説明

加齢関連性網膜機能不全の治療及び予防方法

加齢関連性網膜機能不全を治療又は予防するための方法は、患者へ、医薬として有効な量の合成レチナール誘導体を、少なくとも約3か月間を通じて繰り返し投与することを含む。効果的な合成レチナール誘導体は、9−シス−レチニルエステル、11−シス−レチニルエステル、それらの誘導体及び同族体、並びにそれらの組み合わせを含む。好適なエステル置換基は、C1−C10モノカルボン酸、又はC2−C22ポリカルボン酸のカルボキシレートを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.連邦政府により支援された研究又は開発の下でなされた発明への権利に関する陳述
本研究は、国立衛生研究所(NIH)から、助成金番号EY08061で支援された。政府は本発明に関して特定の権利を有する。
【0002】
本出願は、2007年2月11日に米国特許庁に出願された、米国仮出願番号第61/027625号の利益を請求する。
【背景技術】
【0003】
2.発明の背景
視力の低下又は視力の全喪失は、眼前部及び/又は後部の組織又は構造の機能障害によって引き起こされる、多くの眼疾患又は障害に起因し得る。何故ヒトの視力が年齢と共に低下するかを理解するために、多くの研究が、光を電気シグナルへと変換する桿体及び錐体光受容器細胞層である網膜について集中的になされた。マウスにおける研究は、網膜桿体光受容器細胞機能における加齢関連性の減少が、桿体細胞の喪失、異常な網膜の可塑性、又は網膜疾患の任意の兆候によって説明され得ないことを示した(Jackson,G.R.,Owsley,C. & McGwin,G.,Jr.Vision research 39,3975−3982(1999);Gao,H.& Hollyfield,J.G.Investigative ophthalmology & visual science 33,1−17(1992);Jackson,G.R.,Owsley,C,Cordle,E.P. & Finley,CD.Vision research 38,3655−3662(1998))。実際にJacksonらは、光への曝露の後における桿体媒介性暗順応の著しい緩徐化は、ヒトの加齢に関連し、そしてそれはロドプシンの再生遅延に関連すると報告している(Jackson,G.R.,Owsley,C.& McGwin,G.,Jr.Vision research 39,3975−3982(1999))。
【0004】
加齢関連性黄斑変性(AMD)は、眼球の後方部分に関連する特殊な疾患の一つであり、そして高齢者における失明の一番の原因である。AMDは、網膜の中心部にある小さな円形領域である黄斑への損傷をもたらす。当該黄斑は、小さな細部の識別、及び読書又は運転を可能とする領域であるため、その変質は視力の低下、及び失明さえもたらし得る。網膜は、2つの形態の光受容器細胞である桿体及び錐体を含み、そしてそれらは光を電気シグナルへと変換する。脳はその後、これらのシグナルを画像へと変換する。黄斑は錐体細胞に豊富に存在し、そしてそれは中心視を提供する。AMDを患う人々は、中心視の低下を被るが、周辺視を通常維持する。
【0005】
視覚発色団である11−シス−レチナールへの、ビタミンAの不十分な利用可能性及び/又は処理は、脊椎動物におけるロドプシンの再生、及び視覚伝達に対して不利な影響を与え得る(McBee,J.K.,Palczewski,K.,Baehr,W.& Pepperberg,D.R.Prog Retin Eye Res 20,469−529(2001);Lamb,T.D.&Pugh,E.N.,Jr.Prog Retin Eye Res 23,307−380(2004);及び、Travis,G.H.,Golczak,M.,Moise,A.R.& Palczewski,K.Annu Rev Pharmacol Toxicol(2006)に総説が記載されている)。年齢に連れて、光への曝露後におけるロドプシンの再生は、食事性欠乏症又は不十分な腸内吸収のいずれかのために、ビタミンAを欠乏したヒト及びマウスにおいて、より遅延される(Lamb,T.D.& Pugh,E.N.,Jr.Prog Retin Eye Res 23,307−380(2004))。さらに、ビタミンA及びその誘導体を用いた治療は、加齢において(Jacobson,S.G.,et al.Nat Genet 11,27−32(1995))、及び網膜疾患、例えばソースビー眼底変性症において(Jacobson,S.G.,et al.Nat Genet 11,27−32(1995))、及び網膜色素変性症において(Berson,E.L.,et al.Arch Ophthalmol 111,761−772(1993))有益な効果を有し得る。
【0006】
レチノイドの吸収、貯蔵、及び網膜色素の退色後における再生は、レシチン:レチノールアシルトランスフェラーゼ(LRAT)を欠いているマウスにおいて正常に機能せず(Imanishi,Y.,Batten,M.L.,Piston,D.W.,Baehr,W.& Palczewski,K.J Cell Biol 164,373−383(2004);Batten,M.L.,et al.PLoS medicine 2,e333(2005);Batten,M.L.,et al.J Biol Chem 279,10422−10432(2004);O’Byrne,S.M.,et al.J Biol Chem 280,35647−35657(2005))、そしてヒトLRAT遺伝子の無発現変異は、早期発症型の桿体−錐体ジストロフィーをもたらす(Thompson,D.A.,et al.Nat Genet 28,123−124(2001))。後者は、ヒトのレーバー先天性黒内障(LCA)の一形態と類似しており、そしてその中で、網膜色素上皮特異的65kDa(RPE)遺伝子の無効化変異はまた、深刻な桿体及び錐体光受容器の機能不全を引き起こす(Thompson,D.A.,et al.Nat Genet 28,123−124(2001))。LRAT及びRPE65遺伝子における変異を有するLCA患者は、Lrat−/−、及びRpe65−/−ノックアウトマウスと同様、11−シス−レチナール、及びロドプシンを欠いており、RPE細胞中の全トランスレチニルエステルのレベルにおける異常性を有し、桿体及び錐体光受容器機能の深刻な機能不全を示し、そして網膜変性を示す(Imanishi,Y.,Batten,M.L.,Piston,D.W.,Baehr,W.& Palczewski,K.J Cell Biol 164,373−383(2004);Batten,M.L.,et al.PLoS medicine 2,e333(2005);Redmond,T.M.,et al.Nat Genet 20,344−351(1998);Van Hooser,J.P.,et al.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 97,8623−8628(2000);Van Hooser,J.P.,et al.J Biol Chem 277,19173−19182(2002))。
【0007】
Lrat−/−、及びRpe65−/−ノックアウトマウスにおける、LCA様症状を引き起こす生物化学的欠陥は、9−シス−レチナールの経口強制給餌(oral gavage)によって回避され得る。単一細胞の記録、及びERG測定によって評価される、保存された網膜形態及び正常な桿体機能の回復をこの処置はもたらす(Batten,M.L.,et al.PLoS medicine 2,e333(2005);Van Hooser,J.P.,et al.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 97,8623−8628(2000);Van Hooser,J.P.,et al.J Biol Chem 277,19173−19182(2002))。9−シス−レチナールは、光活性のイソロドプシンを形成し、そしてそれは退色されたときに、天然において11−シス−レチナールから再生されるロドプシンが成すものと同一の光産物を通じて、立体変化を進行させる(Yoshizawa,T.& WaId,G.Nature 214,566−571(1967))。さらに、腹腔内注射によって得られる11−シス−レチナールはまた、Rpe65−/−マウスにおける視力を改善する(Ablonczy,Z.,et al.J Biol Chem 277,40491−40498(2002))。さらに、9−シス−又は11−シス−レチナールのいずれかよりも化学的に安定な化合物、すなわち9−シス−レチニルアセテート(9−シス−R−Ac)の経胃強制給餌(gastric gavage)は、Lrat−/−マウスにおける9−シス−レチナールと同一の有益な効果を生じる(Batten,MX.,et al.PLoS medicine 2,e333(2005))。光受容器機能を回復させ、及び/又は安定化させるために使用され得る他の合成レチナール誘導体は、例えば、国際公開第2006/002097A2号に記載されている。
【発明の概要】
【0008】
現在、レチノイドの欠乏に関する治療法がほとんど存在しない。一の治療法として、抗酸化性ビタミン及び亜鉛との組み合わせは、AMDの進行を緩徐化することによって、小さな回復効果を生ずるのみである。したがって、高齢の対象において、光受容器機能を回復させ、又は安定化させる方法への必要性が存在する。本発明は、合成レチノイド誘導体を用いた長期間治療が、光受容器機能の加齢関連性の低下を有意に改善するという驚くべき発見に関連する。
【0009】
3.発明の概要
本発明は、一つ以上の合成レチナール誘導体の長期間投与を含む、加齢関連性視力障害を治療又は予防するための方法を提供する。
【0010】
一つの実施形態において、本発明は、対象における加齢関連性網膜機能不全を治療又は予防するための方法であって、前記対象へ、医薬として有効な量の合成レチナール誘導体を投与することを含み、前記合成レチナール誘導体が、前記対象へ少なくとも3か月間投与される、前記方法を提供する。
【0011】
一つの実施形態において、当該合成レチナール誘導体は、少なくとも3か月間、約2週間に1回〜約6週間に1回、当該対象へ投与される。
【0012】
別の実施形態において、当該レチナール誘導体は、約6〜約10か月間、約1か月に1回、当該対象へ投与される。
【0013】
別の実施形態において、加齢関連性網膜機能不全は、一つ以上の以下の臨床症状によって明示される:光への曝露後における、桿体媒介性暗順応の機能障害、暗視における機能障害、対比感度における機能障害、及び加齢関連性黄斑変性(AMD)。
【0014】
さらに別の実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるロドプシンの再生比率を改善する方法であって、前記哺乳動物へ、医薬として有効な量の合成レチナール誘導体を投与することを含み、前記合成レチナール誘導体が、前記哺乳動物へ少なくとも3か月間投与される、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、9−シス−R−Acを用いた、10か月齢のマウスの単回投与治療のための実験スケジュール、及び長期間治療のための実験プロトコルである。(A)完全に暗順応された(48時間)10か月齢マウスは、9−シス−R−Ac(約80mg/kg体重)、又は対照であるビヒクル溶液を強制給餌(gavage)された。強制給餌から1時間後、マウスを20分間、500cd・m-2の連続的な強い光に曝露し(約90%のロドプシンが退色された)、その後16時間暗順応させた。マウスをその後ERGによって調べ、そしてロドプシン及びレチノイド含量を分析した。ERGはまた、9−シス−R−Ac処置の前に記録された。各々の分析のために使用されるマウスの数を表1に示す。(B)マウスは、9−シス−R−Ac(約80mg/kg体重)又はビヒクル溶液(植物油)を、1か月に1回、6又は10か月間、メソッド(Method)に記載された通りに強制給餌された。(C)最後の強制給餌処置から2週間後、ERGで、又はロドプシン及びレチノイド用量のいずれかで、並びに網膜形態を、マウス群は検査された。各々の分析のために使用されるマウスの数を表1に示す。
【図2】図2は、9−シス−R−Ac処置されたマウスから、及び対照のマウスから精製されたロドプシン/オプシンの特性を示す。共溶出されたロドプシン及びオプシンは、図1に記載された通りに処置されたマウスから、メソッドに記載された通りに精製された。ロドプシンの再生レベルを、498nm(発色団を有するオプシン)/280nm(全オプシン)の吸光度比から計算した。上部:10か月齢の、9−シス−R−Ac処置されたマウス(a)、及び対照のマウス(b)から精製されたロドプシンの代表的吸光度スペクトルを示す。棒は0.02AUを示す。下部:9−シス−R−Ac処置群の再生比は対照群よりも微かに高く、そしてそれは、処置群がより低いレベルの、リガンドが結合していない(遊離の)オプシン(a)を有することを示す。平均±S.D.が示される。
【図3】図3は、非常に強い光に曝露され、その後完全暗順応された、9−シス−R−Acを強制給餌されたマウスにおける眼中レチノイドレベルを示す。(A)9−シス−R−Ac処置マウス及び対照マウスからのHPLC分離。脂肪酸全トランスレチニルエステルが最初に溶出され(ピーク1)、その後、シン−11−シス−レチナールオキシム(2)、シン−全シス−レチナールオキシム(3)、シン−9−シス−レチナールオキシム(4)、及び全トランスレチノール(5)が溶出される。シン−レチナールオキシムは、クロマトグラム上における小さいピークであり、そしてアスタリスク(*)は、溶媒変化に関連するスパイクを示す。拡大スケールのクロマトグラムである差し込み図(a)は、シン−全シス−レチナールオキシム(3)、及びシン−9−シス−レチナールオキシム(4)に相当するピーク3及び4を示す。これらのオキシムのオンラインスペクトルを以下に示す(3及び4)。処置されたマウス及び対照のマウス(図1A)の眼中レチノイドレベルをHPLCで分析した。レチナールの回収を改善するための、抽出手順及びヒドロキシアミンを用いた誘導化をメソッドに記載する。(B及びC)レチナール及びエステルの定量化。11−シス−レチナール及び全トランスレチニルエステルの量は、処置されたマウス及び対照マウスの眼中において同様であったが、9−シス−レチナール及び9−シス−レチニルエステルは、9−シス−R−Ac処置マウスの眼中でのみ検出された(n=3,P<0.0001)。他の無極性レチノイドのレベルは、9−シス−R−Ac処置マウス及び未処置マウスの間で同様であった。有意な量の9−シス−レチナール(ピーク4)が、処置されたマウスの試料中において検出された。平均±S.D.が示される。
【図4A】図4Aは、対照及び長期間9−シス−R−Acで処置されたマウスのERG分析を示す。(A)10か月齢のマウスにおける、暗順応及び明順応のERG応答。9−シス−R−Ac処置マウスの応答は、明順応条件下におけるa波の振幅を除き、暗順応及び明順応条件において有意に増大した(P<0.01)(左下のパネル)。ERG前に48時間暗順応させた(図1C)。暗順応(上部パネル)及び明順応(下部パネル)ERGをメソッドに記載された通りに記録した。a波及びb波の振幅を、光強度の関数としてプロットした。エラー・バーを示す(n=10)。
【図4B】図4Bは、対照及び長期間9−シス−R−Acで処置されたマウスのERG分析を示す。(B)2つの異なる投与計画による、9−シス−R−Acで処置された14か月齢のマウスにおける、暗順応及び明順応のERG応答。14か月齢のマウスの処置群及び未処置群の間において有意な違いは、暗順応及び明順応条件下のいずれにおいても観測されなかった。ERG前に48時間暗順応させた(図1C)。暗順応(上部パネル)及び明順応(下部パネル)ERGをメソッドに記載された通りに記録した。a波及びb波の振幅を、光強度の関数としてプロットした。エラー・バーを示す(n=10)。
【図5】図5は、対照及び長期間9−シス−R−Acで処置されたマウスの、強い光による退色後における暗順応の回復を示す。(A)10か月齢のマウスにおける、強い網膜退色からの回復。異なる群の、48時間暗順応されたマウスを、強い連続照明(500cd・m-2)で3分間退色し、そしてa波増幅回復を、60分の暗順応期間に渡るシングル・フラッシュERG(−2 log cd・s・m-2)を記録することによって観測した。回復率は、10か月齢において対照マウス(C1)よりも処置マウス(N1)において有意に高かった。さらに、9−シス−R−Acを用いた処置は、4か月齢マウスで見られるように、回復率を回復させた。(B)強い網膜退色からの14か月齢マウスの回復。有意に高い回復率が処置マウス(N2及びN3)対未処置マウス(C2)マウスで生じた(*,n=5;各々P<0.01、及びP<0.0001)。再度、処置マウスは、若い4か月齢マウスが示すものと同一の応答を示した。エラー・バーを示す(n=5)。
【図6】図6は、対照及び長期間9−シス−R−Acで処置されたマウスにおける眼中のA2E蓄積を示す。(A)A2E及びイソA2Eのクロマトグラフィー分離及びスペクトルを示す。N1マウス群からの、溶出されたA2E及びイソA2Eの、各々のHPLCクロマトグラムを示す(Aの左側パネル)。差し込み図:A2E及びイソA2Eの溶出領域の拡大図を強調表示した。これらのピークのスペクトル(I及びII)は、各々A2E及びイソA2Eを示す(右上)。(B)異なる実験群からのA2E(黒いバー)及びイソA2E(灰色のバー)の量を示す。A2Eの量は、僅かにより低い(P<0.05)N3を除き、全群間において有意に異ならなかった。イソA2Eレベルは、全群間において同様であった。若い未処置マウスにおいて(C0)、いずれの化合物も有意なレベルで検出されなかった。平均±S.D.を示す。
【図7】図7は、9−シス−R−Acを強制給餌させたマウスの網膜の形態である。(A)4か月齢の未処置マウス(C0)の代表的な横断面を示す。RPE、網膜色素上皮;PR、光受容体;ROS、桿体外節;IS、内側部;ONL、外顆粒層;OPL、外網状層;INL、内顆粒層;IPL、内網状層;及びGCL、神経節細胞層。(B)ROS及びISの厚さ、及び10及び14か月齢である対照及び処置マウスのONLの核数を示す。視神経頭(ONH)からの距離の関数としてデータポイントをプロットした。若い対照マウス(C0)のROS及びISの長さは、他の全ての群よりも有意に長かった(*,n=5;P<0.01)。他の有意な違いは検出されなかった。平均±S.D.を示す。
【図8】図8は、対照及び長期間9−シス−R−Acで処置されたマウスの、RNAアレイ分析を示す。2つの群のマウス、C2及びN2における、眼、肝臓、及び腎臓からの37,364個の遺伝子の発現レベルを、(Nimblegenによって提供された)cDNAアレイによって検査した。二つの独立したRNA試料を、マイクロアレイ・ハイブリダイゼーションのために調製した。Sigma Plot v9.0を用いた散布図として、標準化された値のmRNA発現をプロットした(対照vs.各々の9−シス−R−Ac処置群、メソッド)。2倍超で発現された遺伝子、及び0.5倍未満で発現された遺伝子を各々赤及び青で示す。さらなる情報を、補足的である表S1及びS2から利用可能である。マウスの異なる群からの眼抽出物の免疫ブロットを、メソッド中に記載された種々の抗体を用いて調べた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
5.発明の詳細な説明
本方法は、医薬として有効な量の合成レチナール誘導体を長期間投与することを通じて、対象における加齢関連性網膜機能不全を治療又は予防することを目的とする。
【0017】
本明細書において使用される用語「加齢関連性網膜機能不全」は、網膜光受容器機能の加齢関連性減少のことである。当該用語は、網膜電図における欠陥、及び光受容器細胞の死滅、並びに加齢に関する動物及びヒトの試験の両方で観察された構造的異常性に関連する、加齢関連性障害を含むことが意図される。一つの態様において、加齢関連性網膜機能不全は、光への曝露後における桿体媒介性暗順応の緩徐化、暗視の減少、及び/又は対比感度の減少を含む。別の態様において、加齢関連性網膜機能不全は、加齢関連性黄斑変性(AMD)を含む。AMDは、ウェット(wet)型又はドライ型であり得る。
【0018】
用語「治療する」、「治療」などは、所望の薬理学的効果及び生理学的効果を得ることを一般的に意味するために、本明細書において使用される。より具体的には、合成レチナール誘導体を受容しない類似の視覚系と比較して、高齢対象の視覚系における、加齢関連性網膜機能不全の改善、又は加齢関連性網膜機能不全の進行阻害を達成するために、加齢性網膜機能不全を患う対象を治療するために使用される、本明細書に記載された合成レチナール誘導体が、治療に有効な量で一般的に提供される。加齢関連性網膜機能不全における改善は、合成レチナール誘導体を受容しない類似の視覚系と比較した、視覚系における光受容器機能の(数週間又は数カ月に渡って測定されるような)長期間の改善又は回復を含む。改善はまた、合成レチナール誘導体を受容しない類似の脊椎動物の視覚系と比較した、脊椎動物の視覚系の安定化、又は脊椎動物の視覚系のさらなる変性の最小化を含む。
【0019】
用語「予防する」、「予防」などは、合成レチナール誘導体を受容しない類似の視覚系と比較した視覚系の劣化若しくはさらなる劣化を、予防又は阻害することを一般的に意味するために使用される。
【0020】
本明細書において使用される用語「医薬として有効」は、特定の治療又は予防計画の有効性のことである。医薬的有効性は、例えば、暗順応比率の増大又は安定化、より高い、又は安定化されたロドプシン/オプシン比、より高い又は安定化されたロドプシン産生比率、又は網膜電図(ERG)の応答における他のかかる改善のような特性に基づき測定され得る。
【0021】
本発明の方法において本発明の方法において、合成レチナール誘導体は、対象へ投与される。本明細書において使用される用語「対象」又は「患者」は、脊椎動物、例えば哺乳動物、例えばヒトのことである。一つの実施形態において、当該対象は、加齢性網膜機能不全を患う高齢の対象、例えばヒトである。本明細書において使用される高齢のヒト対象は通常、少なくとも45歳、又は少なくとも50歳、又は少なくとも60歳、又は少なくとも65歳である。当該対象は老化した眼を有し、そしてそれは、加齢関連性網膜機能不全を有するものとして特徴付けられる。加齢関連性網膜機能不全は、一つ以上の以下の臨床症状によって明示され得る:光への曝露後における、桿体媒介性暗順応の機能障害、暗視における機能障害、対比感度における機能障害、及び加齢関連性黄斑変性(AMD)。
【0022】
合成レチナール誘導体は、長期間(長期)投薬計画を用いて投与される。一つの実施形態において、合成レチナール誘導体は、3か月以上、;そして別の実施形態においては6か月以上、間欠的に投与され得る。合成レチナール誘導体は、例えば、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12か月以上の期間投与され得る。合成レチナール誘導体は、当該対象へ、約1日に1回〜約2か月ごとに1回、間欠的に投与され得る。間欠投与は、当該対象へ約1日おきに1回;約1週間に4回、1週間に3回、及び1週間に2回、約2、3、4、5、6、7、8、及び9週間ごとに1回;並びに約1か月に1回投与することを含む。一つの実施形態において、合成レチナール誘導体は、約3〜6週間に1回、約3か月間以上投与され;そして別の実施形態において、それは約1か月に1回、約6〜10か月間投与される。
【0023】
投与間の期間が増大すると共に、1回投与当たりの合成レチナール誘導体の量は増大し得る。例えば、合成レチナール誘導体が1日1回未満で投与される場合、1回当たりの投与量は、有効1日投与量よりも多くなり得る。本明細書において使用される「有効1日投与量」は、所望の薬理学的及び生理学的効果を得るために有効な1日投与量(すなわち、上記の対象における加齢関連性網膜機能不全を「治療」及び/又は「予防」するために有効な1日投与量)のことである。
【0024】
さらに、合成レチナール誘導体は、長期間、例えば約3か月以上;又は約6か月以上、制御薬物送達製剤及び/又は装置から慢性的に放出され得る。ポンプ、パッチ、錠剤、インプラント、マイクロチップ、及びポリマー系を含む、制御放出のための多くの種類の方法が開発され、そして当業者に周知である。
【0025】
好適な用量の合成レチナール誘導体は、臨床状態、臨床症状、及び患者の年齢、活性薬剤、製剤及び投与形態、投与頻度などに依存するだろう。多くの場合において、好適な用量の選択は、好適な医療関係者、例えば医師又は看護師の技術の範囲内であるだろう。点眼剤の場合において、合成レチナール誘導体は、例えば1回投与あたり、約0.01mg、約0.1mg、又は約1mgから、約25mgまで、約50mgまで、又は約90mgまでで投与され得る。注射の場合において好適な投与量は、約0.0001mg、約0.001mg、約0.01mg、又は約0.1mgから、約10mgまで、約25mgまで、約50mgまで、又は約500mgまでの合成レチナール誘導体である。好適な経口投与量は、約0.1〜約1000mgの合成レチナール誘導体の範囲である。他の実施形態において、1回投与あたり約1.0〜約300mgの合成レチナール誘導体が投与され得る。
【0026】
特定の実施形態において、投与量は、約0.01〜約10mg/kg体重;約0.05〜約7.5mg/kg体重;約0.1〜約5mg/kg体重;又は約0.5〜約2.5mg/kg体重の経口投与量である。例えば合成レチナール誘導体は、約6.4mg/kg体重(すなわち、約240mg/m2身体表面領域)の経口投与量で投与され得る。別の実施形態において、当該投与量は、約0.1〜約1mg/kg体重の経口1日投与量、例えば約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1mg/kg体重の経口1日投与量である。
【0027】
本発明の方法のために好適である合成レチナール誘導体は、国際公開第2004/082622A2号、及び米国特許出願公開第2004/0242704号明細書に記載されている。
【0028】
本発明の方法のために好適である合成レチナール誘導体は、ポリエン鎖中のアルデヒド基が修飾される、9−シス−レチナール、又は11−シス−レチナールの誘導体である。当該合成レチナール誘導体は、直接的に又は間接的にレチナール又は合成レチナール類縁体へと変換され得る。したがって幾つかの態様において、本発明の化合物は、代謝変換において、9−シス−レチナール、11−シス−レチナール、又はそれらの合成レチナール類縁体へと変換されるプロドラッグとして記載され得る。代謝変換は、例えば酸加水分解、エステラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デヒドロゲナーゼ活性などによって生じ得る。
【0029】
合成レチナール誘導体は、内因性レチノイドのレベルを補足する、レチノイド代替物であり得る。幾つかの実施形態において、合成レチナールはオプシンと結合し得、そしてオプシンアゴニストとして機能し得る。本明細書において使用される用語「アゴニスト」は、オプシンと結合し、そして光に応答するオプシン/合成レチナール複合体の能力を促進する合成レチナールのことである。オプシンアゴニストとして、合成レチナールは、内因性レチノイド(例えば、11−シス−レチナール)の必要性を免れ得る。合成レチナールはまた、オプシンと結合し、そして機能的なオプシン/合成レチナール複合体を形成し、それにより、当該オプシン/合成レチナール複合体が桿体、又は錐体の膜部分において光子と応答し得ることにより、オプシンの機能(例えば、光受容)を回復又は改善し得る。
【0030】
合成レチナール誘導体は、光受容器機能を回復又は安定化するために、及び/又はレチノイドレベルにおける欠乏の効果を改善するために投与され得る。例えば、11−シス−レチノイドの代替物として、及び/又はオプシンアゴニストして合成レチナール誘導体を提供することによって、光受容器機能は回復又は安定化され得る。当該合成レチナール誘導体はまた、脊椎動物の視覚系におけるレチノイド不足効果を改善し得る。当該合成レチナール誘導体は、予防的に、又は治療的に脊椎動物へ投与され得る。好適な脊椎動物は、例えば、ヒト、並びに非ヒト脊椎動物、例えば哺乳動物、例えばイヌ(イヌ科)、ネコ(ネコ科)、ウマ(ウマ科)及び他の家畜を含む。
【0031】
本発明の一つの態様において、合成レチナール誘導体は、本明細書においてさらに記載されているように、ポリエン鎖中のアルデヒド基が、エステル、エーテル、アルコール、ヘミアセタール、アセタール、又はオキシムへと変換される、9−シス−レチナール又は11−シス−レチナールの誘導体である。かかる合成レチナール誘導体は、本明細書におさらに記載されている通り、9−シス−レチニルエステル、9−シス−レチニルエーテル、9−シス−レチノール、9−シス−レチナールオキシム、9−シス−レチニルアセタール、9−シス−レチニルヘミアセタール、11−シス−レチニルエステル、11−シス−レチニルエーテル、11−シス−レチノール、11−シス−レチニルオキシム、11−シス−レチニルアセタール、及び11−シス−レチニルヘミアセタールを含む。合成レチナール誘導体は代謝されて、天然若しくは合成レチナール、例えば、9−シス−レチナール、11−シス−レチナールを、又はそれらの合成レチナール類縁体、例えば、国際公開第2004/082622A2号、及び国際公開第2006/002097A2号に記載されているものを放出し得る。
【0032】
一つの態様において、合成レチナール誘導体はレチニルエステルである。幾つかの実施形態において、レチニルエステルは、9−シス−レチニルエステル又は11−シス−レチニルエステルである。エステル置換基は、例えばカルボン酸、例えばモノ−又はポリカルボン酸であり得る。本明細書において使用される「ポリカルボン酸」は、ジ−、トリ−、又は多価カルボン酸である。幾つかの実施形態において、カルボン酸は、C1−C22、C2−C22、C3−C22、C1−C10、C2−C10、C3−C10、C4−C10、C4−C8、C4−C6、又はC4の、モノカルボン酸又はポリカルボン酸である。
【0033】
好適なカルボン酸は、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、又はリノール酸を含む。カルボン酸はまた、例えばシュウ酸(エタン二酸)、マロン酸(プロパン二酸)、コハク酸(ブタン二酸)、フマル酸(ブテン二酸)、リンゴ酸(2−ヒドロキシブテン二酸)、グルタル酸(ペンタン二酸)、アジピン酸(ヘキサン二酸)、ピメリン酸(ヘプタン二酸)、スベリン酸(オクタン二酸)、アゼライン酸(ノナン二酸)、セバシン酸(デカン二酸)、クエン酸、オキサロ酢酸、ケトグルタラチン酸(ketoglutaratic acid)などを含む。
【0034】
例示的実施形態において、レチニルエステルは、C3−C10ポリカルボン酸置換基を含む、9−シス−レチニルエステル又は11−シス−レチニルエステルである(この文脈において、用語「置換基」又は「基」は、ポリエン鎖中の末端酸素と共有結合している基のことである)。別の例示的実施形態において、レチニルエステルは、C2−C22又はC3−C22ポリカルボン酸置換基を含む、9−シス−レチニルエステル又は11−シス−レチニルエステルである。ポリカルボン酸置換基は、例えば、コハク酸、クエン酸、ケトグルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、又はオキサロ酢酸であり得る。別の例示的実施形態において、レチニルエステルは、C3−C22ジカルボン酸(二酸)置換基を含む、9−シス−レチニルエステル又は11−シス−レチニルエステルである。幾つかの実施形態において、ポリカルボン酸は、9−シス−酒石酸レチニル、又は11−シス−酒石酸レチニルではない。幾つかの実施形態において、レチニルエステルは、眼中で通常見られる天然で生じるレチニルエステルではない。幾つかの実施形態において、レチニルエステルは単離されたレチニルエステルである。本明細書において使用される「単離された」は、その自然環境から離れて存在し、したがって天然産物ではない分子のことである。単離された分子は、精製された形態で存在し得るか、又は非天然環境下で存在し得る。
【0035】
別の態様において、レチナール誘導体は、以下の式I:
【0036】
【化1】

【0037】
で表される9−シス−レチニルエステル又はエーテルであり得る。
【0038】
幾つかの実施形態において、AはCH2ORであり、ここでRはアルデヒド基であり得、レチニルエステルを形成する。好適なアルデヒド基は、C1〜C24の直鎖又は分岐のアルデヒド基である。アルデヒド基はまた、C1〜C14の直鎖又は分岐のアルデヒド基であり得る。アルデヒド基はまた、C1〜C12の直鎖又は分岐のアルデヒド基であり得、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナールであり得る。Rは、C1〜C10の直鎖若しくは分岐のアルデヒド基、C1〜C8の直鎖若しくは分岐のアルデヒド基、又はC1〜C6の直鎖若しくは分岐のアルデヒド基であり得る。
【0039】
さらにRは、ジカルボン酸又は他のカルボン酸(例えばヒドロキシル酸)のカルボキシレート基であり得、レチニルエステル(それらの幾つかはまた、レチノイルエスエルとも呼ばれる)を形成し得る。カルボン酸は、例えば、シュウ酸(エタン二酸)、マロン酸(プロパンジオール酸)、コハク酸(ブタン二酸)、フマル酸(ブテン二酸)、リンゴ酸(2−ヒドロキシブテン二酸)、グルタル酸(ペンタン二酸)、アジピン酸(ヘキサン二酸)、ピメリン酸(ヘプタン二酸)、スベリン酸(オクタン二酸)、アゼライン酸(ノナン二酸)、セバシン酸(デカン二酸)、クエン酸、オキサロ酢酸、ケトグルタラチン酸などであり得る。
【0040】
Rはまた、アルカン基であり得、レチニルアルカンエーテルを形成し得る。好適なアルカン基は、例えばC1〜C24の直鎖又は分岐のアルキル、例えば、メタン、エタン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどを含む。例えばアルカン基は、C1〜C6の範囲にある、直鎖、イソ−、sec−、tert−、又は他の分岐低級アルキルであり得る。アルカン基はまた、C8〜C14の範囲にある、直鎖、イソ−、sec−、tert−、又は他の分岐の中位鎖アルキルであり得る。アルカン基はまた、C16〜C24の範囲にある、直鎖、イソ−、sec−、tert−、又は他の分岐の長鎖アルキルであり得る。
【0041】
さらにRはアルコール基であり、レチニルアルコールエーテルを形成し得る。好適なアルコールは、C1〜C6の範囲にある、直鎖、イソ−、sec−、tert−、又は他の分岐低級アルコール、C8〜C14の範囲にある、直鎖、イソ−、sec−、tert−、又は他の分岐の中位鎖アルコール、或いは、C16〜C24の範囲にある、直鎖、イソ−、sec−、tert−、又は他の分岐の長鎖アルコールであり得る。アルコール基は例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールなどであり得る。
【0042】
Rはまた、カルボン酸であり、レチニルカルボン酸エーテルを形成し得る。好適なカルボン酸基は、C1〜C6の範囲にある、直鎖、イソ−、sec−、tert−、又は他の分岐低級カルボン酸、C8〜C14の範囲にある、直鎖、イソ−、sec−、tert−、又は他の分岐の中位鎖アルコール、或いは、C16〜C24の範囲にある、直鎖、イソ−、sec−、tert−、又は他の分岐の長鎖アルコールであり得る。好適なカルボン酸基は、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、又はリノール酸、コハク酸、フマル酸などを含む。
【0043】
レチニル誘導体は、AがCH(OH)ORである、レチニルヘミアセタールであり得る。Rは、上の式Iで定義された任意のR基であり得る。Rは通常、低級アルカン、例えばメチル若しくはエチル基、又は本明細書に記載されたような、ヘテロ原子を有する若しくは有しない、C1〜C7の、飽和若しくは不飽和、環状若しくは非環状アルカンである。
【0044】
レチニル誘導体は、AがCH(ORa)ORbである、レチニルアセタールであり得る。Ra及びRbの各々は、上の式Iで定義された任意のR基から独立して選択され得る。Ra及びRbは通常、本明細書に記載されたような、ヘテロ原子を有する若しくは有しない、C1〜C7の、飽和若しくは不飽和、環状若しくは非環状アルカンである。
【0045】
レチニル誘導体はまた、AがCH:NOH又はCH:NORであるレチニルオキシムであり得る。Rは、上の式Iで定義された任意のR基であり得る。Rは通常、水素又はアルカンである。
【0046】
好適な合成レチナール誘導体の例は、例えば、9−シス−酢酸レチニル、9−シス−ギ酸レチニル、9−シス−コハク酸レチニル、9−シス−クエン酸レチニル、9−シス−ケトグルタル酸レチニル、9−シス−フマル酸レチニル、9−シス−リンゴ酸レチニル、9−シス−オキサロ酢酸レチニル、9−シス−レチナールオキシム、9−シス−レチナール O−メチルオキシム、9−シス−レチナール O−エチルオキシム、並びに9−シス−レチナールメチルアセタール及びヘミアセタール、9−シス−レチニルメチルエーテル、9−シス−レチニルエチルエーテル、並びに9−シス−レチニルフェニルエーテルを含む。
【0047】
関連する態様において、レチナール誘導体は、以下の式II:
【0048】
【化2】

【0049】
で表される11−シス−レチニルエステル又はエーテルであり得る。
【0050】
Aは、上の式Iで定義された任意の基であり得る。
【0051】
好適な合成レチナール誘導体の例は、例えば、11−シス−酢酸レチニル、11−シス−ギ酸レチニル、11−シス−コハク酸レチニル、11−シス−クエン酸レチニル、11−シス−ケトグルタル酸レチニル、11−シス−フマル酸レチニル、11−シス−リンゴ酸レチニル、11−シス−レチナールオキシム、11−シス−レチナール O−メチルオキシム、11−シス−レチナール O−エチルオキシム、並びに11−シス−レチナールメチルアセタール及びヘミアセタール、11−シス−レチニルメチルエーテル、11−シス−レチニルエチルエーテルを含む。
【0052】
さらなる態様において、合成レチナール誘導体は、例えば、9−シス−レチニルエステル、9−シス−レチニルエーテル、11−シス−レチニルエステル、又は11−シス−レチニルエーテルの誘導体であり、例えば非環状レチニルエステル又はエーテル、修飾ポリエン鎖を有するレチニルエステル又はエーテル、例えばトリエン酸若しくはテトラエン酸レチニルエステル又はエーテル;置換ポリエン鎖、例えばアルキル、ハロゲン、若しくはヘテロ原子で置換されたポリエン鎖を有するレチニルエステル又はエーテル;ポリエン鎖、例えばトランス若しくはシスで固定されたポリエン鎖、又はアレン若しくはアルキンを有するレチニルエステル又はエーテル;及び環修飾(単数又は複数)、例えばヘテロ環、芳香族ヘテロ環、又は置換シクロアルカン若しくはシクロアルケン環を有するレチニルエステル又はエーテルである。
【0053】
合成レチナール誘導体は、以下の式III:
【0054】
【化3】

【0055】
で表されるレチニルエステル又はエーテルであり得る。
【0056】
Aは、上の式(I)で定義された任意の基であり得る。R1及びR2は、直鎖、イソ−、sec−、tert−、及び他の分岐アルキル基、並びに置換アルキル基、置換分岐アルキル、ヒドロキシル、ヒドロアルキル、アミン、アミドなどから独立して選択され得る。R1及びR2は独立して低級アルキルであり得、そしてそれは、1〜6個の炭素原子(単数又は複数)を有する直鎖又は分岐アルキルを意味し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどである。好適な置換アルキル及び置換分岐アルキルは、例えば、酸素、ヒドロキシル、窒素、アミド、アミン、ハロゲン、ヘテロ原子又は他の基で置換されたアルキル、分岐アルキル、及びシクロアルキルを含む。好適なヘテロ原子は、例えば、硫黄、ケイ素、及びフルオロ又はブロモ置換を含む。
【0057】
1又はR2は同様に、シクロアルキル、例えば、ヘキサン、シクロヘキセン、ベンゼン、並びに置換シクロアルキルであり得る。好適な置換シクロアルキルは、例えば、酸素、ヒドロキシル、窒素、アミド、アミン、ハロゲン、ヘテロ原子、及び/又は他の基で置換されたシクロアルキルを含む。好適なヘテロ原子は、例えば、硫黄、ケイ素、及びフルオロ又はブロモ置換を含む。
【0058】
合成レチナール誘導体はまた、修飾ポリエン鎖を有し得、例えば以下の式IVである。
【0059】
【化4】

【0060】
Aは、上の式(I)で定義された任意の基であり得る。ポリエン鎖は、1、2、若しくは3個のアルキル、アルケン、又はアルキレン基で伸長され得る。式(IV)に従って、各々のn及びn1は、1、2、若しくは3個のアルキル、アルケン、又はアルキレン基から独立して選択され得、但しn及びn1の合計は少なくとも1である。
【0061】
合成レチナール誘導体はまた、以下の式V:
【0062】
【化5】

【0063】
で表される、置換ポリエン鎖を有し得る。
【0064】
Aは、上の式(I)で定義された任意の基であり得る。R1〜R8の各々は、水素、アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、ハロゲン、ヘテロ原子などから独立して選択され得る。好適なアルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、置換アルキル(例えば、ヒドロキシル、ヒドロアルキル、アミン、アミドを有するアルキル)などを含む。好適な分岐アルキルは、例えば、イソプロピル、イソブチル、置換分岐アルキルなどであり得る。好適なシクロアルキルは、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、及び他の環状アルカン、並びに置換環状アルカン、例えば置換シクロヘキサン又は置換シクロヘプタンを含み得る。好適なハロゲンは、例えば、臭素、塩素、フッ素などを含む。好適なヘテロ原子は、例えば、硫黄、ケイ素、及びフルオロ又はブロモ置換を含む。好適な置換アルキル、置換分岐アルキル、及び置換シクロアルキルは、例えば、酸素、ヒドロキシル、窒素、アミド、アミン、ハロゲン、ヘテロ原子又は他の基で置換されたアルキル、分岐アルキル、及びシクロアルキルを含む。
【0065】
例えば、合成レチナール誘導体は、以下から選択され得る:9−エチル−11−シス−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;7−メチル−11−シス−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;13−デスメチル−11−シス−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;11−シス−10−F−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;11−シス−10−Cl−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;11−シス−10−メチル−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;11−シス−10−エチル−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;9−シス−10−F−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;9−シス−10−Cl−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;9−シス−10−メチル−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;9−シス−10−エチル−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;11−シス−12−F−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;11−シス−12−Cl−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;11−シス−12−メチル−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;11−シス−10−エチル−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;9−シス−12−F−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;9−シス−12−Cl−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;9−シス−12−メチル−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;11−シス−14−F−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;11−シス−14−メチル−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;11−シス−14−エチル−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;9−シス−14−F−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;9−シス−14−メチル−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;9−シス−14−エチル−レチニルエステル、エーテル、オキシム、アセタール、又はヘミアセタール;など。
【0066】
合成レチナール誘導体はさらに、修飾環構造を有し得る。好適な例は、例えば、以下の式VI、VII、及びVIIIの環修飾、芳香族類縁体、及び芳香族ヘテロ環類縁体をそれぞれ含む誘導体を含む:
【0067】
【化6】

【0068】
Aは、上の式(I)で定義された任意の基であり得る。規定されるR1〜R6の各々は、水素、アルキル、置換アルキル、ヒドロキシル、ヒドロアルキル、アミン、アミド、ハロゲン、ヘテロ原子などから独立して選択され得る。好適なアルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルなどを含む。好適なハロゲンは、例えば、臭素、塩素、フッ素などを含む。好適なヘテロ原子は、例えば、硫黄、ケイ素、又は窒素を含む。式VIIにおいて、Xは、例えば、硫黄、ケイ素、窒素、フルオロ又はブロモ置換であり得る。式VI、VII、及びVIIIで示されたものの環修飾、芳香族類縁体、及び芳香族ヘテロ環類縁体を含む9−シス−合成レチナール誘導体が、同様に意図される。
【0069】
合成レチナール誘導体はまた、修飾ポリエン鎖を有し得る。好適な誘導体は例えば、トランス/シスに固定された立体配置を有するもの、6s固定化類縁体を有するもの、並びにポリエン鎖中の修飾アレン、アルケン、アルキン、又はアルキレン基を有するものを含む。一の実施例において、当該誘導体は、以下の式IX:
【0070】
【化7】

【0071】
で表される11−シス−固定化類縁体である。
【0072】
Aは、上の式(I)で定義された任意の基であり得る。R3は、例えば、水素、メチル、又は他の低級アルカン若しくは分岐アルカンであり得る。nは0〜4であり得る。mプラスlは、1、2、又は3と等しい。
【0073】
一の実施形態において、合成レチナール誘導体は、以下の式X:
【0074】
【化8】

【0075】
[式中、nは1〜4であり得る]
で表される11−シス−固定化類縁体であり得る。Aは上の式(I)で定義された任意の基であり得る。
【0076】
合成レチナール誘導体は、9,11,13−トリ−シス−7−環レチニルエステル若しくはエーテル、11,13−ジ−シス−7−環レチニルエステル若しくはエーテル、11−シス−7−環レチニルエステル若しくはエーテル、又は9,11−ジ−シス−7−環レチニルエステル若しくはエーテルである。
【0077】
別の例において、合成レチナール誘導体は、式XIで表される6s−固定化類縁体である。Aは上の式(I)で定義された任意の基であり得る。R1及びR2は、水素、メチル、及び他の低級アルキル並びに置換低級アルキルから独立して選択され得る。R3は、示された位置のいずれかにおけるアルケン基から独立して選択され得る。
【0078】
【化9】

【0079】
合成レチナール誘導体は、9−シス−縮環誘導体、例えば、式XII〜XIVで示されたものであり得る。Aは上の式(I)で定義された任意の基であり得る。
【0080】
合成レチナール誘導体はまた、以下の式XV又はXVIのものであり得る。
【0081】
【化10】

【0082】
Aは、上の式(I)で定義された任意の基であり得る。R2〜R5、R7〜R14、R16及びR17の各々は存在しないか、又は水素、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ヒドロアルキル、アミン、アミド、ヘテロ原子などから独立して選択され得る。好適なアルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、置換アルキル(例えば、ヒドロキシル、ヒドロアルキル、アミン、アミドを有するアルキル)などを含む。好適な分岐アルキルは、例えば、イソプロピル、イソブチル、置換分岐アルキルなどであり得る。好適なハロゲンは、例えば、臭素、塩素、フッ素などを含む。好適なヘテロ原子は、例えば、硫黄、ケイ素、及びフルオロ又はブロモ置換を含む。好適な置換アルキル、及び置換分岐アルキルは、例えば、酸素、ヒドロキシル、窒素、アミド、アミン、ハロゲン、ヘテロ原子又は他の基で置換された、アルキル及び分岐アルキルを含む。n及びn1の各々は、1、2、若しくは3個のアルキル、アルケン、又はアルキレン基から独立して選択され得、但しn及びn1の合計は少なくとも1である。さらに、R3〜R4及び/又はR2〜R16は、炭素環中にアルケン基を含み得、この場合R17は存在しない。R10及びR13は、一緒になってシクロアルキル、例えば5、6、7、若しくは8員環のシクロアルキル又は置換シクロアルキル、例えば式IX、X、XII、XIII、及びXIVに示されるものを形成し得る。
【0083】
合成レチナール及び誘導体の製造方法は、例えば以下の参照文献中に開示されている:Anal.Biochem.272:232−42(1999);Angew.Chem.36:2089−93(1997);Biochemistry 14:3933−41(1975);Biochemistry 21:384−93(1982);Biochemistry 28:2732−39(1989);Biochemistry 33:408−16(1994);Biochemistry 35:6257−62(1996);Bioorganic Chemistry 27:372−82(1999);Biophys.Chem.56:31−39(1995);Biophys.J.56:1259−65(1989);Biophys.J.83:3460−69(2002);Chemistry 7:4198−204(2001);Chemistry(Europe)5:1172−75(1999);FEBS 158:1(1983);J.Am.Chem.Soc.104:3214−16(1982);J.Am.Chem.Soc.108:6077−78(1986);J.Am.Chem.Soc.109:6163(1987);J.Am.Chem.Soc.112:7779−82(1990);J.Am.Chem.Soc.119:5758−59(1997);J.Am.Chem.Soc.121:5803−04(1999);J.American Chem.Soc.123:10024−29(2001);J.American Chem.Soc.124:7294−302(2002);J.Biol.Chem.276:26148−53(2001);J.Biol Chem.277:42315−24(2004);J.Chem.Soc.−Perkin T.1:1773−77(1997);J.Chem.Soc.−Perkin T.1:2430−39(2001);J.Org.Chem.49:649−52(1984);J.Org.Chem.58:3533−37(1993);J.Physical Chemistry B 102:2787−806(1998);Lipids 8:558−65;Photochem.Photobiol.13:259−83(1986);Photochem.Photobiol.44:803−07(1986);Photochem.Photobiol.54:969−76(1991);Photochem.Photobiol.60:64−68(1994);Photochem.Photobiol.65:1047−55(1991);Photochem.Photobiol.70:111−15(2002);Photochem.Photobiol.76:606−615(2002);Proc.Natl Acad.Sci.USA 88:9412−16(1991);Proc.Natl Acad.Sci.USA 90:4072−76(1993);Proc.Natl Acad.Sci.USA 94:13442−47(1997);及びProc.R.Soc.Lond.Series B,Biol.Sci.233(1270):55−76(1988)(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0084】
レチニルエステルは、当技術分野で既知の方法によって、例えばレチノールとカルボン酸との酸触媒エステル化、酸ハロゲン化物とレチノールとの反応、レチニルエステルとカルボン酸とのトランスエステル化、一級ハロゲン化物とレチノイン酸のカルボン酸塩との反応、無水物とレチノールとの酸触媒反応などによって形成され得る。一の実施例において、レチニルエステルは、レチノールとカルボン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、又はリノール酸、コハク酸、フマル酸などとの酸触媒エステル化によって形成され得る。別の例において、レチニルエステルは、酸ハロゲン化物とレチノールとの反応によって形成され得る(例えば、Van Hooser et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,97:8623−28(2000)を参照)。好適な酸ハロゲン化物は、例えば、塩化アセチル、塩化パルミトイルなどを含む。
【0085】
レチニルエーテルは、当技術分野で既知の方法、例えばレチノールと一級ハロゲン化アルキルとの反応によって形成され得る。
【0086】
トランスレチノイドは、UV光への曝露によってシス−レチノイドへと異性化され得る。例えば、全トランス−レチナール、全トランス−レチノール、全トランスレチニルエステル、又は全トランス−レチノイン酸はそれぞれ、9−シス−レチナール、9−シス−レチノール、9−シス−レチニルエステル、又は9−シス−レチノイン酸へと異性化され得る。本明細書においてさらに記載されている通り、トランス−レチノイドは、例えば約365nmの波長を有するUV光への曝露によって、及びシス−レチノイドの分解を引き起こす、より短い波長の光が実質的に存在しない条件下において、9−シス−レチノイドへと異性化され得る。
【0087】
レチニルアセタール及びヘミアセタールは、例えば9−シス−及び11−シス−レチナールを、酸触媒の存在下で、アルコールで処理することによって調製され得る。反応の間に形成される水は、例えばAl23のモレキュラーシーブスによって除去される。
【0088】
レチニルオキシムは例えば、レチナールと、ヒドロキシルアミン、O−メチル−若しくはO−エチルヒドロキシルアミンなどとの反応によって製造され得る。
【0089】
合成レチナール誘導体は、実質的に純粋であり得、そしてそれは約5%未満、又は約1%未満、又は約0.1%未満の他のレチノイドを含む。合成レチナール誘導体の組み合わせが投与され得る。
【0090】
合成レチナール誘導体は、例えば経口、静脈内、筋肉内、又は局所的投与を含む、任意の好適な方法によって、眼へと送達され得る。局所投与の様式は、例えば、点眼剤、眼球内、若しくは眼周囲注射、又は制御放出薬物送達製剤、及び/又は装置を経由した送達を含み得る。眼周囲注射は通常、結膜又はテノン(tennon)(眼を覆う繊維組織)への合成レチナール誘導体の注射を含む。眼球内注射は通常、硝子体への合成レチナール誘導体の注射を含む。投与は、点眼剤又は経口投薬形態によって、非侵襲性であり得る。
【0091】
合成レチナール誘導体は、例えば眼への局所投与のための医薬組成物として、及び/又は静脈内、筋肉内、若しくは経口投与のための医薬組成物として製剤化され得る。
【0092】
合成レチナール誘導体は、薬学的に許容されるビヒクル、及び当技術分野で通常使用される技術を用いて、投与用に製剤化され得る。ビヒクルは、合成レチナール誘導体の溶解性に従って選択され得る。好適な医薬組成物は、例えば点眼剤、注射などによって、眼へと局所的に投与可能であるものを含む。点眼剤の場合において、当該製剤はまた、例えば眼科的に混合可能な薬剤、例えば等張化剤、例えば塩化ナトリウム、濃縮グリセリンなど;緩衝剤、例えばリン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど;界面活性剤、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80とも呼ばれる)、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水素化キャスターオイルなど;安定化剤、例えばクエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウムなど;保存剤、例えば塩化ベンザルコニウム、パラベンなど;及び他の成分を含み得る。保存剤は、例えば約0.001〜約1.0%重量/体積のレベルで使用され得る。当該製剤のpHは通常、眼科学的製剤に許容される範囲内、例えば約pH4〜8の範囲内である。
【0093】
好適な医薬組成物はまた、注射用に製剤化されたものを含む。例えば合成レチナール誘導体は、注射グレードの生理食塩水溶液で、注射可能リポソーム溶液の形態で、又は他の担体若しくはビヒクル中で提供され得る。眼球内、及び眼周囲注射は、当業者に既知であり、そして例えば、Ophthalmic Surgery:Principles of Practice,Ed.,G.L.Spaeth,W.B.Sanders Co.,Philadelphia,Pa.,U.S.A.,85−87ページ(1990)を含む、多くの刊行物に記載されている。
【0094】
合成レチナール誘導体はまた、持続放出製剤、及び/又は装置で、例えば徐放性ポリマーを含む組成物で投与され得る。合成レチナール誘導体は、早期放出から化合物を保護する担体(単数又は複数)を用いて、インプラント、及びマイクロカプセル化された送達系を含む制御放出製剤として製造され得る。生分解性、生体適合性ポリマーは、例えばポリ酸無水物、ポリグルコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、及びポリ乳酸・ポリグリコール酸共重合体(PLG)が使用され得る。
【0095】
好適な経口投与形態は、例えば、錠剤、丸薬、サシェ、又は硬性若しくは軟性ゼラチンカプセル、メチルセルロース又は消化管で容易に溶解される他の好適な物質を含む。例えば医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マウネシウムなどを含む、好適な無毒性の固体担体が使用され得る(例えば、Remington「Pharmaceutical Sciences」第17版,Gennaro(ed.),Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania(1985)を参照)。
【0096】
以下の実施例は、本発明の種々の態様の説明のためのみに提供され、そしていかなる場合においても、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0097】
6.実施例
結果
導入
【0098】
9−シス−R−Acを用いた、単回投与、及び長期間での月1回の投与計画の両方が、マウスの視覚機能における人工的発色団の増加の効果を評価するために使用された。使用された発色団は9−シス−R−Acであり、そしてそれは、代謝されて9−シス−レチナールへと変換されて、イソロドプシンを形成する(Batten,M.L.,et al.PLoS medicine 2,e333(2005))。20匹のマウスを、単回投与実験のために使用し(図1A、表1)、一方で210匹のマウスを、長期間での月1回処置のために使用した(図1A、1B、表1)。同様に、全トランス−R−Acをマウスへ強制給餌し(n=10)、そして長期間における効果を選択された分析によって評価した。
【0099】
略語
9−シス−R−Ac,9−シス−酢酸レチニル;A2E,N−レチニリデン−N−レチニルエタノールアミン;ERG,網膜電図;LRAT,レシチン:レチノールアシルトランスフェラーゼ;ROS,桿体外節;RPE,網膜色素上皮;RPE65,RPE−特異的65kDaタンパク質。
【0100】
実施例1.9−シス−R−Acを用いた、C57BL/6雌マウスの単回投与処置
48時間暗順応させた10か月齢のマウスを、単回投与量(約80mg/kg体重)の9−シス−R−Ac又は対照ビヒクルを用いて強制給餌させ、そして強力な照明に20分間曝露した(500cd・m-2、約90%のロドプシンが退色した)。次に、マウスを16時間暗順応させ、その後に種々の分析を行った(図1A)。処置マウス及び未処置マウスに対して行われたシングル・フラッシュERGにおいて、処置マウスの機能的a波及びb波振幅が、対照マウスにおける振幅と比較して増加することが示された(a波,P<0.01;データ未記載)。9−シス−レチナールが利用されてイソロドプシンを形成するか否かを調べるために、そしてリガンドとなっていないオプシンがどの程度マウスの眼中に存在するかを評価するために、処置群及び対照群のマウスから、免疫親和性クロマトグラフィーによって、ロドプシン、イソロドプシン、及びオプシンを精製した。ロドプシンの再生比率が、各々のフラクション中の精製タンパク質(280nmの吸光度)に対する、ロドプシン及びイソロドプシンの比によって計算され(498nmの吸光度)、そしてそれは、処置マウスの眼中において対照マウスよりも有意に高く、一方で精製タンパク質の全量は有意に異ならなかった(図2)。レチノイドが精製タンパク質から抽出されて、結合した発色団を同定したとき、有意な量の9−シス−レチナールが処置マウスの試料から検出され、そしてそのことは、9−シス−レチナールが使用されてオプシンを再生し、イソロドプシンを形成することを示唆している(データ未記載)。有意な量の9−シス−レチナールが、強力な光に曝露された眼中において、及び処置マウスにおいて検出され(図3A及び図3B)、一方で11−シス−レチナール、及び全トランス−レチニルエステルの量は、全マウス群において有意に影響されなかった(図3B及び3C)。これらの処置された、及び強い光に曝露されたマウスにおいて、RPEは同様に、レチナールの前駆体である有意な量の9−シス−レチニルエステルを貯蔵した(図3C)。非常に微量の9−シス−レチナールが、対照マウスの眼中、及び退色していない処置マウスの眼中において検出された(図3B及びC)。これらの結果は、野生型C57BL/6雌マウスにおいて、9−シス−R−Acは、そのエステルが代謝されて機能的である9−シス−レチナールを形成することを明確に示している。ロドプシンを再生するための11−シス−レチナールを産生する、機能的レチノイドサイクルの存在下においてでさえ、退色後に9−シス−レチナールはオプシンと結合する。退色されていない、又は退色された眼、及び暗順応された未処置マウスは、少量の遊離のオプシンを含有した。
【0101】
実施例2.C57BL/6雌マウスへの、9−シス−R−Acを用いた長期間処置
長期間試験(図1B及び1C)のために、C57BL/6雌マウスは、9−シス−R−Ac、全トランス−R−Ac、又は対照ビヒクルを用いて、毎月、6か月又は10か月の間強制給餌された。
【0102】
実施例3.シングル・フラッシュERG分析
9−シス−R−Ac処置後における桿体及び錐体媒介性光応答の効果を評価するために、マウスは非侵襲的ERG法によって調べられた。第一セットの分析が4か月齢、及び10か月齢で行われた。暗順応条件下、a波の振幅は、特に強いフラッシュ強度において加齢と共に減少し(C1対C0群、図4A、左上パネル)、一方でb波における変化はあまり明確ではなかった(図4A、右上パネル)。明順応条件下において、a波及びb波のいずれにおいても違いが観測されなかった(図4A、下パネル)。処置群及び未処置群が比較されたとき(N1対C1)、高フラッシュ強度において、明順応条件及び暗順応条件の両方において、明順応条件下のa波を除いて、a波又はb波に関して、微かな改善がN1群において観測された(p<0.01、一元配置ANOVA)(図4A、左下パネル)。
【0103】
第二セットの分析は、14か月齢で行われた。明順応条件及び暗順応条件のいずれにおいても、a波及びb波振幅において、対照群マウス(C2)と処置群のマウス(N2及びN3)との間で、有意な差異が見られなかった(図4B)。暗順応マウスにおけるa波最大応答から、感受性及び最大a波振幅が推定され、そしてこれらのパラメーターは、いずれにおいても有意な差異がないことが明らかとなった(データ未記載)。
【0104】
実施例4.暗順応における変化
退色後におけるEGR応答(暗順応)の回復は、強烈な一定の照明(500cd・m-2、約90%の退色したロドプシン)に3分間レチナールを曝露した後における、a波振幅を観測することによって測定された。9−シス−R−Acで処置されたマウス群において、対照マウス群と比較して、応答の回復は、10か月齢(N1 vs.C1、図5A)及び14か月齢(N2及びN3 vs.C2、図5B)の両方において有意に速かった(p<0.001、一元配置ANOVA)。各々の群の眼中におけるレチノイドの動力学が、3分間の退色後、60分間の暗順応の間の、4つの暗順応の時点(0、10、30、及び60分)において定量的に評価された。10か月齢において、処置群(N1)における11−シス−レチナールの再生レベルは、退色後60分において、対照群(C1)のものよりも有意に高かった(p<0.01)。しかしこれらの群間、及び14か月齢の処置マウスと未処置マウスとの間において、全トランス−レチナール、及び全トランス−レチニルエステルの動力学における有意な差異は存在しなかった。9−シス−レチナール及び9−シス−レチニルエステルのいずれも、未処置群の眼中に見られなかった(データ未記載)。
【0105】
実施例5.全トランス−R−Acの長期間投与の、視覚機能に対する効果
追加の対照実験において、マウスは、不活性異性体である全トランス−R−Acを10か月間強制給餌され(n=10)、そして14か月齢で評価された。ERG実験は、シングル・フラッシュERGのa波及びb波分析において、又は暗順応回復において(n=3)、対照(C2)と比較して、有意な差異を示さなかった。これらの結果は、ERGの効果が9−シス異性体に特異的であることを示した。
【0106】
実施例6 対照、及び9−シス−R−Ac処置マウスにおける、ロドプシン、A2E、及びレチノイド酸の分析
再生比(ロドプシン/オプシン)及び精製ロドプシンの全量は、対照群及び処置群のマウス間において、10か月齢及び14か月齢の両方で、有意な差異を示さなかった。14か月齢の処置群(N2及びN3)から回収された精製タンパク質の量は、対照マウス(C2)からのものよりも有意に少なく、一方で当該量は、10か月齢処置マウスにおいて非常に微かに低下した(N2対C3)(データ未記載)。
【0107】
9−シス−R−Acの長期間投与の安全性を評価するために、レチナールが自発的にA2Eへ凝集するため、A2Eの蓄積を測定した(図6A)(Mata,N.L.,Weng,J.&Travis,G.H.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 97,7154−7159(2000);Parish,C.A.,Hashimoto,M.,Nakanishi,K.,Dillon,J.&Sparrow,J.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 95,14609−14613(1998))。A2E及びイソA2Eは、処置マウス及び対照マウスにおいて、10か月齢及び14か月齢の両方で同様のレベルで検出された(図6B)。前処理対照において(C0、4か月齢)、A2E蓄積は検出可能レベル未満であった(図6B)。レチニルエステルを用いた長期間処置は、肝臓において、分裂促進性のレチノイン酸レベルの上昇をもたらし得るが、肝臓のレチノイド酸レベルは、全ての群において検出可能レベル未満であった(データ未掲載)。
【0108】
実施例7.9−シス−R−Ac処置マウスの網膜の管理(husbandry)及び形態
動物の毛及び皮膚の外観における活動性及び変化を毎週評価した。実験期間中、これらのパラメーターおいて、自然老化によるものを別として変化は観察されなかった。前処理時に評価されたマウスの体重は、対照群(C1〜2)と処置群(N1〜3)との間において有意な差異を示さなかった(データ未掲載)。
【0109】
光学顕微鏡検査は、10か月齢及び14か月齢である、ビヒクル処理された、9−シス−R−Ac処理された、又は全トランス−R−Ac処置されたマウス(n=2)の網膜において大きな異常を明らかとせず、そしてこれら2つの9−シス−R−Ac処置群の網膜は区別不能であった。桿体外節(ROS)の長さは、10か月齢及び14か月齢において、対照群及び処置群において同様であった(図7B、n=5)が、網膜組織構造が図7Aに示される、4か月齢のマウス(C0)のROSの長さと比較して有意に減少した。網膜の各々の主要層の厚さはまた、対照群と処置群との間で同様であった。網膜の外側及びRPE層のEM分析は、対照と処置マウスとの間で肉眼的差異がないことを明らかとした。RPEとROSとの間の接触面におけるより高い解像度はまた、異常性を示さなかった(データ未記載)。
【0110】
実施例8.9−シス−R−Ac投与を用いた、DNA発現特性における変化
DNAマイクロアレイ分析は、9−シス−R−Acを用いた長期間処置後における、遺伝子発現特性の起こり得る変化を記録するために使用された。NimbleGen System Incによって提供された37,364個の遺伝子アレイを使用して、眼、肝臓、及び腎臓における、mRNAの発現レベルが決定され、そして処置群(N2)と対照群(C2)との間で比較された。眼中において、9−シス−R−Ac処置は、290個の遺伝子の発現を2倍以上上昇させ、そして1057個超の遺伝子の発現を、0.5倍以下に減少させた(図8、表S1)。処置マウスの肝臓中において、7個の遺伝子発現のみが、2倍以上上昇し、そして20個の遺伝子発現のみが、0.5倍以下に抑制された(図8、表S2)。処置マウスの腎臓において、90個の遺伝子がそれらの発現を2倍以上増加され、そして3つの遺伝子がその発現を0.5倍以下に抑制された(図8、表S2)。それらの発現が眼中において影響される、光情報伝達特異的レチノイド処理及び機能分類遺伝子が、表S2に列挙される。トランスデューシン(Gt)、ロドプシンキナーゼ、グアニル酸シクラーゼ活性化タンパク質1、及びグアニル酸シクラーゼ活性化タンパク質2、グアニル酸シクラーゼ1、レチノールデヒドロゲナーゼ12、及びLRATは、免疫ブロット法で評価された全群において影響されなかった(データ未記載)。
【0111】
表1.9−シス−R−Ac処置の単回投与及び長期間投与試験における、実験的分析のために利用されたマウスの数
【0112】
【表1】

【0113】
考察
これらの試験において示されたように、マウスにおける暗順応の加齢関連性の低下は、人工的シス−レチノイド処理によって弱められる。この知見は、ロドプシンの再生の遅延に直接的に起因する、桿体媒介性暗順応の著しい緩徐化によって明らかとされる、ヒトの視覚における加齢関連性の衰退に関して同様である(Jackson,G.R.,Owsley,C.&McGwin,G.,Jr.Vision Research 39,3975−3982(1999))。2つの異なるタイプの試験がなされた。単回投与試験は、9-シス-レチノイドが眼へ入ることができることを明らかとし、そして第二セットの実験は、9−シス−R−Acの長期間投与が、老齢のマウスにおける網膜の劣化を有意に改善することを示した。
【0114】
単回投与実験
これらの実験は、9−シス−レチノイドが10か月齢のマウスの眼へ入るか否かを、及び視覚機能を改善するか否かを試験するために計画された。ERG応答は、加齢と共にある程度減少し、そして少量だが測定可能な量の遊離のオプシンがこれらの老齢マウス中に存在した。これらの処置マウスが強力な光に曝露され、そして18時間経過後に試験されたとき、9−シス−レチナールは眼へ入った。9−シス−レチナールの前駆体である9−シス−レチニルエステルは、これらのマウスの眼中において容易に検出可能であり、同様にロドプシン/オプシン比が改善された。
【0115】
9−シス−R−Acを用いた、マウスの長期間処置
単色光のフラッシュに対するERG応答は、9−シス−R−Acで6か月間処置された10か月齢マウスにおいて、油で処置された対照と比較して有意に改善された(図4A)。恐らく老齢マウスの衰弱によるマスキング効果のために、この治療的効果は、10か月間処置された14か月齢マウスにおいて大部分が消失した(図4B)。しかし、これらの老齢マウスは、暗順応に関連する有意な効果を示さなかった(図5B、N2、及びN3群)。全トランス−R−Acを用いた、14か月齢マウスへの長期間強制給餌が測定されたERGパラメーターにおいて効果を有しなかったことは驚くべきことではなく、なぜならば、当該発色団のシス体のみがオプシンと再結合できるからである(Palczewski,K.Annual review of biochemistry 75,743−767(2006);Filipek,S.,Stenkamp,R.E.,Teller,D.C.&Palczewski,K.Annu Rev Physiol 65,851−879(2003)中に概説されている)。したがって、全トランスレチノイドは、異性化が弱まった場合に、異性化反応のための基質を追加するのみであって、活性な発色団を補完することはない。重要なことに、捕えられているマウスは高ビタミンAの食餌で維持されており、従って、シス−レチノイドの観測される効果が既に全トランス−レチノイドの補足の上にある。
【0116】
長期間処置(6〜10か月)は、C57BL/6雌マウスによって十分に許容された。網膜における加齢関連性の検出可能な形態学的変化は処置マウス及び対照マウスの両方で観察されたが、処置によって影響されなかった。レチノイド処理の潜在的な毒性副生物であるA2E及びレチノイン酸は、これらのマウス中で蓄積されなかった。これらの試験において、9−シス−R−Acは網膜中の遊離のオプシンへと組み込まれ、オプシン桿体色素の再生比率の増大をもたらした。しかし、生理学的光条件によって誘導された全トランス−レチナール量は、桿体色素量及び再生比率とは無関係に一定である。したがって、A2Eレベルが9−シス−R−Acの投与によって影響されなかったことは驚くべきことではない。よって一般的にレチノイドに起因する抗酸化特性からよりも、シス−レチノイドの補足の有益な効果は、この視点からの方が有利であると考えられる(Maxwell,S.&Greig,L.Expert opinion on pharmacotherapy 2,1737−1750(2001))。
【0117】
我々は、レチノイン酸の蓄積を全く検出しなかった。さらに、遺伝子発現の変化は、肝臓及び腎臓において最小である一方、幾つかのタンパク質は、眼中で制御されなかった。これらの遺伝子における我々の詳細な分析は、特定の発現パターンを全く明らかとしなかった。
【0118】
9−シス−レチノイドの予防的使用
ヒトは暗順応への能力を失い始め、そしてそれは30代〜40代で始まる(Jackson,G.R.,McGwin,G.,Jr.,Phillips,J.M.,Klein,R.&Owsley,C.Vision research 46,1422−1431(2006))。視覚機能の低下は、例えば夜間運転、及び暗い環境下での読書を行うための能力の減少によって機能的に明らかとされる(Schilling,O.K.&Wahl,H.W.Psychology and aging 21,703−714(2006))。かかる症状は年齢と共に衰弱するようになり、そして高齢者の独立性及び活動性の減少をもたらす。当該問題は、ヒトがより長く生存するにつれてより深刻となる。我々の実験結果は、経口性の9−シス−レチノイドが、長期間の予防薬として及び治療用化合物として有用であることを示している。
【0119】
9−シス−レチノイドの有益な効果及び相対的安全性は、米国及び欧州における法的盲の主因である加齢関連性黄斑変性に及ぶ(Zack,D.J.,et al.Mol Vis 5,30(1999))。加齢と共に生じる、視覚サイクルにおける生化学的変化、すなわち遊離のオプシンの増大及びオプシン/ロドプシン比率の増大が存在することを、本明細書において我々は示した。かかる生化学的変化が過剰であるとき、それらは例えばLCAに見られる網膜変性をもたらし得る(Fan,J.,Woodruff,MX.,Cilluffo,M.C.,Crouch,R.K.&Fain,G.L.J Physiol 568,83−95(2005))。さらに遊離のオプシンは、桿体光受容器における視覚カスケードの自発的開始をもたらす(Lisman,J.&Fain,G.Nat Med 1,1254−1255(1995);Fain,G.L.,Matthews,H.R.,Cornwall,M.C.&Koutalos,Y.Physiol Rev 81,117−151(2001);Surya,A.,Foster,K.W.&Knox,B.E.J Biol Chem 270,5024−5031(1995);Hofmann,K.P.,Pulvermuller,A.,Buczylko,J.,Van Hooser,P.&Palczewski,K.J Biol Chem 267,15701−15706(1992);Palczewski,K.,et al.Biochemistry 33,13741−13750(1994);Jager,S.,Palczewski,K.&Hofmann,K.P.Biochemistry 35,2901−2908(1996))。これは、視覚系におけるシグナル対ノイズ比の減少、RPEにおける代謝的過負荷の増大をもたらし、そしてそれは、より多くの老廃物、フリーラジカル、及び最終的にドルーゼンの形成をもたらす。したがって、9−シス−レチノイド治療を用いた遊離のオプシンの減少は、AMDを開始すると考えられている前駆体の減少をもたらすだろう。
【0120】
メソッド
動物
Charles River Laboratoriesから得られた、有色素の、年齢をマッチさせたC57BL/6雌マウスは、完全な暗室中で、又は12時間の明/暗サイクルで、正常食で維持された。全動物実験は、ワシントン大学、及びケースウエスタンリザーブ大学動物保護委員会(Animal Care Committee)によって承認され、そして米国獣医師会・安楽死に関する委員会(American Veterinary Medical Association Panel on Euthanasia)及びAssociation of Research for Vision and Ophthalmologyの推奨に準拠した手順を利用した。
【0121】
9−シス−R−Acを用いた、マウスへの単回投与及び長期間処置
9−シス−R−Acを、先に記載した通りに製造した(Batten,M.L.,et al.PLoS medicine 2,e333(2005);Batten,M.L.,et al.J Biol Chem 279,10422−10432(2004))。約80mg/kg体重の9−シス−R−Acの150μl植物油液を、各々の処置動物へと強制給餌で投与した。単回投与実験に先立って(図1A、表1)、10か月齢のマウスを48時間超暗順応し、9−シス−R−Ac又はビヒクル対照溶液を強制給餌させ、1時間退色させ、500cd・m-2の光に20分間曝露し、分析前に16時間暗順応させた。
【0122】
長期間試験(図1B及び図1C、表1)のために、3か月齢のマウスを得、そして4か月齢まで成長させて実験を開始した。その後、マウスに9−シス−R−Ac又はビヒクル溶液を月に1回、異なる継続期間で強制給餌させた。マウスの6つの群を試験した(図1B)。最初の3つの群(C0、C1、及びC2、各々の群について、全体でn=35)を対照として処置し、そして4、10、及び14か月齢で試験した。他の3つの群(N1、N2、及びN3、n=35)に、9−シス−R−Acを強制給餌させた。N1群は6か月間強制給餌し、そして10か月齢で試験した。N2群は、9−シス−R−Acを10か月間強制給餌し、そして14か月齢で試験した。N3群は、10か月齢までビヒクルを強制給餌し、その後、14か月齢で試験するまで、毎月9−シス−R−Acを摂取した。図1Bにおいて示されていない別の対照群において、10匹のマウスに約80mg/kg体重の全トランス−R−Ac(Sigma−Aldrich,Corp.)を10か月間強制給餌させ、そして14か月齢で試験した。
【0123】
9−シス−R−Ac、全トランス−R−Ac、又はビヒクルのいずれかを最後に強制給餌させてから2週間後、48時間暗順応させたマウス群について、光への曝露の後における暗順応の回復、精製された眼中のロドプシン/オプシン及びレチノイド、及び網膜の形態を分析した(図1C;メソッド)。マウスを500cd・m-2の強度の光に曝露し、約90%のロドプシンを退色させ、麻酔し、そしてERGによって1時間観測して、暗順応の回復を評価した。ロドプシンを精製し、そしてロドプシン/オプシン比を決定した。同量の光に曝露して、0、10、30及び60分後に除去された、切開した眼でレチノイド分析を行った。網膜の形態を評価するために使用されたマウスは、分析前において光退色に曝露されなかった。
【0124】
網膜電図(ERG)
麻酔されたマウスのERGを先に報告された通りに記録した24,39
【0125】
ロドプシンの精製
ロドプシンの精製を、先に記載された通りに暗赤色灯下で行った(Zhu,L.,et al.J Biol Chem 279,53828−53839(2004))。精製された抗ロドプシンC末端抗体1D4(MacKenzie,D.,Arendt,A.,Hargrave,P.,McDowell,J.H.&Molday,R.S.Biochemistry 23,6544−6549(1984))を、CNBr活性化セファロース4B上に固定化し、そして4.6×12mmカラムに、2mgの1D4抗体/mlのセファロースビーズを詰めた。グラス・トゥ・グラスホモジナイザー(glass−to−glass homogenizer)を用いて、マウスの全眼球を137mM NaCl、5.4mM Na2HPO4、2.7 mM KCl及び1.8mM KH2PO4(pH7.5)中に均質化した。上清中の可溶性タンパク質を、遠心分離により、14,000×g、5分間で除去し、そして500mM NaCl含有、10mMビス−トリスプロパン(pH7.5)中、1%ドデシル−β−マルトシドを含有する緩衝液中に沈殿物を溶解した。当該上清中を、遠心分離により125,000×g、20分間で透明にし、そして抗体1D4を詰めた免疫親和性カラムにロードし、その後500mM NaCl及び0.1%ドデシル−β−マルトシドを含有する、10mMビス−トリスプロパン(pH7.5)を用いて、0.5ml/分の流速で十分に洗浄した。精製されたマウスロドプシンを、100μMのノナペプチド(TETSQVAPA)の、500mM NaCl及び0.1%ドデシル−β−マルトシドを含有する10mMビス−トリスプロパン(pH7.5)液で、室温にて溶出した。精製されたロドプシンの濃度を500nmで決定し、そしてオプシン及びロドプシンの全量を、280nmにて、Hewlett−Packardの8452A紫外線可視分光光度計を用いて決定した(Palczewski,K.,Carruth,M.E.,Adamus,G.,McDowell,J.H.&Hargrave,P.A.Vision research 30,1129−1137(1990))。
【0126】
レチノイドの分析
レチノイドの抽出、誘導化、及び分離に関する全ての実験手順を、先に記載された通り、Kodak No.1安全灯フィルター(透過率>560nm)によって提供される暗赤色灯下で行った(Van Hooser,J.P.,et al.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 97,8623−8628(2000);Van Hooser,J.P.,et al.J Biol Chem 277,19173−19182(2002);Maeda,A.,et al.J Biol Chem 280,18822−18832(2005);Van Hooser,J.P.,Garwin,G.G.&Saari,J.C.Methods Enzymol 316,565−575(2000))。6匹のマウスの眼からの、精製ロドプシンの溶出フラクションを合わせ(全量3.0ml)、そして等量の100%メタノールと混合した。当該混合物をボルテックスにかけ、そして氷上で15分間インキュベートした。等量の100%ヘキサンを用いて(全量で6ml)2回抽出した。合わせた抽出物をアルゴン下で乾燥し、そしてレチノイドを順相HPLC(Beckman,Ultrasphere−Si,5μm,4.6×250mm)にて、10%酢酸エチル、及び90%ヘキサンで、流速1.4ml/分にて分離し、ダイオードアレイ検出器及びHP Chemstation A.03.03ソウトウェアを備えたHP1100HPLCによって325nmで検出した。A2Eを先に記載した通りに分析した(Maeda,A.,et al.J Biol Chem 280,18822−18832(2005))。
【0127】
肝臓内のレチノイン酸の分析を、以前に記載された通りに(Batten,M.L.,et al.PLoS medicine 2,e333(2005))、Agilent 1100HPLCによって、2本直列順相カラム:Varian Microsorb Silica 3μm,4.6×100mm(Varian,Palo Alto,CA)及びUltrasphere−Si,5μm,4.6×250mmカラムを用いて行った。ヘキサン:2−プロパノール:氷酢酸=1000:4.3:0.675(v/v)の定組成溶媒系を、流速1ml/分、20℃にて使用して、355nmで検出した。Sigma−Aldrichから購入した全トランス−RA及び9−シス−RAを標準として用いてキャリブレーションを行った。
【0128】
免疫ブロット
タンパク質を吸着させるためにImmobilon−P(ポリビニリデンジフルオリド;Millipore Corp.)を使用して、標準的なプロトコルに従って免疫ブロットを行った。モノクローナル抗ロドプシン抗体(1D4)は、Dr.R.Moldayによって提供された。抗LRAT(mAb)(Moise,A.R.,Golczak,M.,Imanishi,Y.&Palczewski,K.J Biol Chem(2006))、抗トランスデューシン(Gt)(mAb)(未公開)、抗グアニル酸シクラーゼ1(1S4,mAb);Haire,S.E.,et al.Investigative ophthalmology & visual science 47,3745−3753(2006))、抗グアニル酸シクラーゼ活性化タンパク質1(UW14pAb)(Gorczyca,W.A.,et al.J Biol Chem 270,22029−22036(1995))、抗グアニル酸シクラーゼ活性化タンパク質2(UW50pAb)(Otto−Bruc,A.,et al.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 94,4727−4732(1997))、抗ロドプシンキナーゼ(Zhao,X.,Huang,J.,Khani,S.C.&Palczewski,K.J Biol Chem 273,5124−5131(1998))、及び抗レチノールデヒドロゲナーゼ12(pAb)(Maeda,A.,et al.J Biol Chem 281,37697−37704(2006))は、我々の研究室で製造された。アルカリホスファターゼ複合化ヤギ抗マウス抗体IgG、又はヤギ抗ウサギIgG(Promega)を二次抗体として使用した。タンパク質のバンドは、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム発色基質(Promega)を用いて視覚化された。タンパク質(各々のウェルあたり30μg)を、12.5%SDS−PAGEによって分離した。
【0129】
網膜の形態
光学顕微鏡検査のために、マウスの眼杯を、2.5%グルタルアルデヒド及び1.6%パラホルムアルデヒドの、2%スクロース含有0.08M 1,4−ピペラジンジエタンスルホネート緩衝液(PIPES)(pH7.4)を用いて、約1時間室温で、その後23時間4℃で固定化した。眼杯をその後、0.13Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3)を用いて洗浄し、そしてメタノール系を通じて脱水し、そしてJB4グリコールメタクリレート中に包埋した。切片(6μm)を、5%Richardson染色剤中の浸漬によって、1.5〜2分間室温で染色し、そして0.13Mリン酸ナトリウム(pH7.3)中で、網膜層が光学顕微鏡で視認可能となるまで脱染した(約8〜15分)。透過電子顕微鏡検査のために、マウスの眼杯を以前に記載された通りに分析した(Maeda,A.,et al.J Biol Chem 280,18822−18832(2005);Maeda,T.,Lem,J.,Palczewski,K.&Haeseleer,F.Investigative ophthalmology & visual science 46,4320−4327(2005))。
【0130】
DNAマイクロアレイ分析
RiboPureキット(Ambion,Austin,TX)を用いて、C2及びN2マウス群(図1B)からの、10個の眼、100mgの肝臓、又は100mgの腎臓からRNAを単離した。当該調製物の質は、RNAアガロースゲル電気泳動及びAgilent Bioanalyzerによって確認された。異なる組織から単離された、及び種々の処置を受けているマウスから単離された全RNAのアリコートは、検出可能に標識化され、そしてNimbleGen System Inc.(Madison,WI)により提供されるサービスを使用して、マウスゲノムマイクロアレイ上にハイブリダイズされた。1個の遺伝子あたり最小で11個のプローブを用いて、カリフォルニア大学サンタクルーズ校データベース(build HG17)によって示される通り、当該マイクロアレイは37,364個の遺伝子を含有し、そして全マウス・トランスクリプトームの範囲に及んだ。遺伝子発現は、プローブシグナルに従って正規化され、そして各々の遺伝子の平均シグナルは、各々の試料複製物に関して正規化された。
【0131】
全試験を通じた試料に関するアレイデータは、ゲノムデータの分析及び包括のための、Bioconductorオープン・ソース、及びオープン・ディベロップメント・ソフトウェア・プロジェクトに含まれる、データ分析パッケージのロバストマルチチップ分析特性を行う、NimbleGen Systems Inc.(Madison,WI)によって正規化された。ロバストマルチチップ分析結果のプロジェクト・ワイドなスプレッドシートをMICROSOFT(登録商標)EXEL(登録商標)へエクスポートし、そして一つの対照と一つの処置試料を含む、全ての可能な一対比較に関して発現レベル比率を計算した。これらの対の比率は、Microsoft Accessへインポートされ、そして遺伝子発現における信用できる倍率変化を調べた。2倍以上の増加又は0.5倍以下の減少による変化は、有意であると考えられた。異なった形で発現された遺伝子はその後、AccessからExcelファイルとしてエキスポートされ、そしてLucidyx LLCのLUCIDYX SEARCHER(商標)ソフトウェアによって機能予測された。
【0132】
統計分析
一元配置分散分析(ANOVA)によって統計分析を行った。
【0133】
先の実施例は、説明のために提供されるが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定するものではない。本発明の他の改良は、当業者に容易に明確であり、そして特許請求の範囲に含まれる。
【0134】
本明細書中に引用された全ての刊行物、特許、特許出願及び他の参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における加齢関連性網膜機能不全を治療又は予防するための方法であって、前記対象へ、医薬として有効な量の合成レチナール誘導体を投与することを含み、前記合成レチナール誘導体が、前記対象へ少なくとも3か月間投与される、前記方法。
【請求項2】
前記合成レチナール誘導体が、前記対象へ少なくとも6か月間投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成レチナール誘導体が、前記対象へ約2週間に1回〜約6週間に1回、少なくとも6か月間投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記合成レチナール誘導体が、前記対象へ約1か月に1回、約6か月〜約10か月間投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記合成レチナール誘導体が、国際特許出願PCT/US2005/021812号(国際公開第2006/002097号)に開示された、式I〜XVIのいずれか一つの化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
(a)前記合成レチナール誘導体が、9−シス−レチニルエステル、及び/又は11−シス−レチニルエステルであり;そして
(b)前記合成レチナール誘導体のエステル置換基が、C1−C10モノカルボン酸、又はC2−C22ポリカルボン酸のカルボキシレート基を含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記エステル置換基が、C3−C10のポリカルボン酸のカルボキシレート基を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記合成レチナール誘導体が:9−シス−酢酸レチニル、9−シス−コハク酸レチニル、9−シス−クエン酸レチニル、9−シス−ケトグルタル酸レチニル、9−シス−フマル酸レチニル、9−シス−リンゴ酸レチニル、及び9−シス−オキサロ酢酸レチニルから成る群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記合成レチナール誘導体が9−シス−酢酸レチニルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記合成レチナール誘導体が:11−シス−酢酸レチニル、11−シス−コハク酸レチニル、11−シス−クエン酸レチニル、11−シス−ケトグルタル酸レチニル、11−シス−フマル酸レチニル、11−シス−リンゴ酸レチニル、及び11−シス−オキサロ酢酸レチニルから成る群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記合成レチナール誘導体が11−シス−酢酸レチニルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加齢関連性網膜機能不全が、1つ以上の以下の臨床症状:光への曝露後における、桿体媒介性暗順応の機能障害、暗視における機能障害、対比感度における機能障害、及び加齢関連性黄斑変性(AMD)によって明示される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記対象が哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物がヒトである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記合成レチナール誘導体が強制給餌で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記合成レチナール誘導体が、約0.01〜約10mg/kg体重の用量で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記合成レチナール誘導体が経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記合成レチナール誘導体が前記対象の眼へと局所投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記合成レチナール誘導体が、点眼剤、眼球内注射可能な溶液、又は眼周囲注射可能な溶液で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記合成レチナール誘導体が、国際特許出願PCT/US2005/021812号(国際公開第2004/082622号)に開示された、式I〜XIIのいずれか一つの化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記合成レチナール誘導体が、1日に1回未満投与され、そして1回あたりの投与量が有効1日投与量よりも多い、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記合成レチナール誘導体が、約1日に1回、若しくは1日おきに1回;約1週間に4回、1週間に3回、若しくは1週間に2回;又は約2、3、4、5、6、7、8、若しくは9週間ごとに1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
哺乳動物におけるロドプシンの再生比率を改善する方法であって、前記哺乳動物へ、医薬として有効な量の合成レチナール誘導体を投与することを含み、前記合成レチナール誘導体が、前記哺乳動物へ少なくとも3か月間投与される、前記方法。
【請求項24】
前記合成レチナール誘導体が、前記対象へ少なくとも6か月間投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記合成レチナール誘導体が、前記対象へ、約2週間に1回〜約6週間に1回、少なくとも6か月間投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記レチナール誘導体が、前記対象へ約1か月に1回、約6〜約10か月間投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記合成レチナール誘導体が、国際特許出願PCT/US2005/021812号(国際公開第2006/002097号)に開示された、式I〜XVIのいずれか一つの化合物である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
(a)前記合成レチナール誘導体が、9−シス−レチニルエステル、及び/又は11−シス−レチニルエステルであり;そして
(b)前記合成レチナール誘導体のエステル置換基が、C1−C10モノカルボン酸、又はC2−C22ポリカルボン酸のカルボキシレート基を含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記エステル置換基が、C3−C10のポリカルボン酸のカルボキシレート基を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記合成レチナール誘導体が:9−シス−酢酸レチニル、9−シス−コハク酸レチニル、9−シス−クエン酸レチニル、9−シス−ケトグルタル酸レチニル、9−シス−フマル酸レチニル、9−シス−リンゴ酸レチニル、及び9−シス−オキサロ酢酸レチニルから成る群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記合成レチナール誘導体が9−シス−酢酸レチニルである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記合成レチナール誘導体が:11−シス−酢酸レチニル、11−シス−コハク酸レチニル、11−シス−クエン酸レチニル、11−シス−ケトグルタル酸レチニル、11−シス−フマル酸レチニル、11−シス−リンゴ酸レチニル、及び11−シス−オキサロ酢酸レチニルから成る群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記合成レチナール誘導体が11−シス−酢酸レチニルである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記加齢関連性網膜機能不全が、1つ以上の以下の臨床症状:光への曝露後における、桿体媒介性暗順応の機能障害、暗視における機能障害、対比感度における機能障害、及び加齢関連性黄斑変性(AMD)によって明示される、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が哺乳動物である、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
前記哺乳動物がヒトである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記合成レチナール誘導体が強制給餌で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
前記合成レチナール誘導体が、約0.01〜約10mg/kg体重の用量で投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記合成レチナール誘導体が経口投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項40】
前記合成レチナール誘導体が前記対象の眼へと局所投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項41】
前記合成レチナール誘導体が、点眼剤、眼球内注射可能な溶液、又は眼周囲注射可能な溶液で投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記合成レチナール誘導体が、国際特許出願PCT/US2005/021812号(国際公開第2004/082622号)に開示された、式I〜XIIのいずれか一つの化合物である、請求項23に記載の方法。
【請求項43】
前記合成レチナール誘導体が、1日に1回未満投与され、そして1回あたりの投与量が有効1日投与量よりも多い、請求項23に記載の方法。
【請求項44】
前記合成レチナール誘導体が、約1日に1回、若しくは1日おきに1回;約1週間に4回、1週間に3回、若しくは1週間に2回;又は約2、3、4、5、6、7、8、若しくは9週間ごとに1回投与される、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−511789(P2011−511789A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545893(P2010−545893)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/000824
【国際公開番号】WO2009/102418
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(502457803)ユニヴァーシティ オブ ワシントン (93)
【Fターム(参考)】