説明

動作制御を用いてガイドされるアブレーション装置本発明は、PCT国際特許出願としてMedicalCV社(米国企業、米国を除く全ての指定国の出願人)、KevinCharlesJohnson,DanaRayMester,GregoryG.Brucker,PaulAnthonyAsselin,RobertW.Clapp,及びAdamL.Berman(全員米国籍、米国のみの出願人)の名義で2007年03月19日に出願され、2006年03月20日出願の米国特許出願第11/385,358号の優先権を主張する。

所望するアブレーション経路に沿って組織中に損傷を形成する本発明の装置は、心臓表面に対して配置するために組織と対向する面を有するガイド部材を含む。ガイドキャリッジは、ガイド部材の内部に収納され、縦軸に沿って移動可能な寸法にされる。可撓性管状部材は、キャリッジの近位端から、管状部材に力が加えられるとガイド部材の内部でキャリッジを移動させるように適合された管状部材を備えるガイド部材の長さを通して伸張する。システムは、可撓性管状部材上の力が加えられる位置の変位と実質的に等しい量だけ、ガイド部材の軸に沿う経路内でキャリッジを移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ心臓焼灼法(laser cardiac ablation procedure)用の外科手術器具に関する。本発明は特に、アブレーション器具を所望のパターンにガイドするガイド部材を備えたアブレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
A.心房細動
心不整脈の少なくとも幾つかの形態は、異常な経路で心筋組織を進む電気インパルスによって引き起こされることが知られている。正常な非不整脈の心臓では、電気的神経インパルスが秩序正しく明確な方式で洞房結節、次いで房室結節を進むことで、心臓の収縮を引き起こす電気インパルスの規則正しい流れが生み出されている。
【0003】
心不整脈では、刺激波動が望ましくない経路に沿って心臓組織を進み、速い心拍(頻拍)、遅い心拍(除脈)、又は不規則な心拍(細動)を生み出す。心房細動(AF)は、心臓の心房室の無秩序な心調律である。心房細動が起こると、心臓による効率的な血液の拍出が妨げられ、身体活動の低下、卒中、鬱血性心不全、心筋症や死に至ることもある。
【0004】
B.メイズ手術−通例
心房細動の処置技術の1つとして、心筋組織(心筋)に外科的に複数の線を設け、神経インパルスの電気伝導をブロックして回路を再構成するものがある。電気をブロックする線を設けるこの技術は、メイズ手術と呼ばれる。
【0005】
初期のメイズ手術は、一連の線形切開部を心臓組織に設けて縫合する、侵襲的手術を行っていた。切開部に形成される瘢痕組織の線は電気インパルスを伝導しないので、心房組織の不規則な収縮を防止する。
【0006】
一般的なメイズ手術では、6本以下の非導電性の線を設ける必要がある。非導電性線のそれぞれは、一般に長さが数センチである。これらの線が一旦傷跡となり治癒すれば、心房細動を引き起こす可能性のある電気経路が断たれる。メイズ手術や心房細動を処置する他の外科技術の例については、Chiappini他「Cox/Maze III Operation Versus Radiofrequency Ablation for the Surgical Treatment of Atrial Fibrillation: A Comparison Study」Ann. Thorac. Surg., No. 77, pp. 87-92 (2004)、及びCox、「Atrial fibrillation II: Rationale for surgical treatment」、J. Thoracic and Cardiovascular Surg., Vol. 126, No., 6, pp.1693-1699 (2003)に記載がある。
【0007】
C.低侵襲的メイズ手術法
低侵襲的アブレーション技術を利用して行うメイズ手術もある。この技術では、一般に高周波(RF)電極が外科医によって心臓の心内膜(内側)、又は心外膜(外側)表面に沿って直線的に引かれ、熱を用いて心臓細胞を乾燥させて最終的には破壊することで、一連の損傷を作成する。損傷によって作成された瘢痕化は、切れ目がなく電気インパルスについて非伝導性であるのが理想的である。心内膜の用途では、標準的なアブレーションカテーテル、又は伸長した遠位端電極を備えるカテーテルが用いられる。心外膜の用途では、アブレーションエネルギーを適用するように特別に設計された、遠位端電極を備える手持ち式の探針がしばしば用いられている。
【0008】
メイズ手術の成功率を最大にするためには、形成された損傷が貫壁性であることが特に重要である。貫壁性損傷は、損傷の部位において、心筋壁の全層にわたるものである。心外膜からの損傷の貫壁性を制限する要因の1つとして、特に心臓拍動における「オフポンプ」過程中の、心臓内、及び心臓周囲の血液の冷却効果が挙げられる。貫壁性損傷の作成は熱拡散、すなわち高温から低温への熱流のみに依存しているため、高周波(RF)エネルギーを用いる際には血液の冷却効果は特に厄介である。心房内の心内膜表面における血液の冷却効果によって、熱損傷を形成するのに必要な温度到達が制限されてしまう。
【0009】
電極/組織界面の最大温度も、水の沸点より幾分低い温度に限られてしまう。沸点より高いと細胞間水が沸騰して爆発を起こし、組織に穿孔が生じてしまう。心房壁の穿孔は心臓構造を脆弱にするだけでなく、外科手術中、抑制すべき出血が著しいものになってしまう。
【0010】
更に、高い電極/組織温度によって、探針と心臓組織との間に熱傷や癒着が生じる。生じた癒着は探針と心臓組織を絶縁してしまい、エネルギーの効率的な適用が阻害されてしまう。これらの方法においても、外科医チームが手術を中断して探針の先端を掃除する必要があるため、問題がある。
【0011】
RFによる貫壁性損傷作成の効果は、心内膜表面に第2の電極を用いることで向上させることができる。心内膜電極は、より直接的に標的部位にエネルギーを「集中」させてより直接的に心臓組織を通る電気経路を提供し、副次的には、左心房における血流によって心内膜表面が直接に冷却されるのを回避する。しかしこの方法は左心房内へのアクセスを要するため、複雑さを増し、患者へのリスクが増加する。
【0012】
細胞間水を凍らせて細胞死を起こす低温法についても同様の分析があてはまる。しかし当出願においては、血液が心内膜表面で組織を暖めるため、細胞死を引き起こして貫壁性損傷を生じるのに必要な到達温度に制約がある。
【0013】
心房細動を処置する様々な方法、及び技術については、Viola他「The Technology in Use for the Surgical Ablation of Atrial Fibrillation」、Seminars in Thoracic and Cardiovascular Surgery, Vol. 14, No. 3, pp.198-205(2002)に論じられている。Viola他は、メイズ手術によって心房細動を処置する数多くのアブレーション技術を説明している。それには凍結外科手術、マイクロ波エネルギー、高周波エネルギー、及びレーザアブレーションが含まれている。
【0014】
D.レーザアブレーションとメイズ手術
レーザエネルギーは何にもまして熱に変換される光線なので、心房細動の処置においてレーザを使用するのが望ましい。従って、心臓組織においてレーザエネルギーを「拡散」させるのに、光の透過の原理を用いることができる。選択された波長では、光拡散は熱拡散と比べて顕著に速く起こり、より深く浸透する。この効果を得るには、心房組織のスペクトル特性を知り、高い透過率、すなわち低い吸収率のレーザ波長を選択することが重要である。このような結果を得るものとして、近赤外領域の波長である700〜1200ナノメートルが好適である。理想的な波長は790〜830、又は1020〜1140ナノメートルである。これらの波長を用いると、レーザアブレーションを迅速に行い、小さい領域の損傷を得ることができる(Viola他、「The Technology in Use for the Surgical Ablation of Atrial Fibrillation」、Seminars in Thoracic and Cardiovascular Surgery, Vol. 14, No. 3, pp.201, 204 (2002)参照)。しかし先行技術では、心房細動処置用のレーザアブレーションは手間がかかるものであった。
【0015】
Viola他は、心房細動の処置にレーザエネルギーを使用する際に生ずる問題点を論じている。これらの見解は安全性、信頼性に関するものであり、レーザは自己制御機能を持たないため過熱しやすいことに言及している。著者は、特に先端がピン状の装置を用いる場合、レーザによる過熱によって窪み、ひいては穴が形成されうることに言及している(Viola他、前掲、p203参照)。著者は、レーザアブレーションが高出力(30〜80ワットとして記載)であるため、レーザ技術が臨床上あまり広く応用されていないことに言及している(同上、p201参照)。心筋組織をレーザエネルギーで直接加熱すると、その機械的効果の結果、衝撃波によって細胞が爆発してしまう(Viola 他、前掲、p201参照)。
【0016】
レーザエネルギーは心筋に穴を開ける可能性があることから、心房細動の処置について特定の事項が懸念される。心房の心筋壁は極めて薄い(例えば、部位によっては約2ミリメートル)。レーザによる心筋のコアリング(穴掘り)が壁厚を貫通する穿孔となり、血液が漏出してしまう恐れがある。
【0017】
Viola 他は、長探針先端のレーザ熱エネルギーが一方向に拡散する長探針レーザの開発に言及している(同上、p201参照)。上記文献はこの長探針先端の出典について記載していないが、Arnold他の名義で提出された米国特許出願第2004/6333 A1号(2004年01月08日公開)、及びSinoskyの米国特許第6,579,285号に記載されるように、CardioFocus, Inc.(米国マサチューセッツ州ノートン)の心房細動レーザを参照するものであると本発明者らは考えている。この実施技術は本発明の技術とは以下の2点で異なる。最も重要な点として第1に、光線が組織に入る前に、反射性粒子を用いて縦方向、及び放射状に散乱させて、位相の揃ったレーザビームの焦点をぼかしている。これによって線形の損傷を形成するのに必要な縦方向運動が減少するが、心臓組織に入る前にレーザビームの干渉性が減少することで、より深く心臓組織に貫通する光線の利点の多くが失われてしまう。第2にこの技術は、810〜1064ナノメートルと比較すると顕著な水の吸収ピークを有する、910〜980ナノメートル波長のレーザ光線を使用している。吸収度が高いと、レーザ光線の心臓組織の貫通が減少する。エネルギー貫通の深さが減少すると、(特に鼓動する心臓において)貫壁性の低い損傷が生じるリスクが増加する。
【0018】
E.導電性の確認
線形非導電性損傷を作成について更に困難な点は、実際に非導電性損傷が形成されたかを確認することが不可能なことにある。メイズ手術によって適正に貫壁性損傷が形成されなかった場合、心房細動の治療は成功しない恐れがある。その結果第2の外科手術を必要とする可能性がある。もし外科医が、特定の線形の損傷が本当に非導電性であるか否かを最初の手術のときに素早く識別できたら、治療のときに矯正できる。損傷貫壁性を評価する方法が、米国特許出願公開第2005/0209589 A1号(2005年09月22日公開)に記載される。
【0019】
F.心房アブレーション器具の配置、及びガイド
米国特許出願公開第2005/0096643 A1号(2005年05月05日公開)は、外科医が心臓表面でワンド(wand)先端を動かすことで損傷パターンを形成することを記載している。アブレーション器具をガイド、又は制御する装置の使用が示唆されている。例えば、米国特許第6,579,285号(CardioFocus, Inc.に付与)は、展延性(malleable)ハウジングに収納された拡散光ファイバ端を記載している。ハウジングは、所望の形を成すように曲げられ、心臓上に配置される。拡散光ファイバ端は、ハウジング内を一連のステップを経るように移動して損傷を形成する。一定の位置でファイバを停止し、静止したファイバを励起して損傷を形成し、ファイバを新たな位置に移動させて次の損傷セグメントを形成するようにして、損傷は形成される。アブレーション器具用の同様の構成が米国特許出願第2002/0087151号(2002年07月04日公開、AFx, Inc.)に記載されている。
【0020】
2004年05月27日公開の米国特許出願第2004/0102771号(Estech, Inc)は、心臓とアブレーション装置との間の接触を維持しつつアブレーション器具をガイドする装置を記載している。アブレーション器具をガイドするか、又はアブレーション器具と心臓との間の接触を維持するその他の装置については、米国特許第6,237,605号(Epicor, Inc.に付与)に記載がある。米国特許第6,237,605号は、真空を心外膜に対して使用するか、又は拡張バルーンを心膜に対して使用して、心臓に対して固定位置にアブレーション器具を維持することを記載する。米国特許第6,514,250号、及び米国特許第6,558,382号(両方とも Medtronic 社に付与)は、心臓に対してアブレーション素子を保持するための吸込管を記載する。
【0021】
同一出願人による米国特許出願公開第2005/0182392 A1号(2005年08月18日公開)は、心臓に取り付けられた可撓性ガイド部材を通して進められるキャリッジの中に取り付けられたレーザ放出アブレーション素子を有する、ガイドされるアブレーション装置を教示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ガイドされるアブレーション装置の中でアブレーション素子を移動させるとき、心臓組織に対するアブレーション素子の位置、及び移動速度を内科医は視覚的に検査できない。向上した制御を用いてガイドされるアブレーションを提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
所望するアブレーション経路に沿って組織中に損傷を形成するための方法、及び装置が開示される。本発明の装置は、心臓表面に対して配置するために組織と対向する面を有するガイド部材を含む。ガイドキャリッジは、ガイド部材の内部に収納され、縦軸に沿って移動可能な寸法にされる。可撓性管状部材は、キャリッジの近位端から、管状部材に力が加えられるとガイド部材の内部でキャリッジを移動させるように適合された管状部材を備えるガイド部材の長さを通して伸張する。システムは、可撓性管状部材上の力が加えられる位置の変位と実質的に等しい量だけ、ガイド部材の軸に沿う経路内でキャリッジを移動させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。同一の構成要素には同一の参照記号を付した。好ましい実施形態において本発明を、心臓の心外膜表面にレーザエネルギーを適用し、心臓に沿って貫壁性アブレーション線を形成するための損傷形成器具として説明する。本明細書でいう「アブレーション」の語は、組織の穿孔、又は除去を回避しつつ、心筋に壊死組織を形成するという意味合いにおいて用いる。以下の説明では、損傷形成器具をメイズパターンにガイドするためのガイド部材について述べる。本出願の教示は、他の種類のアブレーション器具(例えば、RFアブレーション、超音波など)にも適用可能であることは理解されよう。また本願において、損傷について「線形」の語を用いることがある。「線形」の語は、直線に限らず、湾曲、又はその他の細長くて幅の狭い損傷パターンを含むものとする。
【0025】
好ましい実施形態を参照して特に述べない限りは、本発明の全ての構成要素は、厳しい滅菌に耐えあらゆる生体適合性、及び医療装置の関連規則のその他の必要条件を満たすことのできる材料を前提として、どのような好適な材料から形成されてもよい。
【0026】
A.従来の刊行物の教示
a.レーザアブレーション
上記の米国特許出願公開第2005/0096643 A1号(2005年05月05日公開、その内容を参照によって本願明細書に引用したものとする)は、心臓の心外膜、又は心内膜表面のいずれかにレーザエネルギーを適用する手術用ワンドについて詳述している。メイズ手術による心房細動治療用としてワンドは、心筋組織において非常に低い吸収度と非常に高い分散度を有するように選択された波長のコヒーレント光として、レーザエネルギーを放射することが好ましい。
【0027】
組織を除去することなく壊死組織を心筋で作成するのに好適な、あらゆる波長を用いることができる。好ましい実施形態において波長は、心筋組織において非常に低い吸収度と非常に高い分散度を有するように選択された近赤外波長である。生物組織(心筋など)は、大部分は水である。約470〜約900ナノメートル、及び約1050〜約1150ナノメートルの範囲の波長は、低い吸収度(例えば、約30%未満の吸収度)で水を通過することが知られている(Lasers in Cardiovascular Medicine and Surgery: Fundamentals and Techniques、George S. Abela、M.D.、Editor、Kluwer Academic Publishers、米国マサチューセッツ州02061、ノーウェル、アシニッピパーク、フィリップドライブ101、p28(1990)参照)。波長は、790〜850ナノメートル(市販の医療用ダイオードレーザの範囲に相当)、及び1050〜1090ナノメートル(その他の医療処置に一般的に用いられているNd:YAGレーザの範囲に相当)の範囲から選択されることが更に好ましい。
【0028】
上記の範囲から選択された波長を有するレーザエネルギー源は、心筋の厚みを貫通し、貫壁性損傷(すなわち、心房における心筋組織の全厚に渡る壊死)を生じる。更にそのような波長は、組織の炭化、及び心筋組織の穿孔を最小限にとどめる。このようなレーザ発光は実質的に位相が揃って(coherent)いる。
【0029】
上記の米国特許出願公開第2005/0096643号において、ワンドは、心臓の心外膜表面、又は心内膜表面のいずれかに対向して配置される遠位端を備えた、手持ち式の装置である。ワンドは、心臓の表面に沿って遠位端を移動させて所望のパターンのメイズ損傷を形成するように操作される。本発明は、心臓表面上に損傷を形成する方法、及び装置に関する。本発明は、損傷形成器具を所望のパターンにガイドするものとして作用する、心臓上での軌道の設置を含む。
【0030】
b.ガイドされる部材
米国特許出願公開第2005/0182392 A1号(その内容を参照によって本願明細書に引用したものとする)では、ガイド装置は細長い可撓性本体で概して平坦な底面を有するガイド部材を含む。ガイド溝は、底面の内部の中心に配置された溝として形成され、ガイド部材の縦方向の長さに沿って伸張する。ガイドキャリッジは、ガイド溝内に摺動可能に収納される。キャリッジは、レーザ放出チップを支持する。
【0031】
ガイドキャリッジは、ガイド溝内を軸方向に摺動可能である一方、摺動軸に対して交差する方向へ移動できないようになっており、軸について回転することがない。キャリッジは底開口部、又はウィンドウを備える。ウィンドウは、放射光とフラッシング流体との両方を通過させる(図示するような)開空間であってもよいし、放射光の波長を通過させるように選択された材料で形成された閉じたウィンドウであってもよい。
【0032】
可撓性の流体導管は、キャリッジの近位端に連結されている。導管は、溝内をキャリッジと共に移動する。導管を押すと、キャリッジが遠位に移動する。導管を引くと、キャリッジが近位に移動する。
【0033】
導管には光ファイバが通される。スペーサが、ファイバを導管内で同軸上に保持し、ファイバと導管との対向する面で環状空洞を画定し、そこにポンプからの冷却流体を通すことができる。流体は、構成要素を冷却し、かつファイバと心外膜表面との間に溜まりうるゴミを洗い流す。
【0034】
ファイバは、ウィンドウから光が出るようにファイバの遠位端を配置しつつ、キャリッジ内に支持される。空洞からの冷却流体はウィンドウを通すこともできる。キャリッジによって傷がつかないようにする性質を向上するために、’392出願のキャリッジは、心臓組織に対して低摩擦係数の、又は潤滑性を有する材料で形成される。
【0035】
ファイバからの光は、軸、及びガイド部材の底面の面に対して略垂直な光路でウィンドウを通過する。ファイバを曲げないように、’392出願の図7に概略的に示すように、ファイバの末端は開裂され、研磨され、コーティングされて、ファイバがいわゆる「サイドファイア」レーザとなっている。末端からの光は90°の角度で心臓組織に作用するのが好ましいが、角度は様々に変更可能であり依然として治療効果が得られる。サイドファイアファイバは周知である。それらの代表例として、Brekkeに付与された米国特許第5,537,499号(1996年07月16日付与、その内容を参照によって本願明細書に引用したものとする)に記載のものが挙げられる。
【0036】
c.ガイド部材の配置、及びメイズ損傷の形成
ガイド部材は心臓表面に配置され、所望のパターン(例えば、左心房上の肺静脈を包囲する)に形成される。このように配置されて、キャリッジがガイド溝内で移動させられる。電源でレーザファイバを励起させて、心臓壁に貫壁性損傷を形成することができる
【0037】
導管は所望に応じて押し引きしてキャリッジをそれぞれ遠位、又は近位に動かし、これによって心臓の心外膜表面上に所望のパターンでファイバ端を動かす。医師は心臓外表面に沿ってキャリッジを動かし、細胞死(通常約55℃)の達成に必要な温度まで心臓組織を上昇させて、焼灼(すなわち非導電性の)組織の線を作り出す。約25ワットのレーザ出力で操作した場合、外科医が1分当り約1〜5cmの直線移動速度で心臓表面上にキャリッジを滑り運動させることで、アブレーション線を作成できると推定される。例えば、ダイオードレーザを用いた場合、電力は約5〜約50ワットの範囲にわたるが、これに限定されるものではない。
【0038】
損傷は、ファイバを一経路上で遠位から引くことで形成することができるが、区域単位で損傷を形成することが好ましい。例えば、所望の損傷パターンを複数の区域に分割することができる。ガイド部材内のキャリッジと共に、励起させたファイバ端を一区域内で複数回前進・後退させて、区域内の組織に所望のエネルギー量を適用させる。キャリッジとファイバ端とを次の区域に移動させてこの工程を繰り返す。
【0039】
このパターン全体を通して、キャリッジはレーザチップを心臓の心外膜表面から一定間隔に保持する。ガイド部材は、アブレーション器具の末端(すなわち、好ましい実施形態におけるファイバ端)と心臓表面との間隔をガイド部材の全長にわたって所望の間隔に維持し、アブレーション部材と心臓とが直接接触することを防いでいる。
【0040】
レーザエネルギーによる心筋組織の貫通を最大化するために、ファイバ放射端とガイド部材の底面との間隔をできるだけ小さくすることが望ましい。心臓組織に作用する出力密度は、間隔Dが増すにつれて急激に低下する。しかし、生物学的な生成物が光ファイバ面に凝固するのを防ぐために、心臓表面からの間隔小さくとることが望まれている。組織が蓄積すると、光ファイバ面が炭化して破損し、光ファイバからのレーザエネルギー出力が低下してしまうので望ましくない。多量の生物由来物質が光ファイバ面の付近に存在すると、構成要素が過熱して溶解する可能性がある。ファイバ端から心臓表面への光路に障害物が存在しないので、光は、垂直に、又は上記した角度で心臓表面に向けられる、不拡散、又は改変されていない光線となる。
【0041】
ウィンドウからの冷却流体流は、キャリッジの素材を冷却し、光ファイバ端と心臓表面との間の光路から生物由来物質(例えば、血液、組織残屑など)を洗い流し、心臓表面上でのキャリッジの傷を与えない滑り運動を更に促進する潤滑剤として作用する。
【0042】
流体の洗浄作用は、レーザエネルギーによる心臓表面への作用を最大化する。更にこの流体は、キャリッジの範囲内で組織を冷却し、組織の炭化とそれに続く心臓組織の気化を確実に防ぐ助けとなる手段を提供する。これによって、心臓壁が穿孔される可能性が大幅に低下する。また流体は、光ファイバの放射端に保護層を形成するので、生物学的残留物が放射端に作用する、及び/又は固着してファイバ端の破損を引き起こし、レーザエネルギーの光伝送を低下する可能性を小さくする。
【0043】
流体は患者の体内を流れるので、流体は医療グレードかつ生体適合性のあるものでなければならない。また流体は、レーザエネルギーの吸収性が低いものでなければならない。好ましい流体は、周囲温度で供給される生理的食塩水である。
【0044】
B.米国特許親出願第11/228,108号の教示
同一出願人による同時係属の米国特許出願第11/228,108号(2005年09月16日出願)は、エンドファイアレーザを用いるガイドされた心房アブレーションを教示する。図18〜図34は米国特許出願第11/228,108号から引用され、この節の文章は米国特許出願第11/228,108号から実質的に引用され、本発明の理解を容易にする。
【0045】
米国特許出願公開第2005/0182392 A1号(2005年08月18日公開)は、サイドファイアレーザファイバを用いるガイドされたレーザアブレーションを記載する。光は、チップにおけるファイバの軸に対してある角度(60〜90°)でファイバ遠位端チップから出現する。
【0046】
サイドファイアレーザファイバを用いると、薄型の組立品が可能になる。誘導ファイバ組立品を、心膜腔に配置させることができる。レーザファイバ軸は実質的に組織表面と平行なので、組立品はあまりスペースをとらず、心膜腔に容易に収めることができる。これに対して、エンドファイアファイバのワンドは心膜においてより大きな外科的アクセスと切開を必要とする。
【0047】
残念なことに、サイドファイアレーザファイバには実施上の制約がある。サイドファイアレーザは、特に小さなファイバ(例えば、400マイクロメートル、及び開口数0.37のファイバ)と810ナノメートルダイオードレーザとを組み合わせて用いると、性能が低下する恐れがある。この用途では、サイドファイアレーザファイバから放射されるビームは細くならず、エネルギーの大部分が組織表面で反射されてしまう。米国特許出願第11/228,108号の教示は、誘導されるレーザを使用する利点と、より直接的なエンドファイアレーザの利点とを組み合わせる。
【0048】
以下の米国特許出願第11/228,108号の実施形態では、装置の厚みを最小化して、エンドファイアファイバの光学上の利点とサイドファイアファイバの寸法上の利点を備える、薄型装置におけるエンドファイアレーザファイバを説明する。更にその様な実施形態は、ファイバ端と標的組織との間隔を最適化し、洗い流し、及び冷却の利点を備えつつ、良好な出力密度を得る。
【0049】
レーザエネルギーを心筋組織に貫通させる際の要点の1つに、入射レーザビームの出力密度がある。出力密度とは、光ファイバを出る総電力と照射を受ける表面積との比、あるいは単位面積当たりの送達電力である。定義によれば、出力密度がより高いと、ビームがより集束し、より細くて深い損傷となる。
【0050】
出力密度は、光ファイバの出口平面で最大であり、ビームが発散するにつれて低下する。図17に示すように、ビームは、光ファイバの開口数の逆サインに等しい発散角で、概して円錐形に広がる。
【0051】
光ファイバと組織との間の距離が増すにつれて、入射レーザビームの出力密度が距離の平方に比例して低下する。表1は、組織との様々な間隔と様々な光ファイバ直径に関してのそのような低下を示す。
【0052】
出力密度は、レーザと組織の相互作用に2通りの影響を与えうる。第一に、相互作用が古典物理学の法則に従わず非線形となる、臨界出力密度が存在する。これによって、レーザエネルギーがより迅速に心筋組織内において分散され、より深い損傷が形成される。第二に、より高い出力密度を用いると、心筋組織を貫通する間にレーザエネルギー吸収に関連して生ずる寄生損失と心内膜表面における血流の冷却効果とがより容易に相殺されて、鼓動する心臓に貫壁性損傷を形成する可能性が増す。心房における貫壁性損傷の形成には、ほとんどの場合、1000W/cmを超える出力密度が望ましい。
【0053】
光ファイバの入力末端におけるレーザエネルギーの入射角はより大きいので、ダイオードレーザを用いる設計において、出力密度がより重要な勘案事項となる。光が光ファイバを縦断して光ファイバの臨界角に達するまで、入射角は増加を続ける。例えば、ほとんどの市販のダイオードレーザは、20°の入射角で、開口数(NA)0.37の光ファイバの使用を必要とする。光ファイバの出口平面における発散角は22°となり、組織表面からの距離に等しい、増大した像直径(image diameter)となる(総円錐角は発散角の2倍である)。表1は、組織から3/16インチ(約4.25ミリメートル)の間隔をとるだけで、出力密度が100倍低下することを示している。
【0054】
【表1】

【0055】
直接接触(組織間隔0.00ミリメートル)の場合最も大きな出力密度が得られるが、心房組織のアブレーションについて最適な間隔であるとはいえない。高出力密度では、心臓組織、特に薄い心房心筋を炭化して穿孔する可能性が高い。フラッシング流体による冷却やレーザ光線の発散角といった他の可変要素によって、穿孔の危険性が軽減される。後述するように、約0.05インチ(約1.3ミリメートル)の間隔において、これらの可変要素の好ましい均衡が得られる。しかし、最小0.25ミリメートル〜最大2.0ミリメートルの間隔を採用することができると考えられる。より大きな間隔を取ることも可能であるが、出力密度が顕著に低下し、心内膜表面上の冷却効果を相殺するのに十分でない可能性がある。
【0056】
2.0ミリメートルを超える距離で、効果的に損傷を形成することも可能である。心筋の構造と心筋表面に沿ったアブレーションガイドの配置によっては、組織表面からの間隔が2.0ミリメートルを超える場合があるが、ガイドとその従部からなる組立品の可撓性によってこの距離が最小限に抑えられている。2.0ミリメートルを超える場合の損傷はより浅くはなるが、5ミリメートルの間隔を超えても損傷が形成される。このように間隔をとることで貫通度と損傷の深さがが低下するが、光ファイバ面と組織表面との間に水を介在させることによって(water-coupling)、その低下を最小限におさえることができる。水の介在は、フラッシング流体の流量を増加することによってあるいはより大きな表面積へ流体を流すことによって促進することができる。
【0057】
図18は、サイドファイアレーザを使用しない誘導レーザを示す。図18において、ガイド部材420は、生体適合性プラスチック材料を中空で四角形状に形成したものである。ガイド部材420の底面422は、ガイド部材420の全長にわたって底面に伸長するスロット424を備えている。
【0058】
図18に示す実施形態において、ガイド部材420を組織に固定する装置(例えば、上記米国特許出願第2005/0182392 A1号において記載した真空取付具など)を示していない。しかし、ガイド部材420はそのような取付機構を具備していてもよいし、可視化装置を具備していてもよいことは理解されよう。
【0059】
ガイド部材420は、ガイド部材の屈曲制御を可能にする特徴を含んでいる。図示の実施形態において、この機構は、ガイド部材の全長にわたって形成された複数のスリット423であることが好ましい。各スリット423によって画定される平面はガイド部材420の長手方向軸に垂直である。スリット423は、底面422以外に形成されている。
【0060】
図18に示すように、スリット423があるため、底面422の表面に沿ってガイド部材420を屈曲させることが可能になっている。スリット423に代わるものを用いて(例えば、上記のような制御された屈曲を達成する材料の選択、又は形状によって)、ガイド部材420を補強することができる。ガイド部材420は、長手方向軸に沿って伸縮可能でないことが好ましい。
【0061】
キャリッジ426は、生体適合性プラスチック材料(Delrin(登録商標)アセタルなど)製のブロック形状で提供される。他の材料(例えば、ステンレス鋼)を用いることもできる。図23では、側壁(構成要素428として図19,20,22に示す)をキャリッジ426から取り外して、内部の構成要素を露出させている。
【0062】
キャリッジ426は、ガイド部材420内に摺動可能に収納される寸法を有している。ガイド部材420は、滑り運動の間、キャリッジ426の長手方向軸がガイド部材420の長手方向軸と同軸を保ちつつキャリッジを保持する。
【0063】
キャリッジ426の上面427は、丸まった凸状をしており、底面425は凹状をしている(図21に最もよく示されている)。上面427は傾斜した前面、及び後面429を有する。この特徴の組合せによって、ガイド部材が図18に示されるように屈曲している際に、ガイド部材420内でのキャリッジ426の長手方向の滑り運動が可能になっている。この組合せによって更に、ガイド部材420とキャリッジ426との間での相対的回転が回避され、底面スロット424を通じて標的組織へ至るレーザビームが所望の方向に保持される。好ましい実施形態において、このような組織は、心房細動について治療する心房組織であるが、他の疾病(例えば、心室性頻拍)について治療する心室組織であってもよい。
【0064】
キャリッジ426の底面425は平坦で底面422に接する。底面425の幅W(図22)とキャリッジ426の高さHとは、ガイド部材420の内部幅と内部高さとのそれぞれに実質的に等しい。従って、ガイド部材420に対するキャリッジ426の運動は、長手方向の摺動に限定される。キャリッジ426の底面425の平坦端部425a(図21)と底面422との接触は維持される。キャリッジ426の横方向の移動はガイド部材420内で制限される。
【0065】
導管430は、キャリッジ426の近位端から伸長し、光ファイバ432を収容している。ファイバ432の直径は導管430より小さく、上記した実施形態で説明した操作中に、導管430内を冷却、及びフラッシング用流体を通すことができるようになっている。
【0066】
図23を参照するに、光ファイバ432は、遠位端433で終端している。図21において、キャリッジ426は、側面カバー428がスクリュー431で固定された状態で示されている。図21においては、内部の構成要素を示すために、スクリュー431が定位置にあるが側面カバー428が取り外されている状態を示す。キャリッジ426は、内部に空洞435が形成され、スクリュー431を取付ける内部ブロック437を有している。
【0067】
空洞435の対向する面は、ファイバ432を配置し導く通路を構成する。ファイバ432は、導管430と実質的に平行かつ底面の平坦部425aの平面Pと平行な入口軸X−Xで空洞435に入る。
【0068】
放射端433において、ファイバ432は、放射軸Y−Yでキャリッジ426の下部スロット439から突出する。軸Y−Yは、平面Pに対して小さな挟角Aをなす。角度Aは45°より大きいことが好ましく、60°より大きいことが更に好ましい。
【0069】
本実施形態では、ガイド部材420が心臓組織(肺静脈を囲み肺静脈に連結された心房の円蓋など)の周囲を包み、底面422を心房組織に密着させつつ肺静脈を完全に囲むことができる。キャリッジ426はガイド部材420内を移動可能であり(前述のように往復運動することが好ましい)、放射端433から心房組織へ向けてエンドファイアレーザとしてレーザエネルギーを放射させることができる。底面422を標的組織へぴったりと接触させることが好ましいが、小さな(例えば、表面の凸凹などから生じる数ミリメートルの)隙間が許容されることは理解されよう。
【0070】
チャンバ435内では、ファイバが自由な状態で収容され、空洞435とハブ437によって画定される面に、過度に屈曲することなく自然な状態で接するようになっている。また、ハブ437とチャンバ壁435との間隔はファイバの直径より大きくなっており、冷却、及びフラッシング用流体がファイバ432の周囲を自由に通過し、スロット439から先端433のゴミを洗い出すようになっている。
【0071】
先端433は、底面の平坦部425a内に距離Dだけ後退している(図21)。先端433は、底面の平坦部425aの中央に位置し、ガイド部材420のスロット424に対して位置合わせされている。
【0072】
距離Dは、約0.10インチ(約2.54ミリメートル)であることが好ましく、ガイド部材420の底面422の厚みより薄いことが好ましい。これによって放射端433と心房組織との間隔が維持される。好ましい実施形態において、放射端433と心房組織との間に、フラッシング流体を通過させる間隙を設けるために、そのような間隔を約0.05インチ(約1.3ミリメートル)とする。フラッシング流体は気体(例えば、空気、又は二酸化炭素)であってもよいし、液体(例えば、食塩水)であってもよい。
【0073】
冷却、及び洗い流し機能に加えて、流体は、放射端433と心房組織との間の連続レーザ光線透過媒体として作用する。その結果、レーザエネルギーの方向を変えかねない、放射端433と心房組織とによる異なる材質の界面がなくなる。
【0074】
キャリッジ内のファイバ432の曲率半径は、810ナノメートルダイオードレーザに接続された400マイクロメートル、及び開口数0.37のファイバの場合、約0.25インチ(約6.4ミリメートル)である。この半径は、できるだけ薄型を保持するように、できるだけタイトな半径を選択する。0.25インチ(約6.4ミリメートル)の場合、ファイバを通じたレーザエネルギーの損失が非常に小さくなる。こうした損失は、半径をきつくするにつれて次第に大きくなる。
【0075】
上記した実施形態では、ファイバ432の半径は、製造の時点で、キャリッジ426内で湾曲形を保持するものとする。あるいはハブ437は、下方に移動してファイバの湾曲を無くす弛緩状態とし、また図21の位置へ移動して湾曲を作る、二位置式ハブであってもよい。その結果、不使用時の保管の間、ファイバはより小さい張力下に置かれ、経時によるファイバの表面漏れや破損の可能性が低くなる。このような位置を図23において点線で示す。ハブ437が下方・後方に摺動し、ファイバ432の曲率半径が緩くなっている。ここでは滑り運動を示したが、図23に即していえば、ハブ437は下方に旋回するものであってもよい。
【0076】
図24〜28は、米国特許出願第11/228,108号に記載の心房組織などの組織治療用の誘導エンドファイアレーザファイバの別の実施形態を示す。図24〜28において、ガイド部材520は三角形の断面をしており、底面522はガイド部材520の軸長に沿って伸長するスロット524を有している。
【0077】
ガイド部材520は、底面522を除く全ての側面にわたって形成されるスリット523を備える。このスリット523のなす平面は、ガイド部材520の長手方向軸に実質的に垂直である。スリット523があるため、底面522に沿ってガイド部材520を屈曲させることができるが、他の方向へ屈曲したりねじれたりしないようになっている。
【0078】
キャリッジ526は、遠位ガイドハブ527a、及び近位ガイドハブ527bを具備する。遠位ガイドハブ527a、近位ガイドハブ527bは、ガイド部材520の長手方向軸を交差する方向に伸長するピン528a、528bを具備する(図27)。図24〜26の点線は、ガイド部材620の内部にキャリッジ526があることを示す。
【0079】
図27に示すように、ピン528a、528bは、底面522の近傍にあって、ガイド部材520に対するキャリッジ526の横方向の移動を制限している。遠位ハブ527a、及び近位ハブ527bの高さH1は、三角形のガイド部材520の底面522から対向する頂点までの距離H2より小さい(図27)。
【0080】
キャリッジ526はまた、ハブ527a、527bを連結する剛性の管529を備える。管529は、屈曲部529aの上端が三角形のガイド部材520の底面522に対向する頂点に接するようにして、529aにおいて上方に曲がっている。この接触とピン528a、528bとによって、ガイド部材520の内部を横方向・上下方向に移動させることなく、キャリッジ526をガイド部材520の長手方向軸に沿って摺動させることができる。またこの屈曲によって、収容されるファイバの最大曲率半径が得られ、ファイバの過度の屈曲を防ぐとことができる。
【0081】
導管530は、管529と液体的に連通するように近位ハブ527bに連結されている。光ファイバ(図27ではその遠位端533のみを示す)を、導管530から管529へ通し、管529の遠位末端を通して、スロット524から心房組織へ、45°を超える角度で光を放射することが好ましく、60°を超える角度で光を放射することが更に好ましい。ファイバの直径は管529と導管530の内径より小さくなっており、上記したように、フラッシング流体を管529の内部とファイバの周囲に通し、遠位端533を通過して冷却、及び洗い流しができるようになっている。
【0082】
図29〜34は、米国特許出願第11/228,108号の更に別の実施形態を示す。これらの図に示すガイド部材620は可撓性の生体適合性材料(例えば、押出しシリコン、成形シリコン、又はe−PTFE)で形成される。穴621は、ガイド部材620の全長に渡って形成される。穴620の軸は、ガイド部材の長手方向軸と平行である。ガイド部材620のアーチ状底面622は、ガイド部材620の全長にわたって伸び、穴621と連通するスロット624を備えている。
【0083】
シリコンは高可撓性であり、容易に伸縮できる。長手方向へ伸縮しないように、可撓性の金属ケーブル623が、ガイド部材620内で穴621の両側に、ガイド部材620の全長にわたって伸長するように形成されている。屈曲を可能にしつつ長手方向軸まわりにねじれないようにするために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の開裂スリーブ625を、ガイド部材620の穴621内のシリコンに成形してある。スリーブ625は、スロット624に沿って開裂している。PTFEはシリコンよりも潤滑性が高く、以下のような利点がある。
【0084】
導管630(例えば、可撓性であるが伸縮しない、可撓性薄壁ステンレス鋼製)は、穴621内に摺動可能に収容される。PTFEライナ625と導管630との対向面の間の穴621の環状部分によって、導管630は穴621内で長手方向に自由に摺動することができる。PTFEライナ625によって、ねじれることなく全方向に曲げることができる。
【0085】
湾曲管629は、導管630の遠位末端に固定される。管629の遠位末端629’はスロット624内に位置する。スロット624の側壁から遠位末端629’にかけての間隙は狭められ、自由な滑り運動を可能にしつつも、ガイド部材620の長手方向軸まわりの管629、及び導管630の回転を制限している。
【0086】
上記の実施形態で説明したように光ファイバ632は導管630内にあって長手方向に移動する。ファイバ632の直径は、導管630の内径より小さく、上記の実施形態で説明したように、フラッシング流体、及び冷却流体が導管630を流れることができるようになっている。導管630と管629は、操作の間、ファイバ遠位端を導くガイドキャリッジとして作用する。
【0087】
ファイバ632の遠位端633は、管629内の遠位末端629’近くで終端している。管629は、ガイド部材の長手方向軸に平行な入口軸から、放射軸へとファイバ632の方向を変える。ファイバ遠位端633における放射軸、ならびに端633とガイド部材の底面622との間隔は、上記した実施形態において説明したものと同様である。
【0088】
図32〜34は、図29〜31と同様の実施形態を示す。同様の構成要素には同様の番号を付し、更に実施形態を区別するためにアポストロフィを付した。実施形態間での相違について説明する必要がある場合を除いて、同様の構成要素についての個別の説明は省略する。図32における点線は、管629aがガイド部材620a内にあることを企図していることを示す。
【0089】
図32〜34の実施形態は、図29〜31の実施形態とは、管629aの遠位末端629a’にガイド端650aを追加した点で異なる。ガイド端650aは、同一出願人による2004年10月28日提出の米国特許出願第10/975,674号(2005年05月05日に米国特許出願第2005/0096643 A1号として公開。参照して全文を含むものとする)に開示されているものと同一であってもよい。スロット624aは、ガイド部材620の長手方向軸まわりの管629a、及び導管629の回転を制限しつつ、スロット624a内の側壁に沿ったガイド端650aの滑り運動が可能な寸法になっている。
【0090】
図29〜31の実施形態(構成要素が底面622の下に突出しない)とは異なり、好ましい実施形態にあっては、ガイド端650aは底面622aの下に約1.0〜2ミリメートルの間隔Dだけ突出している。ファイバ632aはファイバ632より長いが、遠位端633aからガイド端650a底部の最も低い突出部までの距離は、図28を参照して説明した距離D’と同じであることが好ましい。
【0091】
図32〜34の構成によって、標的組織からファイバ遠位端への所望の間隔を維持しつつ、ガイド端650aは、組織表面上を傷が付かないように摺動する。
【0092】
C.本願の追加の開示
心臓への最小の侵襲的手技の間のガイドされるアブレーション装置の操作では、心臓表面に対するアブレーション素子の位置、及び移動を外科医はに検査できない。代わりに、内科医は、装置の近位端が押したり引いたりされた範囲を記すことができるだけである。例えば、もし近位端が5センチメートル押されたら、アブレーション素子が5センチメートル移動させられたことを外科医は確実に知る必要がある。
【0093】
ガイドされるアブレーション装置の設計では、装置の近位端が相対的に固定された位置の近くで操作されても、アブレーション素子がその位置に留まる結果をもたらす緩み、又は他の設計特性が存在する可能性がある。その様な場合、超過した量のエネルギーが心臓の特定の位置に加えられることがあり得る。
【0094】
本発明は、近位端の移動に応答する遠位のアブレーション素子の1対1単位の移動を保証し、他の安全管理装置を更に含むアブレーション装置の設計に向けられる。
【0095】
図1を最初に参照すると、ガイドされるアブレーション装置10の近位部が側面図で示され、側壁を部分的に除去して選択された内部構成要素を露出させている。装置10の遠位部が、図6に示される。
【0096】
装置10は、可撓性ガイド部材12、及びガイド部材12の遠位端16から伸張する可撓性位置決めコード14を含む。ガイド部材12は、過酷な滅菌に耐えることができ、人体での緊急使用に対して生物適合性を有する任意の可撓性ポリマーから形成され得る。制限されない実施例として、ガイド部材12はPTFEから形成され得る。
【0097】
コード14は湾曲形状に対して片寄って形成され、装置10の心臓への配置を容易にする。ガイド部材12からのコード14の除去のために、コード14は遠位端16へ切り離し可能に取り付けられる。外管18は、ガイド部材12の近位端19から伸張する。
【0098】
図3に示されるように、ガイド部材12は断面が概略半円筒形である。ガイド部材12は、スロット22が中心に配置された平坦な底面20を有する(図2、及び図3)。好ましい実施形態では、ガイド部材はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)から形成される。
【0099】
ガイド部材12の側壁、及び上面は、ガイド部材12の長さに沿って複数の横方向スリット24を有する。各スリット24の面は、ガイド部材12の縦軸に対して垂直である。スリット24は、底面20を通って拡張しない。
【0100】
図4は、ガイド部材12(好ましい実施形態では、底面20を除く)の外面が繊維25の様な可撓性被覆材料で被覆される他の実施形態を示す。繊維25はPTFE、又はePTFEが好ましく、ガイド部材12に対して曲がることを可能にする縦方向伸縮性を有する。また、被覆材料25は、シリコーンの様なシート材料でもよい。繊維25は、ガイド部材12に(例えば、接着、熱ステーキング、又は類似のものによって)取り付けられる。繊維25はスリット24を覆う被覆として機能し、体液、又は組織残屑がガイド部材12の内部に移動すること、及び内部構成要素と場合によって干渉することを阻止する。また、被覆25は、スリット24が組織に引っ掛かることを阻止する。更に、繊維25は複数のタブ27を備え、外科医がガイド部材12を鉗子によって容易に掴むことを可能にする。もし所望するなら、(図示されない、放射線不透過性の)マーカーが被覆25、又はガイド部材12上に配置でき、被覆25、又はガイド部材12の任意の位置、又はセグメントを識別する。
【0101】
スリット24のために、ガイド部材12は高度に可撓性である。図7に示されるように、ガイド部材12は真直ぐでもよい。スリット24によって、ガイド部材12は下方向に曲げられる(図1A)。望ましくはないが、スリット24、及びガイド部材12の可撓性は、図8に示されるように左か右へ僅かに曲げられること、又は図9に示されるようにねじられることを可能にし得る。しかし、その様な左右への曲げ、又はねじりは最小であることが好ましい。「左」又は「右」は、「下」と定義されるガイド部材12の底面20、及び「前」と定義される遠位端16に関して相対的な用語である。
【0102】
その可撓性のために、ガイド部材12は、心臓表面の上方に所望するメイズパターンで心臓の心外膜表面に対向する底面20を用いて配置できる。
【0103】
ガイド部材12の配置において、外科医はコード14を掴んで引き、遠位端16を操作することができる。ガイド部材12は(図1A、及び図1Bに図示される)中間コネクタ160を備え、ガイド部材12の遠位端16がコネクタ160の周りで曲げられること、及びコネクタ160に取り付けられることを可能にし、ガイド部材12はループを形成する。これは肺静脈を完全に包囲するガイド部材12の配置を可能にし、アブレーションのために肺静脈の周りの完全な経路を定める。
【0104】
ガイド部材12は従部、又はキャリッジ26を収容する。(図5に示される)可撓性内管28は、キャリッジ26に接続される。内管28は、キャリッジ26からガイド部材12の全長にわたり外管18を通って近位に伸張する。好ましい実施形態では、キャリッジ26はステンレス鋼から形成される。
【0105】
複数のテフロン(登録商標)スペーサ球体30が、ガイド部材12の中の近位端19とキャリッジ26の間に存在する。球体30の各々は、各球体30が内管28上で自由に摺動可能であるように内管28を収納する軸方向の穴31(図5)を有する。図8では、図示を容易にするためにたった3個の球体30が示される。
【0106】
複数のスプリング32が、対向する各球体30の間で伸張する。更に、スプリング32が、最も遠位の球体30とキャリッジ26の間で伸張する。また、スプリング32は、最も近位の球体30とガイド部材12の近位端19の間で伸張する。
【0107】
複数のスプリング32に代わるものとして、単一のスプリングが近位端19からキャリッジ26まで伸張し得る。その様な実施形態では、球体30の穴31がスプリングを囲む大きさであるので、球体30はスプリングに対して軸方向に摺動可能である。また、単一のスプリングを用いて、球体30が排除され、複数の間隔を空けられた直径を大きくした部分を有するスプリングを提供することによって置き換えられる。
【0108】
図6に示されるように、外管18は継手33を近位端で終端する。内管28は継手33を通って摺動可能に伸張し、Yコネクタ34で終端する。Yコネクタ34の流体注入口36は、内管28の内部への流体の注入を可能にする。内管28は、Yコネクタ34を超えて、内管28、管28aの全長を通過し、キャリッジ26に達する光ファイバ38を収容する。
【0109】
図13〜図15を参照すると、キャリッジ26が更に詳細に示される。図13、及び図15は、右側板を除去して内部構成要素を露出させたキャリッジ26を示す。
【0110】
キャリッジ26は、ガイド部材12の内部に収納される大きさである本体40を含む。突出部42は、スロット22の内部に収納される大きさである。
【0111】
図3に示されるように、キャリッジ26の形状は、ガイド部材12の内面と結合して、ガイド部材12の縦軸に沿うガイド部材の摺動を可能にするが、キャリッジ26とガイド部材12の相対的な回転を阻止するように選択される。更に、底面20を超える突出部42の突出量は、固定されることが好ましい。従って、ガイド部材の底面20が心臓組織に密着して配置されるとき、突出部42は組織を僅かに押し込み、キャリッジ26の移動の間の心臓組織との接触を保証する。
【0112】
キャリッジ26は光ファイバ38を収納する大きさの内部溝50を有し、光ファイバ38を入射端52から放出端54へ方向付ける。入射端52において、コネクタ56が(図13において一点鎖線で示される)内管28をキャリッジ26と接続し、光ファイバ38が放出端54に向けて入射端52を通過することを可能にする。
【0113】
キャリッジ26を心臓表面の上方で移動させるとき、組織表面はでこぼこでもよいか、又は屈曲のために、ガイド部材12は組織から僅かに間隔を空けられてもよい。治療される組織とファイバチップ39の間で一定の間隔を維持するために、突出部42が提供される。間隔の不変性は、組織に加えられるエネルギーを制御し、組織とファイバチップ39の間の冷却液の層を制御する。
【0114】
突出部42は、最突出部43を有する。光ファイバ38はキャリッジ26によって保持され、ファイバチップ39は最突出部43から距離Dだけ間隔を空けられる。距離Dの長さは、約0.5ミリメートルであることが好ましい。その結果、ファイバチップ39は、アブレーションの間中、心臓の組織からの間隔を維持される。チップ39における光ファイバ38の長さLは、光ファイバ38の外部ジャケットを除去され、反射エネルギー・フラッシュバックの入射を制限する。好ましい実施形態では、長さLは1.25ミリメートルである。
【0115】
従来の刊行物、及び本願は、790ナノメートル〜830ナノメートル、又は1020ナノメートル〜1140ナノメートルの波長範囲を有し、好ましい波長は約810ナノメートルであるレーザ光源に接続された光ファイバを記載する。その様な波長は、それらの特徴である低吸水率にとって好ましい。ここで使用されるように、低吸水率は30%未満を意味する。その様な範囲の任意の波長が適しているが、好ましい実施形態では、1064ナノメートルが最も好ましい波長である。810ナノメートルの波長は受け入れ可能であるが、低吸水率に加えて、その様な組織に心房の心外膜表面から配向されるとき、1064ナノメートルの波長も心筋組織の中で低吸水率を示すことを出願人は見出した。また、その様な波長は、市販のレーザ(例えば、Nd:YAGレーザ)によって容易に生成可能である。この波長も、光ファイバ38上で減少した熱応力をもたらす低い表面反射率を示す。また、YAGレーザは、ロープロファイル・ガイド部材12をもたらし得るキャリッジ26の更にタイトな曲げ半径を有する小口径ファイバの使用を可能にする。
【0116】
経路50は直線部分Sを放出端54付近に有し、経路50の残りの部分は湾曲している。この形状では、光ファイバ38はガイド部材12の軸に関して同軸状に伸張し、チップ39がレーザエネルギーを心臓組織に向けて放出するように曲げられる。本願の場合、ロープロファイル・アブレーション装置は、エンドファイアレーザ光ファイバ38の利点によって提供される。
【0117】
図13では、心臓組織の面が、点線Pで示される。平面Pと光ファイバの軸との間の角度は、αとして示される。αは90°でもよいが、好ましい実施形態では、1064ナノメートルのレーザエネルギー波長で動作する400マイクロメートルの光ファイバでの使用では、約72°である。
【0118】
直線セグメントSの長さは、運転中に光ファイバ38上で機械的応力と熱応力の領域が重なることを回避するように選択される。即ち、レーザエネルギーは心臓組織で反射され、レーザチップ39に戻る。反射されたレーザエネルギーは、熱応力を光ファイバ38に加える。更に、溝50の内部で光ファイバ38を曲げることは、機械的応力を光ファイバ38に加える。
【0119】
光ファイバ38への全応力を最小にするために、相当な熱応力の領域が機械的応力と重ならないことが望ましい。直線セグメントSは、機械的応力を光ファイバ38に加えない。
【0120】
直線セグメントSの長さは、反射されたレーザエネルギーからの熱応力が、直線セグメントSの全長で実質的に散逸するように選択される。直線部の長さは、光ファイバのサイズ、角度α、開口数、動作波長、電力、距離D、及びターゲット組織の表面反射率の関数である。記載された心房細動に対する治療、及び1064ナノメートルで動作する、最大電力が25ワット、角度が72°、開口数が0.22の400マイクロメートル光ファイバの使用では、この直線長さは0.100インチ(約2.54ミリメートル)より大きいことが好ましい。
【0121】
内管28は中空で上記のように冷却液を受け入れるので、上記の利益のためにアブレーションの間中、冷却液は溝50を通り、光ファイバ38を迂回し、放出端54を通り、組織に対して洗い流される。溝50の断面形状は、その全長において変化する。光ファイバ38の湾曲部分の領域では、溝50は図13Aに示される矩形断面を有する。(ガイド部材の側壁に対して垂直に伸張する)横寸法Tは、光ファイバ38の外部ジャケット38aの直径より大きい。高さH(即ち、寸法Tに対して垂直な寸法)は、外部ジャケット38aの直径にほぼ等しい。この形状では、冷却液は光ファイバ38の側面に沿って流れる。直線セグメントの領域では、断面は正方形(図13B)であり、両方の寸法H及びTは外部ジャケット38aの直径に等しい(H=H)。今、冷却液は溝50のコーナーの更に小さな領域を流れ、これによって冷却液流の速度を増加させる。(外部ジャケット38aが除去されて、光ファイバ・コア38bが露出された)長さLでは、溝50の断面(図13C)は図13Bと同じままであるが、冷却液は光ファイバ・コア38bの周り全てを流れることができる。放出チップ39を通過する好ましい流速は、約10ミリリットル/分である。
【0122】
上記の構造では、Yコネクタ34を押すこと、及びYコネクタ34をコネクタ33に向けて移動させることによって、内管28及び光ファイバ38が外管18に対して遠位へ移動される。更に、内管28の運動は、ガイド部材12に対するキャリッジ26の遠位の運動を加える。この運動全体を通して、レーザエネルギーはレーザチップ39を通してアブレート組織に加えられる。
【0123】
ガイド部材12は多種多様な形状で曲げられるか、又はねじられるので、(本発明の構造を別にすれば)内管28がガイド部材12の内部で湾曲することが可能である。もしその様なことが起きるとしたら、Yコネクタ34の運動はキャリッジ26の対応する運動を必ずしももたらさない。従って、内科医は、実際には、心臓組織の単一の位置に全てのエネルギーが加えられ、このことがその位置の加熱をもたらすであろうときに、装置が心臓組織の長さ全体へ均一にレーザエネルギーを加えていたという結論を間違って下す。
【0124】
本発明は、この望ましくない効果を球体30、及びスプリング32によって回避する。球体30は、内管28をガイド部材12の内部で軸方向に保持する。ガイド部材12の長さに沿った球体30の等しい間隔は、スプリング32によって提供される。
【0125】
図10は、キャリッジ26がガイド部材12の近位端19の付近にある装置を示す。(長さが等しい)スプリング32は完全に圧縮され、ガイド部材12の長さに沿って等しく配置された球体30を保持する。球体30は、ガイド部材12の内部で軸方向に配置された内管28を保持する。キャリッジ26において、管28aは、図1の曲げられたセグメント28aによって示されるように自由に曲げられる。
【0126】
図11は、キャリッジ26がガイド部材12の近位端19から部分的に離された装置10を示す。その結果、スプリング32は弛緩し、等しく伸張する。好ましい実施形態では、スプリング32は同じ長さで、等しいバネ定数を有する。スプリング32は等しく伸張するので、球体30の間の間隔は増加するが、球体30の各々に対して一定に保たれる。キャリッジ26が更に伸張するにつれて(図12)、スプリング32はほぼ完全に伸張した形状で示され、球体30の間の等間隔をまだ維持する。
【0127】
図16は、本発明の装置のための制御ユニット100を示す。図16では、図示を容易にするために種々の構成要素が図解的に示される。制御ユニット100は、ステッパモータ106に接続されたリニアアクチュエータ104が上に取り付けられた静止プラットフォーム102を含む。リニアアクチュエータは、ネジ棒(図示されない)、又はモータ106によって駆動される類似のものを収容してもよい。
【0128】
取付プレート108はアクチュエータ104上に支持され、ステッパモータ106の回転に応答して直線経路を移動する。固定マウント110は、プラットフォーム102に接続される。取付プレート108は、固定マウント110と同一平面上で位置あわせされたカテーテルマウント112を支持する。従って、ステッパモータ106が回転するにつれて、カテーテルマウント112は固定マウント100に向かう方向へ/から離れる方向へ移動する。
【0129】
継手33は、任意の適切な手段、及び移動マウント112に固定されたYコネクタ34によって固定マウント100に固定される。その様な配置が、図16に点線で示される。従って、取付プレート108が固定マウント100に向けて移動するにつれて、キャリッジ26はガイド部材の内部で遠位へ移動させられる。移動マウント112が固定マウント100から離れる方向へ移動するにつれて、キャリッジ26はガイド部材の内部で近位へ移動させられる。
【0130】
光ファイバ38は電源114へ伸張し、光ファイバ38の中の充分な緩みと余分な長さを用いて、固定マウント100に向かう方向への/から離れる方向への移動マウント112の運動を吸収する。記載されるように、内管28の内部への冷却液の送出のために、流体注入口36はライン115を介してポンプ116に接続される。もし所望するなら、泡トラップを含んで、内管28の内部への気流を回避することが可能である。
【0131】
移動マウント112は、移動マウント112に加えられる力の量を検知するセンサとして機能するロードセル118に接続される。更にセンサとして、当業者には既知のように、光ファイバ38を通して反射される反射レーザエネルギーの量がモニタ120によって測定できる。更に、ロードセル118に寄って測定された力の量もモニタ120に向けることができ、ポンプ116における流速、及び冷却液流体圧力がモニタ120によって測定され表示できる。
【0132】
その結果、オペレータは、ガイド部材12の内部のキャリッジ26の運動に加えられる力の量を測定できる。もし力が予め定められた最小値を越えたら、オペレータは、何らかの理由で、従部、又はキャリッジ26がガイド部材12の内部で引っ掛かり、レーザエネルギーが停止して組織の加熱を阻止したと推定する。
【0133】
他のセンサが、キャリッジの突出チップ43付近に配置された熱電対122(図14に示される)の形態で提供される。レーザエネルギーが加えられているとき、熱電対は温度の上昇を検知する。もしレーザが励起されて温度の上昇が検知されなければ、オペレータは光ファイバ38の長さに沿った破損があると推定する。また、熱電対122は治療される組織付近に配置されるので、熱電対122は組織が所望しない炭化温度に達したことを示す過熱を検出できる。その様な場合、もし検知温度が予め定められた最大値(例えば、80℃と100℃の間の目標値)を超えたら、制御装置100はレーザエネルギーを中断する。
【0134】
モニタ120によって表示される反射も、組織の過熱の兆候を提供する。組織が過熱するにつれて、組織は炭化して黒くなった組織をもたらし得る。その様な黒くなった組織は、炭化されていない組織とは異なる反射率を有する。反射率の相違は、モニタ120に表示される。もしモニタ120が炭化を示したら、レーザエネルギーが中断され得る。また、内管28に流れ込む流体の量が測定され得る。もし流体圧力、又は冷却液圧力が(光ファイバの加熱、及び光ファイバによって治療中の組織の過熱をもたし得る)所望する最小値を下回れば、レーザエネルギーが中断され得る。
【0135】
上記の制御に加えて、ガイド部材12の内部のキャリッジ26の運動が任意の適切な手段によって測定され得る。例えば、(ホール効果トランジスタの様な)検知素子150(図5)が、ガイド部材12の長さに沿って間隔を空けられる。その様なセンサ150は、各々のセンサ150を通過した強磁性キャリッジ26の運動を検知する。ガイド部材12の内部のキャリッジ26の位置の指示を提供することに加えて、センサ150を通過したキャリッジ26の運動の時間微分は、ガイド部材12の内部のキャリッジ26の内部の移動の速度を示し得る。他の動作検知技術は電気抵抗素子をガイド部材12の内部に含み、キャリッジ26は、ガイド部材12の内部のキャリッジ26の変移の関数である全抵抗を有する回路を備える。また、光学的検知が使用され得る。
【0136】
本発明の目的が好ましい実施形態でどのようにして達成されるかを説明した。本発明の教示の利益が得られることが当業者に明らかな改変や同等物は本発明の範囲内に含まれることが企図される。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】側壁を部分的に除去して内部の構成要素を露出させた、本発明によってガイドされるアブレーション装置の遠位部の側面図である。
【図1A】中間コネクタが装置の形状を保持する、ループ状に湾曲した図1の遠位部の側面図である。
【図1B】図1Aの線1B−1Bに沿った断面図である。
【図2】図1の装置の一部分の底面図である。
【図3】図1の装置のガイド部材の断面図であり、ガイド部材の中のキャリッジを示す。
【図4】(キャリッジ無しの)図3が光ファイバのカバーを備えた図である。
【図5】図1の遠位部の縦断面図である。
【図6】本発明によってガイドされるアブレーション装置の近位部の縦断面図である。
【図7】真直ぐな状態の図1の装置の上面図である。
【図8】図7の装置が湾曲した図である。
【図9】図7の装置がねじられた図である。
【図10】第1の配置にある図1の装置の内部構成要素を示す図である。
【図11】図10の内部構成要素が第2の配置にある図である。
【図12】図10の内部構成要素が第3の配置にある図である。
【図13】本発明の装置で使用するキャリッジの側断面図である。
【図13A】図13に示されたファイバの湾曲部分領域の溝の断面図である。
【図13B】図13に示されたファイバの直線セグメント領域の溝の断面図である。
【図13C】ジャケットを除去してファイバ・コアを露出させた、図13に示されたファイバの溝の断面図である。
【図14】キャリッジの斜視図である。
【図15】キャリッジの縦断面図である。
【図16】本発明のための制御装置の(部分概略)斜視図である。
【図17】ファイバの末端からのレーザビームの発散を示す概略図であり、米国特許出願第11/228,108号の図24Aに対応する。
【図18】ガイド部材およびガイド部材内でファイバを進める別部材のキャリッジ(側板を取り外した状態)を含む、本発明による装置の斜視図であり、米国特許出願第11/228,108号の図25に対応する。
【図19】図18のキャリッジの正面−上面−右側面斜視図であり、米国特許出願第11/228,108号の図26に対応する。
【図20】図19のキャリッジの上平面図であり、米国特許出願第11/228,108号の図27に対応する。
【図21】側板を取り外した図19のキャリッジの側面図であり、米国特許出願第11/228,108号の図28に対応する。
【図22】図19のキャリッジの正面図であり、米国特許出願第11/228,108号の図29に対応する。
【図23】図22の線23−23に沿った断面図であり、米国特許出願第11/228,108号の図29Aに対応する。
【図24】米国特許出願第11/228,108号に記載の発明の別の実施形態によるガイド部材およびキャリッジの斜視図であり、米国特許出願第11/228,108号の図30に対応する。
【図25】図24のガイド部材およびキャリッジの上平面図であり、米国特許出願第11/228,108号の図31に対応する。
【図26】図24のガイド部材およびキャリッジの側面図であり、米国特許出願第11/228,108号の図32に対応する。
【図27】図24のガイド部材内に配置されたキャリッジを示す正面図であり、米国特許出願第11/228,108号の図33に対応する。
【図28】図27の線28−28に沿った断面図であり、米国特許出願第11/228,108号の図33Aに対応する。
【図29】米国特許出願第11/228,108号に記載の発明によるガイド部材およびファイバのさらなる実施形態の斜視図であり、米国特許出願第11/228,108号の図34に対応する。
【図30】図29の装置の端面図であり、米国特許出願第11/228,108号の図35に対応する。
【図31】図30の線31−31に沿った断面図であり、米国特許出願第11/228,108号の図36に対応する。
【図32】米国特許出願第11/228,108号に記載の発明ガイド部材およびファイバのさらなる実施形態の斜視図であり、米国特許出願第11/228,108号の図37に対応する。
【図33】図32の装置の端面図であり、米国特許出願第11/228,108号の図38に対応する。
【図34】図33の線34−34に沿った断面図であり、米国特許出願第11/228,108号の図39に対応する。
【符号の説明】
【0138】
10 アブレーション装置
12 可撓性ガイド部材
14 可撓性位置決めコード
16 遠位端
18 外管
19 近位端
20 底面
22 スロット
24 スリット
25 被覆
26 キャリッジ
27 タブ
28 内管
28a 管
30 球体
31 穴
32 スプリング
33 継手
34 Yコネクタ
36 流体注入口
38 光ファイバ
38a 外部ジャケット
38b 光ファイバ・コア
39 ファイバチップ
40 本体
42 突出部
43 最突出部
50 経路
52 入射端
56 コネクタ
100 制御ユニット
102 静止プラットフォーム
104 リニアアクチュエータ
106 ステッパモータ
108 取付プレート
110 固定マウント
112 カテーテルマウント
114 電源
115 ライン
116 ポンプ
118 ロードセル
120 モニタ
122 熱電対
420 ガイド部材
422 底面
423 スリット
424 底面スロット
425 底面
425a 平坦端部
426 キャリッジ
427 上面
428 側面カバー
429 後面
430 導管
431 スクリュー
432 光ファイバ
433 放射端
435 空洞
437 内部ブロック
439 下部スロット
520 ガイド部材
522 底面
523 スリット
524 スロット
526 キャリッジ
527a 遠位ガイドハブ
527b 近位ガイドハブ
528a,528b ピン
529 管
530 導管
533 遠位端
620,620a ガイド部材
621 穴
622,622a 底面
623 金属ケーブル
624,624a スロット
625 スリーブ
629 湾曲管
630 導管
632 光ファイバ
633 遠位端
650a ガイド端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望するアブレーション経路に沿って組織中に損傷を形成するための装置であって、
心臓表面に対して配置するために組織と対向する面を有するガイド部材であって、内面、及び縦軸を有する前記ガイド部材と、
前記ガイド部材の内部に収納され、前記縦軸に沿って移動可能な寸法にされたガイドキャリッジと、
前記キャリッジの近位端から、力が加えられると前記ガイド部材の内部で前記キャリッジを移動させるように適合された可撓性管状部材を備える前記ガイド部材の長さを通して伸張する前記可撓性管状部材と、
前記可撓性管状部材上の力が加えられる位置の変位と実質的に等しい量だけ、前記ガイド部材の軸に沿う経路内で前記キャリッジを移動させるシステムと、を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記システムが、前記ガイド部材の内部の前記可撓性管状部材の軸方向の位置を保持するためのスペーサシステムを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スペーサシステムが、前記ガイド部材の内部で前記可撓性管状部材を摺動可能に囲む複数のスペーサを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記スペーサが弾性的に接続されて、前記スペーサの間で実質的に均一な間隔を保持する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
所望するアブレーション経路に沿って組織中に損傷を形成するための装置であって、
心臓表面に対して配置するために組織と対向する面を有するガイド部材であって、内面、及び縦軸を有する前記ガイド部材と、
前記ガイド部材の内部に収納され、前記縦軸に沿って移動可能な寸法にされたガイドキャリッジと、
前記キャリッジの近位端から前記ガイド部材の長さを通り前記ガイド部材の遠位端まで伸張する可撓性管状部材と、
移動のために前記キャリッジの中で支持され、前記可撓性管状部材を通してアブレーション・エネルギー源に接続されるアブレーション素子と、
前記ガイド部材上にあり、前記ガイド部材の長さに沿って配置される継手と、を含み、
前記ガイド部材の遠位端が、前記継手へ固定されるように適合されることを特徴とする装置。
【請求項6】
所望するアブレーション経路に沿って組織中に損傷を形成するための装置であって、
心臓表面に対して配置するために組織と対向する面を有するガイド部材であって、内面、及び縦軸を有する前記ガイド部材と、
前記ガイド部材の内部に収納され、前記縦軸に沿って移動可能な寸法にされたガイドキャリッジと、
前記キャリッジの近位端から前記ガイド部材の長さを通り前記ガイド部材の遠位端まで伸張する可撓性管状部材と、
移動のために前記キャリッジの中で支持され、前記可撓性管状部材を通してアブレーション・エネルギー源に接続されるアブレーション素子と、
前記ガイド部材の遠位端へ切り離し可能に取り付けられる可撓性伸張部材と、を含むことを特徴とする装置。
【請求項7】
所望するアブレーション経路に沿って組織中に損傷を形成するための装置であって、
心臓表面に対して配置するために組織と対向する面を有するガイド部材であって、内面、及び縦軸を有する前記ガイド部材と、
前記ガイド部材の内部に収納され、前記縦軸に沿って移動可能な寸法にされたガイドキャリッジと、を含み、
前記ガイド部材は、その全長にわたって部分的に形成された複数のスリットを有して、前記ガイド部材の制御された屈曲を可能にし、
前記スリットを部分的に覆う被覆を含み、
前記被覆は、前記ガイド部材の屈曲に順応するように選択された弾性材料から形成されることを特徴とする装置。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2009−530029(P2009−530029A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501499(P2009−501499)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/006848
【国際公開番号】WO2007/109246
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(508080193)メディカルシーヴィー、インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】