説明

劣化食用油用再生剤および劣化食用油の再生方法

【課題】劣化食用油への少ない添加量で劣化油の酸価の低減のみならず、色素成分を吸着(脱色)することが可能な劣化食用油用再生剤を提供する。
【解決手段】全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物水酸化カルシウムとを乾式混合してなる劣化食用油用再生剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライビーンズ、惣菜等を揚げた後の劣化食用油を再生するための食用油用再生剤および劣化食用油の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストアー、惣菜屋等の揚物をその場で販売する食品営業では、食用油を多量に使用している。このような食用油で惣菜等の揚種を揚げる場合、食用油は高温に曝されると共に繰り返し使用される。このため、食用油は加水分解、酸化等を受けて劣化を生じる。その結果、1)遊離脂肪酸の生成による酸価の上昇、2)鉄分の増加による黄褐色から茶褐色を呈する着色、色度の上昇を招く。特に、2)の食用油の着色は比較的早期に現れ易く、使用者に悪い印象を与えるばかりか、天ぷらなどの揚げ物に着色が移行して見栄えを損ね、食欲を低下させる虞がある。
【0003】
資源の有効利用、食品のリサイクル化の要請から、前記1)の劣化食用油中の酸価の低減に関しては、従来より酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウムが用いられ、前記2)の着色成分の吸着(脱色)には酸性白土、活性白土が用いられている。
【0004】
一方、特許文献1、2には劣化油の酸価の低減と脱色の両機能を発現することが可能な水酸化カルシウムおよび酸性白土を混合した混合物からなる食用油浄化剤の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開昭61−103997号公報
【特許文献2】特開昭61−103998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1,2の食用油浄化剤において水酸化カルシウムによる酸価低減は十分に発現できるものの、酸性白土による脱色は浄化剤を劣化油100容量部に対して30重量部も大量に添加することが必要である。このため、劣化油の処理後の浄化剤のろ過に時間を要する、つまり劣化油の総処理時間が長くなるばかりか、浄化剤による食用油の吸着に伴って食用油量が減少する問題があった。
【0006】
本発明は、劣化食用油への少ない添加量で劣化油の酸価の低減のみならず、色素成分を吸着(脱色)することが可能な劣化食用油用再生剤を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、劣化食用油への少ない添加量で、劣化油の酸価の低減のみならず、色素成分を吸着(脱色)することが可能な劣化食用油の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物水酸化カルシウムとを乾式混合してなる劣化食用油用再生剤が提供される。
【0009】
また本発明によると、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物水酸化カルシウムとを乾式混合してなる食用油用再生剤に200℃以下に加熱された劣化食用油を接触させることを特徴とする劣化食用油の再生方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、劣化油の酸価の低減のみならず、色素成分を吸着(脱色)することが可能な劣化食用油用再生剤を提供することができる。
【0011】
本発明によれば、劣化食用油に対する少ない配合量で、劣化油の酸価の低減のみならず、色素成分を吸着(脱色)することが可能な劣化食用油の再生方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る劣化食用油用再生剤および劣化食用油の再生方法を詳細に説明する。
【0013】
この実施形態に係る劣化食用油用再生剤は、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有する、つまりメソポアであり、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物水酸化カルシウムとを乾式混合してなるものである。
【0014】
前記Vl−t法(t−プロット法)は、公知の技術であり、例えば文献[近藤精一他 化学セミナー16「吸着の科学」丸善株式会社 52−54頁、79−80頁]に詳細に記載されている。この文献から、t−プロット法は吸着膜の平均厚さ(t)を相対圧(P/P0)に対してプロットした標準等温線を使う。ここで、(t)は吸着膜中の平均吸着総数(V/Vm)と単分子層の厚さ(σ)の積で表され、吸着質が窒素分子である場合、σ=0.354nm、Vは窒素吸着量、Vmは窒素の単分子層吸着量で表される。吸着量(Vl)を(t)に対してプロットしたものがt−プロットである。
【0015】
例えば試料がミクロポアを有する場合には、t−プロットは座標原点を通る1本の直線にはならず、tの大きい箇所で下方にずれた直線が得られる。tが大きい箇所の直線の傾きから外部表面積が求められる。また、試料がミクロポアのないメソポアを有する場合には、t−プロットはtが大きい箇所で座標原点を通る直線から上方にずれ、全表面積が外部表面積として求められる。
【0016】
前記食品添加物二酸化ケイ素の全比表面積を350m2/g未満にすると、例えば200℃以下に加熱した劣化食用油の再生に適用した際、効果的に脱色することが困難になる虞がある。前記食品添加物二酸化ケイ素の全比表面積の上限は、1500m2/g、より好ましくは700m2/gにすることが望ましい。
【0017】
前記Vl−t法で算出した外部表面積が全比表面積に占める割合を80%未満にすると、例えば200℃以下に加熱した劣化食用油の再生に適用した際、効果的に脱色することが困難になる虞がある。より好ましいVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積に占める割合は、90%以上、最も好ましくは100%である。
【0018】
前記食品添加物二酸化ケイ素は、形状および粒径が任意であるが、取り扱い易さ等を考慮して球状で10〜300μmの径を有することが好ましい。
【0019】
前記食品添加物二酸化ケイ素は、例えば次の3つの方法により製造することができる。
【0020】
(1)マグネシウム溶出法による食品添加物二酸化ケイ素の製造方法
まず、反応容器内に水を入れ、加温する。この加温は、40〜100℃にすることが好ましい。つづいて、前記反応容器内の加温水を撹拌しながら、ケイ酸ソーダ溶液および硫酸マグネシウム溶液を滴下する。ケイ酸ソーダ溶液および硫酸マグネシウム溶液は、SiO2とMgO換算のモル比で4:1〜1:1になるように、かつ総重量が水およびケイ酸ソーダと硫酸マグネシウムの重量に対して1〜40重量%になるように滴下することが好ましい。
【0021】
次いで、前記反応容器内の溶液に硫酸を加えてマグネシウムを溶出させてスラリーを調製する。このとき、添加する硫酸は希硫酸でも、濃硫酸でもよいが、例えば10〜70重量%の濃硫酸が好ましい。硫酸は、硫酸マグネシウムに対して1.0〜2.0モル倍率で添加することが好ましい。得られたスラリーを濾過、水洗、乾燥し、必要に応じて乾燥物をすり潰すことによって、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素を製造する。この時、水洗は硫酸の残留が認められなくなるまで行うことが好ましい。
【0022】
(2)尿素焼失法による食品添加物二酸化ケイ素の製造方法
まず、反応容器内に水、ケイ酸ソーダ溶液および尿素を入れる。この時、ケイ酸ソーダ溶液(SiO2換算)および尿素はそれらのモル比で20:1〜1:1になるように配合することが好ましい。ケイ酸ソーダおよび尿素の総量は、水、ケイ酸ソーダおよび尿素の重量に対して1〜40重量%になるように配合することが好ましい。
【0023】
次いで、前記反応容器内の溶液を加温した後、酸を添加して尿素複合二酸化ケイ素を共沈させる。溶液の加温温度は、5〜100℃にすることが好ましい。酸の滴下に際し、溶液を撹拌しながら行うことが好ましい。前記酸としては、例えば希塩酸、希硫酸等を用いることができる。つづいて、反応容器内の共沈物を濾過、水洗、乾燥することにより尿素複合二酸化ケイ素を得る。ひきつづき、得られた尿素複合二酸化ケイ素を焼成して尿素を焼失することにより、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素を製造する。この時、焼成は空気のような酸化性雰囲気中、200〜1000℃、より好ましくは300〜700℃で行うことが望ましい。
【0024】
(3)テンプレート法による食品添加物二酸化ケイ素の製造方法
まず、反応容器内に水、ケイ酸ソーダ溶液およびポリオキシアルキレンアルキルエーテルを入れる。この時、ケイ酸ソーダ溶液(SiO2換算)およびポリオキシアルキレンアルキルエーテルはそれらの重量比で4:1〜1:2になるように配合することが好ましい。ケイ酸ソーダおよびポリオキシアルキレンアルキルエーテルの総量は、水、ケイ酸ソーダおよびポリオキシアルキレンアルキルエーテルの重量に対して1〜40重量%になるように配合することが好ましい。前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えばポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等を用いることができる。
【0025】
次いで、前記反応容器内の溶液を加温した後、酸を添加してポリオキシアルキレンアルキルエーテル複合二酸化ケイ素を共沈させる。溶液の加温温度は、50〜100℃にすることが好ましい。酸の滴下に際し、溶液を撹拌しながら行うことが好ましい。前記酸としては、例えば希塩酸、希硫酸等を用いることができる。つづいて、反応容器内の共沈物を濾過、水洗、乾燥することによりポリオキシアルキレンアルキルエーテル複合二酸化ケイ素を得る。ひきつづき、得られたポリオキシアルキレンアルキルエーテル複合二酸化ケイ素を焼成してポリオキシアルキレンアルキルエーテルを焼失することにより全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素を製造する。この時、焼成は空気のような酸化性雰囲気中、200〜1000℃、より好ましくは300〜700℃で行うことが望ましい。
【0026】
前記食品添加物水酸化カルシウムは、形状および粒径が任意であるが、取り扱い易さ等を考慮して球状で10〜300μmの径を有することが好ましい。
【0027】
前記食品添加物二酸化ケイ素および食品添加物水酸化カルシウムの配合割合は、例えば200℃以下に加熱した劣化食用油の再生目的に応じて適宜選択される。例えば、劣化食用油の脱色を重視した再生では劣化食用油の脱色に寄与する食品添加物二酸化ケイ素の配合割合を多くすることが好ましい。一方、劣化食用油の酸価の低減を重視した再生では劣化食用油の酸価度の低減に寄与する食品添加物水酸化カルシウムの配合割合を多くすることが好ましい。特に、前記食品添加物二酸化ケイ素の配合重量をM1、前記食品添加物水酸化カルシウムの配合重量をM2としたとき、劣化食用油の脱色と酸価度の低減をバランスを考慮して、M1/M2を2.3〜20、より好ましくは8〜14にすることが好ましい。
【0028】
前記食品添加物水酸化カルシウムは、その一部を食品添加物酸化マグネシウムで置換することを許容する。この食品添加物酸化マグネシウムの置換量は、前記食品添加物水酸化カルシウムの50重量%以下にすることが好ましい。
【0029】
前記乾式混合は、出荷前の段階で行ってもよいし、ユーザによる使用時に行っても、いずれでもよい。
【0030】
次に、実施形態に係る劣化食用油の再生方法を説明する。
【0031】
この実施形態に係る劣化食用油の再生方法は、全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物水酸化カルシウムとを乾式混合してなる食用油用再生剤に200℃以下に加熱された劣化食用油を接触させる。
【0032】
前記食用油用再生剤は、前述したのと同様なものが用いられる。
【0033】
前記加熱された劣化食用油の下限温度は、70℃にすることが好ましい。
【0034】
前記食用油用再生剤に加熱された劣化食用油を接触させる操作は、例えば加熱源を有する食用油収容容器と前記食用油用再生剤が収納された再生剤用容器とを循環流路で接続し、前記食用油収容容器内の加熱された劣化食用油を前記循環流路を通して前記再生剤用容器に供給、循環させて前記食用油用再生剤に繰り返し接触させる方法を採用することができる。
【0035】
以上、実施形態に係る劣化食用油用再生剤は全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有する、つまりメソポアであり、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占め、例えば200℃以下に加熱した劣化食用油との接触おいてその劣化食用油中の色素成分に対する高い吸着能を有する食品添加物二酸化ケイ素と同劣化食用油との接触おいて加熱温度に依存せずにその劣化食用油中の酸価低減能を有する食品添加物水酸化カルシウムとを乾式混合してなるものであるため、劣化食用油を効果的に脱色すると共に、酸価度を低減して再生することができる。
【0036】
特に、前記食品添加物二酸化ケイ素の配合重量をM1、前記食品添加物水酸化カルシウムの配合重量をM2とすると、M1/M2を2.3〜20にすることによって、劣化食用油の再生時においてバランスの取れた脱色および酸価度の低減を図ることができる。
【0037】
また、実施形態に係る劣化食用油用再生剤は例えば第7版食品添加物公定書 D−1009の定量法に従う試験に適合した食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物水酸化カルシウムとが化学的に変化せずに単に乾式混合したものであるため、高い安全性を有する。
【0038】
実施形態に係る劣化食用油の再生方法によれば、食用油用再生剤を劣化食用油に対して少ない配合量(例えば劣化食用油100容量部に対して食用油用再生剤0.5〜10重量部)で、劣化油の酸価の低減のみならず、色素成分を吸着(脱色)して食用油の繰り返し使用を可能にすることができる。
【0039】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0040】
(実施例1−1)
反応容器であるタンク内に水2.5Lを投入し、この水を40℃に加温した。つづいて、加温水を攪拌しながら市販3号ケイ酸ソーダ532gと硫酸マグネシウム溶液(7水塩結晶物175gを水に溶解し300mLとした溶液)を滴下した。滴下終了後の溶液に70%の硫酸110gを加えることによりスラリーを調製した。得られたスラリーを濾過、水洗、乾燥した後、乳鉢ですり潰すことにより二酸化ケイ素148gを得た。
【0041】
得られた二酸化ケイ素は、7版食品添加物公定書D−1009[二酸化ケイ素]の定量法の項目に従って試験を行った結果、二酸化ケイ素の含有量が99.1%であった。
【0042】
また、得られた二酸化ケイ素について、下記試験に基づいてBET法による全比表面積、Vl−t法で算出した外部表面積および全比表面積に占める外部表面積の比率を求めた。
【0043】
再生剤の細孔分布測定方法
この測定方法は、以下の装置および解析条件で行った。
【0044】
・装置 :Quantachrome社製高速比表面積・細孔分布測定装置(商標名
NOVA4000e型)
・前処理条件 :試料0.03〜0.1gを110℃、2時間乾燥後、試料を
正確に測り、吸着管に封入し、その後10-3torr以下にて
150℃、5時間脱気した。
【0045】
・全比表面積 :多点BET法
・細孔分布 :BJH法
・外部表面積 :Vl−t法。
【0046】
その結果、得られた二酸化ケイ素は全比表面積が645m2/g、外部表面積が513m2/gで、外部表面積が全比表面積に占める割合が約80%であった。
【0047】
次いで、二酸化ケイ素粒子210mgと食品添加物水酸化カルシウム(富田製薬社製商標名:食品添加物水酸化カルシウム)90mgを乾式混合することにより劣化食用油用再生剤300mgを調製した。なお、この劣化食用油用再生剤のM1/M2[SiO2/Ca(OH)2]は約2.3である。
【0048】
(実施例1−2)
実施例1−1と同様な二酸化ケイ素粒子210mgと食品添加物水酸化カルシウム(富田製薬社製商標名:食品添加物水酸化カルシウム)75mgと食品添加物酸化マグネシウム(富田製薬社製商標名:食品添加物酸化マグネシウム)15mgを乾式混合することにより劣化食用油用再生剤300mgを調製した。なお、この劣化食用油用再生剤のM1/M2{SiO2/[Ca(OH)2+MgO]}は約2.3である。
【0049】
(実施例2−1)
実施例1−1と同様な二酸化ケイ素粒子270mgと食品添加物水酸化カルシウム(富田製薬社製商標名:食品添加物水酸化カルシウム)30mgとを乾式混合することにより劣化食用油用再生剤300mgを調製した。なお、この劣化食用油用再生剤のM1/M2[SiO2/Ca(OH)2]は9である。
【0050】
(実施例2−2)
実施例1−1と同様な二酸化ケイ素粒子270mgと食品添加物水酸化カルシウム(富田製薬社製商標名:食品添加物水酸化カルシウム)21mgと食品添加物酸化マグネシウム(富田製薬社製商標名:食品添加物酸化マグネシウム)9mgを乾式混合することにより劣化食用油用再生剤300mgを調製した。なお、この劣化食用油用再生剤のM1/M2{SiO2/[Ca(OH)2+MgO]}が9である。
【0051】
(実施例3−1)
実施例1−1と同様な二酸化ケイ素粒子280mgと食品添加物水酸化カルシウム(富田製薬社製商標名:食品添加物水酸化カルシウム)14mgとを乾式混合することにより劣化食用油用再生剤294mgを調製した。なお、この劣化食用油用再生剤のM1/M2[SiO2/Ca(OH)2]は20である。
【0052】
(実施例3−2)
実施例1−1と同様な二酸化ケイ素粒子280mgと食品添加物水酸化カルシウム(富田製薬社製商標名:食品添加物水酸化カルシウム)12mgと食品添加物酸化マグネシウム(富田製薬社製商標名:食品添加物酸化マグネシウム)2mgを乾式混合することにより劣化食用油用再生剤294mgを調製した。なお、この劣化食用油用再生剤のM1/M2{SiO2/[Ca(OH)2+MgO]}が20である。
【0053】
(比較例1)
和光純薬社製の試薬;酸性白土210mgと食品添加物水酸化カルシウム(富田製薬社製商標名:食品添加物水酸化カルシウム)90mgを乾式混合することにより劣化食用油用再生剤300mgを調製した。なお、この劣化食用油用再生剤のM1/M2[酸性白土/Ca(OH)2]は約2.3である。
【0054】
(比較例2)
和光純薬社製の試薬;酸性白土270mgと食品添加物水酸化カルシウム(富田製薬社製商標名:食品添加物水酸化カルシウム)30mgを乾式混合することにより劣化食用油用再生剤300mgを調製した。なお、この劣化食用油用再生剤のM1/M2[酸性白土/Ca(OH)2]は9である。
【0055】
(比較例3)
和光純薬社製の試薬;酸性白土280mgと食品添加物水酸化カルシウム(富田製薬社製商標名:食品添加物水酸化カルシウム)14mgを乾式混合することにより劣化食用油用再生剤294mgを調製した。なお、この劣化食用油用再生剤のM1/M2[酸性白土/Ca(OH)2]は20である。
【0056】
得られた実施例1−1,1−2,2−1,2−2,3−1,3−2および比較例1〜3の劣化食用油用再生剤を用いて劣食用油(70℃、100℃および150℃)を再生したときの酸価の低減および脱色率を以下の試験により測定した。
【0057】
1)再生剤による食用油の脱色率の測定のための試験
一般惣菜油(株式会社J−オイルミルズ製商標名:ゴールデン大豆白絞油)の使用済み劣化油10mLに再生剤300mg(実施例3−1,3−2、比較例3は再生剤294mg)を添加、つまり劣化油100容量部に再生剤3重量部(または2.94重量部)を添加した後、70℃、100℃および150℃のオイルバス中、振盪器にて130回/分の条件で15分間振盪した。振盪後、直ちにメンブランフィルタ(目開き0.8μm)にて濾過し、得られた濾過液の吸光度を測定した。再生剤無添加の同使用済み劣化油10mLをブランクとし、同様な処理を行って濾過液の吸光度を測定した。これらの測定結果を書き式に導入して脱色率(%)を求めた。
【0058】
色率(%)=[(ブランクの吸光度−脱色処理後の吸光度)/ブランクの吸光度]
×100
2)再生剤による再生処理後の食用油酸価試験
一般惣菜油(株式会社J−オイルミルズ商標名:ゴールデン大豆白絞油)の使用済み劣化油10mLに再生剤300mg(実施例3−1,3−2、比較例3は再生剤294mg)を添加した後、70℃、100℃および150℃のオイルバス中、振盪器にて130回/分の条件で15分間振盪した。振盪後、直ちにメンブランフィルタ(目開き0.8μm)にて濾過した。得られた濾過液について、「第7版食品添加物公定書解説書」一般試験方法(B194油脂類試験方法「3.酸価」)に準じて酸価を測定した。
【0059】
これらの結果を下記表1に示す。
【表1】

【0060】
前記表1から明らかなように全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物水酸化カルシウムを乾式混合した実施例1−1,2−1,3−1の再生剤は、劣化食用油に対して少ない量で酸性白土と食品添加物水酸化カルシウムを乾式混合した比較例1〜3の再生剤と遜色のない酸価の低減効果を有し、さら比較例1〜3の再生剤に比べて高い脱色率を示すことがわかる。
【0061】
また、食品添加物水酸化カルシウムの一部を食品添加物酸化マグネシウムで置換した実施例1−2,2−2,3−2の再生剤は、食品添加物酸化マグネシウム未置換の実施例1−1,2−1,3−1の再生剤に比べて酸価の低減効果が若干劣るものの、酸性白土と食品添加物水酸化カルシウムを乾式混合した比較例1〜3の再生剤に比べて高い脱色率を示すことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物水酸化カルシウムとを乾式混合してなる劣化食用油用再生剤。
【請求項2】
前記食品添加物二酸化ケイ素の配合重量をM1、前記食品添加物水酸化カルシウムの配合重量をM2とすると、M1/M2が2.3〜20であることを特徴とする請求項1記載の劣化食用油用再生剤。
【請求項3】
前記食品添加物水酸化カルシウムは、その一部が食品添加物酸化マグネシウムで置換されることを特徴とする請求項1記載の劣化食用油用再生剤。
【請求項4】
全比表面積が350m2/g以上で、細孔形態が細孔直径4〜50nmの範囲に分布極大を有し、かつVl−t法で算出した外部表面積が全比表面積の80%以上を占める食品添加物二酸化ケイ素と食品添加物水酸化カルシウムとを乾式混合してなる食用油用再生剤に200℃以下に加熱された劣化食用油を接触させることを特徴とする劣化食用油の再生方法。
【請求項5】
前記食用油用再生剤は、前記食品添加物二酸化ケイ素の配合重量をM1、前記食品添加物水酸化カルシウムの配合重量をM2とすると、M1/M2が2.3〜20であることを特徴とする請求項4記載の劣化食用油の再生方法。
【請求項6】
前記食品添加物水酸化カルシウムは、その一部が食品添加物酸化マグネシウムで置換されることを特徴とする請求項4記載の劣化食用油の再生方法。

【公開番号】特開2007−143525(P2007−143525A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345557(P2005−345557)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000237972)富田製薬株式会社 (30)
【Fターム(参考)】