説明

励起原子酸素発生装置

【課題】長寿命化を図ることができる励起原子酸素発生装置を提供する。
【解決手段】紫外線点灯用バルブ12の両端部からやや中央よりの外周部分に金属薄膜を巻回して一対の外周電極19a、19bを形成し、さらに中央寄りの外周部分に一対の網電極20a、20bを形成する。電極ピン18aと網電極20bとの間および電極ピン18bと網電極20aとの間にトランス10の二次コイルS1、S2に発生する高周波電圧を印加して、バルブ12内で2つの独立した放電を発生させる。これによりオゾンと紫外線が発生し、発生したオゾンは発生直後に紫外線が照射されることで励起原子酸素に変換される。外周電極19a、19b間に直流電圧を印加して放電させることにより、バルブ12の外部にイオン気流を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンと紫外線を発生させてこれらの光化学反応により励起原子酸素を発生させる励起原子酸素発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
励起原子酸素発生装置は、オゾン発生器から発生したオゾンに紫外線ランプから発生した紫外線を照射して、光化学反応によって反応性に富む励起原子酸素を発生させるようにしたもので、その強力な酸化力作用を有する励起原子酸素によって、例えば観光バスや鉄道車両のトイレ、冷凍運搬車の庫内、スーパーの加工室などにおける殺菌や消臭に広く利用することができる。オゾン発生器のみでオゾンを発生させた場合には、オゾン特有の生臭い臭気が使用者に不快感を与える場合がある。これを解消するという意味においても、オゾンの脱臭作用よりも強力な作用を有する励起原子酸素を発生させる方が好ましい。
【0003】
このような特性を有する励起原子酸素を発生させるための構成としては、紫外線ランプとして商用電源を用いた放電管型や小型電球型などがある。また、オゾン発生器としては、商用電源を用いるとともに高圧漏洩型のトランスおよび特殊な放電管を設けたものが知られている。しかし、このような紫外線ランプとオゾン発生器とを別途に設ける構成では、全体が大型化して重量がかさむとともに高価になる。本出願人は、この課題を解決するため特許文献1記載の発明について特許を取得した。
【0004】
この発明は、紫外線ランプの両端の外周部に円筒状の網電極を巻きつけて形成し、この網電極間に高周波電圧を印加することにより、この網電極と紫外線ランプとの間の間隙部において発生する放電でオゾンを発生させるようにしたものである。これにより、簡単且つ安価な構成として小型軽量化を図りながら、オゾンと紫外線とを同時に発生させて、オゾンと紫外線との光化学反応作用により励起原子酸素を効率よく生成することが可能となる。その後、本出願人は、特許文献2記載の発明についても特許を取得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第1750931号公報
【特許文献2】特許第3078810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、フィラメント電極相互間に電圧を印加して放電させるものは、点灯時間が長くなるに従って電子放出物質(エミッタ)が管壁に付着する黒化現象が発生する。また、励起原子酸素発生装置は、発生した励起原子酸素を効率よく送り出すために送風ファンを備えているが、ベアリングの摩耗などにより送風ファンにも劣化が生じる。すなわち、従来構成のものは、連続使用に対する寿命の点で技術的課題が残っていた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、長寿命化を図ることができる励起原子酸素発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した励起原子酸素発生装置は、スイッチング回路および漏洩型トランスによって直流電圧から2系統の高周波電圧を生成する高周波電源と、一対のフィラメント電極を備えた紫外線点灯用バルブと、この紫外線点灯用バルブの外周に配設された円筒状の金属製の網状に形成された一対の第1放電電極とを備え、前記フィラメント電極の一方と前記第1放電電極の一方との間に前記高周波電源から一系統の高周波電圧を印加して放電させ、前記フィラメント電極の他方と前記第1放電電極の他方との間に前記高周波電源から他系統の高周波電圧を印加して放電させることにより、前記第1放電電極と前記紫外線点灯用バルブとの間の部分でオゾンを発生させるとともに前記紫外線点灯用バルブで紫外線を発生させ、これらオゾンと紫外線との光化学反応により励起原子酸素を発生させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した励起原子酸素発生装置は、前記紫外線点灯用バルブの外周に配設され円筒状の金属薄膜で形成された一対の第2放電電極を備え、前記高周波電源は、前記高周波電圧を整流して直流電圧を生成するように構成され、この生成した直流電圧を前記一対の第2放電電極間に印加して前記紫外線点灯用バルブの外にイオン気流を発生させるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載した励起原子酸素発生装置は、その高周波電源が、車載バッテリの直流電圧、車両で生成される直流電圧、または商用交流電圧を整流して得た直流電圧を入力とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の手段によれば、一方のフィラメント電極と一方の第1放電電極との間および他方のフィラメント電極と他方の第1放電電極との間にそれぞれ独立した放電が形成される。従来構成の場合と同じ紫外線放射強度を得るために必要となる上記2つの放電の各放電電流は従来構成の放電電流の1/2で済むので、フィラメント電極への電子衝突も従来の1/2になり、衝突エネルギーは1/4になる。その結果、フィラメント電極に塗布された電子放出物質(エミッタ)の飛散量が大幅に低減し、黒化の進度がほぼ1/4になるので、励起原子酸素発生装置の長寿命化を図ることができる。
【0012】
請求項2記載の手段によれば、一対の第2放電電極間に直流電圧を印加して紫外線点灯用バルブの外にイオン気流を発生させるので、従来の送風ファンが不要になり、或いは送風ファンの回転速度を低下させることができ、送風ファンに起因する寿命の低下を防止して励起原子酸素発生装置の長寿命化を図ることができる。
【0013】
請求項3記載の手段によれば、観光バス、路線バス、冷凍車、鉄道車両、スーパーの加工室など様々な場所で利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示す紫外線点灯用バルブおよびトランスの巻線構造を模式的に示す図
【図2】駆動回路の電気的構成図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図2は、励起原子酸素発生装置の駆動回路1(高周波電源)の電気的構成を示している。励起原子酸素発生装置は、観光バスや鉄道車両のトイレ、冷凍運搬車の庫内、生鮮食料品を扱うスーパーの加工室など殺菌や消臭が必要となる様々な場所で用いられる。そのため、電源入力端子には、車載バッテリ(DC12V、DC24V等)、鉄道車両の補助電源装置(DC100V等)、商用交流電圧を整流して直流電圧を生成する電源装置など種々の形態の直流電源2が接続されるようになっている。
【0016】
スイッチング回路3は、スイッチング素子としてのNPN形のトランジスタ4を中心として、交流バイアス抵抗5、バイアスコンデンサ6、直流バイアス抵抗7、タンクコンデンサ8などから構成されている。トランジスタ4のコレクタは直流電源2の正極端子に接続されるとともに、直流バイアス抵抗7を介してベースに接続されている。エミッタはタンクコンデンサ8を介して直流電源2の負極端子に接続されている。直流電源2に並列接続されるコンデンサ9は、スイッチングノイズを外部に漏洩させないためのフィルタ作用を有している。
【0017】
放電電圧発生用のトランス10は、フェライト製のギャップ付きコア11に2系統の一次コイルP1、P2と、それに対応する2系統の二次コイルS1、S2と、補助コイルD1が巻回された漏洩型トランスであって、発振、昇圧および漏洩の特性を有している。補助コイルD1は、一次コイルP1に対しその一端子P1a側に更に巻き進められて形成されている。図1に示すように、コア11には、内側から順に一次コイルP1、二次コイルS1、補助コイルD1が巻回されるとともに、それらとは独立して内側から順に一次コイルP2、二次コイルS2が巻回されている。二次コイルS1、S2は俵巻き(傾斜巻き)の構造を備えており、層間絶縁テープが不要となっている。これによりトランス10の小型化が図られている。
【0018】
補助コイルD1の端子D1aは、上述した交流バイアス抵抗5とバイアスコンデンサ6との並列回路を介してトランジスタ4のベースに接続されている。一次コイルP1、P2の端子P1b、P2bは、直流電源2の負極端子に接続されている。一次コイルP1、P2の端子P1a、P2a(補助コイルD1の端子D1b)は、トランジスタ4のエミッタに接続されている。
【0019】
二次コイルS1、S2の各端子S1a、S1b、S2a、S2bは、オゾンと紫外線を発生する紫外線点灯用バルブ12に設けられた各電極に接続されている。また、ダイオード13とコンデンサ14とからなる半波整流回路15は、二次コイルS2の端子S2a、S2b間の高周波電圧を入力して直流電圧を出力するようになっている。半波整流回路15には、二次コイルS2に替えて二次コイルS1の端子S1a、S1b間の高周波電圧を入力してもよい。
【0020】
図1、図2に示す紫外線点灯用バルブ12(以下、バルブ12と称す)は、市販の紫外線ランプ(殺菌ランプ)を用いている。市販の紫外線ランプは、石英ガラスからなるガラス管の両端部にフィラメント電極16a、16bと口金17a、17bと電極ピン18a、18bとを備え、ガラス管内部にはアルゴンガスと少量の水銀が封入されている。石英ガラスは、放電による損傷に強いので、表面にセラミックコーティング層を設ける必要はない。
【0021】
バルブ12の両端部からやや中央よりの部分に、第2放電電極としての一対の外周電極19a、19bを備えるとともに、それらからやや中央寄りの部分に第1放電電極としての一対の網電極20a、20bを備えている。外周電極19a、19bは、金属薄膜としての厚さ50μm程度の銅製の箔をバルブ12の外周に巻き付けて形成されている。バルブ12の外周に巻回することにより表面に密着させた状態となり、放電作用を起こす際の抵抗成分を小さくすることができる。網電極20a、20bは、バルブ12を介して放電する際に効率良くオゾンを発生させることができるようにその網目の大きさが設定されたステンレス製のものを用いている。外周電極19a、19bと同様に、バルブ12の外周に巻回した状態に設けられている。
【0022】
二次コイルS1の両端子S1a、S1bは、それぞれバルブ12の電極ピン18a、網電極20bに接続されている。二次コイルS2の端子S2aは、バルブ12の網電極20aに接続されており、二次コイルS2の端子S2bは、電極ピン18bと外周電極19bに共通に接続されている。半波整流回路15の正側出力端子は、外周電極19aに接続されている。
【0023】
これら駆動回路1とバルブ12を収納するケースには、空気を導入するとともに発生した励起原子酸素を放出するための通風経路が形成されている。本実施形態の励起原子酸素発生装置は、後述するように放電によりイオン気流を発生させることができるので、モータを用いた送風ファンを設けることなく、イオン気流によって励起原子酸素を送り出すことができる。
【0024】
次に、本実施形態の作用について説明する。
駆動回路1に直流電源2の出力電圧が印加されると、トランジスタ4には直流バイアス抵抗7によって微弱な順バイアスが与えられ、トランジスタ4は導通状態の初期段階に入りコレクタ電流が流れ始める。
【0025】
このコレクタ電流はトランス10の一次コイルP1、P2に流れることから、電磁誘導作用によって補助コイルD1に交流電圧が発生し、これが交流バイアス抵抗5を介してトランジスタ4に交流バイアスとして作用する。これによりトランジスタ4は、直流バイアス抵抗7による順バイアスと交流バイアス抵抗5による交流バイアスとの双方が加わって深くバイアスされる。このようなトランジスタ4に対するバイアスは加速度的に上昇してトランジスタ4の導通状態が深まり、遂にはトランジスタ4が飽和状態となってコレクタ電流の増加が停止する。
【0026】
これにより、トランス10の一次コイルP1、P2による電磁誘導作用は消滅してトランジスタ4に対する交流バイアスはゼロとなり、トランジスタ4は遮断状態の寸前となる。このとき、トランス10の補助コイルD1に発生する逆起電力がトランジスタ4に逆バイアスとして作用することになり、トランジスタ4は完全に遮断状態になる。
【0027】
スイッチング回路3およびトランス10の一次コイルP1、P2が以上の動作を繰り返すことにより、一次コイルP1、P2には高周波電圧が与えられるようになり、二次コイルS1、S2には例えば1500V程度の高電圧に昇圧された高周波電圧が誘起されるようになる。このような動作から、スイッチング回路3およびトランス10は、直流を交流に変換する自励式インバータを構成する。なお、発振周波数は例えば30kHz程度に設定することが実用的である。
【0028】
上記動作において、バイアスコンデンサ6は、トランジスタ4の導通、遮断のスピードアップを図る補助的作用を果たし、また、タンクコンデンサ8は、流入するコレクタ電流の波形補正作用を果たすとともに、過渡現象によるスイッチング時には必要な抑制作用を果たす。
【0029】
このようにしてトランス10の二次コイルS1、S2に発生する高周波電圧を、それぞれ電極ピン18aと網電極20bとの間、電極ピン18bと網電極20aとの間に印加すると、バルブ12内で2つの独立した放電が発生する。この放電は、フィラメント電極16aと網電極20bの巻回部分との間、フィラメント電極16bと網電極20aの巻回部分との間で生じる。この各放電により、波長253.7nmの紫外線が出力される。
【0030】
また、網電極20a、20bのそれぞれとバルブ12の間の空隙およびバルブ12の石英ガラス部分および内部空間を介した経路で無声放電が生じ、これにより網電極20a、20bとバルブ12の間の部分からオゾン(O3)が発生する。オゾンを生成する酸素を含んだ空気は網電極20a、20bの空隙から十分に供給されるので、これによって十分なオゾンを発生させることができる。発生したオゾンは、発生直後に紫外線が照射されることで光エネルギーを吸収して光化学反応により強力な酸化作用を有する励起原子酸素(O*)を発生する。
【0031】
電極ピン18a、18b間で放電させる従来構成の放電電流をIとし、この従来構成の場合と同じ紫外線放射強度を得るために必要となる上記2つの独立した放電の各放電電流をi1、i2とすれば、次の(1)式の関係が成立する。上記2つの独立した放電は、互いに放電条件が等しいことから(2)式が成立する。
I=i1+i2 …(1)
i1=i2=I/2 …(2)
【0032】
本実施形態におけるフィラメント電極16a、16bへの電子の衝突エネルギーは(3)式となり、従来構成におけるフィラメント電極16a、16bへの電子の衝突エネルギーは(4)式となる。rは、電子の衝突エネルギーの損失を等価的に表すための抵抗である。
W=i12・r=i22・r=I2/4・r …(3)
W=I2・r …(4)
【0033】
すなわち、同一の紫外線放射強度を得る場合、放電電流i1、i2は従来の放電電流Iの1/2で済むので、フィラメント電極16a、16bへの電子衝突も従来の1/2になり、衝突エネルギーは1/4になる。その結果、フィラメント電極16a、16bに塗布された電子放出物質(エミッタ)の飛散量が大幅に低減し、それが管壁に付着することによる黒化の進度がほぼ1/4になる。なお、電極ピン18aと網電極20bとの間および電極ピン18bと網電極20aとの間の何れか一方だけで放電させた場合には、スネーク放電光が観察された。
【0034】
ところで、半波整流回路15の正極端子、負極端子から外周電極19a、19b間に直流電圧を印加すると、バルブ12内の外周電極19aの巻回部分と外周電極19bの巻回部分との間で放電すなわち電子の流れが発生する。これに応じてバルブ12の外部の空気が静電気を帯びてマイナスイオン化される。このマイナスイオンは、移動に伴い空気の中性分子と衝突し、マイナスイオンの運動エネルギーを中性分子に与えながらイオン気流を発生させる。このマイナスイオン自体も、カビ、雑菌、ホコリ、チリ、花粉、タバコの煙を除去し、臭いを抑える抗臭作用を有している。
【0035】
図1には、イオン気流が流れる様子を模式的に示している。実際のイオン気流は、バルブ12の外周部付近において、外周電極19a側から外周電極19b側に向かって管軸方向に流れる。本願発明者らは、このようにして発生させたイオン気流により線香の煙が消滅することを実証試験により確認した。この送風作用により、発生した励起原子酸素は装置の外部に放出されるとともに、新たな酸素を含んだ空気が導入されるので、効率良くオゾンを発生させて励起原子酸素を生成することができる。
【0036】
このように構成された励起原子酸素発生装置は、観光バスや鉄道車両のトイレ、冷凍運搬車の庫内、生鮮食料品の加工室などに据え付けられ、励起原子酸素を供給することにより、雑菌や匂いの元となる物質に付着して有機化合物の炭素原子と結合して一酸化炭素、二酸化炭素となるとともに水素を結合して水となり、これによって殺菌および消臭を行う。このとき、直接オゾンを放出しないのでオゾン臭の生臭い臭いを発することもない。
【0037】
以上説明した本実施形態によれば、バルブ12の外周に一対の網電極20a、20bを設け、一方のフィラメント電極16aと一方の網電極20bとの間および他方のフィラメント電極16bと他方の網電極20bとの間でそれぞれ高周波放電を生じさせ、オゾンと紫外線を同時に発生させることができる。発生したオゾンは紫外線により直ちに分解して励起原子酸素を発生するので、非常に小型で軽量の励起原子酸素発生装置を構成できる。しかも、紫外線点灯用バルブ12として市販の紫外線ランプ(殺菌ランプ)を採用することができるので、専用の紫外線ランプを製作することに比べて安価で入手も容易となる利点がある。
【0038】
このように発生したオゾンを直ぐに励起原子酸素に変換して放出することにより、オゾンで得られる抗菌、脱臭などの効果を超えて、オゾンでは達成できない殺菌、消臭という効果を得ることができるようになる。また、オゾンを直接放出することがなくなり、オゾン臭を発生させることがないので、使用者に不快感を与えることも解消できる。
【0039】
オゾンおよび紫外線を発生させる放電は、フィラメント電極16a、16b間の放電ではなく、フィラメント電極16aと網電極20bとの間およびフィラメント電極16bと網電極20bとの間の2つの独立した放電(分割放電)とした。これにより、ガラス管の管軸方向中央部分(網電極20aと20bとの間)で重なるとともに、それぞれガラス管の一端側および他端側に流れる2系統の電子流が発生する。この分割放電により、同じ紫外線放射強度を得るのに必要な各放電の放電電流が従来の1/2になり、黒化現象の進度をほぼ1/4にまで低下させることができる。その結果、紫外線放射強度を維持したままで、バルブ12に関して装置の寿命を大幅に延ばすことができる。
【0040】
さらに、バルブ12の外周に金属箔を巻回して抵抗成分を小さく形成した一対の外周電極19a、19bを設け、この外周電極19a、19b間に直流電圧を印加して放電させることにより、バルブ12の外部に効率良くイオン気流を発生させている。この電子ブロア構造の採用により、従来の送風ファンが不要になり、送風手段に関して装置の寿命を大幅に延ばすことができる。また、送風ファンをなくすことにより騒音の問題も解決される。イオン気流だけでは不足する場合には送風ファンも併用すればよい。この場合には、イオン気流の分だけ送風ファンの回転速度を低下させることができるので、送風ファンのベアリング等の劣化が低減し、同様に装置の寿命を延ばすことができる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形、拡張を行うことができる。
イオン気流を発生させない場合には、半波整流回路15および外周電極19a、19bは不要である。この場合には送風ファンを設ければよい。
【0042】
外周電極19a、19bは、銅箔に限らず他の金属薄膜を巻回することで形成してもよい。また、金属薄膜を直接バルブ12の外周面に被膜として形成するようにしてもよい。
半波整流回路15を用いて直流電圧を生成したが、倍電圧整流回路を用いて直流電圧を生成してもよい。この場合、倍電圧整流回路の段数を切り替え可能に構成することにより、直流電圧の大きさを変更でき、以てイオン気流の風量を変更することができる。
【符号の説明】
【0043】
図面中、1は駆動回路(高周波電源)、3はスイッチング回路、10はトランス(漏洩型トランス)、12は紫外線点灯用バルブ、16a、16bはフィラメント電極、19a、19bは外周電極(第2放電電極)、20a、20bは網電極(第1放電電極)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング回路および漏洩型トランスによって直流電圧から2系統の高周波電圧を生成する高周波電源と、一対のフィラメント電極を備えた紫外線点灯用バルブと、この紫外線点灯用バルブの外周に配設された円筒状の金属製の網状に形成された一対の第1放電電極とを備え、
前記フィラメント電極の一方と前記第1放電電極の一方との間に前記高周波電源から一系統の高周波電圧を印加して放電させ、前記フィラメント電極の他方と前記第1放電電極の他方との間に前記高周波電源から他系統の高周波電圧を印加して放電させることにより、前記第1放電電極と前記紫外線点灯用バルブとの間の部分でオゾンを発生させるとともに前記紫外線点灯用バルブで紫外線を発生させ、これらオゾンと紫外線との光化学反応により励起原子酸素を発生させるようにしたことを特徴とする励起原子酸素発生装置。
【請求項2】
前記紫外線点灯用バルブの外周に配設され円筒状の金属薄膜で形成された一対の第2放電電極を備え、
前記高周波電源は、前記高周波電圧を整流して直流電圧を生成するように構成され、
この生成した直流電圧を前記一対の第2放電電極間に印加して前記紫外線点灯用バルブの外にイオン気流を発生させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の励起原子酸素発生装置。
【請求項3】
前記高周波電源は、車載バッテリの直流電圧、車両で生成される直流電圧、または商用交流電圧を整流して得た直流電圧を入力とすることを特徴とする請求項1または2記載の励起原子酸素発生装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−63872(P2013−63872A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203138(P2011−203138)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(591252921)ゴールドキング株式会社 (2)
【Fターム(参考)】