説明

動作状況検知装置及び動作状況検知プログラム

【課題】複数の部品が同時に動作している場合であっても、故障や誤動作を検知できる検知装置を提供する。
【解決手段】複数の駆動ドライバを介してそれぞれ電源102から電力を供給して駆動し、電流波形抽出部172において、検出波形から検知対象となる駆動機構以外を駆動する駆動ドライバの基準波形を差し引くことにより検知対象となる駆動機構を駆動する駆動ドライバの駆動電流の経時変化のみを抽出し、当該検知対象となる駆動ドライバの基準波形との関連性を示す指標として相互相関係数rを相関係数演算部174において導出し、動作状況判定部176において、導出した相互相関係数rの最大値rmaxと閾値Rと、最大となる位置を示すkmaxとその許容範囲の最小K1及び最大K2と、をそれぞれ比較して動作状況を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動電流の供給により駆動される機械系駆動機構の故障を動作状況する検知装置及び動作状況検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動電流が供給されることにより駆動される機械系駆動機構として、モータ、ソレノイド、クラッチ、冷却用ファン等があり、これらの駆動機構は画像形成装置や複合機等に複数設けられている。
【0003】
これらの駆動機構に故障が発生した場合、良好な処理が行えない、という不具合が生じるため、装置に備えられた各部品の故障を検知することが必要である。
【0004】
従来、故障を検知する方法としては、CPUからの命令によりポリゴンモータ、ソレノイド、およびクラッチをそれぞれ単体で駆動させて、各ドライバやモータなどの駆動機構に供給される電流を、抵抗の両端の電位差により検知し、CPUにおいて検知された電流値をモニタし、入力された電圧値に基づき、ポリゴンモータ、ソレノイド、およびクラッチの故障診断を行なうことが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、コンピュータメモリに、ある特定の部品が適正に機能していることを示す基準電流を保存しておき、その特定の部品のみが電流を消費している間に、特定の部品を含む画像形成装置に供給されている電流を読みとって、読みとった電流値とメモリに記憶している基準電流を比較して、基準電流と一致しているか否かによって部品の故障検知を行うことも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−228056公報
【特許文献2】特開2003−228419公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複数の部品が同時に動作している場合であっても、故障や誤動作を検知できる動作状況検知装置及び動作状況検知プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、複数の駆動機構を駆動させるための複数の駆動ドライバと、各駆動ドライバを介して各駆動機構に電力を供給する電源と、予め設定された複数の動作パターンの何れかを選択し、選択した動作パターンに応じて前記各駆動ドライバを介した各駆動機構の動作を制御する制御手段と、前記制御手段による動作の制御時に前記複数の駆動ドライバの駆動電流の総和を検出するための駆動電流検出手段と、前記各駆動機構が正常に動作しているときの各駆動ドライバの駆動電流の経時変化をそれぞれ示す複数の基準波形が前記動作パターン毎に予め記憶された基準波形記憶手段と、前記駆動電流検出手段により検出された駆動電流の経時変化を示す検出波形から、検知対象とする駆動機構を駆動させる前記駆動ドライバの駆動電流の経時変化のみを抽出する抽出手段と、前記抽出手段による抽出結果と、前記基準波形との関連性を示す指標を導出する導出手段と、前記各駆動機構が正常に動作しているときの前記関連性を示す指標をそれぞれ示す複数の基準指標が前記動作パターン毎に記憶された基準指標記憶手段と、前記導出手段により導出された前記指標を前記基準指標記憶手段に記憶された基準指標と比較して前記駆動機構の動作状況を判定する判定手段と、を備えている。
【0008】
請求項1の発明によれば、複数の駆動ドライバを介してそれぞれ電源から電力が供給されることにより複数の駆動機構が駆動され、各駆動機構の駆動は、前記各駆動ドライバを介して制御手段により選択された予め設定された複数の動作パターンの何れかに応じて制御される。
【0009】
ここで、本発明では、複数の駆動ドライバの駆動電流の総和を検出して得られた検出波形と、予め記憶された各駆動ドライバの正常な基準波形とを用い、例えば、検出波形から検知対象となる駆動機構以外を駆動する駆動ドライバの基準波形を差し引くことにより、検知対象となる駆動機構を駆動する駆動ドライバの駆動電流の経時変化のみを抽出し、当該検知対象となる駆動ドライバの基準波形との関連性を示す指標と比較して動作状況を判定するようにしている。
【0010】
特に、各駆動ドライバ毎の基準波形及び基準指標を、動作パターン毎に予め記憶しているので、複数の部品が同時に動作している場合であっても、故障や誤動作を検知できる。
【0011】
本発明は、請求項2の発明のように、前記指標を、相互相関係数とすることができる。
【0012】
この場合、請求項3の発明のように、前記判定手段は、前記相互相関係数の最大値が所定の閾値よりも大きく、かつ当該相互相関係数が最大となる位置が所定の期間内の位置である場合に、正常に動作していると判定することができる。
【0013】
また、本発明は、請求項4の発明のように、前記駆動機構がモータである場合は、エンベロープ処理を施された基準波形を前記基準波形記憶手段に記憶しておき、前記抽出手段は、前記駆動機構がモータである場合は、検出波形に対してエンベロープ処理を施してから検知対象とする駆動機構の駆動電流の経時変化を抽出してもよい。
【0014】
本発明は、請求項5の発明のように、前記指標を、周波数分析結果に基づいて導出される、ユークリッド距離又はマハラビノス距離としてもよい。
【0015】
上記課題を解決するために、請求項6記載の発明は、コンピュータに、複数の駆動ドライバを介して複数の駆動機構にそれぞれ電力を供給し、予め設定された複数の動作パターンの何れかに応じて前記各駆動ドライバを制御する際に、前記複数の駆動ドライバの駆動電流の総和を検出する駆動電流検出ステップ、前記駆動電流検出ステップにより検出された駆動電流の経時変化を示す検出波形から、検知対象とする駆動機構を駆動させる前記駆動ドライバの駆動電流の経時変化のみを抽出する抽出ステップ、前記抽出ステップでの抽出結果と、前記動作パターン毎に予め基準波形記憶手段に記憶された前記各駆動機構が正常に動作しているときの各駆動ドライバの駆動電流の経時変化をそれぞれ示す複数の基準波形と、の関連性を示す指標を導出する導出ステップ、前記導出ステップで導出された前記指標を、前記動作パターン毎に基準指標記憶手段に記憶された前記各駆動機構が正常に動作しているときの前記関連性を示す指標をそれぞれ示す複数の基準指標と比較して前記駆動機構の動作状況を判定する判定ステップ、を実行させる。
【0016】
請求項6記載の発明によれば、請求項1記載の装置と同様の処理をコンピュータに実行させることができるので、複数の部品が同時に動作している場合であっても、故障や誤動作を検知できる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明した如く本発明は、複数の部品が同時に動作している場合であっても、故障や誤動作を検知できる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1には、本実施の形態に係る画像形成装置10の構成が概略的に示されている。なお、本実施の形態では、画像形成装置に本発明を適用した形態について説明する。
【0019】
同図に示されるように、画像形成装置10は、用紙を搬送する搬送部12と、画像を形成する画像形成部14と、により構成されている。搬送部12には給紙トレイ20が備えられており、画像を形成する記録媒体としての用紙が積み重ねられて格納される。給紙トレイ20に積み重ねられた用紙の上面側には、ピックアップロール22及び給紙ロール26が設けられている。当該ピックアップロール22はナジャーソレノイド24の動作により用紙に当接又は離間されると共に回転可能に構成されている。また、給紙ロール26も回転可能となっており、ピックアップロール22が用紙に当接された状態で回転されると、用紙が1枚給紙トレイ20から持ち出される。持ち出された用紙の先端が給紙ロール26に到達すると、給紙ロール26の回転により用紙は画像形成部14への搬送経路上に給紙される。
【0020】
給紙ロール26の用紙の給紙方向下流側には、用紙検出センサ30が設けられており、給紙ロール26の下流側における用紙の有無が検出される。また、当該用紙検出センサ30の下流側には、複数の搬送ロール28が用紙の搬送経路に沿って配設されている。なお、用紙検出センサ30による用紙の検出信号は、搬送ロール28の回転制御のトリガとして用いられる。
【0021】
さらに、用紙の搬送経路上の画像形成部14近傍の所定位置には、当該位置における用紙の有無を検出する用紙検出センサ32が配設されており、その下流側には、レジループソレノイド34及びツメ36が配設されている。ツメ36は、レジゲートソレノイド38の動作により用紙の搬送経路上に押し出され或いは搬送経路から引き込められるようになっており、ツメ36が搬送経路上に押し出されることで搬送経路上を搬送されてきた用紙の先端を一旦停止させて搬送タイミングを調節する。レジループソレノイド34は、ツメ36により搬送が停止された用紙が搬送経路から離脱しないようにループを形成させる。
【0022】
なお、用紙検出センサ32による用紙の検出信号は、レジループソレノイド34及びレジゲートソレノイド38の制御のトリガとして用いられる。
【0023】
一方、画像形成部14には、円筒状の感光体ドラム50が備えられており、感光体ドラム50の周面には、クリーナロール52、ランプ54、帯電器56、レーザ露光装置58、現像ロール60及び転写ロール62がそれぞれ順に配設されており、感光体ドラム50は軸心が固定されて回転されて表面が各部位に順次対向されるようになっている。
【0024】
クリーナロール52は、感光体ドラム50の表面に付着したトナー等を吸着して除去し、ランプ54は感光体ドラム50表面を除電する。また、帯電器56は感光体ドラム50表面を一様な電位に帯電する。
【0025】
レーザ露光装置58は、一様に帯電された感光体ドラム50表面に画像形成の対象となる画像データに基いてレーザ光を照射することにより感光体ドラム50の表面に静電潜像を形成する。また、現像ロール60には、周面にトナーが均一に付着されて回転されるようになっており、感光体ドラム50の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて現像し、トナー像を形成する。転写ロール62は、感光体ドラム50に搬送されてきた用紙を密着させ、感光体ドラム50の表面のトナー像を用紙に転写させる。
【0026】
用紙の搬送経路には、感光体ドラム50及び転写ロール62の下流側に定着ロール64が設けられている。定着ロール64は、加熱ロールと押圧ロールとにより構成されており、これら2つのロールでトナーが転写された用紙を挟持搬送しながら用紙表面のトナーを溶融・圧着して用紙に定着させる。
【0027】
定着ロール64の搬送方向下流側には排出ロール70が設けられており、当該排出ロール70により画像が形成された用紙が搬送されて排出トレイ16上に排出される。
【0028】
図2には、本実施の形態に係る画像形成装置の各部位を駆動するための駆動系を中心としたブロック図が示されている。
【0029】
同図に示されるように、画像形成装置10は、全体の動作を制御する制御部100と、上述した各種ロール及びドラム等を回転駆動するための駆動源としてのフィードモータ140、プレレジモータ142、ドラムモータ144及びメインモータ146と、各モータを駆動させるためのフィードモータドライバ110、プレレジモータドライバ112、ドラムモータドライバ114及びメインモータドライバと、を含んで構成されている。各モータは、それぞれ対応するモータドライバを介して制御部100に接続されており、各モータドライバは、制御部100による指示に応じた駆動状態となるように各モータを駆動させる。
【0030】
フィードモータ140の駆動力はピックアップロール22及び給紙ロール26に、プレレジモータ142の駆動力は搬送ロール28Aに、ドラムモータ144の駆動力は感光体ドラム50、クリーナロール52、搬送ロール28B及び転写ロール62に、メインモータ146の駆動力は現像ロール60、定着ロール64及び排出ロール70に、それぞれ伝達されて各ロール及びドラム等を回転させる。
【0031】
また、同図に示されるように、画像形成装置10は、上述したナジャーソレノイド24、レジループソレノイド34及びレジゲートソレノイド38をそれぞれ動作させるためのナジャーソレノイドドライバ118、レジループソレノイドドライバ120及びレジゲートソレノイドドライバ122を含んで構成されており、各ソレノイドドライバは制御部100に接続されている。各ソレノイドドライバは、制御部100による指示に応じて各ソレノイドを動作させる。
【0032】
さらに、画像形成装置10は、直流電源102を含んで構成されており、直流電力を必要とする各モータドライバ及び各ソレノイドドライバに直流電力が供給されるようになっている。
【0033】
ところで、本実施の形態では、これらの各コンポーネントを流れた電流値を検出するための電流値検出部160と、各コンポーネントが正常に動作している場合に電流値検出部160において検出されるべき電流波形が予め記憶された基準電流値記憶部162と、が設けられており、それぞれ制御部100に接続されている。なお、上記電流値検出部160は、電流値検出のための抵抗や比較器、A/Dコンバータ等を含んで構成されている(図6の電流検知回路と同様)。
【0034】
ここで、図3に示されるように、基準電流波形記憶部162には、各部位が正常に動作している場合に電流値検出部160において検出されるべき電流値の経時変化を示す電流波形(以下、「基準電流波形」という)が記憶されている。
【0035】
具体的には、図4〜図10の(A)に示されるように、縦軸を基準電流値、横軸を時間としたときの基準電流波形が、各コンポーネント毎に記憶されている。なお、各図の(A)に示す例は、用紙サイズがA4であり、給紙トレイ20から給紙し、片面印刷を行う場合(図3におけるパターン1)の各コンポーネントの基準電流波形である。
【0036】
また、図4(A)はフィードモータの電流波形の一例を、図5(A)はプレレジモータの電流波形の一例を、図6(A)はドラムモータの電流波形の一例を、図7(A)はメインモータの電流波形の一例を、図8(A)はナジャーソレノイドの電流波形の一例を、図9(A)はレジループソレノイドの電流波形の一例を、図10(A)はレジゲートソレノイドの電流波形の一例を、それぞれ示している。
【0037】
各図の(A)に示される各部位の基準電流波形を合成したものが全電流の基準電流波形であり、各部位が正常に動作している場合、検出電流波形は図11に示されるような波形となる。
【0038】
図2に示されるように、制御部100は、電流波形抽出部172と、相関係数演算部174と、動作状況判定部176と、を含んで構成されており、電流波形保持部172は相関係数演算部174に、相関係数演算部174は動作状況判定部176に、それぞれ接続されている。
【0039】
電流波形抽出部172では、電流値検出部160から入力された電流値の経時変化を時間軸に沿ってプロットして全電流の検出電流波形を生成し、当該検出電流波形から、上記基準電流波形記憶部162に記憶された各コンポーネントの基準電流波形のうち、動作状況を判定するコンポーネントの基準電流波形を除く全てのコンポーネントの電流波形を差し引くことにより、動作状況を判定するコンポーネントの検出電流波形を抽出する。
【0040】
相関係数演算部174では、電流波形抽出部172により抽出された検出電流波形と、基準電流波形記憶部162に記憶された該当するコンポーネントの基準電流波形と、の相互相関係数rを導出し、相関係数記憶部164に記憶する。本実施の形態では、所定期間(本実施の形態では、350ms)単位で、当該所定期間の始点kを予め定めた期間(本実施の形態では1ms)ずつずらして相互相関係数rを導出するようにしている。
【0041】
すなわち、本実施の形態では、図4〜図10に示されるように、上記パターン1の電流波形として1450ms分のデータを取り扱うので、0〜350msの相互相関係数r0、1〜351msの相互相関係数r1、・・・1100〜1450msの相互相関係数r1100、の1100の相互相関係数rが導出される。
【0042】
このため、相関係数記憶部164には、相互相関係数rが所定期間の始点kと共に記憶される。
【0043】
相関係数演算部174では、全範囲について相互相関係数rの導出を行い、全範囲の相互相関係数rの導出及び記憶が終了すると、動作状況判定部176に、演算が終了したことを示す終了信号を出力する。
【0044】
ここで、相互相関係数rは、一般に、xの平均及びyの平均が以下の(1)式及び(2)式により表されることから、以下の(3)式のように表される。
【0045】
【数1】

【0046】
【数2】

【0047】
【数3】

【0048】
各コンポーネントが正常に動作している場合、各コンポーネントについて導出される相互相関係数rは、それぞれ図4〜図10の(B)に示されるようになる。各図の(B)に示されるように、正常に動作している場合には、相互相関係数rの最大値rmaxは、各コンポーネントの動作開始のタイミングTと一致することが分かる。
【0049】
なお、図4(B)はフィードモータの相互相関係数の導出結果の一例を、図5(B)はプレレジモータの相互相関係数の導出結果の一例を、図6(B)はドラムモータの相互相関係数の導出結果の一例を、図7(B)はメインモータの相互相関係数の導出結果の一例を、図8(B)はナジャーソレノイドの相互相関係数の導出結果の一例を、図9(B)はレジループソレノイドの相互相関係数の導出結果の一例を、図10(B)はレジゲートソレノイドの相互相関係数の導出結果の一例を、それぞれ示している。
【0050】
そこで、動作状況判定部176では、相関係数演算部174から上記終了信号を樹脂すると、まず、相関係数記憶部164に記憶された相互相関係数rの中から最大値rmax及びそのときの所定期間の始点k(以下、kmaxという)を取得する。
【0051】
また、閾値記憶部166に記憶された閾値R、K1,K2をそれぞれ用いて、rmaxが予め設定された閾値Rよりも大きい(相関が高い)か否かを判定すると共に、kmaxが所定の範囲内(K1<kmax<K2)の値であるか否かを判定することにより、当該コンポーネントの動作状況を判定する。
【0052】
なお、本実施の形態では、rmaxの閾値Rについては、正常に動作している場合に導出されるrmaxの90%の値を、kmaxの正常範囲については、±1msを、それぞれ適用している。これらの閾値及び正常範囲、及び上記所定期間については、上記の値に限らず、実機を用いた実験や実機の仕様に基づくシミュレーション等の結果に基づいて適宜設定し得る。
【0053】
また、上記所定期間については、コンポーネントの種類毎や動作状態のパターン毎に異なる期間を設定してもよい。
【0054】
図13は、参考として基準電流波形の取り込みを行うための回路構成の一例を示すものである。同図に示されるように、直流電源300から供給されてモータドライバ回路302やソレノイドドライバ回路304を通る電流が電流検知回路306を介してコントロール回路308に取り込まれる。このような構成の回路において各部位を単独で動作させることにより、各コンポーネントの基準電流波形が測定される。
【0055】
なお、電流検知回路306は、負荷抵抗器310、オペアンプ312及びA/Dコンバータ314等を含んで構成されており、電流検知回路では、オペアンプ312により負荷抵抗器310の両端の電位差に応じた電流値がA/Dコンバータ314に入力され、A/Dコンバータ314を介してデジタル化される。
【0056】
以下に本実施の形態の作用を説明する。
【0057】
本実施の形態に係る画像形成装置10において画像形成指示が入力されると、用紙を送りためのナジャーソレノイド、フィードモータをONして作動し、給紙トレイ20から用紙を搬送経路上に送り出す。このとき、ドラムモータとメインモータも同時にONして画像の形成を開始し、これにより感光体ドラム50に対して画像形成指示の対象となる画像データに基づく露光、現像等のゼログラフィーのプロセスが実行される。
【0058】
用紙が給紙ロールを通過するとプレレジモータ、レジループソレノイド、レジゲートソレノイド等を順次ONし作動させる。
【0059】
図12は、画像形成指示が入力された場合に制御部100により実行される故障検知処理の流れを示すフローチャートであり、以下、同図を参照して本実施の形態に係る故障検知処理について説明する。
【0060】
まず、ステップ200では、検出された電流波形から、動作状況を判定するコンポーネントの波形を抽出し、次のステップ202では、始点kに0をセットする。
【0061】
波形の抽出は、動作状況を判定するコンポーネント以外の基準電流波形を検出電流波形から差し引くことにより実行される。
【0062】
次のステップ204では、抽出した波形のうち、0+k〜350+kの部分を抜き出し、その後にステップ206に移行して、抜き出した波形とコンポーネントの基準電流波形との相互相関係数rを導出し、その後にステップ208に移行する。
【0063】
ステップ208では、導出した相互相関係数r及びこのときの始点kの値を相関係数記憶部164に記憶して、その後にステップ210に移行する。
【0064】
ステップ210では、kの値が全範囲の時間から所定期間を差し引いた値より以上か否かを判定し、当該判定が否定判定となった場合はステップ212に移行し、kをインクリメントした後に、再びステップ204に戻る。
【0065】
一方、ステップ210で肯定判定となった場合は、全範囲を対象とした相互相関係数rの導出が終了したものと判断してステップ214に移行し、rmax及びkmaxを読出し、その後にステップ216に移行して、rmaxが閾値Rよりも大きいか否かを判定する。
【0066】
ステップ216で肯定判定となった場合はステップ218に移行して、kmaxがK1より大きくK2より小さい範囲の値であるか否かを判定し、当該判定が肯定判定となった場合はステップ220に移行して、当該コンポーネントが正常に動作していると判定し、その後に本動作状況判定処理を終了する。
【0067】
また、ステップ216で否定判定となった場合はステップ222に移行して、コンポーネントは動作異常又は故障している可能性があると判定し、その後に本動作状況判定処理を終了する。
【0068】
さらに、ステップ218で否定判定となった場合は、ステップ224に移行して、コンポーネントが誤動作しているか、又は制御系に異常が発生していると判定し、その後に本動作状況判定処理を終了する。
【0069】
このようにして判定された動作状況は、判定結果に基づいてユーザへの報知や、動作状況判定の履歴の作成等を適宜行なうことにより、メンテナンス時に故障箇所を特定したり、故障原因を特定したりすることに活用される。
【0070】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、モータやソレノイド等の複数の駆動機構を制御部100により選択された予め設定された複数の動作パターンの何れかに応じて各駆動ドライバを介して制御するに際し、複数の駆動ドライバを介してそれぞれ電源102から電力を供給して駆動し、複数の駆動ドライバの駆動電流の総和を検出して得られた検出波形と、基準電流波形記憶部162に予め記憶された各駆動機構が正常に動作しているときの各駆動ドライバの電流値を示す基準波形とを用い、電流波形抽出部172で検出波形から検知対象となる駆動機構以外を駆動する駆動ドライバの基準波形を差し引くことにより、検知対象となる駆動機構を駆動する駆動ドライバの駆動電流の経時変化のみを抽出し、相関係数演算部174で当該検知対象となる駆動ドライバの基準波形との関連性を示す指標として相互相関係数rを導出し、動作状況判定部176において、導出した相互相関係数rの最大値rmaxと閾値Rと、最大となる位置を示すkmaxとその許容範囲の最小K1及び最大K2と、をそれぞれ比較して動作状況を判定するようにしている。
【0071】
また、本実施の形態では、各駆動ドライバ毎の基準波形及び基準指標(閾値及び許容範囲)を、動作パターン毎に予め記憶しているので、複数の部品が同時に動作している場合であっても、故障や誤動作を検知できる。
【0072】
なお、本実施の形態では、検出波形及び基準波形として、検出された電流値の経時変化をそのままプロットして得られる波形を適用する形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、検出波形及び基準波形の双方にエンベロープ処理を適用して、電流値変化の高周波成分をカットした滑らかな波形を用いて、相互相関係数を導出する形態とすることもできる。
【0073】
また、本実施の形態では指標として、相互相関係数を適用する形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、周波数分析により導出される指標を適用してもよい。
【0074】
周波数分析により導出される指標としては、例えば、(1)ユークリッド距離Lと(2)マハラビノス距離Mが挙げられる。
【0075】
この場合、いずれにしても、まず、正常に動作している各モータの電流波形の周波数分析を行い、その結果高調波をf0,f1,f2,f3・・・とする。
【0076】
次に、実際に動作状態で検出したモータの電流波形の周波数分析を行い、その結果高調波をF0,F1,F2,F3・・・とする。
(1)ユークリッド距離Lは、(F0−f0),(F1−f1),(F2−f2)のそれぞれの二乗の和の平方根である。理想的にはLがゼロであれば、正常に動作していると考えられるが、実際には、ある一定の値以下としておくことが好ましい。
(2)マハラノビス距離Mを用いる場合は、1つのモータに対して、正常状態の電流波形を複数回測定する。たとえば測定数100回であれば、1回につき3つのデータ(f0,f1,f2)ですから列に周波数、行に回数ごとのデータを並べると、100×3の行列ができ、この行列から、共分散行列を計算することにより得られる。
【0077】
マハラノビス距離Mは、モータの測定データ(F0,F1,F2,F3)と共分散行列と100回の平均データから算出する。理想的にはMがゼロであれば、正常に動作していると考えられるが、実際には、ある一定の値以下としておくことが好ましい。
【0078】
また、本実施の形態では、動作状況判定処理についてのみ説明したが、当該故障検知処理により故障を検知した場合には、その旨を示す情報を報知するようにしてもよい。この報知を行うための報知手段としては、画像形成装置に操作パネル等を設けて当該操作パネルに表示するようにしてもよいし、ブザー等を設けて鳴動させてもよいし、スピーカ等を設けて音声を再生するようにしてもよい。また、別途通信手段等を設けて、駆動機構に故障が発生した旨を示す情報を装置外部の管理者やカスタマーセンター等の端末やコンピュータ等に出力するようにしてもよい。
【0079】
なお、本実施の形態における画像形成装置10の構成(図1乃至図3参照)及び処理の流れ(図12参照)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0080】
図14は、動作状況検知の機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。図中、70はプログラム、72はコンピュータ、74は光磁気ディスク、76は光ディスク、78は磁気ディスク、80はメモリ、82は内部メモリ、86は読取部、90はハードディスク、88、94はインタフェース、92は通信部である。
【0081】
上述の実施の形態で説明した画像形成装置の各部の動作状況検知に関する機能の一部または全部を、コンピュータにより実行可能なプログラム70によって実現することが可能である。その場合、そのプログラム70及びそのプログラムが用いるデータなどは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶することも可能である。記憶媒体としては、コンピュータのハードウエア資源に備えられている読取部86に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気等のエネルギーの変化状態を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取部86にプログラムの記述内容を伝達できるものである。例えば、光磁気ディスク74、光ディスク76(CDやDVDなどを含む)、磁気ディスク78、メモリ80(ICカード、メモリカードなどを含む)等である。もちろんこれらの記憶媒体は、可搬型に限られるものではない。
【0082】
これらの記憶媒体にプログラム70を格納しておき、例えばコンピュータ72の読取部86あるいはインタフェース94にこれらの記憶媒体を装着することによって、コンピュータからプログラム70を読み出し、内部メモリ82またはハードディスク90に記憶し、CPU84によってプログラム70を実行することによって、動作状況検知の機能を実現することができる。あるいは、ネットワークなどを介してプログラム70をコンピュータ72に転送し、コンピュータ72では通信部92でプログラム70を受信して内部メモリ82またはハードディスク90に記憶し、CPU84によってプログラム70を実行することによって、動作状況検知の機能を実現してもよい。なお、コンピュータ72には、このほかインタフェース88を介して様々な装置と接続することができ、例えば情報を表示する表示装置やユーザが情報を入力する入力装置等も接続されている。
【0083】
もちろん、一部の機能についてハードウエアによって構成することもできるし、すべてをハードウエア構成としてもよい。あるいは、他の構成とともに本発明も含めたプログラムとして構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】実施の形態に係る画像形成装置の各部位を駆動するための駆動系を中心としたブロック図である。
【図3】実施の形態に係る正常電流波形が電流値記憶部に記憶された状態を示す模式図である。
【図4】フィードモータの(A)は電流波形の一例を、(B)相互相関係数の導出結果の一例を、それぞれ示すタイムチャートである。
【図5】プレレジモータの(A)は電流波形の一例を、(B)相互相関係数の導出結果の一例を、それぞれ示すタイムチャートである。
【図6】ドラムモータの(A)は電流波形の一例を、(B)相互相関係数の導出結果の一例を、それぞれ示すタイムチャートである。
【図7】メインモータの(A)は電流波形の一例を、(B)相互相関係数の導出結果の一例を、それぞれ示すタイムチャートである。
【図8】ナジャーソレノイドの(A)は電流波形の一例を、(B)相互相関係数の導出結果の一例を、それぞれ示すタイムチャートである。
【図9】レジループソレノイドの(A)は電流波形の一例を、(B)相互相関係数の導出結果の一例を、それぞれ示すタイムチャートである。
【図10】レジゲートソレノイドの(A)は電流波形の一例を、(B)相互相関係数の導出結果の一例を、それぞれ示すタイムチャートである。
【図11】全電流の検出電流波形の一例を示すタイムチャートである。
【図12】実施の形態に係る動作状況判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】正常電流波形の取り込みを行うための回路構成の一例を示すものである。
【図14】動作状況判定の機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。
【符号の説明】
【0085】
10 画像形成装置
20 給紙トレイ
22 ピックアップロール
24 ナジャーソレノイド
26 給紙ロール
28 搬送ロール
34 レジループソレノイド
38 レジゲートソレノイド
50 感光体ドラム
52 クリーナロール
60 現像ロール
62 転写ロール
64 定着ロール
70 排出ロール
100 制御部(制御手段)
102 直流電源(電源)
110 フィードモータドライバ(駆動ドライバ)
112 プレレジモータドライバ(駆動ドライバ)
114 ドラムモータドライバ(駆動ドライバ)
118 ナジャーソレノイドドライバ(駆動ドライバ)
120 レジループソレノイドドライバ(駆動ドライバ)
122 レジゲートソレノイドドライバ(駆動ドライバ)
140 フィードモータ(駆動機構)
142 プレレジモータ(駆動機構)
144 ドラムモータ(駆動機構)
146 メインモータ(駆動機構)
160 電流値検出部(駆動電流検出手段)
162 基準電流波形記憶部(基準波形記憶手段)
164 相関係数記憶部
166 閾値記憶部(基準指標記憶手段)
172 電流波形抽出部(抽出手段)
相関係数演算部(導出手段)
176 動作状況判定部(判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駆動機構を駆動させるための複数の駆動ドライバと、
各駆動ドライバを介して各駆動機構に電力を供給する電源と、
予め設定された複数の動作パターンの何れかを選択し、選択した動作パターンに応じて前記各駆動ドライバを介した各駆動機構の動作を制御する制御手段と、
前記制御手段による動作の制御時に前記複数の駆動ドライバの駆動電流の総和を検出するための駆動電流検出手段と、
前記各駆動機構が正常に動作しているときの各駆動ドライバの駆動電流の経時変化をそれぞれ示す複数の基準波形が前記動作パターン毎に予め記憶された基準波形記憶手段と、
前記駆動電流検出手段により検出された駆動電流の経時変化を示す検出波形から、検知対象とする駆動機構を駆動させる前記駆動ドライバの駆動電流の経時変化のみを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段による抽出結果と、前記基準波形との関連性を示す指標を導出する導出手段と、
前記各駆動機構が正常に動作しているときの前記関連性を示す指標をそれぞれ示す複数の基準指標が前記動作パターン毎に記憶された基準指標記憶手段と、
前記導出手段により導出された前記指標を前記基準指標記憶手段に記憶された基準指標と比較して前記駆動機構の動作状況を判定する判定手段と、
を備えた動作状況検知装置。
【請求項2】
前記指標は、相互相関係数であることを特徴とする請求項1記載の動作状況検知装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記相互相関係数の最大値が所定の閾値よりも大きく、かつ当該相互相関係数が最大となる位置が所定の期間内の位置である場合に、正常に動作していると判定することを特徴とする請求項2記載の動作状況検知装置。
【請求項4】
前記駆動機構がモータである場合は、エンベロープ処理が施された基準波形を前記基準波形記憶手段に記憶しておき、
前記抽出手段は、前記駆動機構がモータである場合は、前記検出波形に対してエンベロープ処理を施してから検知対象とする駆動ドライバの駆動電流の経時変化を抽出することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の動作状況検知装置。
【請求項5】
前記指標は、周波数分析結果に基づいて導出される、ユークリッド距離又はマハラビノス距離であることを特徴とする請求項1記載の動作状況検知装置。
【請求項6】
コンピュータに、
複数の駆動ドライバを介して複数の駆動機構にそれぞれ電力を供給し、予め設定された複数の動作パターンの何れかに応じて前記各駆動ドライバを制御する際に、前記複数の駆動ドライバの駆動電流の総和を検出する駆動電流検出ステップ、
前記駆動電流検出ステップにより検出された駆動電流の経時変化を示す検出波形から、検知対象とする駆動機構を駆動させる前記駆動ドライバの駆動電流の経時変化のみを抽出する抽出ステップ、
前記抽出ステップでの抽出結果と、前記動作パターン毎に予め基準波形記憶手段に記憶された前記各駆動機構が正常に動作しているときの各駆動ドライバの駆動電流の経時変化をそれぞれ示す複数の基準波形と、の関連性を示す指標を導出する導出ステップ、
前記導出ステップで導出された前記指標を、前記動作パターン毎に基準指標記憶手段に記憶された前記各駆動機構が正常に動作しているときの前記関連性を示す指標をそれぞれ示す複数の基準指標と比較して前記駆動機構の動作状況を判定する判定ステップ、
を実行させる動作状況検知プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−76292(P2008−76292A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257371(P2006−257371)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】