説明

動力伝達ベルト

【課題】本発明は、動力伝達ベルトに関する。
【解決手段】動力伝達ベルト(10,30)は、圧縮部(16,36)、張設部(12,32)、及び負荷伝達部(14,34)を有している。負荷伝達部(14,34)は複数の補強コード(22,42)を有している。補強コード(22,42)は、ポリパラフェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール(PBO)から形成されている。各補強コード(22,42)において、コードは自身の撚り数よりも大きな撚り数を有するヤーンを有し、コードの撚り数はプライの撚り数の四分の一〜二分の一の範囲内とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達ベルトに関する。より詳しくは、本発明は、PBO繊維によって補強された動力伝達ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の動力伝達ベルトでは、ベルトは内部圧縮部、外部張設部、及びこれらの中間に位置する中立面を有している。一般に、螺旋状に巻き付けられた補強コードは中立面内に位置しているので、中立面は負荷伝達領域とも呼称される。このようなベルトも、長手方向に延在する溝、短手方向に延在する溝、又はこれらの組み合わせを利用することによって、様々な溝及びリブから成る構成体を有している。溝は、ベルトの内部圧縮部内に位置している。溝は、動力伝達システム内でプーリに係合することを補助する。幾つかのベルトについては、溝及びリブから成る構成体は、外部張設部内にも設けられている場合がある。
【0003】
負荷伝達領域内の補強コードは、ベルトに引張強度の大部分を付与している。従って、ベルトを形成する材料は重要である。補強コードのために、ポリパラフェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール(poly(p-phenylene-2,6-benzobisoxazole))を含む高強度材料を利用することが知られている。しかしながら、PBOヤーン独特の物理的特性を理由として、動力伝達ベルトにおいて既知のポリエステルコードやアラミドコードをPBOヤーンに交換することによって、許容範囲内の性能特性を有しているベルトを製造することができる訳ではない。
【特許文献1】米国特許第6,824,871号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、動力伝達ベルトに関する。本発明における動力伝達ベルトは、同期駆動ベルトや様々なタイプのポリVベルトを含むが、これらに限定される訳ではない。動力伝達ベルトは、圧縮部、張設部、及び負荷伝達部を有している。負荷伝達部は、複数の補強コードによって形成されている。補強コードは、ポリパラフェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール(PBO)から形成されている。各補強コードにおいては、コードはコードの撚り数よりも大きなヤーンの撚り数を有し、コードの撚り数はプライの撚り数の四分の一〜二分の一の範囲内とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の他の実施態様では、補強コードのヤーンの撚り数(twist multiplier)は1.0〜1.5の範囲内とされ、補強コードのプライの撚り数は3.2〜4.3の範囲内とされ、補強コードのコードの撚り数は1.7〜4.1の範囲内とされる。
【0006】
本発明の他の実施態様では、PBOから成る補強ヤーンは、1090dTex〜3270dTexの範囲内のデニールを有している。
【0007】
本発明の他の実施態様では、動力伝達ベルトは長手方向を有し、補強コードは動力伝達ベルトの長手方向に対して0°〜30°の角度で傾斜している。
【0008】
本発明の他の実施態様では、PBOから成るコードは1×2、1×2×3、1×4×3及び1×4×5から成るグループから選択される構成を有している。
【0009】
本発明は、添付図面を参照した上で例として説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下の説明は、本発明の実施形態を最も良く表わすものである。この説明は、本発明の技術的思想を説明することを目的とし、本発明を限定する訳ではない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって最も良く表わされている。
【0011】
図1は、張設部12、負荷伝達部14、及び圧縮部16を有するタイミングベルト10を表わす。圧縮部16は、複数の短手方向に延在するリブ18及び複数の短手方向に延在する溝20を有している。負荷伝達部14は、適切な材料24に埋設された長手方向に延在する補強コード22を有している。
【0012】
前記タイミングベルトの張設部12は、弾性材料から形成されている。この弾性材料は、このようなタイミングベルトでの利用に適していることが知られている材料のうち任意の材料を選択することができる。例えば、ポリクロロプレン、ポリウレタン、NBR、IIR、IR、SBR、CSM、EPDM、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーや他の高分子合金(polymer alloy)が挙げられる。
【0013】
圧縮部16は、弾性材料から形成されている。この弾性材料は、本発明の属する分野において既知の任意の適切な材料とされる。圧縮部16を形成している前記弾性材料は、張設部12を形成する弾性材料と同一又は類似している。代替的には、圧縮部16の弾性材料が、張設部12の弾性材料とは異なる主材(base compound)とされる。前記弾性材料も、離散された繊維によって補強されている。この繊維は、短手方向に延在し、短手方向に延在しているリブ18の側面から突出している部分を有していることが望ましい。前記タイミングベルトの最終的な用途(end use)に従って、コード又は繊維から成る連続的な補強層は圧縮部16の側面に位置している。圧縮部16の最外面は、タイミングベルト10の最内面を形成し、タイミングベルト10の表面特性を変更するために繊維層26を備えている場合がある。
【0014】
本発明では、負荷伝達部14内の補強コード22は、ポリパラフェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール(“PBO”)から成る多数のフィラメントヤーン又はコードとされる。現在、ASタイプ(レギュラー糸)及びHMタイプ(高弾性率糸)の2つのタイプのPBO繊維が存在する。PBO−ASヤーンは278dTex〜1670dTexの範囲のデニールを有し、PBO−HMヤーンは273dTex〜3270dTexの範囲のデニールを有している。本発明においては、PBM−HMヤーンは1090dTex〜3270dTexの範囲のデニールを有していることが望ましい。PBOヤーンは、撚り合わせてコードとされる。適切なコードの構成としては、1×2、1×2×3、1×4×3や1×4×5が挙げられる。
【0015】
PBOコードについて高弾性率特性を維持する一方で理想的な曲げ疲労特性を達成するために、個々のPBOヤーンの撚り数は1.0〜1.5の範囲内とされ、多数のヤーンによって作られたプライの撚り数は3.2〜4.3の範囲内とされ、コードの最終的な撚り数は1.7〜4.1の範囲内とされる。これら要素のうち任意の要素についての撚り数は、撚り数についての一般方程式(universal equation)によって計算される。撚り数は、1メートル当たりの撚り数にdTex単位で計測されたデニールの平方根を乗じ、さらに3000で除した値に等しい(すなわち、1メートル当たりの撚り数×dTex0.5/3000)。これら理想的な撚り数の範囲では、プライの撚り数は常にヤーンの撚り数よりも大きく、コードの撚り数はヤーン又はプライの撚り数よりも小さい。コードの撚り数は、プライの撚り数の四分の一〜二分の一の範囲内とされることが望ましい。前記理想的な撚り数を有するPBOコードによって、動力伝達ベルトは良好な曲げ疲労特性を有し、高弾性率を維持することができるようになる。撚り数を大きくすることによって、動力伝達ベルトの曲げ疲労特性が僅かに良好となるが、動力伝達ベルトの弾性率は低減される。逆に、撚り数を小さくすることによって、動力伝達ベルトの弾性率が高められるが、動力伝達ベルトにとって重要な特徴である曲げ疲労特性が低減される。ヤーン及びプライが同一方向に撚り合わされる一方で、コードはその反対方向に撚り合わされる。従って、コードの撚り方はZZS又はSSZのいずれかである。
【0016】
動力伝達ベルトの幅は、PBOコードが有する強度を理由として従来のベルトよりも狭くなっている。これによって、動力伝達システムのコストが動力伝達システム及びベルトの寿命に亘って低減される。
【0017】
補強コード22は、動力伝達ベルト10内部で動力伝達ベルトの長手方向に対して0°〜30°の角度で傾斜している。動力伝達ベルト内における補強コード22の傾斜角度は、動力伝達ベルトの伸び特性に影響する。補強コード22が有する高い引張強度を理由として、動力伝達ベルト内部における補強コード22の傾斜角度が小さくなればなるほど、コードの傾斜角度が大きくなった状態で動力伝達ベルトの伸び特性が小さくなるので、より弾力的なベルトを製造することができる。
【0018】
PBOヤーンは、適切な接着剤で被覆されている場合がある。この適切な接着剤としては、エポキシ−ラテックス混合剤の第1のコーティング及びレソシノール−ホルムアルデヒドラテックス混合剤(RFL)の第2の接着コーティングから成る二重の接着コーティングが挙げられる。このような二重に被覆されたヤーン(dual dipped yarn)は、特許文献1に開示されている。この特許文献は、参照によって完全に本明細書に組み込まれている。
【0019】
図2は、ポリVベルト30を表わす。ポリVベルト30は、張設部32、負荷伝達部34、及び圧縮部36を有している。圧縮部36は、複数の長手方向に延在するリブ38及び複数の短手方向に並列された溝40を有している。負荷伝達部34は、適切な材料44に埋設され、長手方向に延在する補強コード42を有している。図1に表わすベルト10に類似して、補強コード42は、上述のPBOヤーン及びコードから形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明における第1の実施例のタイミングベルトである。
【図2】本発明における代替的な実施例のベルトである。
【符号の説明】
【0021】
10 タイミングベルト
12 張設部
14 負荷伝達部
16 圧縮部
18 リブ
20 溝
22 補強コード
24 適切な材料
26 繊維層
30 ポリVベルト
32 張設部
34 負荷伝達部
36 圧縮部
38 リブ
40 溝
42 補強コード
44 適切な材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮部と、張設部と、ポリパラフェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾールのヤーンから形成される長手方向に延在する補強コードを備えた負荷伝達部とを有しているベルトであって、
前記補強コードは、コードの撚り数よりも大きなヤーンの撚り数を有し、前記コードの撚り数は、前記補強コードのプライの撚り数の四分の一〜二分の一の範囲内とされることを特徴とするベルト。
【請求項2】
前記補強コードの前記ヤーンの撚り数は、1.0〜1.5の範囲内とされることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記補強コードの前記プライの撚り数は、3.2〜4.3の範囲内とされることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト。
【請求項4】
前記補強コードの前記コードの撚り数は、1.7〜4.1の範囲内とされることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト。
【請求項5】
補強ヤーンは、1090dTex〜3270dTexの範囲内のデニールを有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のベルト。
【請求項6】
前記ベルトは、長手方向を有し、
前記補強コードは、前記ベルトの長手方向に対して0°〜30°の角度で傾斜していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のベルト。
【請求項7】
前記補強コードは、1×2、1×2×3、1×4×3及び1×4×5から成るグループから選択される構成を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のベルト。
【請求項8】
インナーチューブと駆動ユニットとの間に位置するフィンガーをさらに備え、
前記フィンガーはホースを案内することを特徴とする請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−190714(P2008−190714A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−279527(P2007−279527)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(507355364)ヴェヤンス・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】