説明

効能成分供給装置

【課題】渦輪を用いることなく芳香成分を遠くに供給する。
【解決手段】効能成分供給装置には、芳香成分を発生させる芳香器31が設けられる。また、芳香器31には流路ハウジング34を介してシリンダ21が接続される。このシリンダ21の円筒壁36には接線方向に貫通孔37が形成され、この貫通孔37を介してシリンダ21内と流路ハウジング34内とは連通する。また、流路ハウジング34内には送風ファン35が組み付けられる。送風ファン35を駆動することにより、芳香成分を含んだ空気が貫通孔37からシリンダ21内に導入され、シリンダ21の発射口23から螺旋状に渦巻く空気が放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効能成分を供給する効能成分供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内の環境を良好に保つため、芳香成分(効能成分)を室内に拡散させるようにした芳香剤が提案されている。しかしながら、芳香成分を室内に拡散させるようにすると、芳香成分の使用量が増大することになっていた。そこで、芳香成分を含んだ渦輪を発射する空気砲を備えた供給装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、芳香成分を渦輪に乗せて遠くに供給することができるため、利用者の満足度を高めつつ芳香成分の使用量を削減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−282085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、渦輪を発射させるようにした供給装置においては、利用者の満足度を高めつつ芳香成分の使用量を削減することが可能であるが、供給装置の複雑化および高コスト化を招くことになっていた。このため、渦輪を用いることなく芳香成分を遠くに供給することが可能な供給装置が望まれていた。
【0005】
本発明の目的は、渦輪を用いることなく効能成分を遠くに供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の効能成分供給装置は、効能成分を発生させる効能成分発生手段と、外部に開口する放出口が一端側に形成され、円筒壁に接線方向に貫通する貫通孔が形成される円筒部材と、前記効能成分発生手段と前記円筒部材との間に設けられ、前記効能成分発生手段と前記円筒部材の前記貫通孔とを接続する流路部材と、前記流路部材に組み込まれ、前記効能成分発生手段から前記円筒部材に向けて前記効能成分を含んだ空気を送る送風ファンとを有し、前記効能成分を含んだ空気を、前記貫通孔から前記円筒壁の内周面に沿って導入し、前記放出口から螺旋状に放出することを特徴とする。
【0007】
本発明の効能成分供給装置は、前記流路部材内に区画される流路は、前記送風ファンから前記貫通孔にかけて絞られることを特徴とする。
【0008】
本発明の効能成分供給装置は、前記円筒部材に移動自在に収容されるピストンを有し、前記放出口から空気を放出する際に、前記ピストンを前記放出口に向けて移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、円筒部材の円筒壁に接線方向に貫通孔を形成したので、効能成分を含んだ空気を、貫通孔から円筒壁の内周面に沿って導入して放出口から螺旋状に放出することが可能となる。これにより、螺旋状に渦巻く空気に乗せて効能成分を遠くに供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態である効能成分供給装置の使用状況を示す説明図である。
【図2】効能成分供給装置を示す斜視図である。
【図3】効能成分供給装置の内部構造を示す分解斜視図である。
【図4】効能成分供給装置の内部構造を示す概略図である。
【図5】(a)および(b)は渦輪モードにおける作動状態を示す説明図である。
【図6】(a)および(b)は放出モードにおける作動状態を示す説明図である。
【図7】(a)は図3のA−A線に沿って空気砲および流路ハウジングを示す断面図であり、(b)は空気砲内および流路ハウジング内の空気の流れを示す説明図である。
【図8】貫通孔からシリンダ内に流れ込む空気の流れ方向を上方から示す概略図である。
【図9】効能成分供給装置の他の使用状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である効能成分供給装置10(以下、供給装置という)の使用状況を示す説明図である。また、図2は供給装置10を示す斜視図であり、図3は供給装置10の内部構造を示す分解斜視図である。さらに、図4は供給装置10の内部構造を示す概略図である。
【0012】
図1に示すように、車両11のインストルメントパネル12には、乗員Dに向けて渦輪V1や渦流V2を発射する供給装置10が設置されている。渦輪V1や渦流V2には効能成分として芳香成分が含まれており、芳香成分を渦輪V1や渦流V2に乗せることで遠くに供給することが可能となっている。図2に示すように、供給装置10の筐体13を構成する前面カバー14には、渦輪V1や渦流V2を発射する発射口15が形成されるとともに、後述するカートリッジ33を挿入するスロット16が形成されている。また、前面カバー14には、渦輪V1や渦流V2を発射する際に乗員Dによって操作されるトリガスイッチ17が設けられている。
【0013】
図3および図4に示すように、供給装置10には空気砲20が設けられている。この空気砲20は、円筒部材であるシリンダ21と、これに往復動自在に収容されるピストン22とを有している。シリンダ21の一端側には、外部に開口する放出口としての発射口23が形成されている。また、ピストン22の背面側には、ロッド部材25が固定されるとともに、ピストン22を発射口23に向けて付勢するバネ部材26が組み付けられている。さらに、供給装置10には電動モータ27によって駆動される回転部材28が組み付けられている。回転部材28には所定間隔を空けて複数の係合爪29が形成されており、ピストン22のロッド部材25には係合爪29に対応する係合溝30が形成されている。
【0014】
このように、係合爪29および係合溝30を形成することにより、回転部材28を回転させてピストン22を往復運動させることが可能となり、シリンダ21内の空気を発射口23から渦輪V1として発射することが可能となる。すなわち、回転部材28を回転させることにより、係合爪29が係合溝30に噛み合ってピストン22を矢印A方向の後退位置に引き込んだ後に、係合溝30から係合爪29が外れてピストン22が矢印B方向の前進位置に押し出される。このピストン22の往復運動は、回転部材28が停止するまで繰り返されることになる。
【0015】
このような空気砲20のシリンダ21内に芳香成分を充填するため、供給装置10には効能成分発生手段としての芳香器31が設けられている。芳香器31は、図示しない電熱ヒータが組み込まれた収容部32を有している。この収容部32にはカートリッジ33が挿入されており、カートリッジ33には芳香成分を浸透させたスポンジ等が封入される。そして、収容部32の電熱ヒータに通電を施すことにより、カートリッジ33を暖めて芳香成分の揮発を促すことが可能となる。すなわち、電熱ヒータに対して通電を施すことにより、芳香器31は芳香成分の揮発を促進させる芳香発生状態に制御されることになる。一方、収容部32の電熱ヒータに対する通電を停止させることにより、カートリッジ33を冷やして芳香成分の揮発を抑制することが可能となる。すなわち、電熱ヒータに対する通電を停止することにより、芳香器31は芳香成分の揮発を抑制する芳香抑制状態に制御されることになる。
【0016】
また、芳香器31とシリンダ21との間には、芳香器31からシリンダ21に空気を案内する流路部材としての流路ハウジング34が設けられている。また、流路ハウジング34内には、芳香器31からシリンダ21に向けて空気を流す送風ファン35が組み付けられている。さらに、シリンダ21の円筒壁36には貫通孔37が形成されており、この貫通孔37を介してシリンダ21内と流路ハウジング34内とは連通している。このような貫通孔37を形成することにより、送風ファン35を駆動して芳香成分をシリンダ21内に送ることが可能となる。
【0017】
これらの空気砲20、芳香器31および送風ファン35を制御するため、供給装置10には制御ユニット40が設けられている。この制御ユニット40は、図示しないマイクロプロセッサ(CPU)を備えており、このCPUにはバスラインを介してROM、RAMおよびI/Oポートが接続される。ROMには制御プログラムや各種データなどが格納され、RAMにはCPUで演算処理したデータが一時的に格納される。また、制御ユニット40には、ピストン22の作動位置を検出する位置センサ41が接続されている。さらに、制御ユニット40には、乗員Dによって操作されるトリガスイッチ17が接続されており、トリガスイッチ17の操作に基づき制御プログラムが実行されるようになっている。
【0018】
続いて、供給装置10の作動モードについて説明する。供給装置10は作動モードとして、発射口23から芳香成分を含んだ渦輪V1を発射する渦輪モード、発射口23から芳香成分を含んだ渦流V2を放出する放出モードを有している。ここで、図5(a)および(b)は渦輪モードにおける作動状態を示す説明図である。また、図6(a)および(b)は放出モードにおける作動状態を示す説明図である。さらに、図7(a)は図3のA−A線に沿って空気砲および流路ハウジング34を示す断面図であり、図7(b)は空気砲内および流路ハウジング34内の空気の流れを示す説明図である。
【0019】
図5(a)および(b)に示すように、渦輪モードにおいては、電動モータ27を駆動して回転部材28を回転させることにより、ピストン22を往復させて発射口23から連続的に渦輪V1を発射させている。このとき、芳香器31は芳香発生状態に制御され、送風ファン35は駆動状態に制御される。これにより、図5(a)に示すように、ピストン22が後退位置に移動する毎にピストン22の前面側に芳香成分を充填することができ、図5(b)に示すように、芳香成分を含んだ渦輪V1を発射口23から発射させることが可能となる。このように、芳香成分を渦輪V1に乗せて遠くに供給することができ、芳香成分の使用量を削減しつつ乗員Dの満足度を高めることが可能となる。
【0020】
また、図6(a)に示すように、放出モードにおいては、始めに所定角度で回転部材28を停止させ、ピストン22を後退位置に保持する。このとき、芳香器31は芳香発生状態に制御され、送風ファン35は駆動状態に制御される。これにより、流路ハウジング34内の芳香成分を含んだ空気は、貫通孔37からシリンダ21内に送り込まれる。ここで、図7(a)に示すように、シリンダ21に形成される貫通孔37は、円筒壁36の接線方向に貫通するように形成されている。すなわち、図7(b)に示すように、シリンダ21内には円筒壁36の内周面38に沿って空気が導入され、シリンダ21内を螺旋状に空気が流れることになる。このように、シリンダ21内に螺旋状に渦巻く空気が流れ込むと、図6(b)に示すように、係合溝30に係合爪29を噛み合わせたまま回転部材28を矢印α方向に回動させ、ピストン22が発射口23に向けてゆっくりと押し出される。このときのピストン22の移動速度は、渦輪モード時に比べて大幅に遅くなるように制御されている。これにより、発射口23から螺旋状に渦巻く渦流V2を放出させることが可能となり、単に空気を放出させた場合に比べて大幅に飛行距離を伸ばすことが可能となる。これにより、渦輪V1を用いることなく芳香成分を遠くに供給することができ、芳香成分の使用量を削減しつつ乗員Dの満足度を高めることが可能となる。
【0021】
しかも、図7(a)および(b)に示すように、流路ハウジング34内に区画される流路39は、送風ファン35から貫通孔37にかけて徐々に絞られている。このように、送風ファン35から貫通孔37にかけて流路断面積を徐々に縮小させることにより、貫通孔37に向けて流速を引き上げることができ、シリンダ21内に高速の渦流を発生させることが可能となる。また、図8は貫通孔37からシリンダ21内に流れ込む空気の流れ方向を上方から示す概略図である。図8に示すように、貫通孔37からシリンダ21内に流れ込む空気の流れ方向αが、空気の放出方向βに対して傾斜するように、シリンダ21の貫通孔37や流路ハウジング34の流路39が構成されている。すなわち、流れ方向αが放出方向βのベクトル成分を持つように、シリンダ21の貫通孔37や流路ハウジング34の流路39が構成されている。このように貫通孔37や流路39を構成することにより、流速の低下を抑制しながら発射口23に向けて空気を案内することができる。このように、シリンダ21内の流速を高く保つことにより、発射口23から放出される渦流V2を安定させることができ、芳香成分をより遠くまで供給することが可能となる。
【0022】
なお、前述の説明では、放出モードにおいてピストン22を発射口23に向けて押し出しているが、これに限られることはなく、放出モードにおいてピストン22を後退位置に保持しても良い。このように、ピストン22を後退位置に保持していた場合であっても、送風ファン35を駆動することで発射口23から渦流V2を放出することが可能となる。また、図示する供給装置10においては、芳香器31から発生した芳香成分を余すことなく放出するため、渦輪モードを実行した後に所定時間に渡って放出モードを実行することになるが、放出モードを単独で実行しても良いことはいうまでもない。さらに、芳香成分を余すことなく放出するために、渦輪モードの実行後に放出モードを実行する際には、放出モードにおいて芳香器31を芳香抑制状態に制御することが望ましい。
【0023】
また、前述の説明では、供給装置10を車両11に設置した場合について説明したが、供給装置10の使用環境としては車室内に限られることはなく、室内で供給装置10を使用しても良い。ここで、図9は供給装置10の他の使用状況を示す説明図である。図9に示すように、机42の上に供給装置10を設置することにより、作業者Wに向けて芳香成分を含んだ渦輪V1や渦流V2を供給しても良い。また、供給装置10の設置箇所としては、机42の上に限られることはなく、室内の天井や壁に供給装置10を設置しても良く、テレビ台に供給装置10を設置しても良い。
【0024】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前述の説明では、供給装置10は、渦流V2を放出する放出モードだけでなく、渦輪V1を発射する渦輪モードを備えているが、これに限られることはなく、放出モードだけを備えていても良いことはいうまでもない。また、渦輪モードを削減した供給装置においては、シリンダ21内からピストン22を削減するとともに、ピストン22の駆動機構を削減しても良い。このようにピストン22やその駆動機構を削減することにより、供給装置の大幅な低コスト化を達成することが可能となる。さらに、前述の説明では、効能成分として芳香成分を供給しているが、効能成分としては芳香成分に限られることはなく、覚醒効果を有するカプサイシン成分やイソチオシアネート成分等を効能成分として供給しても良い。さらに、供給装置10に設けられる芳香成分は1種類に限られることはなく、複数の芳香成分を切り換えて供給しても良い。
【符号の説明】
【0025】
10 効能成分供給装置
21 シリンダ(円筒部材)
22 ピストン
23 発射口(放出口)
31 芳香器(効能成分発生手段)
34 流路ハウジング(流路部材)
35 送風ファン
37 貫通孔
38 内周面
39 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
効能成分を発生させる効能成分発生手段と、
外部に開口する放出口が一端側に形成され、円筒壁に接線方向に貫通する貫通孔が形成される円筒部材と、
前記効能成分発生手段と前記円筒部材との間に設けられ、前記効能成分発生手段と前記円筒部材の前記貫通孔とを接続する流路部材と、
前記流路部材に組み込まれ、前記効能成分発生手段から前記円筒部材に向けて前記効能成分を含んだ空気を送る送風ファンとを有し、
前記効能成分を含んだ空気を、前記貫通孔から前記円筒壁の内周面に沿って導入し、前記放出口から螺旋状に放出することを特徴とする効能成分供給装置。
【請求項2】
請求項1記載の効能成分供給装置において、
前記流路部材内に区画される流路は、前記送風ファンから前記貫通孔にかけて絞られることを特徴とする効能成分供給装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の効能成分供給装置において、
前記円筒部材に移動自在に収容されるピストンを有し、
前記放出口から空気を放出する際に、前記ピストンを前記放出口に向けて移動させることを特徴とする効能成分供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−162016(P2011−162016A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25689(P2010−25689)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【出願人】(595128455)大栄工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】