説明

劣化判定方法及び劣化判定装置

【課題】高分子材料膜の劣化程度の判定において、高分子材料膜が膜式流量計などの機器に設置されたままの状態で、かつ、比較的簡便な装置構成で判定する。
【解決手段】劣化程度の判定対象である高分子材料膜11の温度を調整する温度調整工程と、温度調整工程において温度調整された高分子材料膜11の電気的特性を計測する計測工程と、計測工程において計測された電気的特性からガラス転移温度を導出して、ガラス転移温度に基づいて高分子材料膜の劣化程度を判定する判定工程とを実行する高分子材料膜11の劣化判定方法であって、計測工程において高分子材料膜11の厚さ方向の電気的特性を計測し、計測された厚さ方向の電気的特性から判定工程において高分子材料膜11の劣化程度を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化程度の判定対象である高分子材料膜の温度を調整する温度調整工程と、温度調整工程において温度調整された高分子材料膜の電気的特性を計測する計測工程と、計測工程において計測された電気的特性からガラス転移温度を導出して、ガラス転移温度に基づいて高分子材料膜の劣化程度を判定する判定工程とを実行する高分子材料膜の劣化判定方法及び劣化判定装置に関し、特に、高分子材料膜が機器に設置されたままの状態で、かつ、比較的簡便な装置構成で劣化程度の判定が可能な高分子材料膜の劣化判定方法及び劣化判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料の劣化判定としては、従来、例えば、膜式流量計などの機器に設置された高分子材料膜の一部を試験片として切り出し、この試験片を検査することにより劣化程度を判定するものがある。具体的には、高分子材料膜を切り出した試験片の長手方向に正弦波の応力を加え、このときの動的粘弾性特性の変化から当該試験片の劣化程度を温度と時間との関数として予め求めておき、この高分子材料膜と同一の材料について、同様に切り出した使用後の試験片に応力を加え、この試験片の動的粘弾性特性と予め求めた動的粘弾性特性とを比較し、劣化程度を判定するものがある。なお、動的粘弾性特性として、損失正接tanδ(動的弾性率E1に対する損失弾性率E2の比(E2/E1))が用いられている。
また、機器に設けられた高分子材料を試験片として切り出すことなく、当該機器に設置されたままの状態で、劣化程度を判定するものがある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示の技術では、当該高分子材料の一部分を赤外線レーザによりガラス転移点まで加熱し、当該加熱された一部分の熱膨張率の変曲点からガラス転移温度を求め、当該ガラス転移温度の高温側への変化度合いにより高分子材料の劣化程度を判定することができる。
これら技術によれば、継時的要因による高分子材料の劣化程度を判定して、当該高分子材料の交換等を的確に行うことができるとされる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−090765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記高分子材料の劣化程度の判定を用いても、例えば、膜式流量計の膜部に設置された高分子材料膜の劣化程度を、当該機器に設置された状態のままで(すなわち、非破壊で)、かつ、比較的簡便な装置構成で判定することはできなかった。
すなわち、上記高分子材料の劣化程度の判定では、例えば、膜式流量計の膜部に設置された状態の高分子材料膜を切り出した試験片を判定対象とするため、当該高分子材料膜が膜式流量計の膜部に設置された状態で劣化程度の判定を行うことはできないという問題があった。特に、この判定の際には、少なからず高分子材料膜の破壊を伴うため、当該高分子材料膜の判定の結果、劣化の程度が進んでおらず再使用可能と判定されても実際に再使用することはできなかった。
また、特許文献1に開示の高分子材料の劣化程度の判定では、当該高分子材料を機器に設置したままの状態で劣化程度の判定ができるものの、高分子材料を加熱するために用いる赤外線レーザの発生装置や制御装置などが必要となり比較的装置の大型化を伴うため、簡便に劣化程度の判定を行うことは困難であるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、高分子材料膜の劣化程度の判定において、当該高分子材料膜が膜式流量計などの機器に設置されたままの状態で、かつ、比較的簡便な装置構成で当該高分子材料膜の劣化程度の判定が可能な点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る、劣化程度の判定対象である高分子材料膜の温度を調整する温度調整工程と、前記温度調整工程において温度調整された前記高分子材料膜の電気的特性を計測する計測工程と、当該計測工程において計測された前記電気的特性からガラス転移温度を導出して、当該ガラス転移温度に基づいて前記高分子材料膜の劣化程度を判定する判定工程とを実行する高分子材料膜の劣化判定方法の特徴手段は、
前記計測工程において前記高分子材料膜の厚さ方向の電気的特性を計測し、計測された前記厚さ方向の電気的特性から前記判定工程において前記高分子材料膜の劣化程度を判定する点にある。
【0007】
上記特徴手段によれば、温度調整された高分子材料膜の電気的特性からガラス転移温度を導出して、当該ガラス転移温度に基づいて劣化程度を判定する際に、当該高分子材料膜の厚さ方向の電気的特性を計測するので、機器に設置されたままの状態であっても劣化程度の判定が容易にできるとともに、比較的簡便な装置構成とすることができる。すなわち、高分子材料膜の試験片を切り出して劣化程度の判定を行う必要がない。また、判定結果が、劣化程度が比較的進んでおらず再使用可能であるとするものであれば、当該判定対象の高分子材料膜を継続して再使用することができる。
【0008】
本発明に係る劣化判定方法の更なる特徴手段は、前記劣化程度の判定対象である高分子材料膜が、膜の中心側部位に設けられた膜板により当該膜の中心側部位が位置保持されるとともに、前記膜の周縁部位が計量室を形成するケーシングと整膜板とに挟持固定され、前記計量室へのガスの給排により膨張収縮を繰り返す往復運動をする膜式流量計の膜部に使用される膜である点にある。
【0009】
本特徴手段によれば、判定対象となる高分子材料膜が、膜式流量計の膜部に使用され当該膜部に位置保持及び挟持固定される膜であっても、当該高分子材料膜の厚さ方向で電気的特性の計測を行うことにより、当該高分子材料膜を膜式流量計に設置したままの状態で劣化程度の判定を比較的簡便に行うことができる。すなわち、膜式流量計の膜部に設置された高分子材料膜の試験片を切り出して劣化程度の判定を行う必要がない。また、判定結果が、劣化程度が比較的進んでおらず再使用可能であるとするものであれば、当該膜式流量計の膜部に設置された高分子材料膜を継続して再使用することができる。
【0010】
本発明に係る劣化判定方法の更なる特徴手段は、前記計測工程において、前記膜板による前記膜の位置保持を維持しつつ、前記ケーシングと整膜板とによる前記膜の挟持固定を解除した状態で、前記膜の周縁部位における一方の面と他方の面に電極部材を接触させ、当該膜の厚さ方向の電気的特性を計測する点にある。
【0011】
本特徴手段によれば、計測工程において、膜式流量計の膜部に使用される高分子材料膜の中心側部位に膜板により位置保持が維持されるので、当該膜式流量計に高分子材料膜が設置された状態となる。しかもこの状態で、高分子材料膜の周縁部位の挟持固定が解除されるので、この周縁部位を、例えば持ち上げることにより、高分子材料膜の一方の面と他方の面とのそれぞれに確実に電極部材を接触させることができ、当該高分子材料膜の厚さ方向の電気的特性を容易に計測することができる。
【0012】
本発明に係る劣化判定方法の更なる特徴手段は、前記電気的特性が、前記高分子材料膜の誘電正接又は絶縁抵抗である点にある。
【0013】
本特徴手段によれば、電気的特性として誘電正接又は絶縁抵抗を用いるので、高分子材料膜のガラス転移温度を正確に得ることができ、このガラス転移温度の継時的な変化により劣化程度を正確に判定することができる。なお、誘電正接とは、高分子材料膜に高周波交流電圧Eを印加した場合に、高分子材料膜に流れる電流Icに対するエネルギ損失Irの割合(Ir/Ic=tanδ)をいい、また、絶縁抵抗とは、高分子材料膜に直流電圧Dを印加した場合に、高分子材料膜に流れる電流Idに対する直流電圧Dの割合(D/Id)をいう。
【0014】
本発明に係る劣化判定方法の更なる特徴手段は、前記高分子材料膜が、繊維状の基材に高分子材料が含浸されてなる高分子材料膜である点にある。
【0015】
高分子材料膜が、繊維状の基材に高分子材料が含浸されてなる高分子材料膜である場合において、当該高分子材料膜の平面方向の動的粘弾性特性を用いて劣化程度を判定した際には、当該平面方向の応力に対する基材と高分子材料との動的粘弾性特性は異なるものとなり、劣化程度の判定結果にばらつきが生じやすい。したがって、この動的粘弾性特性から複合材料である高分子材料の劣化程度を正確に判定することは困難を伴うが、このような場合であっても、本特徴手段によれば、上記のように高分子材料膜の厚さ方向の電気的特性を用いて劣化程度を判定すると、複合材料による影響が少なく比較的正確、かつ簡便に劣化程度を判定することができる。
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係る、劣化程度の判定対象である高分子材料膜の温度を調整する温度調整手段と、前記温度調整手段において温度調整された前記高分子材料膜の電気的特性を計測する計測手段と、前記計測手段から出力された前記電気的特性からガラス転移温度を導出して、当該ガラス転移温度に基づいて前記高分子材料膜の劣化程度を判定する判定手段とを備えた高分子材料膜の劣化判定装置の特徴構成は、
前記計測手段として、前記高分子材料膜の厚さ方向の電気的特性を計測可能な一対の電極部材を備えた点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、温度調整された高分子材料膜の電気的特性からガラス転移温度を導出して、当該ガラス転移温度に基づいて劣化程度を判定する際に、一対の電極部材を用いて当該高分子材料膜の厚さ方向の電気的特性を計測するので、高分子材料膜の一方の面と他方の面とのそれぞれに確実に一対の電極部材を接触させることができ、機器に設置されたままの状態であっても当該厚さ方向の電気的特性を容易に計測して劣化程度の判定が容易にできるとともに、比較的簡便な装置構成とすることができる。すなわち、高分子材料膜の試験片を切り出して劣化程度の判定を行う必要がない。また、判定結果が、劣化程度が比較的進んでおらず再使用可能であるとするものであれば、当該判定対象の高分子材料膜を継続して再使用することができる。
【0018】
本発明に係る劣化判定装置の更なる特徴構成は、前記計測手段による前記電気的特性の計測結果を出力する出力手段を備えるとともに、予め求められた劣化判定指標を備え、前記判定手段が、前記出力手段により出力された前記高分子材料膜の厚さ方向の電気的特性から前記高分子材料膜の劣化程度を、前記劣化判定指標に基づいて判定する点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、出力手段により計測手段による計測結果が判定手段に入力されるので、当該計測結果である高分子材料膜の厚さ方向の電気的特性からガラス転移温度を導出して、当該ガラス転移温度と、予め求められている劣化判定指標とを比較することにより劣化程度を判定することができ、より正確な劣化程度の判定を容易に行うことができる。なお、劣化判定指標は、高分子材料膜のガラス転移温度と劣化程度との関係を予め設定しておくことで、ガラス転移温度から劣化程度を判定する指標として用いることができる。
【0020】
本発明に係る劣化判定装置の更なる特徴構成は、前記温度調整手段が、判定対象の前記高分子材料膜の一部を局所的に温度調整する温度調整機構を備えて構成される点にある。
【0021】
本特徴構成によれば、温度調整機構により高分子材料膜の一部の温度を、この高分子材料膜のガラス転移温度が含まれると考えられる所定範囲の温度付近となるまで局所的に調整することができる。これにより、必要十分な少ない熱量で高分子材料膜の温度を調整することができるとともに、電気的特性として、例えば、誘電正接や絶縁抵抗の変曲点から前記ガラス転移温度を導出し、当該ガラス転移温度を用いて高分子材料膜の劣化程度を確実に判定することができる。
【0022】
本発明に係る劣化判定装置の更なる特徴構成は、前記高分子材料膜が、繊維状の基材に高分子材料が含浸されてなる高分子材料膜である点にある。
【0023】
高分子材料膜が、繊維状の基材に高分子材料が含浸されてなる高分子材料膜である場合において、当該高分子材料膜の平面方向の動的粘弾性特性を計測して劣化程度を判定した際には、当該平面方向の応力に対する基材と高分子材料との動的粘弾性特性は異なるものとなり、劣化程度の判定結果にばらつきが生じやすい。したがって、この動的粘弾性特性から複合材料である高分子材料の劣化程度を正確に判定することは困難を伴うが、このような場合であっても、本特徴構成によれば、上記のように高分子材料膜の厚さ方向の電気的特性を計測して劣化程度を判定すると、複合材料による影響が少なく比較的正確、かつ簡便な装置構成で劣化程度の判定ができる。
【0024】
本発明に係る劣化判定装置の更なる特徴構成は、前記劣化程度の判定対象である高分子材料膜が、膜の中心側部位に設けられた膜板により当該膜の中心側部位が位置保持されるとともに、前記膜の周縁部位が計量室を形成するケーシングと整膜板とに挟持固定され、前記計量室へのガスの給排により膨張収縮を繰り返す往復運動をする膜式流量計の膜部に使用される膜である点にある。
【0025】
上記特徴構成によれば、膜式流量計の膜部に使用され当該膜部に位置保持及び挟持固定される膜であっても、例えば、高分子材料膜の中心側部位に膜板により位置保持を維持しつつ、高分子材料膜の周縁部位の挟持固定を解除して、この周縁部位を持ち上げることにより、高分子材料膜の厚さ方向の一方の面と他方の面とのそれぞれに確実に一対の電極部材を接触させることができ、膜式流量計に高分子材料膜を設置した状態のままで、当該高分子材料膜の厚さ方向の電気的特性を容易に計測することができる。この際には、膜式流量計の膜部に設置された高分子材料膜の試験片を切り出して電気的特性の計測を行う必要はない。また、判定結果が、劣化程度が比較的進んでおらず再使用可能であるとするものであれば、当該膜式流量計の膜部に設置された高分子材料膜を継続して再使用することができる。
【0026】
本発明に係る劣化判定装置の更なる特徴構成は、前記温度調整手段が、前記膜式流量計の全体を収納可能な調整室と、前記調整室内の温度を調整する温度調整機構とを備えて構成される点にある。
【0027】
本特徴構成によれば、膜式流量計の全体を調整室に収納し、温度調節機構により高分子材料膜の温度を、この高分子材料膜のガラス転移温度が含まれると考えられる所定範囲の温度付近となるまで調節することができ、電気的特性として、例えば、誘電正接や絶縁抵抗の変曲点から前記ガラス転移温度を導出し、当該ガラス転移温度を用いて高分子材料膜の劣化程度を確実に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
説明に際しては、先ず、膜式ガスメータ50(膜式流量計の一例)の構成、その動作原理等を説明した後、膜式ガスメータ50の膜部Mに使用される高分子材料膜の劣化程度を判定する本願の劣化判定装置100及び劣化判定方法に関して説明する。
【0029】
〔膜式ガスメータ〕
膜式ガスメータ50は、図1に示すように、ガス供給口1及びガス排出口2を備えたケーシングCを用いて組み付けて構成してあり、ガス供給口1及びガス排出口2により、住宅等のガス需要先にガスを供給するガス供給管(図示省略)の途中に接続して、ガス供給管を流れるガスの流量を計測して、ケーシングCの外部に設けた表示部3に計測したガス流量を表示するように構成してある。
【0030】
図2に示すように、膜式ガスメータ50は、計量室4へのガスの給排を制御する弁部V、計量室4へのガスの給排により往復運動する膜部M、その膜部Mの1往復で1回転するように、膜部Mにリンク機構Lにて連動連結された回転体R、その回転軸芯から径方向に離れた位置に位置して、膜部Mの往復動に伴って、その回転軸芯周りに回転するように設けられた磁石5、その磁石5が特定回転位相に回転したときに動作するリードスイッチ6、及び、そのリードスイッチ6からの信号と設定計測基準流量とに基づいて流量を求めると共に求めた流量を上述の表示部3に表示させるコントローラ(図示せず)を、ケーシングC内に組み付けて構成してある。
【0031】
ケーシングCは、図1、図3に示すように、下ケーシングC1及び上ケーシングC2から成る。周知であるので詳細な説明並びに図示は省略するが、上ケーシングC2内には、上述のコントローラの他に、膜式ガスメータ50に供給されるガス圧力を検出する圧力センサ、地震の震動を検出する感震器、及び、ガス供給遮断弁を設けて、前記圧力センサが異常圧力を検出したときや前記感震器が地震を検出したとき等、異常が発生したときに、上述のコントローラにより、前記ガス供給遮断弁を遮断制御すると共に、異常情報を前記表示部に表示するように構成してある。
図1において、7は、前記ガス供給遮断弁の遮断状態を解除するための復帰軸(図示せず)の操作部を覆う復帰軸キャップである。
【0032】
図2及び図3に示すように、下ケーシングC1は、その中央を仕切り壁8にて仕切り、その仕切り壁8の両側それぞれに仕切り壁8を底部とする概ね円筒形状の計量室形成用空間を備え、各計量室形成用空間の中央部を膜部Mにて仕切ると共に、各計量室形成用空間の開口部を蓋9にて閉じて、各膜部Mの両側夫々に計量室4を形成してある。即ち、膜部Mは一対設け、計量室4は4室形成してある。
【0033】
図2ないし図4に基づいて、膜部Mについて説明を加えると、膜部Mは、計量室4を形成する下ケーシングC1に枠状の整膜板10により周縁部位11aを挟持固定した状態で設けた高分子材料膜11と、その高分子材料膜11の両面夫々の中心側部位11bに位置保持した円形の膜板12にて構成してあり、外側の膜板12の中央には、丁番台13を設けてある。
【0034】
高分子材料膜11は、可撓性を有する材料にて円環状に形成してあり、例えば、繊維状の基材(基布材料)としてのナイロン、ポリエステル、テフロン(登録商標)等からなる繊維状の高分子材料に、アクリロニトリルブタジエン系ゴム、エチレンプロピレン系ゴム、クロロプレイン系ゴム、エピクロロヒドリン系ゴム、ブチル系ゴム、及びそれらのブレンドゴムなどの高分子材料が含浸して形成された高分子材料膜11で構成されている。
例えば、後述するとおり、膜式ガスメータ50の高分子材料膜11として、ポリエチレンテレフタレート(PET)が繊維状に形成された基材に、ニトリルブタジエンラバー(NBR)とエピクロロヒドリンゴムとの高分子材料を含浸させた高分子材料膜11が使用されており、このような構成の複合材料である高分子材料からなる高分子材料膜11を判定対象とする。なお、高分子材料膜11として、複合材料ではない単一の高分子材料からなる膜や基材が含まれない膜を用いることも当然に可能である。
【0035】
図2ないし図4に示すように、翼軸15を、その軸心を上下方向に向けて上端側を下ケーシングC1の上部壁に形成した穴に気密状に貫通させた状態で、回動自在に支承し、その翼軸15に翼16を支持してある。つまり、翼16を翼軸15により下ケーシングC1に揺動自在に支承してある。
更に詳細には、下ケーシングC1の上部壁の貫通部位には、図2及び図4に示すように、この部位に螺合される翼軸ボックス17が設けられており、このボックス17内を翼軸15が貫通する構成が採用されている。翼軸ボックス17の上側にはシール用のゴム材18が嵌め込まれており、機密状態が保たれる。
図4に示すように、翼軸15に接続された翼16の先端に支持した丁番軸19を、その軸心周りに相対回転自在に丁番台13に挿通して、計量室4へのガスの給排により膨張収縮を繰り返す膜部Mの往復運動に伴って翼16が揺動するように、膜部Mと翼16とを連結してある。丁番台13には、挿通孔形成部分13a及び丁番軸挿通孔13bが設けられている。
【0036】
この構造において、丁番軸19を、膜部Mの膜面に沿う膜面方向であって、丁番軸19の軸心方向(即ち、膜面沿い軸心方向)及びその軸心と交差する軸心交差方向(即ち、膜面沿い軸心交差方向)の相対移動が許容される融通がある状態で丁番台13に挿通してある。ちなみに、膜部Mの膜面に沿う膜面方向は、膜部Mの往復運動方向(以下、膜部往復運動方向と記載する場合がある)に直交する面方向に相当する。なお、膜部Mの膜面に沿う膜面方向は、後述する高分子材料膜11の平面方向であり、膜部Mの往復運動方向は、後述する高分子材料膜11の厚さ方向である。
この様に、丁番軸19と丁番台13とを、膜面沿い軸心交差方向の相対移動を許容しながらも、膜部往復運動方向での相対移動を極力抑制することで、膜部Fの往復運動範囲のバラツキを極力小さくして、流量計測の信頼性が一層向上されている。
【0037】
図2に示すように、リンク機構Lは、端部同士を互いに枢支連結した大肘金20と小肘金21との組を2組備えて構成してある。
そして、各翼軸15の上端部は、各大肘金20の一端を連結してある。
【0038】
図2に示すように、回転体Rは、下ケーシングC1の上部壁上に取り付けた支持台22に上下方向の軸心周りで回転自在に支持したクランク軸23と、そのクランク軸23の上端に同軸芯状に取り付けた回転円板24とを備えて構成し、クランク軸23には、その径方向外方に突出する状態でクランクロッド25を取り付けてある。
前記磁石5は、回転円板24の上面の外周側に設けて、前記リードスイッチ6は、回転円板24の外周に位置させて、支持台22に支持させて設けてある。
【0039】
図2に示すように、弁部Vは、上記の4室の計量室4のガスの給排を制御するように下ケーシングC1の上部壁に設け、弁部Vが膜部Mの往復運動にて開閉操作されるように設けてある。
弁部Vを構成する揺動バルブ26の動作及び構成の詳細は公知であるので省略するが、1対の膜部Mが1往復すると、各翼軸15が所定角度で回動し、その回動に伴って、リンク機構Lにより回転体Rが1回転して、各揺動バルブ26が揺動し、4個の計量室4に対するガスの給排を制御するように構成してある。
【0040】
つまり、弁部Vは、2個の揺動バルブ26、各揺動バルブ26に夫々対応する2列の給排用開口部列(ガス排出口の両側に2個のガス給排口が並ぶもの)を備えて、2個の揺動バルブ26夫々の揺動によって4室の計量室4へのガスの給排を行うように構成し、その弁部Vが膜部Mの往復運動にて開閉操作されるように、翼軸15と弁部Vとを、リンク機構L及びクランク軸23とクランクアーム25とから構成されるクランク機構にて連結してある。
【0041】
〔劣化判定装置〕
以上が膜式ガスメータ50の構成に関する説明であるが、この膜式ガスメータ50の膜部Mに使用される高分子材料膜11は、上述のとおり、計量室4内へのガスの給排に伴って往復運動、すなわち、膨張、復元、膨張を繰り返して変形し、比較的長い期間ではあるが継時的に劣化する。本願の劣化判定装置100は、膜式ガスメータ50に現に設置されている状態の高分子材料膜11が、上記のように継時的に劣化したか否か、あるいはどの程度劣化しているかを電気的特性を用いて判定するものである。以下、本願に係る劣化判定装置100の構成及び動作について説明する。
【0042】
本願に係る劣化判定装置100は、図5に示すように、膜式ガスメータ50の温度を調整する温度調整手段101と、膜式ガスメータ50の膜部Mに設置された高分子材料膜11の電気的特性を計測する計測手段102と、計測手段102から出力された電気的特性に基づいて高分子材料膜11の劣化程度を判定する判定手段103とを備えて構成されている。なお、計測手段102による電気的特性の計測結果を出力する出力手段(図示せず)としての機能は、計測手段102が担うものとして以下に説明を行うが、計測手段102と出力手段とを別々に構成することも可能である。
【0043】
温度調整手段101は、膜式ガスメータ50の全体を収容可能な調整室101aと、調整室101a内の温度を調整することができる温度調整機構101bとから構成されており、後述する判定手段103からの制御情報を受けて、調整室101a内の温度が所定範囲の温度となるように温度調整機構101bの出力が制御される。これにより、調整室101a内の温度を所定範囲の温度になるまで加熱若しくは冷却し、膜式ガスメータ50に設置された高分子材料膜11を所定範囲の温度に調整することが可能に構成されている。本願において所定範囲の温度は、基本的に高分子材料膜11のガラス転移温度Tgを含むと考えられる温度範囲付近に設定されている。なお、調整室101a内には温度センサ104が設けられており、当該調整室101a内の温度を計測して後述する判定手段103に出力可能とされている。
【0044】
計測手段102は、後述する判定手段103からの制御情報を受けて電源部(図示せず)から高分子材料膜11に高周波交流電圧Eを印加して、誘電正接(電気的特性の一例)を計測可能な一対の電極(電極部材の一例)102a、102bを備えて構成されている。ここで、誘電正接とは、高分子材料膜11に高周波交流電圧Eを印加した場合に、高分子材料膜11に流れる電流Icに対するエネルギ損失Irの割合(Ir/Ic=tanδ)をいう。計測手段102により計測された誘電正接は後述する判定手段103に出力される。
【0045】
判定手段103は、CPUを含む処理手段から構成され、各種情報を入出力可能に構成されている。
判定手段103は、調整室101a内の温度が少なくとも高分子材料膜11のガラス転移温度Tgを含むと考えられる所定範囲の温度付近となるまで、温度センサ104からの情報をフィードバックして電気ヒータ101bの出力を制御するように構成されている。
また、判定手段103は、調整室101a内の温度が少なくともガラス転移温度Tgを含むと考えられる所定範囲の温度付近となるまで、計測手段102の電源部から電極102a、102bを介して高周波交流電圧Eを高分子材料膜11に印加させることができるように構成されている。そして、判定手段103は、この高周波交流電圧Eの印加により計測手段102において計測された誘電正接(tanδ)の入力を受けて、当該誘電正接と温度センサ104の温度情報とから、誘電正接の変曲点を求め、当該変曲点に対応する温度をガラス転移温度Tgとして導出するように構成されている。さらに、当該導出されたガラス転移温度Tgと、予め判定手段103の記憶部(図示せず)に記憶された高分子材料膜11のガラス転移温度と劣化程度との関係(劣化判定指標Hの一例)とが比較されて、上記導出されたガラス転移温度Tgから劣化程度を判定するように構成されている。なお、新品(未使用品)の高分子材料膜11のガラス転移温度(初期値)は、膜式ガスメータ50に使用されて経年劣化すると上昇することが知られているため、予め記憶する劣化程度を、例えば、ガラス転移温度Tgが初期値から上昇した温度幅に対応させて決定することができる。
【0046】
〔劣化判定装置の動作・劣化判定方法〕
本願に係る劣化判定装置100の動作、すなわち、劣化判定方法について以下に説明する。
まず、図5及び図6に示すように、膜式ガスメータ50の蓋9及び整膜板10を取り外し、下ケーシングC1と整膜板10とによる高分子材料膜11の周縁部位11aの挟持固定を解除する。この状態では、高分子材料膜11は、その中心側部位11bが位置保持されて膜式ガスメータ50に設置されたままの状態である。
次に、この高分子材料膜11が設置された状態の膜式ガスメータ50を、調整室101a内に収容する。そして、高分子材料膜11の周縁部位11aを持ち上げて、当該周縁部位11aのうちで繰り返し変形を受ける所定箇所の厚さ方向における一方の面に電極102aを、他方の面に電極102bを取り付ける。すなわち、持ち上げた周縁部位11aのうちで繰り返し変形を受ける所定箇所の厚さ方向に交流電流が流れるように一対の電極102a及び電極102bを取り付ける。
【0047】
この状態で、判定手段103により温度調整機構101bの出力が制御されて、当該調整室101a内の温度は当該高分子材料膜11のガラス転移温度Tgを含むと考えられる所定範囲の温度付近にまで調整される(温度調整工程)。この調整室101a内の温度は温度センサ104により常時検出され、温度情報が判定手段103に出力される。
そして、上記温度調整工程の開始と同時に、判定手段103により計測手段102の電源部の高周波交流電圧Eの出力が制御されて、高分子材料膜11の周縁部位11aの厚さ方向に一対の電極102a及び102bを介して高周波交流電圧Eが印加される。このように周縁部位11aに高周波交流電圧Eを印加した場合に、この周縁部位11aに流れる電流Icに対するエネルギ損失Irの割合である誘電正接tanδ(=Ir/Ic)を求める。計測手段102により計測された誘電正接の情報は判定手段103に常時出力される(計測工程)。
【0048】
次に、判定手段103は、温度センサ104から入力された温度情報と、計測手段102から入力された誘電正接の情報とを対応させ、誘電正接の変曲点に対応する温度を当該高分子材料膜11のガラス転移温度Tgとして導出する。そして、当該導出されたガラス転移温度Tgと、予め判定手段103の記憶部に記憶された高分子材料膜11のガラス転移温度と劣化程度との関係(劣化判定指標Hの一例)とが比較されて、上記導出されたガラス転移温度Tgから高分子材料膜11の劣化程度を判定する(判定工程)。例えば、予め記憶部に記憶されたガラス転移温度(初期値)から3℃以上上昇した場合に劣化したものと判定するように、劣化判定指標Hを設定することができる。この場合、判定手段103において導出されたガラス転移温度Tgが、ガラス転移温度(初期値)よりも3℃以上上昇していると劣化と判定し、3℃未満の上昇であると劣化していない(再使用することができる)と判定できる。
【0049】
これにより、温度調整された高分子材料膜11の誘電正接からガラス転移温度Tgを導出して、当該ガラス転移温度Tgに基づいて劣化程度を、予め求められている劣化判定指標Hに基づいて判定する際に、膜式ガスメータ50に設置されたままの状態であっても劣化程度の判定が容易にできるとともに、比較的簡便な装置構成とすることができる。したがって、膜式ガスメータ50の膜部Mに設置された高分子材料膜11の試験片を切り出して劣化程度の判定を行う必要はなく、また、判定結果が、劣化程度が比較的進んでおらず再使用可能であるとするものであれば、当該膜式ガスメータ50の膜部Mに設置された高分子材料膜11を継続して再使用することができる。
特に、高分子材料膜11は、繊維状の基材に高分子材料が含浸されてなる高分子材料膜11であるが、このような場合であっても、上記のように高分子材料膜11の厚さ方向の誘電正接から導出したガラス転移温度Tgを用いて劣化程度を判定すると、複合材料による影響が少なく比較的正確、かつ簡便な装置構成で劣化程度の判定ができる。
【0050】
〔実施例〕
図7に、本願に係る劣化判定装置100を用いて膜式ガスメータ50に設置された状態の高分子材料膜11について、高周波交流電圧Eを印加して誘電正接(tanδ)と温度との関係を計測した結果を示す。なお、縦軸は任意単位の誘電正接、横軸は任意単位の温度を示し、高分子材料膜11として、ポリエチレンテレフタレート(PET)が繊維状に形成された基材に、ニトリルブタジエンラバー(NBR)とエピクロロヒドリンゴムとの高分子材料を含浸させた新品のサンプルを用い、サンプル数は3である場合の計測結果である。図7に示すように、全てのサンプル(N1、N2、N3)において誘電正接の値は温度上昇とともに上昇から下降に転じ、変曲点を有することがわかる。この変曲点における温度がそれぞれのサンプルにおけるガラス転移温度Tgである(図7上、それぞれ、Tg1、Tg2、Tg3と示す)。
したがって、本願に係る劣化判定装置100を用いて誘電正接を計測した場合であっても、膜式ガスメータ50に設置された状態の高分子材料膜11について、確実にガラス転移温度Tgを導出できることが確認できた。
【0051】
〔実施例及び比較例〕
また、図8に、上記実施例の手法により計測された新品の高分子材料膜11の誘電正接と温度との関係と、比較例の手法により計測された新品の高分子材料膜11の損失正接と温度との関係と、を示す。なお、比較例の手法とは、新品の高分子材料膜11を切り出して試験片とし、当該試験片の長手方向に正弦波の応力を加え、このときの動的粘弾性特性(損失正接)を計測する従来からの手法である。この損失正接(tanδ)は、動的弾性率E1に対する損失弾性率E2の比(E2/E1)である。
図8に示すように、誘電正接と損失正接との挙動は定性的によく一致しており、本願の実施例において膜式ガスメータ50に設置された状態で高分子材料膜11の誘電正接を計測した場合のガラス転移温度Tgと、比較例において膜式ガスメータ50の高分子材料膜11を切り出した試験片の損失正接を計測した場合のガラス転移温度Tg0とは、ほぼ一致する温度で出現している。したがって、本願のように高分子材料膜11が膜式ガスメータ50に設置されたままの状態で、かつ、比較的簡便な装置構成でガラス転移温度Tgを導出しても、比較例のように試験片について損失正接を用いてガラス転移温度Tg0を導出した場合と同様に、正確にガラス転移温度Tgを導出できることが確認できた。なお、実施例と比較例とのガラス転移温度Tgは完全に一致していないが、これは測定周波数が異なるため若干異なる値で示されている。
【0052】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、電気的特性として誘電正接を用いてガラス転移温度Tgを導出する構成としたが、ガラス転移温度Tgを正確に導出することができるものであれば、電気的特性として、高分子材料膜11の絶縁抵抗を用いる構成としてもよい。
具体的には、計測手段102が高分子材料膜11の周縁部位11aの厚さ方向に、電極102a及び電極102bを介して直流電圧Dを印加し、この周縁部位11aに流れる電流Idに対する直流電圧Dの割合(D/Id)を絶縁抵抗として計測するように構成する。そして、この絶縁抵抗と温度センサ104により検出された温度情報とを対応させ、絶縁抵抗の変曲点に対応する温度を当該高分子材料膜11のガラス転移温度Tgとして導出するように構成することもできる。
図9に、本願に係る劣化判定装置100を用いて膜式ガスメータ50に設置された状態の高分子材料膜11について、直流電圧Dを印加して絶縁抵抗と温度との関係を計測した結果を示す。なお、縦軸は任意単位の絶縁抵抗、横軸は任意単位の温度を示し、高分子材料膜11として、ポリエチレンテレフタレート(PET)が繊維状に形成された基材に、ニトリルブタジエンラバー(NBR)とエピクロロヒドリンゴムとの高分子材料を含浸させた新品のサンプルを用い、サンプル数は3である場合の計測結果である。図9に示すように、全てのサンプル(N1、N2、N3)において絶縁抵抗の値は温度上昇とともに下降するが、所定の温度付近において下降の度合いが変化し、変曲点を有することがわかる。この変曲点における温度がそれぞれのサンプルにおけるガラス転移温度Tgである(図9上、それぞれ、Tg1、Tg2、Tg3と示す)。
したがって、本願に係る劣化判定装置100を用いて絶縁抵抗を計測した場合であっても、膜式ガスメータ50に設置された状態の高分子材料膜11について、ガラス転移温度Tgを導出できることが確認できた。
【0053】
(2)上記実施形態では、温度調整手段101により膜式ガスメータ50の全体の温度を調整する構成としたが、高分子材料膜11の温度を適切に、かつ簡易な装置構成で調整してガラス転移温度を導出できる構成であれば、温度調整手段を、高分子材料膜11の一部の温度を局所的に調整できる構成として本願の劣化判定装置100に用いることができる。
例えば、計測手段102である一対の電極102a及び電極102bの先端部分に温度調整手段としての電熱線を埋め込んで、当該電極102a及び電極102bの温度を調整可能に構成し、当該電極102a及び電極102bを高分子材料膜11の周縁部分11aの一部に直接接触させて、局所的に温度を調整する構成としてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、高分子材料膜11の形状として円環状としたが、高分子材料膜11の形状としては円環状のほか、楕円環状、方形環状、トラック状等、任意環状のものでもよい。
【0055】
(4)本発明を適用することができる膜式流量計は、上記の実施形態において例示した膜式ガスメータ50以外にも、種々の膜式ガスメータに適用することができる。
例えば、上記の実施形態においては、揺動操作することにより2室の計量室4に対するガスの給排を制御する揺動バルブ23を2個備えて弁部Vを構成した膜式ガスメータ50に適用する場合について例示したが、回転操作することにより4室の計量室4に対するガスの給排を制御するロータリーバルブを備えて弁部Vを構成した膜式ガスメータにも適用可能である。
あるいは、上記の実施形態においては、計量室4を4室設け、膜部Mを一対設けた膜式ガスメータ50に適用する場合について例示したが、計量室4を2室設け、膜部Mを1個設けた膜式ガスメータにも適用可能である。
【0056】
(5)上記実施形態では、高分子材料膜11を膜式ガスメータ50に設置した状態で劣化程度を判定したが、高分子材料膜11が膜式ガスメータ50に設置される前など、高分子材料膜11が単体で存在する場合でも劣化程度を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施形態に係る膜式ガスメータの斜視図
【図2】実施形態に係る膜式ガスメータの要部の分解斜視図
【図3】実施形態に係る膜式ガスメータの要部の縦断面図
【図4】実施形態に係る膜式ガスメータの要部の斜視図
【図5】本願に係る劣化判定装置の概略構造説明図
【図6】本願に係る劣化判定装置を用いた計測状態を示す概念斜視図
【図7】本願の実施例に係る誘電正接と温度との関係を示すグラフ図
【図8】本願の実施例の誘電正接と、比較例の損失正接と、温度との関係を示すグラフ図
【図9】本願の別実施形態に係る絶縁抵抗と温度との関係を示すグラフ図
【符号の説明】
【0058】
4 計量室
10 整膜板
11a 周縁部位(高分子材料膜)
11b 中心側部位(高分子材料膜)
12 膜板
50 膜式ガスメータ(膜式流量計)
100 劣化判定装置
101a 調整室(温度調整手段)
101b 温度調整機構(温度調整手段)
102a 電極(計測手段)
102b 電極(計測手段)
103 判定手段
C1(C) 下ケーシング(ケーシング)
M 膜部
H 劣化判定指標

【特許請求の範囲】
【請求項1】
劣化程度の判定対象である高分子材料膜の温度を調整する温度調整工程と、前記温度調整工程において温度調整された前記高分子材料膜の電気的特性を計測する計測工程と、当該計測工程において計測された前記電気的特性からガラス転移温度を導出して、当該ガラス転移温度に基づいて前記高分子材料膜の劣化程度を判定する判定工程とを実行する高分子材料膜の劣化判定方法であって、
前記計測工程において前記高分子材料膜の厚さ方向の電気的特性を計測し、計測された前記厚さ方向の電気的特性から前記判定工程において前記高分子材料膜の劣化程度を判定する高分子材料膜の劣化判定方法。
【請求項2】
前記劣化程度の判定対象である高分子材料膜が、膜の中心側部位に設けられた膜板により当該膜の中心側部位が位置保持されるとともに、前記膜の周縁部位が計量室を形成するケーシングと整膜板とに挟持固定され、前記計量室へのガスの給排により膨張収縮を繰り返す往復運動をする膜式流量計の膜部に使用される膜である請求項1に記載の劣化判定方法。
【請求項3】
前記計測工程において、前記膜板による前記膜の位置保持を維持しつつ、前記ケーシングと整膜板とによる前記膜の挟持固定を解除した状態で、前記膜の周縁部位における一方の面と他方の面に電極部材を接触させ、当該膜の厚さ方向の電気的特性を計測する請求項2に記載の劣化判定方法。
【請求項4】
前記電気的特性が、前記高分子材料膜の誘電正接又は絶縁抵抗である請求項1から3の何れか一項に記載の劣化判定方法。
【請求項5】
前記高分子材料膜が、繊維状の基材に高分子材料が含浸されてなる高分子材料膜である請求項1から4の何れか一項に記載の劣化判定方法。
【請求項6】
劣化程度の判定対象である高分子材料膜の温度を調整する温度調整手段と、前記温度調整手段において温度調整された前記高分子材料膜の電気的特性を計測する計測手段と、前記計測手段から出力された前記電気的特性からガラス転移温度を導出して、当該ガラス転移温度に基づいて前記高分子材料膜の劣化程度を判定する判定手段とを備えた劣化判定装置であって、
前記計測手段として、前記高分子材料膜の厚さ方向の電気的特性を計測可能な一対の電極部材を備えた高分子材料膜の劣化判定装置。
【請求項7】
前記計測手段による前記電気的特性の計測結果を出力する出力手段を備えるとともに、予め求められた劣化判定指標を備え、前記判定手段が、前記出力手段により出力された前記高分子材料膜の厚さ方向の電気的特性から前記高分子材料膜の劣化程度を、前記劣化判定指標に基づいて判定する請求項6に記載の劣化判定装置。
【請求項8】
前記温度調整手段が、判定対象の前記高分子材料膜の一部を局所的に温度調整する温度調整機構を備えて構成される請求項6又は7に記載の劣化判定装置。
【請求項9】
前記高分子材料膜が、繊維状の基材に高分子材料が含浸されてなる高分子材料膜である請求項6から8の何れか一項に記載の劣化判定装置。
【請求項10】
前記劣化程度の判定対象である高分子材料膜が、膜の中心側部位に設けられた膜板により当該膜の中心側部位が位置保持されるとともに、前記膜の周縁部位が計量室を形成するケーシングと整膜板とに挟持固定され、前記計量室へのガスの給排により膨張収縮を繰り返す往復運動をする膜式流量計の膜部に使用される膜である請求項6から9の何れか一項に記載の劣化判定装置。
【請求項11】
前記温度調整手段が、前記膜式流量計の全体を収納可能な調整室と、前記調整室内の温度を調整する温度調整機構とを備えて構成される請求項10に記載の劣化判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−281918(P2009−281918A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135342(P2008−135342)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】