説明

動力伝達機構

【課題】ねじ軸を用いることなく簡素なボール保持形態でボールを確実に転動させて従動円筒部材を駆動案内部材の長手方向に沿って円滑に直線移動させる動力伝達機構を提供すること。
【解決手段】円筒形コイル体112からなる駆動案内部材110と、この駆動案内部材110の外周面に円筒形コイル体112を構成するコイル線112aのコイルピッチCP間で転動自在に支持した4個のボール131から構成されるボール群130を介在させた状態で嵌挿してなる従動円筒部材120とを備え、ボール群130が従動円筒部材120の一端側で従動円筒部材120の円周上で2カ所に等間隔で位置決め配置されている動力伝達機構100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動案内部材の回転運動を駆動案内部材の長手方向に沿った従動円筒部材の直線移動に転換する動力伝達機構であり、特に、駆動源から動力伝達された駆動案内部材の回転運動を従動円筒部材の直線移動に転換することによって従動円筒部材を進退自在に作動させる直線作動機に用いるものである。
【背景技術】
【0002】
従来の直線作動機に用いる動力伝達機構として、外周面に多条の螺旋状ボール転動溝が形成されたねじ軸と、内周面に環状凸部を備えるとともにこの環状凸部の軸方向両側に螺旋状ボール転動溝に対向するように形成された略4分の1円弧の環状ボール転動溝を備えたナットと、螺旋状ボール転動溝と環状ボール転動溝との間に介装されたボールと、このボールを転動自在に保持するために環状凸部の両側においてナット内に保持された保持器とを有してなるボール非循環型ボールねじが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−77260号公報(特許請求の範囲、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のボール非循環型ボールねじからなる動力伝達機構では、多数のボールと凹凸嵌合する多条の螺旋状ボール転動溝を備えたねじ軸を必要とし、このねじ軸の外周面には通常のねじ溝と全く異なる多条の螺旋状ボール転動溝を形成しなければならず、しかも、このような多条の螺旋状ボール転動溝を精密に形成するための高い加工精度が要求され、ねじ軸の製作に多大な加工負担が強いられるという問題があった。
【0005】
また、従来のボール非循環型ボールねじからなる動力伝達機構では、多数のボールを転動自在に保持するためのナットに、前述したねじ軸の螺旋状ボール転動溝に対向して適合するような環状ボール転動溝を形成しなければならず、その転動溝に高い加工精度が要求され、ナットの製作にも多大な加工負担が強いられるという問題があり、しかも、このナット内に止め輪、保持器などをナット嵌合方向、すなわち、ねじ軸の軸方向から装着して多数のボールを封止保持しているが、それぞれのボールの転動状態を個別に調整することができず、特定のボールに偏荷重が生じてボールの早期磨損を惹起したりナットやねじ軸を過度に磨損してボールの転動による動力伝達に支障を来すという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、ねじ軸を用いることなく簡素なボール保持形態でボールを確実に転動させて従動円筒部材を駆動案内部材の長手方向に沿って円滑に直線移動させる動力伝達機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る本発明は、少なくとも円筒形コイル体からなる駆動案内部材と、該駆動案内部材の外周面に前記円筒形コイル体を構成するコイル線のコイルピッチ間で転動するボール群を介在させた状態で嵌挿してなる従動円筒部材とを備え、前記駆動案内部材の回転運動を駆動案内部材の長手方向に沿った従動円筒部材の直線移動に転換する動力伝達機構であって、前記ボール群が、前記従動円筒部材の少なくとも一端側で従動円筒部材の円周上で少なくとも2カ所に等間隔で位置決め配置されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0008】
請求項2に係る本発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記ボール群が、前記コイル線の1条を千鳥状に4点で挟持しつつ転動する4個のボールから構成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0009】
請求項3に係る本発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記ボール群が、前記コイル線の隣り合った2条のそれぞれを3点で挟持しつつ転動する4個のボールから構成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0010】
請求項4に係る本発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の構成に加えて、前記ボールのボール径が、前記円筒形コイル体を構成しているコイル線の線径に略等しく設定されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0011】
そこで、請求項1に係る本発明の動力伝達機構は、少なくとも円筒形コイル体からなる駆動案内部材とこの該駆動案内部材の外周面に前記円筒形コイル体を構成するコイル線のコイルピッチ間で転動するボール群を介在させた状態で嵌挿してなる従動円筒部材とを備えていることにより、ボール群が従来のようなねじ軸を用いることなく簡素なボール保持形態で確実に転動するため、従動円筒部材を駆動案内部材の長手方向に沿って直線移動させることができる。
【0012】
また、円筒形コイル体を構成するコイル線のコイルピッチ間で転動するボール群が従動円筒部材の少なくとも一端側で従動円筒部材の円周上で少なくとも2カ所に等間隔で位置決め配置されていることにより、これらのボール群が駆動案内部材に対して生じる従動円筒部材の少なくともラジアル方向の負荷を相互に補完し合って転動するため、ボール群の最小限の配置で従動円筒部材を駆動案内部材の長手方向に沿って安定かつ円滑に直線移動させることができるとともに従動円筒部材を移動させるための動力負担を著しく軽減することができる。
【0013】
ここで、前述した円筒形コイル体が全長に亙って駆動シャフトに固定されている場合には、円筒形コイル体の全長に亙ってコイルピッチが一定に位置決め確保されているため、ボール群を構成するボールが円筒形コイル体の全長に亙って等速かつ安定して転動し、従動円筒部材を駆動案内部材の長手方向に沿って一定速度で円滑に直線移動させることができる。
また、円筒形コイル体の両端のみが駆動シャフトに固定されている場合には、従動円筒部材が駆動案内部材に沿って移動する際に駆動案内部材もしくは従動円筒部材に何らかの衝撃が加わっても円筒形コイル体におけるコイルピッチ間の弾性変形により衝撃を吸収し、従動円筒部材を駆動案内部材の長手方向に沿って弾力的かつ円滑に直線移動させることができる。
【0014】
そして、請求項2に係る本発明の動力伝達機構によれば、請求項1に記載された動力伝達機構が奏する効果に加えて、ボール群が、コイル線の1条を千鳥状に4点で挟持しつつ転動する4個のボールから構成されていることにより、1条のコイル線が上下各2点でそれぞれ交互に確実に挟持されるため、より少ないボール個数でボールとコイル線との係合を安定させて従動円筒部材を駆動案内部材の長手方向に沿って確実かつ円滑に直線移動させることができる。
【0015】
さらに、請求項3に係る本発明の動力伝達機構によれば、請求項1に記載された動力伝達機構が奏する効果に加えて、ボール群が、コイル線の隣り合った2条のそれぞれを3点で挟持しつつ転動する4個のボールから構成されていることにより、従動円筒部材を移動させるための動力負担が隣り合った2条のコイル線上に2分されて分散されるため、より少ないボール個数でボールとコイル線との係合を安定させて従動円筒部材を駆動案内部材の長手方向に沿ってより一段と円滑に直線移動させることができる。
【0016】
また、請求項4に係る本発明の動力伝達機構によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載された動力伝達機構が奏する効果に加えて、ボールのボール径が円筒形コイル体を構成しているコイル線の線径に略等しくなっていることにより、ボールの発生応力が低減するため、ボールの磨損を抑制して従動円筒部材を駆動案内部材の長手方向に沿って長期に亙って円滑に直線移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例である動力伝達機構の全体概要図。
【図2】図1の駆動案内部材と従動円筒部材との組み立て分解図。
【図3】図1のX1−X1線方向から見た断面図。
【図4】図1に示す従動円筒部材にボールを保持するボール保持機構の説明図。
【図5】本発明の第1実施例で用いたボール群を拡大した説明図。
【図6】本発明の動力伝達機構を用いた直線作動機の概要図。
【図7】図6の直線作動機が伸長した状態を示す図。
【図8】本発明の第2実施例である動力伝達機構の全体概要図。
【図9】図8のX2−X2線方向から見た断面図。
【図10】本発明の第3実施例で用いたボール群を拡大した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の動力伝達機構は、少なくとも円筒形コイル体からなる駆動案内部材と、この駆動案内部材の外周面に前記円筒形コイル体を構成するコイル線のコイルピッチ間で転動するボール群を介在させた状態で嵌挿してなる従動円筒部材とを備えていることにより、駆動案内部材の回転運動を駆動案内部材の長手方向に沿った従動円筒部材の直線移動に転換するとともに、円筒形コイル体を構成するコイル線のコイルピッチ間で転動自在に支持した多数のボールから構成されるボール群が、従動円筒部材の少なくとも一端側で従動円筒部材の円周上で少なくとも2カ所に等間隔で位置決め配置され、少ないボール個数で従動円筒部材を駆動案内部材の長手方向に沿って円滑に直線移動するとともに従動円筒部材を移動させるための動力負担を著しく軽減するものであれば、その具体的な実施の形態は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0019】
例えば、本発明の動力伝達機構で用いる駆動案内部材の具体的な形態については、少なくとも円筒形コイル体からなるものであれば良く、たとえば、円筒形コイル体のみからなるもの、あるいは、円筒形コイル体を円形断面を有する駆動シャフトに密着嵌合し円筒形コイル体の少なくとも両端を固定してなるもののいずれであっても何ら差し支えないが、前者であれば、駆動案内部材の部品点数が少なく製造コストを安価に抑えることができ、後者であれば、円筒形コイル体の座屈を駆動シャフトにより規制することができる。
【0020】
そして、駆動案内部材に用いる円筒形コイル体の具体的な材質については、高剛性のコイルバネなどの金属製線材やエンジニアリングプラスチックからなるプラスチック製線材のいずれであっても差し支えないが、前者であれば、市販のバネ鋼材をそのまま採用することが可能になるため、ボールの安定した転動が簡便に得ることができ、後者であれば、自己潤滑性を発揮して潤滑油を用いることなくボールが円滑に転動して駆動案内部材の回転運動を従動円筒部材の直線移動に何ら抵抗なく転換することができる。
【0021】
そして、円筒形コイル体を構成するコイル線の断面形態については、コイルピッチ間においてボールの球面とコイル線のコイル表面とが点接触してボールを転動自在にするものであれば、円形断面を備えたもの、あるいは、楕円断面を備えたもののいずれであっても何ら差し支えない。
【0022】
本発明の動力伝達機構におけるボール群の具体的な配置形態については、従動円筒部材の少なくとも一端側で従動円筒部材の円周上で少なくとも2カ所に等間隔で位置決め配置されていれば良く、たとえば、従動円筒部材の円周上で180°の間隔を開けて2カ所に等間隔で配置しても、120°の間隔を開けて3カ所に等間隔で配置しても何ら差し支えない。
また、ボール群は、従動円筒部材の上端領域または下端領域のいずれか一方、若しくは、両方に配置しても何ら差し支えないが、前者の一方に配置した場合であれば、従動円筒部材の部品点数が少なく製造コストを安価に抑えることができ、後者の両方に配置した場合であれば、従動円筒部材を駆動案内部材の長手方向に沿ってより一段と安定かつ円滑に直線移動させることができるとともに従動円筒部材を移動させるための動力負担を著しく軽減することができる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例である動力伝達機構を図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施例である動力伝達機構の全体概要図であり、図2は、図1の駆動案内部材と従動円筒部材との組み立て分解図であり、図3は、図1のX1−X1線方向から見た断面図であり、図4は、図1に示す従動円筒部材にボールを保持するボール保持機構の説明図であり、図5は、本発明の第1実施例で用いたボール群を拡大した説明図であり、図6は、本発明の動力伝達機構を用いた直線作動機の概要図であり、図7は、図6の直線作動機が伸長した状態を示す図であり、図8は、本発明の第2実施例である動力伝達機構の全体概要図であり、図9は、図8のX2−X2線方向から見た断面図であり、図10は、本発明の第3実施例で用いたボール群を拡大した説明図である。
【0024】
まず、本発明の第1実施例である動力伝達機構100は、図1乃至図2に示すように、円形断面を有する円柱状の駆動シャフト111に密着嵌合した高剛性のバネ鋼材からなる円筒形コイル体112の両端を固定してなる駆動案内部材110を備えているとともに、この駆動案内部材110の外周面に円筒形コイル体112を構成するコイル線112aのコイルピッチCP間で転動自在に支持した4個のボール131から構成される2組のボール群130、130を介在させた状態で嵌挿してなる従動円筒部材120を備えている。
これにより、駆動案内部材110の円筒形コイル体112として市販のバネ鋼材をそのまま採用することが可能にするとともに、従動円筒部材120が駆動案内部材110に沿って移動する際に、駆動案内部材110もしくは従動円筒部材120に何らかの衝撃が加わっても円筒形コイル体112におけるコイルピッチCP間の弾性変形により衝撃を吸収し、従動円筒部材120を駆動案内部材110の長手方向に沿って弾力的かつ円滑に直線移動させるようになっている。
【0025】
なお、図1に示す符号113は、駆動シャフト111の突出先端部側に固設して従動円筒部材120を駆動案内部材110から抜け止めするためのフランジ部材であり、符号114は、駆動シャフト111の基端部側に固設して図示していない駆動源から伝動されるシャフト側ギヤである。
【0026】
そして、図3に示すように、前述した従動円筒部材120の上端領域には、ボール群130、130が180°位相をずらした2カ所に等間隔に位置決め配置されている。
これにより、これらのボール群130、130同士が駆動案内部材110に対して生じる従動円筒部材120のラジアル方向の負荷を相互に補完し合って転動するようになっている。
なお、本第1実施例では、ボール群130を2カ所に等間隔に配置したが、本第1実施例の変形例として、120°位相をずらした3カ所に等間隔に位置決め配置しても何ら差し支えない。
【0027】
そして、前述した上方に配置されたボール群130、130は、図5に示すように、円筒形コイル体112を構成しているコイル線112aのコイルピッチCP間で支持されている。
これにより、コイルピッチCP間においてボール131の球面とコイル線112aのコイル表面とが相互に点接触状態となるため、相互の接触面積が最小となって接触抵抗を解消し、ボール131が転動自在になっている。
【0028】
さらに、これらのボール群130、130には、図5に示すように、コイル線112aの1条を千鳥状に4点で挟持しつつ転動する4個のボール131が配置されている。
これにより、1条のコイル線112aが上下各2点で交互に確実に挟持されるため、より少ないボール個数でボール131とコイル線112aとの係合を安定させるようになっている。
【0029】
そして、前述した従動円筒部材120は、図4に示すように、ボール131にそれぞれ対応して位置決めされるボール保持穴121aをそれぞれ設けた円筒スリーブ121と、ボール131を円筒形コイル体112に向けて押圧付勢するボール押圧用バネ123と、このボール押圧用バネ123をボール保持穴121a内に位置決め封止するボール封止板124とで構成されている。
これにより、ボール131は、コイル線112aに押しつけられるようになっている。
【0030】
さらに、ボール131のボール径は、図5に示すように、円筒形コイル体112を構成しているコイル線112aの線径に略等しくなっている。
これにより、それぞれのボール131に負荷される発生応力を低減して、ボール131の磨損を抑制して従動円筒部材120を駆動案内部材110の長手方向に沿って長期に亙って円滑に直線移動させるようになっている。
【0031】
以上のようにして得られた本発明の第1実施例である動力伝達機構100は、円筒形コイル体112を構成するコイル線112aのコイルピッチCP間で転動するボール群130、130が従動円筒部材120の一端側で従動円筒部材120の円周上で2カ所に等間隔で位置決め配置されていることにより、ボール群が従来のようなねじ軸を用いることなく簡素なボール保持形態で確実に転動するばかりでなく、これらのボール群130、130が駆動案内部材110に対して生じる従動円筒部材120の少なくともラジアル方向の負荷を相互に補完し合って転動するため、ボール群130、130の最小限の配置でボール131とコイル線112aとの係合を安定させて従動円筒部材120を駆動案内部材110の長手方向に沿って安定かつ円滑に直線移動させることができるとともに従動円筒部材120を移動させるための動力負担を著しく軽減することができる。
【0032】
そして、ボール群130、130には、コイル線112aの1条を千鳥状に4点で挟持しつつ転動する4個のボール131が配置されているので、1条のコイル線112aが上下各2点で交互に確実に挟持されるため、より少ないボール個数でボール131とコイル線112aとの係合を安定させ従動円筒部材120を駆動案内部材110の長手方向に沿ってより一段と円滑に直線移動させることができるなど、その効果は甚大である。
【0033】
つぎに、本発明の動力伝達機構100を用いた直線作動機SAMについて、図6乃至図7に基づいて以下に説明する。
すなわち、本発明の動力伝達機構100を用いた直線作動機SAMは、駆動源を構成する電動モータMの回転軸に軸着した駆動ギヤDGの回転力を中間ギヤMGを介して上述した動力伝達機構100の一部を構成する駆動シャフト111の基端部側に固設したシャフト側ギヤ114に動力伝達し、次いで、このシャフト側ギヤ114に軸着した動力伝達機構100の駆動案内部材110に動力伝達された回転力を多数のボール131を介して従動円筒部材120の直線移動に転換すると同時に、従動円筒部材120に固着したピストンPの直線的な進退動作に転換するものである。
なお、図6乃至図7における符号Hは、上述した駆動ギヤDG、中間ギヤMG、シャフト側ギヤ114、動力伝達機構100を収容するとともに、上述したピストンPが突出自在に進退することが可能なハウジングである。
【0034】
したがって、上述したような直線作動機SAMは、本発明の動力伝達機構100を用いていることにより、従来のようなねじ軸を用いることなく合計8個のボールが簡素なボール保持形態で確実に転動するため、駆動源Mを用いて回転させた駆動案内部材110の回転運動が駆動案内部材110の長手方向に沿った従動円筒部材120の直線移動に転換され、この従動円筒部材120に固着したピストンPをハウジングHの長手方向に沿って確実かつ円滑に安定して直線移動させることができる。
【0035】
そして、4個のボール131から構成されるボール群130、130が、従動円筒部材120の一端側で従動円筒部材120の円周上で2カ所に等間隔で位置決め配置されていることにより、少ないボール個数でボール131とコイル線112aとの係合を安定させ従動円筒部材120を駆動案内部材110の長手方向に沿って円滑に直線移動させることができるため、この従動円筒部材120に固着したピストンPをハウジングHの長手方向に沿って移動させるための動力負担を著しく軽減することができるなど、その効果は甚大である。
【0036】
つぎに、本発明の第2実施例である動力伝達機構200について、図8に基づいて説明する。
ここで、本第2実施例である動力伝達機構200におけるボール群230A、230A、230B、230Bの具体的な構成を除く基本的な構成は、前述した第1実施例の動力伝達機構100と全く同じであるため、第1実施例の動力伝達機構100におけるそれぞれの部材に付した100番台の符号を200番台の符号に読み替えることによって、その説明を省略する。
【0037】
そこで、本第2実施例の動力伝達機構200が最も特徴とするボール群230A、230A、230B、230Bの具体的な構成について図8により詳しく説明する。
まず、図8乃至図9に示すように、前述した従動円筒部材220の一端側となる上端領域には、ボール群230A、230Aが180°位相をずらして2カ所に位置決め配置されており、また、従動円筒部材220の他端側となる下端領域には、ボール群230B、230Bが180°位相をずらして2カ所に位置決め配置されていて、従動円筒部材220の上端領域に配置される2カ所のボール群230A、230Aと従動円筒部材220の下端領域に配置される2カ所のボール群230B、230Bとは90°位相をずらしてそれぞれ配置されている。
すなわち、従動円筒部材220の円筒断面でみると、従動円筒部材220の他端側に配置されたボール群230B、230Bが、一端側に配置されたボール群230A、230Aの間隔の中間にそれぞれ位置決め配置されている。
これにより、これらのボール群230A、230A、230B、230Bが、駆動案内部材210に対して生じる従動円筒部材220のスラスト方向とラジアル方向の負荷を相互に補完し合って転動するようになっている。
【0038】
以上のようにして得られた本発明の第2実施例である動力伝達機構200は、円筒形コイル体212を構成するコイル線212aのコイルピッチCP間で転動するボール群230A、230A、230B、230Bが従動円筒部材220の一端側および他端側の両方で従動円筒部材220の円周上で2カ所に等間隔で位置決め配置されていることにより、従来のようなねじ軸を用いることなくボール群230A、230A、230B、230Bの簡素なボール保持形態で確実に転動するばかりでなく、これらのボール群230A、230A、230B、230Bが駆動案内部材210に対して生じる従動円筒部材220のスラスト方向とラジアル方向との負荷を相互に補完し合って転動するため、ボール群230A、230A、230B、230Bの最小限の配置でボール231とコイル線212aとの係合を安定させて従動円筒部材220を駆動案内部材210の長手方向に沿って安定かつ円滑に直線移動させることができるとともに従動円筒部材220を移動させるための動力負担を著しく軽減することができる。
【0039】
そして、これらのボール群230A、230A、230B、230Bには、コイル線212aの1条を千鳥状に4点で挟持しつつ転動する4個のボール231が配置されているので、1条のコイル線212aが上下各2点で交互に確実に挟持されるため、より少ないボール個数でボール231とコイル線212aとの係合を安定させ従動円筒部材220を駆動案内部材210の長手方向に沿ってより一段と円滑に直線移動させることができるなど、その効果は甚大である。
【0040】
つぎに、本発明の第3実施例である動力伝達機構300について、図10に基づいて説明する。
ここで、本第3実施例である動力伝達機構300におけるボール群330、330の具体的な構成を除く基本的な構成は、前述した第1実施例の動力伝達機構100と全く同じであるため、第1実施例の動力伝達機構100におけるそれぞれの部材に付した100番台の符号を300番台の符号に読み替えることによって、その説明を省略する。
【0041】
そこで、本第3実施例の動力伝達機構300が最も特徴とするボール群330、330の具体的な構成について図10により詳しく説明する。
すなわち、第3実施例の動力伝達機構300における各ボール群330、330が、コイル線の隣り合った2条のそれぞれを3点で挟持しつつ転動する4個のボール331から構成されている。
これにより、従動円筒部材320を移動させるための動力負担が、隣り合った2条のコイル線312a上に2分されて分散するため、より少ないボール個数でボール331とコイル線312aとの係合を安定させるようになっている。
【0042】
以上のようにして得られた本発明の第3実施例である動力伝達機構300は、円筒形コイル体312を構成するコイル線312aのコイルピッチCP間で転動するボール群330、330が従動円筒部材320の一端側で従動円筒部材320の円周上で2カ所に等間隔で位置決め配置されていることにより、ボール群が従来のようなねじ軸を用いることなく簡素なボール保持形態で確実に転動するばかりでなく、これらのボール群330、330が駆動案内部材310に対して生じる従動円筒部材320の少なくともラジアル方向の負荷を相互に補完し合って転動するため、ボール群330、330の最小限の配置でボール331とコイル線312aとの係合を安定させて従動円筒部材320を駆動案内部材310の長手方向に沿って安定かつ円滑に直線移動させることができるとともに従動円筒部材320を移動させるための動力負担を著しく軽減することができる。
【0043】
そして、ボール群330、330には、コイル線312aの隣り合った2条のそれぞれを3点で挟持しつつ転動する4個のボール331で構成されていることにより、従動円筒部材320を移動させるための動力負担が隣り合った2条のコイル線312a上に2分されて分散されるため、より少ないボール個数でボール331とコイル線312aとの係合を安定させ従動円筒部材320を駆動案内部材310の長手方向に沿ってより一段と円滑に直線移動させることができるなど、その効果は甚大である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の第1実施例乃至第3実施例の動力伝達機構100、200、300は、電動モータMの回転力を直線的な進退動作に転換するための直線作動機SAMなどとして用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
100 ,200 ,300 ・・・動力伝達機構
110 ,210 ,310 ・・・駆動案内部材
111 ,211 ,311 ・・・駆動シャフト
112 ,212 ,312 ・・・円筒形コイル体
112a,212a,312a・・・コイル線
113 ,213 ,313 ・・・フランジ部材
114 ,214 ,314 ・・・シャフト側ギヤ
120 ,220 ,320 ・・・従動円筒部材
121 ,221 ,321 ・・・円筒スリーブ
121a,221a,321a・・・ボール保持穴
122 ,222 ,322 ・・・ボール押さえ板
123 ,223 ,323 ・・・ボール押圧用バネ
124 ,224 ,324 ・・・ボール封止板
130 ,230 ,330 ・・・ボール群
230A ・・・上部領域のボール群
230B ・・・下部領域のボール群
131 ,231 ,331 ・・・ボール
SAM ・・・直線作動機
CP ・・・コイルピッチ
M ・・・電動モータ(駆動源)
DG ・・・駆動ギヤ
MG ・・・中間ギヤ
H ・・・ハウジング
P ・・・ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも円筒形コイル体からなる駆動案内部材と、該駆動案内部材の外周面に前記円筒形コイル体を構成するコイル線のコイルピッチ間で転動するボール群を介在させた状態で嵌挿してなる従動円筒部材とを備え、前記駆動案内部材の回転運動を駆動案内部材の長手方向に沿った従動円筒部材の直線移動に転換する動力伝達機構であって、
前記ボール群が、前記従動円筒部材の少なくとも一端側で従動円筒部材の円周上で少なくとも2カ所に等間隔で位置決め配置されていることを特徴とする動力伝達機構。
【請求項2】
前記ボール群が、前記コイル線の1条を千鳥状に4点で挟持しつつ転動する4個のボールから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達機構。
【請求項3】
前記ボール群が、前記コイル線の隣り合った2条のそれぞれを3点で挟持しつつ転動する4個のボールから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達機構。
【請求項4】
前記ボールのボール径が、前記円筒形コイル体を構成しているコイル線の線径に略等しく設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の動力伝達機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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