加飾成形品の製造方法
【課題】圧転写印刷層が不飽和ポリエステル樹脂によって成形された基材と強く密着して、水気に曝される場所に使用しても耐久性に優れた加飾成形品を得ることができる加飾成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】不飽和ポリエステル樹脂によって成形された基材の表面上の少なくとも一部に水圧転写印刷による加飾層を備える加飾成形品の製造方法であって、研磨微粒子を含む研磨剤が研磨面に担持され、前記基材の研磨カスが前記研磨面から内部に入り込む多孔構造を備える研磨具によって前記基材の少なくとも加飾層形成面を研磨し、この研磨部分にプライマーコートを塗布した後、プライマーコート上に直接またはプライマーコート表面に形成したアンダーコート上に水圧転写印刷によって加飾層を形成することを特徴としている。
【解決手段】不飽和ポリエステル樹脂によって成形された基材の表面上の少なくとも一部に水圧転写印刷による加飾層を備える加飾成形品の製造方法であって、研磨微粒子を含む研磨剤が研磨面に担持され、前記基材の研磨カスが前記研磨面から内部に入り込む多孔構造を備える研磨具によって前記基材の少なくとも加飾層形成面を研磨し、この研磨部分にプライマーコートを塗布した後、プライマーコート上に直接またはプライマーコート表面に形成したアンダーコート上に水圧転写印刷によって加飾層を形成することを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、加飾成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
立体的な加飾面に加飾印刷を施すのに適した印刷方法として、水圧による押圧力を利用して、水面に浮かべたインクを加飾面に転写するようにした水圧転写印刷法がある。
また、樹脂製成形品にこの水圧転写印刷法を用いて加飾を施す場合、成形品の加飾面にまずプライマーコートを施し、印刷層の密着性向上を図るようにしている（特許文献１参照）。
【０００３】
さらに、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂の場合、成形品の表面に紫外線照射することによって、プライマーコートを行なわなくても加飾層の密着性をよくする方法が提案されている（特許文献２参照）。
【０００４】
ところで、たとえば、浴槽基材として現在主に使用されている不飽和ポリエステル樹脂は、ほぼ完全に硬化し、表面に化学結合をするための反応基がほとんど無い。そのため、水圧転写加飾層と不飽和ポリエステル樹脂との密着性を得るために、上記のようにプライマーコートを塗布するのが一般的である。
【０００５】
しかし、不飽和ポリエステル樹脂の場合、プライマーコートにエポキシアクリレート樹脂やエポキシ樹脂等を用いても、基材との接着力は相溶効果や分子間力によるところが大きく、通常使用条件下での密着性は高く維持されるが、浴槽のように、常に水気に曝されるような場所に使用される加飾成形品においては、水の浸透により、基材層とプライマー層間剥離が発生することが多い。 さらに、熱硬化性樹脂の成形には、型との離型性をよくするために、フッ素樹脂等を主成分とする離型剤が使用され、成形品表面にも付着している。 これをイソプロパノール等の溶剤で脱脂洗浄しているが、密着性のバラツキが大きかった。
【０００６】
【特許文献１】特開平９−１９９６号公報
【特許文献２】特開平１０−２７７４７９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明は、上記事情に鑑みて、水圧転写印刷層が不飽和ポリエステル樹脂によって成形された基材と強く密着して、水気に曝される場所に使用しても耐久性に優れた加飾成形品を得ることができる加飾成形品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記目的を達成するために、本発明にかかる加飾成形品の製造方法は、不飽和ポリエステル樹脂によって成形された基材の表面上の少なくとも一部に水圧転写印刷による加飾層を備える加飾成形品の製造方法であって、研磨微粒子を含む研磨剤が研磨面に担持され、前記基材の研磨カスが前記研磨面から内部に入り込む多孔構造を備える研磨具によって前記基材の少なくとも加飾層形成面を研磨し、この研磨部分にプライマーコートを塗布した後、プライマーコート上に直接またはプライマーコート表面に形成したアンダーコート上に水圧転写印刷によって加飾層を形成することを特徴としている。
【０００９】
本発明において、研磨とは、所謂、粗面化ではなく対象表面の細かい不純物等の異物除去を主体としたものである。したがって、研磨度合いは、表面から0.0１ミクロン以上１０ミクロン以下程度を研磨するものである。
【００１０】
研磨剤に含まれる研磨微粒子としては、特に限定されないが、例えば酸化珪素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、珪藻土、ゼオライトなどの微粒子が挙げられる。
研磨微粒子の粒径としては、特に限定されないが、研磨粒子が細かすぎると、研磨に時間を要するため、０．１μｍ以上の粒径であることが好ましい。
【００１１】
また、このような研磨剤としては、上記研磨微粒子と界面活性剤とが含まれた市販の家庭用クレンザーを用いることができる。
このクレンザーとしては、粉末タイプのものでも、クリームタイプのものでも構わない。
【００１２】
多孔構造を備える研磨具としては、織布や不織布でも構わないが、たとえば、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂等からなる熱可塑性樹脂製連続気泡発泡体、具体的には、家庭用品洗浄用の熱可塑性樹脂製スポンジが好適である。
【００１３】
プライマーコートには、基材樹脂と相溶性のある樹脂を使用することができ、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が使用できる。
【００１４】
また、水圧転写加飾層の密着性をより向上させるために、プライマーコートの次にアンダーコートを塗布し、このアンダーコート上に水圧転写加飾層を形成することができる。
アンダーコートには、同様にエポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂等が使用できる。
【発明の効果】
【００１５】
本発明にかかる加飾成形品の製造方法は、以上のように、研磨微粒子を含む研磨剤が研磨面に担持され、前記基材の研磨カスが前記研磨面から内部に入り込む多孔構造を備える研磨具によって前記基材の少なくとも加飾層形成面を研磨し、この研磨部分にプライマーコートを塗布した後、プライマーコート上に直接またはプライマーコート表面に形成したアンダーコート上に水圧転写印刷によって加飾層を形成するようにしたので、水圧転写印刷層が不飽和ポリエステル樹脂によって成形された基材と強く密着して、水気に曝される場所に使用しても耐久性に優れた加飾成形品を得ることができる。
【００１６】
すなわち、研磨微粒子を含む研磨剤によって研磨することによって、基材表面に残る離型剤成分等を満遍なく、緻密に研磨して除去することができる。しかも、研磨具が基材の研磨カスが研磨面から内部に入り込む多孔構造を備えるので、研磨により基材表面から削り取って生じた研磨カスが、研磨後、基材表面に再付着して、プライマーコートの基材への密着阻害を招くといったことがない。したがって、プライマー樹脂との相溶性を向上させることにより、より強固な接着性が得られ、結果として、水圧転写印刷層が不飽和ポリエステル樹脂によって成形された基材と強く密着して、水気に曝される場所に使用しても耐久性に優れたものとなる。
【００１７】
また、研磨具として熱可塑性樹脂製連続気泡発泡体を用いるようにすれば、研磨具自体に可とう性があり、研磨する表面の形状に沿うことが容易であるため、複雑な形状でもムラなく研磨することができる。
因みに、研磨具として、スチールウール等を用いた場合、緻密に粗面化するためには、時間と労力を要する上、研磨によるカスの発生が多大であるため、研磨後の製品表面に、研磨カスが再付着する率は圧倒的に大きくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１８】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図１および図２は、本発明にかかる加飾成形体の製造方法で得られる加飾成形体の1例である浴槽をあらわしている。
【００１９】
図１および図２に示すように、この浴槽１は、不飽和ポリエステル樹脂によって成形された基材としての浴槽本体２の框部分２１表面に水圧転写印刷法で印刷された加飾層３を備えている。
【００２０】
すなわち、加飾層３は、図２に示すように、浴槽本体２の加飾面にプライマーコート４、アンダーコート５が施され、アンダーコート５上に水圧転写印刷法で印刷されている。
加飾層３の表面は、トップコート６で被覆されている。
【００２１】
また、浴槽本体２の加飾面は、研磨カスが研磨面から内部に入り込む多孔構造を備える研磨具、すなわち、食器洗い用ウレタン樹脂製スポンジに研磨剤としてのクレンザーを担持させた状態で、研磨具によって、プライマーコート４を塗布前に、研磨されている。また、研磨後必要に応じて脱脂処理されている。
したがって、このようにして加飾された浴槽１は、加飾部分の耐久性に優れたものとなる。
【００２２】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記の実施の形態では、浴槽本体の框部分のみに加飾層が設けられていた、浴槽内壁面全面に加飾層を設けるようにしても構わない。
【００２３】
以下に、本発明の実施例を比較例と対比させつつ詳しく説明する。
【００２４】
（実施例１）
不飽和ポリエステル、炭酸カルシウム、ガラス繊維からなる、いわゆるＦＲＰ成形品用の樹脂組成物を表面１４５℃ 裏面側１３０℃に加熱した金型内に投入し、プレス成形により、３０ｍｍ角平板を成形した。なお、樹脂組成物投入前には、フッ素系離型剤を金型表
面にスプレー塗布した。
１ｇの研磨剤としてのクレンザー（花王社製ホーミングクレンザー）を水に湿らせた状態で、研磨具としての食器洗い用ウレタンス樹脂製スポンジにとり、上記のようにして得られた平板の表面を手作業にて満遍なく研磨作業を行った。なお、研磨作業は、スポンジ面に対し１〜２０ｋｇｆの荷重がかかるようにし、成形板の同一面に対し往復１回以上の擦りを行った。
【００２５】
研磨終了後、平板を水洗して、研磨剤成分を洗い流したのち、ＩＰＡ（イソプロピルアルコール）にて脱脂処理を行った。
つぎに、平板の研磨処理面にエポキシアクリレート樹脂系プライマーを塗布、硬化炉で焼き付けをおこなった。
続いて、エポキシアクリレート樹脂系アンダーコートを塗布し、同様に硬化炉で焼き付けを行ったのち、水槽内でアンダーコート面に水圧転写印刷を行い、最後に、印刷面上にエポキシアクリレート系クリアトップコートを塗布し、硬化炉で焼き付き処理を行い、加飾成形品を得た。
【００２６】
（比較例１）
実施例１と同様にして得た平板を、クレンザーによる研磨を行なわず、プレス成形後、そのままイソプロピルアルコールにて脱脂処理をした以外は、実施例１と同様にして加飾成形品を得た。
【００２７】
上記実施例１および比較例１で得られた加飾成形品の、それぞれ９８℃熱水を入れて満水にした水槽の内壁面にはり付け、１００時間連続熱水試験を行った後、および初期状態の碁盤目剥離試験を行うとともに、外観を調べ、その結果を表１に示した。
なお、碁盤目剥離試験は、四辺各１０ｍｍの四角形のサンプルの加飾面をカッターナイフ
で２ｍｍ角に切れ目を入れ、２５個に細分化するとともに、これらの表面にセロハンテープ
を付着させた後、引きはがすＪＩＳ法に準拠した方法で行った。
【００２８】
【表１】
【００２９】
上記表１から、本発明の加飾成形品の製造方法によれば、耐水性に優れた加飾層を得られることがよくわかる。
【図面の簡単な説明】
【００３０】
【図１】本発明にかかる加飾成形品の製造方法で得られる加飾成形品の１例である浴槽の斜視図である。
【図２】図１の浴槽の加飾部分の断面図である。
【符号の説明】
【００３１】
１ 浴槽（加飾成形品）
２ 浴槽本体（基材）
３ 加飾層
【技術分野】
【０００１】
本発明は、加飾成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
立体的な加飾面に加飾印刷を施すのに適した印刷方法として、水圧による押圧力を利用して、水面に浮かべたインクを加飾面に転写するようにした水圧転写印刷法がある。
また、樹脂製成形品にこの水圧転写印刷法を用いて加飾を施す場合、成形品の加飾面にまずプライマーコートを施し、印刷層の密着性向上を図るようにしている（特許文献１参照）。
【０００３】
さらに、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂の場合、成形品の表面に紫外線照射することによって、プライマーコートを行なわなくても加飾層の密着性をよくする方法が提案されている（特許文献２参照）。
【０００４】
ところで、たとえば、浴槽基材として現在主に使用されている不飽和ポリエステル樹脂は、ほぼ完全に硬化し、表面に化学結合をするための反応基がほとんど無い。そのため、水圧転写加飾層と不飽和ポリエステル樹脂との密着性を得るために、上記のようにプライマーコートを塗布するのが一般的である。
【０００５】
しかし、不飽和ポリエステル樹脂の場合、プライマーコートにエポキシアクリレート樹脂やエポキシ樹脂等を用いても、基材との接着力は相溶効果や分子間力によるところが大きく、通常使用条件下での密着性は高く維持されるが、浴槽のように、常に水気に曝されるような場所に使用される加飾成形品においては、水の浸透により、基材層とプライマー層間剥離が発生することが多い。 さらに、熱硬化性樹脂の成形には、型との離型性をよくするために、フッ素樹脂等を主成分とする離型剤が使用され、成形品表面にも付着している。 これをイソプロパノール等の溶剤で脱脂洗浄しているが、密着性のバラツキが大きかった。
【０００６】
【特許文献１】特開平９−１９９６号公報
【特許文献２】特開平１０−２７７４７９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明は、上記事情に鑑みて、水圧転写印刷層が不飽和ポリエステル樹脂によって成形された基材と強く密着して、水気に曝される場所に使用しても耐久性に優れた加飾成形品を得ることができる加飾成形品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記目的を達成するために、本発明にかかる加飾成形品の製造方法は、不飽和ポリエステル樹脂によって成形された基材の表面上の少なくとも一部に水圧転写印刷による加飾層を備える加飾成形品の製造方法であって、研磨微粒子を含む研磨剤が研磨面に担持され、前記基材の研磨カスが前記研磨面から内部に入り込む多孔構造を備える研磨具によって前記基材の少なくとも加飾層形成面を研磨し、この研磨部分にプライマーコートを塗布した後、プライマーコート上に直接またはプライマーコート表面に形成したアンダーコート上に水圧転写印刷によって加飾層を形成することを特徴としている。
【０００９】
本発明において、研磨とは、所謂、粗面化ではなく対象表面の細かい不純物等の異物除去を主体としたものである。したがって、研磨度合いは、表面から0.0１ミクロン以上１０ミクロン以下程度を研磨するものである。
【００１０】
研磨剤に含まれる研磨微粒子としては、特に限定されないが、例えば酸化珪素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、珪藻土、ゼオライトなどの微粒子が挙げられる。
研磨微粒子の粒径としては、特に限定されないが、研磨粒子が細かすぎると、研磨に時間を要するため、０．１μｍ以上の粒径であることが好ましい。
【００１１】
また、このような研磨剤としては、上記研磨微粒子と界面活性剤とが含まれた市販の家庭用クレンザーを用いることができる。
このクレンザーとしては、粉末タイプのものでも、クリームタイプのものでも構わない。
【００１２】
多孔構造を備える研磨具としては、織布や不織布でも構わないが、たとえば、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂等からなる熱可塑性樹脂製連続気泡発泡体、具体的には、家庭用品洗浄用の熱可塑性樹脂製スポンジが好適である。
【００１３】
プライマーコートには、基材樹脂と相溶性のある樹脂を使用することができ、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が使用できる。
【００１４】
また、水圧転写加飾層の密着性をより向上させるために、プライマーコートの次にアンダーコートを塗布し、このアンダーコート上に水圧転写加飾層を形成することができる。
アンダーコートには、同様にエポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂等が使用できる。
【発明の効果】
【００１５】
本発明にかかる加飾成形品の製造方法は、以上のように、研磨微粒子を含む研磨剤が研磨面に担持され、前記基材の研磨カスが前記研磨面から内部に入り込む多孔構造を備える研磨具によって前記基材の少なくとも加飾層形成面を研磨し、この研磨部分にプライマーコートを塗布した後、プライマーコート上に直接またはプライマーコート表面に形成したアンダーコート上に水圧転写印刷によって加飾層を形成するようにしたので、水圧転写印刷層が不飽和ポリエステル樹脂によって成形された基材と強く密着して、水気に曝される場所に使用しても耐久性に優れた加飾成形品を得ることができる。
【００１６】
すなわち、研磨微粒子を含む研磨剤によって研磨することによって、基材表面に残る離型剤成分等を満遍なく、緻密に研磨して除去することができる。しかも、研磨具が基材の研磨カスが研磨面から内部に入り込む多孔構造を備えるので、研磨により基材表面から削り取って生じた研磨カスが、研磨後、基材表面に再付着して、プライマーコートの基材への密着阻害を招くといったことがない。したがって、プライマー樹脂との相溶性を向上させることにより、より強固な接着性が得られ、結果として、水圧転写印刷層が不飽和ポリエステル樹脂によって成形された基材と強く密着して、水気に曝される場所に使用しても耐久性に優れたものとなる。
【００１７】
また、研磨具として熱可塑性樹脂製連続気泡発泡体を用いるようにすれば、研磨具自体に可とう性があり、研磨する表面の形状に沿うことが容易であるため、複雑な形状でもムラなく研磨することができる。
因みに、研磨具として、スチールウール等を用いた場合、緻密に粗面化するためには、時間と労力を要する上、研磨によるカスの発生が多大であるため、研磨後の製品表面に、研磨カスが再付着する率は圧倒的に大きくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１８】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図１および図２は、本発明にかかる加飾成形体の製造方法で得られる加飾成形体の1例である浴槽をあらわしている。
【００１９】
図１および図２に示すように、この浴槽１は、不飽和ポリエステル樹脂によって成形された基材としての浴槽本体２の框部分２１表面に水圧転写印刷法で印刷された加飾層３を備えている。
【００２０】
すなわち、加飾層３は、図２に示すように、浴槽本体２の加飾面にプライマーコート４、アンダーコート５が施され、アンダーコート５上に水圧転写印刷法で印刷されている。
加飾層３の表面は、トップコート６で被覆されている。
【００２１】
また、浴槽本体２の加飾面は、研磨カスが研磨面から内部に入り込む多孔構造を備える研磨具、すなわち、食器洗い用ウレタン樹脂製スポンジに研磨剤としてのクレンザーを担持させた状態で、研磨具によって、プライマーコート４を塗布前に、研磨されている。また、研磨後必要に応じて脱脂処理されている。
したがって、このようにして加飾された浴槽１は、加飾部分の耐久性に優れたものとなる。
【００２２】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記の実施の形態では、浴槽本体の框部分のみに加飾層が設けられていた、浴槽内壁面全面に加飾層を設けるようにしても構わない。
【００２３】
以下に、本発明の実施例を比較例と対比させつつ詳しく説明する。
【００２４】
（実施例１）
不飽和ポリエステル、炭酸カルシウム、ガラス繊維からなる、いわゆるＦＲＰ成形品用の樹脂組成物を表面１４５℃ 裏面側１３０℃に加熱した金型内に投入し、プレス成形により、３０ｍｍ角平板を成形した。なお、樹脂組成物投入前には、フッ素系離型剤を金型表
面にスプレー塗布した。
１ｇの研磨剤としてのクレンザー（花王社製ホーミングクレンザー）を水に湿らせた状態で、研磨具としての食器洗い用ウレタンス樹脂製スポンジにとり、上記のようにして得られた平板の表面を手作業にて満遍なく研磨作業を行った。なお、研磨作業は、スポンジ面に対し１〜２０ｋｇｆの荷重がかかるようにし、成形板の同一面に対し往復１回以上の擦りを行った。
【００２５】
研磨終了後、平板を水洗して、研磨剤成分を洗い流したのち、ＩＰＡ（イソプロピルアルコール）にて脱脂処理を行った。
つぎに、平板の研磨処理面にエポキシアクリレート樹脂系プライマーを塗布、硬化炉で焼き付けをおこなった。
続いて、エポキシアクリレート樹脂系アンダーコートを塗布し、同様に硬化炉で焼き付けを行ったのち、水槽内でアンダーコート面に水圧転写印刷を行い、最後に、印刷面上にエポキシアクリレート系クリアトップコートを塗布し、硬化炉で焼き付き処理を行い、加飾成形品を得た。
【００２６】
（比較例１）
実施例１と同様にして得た平板を、クレンザーによる研磨を行なわず、プレス成形後、そのままイソプロピルアルコールにて脱脂処理をした以外は、実施例１と同様にして加飾成形品を得た。
【００２７】
上記実施例１および比較例１で得られた加飾成形品の、それぞれ９８℃熱水を入れて満水にした水槽の内壁面にはり付け、１００時間連続熱水試験を行った後、および初期状態の碁盤目剥離試験を行うとともに、外観を調べ、その結果を表１に示した。
なお、碁盤目剥離試験は、四辺各１０ｍｍの四角形のサンプルの加飾面をカッターナイフ
で２ｍｍ角に切れ目を入れ、２５個に細分化するとともに、これらの表面にセロハンテープ
を付着させた後、引きはがすＪＩＳ法に準拠した方法で行った。
【００２８】
【表１】
【００２９】
上記表１から、本発明の加飾成形品の製造方法によれば、耐水性に優れた加飾層を得られることがよくわかる。
【図面の簡単な説明】
【００３０】
【図１】本発明にかかる加飾成形品の製造方法で得られる加飾成形品の１例である浴槽の斜視図である。
【図２】図１の浴槽の加飾部分の断面図である。
【符号の説明】
【００３１】
１ 浴槽（加飾成形品）
２ 浴槽本体（基材）
３ 加飾層
【特許請求の範囲】
【請求項１】
不飽和ポリエステル樹脂によって成形された基材の表面上の少なくとも一部に水圧転写印刷による加飾層を備える加飾成形品の製造方法であって、
研磨微粒子を含む研磨剤が研磨面に担持され、前記基材の研磨カスが前記研磨面から内部に入り込む多孔構造を備える研磨具によって前記基材の少なくとも加飾層形成面を研磨し、この研磨部分にプライマーコートを塗布した後、プライマーコート上に直接またはプライマーコート表面に形成したアンダーコート上に水圧転写印刷によって加飾層を形成することを特徴とする加飾成形品の製造方法。
【請求項２】
研磨具が熱可塑性樹脂製連続気泡発泡体である請求項１に記載の加飾成形品の製造方法。
【請求項３】
微粒研磨剤がクレンザーである請求項１または請求項２に記載の加飾成形品の製造方法。
【請求項１】
不飽和ポリエステル樹脂によって成形された基材の表面上の少なくとも一部に水圧転写印刷による加飾層を備える加飾成形品の製造方法であって、
研磨微粒子を含む研磨剤が研磨面に担持され、前記基材の研磨カスが前記研磨面から内部に入り込む多孔構造を備える研磨具によって前記基材の少なくとも加飾層形成面を研磨し、この研磨部分にプライマーコートを塗布した後、プライマーコート上に直接またはプライマーコート表面に形成したアンダーコート上に水圧転写印刷によって加飾層を形成することを特徴とする加飾成形品の製造方法。
【請求項２】
研磨具が熱可塑性樹脂製連続気泡発泡体である請求項１に記載の加飾成形品の製造方法。
【請求項３】
微粒研磨剤がクレンザーである請求項１または請求項２に記載の加飾成形品の製造方法。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２００７−１３０９５４（Ｐ２００７−１３０９５４Ａ）
【公開日】平成１９年５月３１日（２００７．５．３１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−３２８３６８（Ｐ２００５−３２８３６８）
【出願日】平成１７年１１月１４日（２００５．１１．１４）
【出願人】（５０１３６２９０６）積水ホームテクノ株式会社 (89)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年５月３１日（２００７．５．３１）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年１１月１４日（２００５．１１．１４）
【出願人】（５０１３６２９０６）積水ホームテクノ株式会社 (89)
【Ｆターム（参考）】
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