説明

動作指示装置、動作指示システム、動作指示方法、及びプログラム

【課題】ディスプレイ若しくはスピーカを用いた一般的な動作指示に代えて、又はこれらの動作指示と組み合わせて用いることによって、動作指示の正確な伝達に寄与することが可能な新たな動作指示技術を提供する。
【解決手段】複数の出力素子11は、対象者の身体部位90に装着して使用され、対象者が知覚可能な信号を出力する。誘導制御部12は、(a)身体部位90の位置移動及び回転の少なくとも一方に関する「動作の向き」と(b)身体部位90の回転状態を含む姿勢に応じて定まる複数の出力素子11の空間的な配置との対応関係に基づいて、「動作の向き」に従った身体部位90の動作を誘導するように複数の出力素子11の出力パターンを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者に対して身体動作の指示を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ(スキー、テニス、ヨガ等)、ダンス、リハビリテーション等における動作の教示を行う情報処理システム、モーションコントロール技術を利用したコンピュータゲーム機等が知られている。これらの情報処理システム及びゲーム機の中には、モーションキャプチャ技術を用いて対象者の身体部位の位置又は姿勢を計測し、この計測結果と目標動作とを比較し、目標動作からのずれを補正するための動作指示を行うよう構成されたものがある(例えば特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−320424号公報
【特許文献2】特開2004−016752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した情報処理システム及びコンピュータゲーム機による動作指示は、一般的に、対象者が位置する環境内に配置されたディスプレイ又はスピーカを用いて行われる。ディスプレイを用いる場合、例えば、ディスプレイへのレッスン映像の表示を中断して、又はレッスン映像と組み合わせて、身体部位の移動方向を示す画像や文字を表示することが考えられる。スピーカを用いる場合、例えば、「右腕をもう少し伸ばして下さい」等のアドバイス音声を出力することが考えられる。
【0005】
しかしながら、対象者が位置する環境内に配置されたディスプレイ又はスピーカを用いた動作指示のみでは、動作指示を正確に行えないケースが考えられる。例えば、ディスプレイに目を向けることが困難なポーズをとる必要がある場合や、ディスプレイとの距離が遠い場合には、対象者が動作指示を正確に理解できないおそれがある。また、アドバイス音声のみでは、身体部位の移動方向を大まかに伝えることしかできないおそれがある。
【0006】
本発明は、発明者による上述した検討に基づいてなされたものである、すなわち、本発明は、ディスプレイ若しくはスピーカを用いた一般的な動作指示に代えて、又はこれらの動作指示と組み合わせて用いることによって、動作指示の正確な伝達に寄与することが可能な新たな動作指示装置、動作指示システム、動作指示方法、及びプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、動作指示装置を含む。当該動作指示装置は、複数の出力素子、及び誘導制御部を含む。前記複数の出力素子は、対象者の身体部位に装着して使用され、前記対象者が知覚可能な信号を出力する。前記誘導制御部は、(a)前記身体部位の位置移動及び回転の少なくとも一方に関する動作の向きと(b)前記身体部位の回転状態を含む姿勢に応じて定まる前記複数の出力素子の空間的な配置との対応関係に基づいて、前記動作の向きに従った前記身体部位の動作を誘導するように前記複数の出力素子の出力パターンを制御する。
【0008】
上述した本発明の第1の態様において、前記複数の出力素子は、前記身体部位への装着状態において、前記身体部位の回転軸を取り囲むように配置されてもよい。
【0009】
上述した本発明の第1の態様において、前記複数の出力素子は、前記身体部位への装着状態において、前記身体部位の回転軸を取り囲むように配置される第1の出力素子群と、前記回転軸に実質的に沿って前記第1の素子群から離間して配置された少なくとも1つの第2の出力素子を備えてもよい。この場合、前記誘導制御部は、前記回転軸に実質的に沿う方向への前記身体部位の位置移動を誘導するように、前記第1の出力素子群および前記少なくとも1つの第2の出力素子の出力パターンを制御してもよい。
【0010】
上述した本発明の第1の態様において、前記動作の向きは、前記身体部位の位置移動及び回転を共に含んでもよい。この場合、前記誘導制御部は、前記身体部位の位置移動を誘導する第1の出力パターンとなるよう前記複数の出力素子を制御した後に、前記身体部位の回転を誘導する第2の出力パターンとなるよう前記複数の出力素子を制御してもよい。
【0011】
上述した本発明の第1の態様において、記誘導制御部は、前記身体部位の位置移動及び回転が共に不要である場合に、前記身体部位の位置移動及び回転を誘導する場合とは異なる出力パターンとなるように前記複数の出力素子を制御してもよい。
【0012】
上述した本発明の第1の態様に係る動作指示装置は、表示手段及び音声出力手段の少なくとも一方をさらに有してもよい。この場合、前記誘導制御部は、前記表示手段及び前記音声出力手段の少なくとも一方を用いて、前記動作の向きに従って動作させるべき前記身体部位を前記対象者に伝達するための情報を出力してもよい。
【0013】
上述した本発明の第1の態様において、前記誘導制御部は、前記動作の向きへの前記身体部位の動作量の大きさに応じて前記複数の出力素子の出力パターンを変化させてもよい。
【0014】
上述した本発明の第1の態様において、前記誘導制御部は、前記複数の出力素子からの出力信号の強弱を変化させることによって、前記動作量の大きさに応じた出力パターンを生成してもよい。
【0015】
上述した本発明の第1の態様において、前記複数の出力素子の各々から出力される信号は、光、音、振動、電気、及び圧力の少なくとも1つを含んでもよい。
【0016】
上述した本発明の第1の態様において、前記身体部位は、前記対象者の手、腕、脚、頭、又は腰を含んでもよい。
【0017】
上述した本発明の第1の態様に係る動作指示装置は、前記身体部位の回転状態を含む姿勢を計測可能な姿勢計測部をさらに有してもよい。前記姿勢計測部は、前記身体部位に配置される加速度センサ及びジャイロセンサのうち少なくとも一方を含んでもよい。
【0018】
本発明の第2の態様は、動作指示生成システムを含む。当該システムは、上述した本発明の第1の態様に係る動作指示装置と、前記動作の向きを含む動作指示情報を前記誘導制御手段に供給する動作指示生成部を有する。
【0019】
上述した本発明の第2の態様において、前記動作指示生成部は、前記身体部位の位置及び姿勢の少なくとも一方の計測値と目標値とのずれを補正するように前記動作の向きを決定してもよい。
【0020】
上述した本発明の第2の態様に係る動作指示生成システムは、前記身体部位の位置を計測可能な位置計測部をさらに有してもよい。
【0021】
本発明の第3の態様は、動作指示方法を含む。当該方法は、以下のステップ(a)〜(c)を含む。
(a)対象者の身体部位の位置移動及び回転の少なくとも一方に関する動作の向きを示す動作指示情報を取得すること、
(b)前記身体部位の回転状態を含む姿勢の計測結果を取得すること、及び
(c)前記姿勢に応じて定まる前記複数の出力素子の空間的な配置と前記動作の向きとの対応関係に基づいて、前記動作の向きに従った前記身体部位の動作を誘導するように、前記身体部位に装着されて前記対象者が知覚可能な信号を出力する複数の出力素子の出力パターンを制御すること。
【0022】
本発明の第4の態様は、コンピュータプログラムを含む。当該プログラムは、上述した本発明の第3の態様に係る動作指示方法をコンピュータに実行させるための命令群を含む。
【発明の効果】
【0023】
上述した本発明の各態様によれば、ディスプレイ若しくはスピーカを用いた一般的な動作指示に代えて、又はこれらの動作指示と組み合わせて用いることによって、動作指示の正確な伝達に寄与することが可能な新たな動作指示装置、動作指示システム、動作指示方法、及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る動作指示システムのブロック図である。
【図2】図2は、図1に示した動作指示システムの具体的な構成例を示すブロック図である。
【図3】図3は、複数の出力素子11の配置例を示す図である。
【図4】図4は、身体部位90の動作の向きと複数の出力素子11の出力パターンとの関係の具体例を示す図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、身体部位90の動作の向きと複数の出力素子11の出力パターンとの関係の具体例を示す図である。
【図6】図6(a)及び(b)は、身体部位90の動作の向きと複数の出力素子11の出力パターンとの関係の具体例を示す図である。
【図7】図7は、姿勢計測部13の具体例としてのジャイロセンサ131及び加速度センサ132の配置例を示す図である。
【図8】図8は、位置計測部14に固定された座標系XYZと、身体部位90の回転軸をz軸とする座標系xyzとの関係を示す図である。
【図9】図9は、動作目標値、身体部位90の位置、及び複数の出力素子11の出力パターンの関係を示すグラフである。
【図10】図10は、誘導制御部12による制御手順の具体例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、身体部位90に含まれる複数の部位の位置移動及び回転を含む複合的な動作を、対象者の胴体に近い部位から順に誘導する手順の具体例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0026】
<発明の実施の形態1>
図1は、本実施の形態にかかる動作指示システム1の構成例を示すブロック図である。動作指示システム1は、動作指示装置10、姿勢計測部13、位置計測部14、及び動作指示生成部15を含む。動作指示装置10は、複数の出力素子11、及び誘導制御部12を含む。
【0027】
複数の出力素子11は、対象者の身体部位90に装着して使用される。身体部位90は、対象者が少なくとも1つの関節を屈曲又は回転させることによって動作させることができる身体の一部である。身体部位90の動作は、位置移動(位置の平行移動)及び回転の少なくとも一方を含む。身体部位90は、例えば、対象者の手、下腕、上腕、足先、下腿、上腿、頭、又は腰である。
【0028】
さらに、各出力素子11は、対象者が知覚可能な信号を出力する。出力素子11の出力信号は、対象者(つまり人間)が、視覚、聴覚、嗅覚、若しくは皮膚感覚(触覚、痛覚、温度覚)又はこれらの組合せによって知覚可能な信号であればよい。例えば、出力素子11の出力信号は、光、音、振動、電気、若しくは圧力又はこれらの組合せとすればよい。
【0029】
誘導制御部12は、後述する動作指示生成部15から供給される動作指示情報と、複数の出力素子11の空間的な配置との対応関係に基づいて、複数の出力素子11の出力パターンを制御する。ここで、動作指示情報は、少なくとも身体部位90の「動作の向き」に関する動作指示を含む。動作指示情報は、さらに、身体部位90の「動作量の大きさ」に関する指示を含んでもよい。本明細書では、身体部位90の「動作の向き」及び「動作量の大きさ」を含む動作指示情報を「動作ベクトル」と呼ぶ。
【0030】
複数の出力素子11の空間的な配置は、身体部位90の回転状態を含む姿勢に応じて定まる。つまり、複数の出力素子11の空間的な配置は、後述する姿勢計測部13による身体部位90の回転状態を含む姿勢の計測結果(図1中のOA)を用いて推定可能である。より具体的に述べると、各出力素子11の身体部位90への装着位置を予め定めておけばよい。これにより、身体部位90の姿勢と複数の出力素子11の空間的な配置とが一意に対応付けられる。したがって、誘導制御部12は、身体部位90の回転状態を含む姿勢の計測結果OAを用いて複数の出力素子11の空間的な配置を推定すればよい。
【0031】
複数の出力素子11の出力パターンは、各出力素子11の出力オン/オフ、若しくは出力の強弱、又はこれら両方を個別に切り替えることによって生成される。
【0032】
姿勢計測部13は、身体部位90の回転状態を含む姿勢を計測する。また、位置計測部14は、身体部位90の位置を計測する。計測部13及び14による身体部位90の位置及び姿勢の計測は、公知のモーションキャプチャ技術を用いて行えばよい。姿勢計測部13及び位置計測部14の構成及び配置は、採用するモーションキャプチャ技術に応じて適宜定めればよい。すなわち、本実施の形態における身体部位90の位置及び姿勢の計測には、任意の手法を利用することができ、特定の方式に限定されるものではない。
【0033】
例えば、姿勢計測部13による身体部位90の姿勢計測は、距離センサ(ステレオカメラ、TOF(time of flight)方式の距離画像センサ等)を用いる非接触式のモーションキャプチャ技術を用いて行うことができる。この場合、姿勢計測部13は、対象者が存在する環境に配置された距離センサ(ステレオカメラ、TOF(time of flight)方式の距離画像センサ等)によって身体部位に配置された複数のマーカーまでの距離を計測し、各マーカーの3次元位置に基づいて身体部位90の姿勢を推定すればよい。また、身体部位90の代表的な姿勢を示す複数のテンプレート画像を予め準備しておき、デジタルカメラによって得られた撮影画像とテンプレート画像とを画像認識の手法を用いて照合することによって、撮影画像中から身体部位90及びその姿勢を検出してもよい。
【0034】
また、姿勢計測部13による身体部位90の姿勢計測は、接触式のモーションセンサを用いた機械式モーションキャプチャ技術を用いて行ってもよい。接触式のモーションセンサは、ジャイロセンサ、加速度センサ、若しくは地磁気センサ、又はこれらの組合せを含む。姿勢計測部13は、身体部位90に配置された接触式センサによって例えば角速度、姿勢角度、重力加速度、及び方位などを計測し、これらの計測結果を用いて身体部位90の姿勢を推定すればよい。
【0035】
位置計測部14による身体部位90の位置計測についても、距離センサ(ステレオカメラ、TOF(time of flight)方式の距離画像センサ等)を用いる非接触式のモーションキャプチャ技術を用いて行うことができる。距離センサは、対象者が存在する環境に配置されてもよいし、身体部位90に配置されてもよい。身体部位90に距離センサを配置する場合、環境中に配置された複数の基準光源(赤外線LED(light emitting diode)等)から放射される光信号を観測することによって基準光源から距離センサまでの距離を計測すればよい。また、位置計測部14による身体部位90の位置計測は、接触式のモーションセンサを用いた機械式モーションキャプチャ技術を用いて行ってもよい。なお、姿勢計測部13及び位置計測部14は、物体の位置及び姿勢を計測可能な共通のモーションキャプチャシステムによって実現されてもよい。
【0036】
動作指示生成部15は、少なくとも「動作の向き」を含む動作指示情報を生成して誘導制御部12に供給する。「動作の向き」は、身体部位90の位置移動(平行移動)の向き、若しくは身体部位90の回転軸周りの回転の向き、又はこれら両方を含む。なお、動作指示情報は、「動作量の大きさ」を含む「動作ベクトル」であってもよい。具体的には、動作指示生成部15は、計測部13及び14による身体部位90の位置及び姿勢の少なくとも一方の計測結果と動作目標値とのずれを補正するように「動作の向き」を決定すればよい。動作目標値は、図示しない記憶デバイス(ROM(read only memory)、フラッシュメモリ、HDD(hard disc drive)、光学ドライブ等)から動作指示生成部15に供給されてもよいし、遠隔装置から通信ネットワーク又は放送ネットワークを経由して動作指示生成部15に供給されてもよい。
【0037】
上述した誘導制御部12及び動作指示生成部15は、ASIC(application specific integrated circuit)、DSP(digital signal processor)、若しくはマイクロプロセッサ(MPU(micro processing unit))、又はこれらの組合せ等のコンピュータシステムを用いて実現すればよい。また、誘導制御部12及び動作指示生成部15の配置は特に限定されない。すなわち、誘導制御部12は、複数の出力素子11と共に身体部位90に配置されてもよいし、身体部位90から離れた場所(例えば対象者が位置する環境内)に配置されてもよい。動作指示生成部15の配置についても同様である。
【0038】
図2は、動作指示システム1の具体的な構成例を示すブロック図である。図2の例では、動作指示システム1は、対象者の身体部位90に配置される動作指示装置10と、動作指示装置10から離間して配置される制御装置16を含む。制御装置16は、例えば、対象者が位置する環境内に配置される。動作指示装置10と制御装置16は、互いの通信デバイス101及び161を用いて通信可能である。通信デバイス101及び161は、無線通信を行ってもよいし、有線通信を行ってもよい。例えば、通信デバイス101及び161は、IEEE 802.11等の無線LAN(local area network)規格、bluetooth(登録商標)等の無線PAN(personal area network)規格に従って無線通信を行えばよい。
【0039】
図2の例では、動作指示装置10は、複数の出力素子11の具体例としての複数のLED111を含む。また、図2の例では、動作指示装置10は、姿勢計測部13の具体例としてのジャイロセンサ131及び加速度センサ132を含む。さらに、図2の例では、誘導制御部12は、マイクロプロセッサ121及びLEDコントローラ122を用いて構成されている。マイクロプロセッサ121は、記憶デバイス102に格納された誘導制御プログラム123を実行する。記憶デバイス102は、不揮発性の記憶デバイスであり、例えば、フラッシュメモリ、HDD(hard disc drive)、若しくは光学ドライブ、又はこれらの組合せである。マイクロプロセッサ121は、誘導制御プログラム123を実行することによって、後述する制御装置16から供給される動作指示情報と、複数のLED111の空間的な配置との対応関係に基づいて、複数のLED111の出力パターン(つまり点灯パターン)を制御するための指示をLEDコントローラ122に出力する。LEDコントローラ122は、マイクロプロセッサ121の指示に応じて複数のLED111の点灯パターンを制御する。
【0040】
図2の例では、制御装置16は、位置計測部14の具体例としての距離画像センサ141を含む。また、図2の例では、動作指示生成部15は、マイクロプロセッサ151を用いて構成されている。マイクロプロセッサ151は、記憶デバイス162に格納された動作指示生成プログラム152を実行する。記憶デバイス162は、不揮発性の記憶デバイスであり、例えば、フラッシュメモリ、HDD、若しくは光学ドライブ、又はこれらの組合せである。マイクロプロセッサ151は、動作指示生成プログラム152を実行することによって、距離画像センサ141による身体部位90の位置計測結果と動作目標値とのずれを補正するように動作指示情報を生成する処理を行う。動作目標値は、記憶デバイス162又は外部入力端子163からマイクロプロセッサ151に供給される。外部入力端子163は、外部接続機器又は通信ネットワークに接続するためのインタフェースを提供する。
【0041】
なお、図2に示した動作指示システム1の構成例は一例であり、適宜変形してもよい。例えば、誘導制御部12及び動作指示生成部15は、共通のマイクロプロセッサによって実現してもよい。誘導制御部12及び動作指示生成部15として機能する共通のマイクロプロセッサは、複数の出力素子11とともに身体部位90側に一体的に配置されてもよいし、身体部位90から離れた場所(例えば対象者が位置する環境内)に配置されてもよい。
【0042】
続いて以下では、複数の出力素子11の身体部位90への配置例について説明する。さらに、動作指示情報により示される「動作の向き」と複数の出力素子11の空間的な配置との対応関係に基づいた複数の出力素子11の出力パターンの制御の例について説明する。図3は、複数の出力素子11を身体部位90に装着するための装着具100を示している。図3に例示する装着具100は、リング形状を有し、対象者の上腕、下腕、手首、上腿、下腿、足首、首、頭、又は胴体などに装着される。装着具100は、完全に閉じたリングである必要は無く、一部が開放したリングであってもよい。また、装着具100を身体部位90に固定する手段は特に限定されない。例えば、装着具100を伸縮性部材で形成し、装着具100自体の収縮によって身体部位90に装着具100を固定する手法を採用してもよい。また、装着具100は、ベルト、ファスナー、粘着テープ等を用いて身体部位90に固定されてもよい。
【0043】
図3の例では、装着具100の外側表面には、複数の出力素子11(11A〜11H)が円周方向に等間隔に配置されている。従って、装着具100が身体部位90に固定されることによって、複数の出力素子11A〜11Hは、身体部位90の回転軸を取り囲むように配置される。
【0044】
なお、図3の例は一例に過ぎない。例えば、複数の出力素子11A〜11Hは、等間隔に配置されていなくてもよい。また、複数の出力素子11が配置される装着具100は、リング形状でなくてもよい。例えば、装着具100は、手袋、靴下、ジャケット等の衣類であってもよい。また、複数の出力素子11は、装着具100を用いずに、例えば、粘着テープ、マグネット、又は面ファスナー等を用いて、身体部位90に直接的に又は衣類を介して間接的に取り付けられてもよい。
【0045】
図4は、「動作の向き」と複数の出力素子11の空間的な配置との対応関係に基づく複数の出力素子11の出力パターンの具体例を示す図である。図4の例では、動作指示情報により示される「動作の向き」が図4の白抜き矢印によって示される向きである場合の出力パターンの具体例を示している。すなわち、図4の例では、誘導制御部12は、出力素子11Hの出力状態を他の出力素子11A〜11Gの出力状態と異ならせる。出力素子11Hは、複数の出力素子11A〜11Hが配置された仮想的な円の中心(図4のxy座標軸の原点)から見て「動作の向き」に最も近い向きに存在している出力素子である。
【0046】
出力素子11Hの出力状態を他の素子と異ならせるためには、例えば、出力素子11Hの出力のみをオンし、他の素子の出力をオフしてもよい。また、出力素子11Hの出力強度を他の素子の出力強度より強めてもよい。また、出力素子11Hが出力する光、音、又は振動などの周波数を他の素子とは異ならせてもよい。これによって、誘導制御部12は、対象者に「動作の向き」を伝達することができ、身体部位90を「動作の向き」(つまり図4の左斜め上)に平行移動する動作を誘導することができる。
【0047】
図5(a)〜(c)は、図4と同様に、身体部位90の位置移動(平行移動)を誘導するための複数の出力素子11の出力パターンの具体例を示している。図5(a)〜(c)は、複数の出力素子11(11A〜11H)が対象者の手首に装着されている場合を示している。つまり、図5(a)〜(c)の例では、身体部位90は、手首又は下腕である。
【0048】
「動作の向き」が同じであっても、身体部位90の姿勢(ここでは手首又は下腕の回転軸に対する回転状態)に応じて、複数の出力素子11の空間的な配置と「動作の向き」との対応関係は変化する。このため、誘導制御部12は、図5(a)〜(c)に示されているように、身体部位90の姿勢(手首又は下腕の回転軸に対する回転状態)に応じて、複数の出力素子11の出力パターンを変化させるとよい。図5(a)は、対象者の掌が紙面奥向きとなる姿勢を示している。図5(a)の例では、身体部位90の動作(平行移動)の向きに対応する出力素子11Cの出力状態が他の素子と異なる。図5(b)は、象者の掌が紙面左向きとなる姿勢を示している。図5(b)の例では、身体部位90の動作(平行移動)の向きに対応する出力素子11Bの出力状態が他の素子と異なる。図5(c)は、象者の掌が紙面手前向きとなる姿勢を示している。図5(c)の例では、身体部位90の動作(平行移動)の向きに対応する出力素子11Aの出力状態が他の素子と異なる。
【0049】
図6(a)及び(b)も、身体部位90としての手首又は下腕の位置移動(平行移動)を誘導するための複数の出力素子11の出力パターンの具体例を示している。具体的には、図6(a)及び(b)は、身体部位90(手首又は下腕)の回転軸に沿った方向への位置移動を誘導する例を示している。図6(a)及び(b)の例では、複数の出力素子11は、装着具100Aによって手首に装着される第1の出力素子群と、装着具100Bによって下腕の肘近くの部位に装着される第2の出力素子群を含む。なお、第1及び第2の出力素子群の少なくとも一方は、少なくとも1つの出力素子11を含んでいればよい。
【0050】
図6(a)及び(b)の例では、第1の出力素子群の出力状態と第2の出力素子群の出力状態を異ならせた出力パターンを用いることによって、「動作の向き」を対象者に伝達することができる。例えば、図6(a)に示すように「動作の向き」が手先から肘に向かう向きである場合、誘導制御部12は、肘近くの第2の出力素子群の出力をオンし、手首の第1の出力素子群の出力をオフしてもよい。これとは逆に、図6(b)に示すように「動作の向き」が肘から手先に向かう向きである場合、誘導制御部12は、手首の第1の出力素子群の出力をオンし、肘近くの第2の出力素子群の出力をオフしてもよい。なお、出力素子11のオン/オフに限らず、出力素子11の出力強度の強弱、若しくは出力素子11が出力する光、音、又は振動などの周波数を異ならせることで、第1の出力素子群の出力状態と第2の出力素子群の出力状態を異ならせてもよい。
【0051】
図4〜図6を用いた以上の説明では、「動作の向き」が身体部位90の平行移動の向きを示す場合について述べた。ここでは、「動作の向き」が身体部位90の回転の向きを示す場合の複数の出力素子11の出力パターンの例について述べる。「動作の向き」が身体部位90の回転の向きを示す場合、誘導制御部12は、回転の向きに合わせて複数の出力素子11の出力パターンを時間変化させるとよい。例えば、誘導制御部12は、図3の出力素子11A〜11Hが回転の向きに沿って1つずつ順番に出力するように制御してもよい。具体的には、図3の例で時計回りの回転を誘導する場合、誘導制御部12は、11A、11B、11C、・・・、11Hの順番で出力をオンすればよい。一方、図3の例で反時計回りの回転を誘導する場合、誘導制御部12は、11A、11H、11G、・・・、11Bの順番で出力をオンすればよい。なお、出力素子11のオン/オフに限らず、出力素子11の出力強度の強弱、又は出力素子11が出力する光、音、若しくは振動などの周波数を順番に異ならせることで、回転の向きを対象者に伝達してもよい。
【0052】
次に、動作指示情報が「動作ベクトル」であり、「動作の向き」だけでなく「動作量の大きさ」も対象者に伝達する必要がある場合における複数の出力素子11の出力パターンの例について述べる。誘導制御部12は、「動作量の大きさ」を対象者に伝達するために、出力素子11の出力強度、又は出力素子11が出力する光、音、若しくは振動などの周波数を「動作量の大きさ」に応じて変化させるとよい。例えば、誘導制御部12は、「動作量の大きさ」が大きいほど、出力素子11の出力強度を大きくしてもよい。
【0053】
また、誘導制御部12は、動作指示情報が身体部位の動作が不要であることを示す場合に、つまり身体部位90の位置又は姿勢と動作目標値との差分が所定の誤差範囲内である場(言い換えると身体部位90の位置又は姿勢と動作目標値とが実質的に一致する場合)に、この事実を対象者に伝達するための特別な出力パターンとなるよう複数の出力素子11を制御してもよい。このようにすることで、身体部位90の位置又は姿勢が正しい状態であることを対象者に明確に伝達することができる。
【0054】
続いて、姿勢計測部13の具体的な配置例について説明する。図7は、身体部位90が下腕であって、姿勢計測部13がジャイロセンサ131及び加速度センサ132を含む場合の配置例を示している。図7の例では、ジャイロセンサ131及び加速度センサ132を内蔵したセンサ筐体130が身体部位90(つまり下腕)に取り付けられている。センサ筐体130を身体部位90に固定する手段は特に限定されない。例えば、センサ筐体130は、ベルト、ファスナー、粘着テープ、マグネット等を用いて身体部位90に直接的に又は衣類を介して間接的に取り付けられてもよい。図7に示すように、ジャイロセンサ131及び加速度センサ132を身体部位90と一体的に配置することによって、身体部位90の回転状態を含む姿勢の計測を精度良く行うことができる。
【0055】
続いて以下では、位置計測部14の座標系XYZと身体部位90の座標系xyzとの間の座標変換に関して説明する。図8は、位置計測部14の具体例としての距離画像センサ141の光軸をZ軸とする座標系XYZと、身体部位90の座標系xyzとの関係を示している。例えば、動作指示生成部15は、位置計測部14による測定結果を用いて、座標系XYZを基準とする動作ベクトル(図8中のMV)を生成することができる。このとき、誘導制御部12は、動作ベクトルMVを座標系XYZから座標系xyzへ投影(座標変換)すればよい。これにより、誘導制御部12は、身体部位90の姿勢に影響されることなく正しい「動作の向き」への誘導を行うことができる。
【0056】
例えば、図8に示すように、動作ベクトルMVが(X1,Y1,0)、すなわちX軸成分及びY軸成分を含み、Z軸成分を含まない場合について考える。誘導制御部12は、この動作ベクトルMV=(X1,Y1,0)をxyz座標系に投影してx軸、y軸及びz軸成分にベクトル分解する。その結果、図8中に破線で示した補助線の記載から明らかであるように、誘導制御部12は、身体部位90を−z向き、+x向き、及び+y向きへ平行移動させる必要があることが分かる。
【0057】
z軸方向の平行移動を誘導するためには、誘導制御部12は、例えば図6(a)及び(b)を用いて説明した出力パターンを用いればよい。具体的には、図8の例で−z向きの平行移動を誘導するためには、誘導制御部12は、図6(a)に示した出力パターンを用いればよい。なお、対象者が身体部位90を動かした結果、身体部位90のz軸方向の位置が動作目標値を超えることが想定される。この場合には、逆の+z向きの平行移動を示す動作ベクトルが誘導制御部12に供給される。したがって、誘導制御部12は、図6(b)に示した出力パターンを用いて+z向きの平行移動を誘導すればよい。このようなフィードバック制御を行うことで、誘導制御部12は、動作目標値に対応する位置へ身体部位90を誘導することができる。
【0058】
x軸方向及びy軸方向、つまりxy面に平行な方向(以下、xy面方向)の平行移動を誘導するためには、誘導制御部12は、例えば図4並びに図5(a)〜(c)を用いて説明した出力パターンを用いればよい。具体的には、図8の例で+x向き及び+y向きを含むxy面方向の合成ベクトルに従った平行移動を誘導するためには、誘導制御部12は、図4に示したように、出力素子11Hの出力状態を他の出力素子11A〜11Gの出力状態と異ならせる出力パターンを用いればよい。この場合、正確な向き(角度)の一致は必要では無い。つまり、誘導制御部12は、身体部位90の移動に従って、動作の向きに最も近い角度に位置する出力素子11を選択していけばよい。z軸方向の移動の場合と同様に、対象者が身体部位90を動かした結果、身体部位90のxy面方向の位置が動作目標値を超えることが想定される。この場合には、逆向きの平行移動を示す動作ベクトルが誘導制御部12に供給される。したがって、誘導制御部12は、図4の出力素子11Dの出力状態を他の素子と異ならせる出力パターンを用いて逆向き(−x及び−y向き)の平行移動を誘導すればよい。このようなフィードバック制御を行うことで、誘導制御部12は、動作目標値に対応する位置へ身体部位90を誘導することができる。
【0059】
ところで、誘導制御部12が上述した座標変換を行うためには、位置計測部14(距離画像センサ141)の座標系XYZと、身体部位90の座標系xyzの間の相対関係が既知である必要がある。この座標系の相対関係は、予めキャリブレーションを行うことによって決定することができる。このキャリブレーションは、以下の手順(1)又は(2)によって行うことができる。
(手順1)
意図的に、X軸のみ、Y軸のみ、及びZ軸のみの3通りの動作ベクトルを誘導制御部12に供給し、これに応じた身体部位90の動作が行われたときの姿勢計測部13による計測結果を用いて、誘導制御部12が座標系XYZと座標系xyzの相対関係を決定する。
(手順2)
身体部位90をx軸、y軸、及びz軸方向のそれぞれに移動させたことに応じて動作指示生成部15から得られる動作ベクトルを用いて、誘導制御部12が座標系XYZと座標系xyzの相対関係を決定する。
【0060】
また、初期段階でのキャリブレーションを行わずに、任意の2点の間を身体部位90が移動したときに得られる情報に基づいて、座標系XYZと座標系xyzの相対関係を決定してもよい。具体的には、任意の2点の間を身体部位90が移動した場合における移動前後での身体部位90の姿勢変化と、移動前後における動作ベクトルの変化とを対比することによって、座標系XYZと座標系xyzの相対関係を決定すればよい。
【0061】
続いて以下では、図8に示した動作ベクトルMVに基づいて誘導制御部12が対象者の動作を誘導し、最終的に動作目標値に対応するゴール位置に身体部位90を移動させる過程の具体例について図9を用いて説明する。図9の上段はx軸、中段はy軸、下段はz軸に関するグラフである。図9上段(a)に示すPx(t)は、身体部位90のx座標の時間変化を示している。図9中段(b)に示すPy(t)は、身体部位90のy座標の時間変化を示している。図9下段(c)に示すPz(t)は、身体部位90のz座標の時間変化を示している。また、Gx、Gy及びGzは、身体部位90のゴール位置のx、y及びz座標を表わしている。
【0062】
図9の例では、始めに、区間T1及びT2において、誘導制御部12が、身体部位90のz軸方向の平行移動を誘導する。図9下段(c)中の白抜き矢印は、動作ベクトルのz軸成分を示している。区間T1では−z向きを持つ動作ベクトルからスタートするので、誘導制御部12は、例えば図6(a)に示した出力パターンを用いて、−z向きへの平行移動を誘導する。次に、区間T2では、身体部位90の−z向きの移動量が大き過ぎてゴール座標Gxを下回ったため、逆向きの+z向きを持つ動作ベクトルが生成される。これに従って、誘導制御部12は、例えば図6(b)に示した出力パターンを用いて、+z向きへの平行移動を誘導する。結果として、身体部位90のz軸方向の位置Pzとゴール座標Gzとのずれは、予め定められた誤差範囲内に収束する。
【0063】
次に、区間T3では、誘導制御部12は、動作ベクトルのxy面成分に従って、身体部位90のxy面方向の平行移動を誘導する。図9上段(a)及び中段(b)中の白抜き矢印は、動作ベクトルのx軸成分及びy軸成分を示している。区間T3では+x及び+y向きを持つ動作ベクトルからスタートするので、誘導制御部12は、例えば図4に示した出力パターンを用いて、+x及び+y向きへの平行移動を誘導する。図9中に示された「出力パターン H、H、H、H、H、A、B、B」は、図4に示した出力素子11A〜11Hのうち、他の素子と異なる出力状態とされる素子を示している。つまり、区間T3の最初から5回目までの判定タイミングでは、出力素子11Hの出力状態を他の素子と異ならせることによって、出力素子11Hの向きへの平行移動が誘導される。次の6回目の判定タイミングでは、出力素子11Aの出力状態を他の素子と異ならせることによって、出力素子11Aの向きへの平行移動が誘導される。7回目及び8回目の判定タイミングでは、出力素子11Bの出力状態を他の素子と異ならせることによって、出力素子11Bの向きへの平行移動が誘導される。結果として、身体部位90のxy面方向の位置Gx及びGyとゴール座標Gx及びGyとのずれは、予め定められた誤差範囲内に収束する。
【0064】
なお、説明を分かりやすくするために、図9では、z軸方向の誘導過程とxy面方向の誘導過程を時系列に分離する例を示した。しかしながら、誘導制御部12は、x、y、及びz軸方向の誘導を分離せずに行ってもよい。誘導制御部12は、例えば判定タイミング毎にx軸方向、y軸方向、及びz軸方向の順序で繰り返し誘導を行ってもよい。
【0065】
続いて以下では、誘導制御部12による制御手順の具体例を説明する。図10は、この具体例を示すフローチャートである。ステップS1では、誘導制御部12は、キャリブレーションを行うことによって、位置計測部14の座標系XYZと身体部位90(姿勢計測部13)の座標系xyzの相対関係を把握する。ステップS2では、誘導制御部12は、判定タイミングが到来するまで待機する。判定タイミングとは、動作目標値が存在するタイミングを指している。判定タイミングは、例えば、動作指示生成部15から誘導制御部12に供給される。
【0066】
ステップS3では、誘導制御部12は、動作指示生成部15により生成された動作指示情報を取得する。ここでは、動作指示情報は、「動作の向き」及び「動作量の大きさ」を含む「動作ベクトル」であるとする。ステップS4では、誘導制御部12は、姿勢計測部13により計測された身体部位90の姿勢計測結果を取得する。ステップS5では、誘導制御部12は、動作ベクトルをxyz座標系に投影するとともに、x軸、y軸及びz軸成分へのベクトル分解を行う。
【0067】
ステップS6では、誘導制御部12は、動作ベクトルのz成分ベクトルに基づいて、例えば図6(a)及び(b)に示したような出力パターンを決定し、z軸方向の身体部位90の平行移動を誘導する。ステップS7では、誘導制御部12は、z軸方向の身体部位90の位置とゴール座標Gzとの誤差が所定の閾値THzを下回るか否かを判定する。なお、ステップS7の判定は、動作指示生成部15が行ってもよい。z軸方向の誤差が閾値THz以上である場合(ステップS7でNO)、誘導制御部12は、ステップS4に戻って処理を繰り返す。
【0068】
z軸方向の誤差が収束した場合(ステップS7でYES)、誘導制御部12は、動作ベクトルのx成分ベクトル及びy成分ベクトルに基づいて、例えば図4に示したような出力パターンを決定し、xy面方向の身体部位90の平行移動を誘導する(ステップS9)。ステップS10では、誘導制御部12は、xy面方向の身体部位90の位置とゴール座標Gx及びGyとの誤差が所定の閾値THxyを下回るか否かを判定する。なお、ステップS10の判定は、動作指示生成部15が行ってもよい。xy面方向の誤差が閾値THxy以上である場合(ステップS10でNO)、誘導制御部12は、ステップS4に戻って処理を繰り返す。
【0069】
xy面方向の誤差が収束した場合(ステップS10でYES)、誘導制御部12は、身体部位90が正しい位置(ゴール位置)に到達したことを示す出力パターンを生成し、これを対象者に通知する(ステップS11)。
【0070】
続いて、身体部位90に含まれる複数の部位の位置移動及び回転を含む複合的な動作を、対象者の胴体に近い部位から順に誘導する手順の具体例について説明する。図11は、この具体例を示すフローチャートである。ここでは、身体部位90が下腕であり、身体部位90の中に肘及び手首が含まれる場合を例として、図6(a)及び(b)を参照しながら説明する。
【0071】
ステップS21では、誘導制御部12は、図6(a)及び(b)に示した方法で下腕のz軸方向の位置をゴール位置に誘導する。
【0072】
ステップS22では、誘導制御部12は、図6(a)及び(b)に示された肘側の装着具100Bに配置されている第2の出力素子群の出力パターンを制御することによって、xy面方向の肘の平行移動を誘導する。
【0073】
ステップS23では、誘導制御部12は、図6(a)及び(b)に示された手首側の装着具100Aに配置されている第1の出力素子群の出力パターンを制御することによって、xy面方向の手首の平行移動を誘導する。
【0074】
ステップS24では、誘導制御部12は、手首側の装着具100Aに配置されている第1の出力素子群が円周方向に沿って順次出力するように制御することで、手首の回転を誘導する。
【0075】
以上に説明したように、本実施の形態では、誘導制御部12は、(a)身体部位90の位置移動及び回転の少なくとも一方に関する「動作の向き」と(b)身体部位90の回転状態を含む姿勢に応じて定まる複数の出力素子11の空間的な配置との対応関係に基づいて、この「動作の向き」に従った身体部位90の動作を誘導するように複数の出力素子11の出力パターンを制御する。これにより、本実施の形態は、ディスプレイ若しくはスピーカを用いた一般的な動作指示を行う場合と比べて、身体部位90の動作の向きを対象者に直感的に伝達することができる。さらに、本実施の形態は、身体部位90の姿勢に応じて定まる複数の出力素子11の空間的な配置と「動作の向き」との対応関係を考慮しているため、身体部位90が如何なる姿勢であるかに関わらず、身体部位90の動作を的確に誘導することができる。よって、本実施の形態は、ディスプレイ若しくはスピーカを用いた一般的な動作指示に代えて、又はこれらの動作指示と組み合わせて用いることによって、動作指示の正確な伝達に寄与することができる。
【0076】
また、本実施の形態では、複数の出力素子11の身体部位90への装着例について説明した。例えば、図3には、複数の出力素子11を身体部位90の回転軸(z軸)を取り囲むように配置する例を示した。複数の出力素子11をこのように配置することによって、回転軸(z軸)に垂直な成分(x成分又はy成分)を含む平行移動を誘導するための出力パターンの生成と、回転軸(z軸)周りの回転を誘導するための出力パターンの生成を、ともに容易に行うことができる。
【0077】
また、図6(a)及び(b)には、身体部位90の回転軸(z軸)を取り囲むように配置される第1の出力素子群と、回転軸(z軸)に実質的に沿って第1の素子群から離間して配置された少なくとも1つの第2の出力素子を含む例について説明した。複数の出力素子11をこのように配置することによって、回転軸(z軸)に平行な成分を含む平行移動を誘導するための出力パターンの生成を容易に行うことができる。
【0078】
<その他の実施の形態A>
上述した実施の形態1に係る動作指示システム1は、身体部位90の動作の誘導に使用するためのディスプレイ及びスピーカの少なくとも一方をさらに備えてもよい。ディスプレイ又はスピーカは、対象者の身体に配置されてもよいし、対象者が位置する環境内に配置されてもよい。誘導制御部12は、複数の出力素子11の出力パターンに加えて、ディスプレイ又はスピーカからの画像又は音声を用いて動作の誘導を行ってもよい。画像又は音声を複数の出力素子11の出力パターンと組み合わせて用いることによって、対象者への動作指示をより的確に行うことができる。
【0079】
例えば、誘導制御部12は、ディスプレイ又はスピーカからの画像又は音声を停止したり切り替えたりすることによって、身体部位90が正しい位置に到達したことを対象者に通知してもよい。
【0080】
また、誘導制御部12は、ディスプレイ又はスピーカからの画像又は音声を停止したり切り替えたりすることによって、複数の出力素子11の出力パターンによる動作指示の開始タイミングを対象者に通知してもよい。
【0081】
また、誘導制御部12は、動作指示が必要であり、かつ動作目標値との身体部位90とのずれが所定の基準を超えて大きいことを条件として、ディスプレイ又はスピーカからの画像又は音声を停止したり切り替えたりしてもよい。これにより、動作目標値とのずれが大きく特に注意してレッスン等を進める必要があることを対象者に対して的確に伝達することができる。
【0082】
<その他の実施の形態B>
上述した実施の形態1に係る動作指示システム1は、姿勢計測部13の計測結果、位置計測部14の計測結果、動作指示情報などの履歴を記録できるように構成されてよい。さらに、動作指示システム1は、対象者が確認できるようにするために、記録された履歴を映像、音声などによって表示できるように構成されてもよい。このように構成することで、対象者が動作指示の内容を繰り返して確認することができるため、レッスン等の効率を上げることができる。
【0083】
<その他の実施の形態C>
上述した実施の形態1では、動作指示生成部15が、対象者の身体部位90の位置及び姿勢の少なくとも一方の計測結果に基づいて動作指示情報の生成を行う例を示した。動作指示生成部15は、さらに、環境内に存在する対象者以外の人物、動物、又は物体の位置又は姿勢と、対象者の位置又は姿勢との相対関係に基づいて、動作指示情報を生成してもよい。この場合、姿勢計測部13及び位置計測部14が、対象者以外の人物、動物、又は物体の位置及び姿勢を計測すればよい。また、対象者以外の人物、動物、又は物体の位置及び姿勢を計測するための追加のモーションキャプチャ装置を配置してもよい。
【0084】
例えば、動作指示生成部15は、対象者以外の人物、動物、又は物体と対象者との距離が目標値となるように誘導するための動作指示情報を生成してもよい。また、動作指示生成部15は、対象者以外の人物、動物、又は物体の位置に対する対象者の相対位置が目標値となるように誘導するための動作指示情報を生成してもよい。また、動作指示生成部15は、対象者の姿勢を対象者以外の人物の姿勢の姿勢に近づけるように誘導するための動作指示情報を生成してもよい。
【0085】
これにより、例えば、対象者を含む複数人で踊る場合に、対象者と他の人物との位置又は姿勢に関する相対的な関係を正確に保つような誘導を行うことができる。
【0086】
<その他の実施の形態D>
上述した実施の形態1では、複数の出力素子11が直接的に又は装着具を介して身体部位90に装着される例を示した。実施の形態1で説明した例に代えて、複数の出力素子11は、モーションコントロール技術を利用したコンピュータゲーム機のコントローラのような筐体に取り付けられてもよい。この場合、複数の出力素子11が取り付けられた筐体が対象者の手に把持されることによって、数の出力素子11が身体部位90に装着される。また、複数の出力素子11が取り付けられた筐体は、ジャイロセンサ131及び加速度センサ132等の姿勢計測部13を内蔵してもよい。
【0087】
さらに、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
1 動作指示システム
10 動作指示装置
11、11A〜11H 出力素子
12 誘導制御部
13 姿勢計測部
14 位置計測部
15 動作指示生成部
16 制御装置
90 身体部位
100、100A、100B 装着具
101 通信デバイス
102 記憶デバイス
111 LED(light emitting diode)
121 マイクロプロセッサ(MPU(micro processing unit))
122 LEDコントローラ
130 センサ筐体
131 ジャイロセンサ
132 加速度センサ
141 距離画像センサ
151 マイクロプロセッサ(MPU(micro processing unit))
152 動作指示生成プログラム
161 通信デバイス
162 記憶デバイス
163 外部入出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の身体部位に装着して使用され、前記対象者が知覚可能な信号を出力する複数の出力素子と、
(a)前記身体部位の位置移動及び回転の少なくとも一方に関する動作の向きと(b)前記身体部位の回転状態を含む姿勢に応じて定まる前記複数の出力素子の空間的な配置との対応関係に基づいて、前記動作の向きに従った前記身体部位の動作を誘導するように前記複数の出力素子の出力パターンを制御する誘導制御手段と、
を備える動作指示装置。
【請求項2】
前記複数の出力素子は、前記身体部位への装着状態において、前記身体部位の回転軸を取り囲むように配置される、請求項1に記載の動作指示装置。
【請求項3】
前記複数の出力素子は、前記身体部位への装着状態において、前記身体部位の回転軸を取り囲むように配置される第1の出力素子群と、前記回転軸に実質的に沿って前記第1の素子群から離間して配置された少なくとも1つの第2の出力素子を備え、
前記誘導制御手段は、前記回転軸に実質的に沿う方向への前記身体部位の位置移動を誘導するように、前記第1の出力素子群および前記少なくとも1つの第2の出力素子の出力パターンを制御する、
請求項1又2に記載の動作指示装置。
【請求項4】
前記動作の向きは、前記身体部位の位置移動及び回転を共に含み、
前記誘導制御手段は、前記身体部位の位置移動を誘導する第1の出力パターンとなるよう前記複数の出力素子を制御した後に、前記身体部位の回転を誘導する第2の出力パターンとなるよう前記複数の出力素子を制御する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の動作指示装置。
【請求項5】
前記誘導制御手段は、前記身体部位の位置移動及び回転が共に不要である場合に、前記身体部位の位置移動及び回転を誘導する場合とは異なる出力パターンとなるように前記複数の出力素子を制御する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の動作指示装置。
【請求項6】
表示手段及び音声出力手段の少なくとも一方をさらに備え、
前記誘導制御手段は、前記表示手段及び前記音声出力手段の少なくとも一方を用いて、前記動作の向きに従って動作させるべき前記身体部位を前記対象者に伝達するための情報を出力する、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の動作指示装置。
【請求項7】
前記誘導制御手段は、前記動作の向きへの前記身体部位の動作量の大きさに応じて前記複数の出力素子の出力パターンを変化させる、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の動作指示装置。
【請求項8】
前記誘導制御手段は、前記複数の出力素子からの出力信号の強弱を変化させることによって、前記動作量の大きさに応じた出力パターンを生成する、請求項7に記載の動作指示装置。
【請求項9】
前記複数の出力素子の各々から出力される信号は、光、音、振動、電気、及び圧力の少なくとも1つを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の動作指示装置。
【請求項10】
前記身体部位は、前記対象者の手、腕、脚、頭、又は腰を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の動作指示装置。
【請求項11】
前記身体部位の回転状態を含む姿勢を計測可能な姿勢計測手段をさらに備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載の動作指示装置。
【請求項12】
前記姿勢計測手段は、前記身体部位に配置される加速度センサ及びジャイロセンサのうち少なくとも一方を含む、請求項11に記載の動作指示装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の動作指示装置と、
前記動作の向きを含む動作指示情報を前記誘導制御手段に供給する動作指示生成手段と、
を備える、動作指示システム。
【請求項14】
前記動作指示生成手段は、前記身体部位の位置及び姿勢の少なくとも一方の計測値と目標値とのずれを補正するように前記動作の向きを決定する、請求項13に記載の動作指示システム。
【請求項15】
前記身体部位の位置を計測可能な位置計測手段をさらに備える、請求項13又は14に記載の動作指示システム。
【請求項16】
対象者の身体部位の位置移動及び回転の少なくとも一方に関する動作の向きを示す動作指示情報を取得すること、
前記身体部位の回転状態を含む姿勢の計測結果を取得すること、及び
前記姿勢に応じて定まる前記複数の出力素子の空間的な配置と前記動作の向きとの対応関係に基づいて、前記動作の向きに従った前記身体部位の動作を誘導するように、前記身体部位に装着されて前記対象者が知覚可能な信号を出力する複数の出力素子の出力パターンを制御すること、
を備える動作指示方法。
【請求項17】
請求項16に記載の動作指示方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−11979(P2013−11979A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143257(P2011−143257)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】