説明

動作判別装置、動作判別プログラムおよびコンピュータ読取り可能な記録媒体

【課題】 ユーザの動作を精度高く判別する動作判別装置を提供する。
【解決手段】 ユーザによって動かされることによって描かれる軌跡の形状を3次元的に検出し、その検出結果を示す検出データを出力する動作検出部と、検出データの一部を抽出する検出データ抽出部32と、検出データ抽出部32により抽出された検出データに基づいて形成される3次元の軌跡を、動作検出部の鉛直方向に対する傾きに基づいて基準平面に投影することにより2次元の軌跡を形成するとともに、2次元の軌跡を組み合わせることによって、ユーザによって描かれた図形を形成する図形形成部33と、形成された図形と予め登録された図形とを比較することにより、ユーザによって描かれた図形を検索する検索部とを備え、検出データ抽出部32は、図形が描かれた平面に対して略垂直な方向に動作検出部2が所定の距離以上動かされた場合に、検出データの抽出を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの動作を判別する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加速度センサが内蔵された装置を振ったり、傾けたりすることにより、当該装置に情報を入力できる装置が実現されている。
【0003】
例えば、振ることにより、数字や簡単な記号、例えば○や×、を入力できる携帯電話機や、傾ける角度を変化させることによりゲームを行えるゲーム機が公表されている。
【0004】
また、特許文献1には、振ることにより受話音量の調整ができる携帯電話機が記載されている。
【0005】
また、特許文献2および3には、傾けることにより、情報の検索および閲覧のための操作ができる携帯端末が記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、振ることにより、着信報知手段の動作の切替えおよびバックライトの操作を行うことができる携帯端末が記載されている。
【0007】
一方、加速度センサが内蔵された装置の移動パターンから当該装置を移動させたユーザの認識を行う装置が実現されている。
【0008】
例えば、特許文献5には、筆記具の運筆パターンからユーザの書き癖パターンを検出することによりユーザを判別する筆跡判別装置が記載されている。上記筆記具は、筆記具に加えられた筆圧を検出する筆圧センサ、筆記具の傾きを検出する傾きセンサ、筆記具の運筆に伴う加速度を検出する加速度センサを備えており、これらのセンサからの情報を基に、予め決められた特定の文字、例えばユーザの名前、を書く場合の書き癖が判別される。
【0009】
また、特許文献6には、筆跡形状、運筆速度、運筆加速度、筆圧を検出することにより、高い精度で認証が可能な署名認証装置が記載されている。
【0010】
また、特許文献7には、姿勢検出手段の移動パターンから、予め定められた基準動作と実際に行われた動作とのズレを検出する人体動作判別装置が記載されている。
【特許文献1】特開平11−252240号公報(1999年9月17日公開)
【特許文献2】特開平2002−149616号公報(2002年5月24日公開)
【特許文献3】特開2003−162371号公報(2003年6月6日公開)
【特許文献4】特開2002−354097号公報(2002年12月6日公開)
【特許文献5】特開2000−231633号公報(2000年8月22日公開)
【特許文献6】特開2003−271967号公報(2003年9月26日公開)
【特許文献7】特開2000−213967号公報(2000年8月4日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上記従来の構成では、ユーザの動作を判別する場合に、以下のような問題が生じる。
【0012】
例えば、上記携帯電話機および携帯端末においては、単純な動作によって発せられた信号を判別することはできても、複雑な動作によって発せられた信号を判別することは困難であるという問題が生じる。
【0013】
また、特許文献5および6に記載の筆跡判別装置においては、ユーザが複数の文字のうちいずれかの文字を選択して書いた場合に、ユーザがどの文字を書いたのかを判別することは困難であるという問題が生じる。
【0014】
また、特許文献7に記載の人体動作判別装置においては、ユーザが複数の動作のうちいずれかの動作を選択して動作を行った場合に、ユーザがどの動作を行ったのかを判別することは困難であるという問題が生じる。
【0015】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、ユーザが行った動作のパターンを精度高く判別することができる動作判別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る動作判別装置は、上記の課題を解決するために、自装置の位置および傾きを基に空間に設定される平面である基準平面に対して図形を描く動作のパターンを判別する動作判別装置であって、ユーザによって動かされる動作検出部であって、当該動作検出部が動かされることによって描かれる軌跡の形状を3次元的に検出し、その検出結果を示す検出データを出力する動作検出部と、上記検出データの一部を抽出する検出データ抽出手段と、上記検出データ抽出手段により抽出された検出データに基づいて形成される3次元の軌跡を、上記動作検出部の鉛直方向に対する傾きに基づいて上記基準平面に投影することにより2次元の軌跡を形成するとともに、上記2次元の軌跡を組み合わせることによって、ユーザによって描かれた図形を形成する図形形成手段と、上記図形形成手段によって形成された図形と予め登録された図形とを比較することにより、上記図形形成手段によって形成された図形を判別する判別手段とを備え、上記検出データ抽出手段は、上記基準平面に対して略垂直な方向に上記動作検出部が所定の距離以上動かされた場合に、検出データの抽出を停止することを特徴としている。
【0017】
本発明に係る動作判別方法は、上記の課題を解決するために、動作判別装置の位置および傾きを基に空間に設定される平面である基準平面に対して図形を描く動作のパターンを判別する動作判別方法であって、ユーザによって動かされる動作検出部であって、当該動作検出部が動かされることによって描かれる軌跡の形状を3次元的に検出し、その検出結果を示す検出データを出力する動作検出工程と、上記検出データの一部を抽出する検出データ抽出工程と、上記検出データ抽出工程において抽出された検出データに基づいて形成される3次元の軌跡を、上記動作検出部の鉛直方向に対する傾きに基づいて上記基準平面に投影することにより2次元の軌跡を形成するとともに、上記2次元の軌跡を組み合わせることによって、ユーザによって描かれた図形を形成する図形形成工程と、上記図形形成工程において形成された図形と予め登録された図形とを比較することにより、上記図形形成工程において形成された図形を判別する判別工程とを含み、上記検出データ抽出工程において、上記基準平面に対して略垂直な方向に上記動作検出部が所定の距離以上動かされた場合に、検出データの抽出を停止することを特徴としている。
【0018】
動作判別装置が人の動作のパターンを判別する場合には、予め定められた動作パターンと実際に行われた動作のパターンとを比較し、実際に行われた動作パターンが予め定められた動作パターンのどれに該当するのか判別する。
【0019】
しかし、人の一連の動作には、判別の対象となる動作(以下では、有効動作と称する)と判別の対象とはならない動作(以下では、無効動作と称する)とが混在している場合があり、無効動作のために判別の精度が下がる可能性がある。
【0020】
上記の構成によれば、動作検出部は、当該動作検出部がユーザに動かされることによって描かれる軌跡の形状を3次元的に検出する。3次元的に検出するとは、3つの直交する座標軸によって軌跡の形状と位置とが示されることを意味する。検出データ抽出手段は、検出データの一部を抽出し、上記基準平面に対して略垂直な方向に動作検出部が所定の距離以上動かされた場合に、検出データの抽出を停止する。図形形成手段は、検出データ抽出手段によって抽出された3次元の軌跡を、動作検出部の鉛直方向に対する傾きに基づいて基準平面に投影することにより、2次元の軌跡を形成するとともに、当該2次元の軌跡を組み合わせることによって、ユーザによって描かれた図形を形成する。図形判別手段は、図形形成手段によって形成された図形と予め登録された図形とを比較することにより、図形形成手段によって形成された図形を判別する。
【0021】
検出データ抽出手段が、上記基準平面に対して略垂直な方向に動作検出部が所定の距離以上動かされた場合に、検出データの抽出を停止するという構成により、ユーザが基準平面に対して略垂直な方向に腕等を動かす動作を指標として、有効動作と無効動作とを区別することができる。
【0022】
それゆえ、動作検出部によって検出されたユーザの一連の動作から有効動作を抽出し、当該有効動作からユーザの動作のパターンを判別することができる。
【0023】
例えば、図形を描くための一連の動作のうち、図形の一部を描画するための動作と次の描画位置に腕を移動させるための動作とを、基準平面から腕を離すという動作を認識することによって区切ることができる。したがって、ユーザの動作パターンを判別する精度を高めることができる。
【0024】
なお、上記「3次元の軌跡を基準平面に投影する」とは、3次元の軌跡の形状を示す3つの座標成分を、基準平面に含まれる直交する2つの座標軸によって示される2つの座標成分に変換することを意味する。
【0025】
ユーザは、自身の目の前にあると想定される基準平面に対して図形(軌跡)を描くが、その図形は3次元的な(立体的な)ものである。この3次元の図形の3つの座標成分から、動作検出部と基準平面とを結ぶ直線の方向に関する座標成分を取り除くことにより、ユーザが描いた図形を2次元的(平面的)に捉えることができる。
【0026】
また、上記動作検出部は、互いに直交する3つの座標軸を有する加速度センサを含んでいることが好ましい。
【0027】
加速度センサは、加速度が生じた方向と加速度の大きさを検出するものである。身体の一部、例えば腕、を動かす場合には、動作の開始時に加速度が生じ、動作を止める時にも逆方向の加速度が生じる。このような動作に伴う加速度のベクトルを検出することにより、動作を検出することができる。
【0028】
それゆえ、上記の構成によれば、3軸加速度センサによって、動作検出部が動かされた軌跡を3次元的に検出できる。
【0029】
また、上記動作検出部は、互いに直交する3つの座標軸を有する角速度センサをさらに含んでいることが好ましい。
【0030】
角速度センサは、軸周りの角速度を検出するセンサである。加速度センサに加え、角速度センサを用いることにより、より精密な動作判定を行うことができる。
【0031】
それゆえ、上記の構成によれば、動作検出部が動かされた軌跡を3次元的に検出する精度を高めることができる。
【0032】
また、上記動作判別装置は、ユーザの動作が動作判別の対象になるかどうかを示す判別命令を受け付ける命令受信手段をさらに備え、上記検出データ抽出手段は、上記判別命令に基づいて上記検出データの抽出を行うことが好ましい。
【0033】
上記の構成によれば、命令受信手段は、ユーザの動作が動作判別の対象になるかどうかを示す判別命令を受信し、この判別命令に基づいて検出データ抽出手段は検出データの抽出を行う。
【0034】
それゆえ、基準平面に対して略垂直な方向に動作検出部が所定の距離以上動かされる動作を動作判別の指標にできることに加え、ユーザの動作が動作判別の対象になるかどうかを区別する基準を、命令受信手段に接続される外部の入力装置を介して得ることができ、ユーザの動作パターンを判別する精度を高めることができる。
【0035】
また、上記動作判別装置は、時間を計測するタイマーをさらに備え、上記検出データ抽出手段は、上記タイマーを参照することにより上記動作検出部の所定の時間内における動作の変化量を算出し、当該変化量に基づいて上記検出データの抽出を行うことが好ましい。
【0036】
上記の構成によれば、検出データ抽出手段は上記タイマーを参照することにより上記動作検出部の所定の時間内における動作の変化量を算出し、当該変化量に基づいて検出データの抽出を行う。
【0037】
それゆえ、検出データ抽出手段は、動作検出部が一定時間所定の移動様式で動かされた場合、例えば、動作検出部が一定時間ほとんど動かされなかった場合や動作検出部が回転させられるスナップ動作が行われた場合に、検出データの抽出を停止したり、再開したりすることができる。
【0038】
したがって、基準平面に対して略垂直な方向に動作検出部が所定の距離以上動かされる動作を動作判別の指標にできることに加え、動作検出部が特定の移動様式で動かされる動作を指標にすることができ、ユーザの動作パターンを判別する精度を高めることができる。
【0039】
また、上記図形形成手段は、複数の図形形成プログラムに基づき上記図形を形成するものであることが好ましい。
【0040】
上記の構成によれば、図形形成手段は、複数の図形形成プログラムに基づき上記図形を形成する。
【0041】
それゆえ、図形形成の様式を、例えばユーザが描く図形の種類に応じて、適宜変更することができる。したがって、動作が類似しているために判別が難しい動作が行われた場合でも、適切な判断ができる可能性を高めることができる。
【0042】
また、上記動作判別装置は、上記検出データ抽出手段の抽出動作が、開始されたことおよび停止されたことを報知する報知部をさらに備えることが好ましい。
【0043】
上記の構成により、検出データ抽出手段の動作が切り替わったことを報知部により報知することができる。それゆえ、現在行われている動作が有効な動作として認識されているか、無効な動作として認識されているかを報知できる。
【0044】
なお、上記報知部としては、文字を表示する表示部、音声を出力するスピーカ、光を発する発光部、振動を伝える振動部、等を挙げることができる。
【0045】
また、上記動作判別装置は、上記動作検出部の、鉛直方向に対する傾きまたは水平方向に対する傾き、もしくはその両方を検出する傾き検出部と、上記傾きに基づき、上記図形を補正する補正手段とをさらに備えることが好ましい。
【0046】
ユーザが同じ図形を描く動作を行った場合でも、動作検出部の、鉛直方向に対する傾きまたは水平方向に対する傾きが異なれば、動作判別装置によって認識される図形の形状は異なる可能性がある。例えば、鉛直方法の傾きが異なれば、図形の縦横の比率が変化し、横長または縦長の図形として認識される。また、水平方向の傾きが異なれば、回転した状態の図形が認識される。
【0047】
上記の構成によれば、傾き検出部によって検出された、動作検出部の鉛直方向に対する傾きに基づいて、補正手段は上記図形を補正する。
【0048】
それゆえ、動作検出部の傾きが変化することによって生じる上記図形の形状の変化を補正することができる。その結果、ユーザが動作検出部を通常よりも傾けた状態で移動させた場合でも、ユーザの動作パターンを判別する精度を維持することができる。
【0049】
なお、上記動作判別装置が備える各手段を、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより動作判別装置を実現する動作判別装置の動作判別装置プログラムおよびそれを記憶したコンピュータ読取り可能な記録媒体も本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0050】
本発明に係る動作判別装置は、以上のように、自装置の位置および傾きを基に空間に設定される平面である基準平面に対して図形を描く動作のパターンを判別する動作判別装置であって、ユーザによって動かされる動作検出部であって、当該動作検出部が動かされることによって描かれる軌跡の形状と位置とを3次元的に検出し、その検出結果を示す検出データを出力する動作検出部と、上記検出データの一部を抽出する検出データ抽出手段と、上記検出データ抽出手段により抽出された検出データに基づいて形成される3次元の軌跡を上記基準平面に投影することにより2次元の軌跡を形成するとともに、上記2次元の軌跡を組み合わせることによって、ユーザによって描かれた図形を形成する図形形成手段と、上記図形形成手段によって形成された図形と予め登録された図形とを比較することにより、上記図形形成手段によって形成された図形を判別する判別手段とを備え、上記検出データ抽出手段は、上記基準平面に対して略垂直な方向に上記動作検出部が所定の距離以上動かされた場合に、検出データの抽出を停止する構成である。
【0051】
それゆえ、基準平面に対して略垂直な方向に上記動作検出部が所定の距離以上動かされるという動作を指標として、ユーザの一連の動作から判別の対象となる動作を抽出することができ、ユーザの動作を判別する精度を高めることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1〜図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。以下では、本発明の動作判別装置の一例として、携帯端末を例に挙げて説明する。
【0053】
図2は、本実施形態の携帯端末1の構成を示す概略図である。同図に示すように、携帯端末1(動作判別装置)は、動作検出部2(動作検出部)、動作判別部3、傾きセンサ4(傾き検出部)、操作部5、表示部6、スピーカ7を備えている。
【0054】
動作検出部2は、携帯端末1がユーザによって振られた場合に、どの方向にどれくらいの強さで振られたのかを検出するためのものである。動作検出部2は、加速度センサ21、加速度データ処理部22、角速度センサ23、角速度データ処理部24を備えている。
【0055】
図3(a)は加速度センサ21の、図3(b)は角速度センサ23の、出力の形式を示す概略図であり、図3(c)および(d)は加速度センサ21のX軸、Y軸、Z軸の方向を示す概略図である。
【0056】
加速度センサ21は、互いに直交する3つの座標軸(X軸、Y軸、Z軸)方向の加速度を検出するものである。図3(a)に示すように、加速度センサ21は、検出した加速度のX軸成分、Y軸成分、Z軸成分をそれぞれ加速度データ処理部22へ出力する。
【0057】
また、図3(c)に示すように、X軸とY軸とによって形成される平面(XY平面)は、携帯端末1の真正面に形成されており、Z軸はこのXY平面に対して垂直に延びている。
【0058】
さらに、図3(d)に示すように、XY平面は、鉛直方向に略垂直な平面として想定されており、携帯端末1に対して平行にはならず、Y軸は携帯端末1の長手方向の軸に対して角度θだけ変位している。この角度θは、ユーザが携帯端末1を手に持った場合に、携帯端末1の鉛直方向に対する傾きに相当するものである。携帯端末1の持ち方はユーザによって異なると考えられるため、XY平面の鉛直方向に対する角度θはユーザによって設定可能、または傾きセンサ4によって自動で検出されることが好ましい。
【0059】
角度θは、所定のボタンが押された時の携帯端末1の鉛直方向に対する傾きに基づいて設定されてもよいし、携帯端末1の電源が投入された時の携帯端末1の鉛直方向に対する傾きに基づいて設定されてもよい。鉛直方向に対する傾きは、後述する傾きセンサ4によって検出される。
【0060】
加速度データ処理部22は、加速度センサ21から出力された信号を処理するものであり、例えば、不要成分の除去やAD変換などの処理が行われる。加速度データ処理部22は、処理を施した加速度データを検出データ抽出部32へ出力する。
【0061】
角速度センサ23は、X軸、Y軸、Z軸を中心とした回転速度を検出するものである。図3(b)に角速度センサ23の出力の形式を示す。図3(b)に示すように、角速度センサ23は、X軸、Y軸、Z軸を中心とした回転速度を示す信号(ωx、ωy、ωz)を角速度データ処理部24へ出力する。
【0062】
角速度データ処理部24は、角速度センサ23から出力された信号を処理するものであり、例えば、不要成分の除去やAD変換などの処理が行われる。角速度データ処理部24は、処理を施したデータを検出データ抽出部32へ出力する。
【0063】
傾きセンサ4は、鉛直方向および水平方向に対する携帯端末1の傾きを検出するものである。この傾きセンサ4により、鉛直方向に対する加速度センサ21のY軸の傾きおよび水平方向に対するX軸の傾きを検出できる。傾きセンサ4は、検出した傾きに関する情報(傾き情報)を補正部34へ出力する。
【0064】
動作判別部3は、インターフェイス(IF)31(命令受信手段)、検出データ抽出部32(検出データ抽出手段)、図形形成部33(図形形成手段)、補正部34(補正手段)、検索部35(判別手段)、メモリ36、出力制御部38を備えている。
【0065】
IF31は、操作部5を介して入力されたユーザの命令を受け付け、有効信号(判別命令)を検出データ抽出部32へ出力するものである。また、IF31は、ユーザの命令に基づき、動作検出部2の動作のON/OFFの制御を行うものである。
【0066】
検出データ抽出部32は、加速度データ処理部22および角速度データ処理部24から出力された加速度データおよび角速度データを受け取り、加速度データおよび角速度データの抽出を行うものである。
【0067】
図1は、検出データ抽出部32の構成を示す概略図である。同図に示すように、検出データ抽出部32は、Z軸出力算出部41、変化量算出部52、タイマー53、出力部42を備えている。
【0068】
Z軸出力算出部41は、加速度データ処理部22および角速度データ処理部24から出力された加速度データおよび角速度データのうち、Z軸成分の変化量を算出するものである。Z軸出力算出部41は、Z軸成分の変化量が所定量以上であった場合に、図形形成命令を図形形成部33へ出力する。また、Z軸出力算出部41は、加速度データおよび角速度データを出力部42へ出力する。
【0069】
出力部42は、Z軸出力算出部41から受け取った加速度データおよび角速度データのうち、一部のデータを図形形成部33へ出力するものである。出力部42は、データ出力状態と停止状態との2つの状態に切替わることができ、この切替えはIF31から出力される有効信号によって行われる。出力部42は、有効信号を受信している間はデータ出力状態となる。
【0070】
図形形成部33は、検出データ抽出部32によって抽出された加速度データおよび角速度データを基にユーザが描いた文字を形成するものである。具体的には、検出データ抽出部32から出力される加速度データおよび角速度データを基に文字の一画である部分文字(部分図形)を形成し、当該部分文字を図示しないキャッシュメモリに順次記憶し、IF31から図形形成命令を受け取った時点でキャッシュメモリに記憶されているデータに基づいてひとつの文字を形成する。
【0071】
加速度データおよび角速度データに基づいて上記部分文字を形成する方法については後述する。
【0072】
補正部34は、傾きセンサ4から出力された傾き情報に基づいて、図形形成部33によって形成された文字を補正するものである。補正部34は、補正した文字のデータを検索部35へ出力する。この補正方法の詳細については後述する。
【0073】
検索部35は、補正部34から出力された文字データが示す文字と最も類似度が高い文字を、メモリ36に記憶されている文字テーブル37に登録されている文字から検索するものである。検索部35は、検索結果を出力制御部38へ出力する。この検索方法の詳細については後述する。
【0074】
文字テーブル37は、動作判別部3によって判別可能な文字が登録されているテーブルである。
【0075】
出力制御部38は、検索部35から出力された検索結果に基づいて、表示部6またはスピーカ7、もしくはその両方を制御することにより所定の出力を行うものである。所定の出力とは、ユーザが描いた文字を表示部6、例えば液晶ディスプレィ、に表示することであってもよいし、スピーカ7からユーザが描いた文字に対応する音声を出力することであってもよい。
【0076】
(文字形成方法)
次に、図形形成部33における文字形成方法について説明する。上述したように、図形形成部33は、加速度データおよび角速度データに基づいて部分文字(文字の1画)を形成し、これら部分文字を重ね合わせて、ユーザが描いたひとつの文字を形成する。まず、加速度データおよび角速度データに基づいて部分文字を形成する方法(動作パターンを判別する方法)について説明する。
【0077】
ユーザが描いた文字を判別するためには、加速度データおよび角速度データの両方が不可欠というわけではなく、少なくとも加速度データが取得できればよい。加速度データのみを用いる場合には、XY、YZ、ZX平面とそれぞれ平行な射影を文字として認識させ、腕の縦横の動きを判別させればよい。特に、固定された平面(例えば、黒板)に描かれた文字を認識させる場合には、角速度データは利用しなくてもよい。
【0078】
一方、角速度データを利用する場合には、ωの成分(図3参照)を利用できるため、加速度データから検出された動作パターンをω成分で補正し、XY、YZ、ZX平面と平行な射影として認識することにより、固定された平面に描かれた文字のみならず、自由空間に書かれた文字を判別することができる。換言すれば、縦横の腕の動きに加えて、手首の動きを判別することができるため、文字を判別する精度を高めることができる。
【0079】
動作パターンを判別する方法として、例えば、多変量解析の主成分分析法を用いることができる。この手法において主成分を求めるには、データの重心を通る直線を1本定め、各点からこの直線への距離の2乗総和が最小になる直線を決定すればよい。具体的には、加速度と角速度との分散共分散行列を求め、固有値が最大となる固有ベクトルを計算する。この固有ベクトルの第1成分(X、Y、Z)が主要な動作成分となる。そして、加速度と角速度との主要な方向の組み合わせにより動作パターン(部分文字)を判別する。
【0080】
さらに、上記のようにして判別された部分文字を重ね合わせて、ひとつの文字を形成する。この場合には、各部分文字の書き始めの座標から、各部分文字の相対的な位置関係を算出し、当該位置関係を維持した状態で各部分文字を重ね合わせればよい。
【0081】
なお、図形形成部33は複数の文字形成プログラムを備え、ユーザの指示に基づき複数の文字形成プログラムを切替えることができる構成であることが好ましい。文字形成プログラムとして、例えば、ひらがなのみを認識するための文字形成プログラム、特定の文字、例えばギリシャ文字、は認識しない文字形成プログラムを挙げることができる。例えば、ギリシャ文字を認識しない文字形成プログラムを用いた場合には、「α」を描いても、「人」と認識される。
【0082】
このように判別する対象を予め絞ることにより、ユーザが描いた文字を判別する精度を高めることができる。
【0083】
(補正方法)
次に、補正部34における文字の補正方法について図4を用いて説明する。図4は、補正前の文字と補正後の文字との例を示す概略図である。
【0084】
携帯端末1の鉛直方向に対する傾き(上記角度θ、図3(d)参照)は、常に一定に維持されるわけではなく、使用状況によって変化する可能性が高い。例えば、所定の傾き(角度θ)よりも傾けられた場合(携帯端末1が水平に近い状態で振られた場合)には、図4左図に示すように、上下に圧縮されたような文字として認識される。
【0085】
このように文字が変形した形で認識されると、検索部35において当該文字が正確に判別されない虞がある。そこで、携帯端末1の傾きに基づいて、認識された文字を補正することが好ましい。具体的には、所定の基準平面に対する、ユーザが実際に文字を描いた平面の傾きを算出し、文字の上下方向の幅を補正する。この補正を行うと、図4
右図に示すように、正常な形の文字として認識される。
【0086】
上記補正を行う場合に、補正部34は、傾きセンサ4から、携帯端末1の傾き情報を取得し、この傾き情報に基づいて補正を行う。
【0087】
なお、この補正は、ユーザが文字を描くごとに毎回行われてもよいし、検索部35において文字が特定できなかった場合に行われてもよい。
【0088】
また、携帯端末1の傾きは、傾きセンサ4を用いて検出してもよいし、加速度センサのZ軸方向への、動作検出部2の動作から検出してもよい。
【0089】
また、携帯端末1の傾きは、文字を描く動作の開始時点において算出してもよいし、文字を描く動作の間の傾きを平均することによって算出しもよい。
【0090】
(検索方法)
次に、検索部35における文字の検索方法(判別方法)について説明する。検索部35において、ユーザが描いた文字を判別する方法は、特に限定されず、補正部34から出力された文字について、文字テーブル37を参照することによって、一文字ずつ判別できるものであればよい。
【0091】
文字判別方法としては、例えば、パターンマッチングを用いる方法や、パターンとテンプレートの内積を求めて判断する単純類似度法等、何でもよく、判別対象となる文字の複雑さに応じて適宜変更すればよい。
【0092】
また、文字テーブル37の構造も特に限定されず、階層構造を有しているものであってもよいし、階層構造を有していないものであってもよい。また、文字テーブル37が階層構造を有している場合には、上位階層から順次検索を実行してもよいし、特定の階層を直接検索できるようにしてもよい。
【0093】
また、階層の形成方法も限定されず、画数の少ない文字から画数の多い文字へと、画数に応じて階層を形成してもよいし、ひらがな、カタカナ、漢字、数字など、文字の種類ごとに階層を形成してもよい。
【0094】
なお、ユーザが描いた文字をひとつに絞りきれない場合には、複数の文字の候補を表示部6に表示し、ユーザに所望の文字を選択させてもよい。
【0095】
(処理の流れ)
次に携帯端末1における処理の流れについて図5を用いて説明する。図5は、携帯端末1における処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0096】
同図に示すように、ユーザにより文字入力操作の開始信号が、例えば特定のボタンを押すことにより携帯端末1に入力されると、加速度センサ21および角速度センサ23は、携帯端末1が振られることによって生じる加速度および角速度の検出を開始し、加速度データおよび角速度データを対応するデータ処理部へ出力する(S1)。
【0097】
加速度データ処理部22、角速度データ処理部24は、受け取ったデータを処理し、検出データ抽出部32へ出力する。上記データは、検出データ抽出部32において、Z軸出力算出部41を介して出力部42へ送られる。
【0098】
ユーザは、文字の一画を描く動作を行っている間は、操作部5に備えられた文字入力ボタンを押し、文字の一画を描く動作を終えると文字入力ボタンを押す操作をやめる。
【0099】
文字入力ボタンが押されると、その信号(有効信号)はIF31を介して出力部42へ送られる。出力部42は、有効信号を受信している間は、加速度データおよび角速度データを図形形成部33へ出力する(S2)。
【0100】
出力部42からの出力が途切れると、図形形成部33は、それまで出力部42から出力された加速度データおよび角速度データに基づいて、ユーザが一連の動作によって描いた文字の一画(部分文字)を形成する(S3)。図形形成部33は、形成した部分文字のデータを図示しないキャッシュメモリに記憶する。
【0101】
ユーザは、次の一画を描く場合には、再び文字入力ボタンを押しながら携帯端末1を振る。ひとつの文字を描き終えると、ユーザは文字入力ボタンを押す操作をやめるとともに、文字を描いた仮想空間平面である基準平面に対して携帯端末1を遠ざける動作を行う。
【0102】
この動作により、加速度センサ21のZ軸成分の出力が増加する。Z軸出力算出部41は、Z軸成分の出力が所定の閾値以上になったことを検出すると(S4にて、YES)、図形形成命令を図形形成部33へ出力する。
【0103】
図形形成命令を受け取ると、図形形成部33は、その時点までにキャッシュメモリに記憶しておいた部分文字を重ね合わせ、ひとつの文字を形成する(S5)。図形形成部33は、形成した文字の文字データを補正部34へ出力する。
【0104】
図形形成部33から文字データを受け取ると、補正部34は、傾きセンサ4から出力された傾き情報を基に上記文字の補正を行う(S6)。補正部34は、補正を施した文字データを検索部35へ出力する。
【0105】
文字データを受け取ると、検索部35は、文字データの示す文字と最も類似度の高い文字を文字テーブル37から検索する(S7)。検索部35は、検索結果を出力制御部38へ出力する。
【0106】
検索結果を受け取ると、出力制御部38は、検索結果が示す文字を表示部6に表示するとともに、スピーカ7を介して、当該文字に対応する音声を出力する(S8)。例えば、「あ」という文字が入力された場合には、「あ」を表示部6に表示するとともに、「あ」という音声をスピーカ7から出力してもよい。
【0107】
ユーザが文字をひとつだけ入力する場合には、ユーザは所定の操作、例えば、特定のボタンを押すという操作を行い、この操作により一連の処理は終了される(S9にて、YES)。
【0108】
一方、ユーザが続けて次の文字を入力する場合には(S9にて、NO)、ユーザは、再び文字入力ボタンを押しながら携帯端末1を振る。検出データ抽出部32は、文字入力ボタンが押されたことを検出すると、検出データの出力を再開する(S2に戻る)。そして、すべての文字が入力されると一連の処理は終了される。
【0109】
複数の文字が入力される場合には、入力された文字を順に表示部6に表示してもよい。図6は、表示部6における入力文字の表示方法の一例を示す概略図である。同図に示すように、「や」が入力された後に「や」を表示し、その後「ま」が入力された時点で「や」の隣に「ま」を表示してもよい。
【0110】
なお、携帯端末1は、入力された文字を変換する機能を備えていてもよい。例えば、「やま」と入力されたひらがなを「山」という漢字や、「ヤマ」というカタカナに変換する機能を備えていてもよい。
【0111】
(効果)
以上のように、携帯端末1は、Z軸方向へ移動させられるという動作を指標にして、文字を描く一連の動作から、文字に反映される動作と反映されない動作とを区別することができる。さらに、上記指標に加え、文字入力ボタンを押すという操作によって入力される指標を用いることにより、文字の一画を描く区切りと、文字と文字との区切りを明確に区別することができる。そのため、ユーザの描いた文字を判別する精度を高めることができる。
【0112】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について図7〜図9に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施の形態1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0113】
図7は、本実施形態の携帯端末50の構成を示す概略図である。同図に示すように、携帯端末50は、検出データ抽出部51を備えている。
【0114】
図8は、検出データ抽出部51の構成を示す概略図である。同図に示すように、検出データ抽出部51は、Z軸出力算出部41、出力部42に加え、変化量算出部52、タイマー53を備えている。
【0115】
変化量算出部52は、Z軸出力算出部41から加速度データおよび角速度データを受け取り、タイマー53を参照しつつ、一定時間内の加速度および角速度の変化量を算出するものである。具体的には、一定時間内の加速度および角速度の変化量が所定量以下であるか否かを算出する。上記変化量が所定量以下であった場合、例えば、携帯端末50が一定時間ほとんど動かされなかった場合、変化量算出部52は、出力部42へ出力制御信号を出力する。また、変化量算出部52は、加速度データおよび角速度データを出力部42へ出力する。
【0116】
上記一定時間は、特に限定されないが、長過ぎるとユーザにストレスを与えてしまうため、1〜2秒程度が好ましい。また、上記所定量は、小さ過ぎると、少し腕がぶれても動作を止めたと認識されなくなるため、腕のぶれを考慮して設定されることが好ましい。
【0117】
(処理の流れ)
次に、携帯端末50における処理の流れについて図9を用いて説明する。図9は、携帯端末50における処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0118】
同図に示すように、ユーザにより文字入力操作の開始信号が携帯端末50に入力されると、加速度センサ21および角速度センサ23は、加速度および角速度の検出を開始し、加速度データおよび角速度データを対応するデータ処理部へ出力する(S11)。
【0119】
加速度データ処理部22、角速度データ処理部24は、受け取ったデータを処理し、検出データ抽出部32へ出力する。上記データは、検出データ抽出部32において、Z軸出力算出部41、変化量算出部52を介して出力部42へ送られる。
【0120】
ユーザは文字を書き始める時に、動作を一時停止させる。この動作により加速度センサ21において一定時間加速度がほとんど検出されなくなる。変化量算出部52は、タイマー53を参照しつつ、所定時間内の加速度の変化を算出する。所定時間内に所定値以上の加速度が生じなかったことを検出すると(S12にて、YES)、変化量算出部52は、出力制御信号を出力部42へ出力する。
【0121】
出力制御信号を受け取ると、出力部42は加速度データおよび角速度データを図形形成部33へ出力する(S13)。
【0122】
ユーザは、文字の一画を描く動作を終えると、動作を一時停止する。この動作を検出すると(S14にて、YES)、変化量算出部52は、出力制御信号を出力部42へ出力する。
【0123】
出力制御信号を受け取ると、出力部42は検出データの出力を停止する。出力部42からの出力が途切れると、図形形成部33は、それまで受信した加速度データおよび角速度データに基づいて部分図形を形成する(S15)。図形形成部33は、形成した部分図形を図示しないキャッシュメモリに記憶する。
【0124】
ここで入力を終える場合には、ユーザは基準平面に対して携帯端末50を遠ざける動作を行う。この動作により、加速度センサ21のZ軸成分の出力が増加する。Z軸出力算出部41は、Z軸成分の出力が所定の閾値以上になったことを検出すると(S16にて、YES)、図形形成命令を図形形成部33へ出力する。
【0125】
一方、続けて入力を行う場合には(S16にて、NO)、次の一画を描くために当該一画の始点まで腕を移動させ、描き始める前に腕を一時停止させる(S12に戻る)。変化量算出部52は、この動作を検出すると(S12にて、YES)、出力制御信号を出力部42へ出力する。
【0126】
出力制御信号を受け取ると、出力部42は、検出データの出力を再開する。そして、ひとつの文字を描き終えるまで上記の処理を繰返し、ひとつの文字を書き終えた時点で基準平面に対して携帯端末50を遠ざける動作を行う。
【0127】
これ以降の処理は、携帯端末1における処理と同様のため、その説明を省略する。
【0128】
なお、ユーザが動作を一時停止したことを変化量算出部52が認識した場合に、スピーカ7から信号音を発する構成にしてもよい。この構成によれば、ユーザは動作の一時停止を携帯端末50が認識したか否かを信号音により確認することができ、不必要に長く動作を止める可能性が少なくなるとともに、動作を止める時間が短すぎて動作の一時停止が携帯端末50に認識されないまま文字を書き進める可能性を低減できる。
【0129】
なお、上述の説明では、携帯端末50が一定時間ほとんど動かされない動作に基づいて出力部42の切替えを行っているが、上記動作以外の動作を出力部42の切替えの指標にしてもよい。例えば、携帯端末50を手首を回すことにより回転させるスナップ動作を上記指標にしてもよい。この場合には、変化量算出部52は、角速度が所定値以上検出された場合にスナップ動作が行われたと認識すればよい。
【0130】
(効果)
以上のように、携帯端末50は、Z軸方向へ移動させられるという動作を指標にして、文字を描く一連の動作から、文字に反映される動作と反映されない動作とを区別することができる。さらに、上記指標に加え、携帯端末50を一定時間動かさないという動作によって入力される指標を用いることにより、文字の一画を描く区切りと、文字と文字との区切りを明確に区別することができる。そのため、ユーザの描いた文字を判別する精度を高めることができる。
【0131】
(変更例)
なお、上述の説明では、携帯端末1および携帯端末50が認識する対象は文字であるとしたが、○や×等の記号であってもよいし、数字や絵文字であってもよい。文字テーブル37に登録されていれば、ユーザ以外の他人には意味不明な図形であってもよい。この場合、文字テーブル37に所望の図形を登録できる構成になっていることが好ましい。
【0132】
また、上記の構成では、携帯端末1および携帯端末50には、ひとつの文字テーブル37が備えられているが、構造および登録されている文字の種類の異なる複数の文字テーブルを備える構成にしてもよい。
【0133】
また、上記の構成では、携帯端末1および携帯端末50を基準平面から遠ざける動作を文字の区切りの指標として認識しているが、文字の一画の区切りの指標として認識してもよい。
【0134】
また、基準平面から携帯端末1および携帯端末50を遠ざけた後に再度近づけるという往復動作を複数回行う動作を特定の情報を入力するための動作として認識してもよい。例えば、上記往復動作を2回繰り返すことにより濁点を入力できる構成にしてもよい。この構成によれば、例えば「か」を入力した後に上記往復動作を2回繰り返すと、「か」が「が」に変換される。それゆえ、濁点および半濁点の入力も簡単に行うことができる。
【0135】
また、上述の説明では、本発明の動作判別装置の一例として携帯端末を挙げているが、本発明の動作判別装置をパソコン等情報機器の入力装置として実現してもよい。
【0136】
また、上記の構成では、動作検出部2は、加速度センサ21と角速度センサ23とを備えているが、角速度センサ23を備えない構成にしてもよい。
【0137】
また、加速度センサおよび角速度センサに代わるセンサとして、発光部と受光部とを備えた光学センサを用いることができる。この場合には、動作検出部2に光学センサを設け、動作検出部2の動きを当該光学センサにより検出すればよい。
【0138】
また、携帯端末1および携帯端末50の各手段は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって構成してもよい。
【0139】
すなわち、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種情報を格納するメモリ等の記録媒体などを備えている。
【0140】
そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである携帯端末1および携帯端末50の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読取り可能に記録した記録媒体を、上記携帯端末1および携帯端末50に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0141】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュメモリ等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0142】
また、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。
【0143】
また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。
【0144】
なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0145】
このように本明細書において、手段とは必ずしも物理的手段を意味するものではなく、各手段の機能がソフトウェアによって実現される場合も包含する。さらに、一つの手段の機能が二つ以上の物理的手段により実現されても、もしくは、二つ以上の手段の機能が一つの物理的手段により実現されてもよい。
【0146】
また、本発明の動作判別装置は、移動に伴う3方向の加速度を検知する加速度検知手段を備えた電子機器であって、該電子機器を移動させたときに前記加速度検知手段と前記角速度検知手段とにより得られる移動量と前記電子機器の機能とを対応付ける移動量判定手段とを備え、該電子機器を2次元的に移動させた後に、前記電子機器を第3の方向に移動させることによって一連の動作の終了を判断させるものであってもよい。
【0147】
また、本発明の動作判別装置は、移動に伴う3方向の加速度を検知する加速度検知手段と、角速度を検知する角速度検知手段とを備えた電子機器であって、該電子機器を移動させたときに前記加速度検知手段と前記角速度検知手段とにより得られる移動量と前記電子機器の機能とを対応付ける移動量判定手段とを備え、該電子機器を2次元的に移動させた後に、前記電子機器を第3の方向に移動させることによって一連の動作の終了を判断させるものであってもよい。
【0148】
また、本発明の動作判別装置は、移動に伴う3方向の加速度を検知する加速度検知手段を備えた電子機器であって、キー入力手段を備え、該電子機器を移動させた後に、前記キー入力手段を押すことによって一連の動作の終了を判断させるものであってもよい。
【0149】
また、本発明の動作判別装置は、移動に伴う3方向の加速度を検知する加速度検知手段と、角速度を検知する角速度検知手段とを備えた電子機器であって、キー入力手段、
を備え、該電子機器を移動させた後に、前記キー入力手段を押すことによって一連の動作の終了を判断させるものであってもよい。
【0150】
また、本発明の動作判別装置は、移動に伴う3方向の加速度を検知する加速度検知手段を備えた電子機器であって、時間をカウントする時間カウンターと、時間を記憶しておく時間メモリとを備え、該電子機器を移動させた後に、前記加速度検知手段と前記角速度検知手段が該電子機器が移動していないと判断したときに、前記時間カウンターが時間のカウントを開始し、前記時間メモリに記憶している時間に達したときに、一連の動作の終了を判断させるものであってもよい。
【0151】
また、本発明の動作判別装置は、移動に伴う3方向の加速度を検知する加速度検知手段と、角速度を検知する角速度検知手段とを備えた電子機器であって、時間をカウントする時間カウンターと、時間を記憶しておく時間メモリとを備え、該電子機器を移動させた後に、前記加速度検知手段と前記角速度検知手段が該電子機器が移動していないと判断したときに、前記時間カウンターが時間のカウントを開始し、前記時間メモリに記憶している時間に達したときに、一連の動作の終了を判断させるものであってもよい。
【0152】
また、本発明の動作判別装置は、一連の動作が終了したことを知らせる報知手段、
を備え、報知手段は一連の動作を終了したことを報知するものであってもよい。
【0153】
また、本発明の動作判別装置は、空中入力モード設定手段を備え、前記空中入力モード設定手段により設定された空中入力モード設定情報と、該電子機器を振ることによって前記加速度検知手段と前記角速度検知手段が該電子機器から得られる移動情報に基づいて、空中入力情報を識別するものであってもよい。
【0154】
また、本発明の動作判別装置は、前記空中入力モード設定情報が有効であることを知らせる報知手段を備えるものであってもよい。
【0155】
また、本発明の動作判別装置は、前記電子機器の傾きを検知する傾き検知手段を備え、傾いた状態であったとしても移動量の判定が可能であるものであってもよい。
【0156】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0157】
ユーザの動作パターンを判別し、当該動作パターンに基づく情報入力ができるため、パソコンや携帯端末等における情報入力装置として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】一実施形態の携帯端末が備える検出データ抽出部の構成を示す概略図である。
【図2】一実施形態の携帯端末の構成を示す概略図である。
【図3】(a)は一実施形態の携帯端末が備える加速度センサの出力形式を示す概略図であり、(b)は一実施形態の携帯端末が備える角速度センサの出力形式を示す概略図であり、(c)は上記加速度センサの軸の方向を示す概略図であり、(d)はY軸に対する上記携帯端末の傾きを示す概略図である。
【図4】補正前の文字と補正後の文字との例を示す概略図である。
【図5】一実施形態の携帯端末における処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図6】一実施形態の携帯端末が備える表示部における入力文字の表示方法の一例を示す概略図である。
【図7】別の実施形態の携帯端末の構成を示す概略図である。
【図8】別の実施形態の携帯端末が備える検出データ抽出部の構成を示す概略図である。
【図9】別の実施形態の携帯端末における処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0159】
1 携帯端末(動作判別装置)
4 傾きセンサ(傾き検出部)
6 表示部(報知部)
7 スピーカ(報知部)
21 加速度センサ(動作検出部)
23 角速度センサ(動作検出部)
31 IF(命令受信手段)
32 検出データ抽出部(検出データ抽出手段)
33 図形形成部(図形形成手段)
34 補正部(補正手段)
35 検索部(検索手段)
50 携帯端末(動作判別装置)
53 タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置の位置および傾きを基に空間に設定される平面である基準平面に対して図形を描く動作のパターンを判別する動作判別装置であって、
ユーザによって動かされる動作検出部であって、当該動作検出部が動かされることによって描かれる軌跡の形状を3次元的に検出し、その検出結果を示す検出データを出力する動作検出部と、
上記検出データの一部を抽出する検出データ抽出手段と、
上記検出データ抽出手段により抽出された検出データに基づいて形成される3次元の軌跡を、上記動作検出部の鉛直方向に対する傾きに基づいて上記基準平面に投影することにより2次元の軌跡を形成するとともに、上記2次元の軌跡を組み合わせることによって、ユーザによって描かれた図形を形成する図形形成手段と、
上記図形形成手段によって形成された図形と予め登録された図形とを比較することにより、上記図形形成手段によって形成された図形を判別する判別手段とを備え、
上記検出データ抽出手段は、上記基準平面に対して略垂直な方向に上記動作検出部が所定の距離以上動かされた場合に、検出データの抽出を停止することを特徴とする動作判別装置。
【請求項2】
上記動作検出部は、互いに直交する3つの座標軸を有する加速度センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の動作判別装置。
【請求項3】
上記動作検出部は、互いに直交する3つの座標軸を有する角速度センサをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の動作判別装置。
【請求項4】
ユーザの動作が動作判別の対象になるかどうかを示す判別命令を受け付ける命令受信手段をさらに備え、
上記検出データ抽出手段は、上記判別命令に基づいて上記検出データの抽出を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の動作判別装置。
【請求項5】
時間を計測するタイマーをさらに備え、
上記検出データ抽出手段は、上記タイマーを参照することにより上記動作検出部の所定の時間内における動作の変化量を算出し、当該変化量に基づいて上記検出データの抽出を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の動作判別装置。
【請求項6】
上記図形形成手段は、複数の図形形成プログラムに基づき上記図形を形成するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の動作判別装置。
【請求項7】
上記検出データ抽出手段の抽出動作が、開始されたことおよび停止されたことを報知する報知部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の動作判別装置。
【請求項8】
上記動作検出部の、鉛直方向に対する傾きまたは水平方向に対する傾き、もしくはその両方を検出する傾き検出部と、
上記傾きに基づき、上記図形を補正する補正手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の動作判別装置。
【請求項9】
動作判別装置の位置および傾きを基に空間に設定される平面である基準平面に対して図形を描く動作のパターンを判別する動作判別方法であって、
ユーザによって動かされる動作検出部であって、当該動作検出部が動かされることによって描かれる軌跡の形状を3次元的に検出し、その検出結果を示す検出データを出力する動作検出工程と、
上記検出データの一部を抽出する検出データ抽出工程と、
上記検出データ抽出工程において抽出された検出データに基づいて形成される3次元の軌跡を、上記動作検出部の鉛直方向に対する傾きに基づいて上記基準平面に投影することにより2次元の軌跡を形成するとともに、上記2次元の軌跡を組み合わせることによって、ユーザによって描かれた図形を形成する図形形成工程と、
上記図形形成工程において形成された図形と予め登録された図形とを比較することにより、上記図形形成工程において形成された図形を判別する判別工程とを含み、
上記検出データ抽出工程において、上記基準平面に対して略垂直な方向に上記動作検出部が所定の距離以上動かされた場合に、検出データの抽出を停止することを特徴とする動作判別方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の動作判別装置を動作させる動作判別プログラムであって、コンピュータを上記各手段として機能させるための動作判別プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載の放送受信プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−58815(P2007−58815A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246830(P2005−246830)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】