態は、既述の実施の形態における加速管コンディショニング装置1が高周波周波数演算部をさらに備えている。その高周波周波数演算部は、入射波反射波電力モニター素子6により測定された電力に対応する高周波周波数を算出して加速管コンディショニング装置1に出力する。その高周波周波数は、その高周波が加速管3で共振するように、または、共振ずれを抑制するように算出される。このとき、高周波周波数調整部34は、進行波電力収集部32により収集された進行波の電力が設定部30により設定された進行波電力規定レベルより小さいときに、または、反射波電力収集部33により収集された反射波の電力が設定部30により設定された反射波電力規定レベルより小さいときに、または、クライストロン電源システム5から収集された繰り返し周波数が設定部30により設定された繰り返し周波数規定レベルより小さいときに、その高周波周波数演算部により算出された高周波周波数に独立で一定である高周波周波数を出力する。高周波周波数調整部34は、さらに、進行波電力収集部32により収集された進行波の電力が設定部30により設定された進行波電力規定レベルより大きく、かつ、反射波電力収集部33により収集された反射波の電力が設定部30により設定された反射波電力規定レベルより大きく、かつ、クライストロン電源システム5から収集された繰り返し周波数が設定部30により設定された繰り返し規定レベルより大きいときに、その高周波周波数演算部により算出された高周波周波数の高周波を出力するように、クライストロン電源システム5を制御する。このような加速管コンディショニング装置によれば、加速管コンディショニングシステム2は、高周波自動周波数高周波自動周波数調整装置8を加速管コンディショニング装置と別個に設ける必要がなく好ましい。
【0056】
本発明による加速管コンディショニング装置のさらに他の実施の形態は、既述の実施の形態における進行波電力収集部32が他の進行波電力収集部に置換され、反射波電力収集部33が他の反射波電力収集部に置換されている。その進行波電力収集部は、入射波反射波電力モニター素子6により計測された進行波の電力を入射波反射波電力モニター素子6から収集する。その反射波電力収集部は、入射波反射波電力モニター素子6により計測された反射波の電力を入射波反射波電力モニター素子6から収集する。このような加速管コンディショニング装置によれば、加速管コンディショニングシステム2は、オシロスコープ7を加速管コンディショニング装置と別個に設ける必要がなく好ましい。
【0057】
なお、クライストロン電源システム5は、他の高周波源に置換することができる。その高周波源としては、電子管式高周波源、マグネトロンが例示される。その高周波源は、クライストロン電源システム5と同様にして、RFパワーと印加電圧とパルス幅と繰り返し周波数と高周波周波数とが制御されて所定の高周波を生成する。このとき、加速管コンディショニング装置1は、クライストロン電源システム5と同様にして、RFパワーと印加電圧とパルス幅と繰り返し周波数と高周波周波数とをその高周波源に出力することにより、所定の高周波が出力されるようにその高周波源を制御する。
【実施例】
【0058】
本発明による加速管コンディショニング装置の実施例は、べーテホール式の方向性結合器(−60dB)を備える入射波反射波電力モニター素子6が適用されている。コンディショニングの処理範囲は、クライストロン電圧が80kV〜130kV、クライストロン入力高周波電力が0〜150W、パルス幅が1〜4μs、クライストロン繰り返し周波数が10〜300pps、加速管3への高周波入力電力が0〜2.5MWで実施された。
【0059】
本発明による加速管コンディショニング方法の実施例では、加速管の内部を高真空排気するイオンポンプのイオン電流をモニターし、制御コントローラへの入力信号とした。加速管内部で放電が発生すると、脱ガス発生により加速管内圧力が増加し、圧力が増加すると電流値も増加する。そのため、その電流が設定しきい値Iを超えると、加速管への高周波入力電力である電力伝送用の主導波管の伝送電力を低下する為に、クライストロンへの高周波入力電力を約2〜3W低下させるよう設定し、コンディショニングを継続させた。このとき、加速管の負荷無し(加速対象となる電子銃出力=0)条件にて、一連のコンディショニング処理工程の中で、放電発生直前の高周波電力レベルよりも大幅に低い電力で再コンディショニング処理をする事無く、コンディショニング処理を加速管の設定最大条件まで処理することができた。加速管への高周波入力電力である電力伝送用の主導波管の伝送電力として、入力2.5MWまでの自動コンディショニング処理をリアルタイムでモニター確認しながら実現することができた。
【0060】
本発明による加速管コンディショニング方法の他の実施例では、加速管の内部を高真空排気するイオンポンプのイオン電流をモニターし、制御コントローラへの入力信号とした。その電流が設定しきい値Iを超えると、加速管への高周波入力電力である電力伝送用の主導波管の伝送電力を中断停止する為に、クライストロンへの高周波入力電力を0Wに低下させ、設定しきい値I以下に回復すると、加速管への高周波入力電力である電力伝送用の主導波管の伝送電力を再開する為に、クライストロンへの高周波入力電力を中断前のレベルにて再出力させるよう設定し、コンディショニングを継続させた。このとき、加速管の負荷無し(加速対象となる電子銃出力=0)条件にて、一連のコンディショニング処理工程の中で、放電発生直前の高周波電力レベルよりも大幅に低い電力で再コンディショニング処理をする事無く、コンディショニング処理を加速管の設定最大条件まで処理することができた。加速管への高周波入力電力である電力伝送用の主導波管の伝送電力として、入力2.5MWまでの自動コンディショニング処理をリアルタイムでモニター確認しながら実現することができた。
【0061】
本発明による加速管コンディショニング方法のさらに他の実施例では、クライストロンへの高周波入力電力が20W(最大約1MW)未満は、高周波周波数を固定(5714MHz)とし、20W以上では高周波自動周波数調整を行うよう設定し、コンディショニング処理を実施した。このとき、加速管の負荷無し(加速対象となる電子銃出力=0)条件にて、加速管への高周波入力電力である電力伝送用の主導波管の伝送電力として、入力2.5MWまでの自動コンディショニング処理を安定して実現することができた。
【0062】
本発明による加速管コンディショニング方法のさらに他の実施例では、クライストロンへの高周波入力電力が20W(最大約1MW)未満は、高周波周波数を固定(5714MHz)とし、20W以上では高周波自動周波数調整を行うよう設定し、コンディショニング処理を実施した。このとき、加速管の負荷無し(加速対象となる電子銃出力=0)条件にて、加速管への高周波入力電力である電力伝送用の主導波管の伝送電力として、入力2.5MWまでの自動コンディショニング処理を安定して実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明による加速管コンディショニング装置が適用される加速管コンディショニングシステムを示すブロック図である。
【図2】図2は、入射波反射波電力モニター素子を示す平面図である。
【図3】図3は、本発明による加速管コンディショニング装置の実施の形態を示すブロックである。
【図4A】図4Aは、本発明による加速管コンディショニング方法の前半部分の実施の形態を示すフローチャートである。
【図4B】図4Bは、本発明による加速管コンディショニング方法の後半部分の実施の形態を示すフローチャートである。
【図5】図5は、クライストロンから出力される進行波の電力の変化を示すグラフである。
【図6】図6は、クライストロンに入射される反射波の電力の変化を示すグラフである。
【図7】図7は、モニター素子により計測される進行波の電力の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0064】
1 :加速管コンディショニング装置
2 :加速管コンディショニングシステム
3 :加速管
5 :クライストロン電源システム
6 :入射波反射波電力モニター素子
7 :オシロスコープ
8 :高周波自動周波数調整装置
11:イオンポンプ
12:加速管負荷用電子銃電源システム
14:導波管
15:電子銃
21:ベーテホール
22:アッテネータ
23:クリスタル素子
24:同軸ケーブル
31:真空度収集部
32:進行波電力収集部
33:反射波電力収集部
34:高周波周波数調整部
35:高周波源制御部
36:電子銃電源制御部
41:変化
42:周期
43:期間
44:期間
45:ピーク値
51:変化
52:周期
53:期間
54:期間
55:ピーク値
61:変化
62:周期
63:期間
64:期間
65:ピーク値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管をコンディショニングするときに前記加速管に入射されるコンディショニング用高周波を生成する高周波源と、
前記加速管に入射する進行波の進行波電力を計測するセンサと、
前記進行波電力に基づいて前記高周波源を制御する加速管コンディショニング装置
とを具備する加速管コンディショニングシステム。
【請求項2】
加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管に高周波源により生成されるコンディショニング用高周波を入射して前記加速管をコンディショニングするときに利用される加速管コンディショニング装置であり、
前記加速管で反射した反射波の反射波電力を計測するセンサから前記反射波電力を収集する反射波電力収集部と、
前記加速管に入射する進行波の進行波電力を計測するセンサから前記進行波電力を収集する進行波電力収集部と、
前記進行波及び反射波電力に基づいて加速管の共振周波数を求める高周波周波数演算部と、
前記反射波電力に基づいて高周波周波数を生成する高周波周波数調整部と、
前記コンディショニング用高周波の周波数が前記高周波周波数になるように前記高周波源を制御する高周波源制御部とを具備し、
前記高周波周波数は、
前記反射波電力が所定値より小さいときに一定の値を示し、
前記反射波電力が前記所定値より大きいときに前記コンディショニング用高周波が前記加速管の共振周波数となる
加速管コンディショニング装置。
【請求項3】
加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管に高周波源により生成されるコンディショニング用高周波を入射して前記加速管をコンディショニングするときに利用される加速管コンディショニング装置であり、
前記加速管に入射する進行波の進行波電力を計測するセンサから前記進行波電力を収集する進行波電力収集部と、
前記加速管で反射した反射波の反射波電力を計測するセンサから前記反射波電力を収集する反射波電力収集部と、
前記進行波及び反射波電力に基づいて加速管の共振周波数を求める高周波周波数演算部と、
前記進行波電力に基づいて高周波周波数を生成する高周波周波数調整部と、
前記コンディショニング用高周波の周波数が前記高周波周波数になるように前記高周波源を制御する高周波源制御部とを具備し、
前記高周波周波数は、
前記進行波電力が所定値より小さいときに一定の値を示し、
前記進行波電力が前記所定値より大きいときに前記コンディショニング用高周波が前記加速管の共振周波数となる
加速管コンディショニング装置。
【請求項4】
加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管に高周波源により生成されるコンディショニング用高周波を入射して前記加速管をコンディショニングするときに利用される加速管コンディショニング装置であり、
前記加速管で反射した反射波の反射波電力を計測するセンサから前記反射波電力を収集する反射波電力収集部と、
前記加速管に入射する進行波の進行波電力を計測するセンサから前記進行波電力を収集する反射波電力収集部と、
前記進行波及び反射波電力に基づいて加速管の共振周波数を求める高周波周波数演算部と、
前記高周波源が前記コンディショニング用高周波を間欠的に周期的に生成するときの繰り返し周波数に基づいて高周波周波数を生成する高周波周波数調整部と、
前記コンディショニング用高周波の周波数が前記高周波周波数になるように前記高周波源を制御する高周波源制御部とを具備し、
前記高周波周波数は、
前記繰り返し周波数が所定値より小さいときに一定の値を示し、
前記繰り返し周波数が前記所定値より大きいときに前記コンディショニング用高周波が前記加速管の共振周波数となる
加速管コンディショニング装置。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれかにおいて、
前記加速管の前記前記コンディショニング用高周波が入射される雰囲気の真空度を外部装置から収集する真空度収集部を更に具備し、
前記高周波源制御部は、前記真空度が所定値より劣化したときに前記コンディショニング用高周波の状態が変更するように前記高周波源を制御する
加速管コンディショニング装置。
【請求項6】
請求項2〜請求項4のいずれかにおいて、
前記加速管の前記前記コンディショニング用高周波が入射される雰囲気の真空度を外部装置から収集する真空度収集部を更に具備し、
前記高周波源制御部は、前記真空度が所定値より劣化したときに前記加速管に前記コンディション用高周波を入射することが停止するように前記高周波源を制御する
加速管コンディショニング装置。
【請求項7】
加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管に高周波源により生成されるコンディショニング用高周波を入射して前記加速管をコンディショニングするときに利用される加速管コンディショニング方法であり、
前記加速管で反射した反射波の反射波電力を計測するセンサから前記反射波電力を収集するステップと、
前記反射波電力に基づいて高周波周波数を生成するステップと、
前記コンディショニング用高周波の周波数が前記高周波周波数になるように前記高周波源を制御するステップとを具備し、
前記高周波周波数は、
前記反射波電力が所定値より小さいときに一定の値を示し、
前記反射波電力が前記所定値より大きいときに前記コンディショニング用高周波が前記加速管の共振周波数となる
加速管コンディショニング方法。
【請求項8】
加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管に高周波源により生成されるコンディショニング用高周波を入射して前記加速管をコンディショニングするときに利用される加速管コンディショニング方法であり、
前記加速管に入射する進行波の進行波電力を計測するセンサから前記進行波電力を収集するステップと、
前記進行波電力に基づいて高周波周波数を生成するステップと、
前記コンディショニング用高周波の周波数が前記高周波周波数になるように前記高周波源を制御するステップとを具備し、
前記高周波周波数は、
前記進行波電力が所定値より小さいときに一定の値を示し、
前記進行波電力が前記所定値より大きいときに前記コンディショニング用高周波が前記加速管の共振周波数となる
加速管コンディショニング方法。
【請求項9】
加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管に高周波源により生成されるコンディショニング用高周波を入射して前記加速管をコンディショニングするときに利用される加速管コンディショニング方法であり、
前記高周波源が前記コンディショニング用高周波を間欠的に周期的に生成するときの繰り返し周波数に基づいて高周波周波数を生成するステップと、
前記コンディショニング用高周波の周波数が前記高周波周波数になるように前記高周波源を制御するステップとを具備し、
前記高周波周波数は、
前記繰り返し周波数が所定値より小さいときに一定の値を示し、
前記繰り返し周波数が前記所定値より大きいときに前記コンディショニング用高周波が前記加速管の共振周波数となる
加速管コンディショニング方法。
【請求項10】
請求項7〜請求項9のいずれかにおいて、
前記加速管の前記前記コンディショニング用高周波が入射される雰囲気の真空度を外部装置から収集するステップと、
前記真空度が所定値より劣化したときに前記コンディショニング用高周波の状態が変更するように前記高周波源を制御するステップ
とを更に具備する加速管コンディショニング方法。
【請求項11】
請求項7〜請求項9のいずれかにおいて、
前記加速管の前記前記コンディショニング用高周波が入射される雰囲気の真空度を外部装置から収集するステップと、
前記真空度が所定値より劣化したときに前記加速管に前記コンディション用高周波を入射することが停止するように前記高周波源を制御するステップ
とを更に具備する加速管コンディショニング方法。
【請求項12】
加速用高周波が入射されて荷電粒子を加速する加速管に電子管式高周波源により生成されるコンディショニング用高周波を入射して前記加速管をコンディショニングするときに利用される加速管コンディショニング方法であり、
前記コンディショニング用として前記電子管式高周波源に入力される高周波のRFパワーが変更するように前記電子管式高周波源を制御する第1ステップと、
前記第1ステップの後に、前記コンディショニング用高周波を生成するときに利用される電子管式高周波源の直流電圧が変更するように前記電子管式高周波源を制御する第2ステップと、
前記第2ステップの後に、前記高周波源が前記コンディショニング用高周波を間欠的に周期的に生成するときの、前記コンディショニング用高周波が生成される繰り返し周波数が変更するように、または、前記コンディショニング用高周波が生成されるパルス幅が変更するように、前記高周波源を制御する第3ステップ
とを具備する加速管コンディショニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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