動物の毛と選択的に結合する抗体および動物用の抗体ベースの薬物デリバリーシステム
本発明は、動物の毛と選択的に結合する抗体および特定の製剤を動物の毛に方向付けることができる抗体ベースの薬物デリバリーシステムを提供する。これは、動物外寄生生物治療の有効治療期間を増大する必要性、これらの薬物の毒性を低減する必要性およびそれらの放出プロフィールを改善する必要性によって推進されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の毛と選択的に結合する抗体および特定の製剤を動物毛に方向付けることができる抗体ベースの薬物デリバリーシステムを提供する。これは、動物外寄生生物治療の有効治療期間を増大する必要性、これらの薬物の毒性を低減する必要性およびそれらの放出プロフィールを改善する必要性によって推進されている。
【0002】
イヌ毛の表面に対して高結合を示す2種のモノクローナル抗体を選択した。重要なことに、ヒト、ウマまたはネコ毛に対する結合は、検出可能でなかった。本明細書に示されているデータは、選択した抗体が、薬物を動物毛に方向付けるデリバリーシステムを設計するのに適していることを実証する。
【背景技術】
【0003】
抗体の、毛構造との接着または連結、およびヘアトリートメント活性物質またはヘアトリートメント活性物質を含有する粒子を連結するためのそれらの抗体の有効利用は、随分前から当技術分野で知られている。Widder(米国特許第3,987,161号)は、その動物の体が、哺乳類毛、好ましくは、ヒト毛の水性懸濁液で注射された場合に、血中に抗体を形成できる動物から得られた血清を含有する抗体を含むヘアケア製品を記載している。Igarashi et al.(米国特許第5,597,386号)は、着色物質を含有する、毛髪染料またはポリマー粒子、例えば、ポリスチレン粒子を保持し、したがって、ヘアトリートメントにおける利益を得るよう、着色活性物質をヒト毛に結合する抗毛抗体を記載している。抗体は、哺乳類へのケラチンポリマーの筋肉内注射によって、初乳によって抗体を得ることによって得られた抗ケラチン抗体として記載されており、ここで、ケラチンは、ヒト毛構造の加水分解および溶解後に得られた。染料保持粒子は、高分子担体として記載されている。Koyama et al.(米国特許第6,123,934号)は、毛と結合する抗体を含有し、この抗体の使用によって、ビニルモノマーのポリマーまたは共重合体のラテックス粒子を毛構造と連結する化粧用組成物を記載している。これらの製剤は、毛構造を改善または修復するための、カチオンポリマーまたはその他の成分を含み得る。この発明では、抗体は、加水分解されたヒト毛または毛繊維構造全体を粉末化することによって得られたヒト毛の粒子の注射によって家禽を免疫化することによって得られている。それらの発明のすべてにおいて、免疫化のためにヒト毛構造が使用され、ケラチン結合性ポリクローナル抗体が得られている。一般に、抗体は、生物学的抗原構造を用いて哺乳類または鳥類を免疫化することによって作製でき、次いでこれらを、必要な領域、例えば、癌細胞に、それらの抗体と直接的にまたは間接的に連結している有益な活性物質を方向付けるために使用できることがわかっている。
【0004】
Paluzziおよび共同研究者(2004)は、種特異的モノクローナル抗体を製造するための抗原として、カシミヤから得たII型ケラチンを使用した。選択された抗体を、カシミヤおよび羊毛から単離したケラチンとの免疫反応性について2次元免疫ブロット法によって試験した。その他の動物繊維と比較した場合にカシミヤの種同定を可能にする、いくつかの定量的および定性的な相違が検出された。しかし、選択されたモノクローナル抗体は、試験された種の間では、すべてのサンプルと結合し、シグナル強度およびタンパク質パターンのわずかな相違しか観察されなかった。重要なことに、抗体は、抽出されたケラチンI型およびII型タンパク質と結合し、毛表面との結合は実証されていない。
【0005】
獣医学の分野では、有益な薬剤を含有する粒子を使用することによって、また動物毛または動物皮膚結合性抗体を使用することによって、それらの薬剤を毛のケラチン構造に、あるいは皮膚構造にターゲッティングすることによって、それらの発明から利益を得ることができる。これは、それらの薬物を長期間、すなわち、数週間、数カ月または1年でさえ放出し得る本体としてこれらの粒子を使用する選択肢、したがって、動物を害虫動物、すなわち、昆虫、例えば、ノミおよびマダニから保護すること、またはその他の有益な効果を活用すること、例えば、有害昆虫を忌避すること、またはこの長期間の間、皮膚疾患を治癒することを考慮する場合に特に有用である。この目的のために設計される通常の製剤は、数時間から約4週間、有益な効果を示す1回の適用として調製される。ポリマー粒子のような担体システムを使用することによって、この期間を相当に延長する選択肢が提供され得る。それらの粒子を毛と連結する抗体を使用することは、薬物担体が毛または皮膚に必要な期間固着するのを可能にするのに十分持続可能な、活性物質と毛の連結を提供する選択肢を提供し得る。適した製剤が必要である。動物にそれらの製剤を適用するのに有用であり得る適用システムとして、例えば、製剤を動物皮膚または毛皮と接触させる、噴霧剤またはいわゆるスポットオン製剤もしくはワイプオン製剤がある。注目する活性物質は、例えば、ピレスロイドまたは殺虫剤一般、ならびに全身薬または行動改変剤であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許において記載される方法は、このような薬物デリバリーシステムへのアクセスを提供し得る。しかし、それらの発明に記載の抗体および記載の方法によって得られる抗体は、毛のケラチン構造と結合するので、1つの主要な不利点は、噴霧剤またはスポットオン製剤を介して動物に製剤を適用することによって、存在する種にかかわらず、哺乳類毛、すなわち、ケラチン構造との強力な、持続した結合が得られるであろうということであると思われる。したがって、適用を行っている人もまた、偶発的に、それらの薬物保持システムを体毛または頭髪と結合させることによって、活性物質の投与を受け得る。また、動物を撫でることによって、それらの薬物保持活性物質のヒト身体への伝達があり得、これによって、ペット所有者は、時には攻撃的な活性物質、例えば、ピロスロイド(pyrothroid)に曝露し得る。適用の安全性の理由で、特定の動物種の毛または皮膚を選択的に標的とすることができる抗体を得ることができれば大きな利点となるであろう。また、複数の種が維持されている家畜小屋において獣医がそのような製剤を使用しなければならず、1つの種のみが治癒されるべき疾患を示す場合、または1つの種のみが種特異的有害生物から保護されなければならない場合に利用可能なこのような種類の抗体製剤を有することは、相当に有利である。
【0007】
動物毛に対する抗体を得るために上記の従来技術を使用する場合には、当業者は、ケラチン構造と結合する抗体を得ることを期待するであろう。ケラチンは、すべての哺乳類にとって一般的であり、異なる種間のタンパク質配列は、多分に保存されている。したがって、抗ケラチン抗体は、哺乳類毛一般と結合するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、驚くべきことに、種特異的動物毛表面構造とのみ結合し、ヒト毛表面またはその毛が免疫化に使用されたものと異なる種の毛表面とは結合しない種特異的毛結合抗体を得ることができることを見い出した。それらの抗体によって標的とされ得る種特異的抗原構造が存在することは明らかである。それらの抗体と、分子的実体としてそれらの抗体と連結しているか、または薬物含有粒子中に詰められた薬物を含む薬物保持製剤は、上記の不利点を回避することができる。
【0009】
発明の態様の説明
本発明は、動物の毛の表面と選択的に結合する抗体を提供する。
【0010】
このような抗体は、ハイブリドーマ細胞、合成、半合成、ナイーブおよび免疫担当ファージライブラリーまたはリボソームディスプレイライブラリー由来である、または完全合成デザイナー抗体の作製による、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または全長抗体、二量体分泌型IgA、多量体IgMなどの組換え抗体、およびF(ab’)2断片、Fab断片、Fv断片、一本鎖Fv抗体(scFv)、二重特異性scFv、ダイアボディー、トリアボディー、テトラボディー、ディングル(dingle)ドメイン抗体(dAb)、ミノボディー(minobody)または分子認識単位(MRU)などの、それらの断片を含む群から選択される。
【0011】
本発明の抗体は、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ラマおよび/またはウマの毛の表面構造と選択的に結合する。
【0012】
本発明は、個々の動物種を標的とする薬物デリバリーシステムであって、前記の個々の動物種の毛表面と選択的に結合する能力を有する抗体を含む薬物デリバリーシステムをさらに提供する。
【0013】
前記デリバリーシステムは、固体粒子の表面と結合または接着しており、それによって、これらの粒子を動物毛表面構造に選択的に結合させる抗体を含む。
【0014】
本発明の薬物デリバリーシステムは、第1の工程で、抗体が、個々の種の動物毛と選択的に結合し、第2の工程で、粒子が、動物毛とカップリングしている抗体と結合されるような様式で、前記の個々の種の動物毛と選択的に結合する抗体と、有効成分を含有する粒子との製剤を含む。
【0015】
さらに、本発明の薬物デリバリーシステムは、第1の工程で、抗体を保持する適したスペーサー/媒介物/中間体カップリング剤が、前記抗体を介して動物毛と選択的に結合されるようになり、第2の工程で、粒子が、前記スペーサー/媒介物/カップリング剤との結合によって動物毛と連結されるようになるような様式で、上記スペーサー/媒介物/中間体カップリング剤と連結または化学的に結合された、動物毛結合抗体と、粒子との製剤を含む。
【0016】
本発明は、第1の工程で、抗体が動物毛と選択的に結合し、第2の工程で、適したスペーサー/媒介物/中間体カップリング剤を保持する粒子が、前記抗体との結合によって動物毛と連結されるような様式で、動物毛結合抗体と、その表面に上記スペーサー/媒介物/カップリング剤が連結または接着されている粒子との製剤を含む薬物デリバリーシステムをさらに提供する。
【0017】
本発明の薬物デリバリーシステムは、抗体および粒子が、動物に適用される単一製剤中に存在し得るか、または動物への適用の直前に混合されるようになる2種の異なる製剤(I)および(II)中に存在し得るような様式で、あるいは、第1の工程で製剤(I)が動物に適用され、直後に、第2の工程で製剤(II)が動物に適用されるような様式で、2種の異なる製剤(I)および(II)中に存在し得る、動物毛と選択的に結合する抗体と、粒子とを含む。
【0018】
薬物デリバリーシステムは、動物にとって有益な有効成分または薬剤、すなわち、処置が適用される動物と相互作用する薬物、殺虫剤、ヘアまたはスキンケア物質、処置された動物を有害な害虫動物、例えば、昆虫による攻撃から保護する忌避物質、臭い改変剤、または処置された動物もしくはその他の処置されていない個々の動物の行動を改変する薬剤を含むか含まない場合がある粒子を含む。
【0019】
粒子は、その治療目的または有益な目的にとって適した濃度、すなわち、0.01%〜99.9%で動物にとって有益な有効成分または薬剤を含み得る。
【0020】
本発明の薬物デリバリーシステムは、粒子自体が、動物にとって有益な有効成分または薬剤、すなわち、処置が適用される動物と相互作用する薬物、殺虫剤、ヘアまたはスキンケア物質、処置された動物を有害な害虫動物による攻撃から保護する忌避物質、臭い改変剤、または処置された動物もしくはその他の処置されていない個々の動物の行動を改変する薬剤を含むシステムである。
【0021】
粒子は、0.001μm〜10μm、好ましくは、0.1μm〜2μmの直径を有し得る。
【0022】
本発明の薬物デリバリーシステムによって、動物に単一処置を適用した後に、疾患からの前記動物の保護、動物疾患の継続処置が可能であり、または、動物が前記活性物質の効果から長期間、すなわち、数時間〜365日の範囲、利益を受けることが可能になる。
【0023】
本発明の薬物デリバリーシステムは、動物にとって有益な薬剤が、動物毛と選択的に結合する抗体と直接的または、スペーサー/媒介物/カップリング剤を介してのいずれかで連結/カップリング/結合しているような様式で、前記抗体と、有益な薬剤の製剤をさらに含み、それは、前記活性物質と前記抗体またはスペーサー/媒介物/カップリング剤との連結が、動物の毛皮または皮膚の環境条件によって破壊されるようになり、その結果、活性物質または活性物質の一部または活性物質−抗体構造の一部を放出し、動物にとって有益なその効果を発揮するような様式である。
【0024】
上記薬物デリバリーシステムは、抗体またはスペーサー/媒介物/カップリング剤との活性物質の結合の破壊が、長期間不規則に起こり、疾患からの前記動物の保護、動物疾患の継続治療を可能にするか、または動物が前記活性物質の効果から長期間、すなわち、数時間〜365日の範囲、利益を受けることを可能にするような様式で作用する。
【0025】
本明細書に記載される薬物デリバリーシステムは、動物毛と特異的に結合する抗体または前記抗体の製剤を含み、ここで、前記抗体は、抗体の量および動物毛と結合する前記抗体に接着している有効成分の量が、例えば、水浴びまたは雨ざらしになることによって動物毛皮が水と数回接触した後であっても、または動物が界面活性剤含有溶液で洗浄された後であっても、所望の有益な効果を長期間維持するのに十分に多いままであるような適した結合強度で動物毛と結合する。
【0026】
本発明による抗体は、最大24時間の期間、水および最大50%の有機水混和性溶媒を含有する溶液中、4℃で維持される場合であっても、動物毛に対するその選択的結合能および特異性を維持できる。
【0027】
抗体はさらに、典型的にはヘアケア製剤中に添加される濃度のその他のヘアトリートメント化合物、すなわち、界面活性剤、非イオン性、アニオン性またはカチオン性ポリマーおよび水混和性アルコールを含有する水溶液中に製剤または維持される場合であっても、動物毛に対するその選択的結合能および特異性を維持できる。
【0028】
好ましい一実施形態では、薬物デリバリーシステムは、さらに、固体粒子の表面と、直接的または適したスペーサー/媒介物/中間体カップリング剤を介してのいずれかで結合または接着しており、それによって、これらの粒子を動物毛に選択的に結合させる、本発明の抗体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、ヒトおよびイヌ毛での、抗体B7.3およびB18−4.3の結合を示す。1ウェルあたり1mgの毛に5ngの抗体を用いるマイクロタイタープレート濾過ELISAを使用した、モノクローナル抗体と種々の犬種の毛との、およびヒト毛との結合。西洋ワサビペルオキシダーゼにカップリングしているヤギ抗マウスFcと、ABTS基質とを用いた検出。すべてのサンプルを、3連で分析し、標準偏差を算出した。WHT:ウェストハイランドテリア
【図2】図2は、2種の抗体B7.3およびB18−4.3のSDS−PAGEのイムノブロットである。抗体B7.3は、重鎖および軽鎖の予測される大きさを示すが、抗体B18−4.3は、B18−4.3の重鎖の遺伝子における突然変異によって引き起こされる2種の短い重鎖断片を有する。
【図3】図3は、アビジン表面を有するビーズに負荷されたビオチン化B18−4.3のフローサイトメトリーグラフを示す。赤色のライン(2番目のピーク)は、B18−4.3に結合したヤギ抗マウスフィコエリトリンによって引き起こされたシフトを示し、このことは、抗体がビーズと結合したことを示す。
【図4】図4は、抗体B18−4.3を介した蛍光ビーズとイヌ毛の結合を示す。a:ウェストハイランドテリアの毛と、ビオチン化B18−4.3を介して結合している、0.8μmストレプトアビジン表面修飾ビーズ(FITCとカップリングされている)。b:300mM KBrを含有するトリスバッファー(pH8.8)を用いて、60℃で洗浄することによって前処理した、ビーグルの毛と、ビオチン化B18−4.3を介して結合している、1μmニュートラアビジンがカップリングしているフルオスフェア。
【図5】図5は、共焦点顕微鏡による毛の分析を示す。抗体B18−4.3は、主に毛断片の端と結合していた。ヤギ抗マウスAlexa488による検出。
【図6】図6は、抗体B7.3およびB18−4.3によって認識される抗原構造の分析を示す。300mM KBrを含有するトリスバッファー(pH8.8)を用いて、ウェストハイランドテリアの毛を洗浄し、この洗浄画分を、アセトン沈殿によって濃縮した。濃縮された毛表面タンパク質(eHSP)を、イムノブロットによって分析した。一次抗体B7.3またはB18−4.3と、それに続くヤギ抗マウスAP標識二次抗体およびNBT/BCIPを用いる染色によって抗原を検出した。
【図7】図7aおよびbは、イヌ、ネコ、ウマおよびヒトの毛に対する毛特異的抗体B7.3およびB18−4.3の結合を示す。
【図8】図8は、ヒト毛との貧弱な結合と比較した、抗体を備えた微粒子の、イヌ毛との強い結合を実証する。
【図9】図9は、ビーグル犬の毛との結合時における、イヌ毛特異的抗体B18−4.3およびB7.3の混合物がそれらの表面と連結しており、蛍光色素を含有するポリスチレン微粒子を示す。色素含有微粒子は、結合指標として使用され、ダニ駆除薬を含む同じ種類の微粒子とともに投与されるようになる。この実験は、マダニからイヌを保護するための、種特異的毛結合抗体および制御放出薬物担体としての抗体を備えた微粒子の例示的使用を示すために実施した。像は、マダニでのイヌの寄生の2日後に対応する、適用後に直接とられた、いくつかの毛サンプル上の結合微粒子を示す。
【図10】図10は、製剤の適用の7日後にイヌ毛と結合するときの微粒子を示す。
【図11】図11aおよびbは、製剤の適用の14日後にイヌ毛と結合するときの微粒子を示す。
【図12】図12a、bおよびcは、投与の42日後でさえ、イヌ毛上で微粒子が依然として目に見え、イヌ毛と微粒子の抗体媒介性結合の持続を証明することを実証する。
【図13】図13は、イヌ毛への製剤の投与の63日後でさえ、毛表面上で微粒子が依然として目に見えることを実証する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
モノクローナル毛特異的抗体の作製および選択
マウスの免疫化と続くハイブリドーマ技術の使用によって、動物毛特異的抗体を作製した。ビーグルから得た切断毛を、ホモジナイザーを使用して細かく刻んだ。細かく刻んだ毛は、約200μmの長さであった。
【0031】
2匹のマウスを、細かく刻んだビーグルの毛を用いて免疫化した。最大80μgの毛サンプル(=20μLの細かく刻んだ毛)を、40μLのGERBUアジュバントおよび50μLの1×PBSと混合し、免疫化に使用した。マウスは、10月11日、10月25日、11月3日および11月28日に4回免疫化し、12月2日に屠殺した。脾臓細胞を単離し、骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを作製した。96ウェルマイクロタイタープレートに、細胞を、種々の希釈度でピペットで入れることによって制限希釈を実施した。毛特異的抗体を産生するハイブリドーマクローンについてスクリーニングするために、新規ELISA設定を確立した。部分溶解した毛(室温で、Shindai試薬中10分と、それに続くホモジネーションおよび炭酸バッファー中での再懸濁)を、低結合性96ウェルマイクロタイタープレート上にコーティングした。ハイブリドーマ細胞培養上清を添加した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)にコンジュゲートしている二次ヤギ抗マウス(GAM)抗体を使用して特異的抗体の結合を検出した。毛サンプルと結合する合計23のポリクローナルハイブリドーマクローン(B1〜23)を同定した。しかし、部分溶解された毛をコーティングしたので、毛の内側に存在する抗原および毛表面の抗原と結合する抗体の両方が選択された。
【0032】
毛表面の構造を認識する結合物質を同定するために、モノクローナルハイブリドーマ株から得た抗体を、エッペンドルフベースのELISAを使用して試験した。20〜50のヒトまたは動物毛を、1滴の接着剤を用いてエッペンドルフ管の底に固定し、非特異的結合部位を、PBS中2%(w/v)BSAでブロッキングした。ハイブリドーマ上清または10μgの精製モノクローナル抗体を、管に移し、室温で30分間インキュベートした。洗浄後、ヤギ抗マウス二次抗体(HRPOで標識した)および室温で20分間のインキュベーションを使用して特異的結合を検出した。最後に、HRPOの基質として2,2’−アジノ−ビス3−エチルベンジアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)試薬を使用して結合を可視化した。発色を30秒後にOD405で測定した。
【0033】
エッペンドルフベースのELISAによって2種のモノクローナル抗体を同定した。動物毛の表面に対して特異的結合を示す、B7.3およびB18−4.3と名づけられたこれらの抗体を精製し、種々の毛サンプルに対するその特異性に関して特性決定した。
【0034】
モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体B7.3およびB18−4.3を、プロテインGによって、あるいは、限外濾過の沈殿によってハイブリドーマ培養上清から精製した。精製されたタンパク質の収率は、0.1〜1.1mg/mLの範囲であった。精製された抗体を、その後のアッセイに使用した。
【0035】
モノクローナル抗体の特性決定
抗体結合−エッペンドルフベースのELISA
精製されたモノクローナル抗体B7.3およびB18−4.3の、毛表面との結合を定性的に確認するために、エッペンドルフベースのELISAを使用した。抗体B7.3およびB18−4.3は、特異性を有してヨークシャテリアの毛と結合する。重要なことに、ヒト毛との結合は検出されなかった。
【0036】
以下の毛サンプルを使用して、いくつかのさらなるエッペンドルフベースのELISAを実施した:ヒト、ウマ、ネコ、シュナウツァー/ラブラドール雑種、オーストラリアンシェパード、洗浄前後のプードル(3サンプル)、洗浄前後のヨークシャテリア(4サンプル)、洗浄前後のウェストハイランドテリア(2サンプル)。
【0037】
エッペンドルフベースのELISAの概要が、表1に示されている。データは、両モノクローナル抗体が、5種のイヌ種から得た毛の表面と特異的に結合することを示す。ヒト、ウマまたはネコの毛が使用された場合には、結合は観察されず、このことは、選択された抗体の、イヌ毛に対する強い特異性を示す。モノクローナル抗体B18−4.3は、B7.3よりも、イヌの毛に対してより強い結合活性を有するようである。種々の毛サンプル間にはいくらかのわずかな変動が存在する。ELISAの実施の前の毛処理によって、すべての試験された抗体の結合活性が低下するが、結合している抗体は依然として存在している。
【0038】
【表1】
【0039】
抗体結合および機能性
2種の抗体B7.3およびB18−4.3の、毛との結合を定量的に比較できるよう、別の種類のELISAを確立した。イヌ毛を2〜5mm長の断片に切断し、PBS(5mg/ml)に溶解した。この懸濁液200μlを、96ウェルマイクロタイター濾過プレート(Multiscreen HTS、メンブレンポアサイズ1.2μm、Millipore)の各ウェルにピペットで入れた。マイクロタイター濾過プレート中の毛がこれらの手順で減少しないよう、遠心分離によってバッファーおよび基質交換を行う。
【0040】
予備実験で、1mgの毛(=ウェル)と結合している抗体の最大量は、5〜10ng(イヌの品種および抗体に応じて)であると決定した。したがって、実験は、大部分は2.5または5ng/ウェルを用いて実施した。
【0041】
2種の抗体の、種々のイヌ品種の毛との結合を調べるために、ウェストハイランドテリア、ジャーマン・シェパード(腹部から得た毛)、ヨークシャテリアミックス、アイリッシュセッター、ジャーマンワイヤードヘアテリア(German wired−hair terrier)、チャウチャウ、プードル、スモールミュンスターランダー、ビーグル、ジャーマンシェパード(背中領域から得た毛)、ホファヴァルト、シーズー、スピッツ、ボーダーコリー、ラブラドール、雑種(背中から得た毛)、雑種(腹部から得た毛)、ブリアール、オーストラリアンシェパードの毛を用いてマイクロタイター濾過プレートELISAを実施した。また、この試験にヒト毛を含めた。すべての得られた値を、ウェストハイランドテリアに対して正規化した(図1)。
【0042】
精製された抗体の、毛表面との結合も、共焦点顕微鏡を使用する免疫蛍光イメージングによって実証した。例えば、抗体B7.3は、ヨークシャテリア毛との強力な結合を示した。二次ALEXA564色素標識ヤギ抗マウス抗体のみを適用した場合には蛍光は全く観察されず、このことは、毛表面に対するB7.3の特異性を実証した。抗体適用に先立つアセトンでの毛の処理は、蛍光シグナルの減少をもたらした。毛サンプルを穏やかな洗浄剤で洗浄した場合にも同様の結果が得られた。
【0043】
抗体完全性、安定性および機能性
抗体重鎖および軽鎖の完全性を確認するために、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって精製されたタンパク質を分析した。抗体B7.3は、予測される大きさのインタクトな重鎖および軽鎖を有するが、抗体B18−4.3は、両方とも全長重鎖よりも小さい2種の重鎖バンドを有する(55kDaの代わりに約44および47kDa)(図2)。これらの突然変異体重鎖の一方は、中途停止コドンをもたらすC2ドメインの末端でのフレームシフト突然変異の結果である。もう一方の突然変異重鎖の起源は、まだわかっていない。B7.3およびB18−4.3重鎖の分解産物は観察されず、このことは、精製された抗体の完全性を実証する。
【0044】
安定性を分析するために、エッペンドルフベースのELISAを使用して、イソプロパノールの存在下でモノクローナル抗体の結合を実施した。モノクローナル抗体B7.3は、4℃で、4カ月にわたって、30%(v/v)イソプロパノールの存在下で安定な結合を示した。イヌ毛との結合は、抗体が、40%または50%(v/v)イソプロパノール中、4℃で維持された場合に依然として存在し、このことは、このタンパク質の高い安定性を実証する。さらに、抗体B7.3は、20%(v/v)イソプロパノールの存在下、22℃で安定であった。
【0045】
B18−4.3の安定性はさらに良好であった。モノクローナル抗体は、4℃で4カ月間にわたって、40%(v/v)イソプロパノールの存在下で保存した後に、毛との安定な結合を示した。
【0046】
さらに、6%(v/v)Luviskol VA 64 W(BASF)、5%(v/v)Luviquat PQ 11 PN(BASF)、0.3%(v/v)Pluracare E400 PEG−8(BASF)、0.2%(v/v)Q2−5220 Resin(DOW Corning)および15%(v/v)イソプロパノールを含有する製剤溶液中でモノクローナル抗体の安定性および機能性を試験した。製剤中、4℃で3日間保存した後、エッペンドルフベースのELISAを使用して抗体結合を調べ、B7.3およびB18−4.3が、製剤中で高い安定性を有することを示した。
【0047】
抗体結合能
最大結合能を決定するために、規定数のヨークシャテリアの毛(20本の毛、各20mm長)を使用してエッペンドルフベースのELISAにおいてB18−4.3の希釈物を試験した。各エッペンドルフ管中の毛の表面は、3.15mm2に相当していた。ELISAによれば、2.5〜5.0ngの抗体B18−4.3が、3.15mm2の毛表面と結合する。
【0048】
抗体のビオチン化
抗体の機能性に対する結合パートナーの影響を分析するために、精製されたモノクローナル抗体を、ビオチン化し、その後、アビジンビーズと結合させ、これをFACS分析によって確認した(図3)。イヌ毛との結合をエッペンドルフベースのELISAを使用して分析した。ビオチン化抗体B7.3およびB18−4.3の結合が、HRPOにコンジュゲートしているアビジンによって検出され、このことは、ビオチン化および結合パートナーが抗体の機能性に影響を及ぼさないことを実証した。
【0049】
ビーズへの抗体融合
ビーズとカップリングしているモノクローナル抗体の結合を分析するために、0.5%(v/v)Tween20を含有する1×PBSを用いてウェストハイランドテリアから得た毛を前処理して汚染を除去し、抗原構造に堅くなく固定した。続いて、ビオチン化抗体B18−4.3(0.8mg/mL)を適用し、ストレプトアビジンコーティングしたFITC蛍光ビーズ(Kisker)を使用して結合している抗体を検出した。ビーズの大きさは、0.8μmであった。さらに、ビオチン化抗体B18−4.3を、ストレプトアビジンコーティングしたFITC蛍光ビーズにカップリングし、複合体を、毛サンプルに適用して結合を分析した(図4a)。
【0050】
実験から、1μmのニュートラアビジンがカップリングしているフルオスフェア(Invitrogen)に負荷されたビオチン化B18−4.3が、ビーグルの毛で、毛が60℃で、300mM KBrを含有するトリスバッファー(pH8.8)を用いる洗浄によって前処理された場合であっても、高結合を示すことがわかる。これは、毛表面での抗原の高安定性を示す(図4b)。
【0051】
2μmビーズの場合には、この効果は、あまりはっきりせず、このことは、添加されたビーズが、毛表面に存在するいくつかの抗体によって結合されていることを示し得る。重要なことに、10μmビーズを用いた実験は陰性であった。ビーズが洗浄手順の際に失われたので、染色が観察されなかった。
【0052】
共焦点顕微鏡による毛サンプルの分析は、抗体は、主に、毛断片の端と結合していることを示した(図5)。
【0053】
抗体結合部位の同定
表1に示される結果は、表面抗原の少なくとも一部は、毛サンプルを穏やかな洗浄剤で洗浄することによって除去され得るということを示す。抗原構造の除去は、抗体結合の減少につながった。しかし、抗体結合は依然として検出可能であり、このことは、抗原の相当な部分が、毛表面と結合したままであるということを実証した。
【0054】
ウェストハイランドテリアの毛を、300mM KBrを含有するトリスバッファー(pH8.8)を用いて洗浄し、この洗浄画分を濃縮した場合、濃縮された毛表面タンパク質(eHSP)の調製物が結果であった。これらのeHSPを、2種の抗体B7.3またはB18−4.3のいずれかを使用してSDS−PAGEおよびイムノブロットによって分析した。結果から、B7.3は、32KDaおよび38KDaの大きさを有する構造と結合するが、B18−4.3は、21KDa、28KDaおよび40KDaの3つのバンドを検出するということがわかる(図6)。したがって、2種の抗体は、異なる特異性を有する。
【0055】
可変抗体鎖のクローニング
モノクローナル抗体の遺伝情報を手に入れるために、抗体結合特異性を決定する可変抗体ドメインをクローニングした。以下の工程を実施した:
・ハイブリドーマクローンからのRNA単離
・cDNAへの逆転写
・PCRによる抗体重鎖および軽鎖に由来する可変領域の増幅
・スプライシングオーバーラップ伸長(splice overlap extension)(SOE)PCRによる短いリンカー断片による両可変ドメインの融合
・一本鎖抗体(scFv)断片の細菌ベクターへのクローニング
・細菌の形質転換
・プラスミド単離および配列決定
【0056】
配列決定によって、scFvB7.3およびscFvB18−4遺伝子の完全性が確認された。
【0057】
ScFvB18−4を、そのイヌ毛との結合について試験した。ELISAによって、単独またはビオチン−アビジンによってビーズにカップリングされたscFvB18−4の、毛サンプルとの結合が実証された。
【0058】
毛特異的抗体B7.3およびB18−4.3の、イヌ、ネコ、ウマおよびヒト毛との結合
各毛サンプルをELISAによって3回測定した。図表は、サンプルの平均および標準偏差を示す。2回のELISAを並行して実施し、各図表は、1回のELISAの結果である。両図表中に同一サンプルが出ている場合には(ウェストハイランドテリア、ヨーロピアンハウスキャット)、1つの毛サンプルを使用して、両ELISAプレートにピペットで入れた。
【0059】
ウェルあたり1mgの毛をピペットで入れた。PBS中、2%(w/v)のミルク粉末を用いてブロッキングを1時間実施した。最初の抗体として、B7.3またはB18−4.3のいずれかを、PBS中、50ng/ml濃度で使用し、ウェルあたり100μlの抗体溶液を使用した。インキュベーションを、室温で1時間実施した。二次抗体は、ペルオキシダーゼにカップリングしたヤギ抗マウス(抗IgG、IgMおよびIgA)とし、抗体はPBSで1:5000希釈し、100μl/ウェルを使用した。インキュベーションを室温で1時間実施した。最後に、各ウェルを100μlの基質ABTSとともに42分間インキュベートした。得られた発色反応の読み取りを405nmで実施した。種々の工程間で、プレートを2回の200μlPBS−Tを用いて洗浄した。対照として、各毛サンプルの3つのウェルを、非特異的マウス抗体とともにインキュベートし、その他の点では、上記のように処理した。同一毛サンプルのB7.3およびB18−4.3を用いた結果から、各対照の平均を差し引いた(図7)。
【0060】
ウマ毛特異的抗体の作製
マウスの免疫化と、それに続くハイブリドーマ技術の使用によってウマ毛特異的抗体を作製した。ウマから得た毛を、PBS−T(1×PBS、Tween20 0.05%)を用いて洗浄し、ホモジナイザーを使用して細かく刻んだ。細かく刻んだ毛は、約200μmの長さであった。
【0061】
2匹のマウスを、洗浄して細かく刻んだウマの毛を用いて免疫化した。最大80μgの毛サンプル(=20μLの細かく刻んだ毛)を、40μLのGERBUアジュバントおよび50μL 1×PBSと混合し、免疫化に使用した。マウスを7月8日、7月22日、8月5日、8月18日、8月26日および9月8日に6回免疫化し、9月10日に屠殺した。脾臓細胞を単離し、骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマを作製した。ポリクローナルハイブリドーマクローンを、上記のELISA設定を用いてウマ毛特異的抗体の産生についてスクリーニングした。1×PBS中の細かく刻んだウマの毛を、低結合96ウェルマイクロタイタープレート上にコーティングした。ハイブリドーマ細胞培養上清を添加した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)にコンジュゲートした二次ヤギ抗マウス(GAM)抗体を使用して特異的抗体の結合を検出した。毛との抗体結合の検出のために、ABTS基質を使用し、30分インキュベーションした後に、405nmでの吸収を測定した。合計21のポリクローナルハイブリドーマクローン(HF1〜21)において、毛サンプルとの結合が同定された。しかし、細かく刻んだ毛をコーティングしたので、毛の内側に存在する抗原との抗体結合および毛表面の抗原との抗体結合の両方が選択され、単細胞をさらに培養し、モノクローナルを作製した。
【0062】
毛表面の構造を認識する結合物質を同定するために、モノクローナルハイブリドーマ株から得た抗体を、マイクロタイター濾過プレートELISAを使用して試験した(抗体結合および機能性pp10参照のこと)。ウマ、イヌ、ネコおよびヒトの毛0.3mgをマイクロタイター濾過プレート上の別個のウェルに加え、試験されるべき各モノクローナルのハイブリドーマ上清100μlとともに並行してインキュベートした。試験は、上記のように実施した。結合している抗体の可視化は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)で標識した二次抗体およびHRPOの基質として2,2’−アジノ−ビス3−エチルベンジアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)試薬を使用することによって達成した。発色は、室温で、30分インキュベートした後に、405nmで測定した。イヌ、ネコおよびヒトの毛と比較して、抗体HF17.6のウマの毛との明確な結合特異性が見られ、低シグナルは、おそらくは、調製物中のわずかな抗体によると思われるが、これは、試験をモノクローナルの選択のわずか2日後に実施し、わずかな抗体産生細胞しか存在していなかったためである。
【0063】
【表2】
【0064】
ネコ毛特異的抗体の作製
マウスの免疫化と、それに続くハイブリドーマ技術の使用によってネコ毛特異的抗体を作製した。ヨーロピアンショートヘアのネコの切断毛を、ホモジナイザーを使用して細かく刻んだ。細かく刻んだ毛は、約200μmの長さであった。
【0065】
2匹のマウスを、細かく刻んだネコの毛を用いて免疫化した。最大80μgの毛サンプル(=20μLの細かく刻んだ毛)を、40μLのGERBUアジュバントおよび50μL 1×PBSと混合し、免疫化に使用した。マウスを、7月1日、7月15日、7月29日、8月12日、8月26日および9月1日に6回免疫化し、9月3日に屠殺した。脾臓細胞を単離し、骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマを作製した。ポリクローナルハイブリドーマクローンを、上記のELISA設定を用いてネコ毛特異的抗体の産生についてスクリーニングした。1×PBS中の細かく刻んだネコの毛を、低結合96ウェルマイクロタイタープレート上にコーティングした。ハイブリドーマ細胞培養上清を添加した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)にコンジュゲートした二次ヤギ抗マウス(GAM)抗体を使用して特異的抗体の結合を検出した。毛との抗体結合の検出のために、ABTS基質を使用し、30分インキュベーションした後に、405nmでの吸収を測定した。合計73のポリクローナルハイブリドーマクローン(C2 1〜73)において、毛サンプルとの結合が同定された。しかし、細かく刻んだ毛をコーティングしたので、毛の内側に存在する抗原との抗体結合および毛表面の抗原との抗体結合の両方が選択された。ネコ毛と選択的に結合する抗体を選択するために、同種のELISAをヒトの毛で6日後に実施した。以下の表中に示される吸光度は、ヒトの毛と比較して、ネコの毛との優れた結合を実証し、このことは、ポリクローナルハイブリドーマクローンにおけるネコ毛特異的抗体の産生を示す。
【0066】
【表3】
【実施例】
【0067】
以下の項では、本発明の有用な実施形態の一例を提供する。イヌ毛と選択的に結合する抗体を介してイヌ毛皮と接着している、薬物を含有する微粒子が、どのように、動物を害虫昆虫、この場合にはマダニ、から、皮膚刺激作用の副作用を伴わずに長期間保護できるかが示されている。
【0068】
動物毛に市販の局所寄生虫駆除製剤を適用する1つのよくある方法として、小容量の薬物含有溶液を、動物の首皮膚に配置する、いわゆる「スポットオン」製剤を使用することがあるが、これは、皮膚に重篤な刺激作用を引き起こすことが多い不利点を有する。害虫昆虫からの保護期間は、例えば、マダニの場合には、通常、4週間に制限されている。これは、分子状に分散したダニ駆除薬を含むその他の種類の製剤にも当てはまる。
【0069】
抗体の独特の特性−毛との種選択的結合−は、抗体が微粒子の表面にカップリングされるようになる場合に維持されるということがわかる。マダニに対する有効性[アカリジド(akarizide)有効性>90%]は、最小3〜4週間持続することが実証されている。さらなる4週間、低下した有効性>70%が見られ、粒子の持続した放出特性によるものであり得る。また、抗体を、微粒子の表面上の官能基と連結する有用な方法および動物毛皮への適した適用方法が記載される。
【0070】
A)薬物を含有する微粒子の組成物および製造
粒子は、ポリマーからなる。それらは、その大きさが1〜10μmの間であるので毛皮上では目に見えない。有効成分は、被包され、拡散によって継続的に放出される。放出は、粒子設計(ポリマーの種類、分子量、添加剤)によって幅広く制御できる。粒子表面は、抗体の連結に必要である官能基、例えば、アミンまたはカルボキシルで修飾する。
【0071】
好ましい一実施形態では、粒子は、溶媒蒸発技術によって配合される。したがって、有効成分は、この実施例には、ピレスロイドフルメトリン(3−[2−クロロ−2−(4−クロロフェニル)エテニル]−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸シアノ(4−フルオロ−3−フェノキシフェニル)メチルエステル、CAS Nr.69770−45−2)であり、ポリマー、この場合には、ポリスチレンを、ジクロロメタンに溶解する。ポリスチレンと適合性(混和性)である乳化剤、共重合体含有ポリマーセグメントおよびまた、親水性乳化部分として働くカルボン酸基COOHを水に分散させる。次いで、油相をUltra Turraxスターラーの助けを借りて水に分散させ、混合物をMicrofluidizerを用いてホモジナイズする。液滴の大きさは、顕微鏡によって制御する。pHは、乳化を促進するようアルカリの範囲に設定してよい。次いで、エマルジョンを、撹拌しながら最大60℃に加熱する。その温度で、ジクロロメタンは蒸発する。エマルジョンが懸濁液に変わり、遊離COOHが親水性表面を提供する。粒子の大きさは、マスターサイザーによって制御してよい。有効成分の量を、HPLCによって分析する。所与の実施例の場合には、固体ポリスチレン微粒子中のフルメトリン含量は、18% m/mである。この種の微粒子に製剤コード7c_6+7_EEを与える。
【0072】
蛍光色素、この場合には、Uvitex[2,5チオフェンジイルビス(5−t−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)、CAS番号7128−64−5、435nm]が負荷された微粒子を同様の方法で作製する。有効成分は色素と置き換えられる。これらの粒子の機能は、微粒子の毛皮との抗体媒介性結合を可視化することであるが、これは、それらが蛍光顕微鏡を用いて容易に検出されるからである。
【0073】
もう1つの実施形態では、微粒子は、浸漬法によって負荷される。表面COOH基で修飾された、ポリスチレン微粒子15%分散物10mlに、適当な量のフルメトリンを含有するジクロロメタン相2.4mlを加える。周囲室温で24時間の振盪を続ける。その後、溶媒ジクロロメタンを、減圧下(150〜50mbar)で蒸発させる。分散物を繰り返し遠心分離し、ペレットをエタノール/水混合物で洗浄して、被包されていない、表面に結合しているフルメトリンを除去する。新たに遠心分離した後、ペレットを水に再分散させ、凍結乾燥する。BU163をコードされた微粒子は、9%m/mの薬物を含んでいた。
【0074】
B)抗体の、微粒子の表面との連結
毛特異的抗体の、薬物デリバリー粒子とのカップリングは、以下の方法によって達成した。
【0075】
カルボン酸塩修飾した粒子を、特定の量のN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC;2mM)を添加することによって活性化する。次いで、活性化型を、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS;5mM)を添加することによって安定化する。活性化されたエステル複合体は、抗体に由来する第一級および第二級アミンと反応して、粒子と抗体間に共有結合性のアミド結合を生じる。微粒子タイプ7c_6+7_EEの場合には、2.18% m/V溶液80mlを、69.6mgの抗体混合物(B7.3/B18−4.3の比=1:1)を含有する抗体溶液29mlと混合した。BU163を、同様の方法で抗体を備えるようにした。
【0076】
本方法は、文献に記載されている(Hermanson, G.T.: Bioconjugate techniques. Academic press, San Diego, 1996)。
【0077】
C)微粒子の、イヌ毛皮との特異的な抗体媒介性カップリング
抗体を備えた微粒子が、イヌ毛皮と特異的に結合するという証拠は、有効成分の分光学的検出によって与えられる。マルチウェルプレートに、等量(mg)のイヌおよびヒトの毛を部分的に入れる。ウェルの底は、30〜40μmのポアサイズを有するフィルターである。次いで、それらの毛を含有するウェルに、抗体保持微粒子7c_6+7_EEを含有する懸濁液を入れる。次いで、マルチウェルプレートを遠心分離し、上清分散物を30〜40μmポアを通して圧迫することによって、液体および結合していない粒子のすべてを除去する。粒子の大きさは、わずか1〜10μmであるので、毛と結合していない粒子は、フィルターを通過する。毛での粒子結合は、ウェルの内側の毛と接着しているままである。毛を、0.05% Tween20を含有するバッファーで5回洗浄する。各洗浄の後に、遠心分離によってバッファーを再度除去する。この後、薬物を溶解するが、毛またはマルチウェルプレートの材料を溶解しないアセトニトリルをウェルに加える。アセトニトリルは、被包された全薬物を微粒子から抽出する。有効成分の定量的回収は、HPLCによってよりも早く証明された。次いで、ウェルの底で、ポアのない透明なマルチウェルプレートを、毛を含有するマルチウェルプレートの下に入れる。それは、極めてわずかなUV吸収度しか示さないポリマーからなる。アセトニトリルを遠心分離して、透明なマルチウェルプレートのウェルに入れる。アセトニトリル溶液中の有効成分は、268nmのUV光によって検出できる。較正後、UVリーダーは、ウェル中に存在する薬物の量を検出でき、したがって、間接的に、微粒子の、イヌまたはヒトの毛との接着を証明する。多くの微粒子が毛に連結されるほど、UVシグナルはより強い。この相関は、直線的依存型である(図8)。
【0078】
プロット(図8)は、相当な量の抗体を備えた微粒子の、イヌ毛との結合を証明する。イヌ毛は7種の異なる品種(ジャーマンシェパード、コリー−シェパード、テリア、スピッツ、シュナウツァー−ラブラドール、雑種、コリー、n=3)から採取した。対照的に、少量の微粒子しかヒト毛(3人の異なる女性、未処置の、染色されていない毛、n=3)と結合せず、このことは、微粒子の表面に結合されるようになった場合の抗体活性物質毛結合ドメインの種選択性の保存を証明する。また、抗体の、動物毛との結合強度は、バッファー溶液を用いた少なくとも5回の洗浄サイクルで持続するのに十分なほど強いということも実証される。
【0079】
機器:ELISA:Synergy(商標)HT、BioTek;顕微鏡:Biozero BZ−8100E、Keyence
【0080】
C)噴霧製剤としての動物毛皮への適用
製剤の1つの有用な実施形態では、抗体を備えた薬物含有微粒子を、動物の毛皮に噴霧製剤として適用する。
【0081】
所与の実施例では、体重1kgあたり6mgの被包されたフルメトリンをイヌに適用する。ビーグル犬は平均11kgの重量である。したがって、367mgの抗体を備えた、66mgのフルメトリン−微粒子中の薬物濃度は18%m/mであるので−を含有する微粒子7c_6+7_EEを、動物に適用する。粒子の有効成分濃度および必要とされる薬物の量に応じて、この値は変わる。微粒子BU163には、薬物含量が9% m/mであるので733mgを使用する。100mgの蛍光粒子および薬物が負荷された微粒子の算出量を、適した量の水に分散させる。この実施例の場合には、30mlの水を使用する。脂肪質である場合があるイヌ毛での製剤の拡散を促進するよう、少量の界面活性剤(この実施例では、0.01% Tween20)を加える。分散物を、粒子懸濁液を噴霧するのに適した、ポンプスプレーヘッドを取り付けた一般的な瓶に入れ、弁を遮断せず、使用する準備が整う。
【0082】
分散物を、イヌの毛皮全体にむらなく噴霧し、これによって、イヌ毛への微粒子の均一な分布が可能となる。
【0083】
E)In vivo研究:イヌでのマダニ[クリイロコイタマダニ(Rhipicephalus sanguineus)]に対する有効性
本研究の目的は、実験的にクリイロコイタマダニを寄生させたイヌ上で、抗体を介してイヌ毛皮に結合している、フルメトリンを負荷した微粒子を含有する2種の異なる噴霧製剤のマダニに対する有効性評価することであった(表4)。
【0084】
この研究には、各3匹のイヌの3群で9匹のイヌを含めた。各イヌを、全研究期間の間、個々のケージに収容した。
【0085】
研究日(SD)−1に、すべてのイヌを、約0.1ml/kg BWの塩酸キシラジン(キシラジン(登録商標)2%)i.m.と組み合わせた、約0.1ml/kg BWの塩酸ケタミン(ケタミン(登録商標)10%)を用いて鎮静させた。鎮静の間、すべてのイヌを、床の上に胸を地につかせて、または横向きに置き、50匹のクリイロコイタマダニのマダニ(25匹の雄、25匹の雌)を、イヌの背中の上に放した。イヌは1時間〜1.5時間眠っていたので、マダニを、それらが接着できる前に取り除こうとするのが抑えられた。
【0086】
SD0に、全身体表面:頭部、耳、首、側面の領域、肩甲骨から尾の付け根までの背側のストリップ、尾および肛門部、前肢および肩、後肢、胸から後肢の内側までの腹部、足のインテンシブアドスペクション(intensive adspection)/触診によって、マダニを除去せずにマダニ寄生率を調べた。すべての生存し付着している雌のマダニを計数し、マダニ数に基づいて、イヌを3つの研究群に無作為に割り当てた。
【0087】
0日目にマダニを計数した後、処置を実施した。対照群のイヌは、未処置のままにし、陰性対照群として用いた。2つの処置群のイヌには、IVP(開発中の動物用製品)を用いて1回投薬した。各IVPは、30mlの容量を有しており、有効成分として66mgのフルメトリンを含んでいた。各イヌには、体重にかかわりなく総量30mlを与えた。イヌを立たせながら、各イヌにIVPを用いて体全体にかけてむらなく噴霧した。
【0088】
【表4】
【0089】
処置の当日(研究日SD0)に、イヌを処置の2時間および4時間後に有害事象について観察した。すべてのイヌは、処置に対して十分に耐容性を示した。SD2に、SD0と同じ方法でマダニカウントを実施し、ただし、マダニを除去した。マダニを、遊離しているか接着している、充血しているか、充血していない、生存しているか、死亡しているマダニと同定した。一定の間隔で、各イヌを同じ方法で再寄生させ、48時間後に、記載したようにマダニ計数を実施した。選択した間隔は、処置の1、3、7および9週間後であり、例えば、SD5、20、48および61にマダニ寄生を行い、2日後のSD7、22、50および63にマダニを計数した。
【0090】
さらに、各マダニ計数日(寄生の48時間後)に、一定間隔で各イヌの100mgの毛を採取した。毛皮サンプルを、イヌの全体:肩、背中、尾の起始部から臀部から採取し、蛍光顕微鏡によって調べた。製剤の投与後2、7、14、42および63日目に毛サンプルを採取した。
【0091】
マダニ計数手順の間に、すべてのイヌで詳細な全体的な健康の観察を実施した。皮膚刺激には特別な注意を払った。全研究期間の間、処置による皮膚刺激は観察され得なかった。
【0092】
マダニ数を使用して、IVPの有効性を評価した。ガイドラインEMEA/CVMP/005/00−Finalに記載される制御試験のための推奨にしたがって、改変Abbott式を用いて有効性パーセントを算出した:
有効性%=(N2−N1)/N2×100
N1=IVPで処置した群の幾何平均マダニ数
N2=対照群の幾何平均マダニ数
【0093】
「マダニ数」は、「処置失敗を表すマダニ」と定義される。処置有効性を決定する場合には(SD2)、生存マダニのみを処置失敗と考えたが、予防有効性を決定する場合には(すべての残存する計数時点)、生存マダニおよび死亡した充血したマダニを処置失敗と考えた。
【0094】
有効成分は、処置および毎週の再寄生の48時間後に>90%の有効性が達成される場合に高度に有効であると見られる。有効性は3〜4週間にわたって与えられるべきである。
【0095】
【表5】
【0096】
3〜4週間の期間にわたって90%を超える有効性を示す最小の目的は、達成された(表5)。粒子中の高濃度のフルメトリンを考えると、この適用形態は、動物を皮膚刺激作用から明確に保護する。
【0097】
処置の50日後、低下した有効性は、それでも注目に値する。≧50日の研究期間後の微粒子からのフルメトリンの放出は、動物の皮膚でフルメトリンの活性物質レベルを維持するのに十分でない場合がある。試験の最初の数週間のより良好な保護は、特定のパートの遊離フルメトリンおよびマトリックスの内側の高いフルメトリン濃度による初期相における粒子からの高い拡散率に起因し得る。
【0098】
蛍光イメージングによって、微粒子とイヌの毛皮の持続性の接着を検出することができる。微粒子が、実験の全期間、抗体結合によって毛と接着したままであることがわかる(図9〜13)。蛍光色素で印をつけた粒子は指標として働くだけであり、製剤中の微粒子の総数の20%にしか相当しないということは留意されたい。時間とともに、より少ない粒子しか検出できず、これは、一部には、それらが落ちたためであり、一部には、蛍光色素が、日光に対する持続する曝露のために褪せるためである。
【0099】
F)実施例から得た結論
記載された実施例は、本発明の1つの高度に有用な実施形態を実証する。広い範囲にわたって薬物の放出を制御するのに適している薬物含有微粒子の、動物毛(この場合には、イヌ毛)と特異的に結合する抗体を用いた備え(equipment)。本発明のこの適用には、複数の利点がある:
−寄生虫駆除剤を特定の哺乳類種にターゲッティングさせ、したがって、製剤が適用される場合に、または種々の種が、例えば、遊ぶまたはなめることによって相互作用する場合に、交差適用または、例えば、ヒトもしくはその他の哺乳類種への薬物移動の危険を大幅に低減することを可能にする。
−薬物が動物の毛皮に方向付けられ、それによって、皮膚と大きく接触するのを避けるのを可能にし、これが皮膚刺激作用または重篤な皮膚損傷の可能性を低減する。
−COOH、NH2またはその他の基を介して、単一種特異的抗体と、種々の微粒子表面を連結し、微粒子を毛皮に配置するという原則の普遍性によって、単一製剤のために、種々の異なる微粒子の種類(種々の放出プロフィールを有する種々の薬物を含有する種々のポリマー)を選択することが可能となる。分散物中の種々の種類の微粒子の組み合わせ、それによって、さもなければ化学的に適合しない場合もある薬物を単一製剤中に組み合わせることを許可する。
−適当な薬物放出プロフィールを有する、適した微粒子の使用によって、粒子および薬物の種類に応じて薬物の有効性を数週間または数カ月に延長し(extent)、それによって、よくある局所適用される液体駆除剤およびその他の薬物製剤の有効性期間をかなり延長する可能性を提供することが可能になる。
−微粒子の、動物毛との接着は、例えば、動物が雨天において歩き回る場合、または池でしばらく泳いでいる場合の、水との強い接触またはさらには穏やかな洗浄であっても、打ち勝つのに十分強力である。この場合には、通常の製剤は、新たな適用を頻繁に必要とする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の毛と選択的に結合する抗体および特定の製剤を動物毛に方向付けることができる抗体ベースの薬物デリバリーシステムを提供する。これは、動物外寄生生物治療の有効治療期間を増大する必要性、これらの薬物の毒性を低減する必要性およびそれらの放出プロフィールを改善する必要性によって推進されている。
【0002】
イヌ毛の表面に対して高結合を示す2種のモノクローナル抗体を選択した。重要なことに、ヒト、ウマまたはネコ毛に対する結合は、検出可能でなかった。本明細書に示されているデータは、選択した抗体が、薬物を動物毛に方向付けるデリバリーシステムを設計するのに適していることを実証する。
【背景技術】
【0003】
抗体の、毛構造との接着または連結、およびヘアトリートメント活性物質またはヘアトリートメント活性物質を含有する粒子を連結するためのそれらの抗体の有効利用は、随分前から当技術分野で知られている。Widder(米国特許第3,987,161号)は、その動物の体が、哺乳類毛、好ましくは、ヒト毛の水性懸濁液で注射された場合に、血中に抗体を形成できる動物から得られた血清を含有する抗体を含むヘアケア製品を記載している。Igarashi et al.(米国特許第5,597,386号)は、着色物質を含有する、毛髪染料またはポリマー粒子、例えば、ポリスチレン粒子を保持し、したがって、ヘアトリートメントにおける利益を得るよう、着色活性物質をヒト毛に結合する抗毛抗体を記載している。抗体は、哺乳類へのケラチンポリマーの筋肉内注射によって、初乳によって抗体を得ることによって得られた抗ケラチン抗体として記載されており、ここで、ケラチンは、ヒト毛構造の加水分解および溶解後に得られた。染料保持粒子は、高分子担体として記載されている。Koyama et al.(米国特許第6,123,934号)は、毛と結合する抗体を含有し、この抗体の使用によって、ビニルモノマーのポリマーまたは共重合体のラテックス粒子を毛構造と連結する化粧用組成物を記載している。これらの製剤は、毛構造を改善または修復するための、カチオンポリマーまたはその他の成分を含み得る。この発明では、抗体は、加水分解されたヒト毛または毛繊維構造全体を粉末化することによって得られたヒト毛の粒子の注射によって家禽を免疫化することによって得られている。それらの発明のすべてにおいて、免疫化のためにヒト毛構造が使用され、ケラチン結合性ポリクローナル抗体が得られている。一般に、抗体は、生物学的抗原構造を用いて哺乳類または鳥類を免疫化することによって作製でき、次いでこれらを、必要な領域、例えば、癌細胞に、それらの抗体と直接的にまたは間接的に連結している有益な活性物質を方向付けるために使用できることがわかっている。
【0004】
Paluzziおよび共同研究者(2004)は、種特異的モノクローナル抗体を製造するための抗原として、カシミヤから得たII型ケラチンを使用した。選択された抗体を、カシミヤおよび羊毛から単離したケラチンとの免疫反応性について2次元免疫ブロット法によって試験した。その他の動物繊維と比較した場合にカシミヤの種同定を可能にする、いくつかの定量的および定性的な相違が検出された。しかし、選択されたモノクローナル抗体は、試験された種の間では、すべてのサンプルと結合し、シグナル強度およびタンパク質パターンのわずかな相違しか観察されなかった。重要なことに、抗体は、抽出されたケラチンI型およびII型タンパク質と結合し、毛表面との結合は実証されていない。
【0005】
獣医学の分野では、有益な薬剤を含有する粒子を使用することによって、また動物毛または動物皮膚結合性抗体を使用することによって、それらの薬剤を毛のケラチン構造に、あるいは皮膚構造にターゲッティングすることによって、それらの発明から利益を得ることができる。これは、それらの薬物を長期間、すなわち、数週間、数カ月または1年でさえ放出し得る本体としてこれらの粒子を使用する選択肢、したがって、動物を害虫動物、すなわち、昆虫、例えば、ノミおよびマダニから保護すること、またはその他の有益な効果を活用すること、例えば、有害昆虫を忌避すること、またはこの長期間の間、皮膚疾患を治癒することを考慮する場合に特に有用である。この目的のために設計される通常の製剤は、数時間から約4週間、有益な効果を示す1回の適用として調製される。ポリマー粒子のような担体システムを使用することによって、この期間を相当に延長する選択肢が提供され得る。それらの粒子を毛と連結する抗体を使用することは、薬物担体が毛または皮膚に必要な期間固着するのを可能にするのに十分持続可能な、活性物質と毛の連結を提供する選択肢を提供し得る。適した製剤が必要である。動物にそれらの製剤を適用するのに有用であり得る適用システムとして、例えば、製剤を動物皮膚または毛皮と接触させる、噴霧剤またはいわゆるスポットオン製剤もしくはワイプオン製剤がある。注目する活性物質は、例えば、ピレスロイドまたは殺虫剤一般、ならびに全身薬または行動改変剤であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許において記載される方法は、このような薬物デリバリーシステムへのアクセスを提供し得る。しかし、それらの発明に記載の抗体および記載の方法によって得られる抗体は、毛のケラチン構造と結合するので、1つの主要な不利点は、噴霧剤またはスポットオン製剤を介して動物に製剤を適用することによって、存在する種にかかわらず、哺乳類毛、すなわち、ケラチン構造との強力な、持続した結合が得られるであろうということであると思われる。したがって、適用を行っている人もまた、偶発的に、それらの薬物保持システムを体毛または頭髪と結合させることによって、活性物質の投与を受け得る。また、動物を撫でることによって、それらの薬物保持活性物質のヒト身体への伝達があり得、これによって、ペット所有者は、時には攻撃的な活性物質、例えば、ピロスロイド(pyrothroid)に曝露し得る。適用の安全性の理由で、特定の動物種の毛または皮膚を選択的に標的とすることができる抗体を得ることができれば大きな利点となるであろう。また、複数の種が維持されている家畜小屋において獣医がそのような製剤を使用しなければならず、1つの種のみが治癒されるべき疾患を示す場合、または1つの種のみが種特異的有害生物から保護されなければならない場合に利用可能なこのような種類の抗体製剤を有することは、相当に有利である。
【0007】
動物毛に対する抗体を得るために上記の従来技術を使用する場合には、当業者は、ケラチン構造と結合する抗体を得ることを期待するであろう。ケラチンは、すべての哺乳類にとって一般的であり、異なる種間のタンパク質配列は、多分に保存されている。したがって、抗ケラチン抗体は、哺乳類毛一般と結合するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、驚くべきことに、種特異的動物毛表面構造とのみ結合し、ヒト毛表面またはその毛が免疫化に使用されたものと異なる種の毛表面とは結合しない種特異的毛結合抗体を得ることができることを見い出した。それらの抗体によって標的とされ得る種特異的抗原構造が存在することは明らかである。それらの抗体と、分子的実体としてそれらの抗体と連結しているか、または薬物含有粒子中に詰められた薬物を含む薬物保持製剤は、上記の不利点を回避することができる。
【0009】
発明の態様の説明
本発明は、動物の毛の表面と選択的に結合する抗体を提供する。
【0010】
このような抗体は、ハイブリドーマ細胞、合成、半合成、ナイーブおよび免疫担当ファージライブラリーまたはリボソームディスプレイライブラリー由来である、または完全合成デザイナー抗体の作製による、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または全長抗体、二量体分泌型IgA、多量体IgMなどの組換え抗体、およびF(ab’)2断片、Fab断片、Fv断片、一本鎖Fv抗体(scFv)、二重特異性scFv、ダイアボディー、トリアボディー、テトラボディー、ディングル(dingle)ドメイン抗体(dAb)、ミノボディー(minobody)または分子認識単位(MRU)などの、それらの断片を含む群から選択される。
【0011】
本発明の抗体は、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ラマおよび/またはウマの毛の表面構造と選択的に結合する。
【0012】
本発明は、個々の動物種を標的とする薬物デリバリーシステムであって、前記の個々の動物種の毛表面と選択的に結合する能力を有する抗体を含む薬物デリバリーシステムをさらに提供する。
【0013】
前記デリバリーシステムは、固体粒子の表面と結合または接着しており、それによって、これらの粒子を動物毛表面構造に選択的に結合させる抗体を含む。
【0014】
本発明の薬物デリバリーシステムは、第1の工程で、抗体が、個々の種の動物毛と選択的に結合し、第2の工程で、粒子が、動物毛とカップリングしている抗体と結合されるような様式で、前記の個々の種の動物毛と選択的に結合する抗体と、有効成分を含有する粒子との製剤を含む。
【0015】
さらに、本発明の薬物デリバリーシステムは、第1の工程で、抗体を保持する適したスペーサー/媒介物/中間体カップリング剤が、前記抗体を介して動物毛と選択的に結合されるようになり、第2の工程で、粒子が、前記スペーサー/媒介物/カップリング剤との結合によって動物毛と連結されるようになるような様式で、上記スペーサー/媒介物/中間体カップリング剤と連結または化学的に結合された、動物毛結合抗体と、粒子との製剤を含む。
【0016】
本発明は、第1の工程で、抗体が動物毛と選択的に結合し、第2の工程で、適したスペーサー/媒介物/中間体カップリング剤を保持する粒子が、前記抗体との結合によって動物毛と連結されるような様式で、動物毛結合抗体と、その表面に上記スペーサー/媒介物/カップリング剤が連結または接着されている粒子との製剤を含む薬物デリバリーシステムをさらに提供する。
【0017】
本発明の薬物デリバリーシステムは、抗体および粒子が、動物に適用される単一製剤中に存在し得るか、または動物への適用の直前に混合されるようになる2種の異なる製剤(I)および(II)中に存在し得るような様式で、あるいは、第1の工程で製剤(I)が動物に適用され、直後に、第2の工程で製剤(II)が動物に適用されるような様式で、2種の異なる製剤(I)および(II)中に存在し得る、動物毛と選択的に結合する抗体と、粒子とを含む。
【0018】
薬物デリバリーシステムは、動物にとって有益な有効成分または薬剤、すなわち、処置が適用される動物と相互作用する薬物、殺虫剤、ヘアまたはスキンケア物質、処置された動物を有害な害虫動物、例えば、昆虫による攻撃から保護する忌避物質、臭い改変剤、または処置された動物もしくはその他の処置されていない個々の動物の行動を改変する薬剤を含むか含まない場合がある粒子を含む。
【0019】
粒子は、その治療目的または有益な目的にとって適した濃度、すなわち、0.01%〜99.9%で動物にとって有益な有効成分または薬剤を含み得る。
【0020】
本発明の薬物デリバリーシステムは、粒子自体が、動物にとって有益な有効成分または薬剤、すなわち、処置が適用される動物と相互作用する薬物、殺虫剤、ヘアまたはスキンケア物質、処置された動物を有害な害虫動物による攻撃から保護する忌避物質、臭い改変剤、または処置された動物もしくはその他の処置されていない個々の動物の行動を改変する薬剤を含むシステムである。
【0021】
粒子は、0.001μm〜10μm、好ましくは、0.1μm〜2μmの直径を有し得る。
【0022】
本発明の薬物デリバリーシステムによって、動物に単一処置を適用した後に、疾患からの前記動物の保護、動物疾患の継続処置が可能であり、または、動物が前記活性物質の効果から長期間、すなわち、数時間〜365日の範囲、利益を受けることが可能になる。
【0023】
本発明の薬物デリバリーシステムは、動物にとって有益な薬剤が、動物毛と選択的に結合する抗体と直接的または、スペーサー/媒介物/カップリング剤を介してのいずれかで連結/カップリング/結合しているような様式で、前記抗体と、有益な薬剤の製剤をさらに含み、それは、前記活性物質と前記抗体またはスペーサー/媒介物/カップリング剤との連結が、動物の毛皮または皮膚の環境条件によって破壊されるようになり、その結果、活性物質または活性物質の一部または活性物質−抗体構造の一部を放出し、動物にとって有益なその効果を発揮するような様式である。
【0024】
上記薬物デリバリーシステムは、抗体またはスペーサー/媒介物/カップリング剤との活性物質の結合の破壊が、長期間不規則に起こり、疾患からの前記動物の保護、動物疾患の継続治療を可能にするか、または動物が前記活性物質の効果から長期間、すなわち、数時間〜365日の範囲、利益を受けることを可能にするような様式で作用する。
【0025】
本明細書に記載される薬物デリバリーシステムは、動物毛と特異的に結合する抗体または前記抗体の製剤を含み、ここで、前記抗体は、抗体の量および動物毛と結合する前記抗体に接着している有効成分の量が、例えば、水浴びまたは雨ざらしになることによって動物毛皮が水と数回接触した後であっても、または動物が界面活性剤含有溶液で洗浄された後であっても、所望の有益な効果を長期間維持するのに十分に多いままであるような適した結合強度で動物毛と結合する。
【0026】
本発明による抗体は、最大24時間の期間、水および最大50%の有機水混和性溶媒を含有する溶液中、4℃で維持される場合であっても、動物毛に対するその選択的結合能および特異性を維持できる。
【0027】
抗体はさらに、典型的にはヘアケア製剤中に添加される濃度のその他のヘアトリートメント化合物、すなわち、界面活性剤、非イオン性、アニオン性またはカチオン性ポリマーおよび水混和性アルコールを含有する水溶液中に製剤または維持される場合であっても、動物毛に対するその選択的結合能および特異性を維持できる。
【0028】
好ましい一実施形態では、薬物デリバリーシステムは、さらに、固体粒子の表面と、直接的または適したスペーサー/媒介物/中間体カップリング剤を介してのいずれかで結合または接着しており、それによって、これらの粒子を動物毛に選択的に結合させる、本発明の抗体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、ヒトおよびイヌ毛での、抗体B7.3およびB18−4.3の結合を示す。1ウェルあたり1mgの毛に5ngの抗体を用いるマイクロタイタープレート濾過ELISAを使用した、モノクローナル抗体と種々の犬種の毛との、およびヒト毛との結合。西洋ワサビペルオキシダーゼにカップリングしているヤギ抗マウスFcと、ABTS基質とを用いた検出。すべてのサンプルを、3連で分析し、標準偏差を算出した。WHT:ウェストハイランドテリア
【図2】図2は、2種の抗体B7.3およびB18−4.3のSDS−PAGEのイムノブロットである。抗体B7.3は、重鎖および軽鎖の予測される大きさを示すが、抗体B18−4.3は、B18−4.3の重鎖の遺伝子における突然変異によって引き起こされる2種の短い重鎖断片を有する。
【図3】図3は、アビジン表面を有するビーズに負荷されたビオチン化B18−4.3のフローサイトメトリーグラフを示す。赤色のライン(2番目のピーク)は、B18−4.3に結合したヤギ抗マウスフィコエリトリンによって引き起こされたシフトを示し、このことは、抗体がビーズと結合したことを示す。
【図4】図4は、抗体B18−4.3を介した蛍光ビーズとイヌ毛の結合を示す。a:ウェストハイランドテリアの毛と、ビオチン化B18−4.3を介して結合している、0.8μmストレプトアビジン表面修飾ビーズ(FITCとカップリングされている)。b:300mM KBrを含有するトリスバッファー(pH8.8)を用いて、60℃で洗浄することによって前処理した、ビーグルの毛と、ビオチン化B18−4.3を介して結合している、1μmニュートラアビジンがカップリングしているフルオスフェア。
【図5】図5は、共焦点顕微鏡による毛の分析を示す。抗体B18−4.3は、主に毛断片の端と結合していた。ヤギ抗マウスAlexa488による検出。
【図6】図6は、抗体B7.3およびB18−4.3によって認識される抗原構造の分析を示す。300mM KBrを含有するトリスバッファー(pH8.8)を用いて、ウェストハイランドテリアの毛を洗浄し、この洗浄画分を、アセトン沈殿によって濃縮した。濃縮された毛表面タンパク質(eHSP)を、イムノブロットによって分析した。一次抗体B7.3またはB18−4.3と、それに続くヤギ抗マウスAP標識二次抗体およびNBT/BCIPを用いる染色によって抗原を検出した。
【図7】図7aおよびbは、イヌ、ネコ、ウマおよびヒトの毛に対する毛特異的抗体B7.3およびB18−4.3の結合を示す。
【図8】図8は、ヒト毛との貧弱な結合と比較した、抗体を備えた微粒子の、イヌ毛との強い結合を実証する。
【図9】図9は、ビーグル犬の毛との結合時における、イヌ毛特異的抗体B18−4.3およびB7.3の混合物がそれらの表面と連結しており、蛍光色素を含有するポリスチレン微粒子を示す。色素含有微粒子は、結合指標として使用され、ダニ駆除薬を含む同じ種類の微粒子とともに投与されるようになる。この実験は、マダニからイヌを保護するための、種特異的毛結合抗体および制御放出薬物担体としての抗体を備えた微粒子の例示的使用を示すために実施した。像は、マダニでのイヌの寄生の2日後に対応する、適用後に直接とられた、いくつかの毛サンプル上の結合微粒子を示す。
【図10】図10は、製剤の適用の7日後にイヌ毛と結合するときの微粒子を示す。
【図11】図11aおよびbは、製剤の適用の14日後にイヌ毛と結合するときの微粒子を示す。
【図12】図12a、bおよびcは、投与の42日後でさえ、イヌ毛上で微粒子が依然として目に見え、イヌ毛と微粒子の抗体媒介性結合の持続を証明することを実証する。
【図13】図13は、イヌ毛への製剤の投与の63日後でさえ、毛表面上で微粒子が依然として目に見えることを実証する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
モノクローナル毛特異的抗体の作製および選択
マウスの免疫化と続くハイブリドーマ技術の使用によって、動物毛特異的抗体を作製した。ビーグルから得た切断毛を、ホモジナイザーを使用して細かく刻んだ。細かく刻んだ毛は、約200μmの長さであった。
【0031】
2匹のマウスを、細かく刻んだビーグルの毛を用いて免疫化した。最大80μgの毛サンプル(=20μLの細かく刻んだ毛)を、40μLのGERBUアジュバントおよび50μLの1×PBSと混合し、免疫化に使用した。マウスは、10月11日、10月25日、11月3日および11月28日に4回免疫化し、12月2日に屠殺した。脾臓細胞を単離し、骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを作製した。96ウェルマイクロタイタープレートに、細胞を、種々の希釈度でピペットで入れることによって制限希釈を実施した。毛特異的抗体を産生するハイブリドーマクローンについてスクリーニングするために、新規ELISA設定を確立した。部分溶解した毛(室温で、Shindai試薬中10分と、それに続くホモジネーションおよび炭酸バッファー中での再懸濁)を、低結合性96ウェルマイクロタイタープレート上にコーティングした。ハイブリドーマ細胞培養上清を添加した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)にコンジュゲートしている二次ヤギ抗マウス(GAM)抗体を使用して特異的抗体の結合を検出した。毛サンプルと結合する合計23のポリクローナルハイブリドーマクローン(B1〜23)を同定した。しかし、部分溶解された毛をコーティングしたので、毛の内側に存在する抗原および毛表面の抗原と結合する抗体の両方が選択された。
【0032】
毛表面の構造を認識する結合物質を同定するために、モノクローナルハイブリドーマ株から得た抗体を、エッペンドルフベースのELISAを使用して試験した。20〜50のヒトまたは動物毛を、1滴の接着剤を用いてエッペンドルフ管の底に固定し、非特異的結合部位を、PBS中2%(w/v)BSAでブロッキングした。ハイブリドーマ上清または10μgの精製モノクローナル抗体を、管に移し、室温で30分間インキュベートした。洗浄後、ヤギ抗マウス二次抗体(HRPOで標識した)および室温で20分間のインキュベーションを使用して特異的結合を検出した。最後に、HRPOの基質として2,2’−アジノ−ビス3−エチルベンジアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)試薬を使用して結合を可視化した。発色を30秒後にOD405で測定した。
【0033】
エッペンドルフベースのELISAによって2種のモノクローナル抗体を同定した。動物毛の表面に対して特異的結合を示す、B7.3およびB18−4.3と名づけられたこれらの抗体を精製し、種々の毛サンプルに対するその特異性に関して特性決定した。
【0034】
モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体B7.3およびB18−4.3を、プロテインGによって、あるいは、限外濾過の沈殿によってハイブリドーマ培養上清から精製した。精製されたタンパク質の収率は、0.1〜1.1mg/mLの範囲であった。精製された抗体を、その後のアッセイに使用した。
【0035】
モノクローナル抗体の特性決定
抗体結合−エッペンドルフベースのELISA
精製されたモノクローナル抗体B7.3およびB18−4.3の、毛表面との結合を定性的に確認するために、エッペンドルフベースのELISAを使用した。抗体B7.3およびB18−4.3は、特異性を有してヨークシャテリアの毛と結合する。重要なことに、ヒト毛との結合は検出されなかった。
【0036】
以下の毛サンプルを使用して、いくつかのさらなるエッペンドルフベースのELISAを実施した:ヒト、ウマ、ネコ、シュナウツァー/ラブラドール雑種、オーストラリアンシェパード、洗浄前後のプードル(3サンプル)、洗浄前後のヨークシャテリア(4サンプル)、洗浄前後のウェストハイランドテリア(2サンプル)。
【0037】
エッペンドルフベースのELISAの概要が、表1に示されている。データは、両モノクローナル抗体が、5種のイヌ種から得た毛の表面と特異的に結合することを示す。ヒト、ウマまたはネコの毛が使用された場合には、結合は観察されず、このことは、選択された抗体の、イヌ毛に対する強い特異性を示す。モノクローナル抗体B18−4.3は、B7.3よりも、イヌの毛に対してより強い結合活性を有するようである。種々の毛サンプル間にはいくらかのわずかな変動が存在する。ELISAの実施の前の毛処理によって、すべての試験された抗体の結合活性が低下するが、結合している抗体は依然として存在している。
【0038】
【表1】
【0039】
抗体結合および機能性
2種の抗体B7.3およびB18−4.3の、毛との結合を定量的に比較できるよう、別の種類のELISAを確立した。イヌ毛を2〜5mm長の断片に切断し、PBS(5mg/ml)に溶解した。この懸濁液200μlを、96ウェルマイクロタイター濾過プレート(Multiscreen HTS、メンブレンポアサイズ1.2μm、Millipore)の各ウェルにピペットで入れた。マイクロタイター濾過プレート中の毛がこれらの手順で減少しないよう、遠心分離によってバッファーおよび基質交換を行う。
【0040】
予備実験で、1mgの毛(=ウェル)と結合している抗体の最大量は、5〜10ng(イヌの品種および抗体に応じて)であると決定した。したがって、実験は、大部分は2.5または5ng/ウェルを用いて実施した。
【0041】
2種の抗体の、種々のイヌ品種の毛との結合を調べるために、ウェストハイランドテリア、ジャーマン・シェパード(腹部から得た毛)、ヨークシャテリアミックス、アイリッシュセッター、ジャーマンワイヤードヘアテリア(German wired−hair terrier)、チャウチャウ、プードル、スモールミュンスターランダー、ビーグル、ジャーマンシェパード(背中領域から得た毛)、ホファヴァルト、シーズー、スピッツ、ボーダーコリー、ラブラドール、雑種(背中から得た毛)、雑種(腹部から得た毛)、ブリアール、オーストラリアンシェパードの毛を用いてマイクロタイター濾過プレートELISAを実施した。また、この試験にヒト毛を含めた。すべての得られた値を、ウェストハイランドテリアに対して正規化した(図1)。
【0042】
精製された抗体の、毛表面との結合も、共焦点顕微鏡を使用する免疫蛍光イメージングによって実証した。例えば、抗体B7.3は、ヨークシャテリア毛との強力な結合を示した。二次ALEXA564色素標識ヤギ抗マウス抗体のみを適用した場合には蛍光は全く観察されず、このことは、毛表面に対するB7.3の特異性を実証した。抗体適用に先立つアセトンでの毛の処理は、蛍光シグナルの減少をもたらした。毛サンプルを穏やかな洗浄剤で洗浄した場合にも同様の結果が得られた。
【0043】
抗体完全性、安定性および機能性
抗体重鎖および軽鎖の完全性を確認するために、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって精製されたタンパク質を分析した。抗体B7.3は、予測される大きさのインタクトな重鎖および軽鎖を有するが、抗体B18−4.3は、両方とも全長重鎖よりも小さい2種の重鎖バンドを有する(55kDaの代わりに約44および47kDa)(図2)。これらの突然変異体重鎖の一方は、中途停止コドンをもたらすC2ドメインの末端でのフレームシフト突然変異の結果である。もう一方の突然変異重鎖の起源は、まだわかっていない。B7.3およびB18−4.3重鎖の分解産物は観察されず、このことは、精製された抗体の完全性を実証する。
【0044】
安定性を分析するために、エッペンドルフベースのELISAを使用して、イソプロパノールの存在下でモノクローナル抗体の結合を実施した。モノクローナル抗体B7.3は、4℃で、4カ月にわたって、30%(v/v)イソプロパノールの存在下で安定な結合を示した。イヌ毛との結合は、抗体が、40%または50%(v/v)イソプロパノール中、4℃で維持された場合に依然として存在し、このことは、このタンパク質の高い安定性を実証する。さらに、抗体B7.3は、20%(v/v)イソプロパノールの存在下、22℃で安定であった。
【0045】
B18−4.3の安定性はさらに良好であった。モノクローナル抗体は、4℃で4カ月間にわたって、40%(v/v)イソプロパノールの存在下で保存した後に、毛との安定な結合を示した。
【0046】
さらに、6%(v/v)Luviskol VA 64 W(BASF)、5%(v/v)Luviquat PQ 11 PN(BASF)、0.3%(v/v)Pluracare E400 PEG−8(BASF)、0.2%(v/v)Q2−5220 Resin(DOW Corning)および15%(v/v)イソプロパノールを含有する製剤溶液中でモノクローナル抗体の安定性および機能性を試験した。製剤中、4℃で3日間保存した後、エッペンドルフベースのELISAを使用して抗体結合を調べ、B7.3およびB18−4.3が、製剤中で高い安定性を有することを示した。
【0047】
抗体結合能
最大結合能を決定するために、規定数のヨークシャテリアの毛(20本の毛、各20mm長)を使用してエッペンドルフベースのELISAにおいてB18−4.3の希釈物を試験した。各エッペンドルフ管中の毛の表面は、3.15mm2に相当していた。ELISAによれば、2.5〜5.0ngの抗体B18−4.3が、3.15mm2の毛表面と結合する。
【0048】
抗体のビオチン化
抗体の機能性に対する結合パートナーの影響を分析するために、精製されたモノクローナル抗体を、ビオチン化し、その後、アビジンビーズと結合させ、これをFACS分析によって確認した(図3)。イヌ毛との結合をエッペンドルフベースのELISAを使用して分析した。ビオチン化抗体B7.3およびB18−4.3の結合が、HRPOにコンジュゲートしているアビジンによって検出され、このことは、ビオチン化および結合パートナーが抗体の機能性に影響を及ぼさないことを実証した。
【0049】
ビーズへの抗体融合
ビーズとカップリングしているモノクローナル抗体の結合を分析するために、0.5%(v/v)Tween20を含有する1×PBSを用いてウェストハイランドテリアから得た毛を前処理して汚染を除去し、抗原構造に堅くなく固定した。続いて、ビオチン化抗体B18−4.3(0.8mg/mL)を適用し、ストレプトアビジンコーティングしたFITC蛍光ビーズ(Kisker)を使用して結合している抗体を検出した。ビーズの大きさは、0.8μmであった。さらに、ビオチン化抗体B18−4.3を、ストレプトアビジンコーティングしたFITC蛍光ビーズにカップリングし、複合体を、毛サンプルに適用して結合を分析した(図4a)。
【0050】
実験から、1μmのニュートラアビジンがカップリングしているフルオスフェア(Invitrogen)に負荷されたビオチン化B18−4.3が、ビーグルの毛で、毛が60℃で、300mM KBrを含有するトリスバッファー(pH8.8)を用いる洗浄によって前処理された場合であっても、高結合を示すことがわかる。これは、毛表面での抗原の高安定性を示す(図4b)。
【0051】
2μmビーズの場合には、この効果は、あまりはっきりせず、このことは、添加されたビーズが、毛表面に存在するいくつかの抗体によって結合されていることを示し得る。重要なことに、10μmビーズを用いた実験は陰性であった。ビーズが洗浄手順の際に失われたので、染色が観察されなかった。
【0052】
共焦点顕微鏡による毛サンプルの分析は、抗体は、主に、毛断片の端と結合していることを示した(図5)。
【0053】
抗体結合部位の同定
表1に示される結果は、表面抗原の少なくとも一部は、毛サンプルを穏やかな洗浄剤で洗浄することによって除去され得るということを示す。抗原構造の除去は、抗体結合の減少につながった。しかし、抗体結合は依然として検出可能であり、このことは、抗原の相当な部分が、毛表面と結合したままであるということを実証した。
【0054】
ウェストハイランドテリアの毛を、300mM KBrを含有するトリスバッファー(pH8.8)を用いて洗浄し、この洗浄画分を濃縮した場合、濃縮された毛表面タンパク質(eHSP)の調製物が結果であった。これらのeHSPを、2種の抗体B7.3またはB18−4.3のいずれかを使用してSDS−PAGEおよびイムノブロットによって分析した。結果から、B7.3は、32KDaおよび38KDaの大きさを有する構造と結合するが、B18−4.3は、21KDa、28KDaおよび40KDaの3つのバンドを検出するということがわかる(図6)。したがって、2種の抗体は、異なる特異性を有する。
【0055】
可変抗体鎖のクローニング
モノクローナル抗体の遺伝情報を手に入れるために、抗体結合特異性を決定する可変抗体ドメインをクローニングした。以下の工程を実施した:
・ハイブリドーマクローンからのRNA単離
・cDNAへの逆転写
・PCRによる抗体重鎖および軽鎖に由来する可変領域の増幅
・スプライシングオーバーラップ伸長(splice overlap extension)(SOE)PCRによる短いリンカー断片による両可変ドメインの融合
・一本鎖抗体(scFv)断片の細菌ベクターへのクローニング
・細菌の形質転換
・プラスミド単離および配列決定
【0056】
配列決定によって、scFvB7.3およびscFvB18−4遺伝子の完全性が確認された。
【0057】
ScFvB18−4を、そのイヌ毛との結合について試験した。ELISAによって、単独またはビオチン−アビジンによってビーズにカップリングされたscFvB18−4の、毛サンプルとの結合が実証された。
【0058】
毛特異的抗体B7.3およびB18−4.3の、イヌ、ネコ、ウマおよびヒト毛との結合
各毛サンプルをELISAによって3回測定した。図表は、サンプルの平均および標準偏差を示す。2回のELISAを並行して実施し、各図表は、1回のELISAの結果である。両図表中に同一サンプルが出ている場合には(ウェストハイランドテリア、ヨーロピアンハウスキャット)、1つの毛サンプルを使用して、両ELISAプレートにピペットで入れた。
【0059】
ウェルあたり1mgの毛をピペットで入れた。PBS中、2%(w/v)のミルク粉末を用いてブロッキングを1時間実施した。最初の抗体として、B7.3またはB18−4.3のいずれかを、PBS中、50ng/ml濃度で使用し、ウェルあたり100μlの抗体溶液を使用した。インキュベーションを、室温で1時間実施した。二次抗体は、ペルオキシダーゼにカップリングしたヤギ抗マウス(抗IgG、IgMおよびIgA)とし、抗体はPBSで1:5000希釈し、100μl/ウェルを使用した。インキュベーションを室温で1時間実施した。最後に、各ウェルを100μlの基質ABTSとともに42分間インキュベートした。得られた発色反応の読み取りを405nmで実施した。種々の工程間で、プレートを2回の200μlPBS−Tを用いて洗浄した。対照として、各毛サンプルの3つのウェルを、非特異的マウス抗体とともにインキュベートし、その他の点では、上記のように処理した。同一毛サンプルのB7.3およびB18−4.3を用いた結果から、各対照の平均を差し引いた(図7)。
【0060】
ウマ毛特異的抗体の作製
マウスの免疫化と、それに続くハイブリドーマ技術の使用によってウマ毛特異的抗体を作製した。ウマから得た毛を、PBS−T(1×PBS、Tween20 0.05%)を用いて洗浄し、ホモジナイザーを使用して細かく刻んだ。細かく刻んだ毛は、約200μmの長さであった。
【0061】
2匹のマウスを、洗浄して細かく刻んだウマの毛を用いて免疫化した。最大80μgの毛サンプル(=20μLの細かく刻んだ毛)を、40μLのGERBUアジュバントおよび50μL 1×PBSと混合し、免疫化に使用した。マウスを7月8日、7月22日、8月5日、8月18日、8月26日および9月8日に6回免疫化し、9月10日に屠殺した。脾臓細胞を単離し、骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマを作製した。ポリクローナルハイブリドーマクローンを、上記のELISA設定を用いてウマ毛特異的抗体の産生についてスクリーニングした。1×PBS中の細かく刻んだウマの毛を、低結合96ウェルマイクロタイタープレート上にコーティングした。ハイブリドーマ細胞培養上清を添加した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)にコンジュゲートした二次ヤギ抗マウス(GAM)抗体を使用して特異的抗体の結合を検出した。毛との抗体結合の検出のために、ABTS基質を使用し、30分インキュベーションした後に、405nmでの吸収を測定した。合計21のポリクローナルハイブリドーマクローン(HF1〜21)において、毛サンプルとの結合が同定された。しかし、細かく刻んだ毛をコーティングしたので、毛の内側に存在する抗原との抗体結合および毛表面の抗原との抗体結合の両方が選択され、単細胞をさらに培養し、モノクローナルを作製した。
【0062】
毛表面の構造を認識する結合物質を同定するために、モノクローナルハイブリドーマ株から得た抗体を、マイクロタイター濾過プレートELISAを使用して試験した(抗体結合および機能性pp10参照のこと)。ウマ、イヌ、ネコおよびヒトの毛0.3mgをマイクロタイター濾過プレート上の別個のウェルに加え、試験されるべき各モノクローナルのハイブリドーマ上清100μlとともに並行してインキュベートした。試験は、上記のように実施した。結合している抗体の可視化は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)で標識した二次抗体およびHRPOの基質として2,2’−アジノ−ビス3−エチルベンジアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)試薬を使用することによって達成した。発色は、室温で、30分インキュベートした後に、405nmで測定した。イヌ、ネコおよびヒトの毛と比較して、抗体HF17.6のウマの毛との明確な結合特異性が見られ、低シグナルは、おそらくは、調製物中のわずかな抗体によると思われるが、これは、試験をモノクローナルの選択のわずか2日後に実施し、わずかな抗体産生細胞しか存在していなかったためである。
【0063】
【表2】
【0064】
ネコ毛特異的抗体の作製
マウスの免疫化と、それに続くハイブリドーマ技術の使用によってネコ毛特異的抗体を作製した。ヨーロピアンショートヘアのネコの切断毛を、ホモジナイザーを使用して細かく刻んだ。細かく刻んだ毛は、約200μmの長さであった。
【0065】
2匹のマウスを、細かく刻んだネコの毛を用いて免疫化した。最大80μgの毛サンプル(=20μLの細かく刻んだ毛)を、40μLのGERBUアジュバントおよび50μL 1×PBSと混合し、免疫化に使用した。マウスを、7月1日、7月15日、7月29日、8月12日、8月26日および9月1日に6回免疫化し、9月3日に屠殺した。脾臓細胞を単離し、骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマを作製した。ポリクローナルハイブリドーマクローンを、上記のELISA設定を用いてネコ毛特異的抗体の産生についてスクリーニングした。1×PBS中の細かく刻んだネコの毛を、低結合96ウェルマイクロタイタープレート上にコーティングした。ハイブリドーマ細胞培養上清を添加した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)にコンジュゲートした二次ヤギ抗マウス(GAM)抗体を使用して特異的抗体の結合を検出した。毛との抗体結合の検出のために、ABTS基質を使用し、30分インキュベーションした後に、405nmでの吸収を測定した。合計73のポリクローナルハイブリドーマクローン(C2 1〜73)において、毛サンプルとの結合が同定された。しかし、細かく刻んだ毛をコーティングしたので、毛の内側に存在する抗原との抗体結合および毛表面の抗原との抗体結合の両方が選択された。ネコ毛と選択的に結合する抗体を選択するために、同種のELISAをヒトの毛で6日後に実施した。以下の表中に示される吸光度は、ヒトの毛と比較して、ネコの毛との優れた結合を実証し、このことは、ポリクローナルハイブリドーマクローンにおけるネコ毛特異的抗体の産生を示す。
【0066】
【表3】
【実施例】
【0067】
以下の項では、本発明の有用な実施形態の一例を提供する。イヌ毛と選択的に結合する抗体を介してイヌ毛皮と接着している、薬物を含有する微粒子が、どのように、動物を害虫昆虫、この場合にはマダニ、から、皮膚刺激作用の副作用を伴わずに長期間保護できるかが示されている。
【0068】
動物毛に市販の局所寄生虫駆除製剤を適用する1つのよくある方法として、小容量の薬物含有溶液を、動物の首皮膚に配置する、いわゆる「スポットオン」製剤を使用することがあるが、これは、皮膚に重篤な刺激作用を引き起こすことが多い不利点を有する。害虫昆虫からの保護期間は、例えば、マダニの場合には、通常、4週間に制限されている。これは、分子状に分散したダニ駆除薬を含むその他の種類の製剤にも当てはまる。
【0069】
抗体の独特の特性−毛との種選択的結合−は、抗体が微粒子の表面にカップリングされるようになる場合に維持されるということがわかる。マダニに対する有効性[アカリジド(akarizide)有効性>90%]は、最小3〜4週間持続することが実証されている。さらなる4週間、低下した有効性>70%が見られ、粒子の持続した放出特性によるものであり得る。また、抗体を、微粒子の表面上の官能基と連結する有用な方法および動物毛皮への適した適用方法が記載される。
【0070】
A)薬物を含有する微粒子の組成物および製造
粒子は、ポリマーからなる。それらは、その大きさが1〜10μmの間であるので毛皮上では目に見えない。有効成分は、被包され、拡散によって継続的に放出される。放出は、粒子設計(ポリマーの種類、分子量、添加剤)によって幅広く制御できる。粒子表面は、抗体の連結に必要である官能基、例えば、アミンまたはカルボキシルで修飾する。
【0071】
好ましい一実施形態では、粒子は、溶媒蒸発技術によって配合される。したがって、有効成分は、この実施例には、ピレスロイドフルメトリン(3−[2−クロロ−2−(4−クロロフェニル)エテニル]−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸シアノ(4−フルオロ−3−フェノキシフェニル)メチルエステル、CAS Nr.69770−45−2)であり、ポリマー、この場合には、ポリスチレンを、ジクロロメタンに溶解する。ポリスチレンと適合性(混和性)である乳化剤、共重合体含有ポリマーセグメントおよびまた、親水性乳化部分として働くカルボン酸基COOHを水に分散させる。次いで、油相をUltra Turraxスターラーの助けを借りて水に分散させ、混合物をMicrofluidizerを用いてホモジナイズする。液滴の大きさは、顕微鏡によって制御する。pHは、乳化を促進するようアルカリの範囲に設定してよい。次いで、エマルジョンを、撹拌しながら最大60℃に加熱する。その温度で、ジクロロメタンは蒸発する。エマルジョンが懸濁液に変わり、遊離COOHが親水性表面を提供する。粒子の大きさは、マスターサイザーによって制御してよい。有効成分の量を、HPLCによって分析する。所与の実施例の場合には、固体ポリスチレン微粒子中のフルメトリン含量は、18% m/mである。この種の微粒子に製剤コード7c_6+7_EEを与える。
【0072】
蛍光色素、この場合には、Uvitex[2,5チオフェンジイルビス(5−t−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)、CAS番号7128−64−5、435nm]が負荷された微粒子を同様の方法で作製する。有効成分は色素と置き換えられる。これらの粒子の機能は、微粒子の毛皮との抗体媒介性結合を可視化することであるが、これは、それらが蛍光顕微鏡を用いて容易に検出されるからである。
【0073】
もう1つの実施形態では、微粒子は、浸漬法によって負荷される。表面COOH基で修飾された、ポリスチレン微粒子15%分散物10mlに、適当な量のフルメトリンを含有するジクロロメタン相2.4mlを加える。周囲室温で24時間の振盪を続ける。その後、溶媒ジクロロメタンを、減圧下(150〜50mbar)で蒸発させる。分散物を繰り返し遠心分離し、ペレットをエタノール/水混合物で洗浄して、被包されていない、表面に結合しているフルメトリンを除去する。新たに遠心分離した後、ペレットを水に再分散させ、凍結乾燥する。BU163をコードされた微粒子は、9%m/mの薬物を含んでいた。
【0074】
B)抗体の、微粒子の表面との連結
毛特異的抗体の、薬物デリバリー粒子とのカップリングは、以下の方法によって達成した。
【0075】
カルボン酸塩修飾した粒子を、特定の量のN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC;2mM)を添加することによって活性化する。次いで、活性化型を、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS;5mM)を添加することによって安定化する。活性化されたエステル複合体は、抗体に由来する第一級および第二級アミンと反応して、粒子と抗体間に共有結合性のアミド結合を生じる。微粒子タイプ7c_6+7_EEの場合には、2.18% m/V溶液80mlを、69.6mgの抗体混合物(B7.3/B18−4.3の比=1:1)を含有する抗体溶液29mlと混合した。BU163を、同様の方法で抗体を備えるようにした。
【0076】
本方法は、文献に記載されている(Hermanson, G.T.: Bioconjugate techniques. Academic press, San Diego, 1996)。
【0077】
C)微粒子の、イヌ毛皮との特異的な抗体媒介性カップリング
抗体を備えた微粒子が、イヌ毛皮と特異的に結合するという証拠は、有効成分の分光学的検出によって与えられる。マルチウェルプレートに、等量(mg)のイヌおよびヒトの毛を部分的に入れる。ウェルの底は、30〜40μmのポアサイズを有するフィルターである。次いで、それらの毛を含有するウェルに、抗体保持微粒子7c_6+7_EEを含有する懸濁液を入れる。次いで、マルチウェルプレートを遠心分離し、上清分散物を30〜40μmポアを通して圧迫することによって、液体および結合していない粒子のすべてを除去する。粒子の大きさは、わずか1〜10μmであるので、毛と結合していない粒子は、フィルターを通過する。毛での粒子結合は、ウェルの内側の毛と接着しているままである。毛を、0.05% Tween20を含有するバッファーで5回洗浄する。各洗浄の後に、遠心分離によってバッファーを再度除去する。この後、薬物を溶解するが、毛またはマルチウェルプレートの材料を溶解しないアセトニトリルをウェルに加える。アセトニトリルは、被包された全薬物を微粒子から抽出する。有効成分の定量的回収は、HPLCによってよりも早く証明された。次いで、ウェルの底で、ポアのない透明なマルチウェルプレートを、毛を含有するマルチウェルプレートの下に入れる。それは、極めてわずかなUV吸収度しか示さないポリマーからなる。アセトニトリルを遠心分離して、透明なマルチウェルプレートのウェルに入れる。アセトニトリル溶液中の有効成分は、268nmのUV光によって検出できる。較正後、UVリーダーは、ウェル中に存在する薬物の量を検出でき、したがって、間接的に、微粒子の、イヌまたはヒトの毛との接着を証明する。多くの微粒子が毛に連結されるほど、UVシグナルはより強い。この相関は、直線的依存型である(図8)。
【0078】
プロット(図8)は、相当な量の抗体を備えた微粒子の、イヌ毛との結合を証明する。イヌ毛は7種の異なる品種(ジャーマンシェパード、コリー−シェパード、テリア、スピッツ、シュナウツァー−ラブラドール、雑種、コリー、n=3)から採取した。対照的に、少量の微粒子しかヒト毛(3人の異なる女性、未処置の、染色されていない毛、n=3)と結合せず、このことは、微粒子の表面に結合されるようになった場合の抗体活性物質毛結合ドメインの種選択性の保存を証明する。また、抗体の、動物毛との結合強度は、バッファー溶液を用いた少なくとも5回の洗浄サイクルで持続するのに十分なほど強いということも実証される。
【0079】
機器:ELISA:Synergy(商標)HT、BioTek;顕微鏡:Biozero BZ−8100E、Keyence
【0080】
C)噴霧製剤としての動物毛皮への適用
製剤の1つの有用な実施形態では、抗体を備えた薬物含有微粒子を、動物の毛皮に噴霧製剤として適用する。
【0081】
所与の実施例では、体重1kgあたり6mgの被包されたフルメトリンをイヌに適用する。ビーグル犬は平均11kgの重量である。したがって、367mgの抗体を備えた、66mgのフルメトリン−微粒子中の薬物濃度は18%m/mであるので−を含有する微粒子7c_6+7_EEを、動物に適用する。粒子の有効成分濃度および必要とされる薬物の量に応じて、この値は変わる。微粒子BU163には、薬物含量が9% m/mであるので733mgを使用する。100mgの蛍光粒子および薬物が負荷された微粒子の算出量を、適した量の水に分散させる。この実施例の場合には、30mlの水を使用する。脂肪質である場合があるイヌ毛での製剤の拡散を促進するよう、少量の界面活性剤(この実施例では、0.01% Tween20)を加える。分散物を、粒子懸濁液を噴霧するのに適した、ポンプスプレーヘッドを取り付けた一般的な瓶に入れ、弁を遮断せず、使用する準備が整う。
【0082】
分散物を、イヌの毛皮全体にむらなく噴霧し、これによって、イヌ毛への微粒子の均一な分布が可能となる。
【0083】
E)In vivo研究:イヌでのマダニ[クリイロコイタマダニ(Rhipicephalus sanguineus)]に対する有効性
本研究の目的は、実験的にクリイロコイタマダニを寄生させたイヌ上で、抗体を介してイヌ毛皮に結合している、フルメトリンを負荷した微粒子を含有する2種の異なる噴霧製剤のマダニに対する有効性評価することであった(表4)。
【0084】
この研究には、各3匹のイヌの3群で9匹のイヌを含めた。各イヌを、全研究期間の間、個々のケージに収容した。
【0085】
研究日(SD)−1に、すべてのイヌを、約0.1ml/kg BWの塩酸キシラジン(キシラジン(登録商標)2%)i.m.と組み合わせた、約0.1ml/kg BWの塩酸ケタミン(ケタミン(登録商標)10%)を用いて鎮静させた。鎮静の間、すべてのイヌを、床の上に胸を地につかせて、または横向きに置き、50匹のクリイロコイタマダニのマダニ(25匹の雄、25匹の雌)を、イヌの背中の上に放した。イヌは1時間〜1.5時間眠っていたので、マダニを、それらが接着できる前に取り除こうとするのが抑えられた。
【0086】
SD0に、全身体表面:頭部、耳、首、側面の領域、肩甲骨から尾の付け根までの背側のストリップ、尾および肛門部、前肢および肩、後肢、胸から後肢の内側までの腹部、足のインテンシブアドスペクション(intensive adspection)/触診によって、マダニを除去せずにマダニ寄生率を調べた。すべての生存し付着している雌のマダニを計数し、マダニ数に基づいて、イヌを3つの研究群に無作為に割り当てた。
【0087】
0日目にマダニを計数した後、処置を実施した。対照群のイヌは、未処置のままにし、陰性対照群として用いた。2つの処置群のイヌには、IVP(開発中の動物用製品)を用いて1回投薬した。各IVPは、30mlの容量を有しており、有効成分として66mgのフルメトリンを含んでいた。各イヌには、体重にかかわりなく総量30mlを与えた。イヌを立たせながら、各イヌにIVPを用いて体全体にかけてむらなく噴霧した。
【0088】
【表4】
【0089】
処置の当日(研究日SD0)に、イヌを処置の2時間および4時間後に有害事象について観察した。すべてのイヌは、処置に対して十分に耐容性を示した。SD2に、SD0と同じ方法でマダニカウントを実施し、ただし、マダニを除去した。マダニを、遊離しているか接着している、充血しているか、充血していない、生存しているか、死亡しているマダニと同定した。一定の間隔で、各イヌを同じ方法で再寄生させ、48時間後に、記載したようにマダニ計数を実施した。選択した間隔は、処置の1、3、7および9週間後であり、例えば、SD5、20、48および61にマダニ寄生を行い、2日後のSD7、22、50および63にマダニを計数した。
【0090】
さらに、各マダニ計数日(寄生の48時間後)に、一定間隔で各イヌの100mgの毛を採取した。毛皮サンプルを、イヌの全体:肩、背中、尾の起始部から臀部から採取し、蛍光顕微鏡によって調べた。製剤の投与後2、7、14、42および63日目に毛サンプルを採取した。
【0091】
マダニ計数手順の間に、すべてのイヌで詳細な全体的な健康の観察を実施した。皮膚刺激には特別な注意を払った。全研究期間の間、処置による皮膚刺激は観察され得なかった。
【0092】
マダニ数を使用して、IVPの有効性を評価した。ガイドラインEMEA/CVMP/005/00−Finalに記載される制御試験のための推奨にしたがって、改変Abbott式を用いて有効性パーセントを算出した:
有効性%=(N2−N1)/N2×100
N1=IVPで処置した群の幾何平均マダニ数
N2=対照群の幾何平均マダニ数
【0093】
「マダニ数」は、「処置失敗を表すマダニ」と定義される。処置有効性を決定する場合には(SD2)、生存マダニのみを処置失敗と考えたが、予防有効性を決定する場合には(すべての残存する計数時点)、生存マダニおよび死亡した充血したマダニを処置失敗と考えた。
【0094】
有効成分は、処置および毎週の再寄生の48時間後に>90%の有効性が達成される場合に高度に有効であると見られる。有効性は3〜4週間にわたって与えられるべきである。
【0095】
【表5】
【0096】
3〜4週間の期間にわたって90%を超える有効性を示す最小の目的は、達成された(表5)。粒子中の高濃度のフルメトリンを考えると、この適用形態は、動物を皮膚刺激作用から明確に保護する。
【0097】
処置の50日後、低下した有効性は、それでも注目に値する。≧50日の研究期間後の微粒子からのフルメトリンの放出は、動物の皮膚でフルメトリンの活性物質レベルを維持するのに十分でない場合がある。試験の最初の数週間のより良好な保護は、特定のパートの遊離フルメトリンおよびマトリックスの内側の高いフルメトリン濃度による初期相における粒子からの高い拡散率に起因し得る。
【0098】
蛍光イメージングによって、微粒子とイヌの毛皮の持続性の接着を検出することができる。微粒子が、実験の全期間、抗体結合によって毛と接着したままであることがわかる(図9〜13)。蛍光色素で印をつけた粒子は指標として働くだけであり、製剤中の微粒子の総数の20%にしか相当しないということは留意されたい。時間とともに、より少ない粒子しか検出できず、これは、一部には、それらが落ちたためであり、一部には、蛍光色素が、日光に対する持続する曝露のために褪せるためである。
【0099】
F)実施例から得た結論
記載された実施例は、本発明の1つの高度に有用な実施形態を実証する。広い範囲にわたって薬物の放出を制御するのに適している薬物含有微粒子の、動物毛(この場合には、イヌ毛)と特異的に結合する抗体を用いた備え(equipment)。本発明のこの適用には、複数の利点がある:
−寄生虫駆除剤を特定の哺乳類種にターゲッティングさせ、したがって、製剤が適用される場合に、または種々の種が、例えば、遊ぶまたはなめることによって相互作用する場合に、交差適用または、例えば、ヒトもしくはその他の哺乳類種への薬物移動の危険を大幅に低減することを可能にする。
−薬物が動物の毛皮に方向付けられ、それによって、皮膚と大きく接触するのを避けるのを可能にし、これが皮膚刺激作用または重篤な皮膚損傷の可能性を低減する。
−COOH、NH2またはその他の基を介して、単一種特異的抗体と、種々の微粒子表面を連結し、微粒子を毛皮に配置するという原則の普遍性によって、単一製剤のために、種々の異なる微粒子の種類(種々の放出プロフィールを有する種々の薬物を含有する種々のポリマー)を選択することが可能となる。分散物中の種々の種類の微粒子の組み合わせ、それによって、さもなければ化学的に適合しない場合もある薬物を単一製剤中に組み合わせることを許可する。
−適当な薬物放出プロフィールを有する、適した微粒子の使用によって、粒子および薬物の種類に応じて薬物の有効性を数週間または数カ月に延長し(extent)、それによって、よくある局所適用される液体駆除剤およびその他の薬物製剤の有効性期間をかなり延長する可能性を提供することが可能になる。
−微粒子の、動物毛との接着は、例えば、動物が雨天において歩き回る場合、または池でしばらく泳いでいる場合の、水との強い接触またはさらには穏やかな洗浄であっても、打ち勝つのに十分強力である。この場合には、通常の製剤は、新たな適用を頻繁に必要とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の毛の表面と選択的に結合する抗体。
【請求項2】
ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または全長抗体、二量体分泌型IgA、多量体IgMなどの組換え抗体、およびF(ab’)2断片、Fab断片、Fv断片、一本鎖Fv抗体(scFv)、二重特異性scFv、ダイアボディー、トリアボディー、テトラボディー、ディングルドメイン抗体(dAb)、ミノボディーまたは分子認識単位(MRU)などの、それらの断片を含む群から選択される、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
ハイブリドーマ細胞、合成、半合成、ナイーブおよび免疫担当ファージライブラリーまたはリボソームディスプレイライブラリー由来である、または完全合成デザイナー抗体の作製による、請求項2に記載の抗体。
【請求項4】
1種の動物種の毛と選択的に結合する、請求項1および3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ラマおよび/またはウマの毛と選択的に結合する、請求項1および3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体を含む薬物デリバリーシステム。
【請求項7】
さらに、固体粒子の表面と結合または接着しており、それによって、これらの粒子を動物毛に選択的に結合させる、請求項1から6に記載の抗体を含む薬物デリバリーシステム。
【請求項8】
第1の工程で、抗体が動物毛と選択的に結合し、第2の工程で、粒子が、動物毛とカップリングしている抗体と結合されるような様式で、動物毛と選択的に結合する抗体と、有効成分を含有する粒子との製剤を含む、請求項7に記載の薬物デリバリーシステム。
【請求項9】
第1の工程で、抗体を保持する、適したスペーサー/媒介物/中間体カップリング剤が、前記抗体を介して動物毛と選択的に結合されるようになり、第2の工程で、粒子が、前記スペーサー/媒介物/カップリング剤との結合によって動物毛と連結されるようになるような様式で、前記スペーサー/媒介物/カップリング剤と連結または化学的に結合された、動物毛結合抗体と、粒子との製剤を含む、請求項7に記載の薬物デリバリーシステム。
【請求項10】
粒子が、動物にとって有益な有効成分または薬剤、すなわち、処置が適用される動物と相互作用する薬物、殺虫剤、ヘアまたはスキンケア物質、処置された動物を有害な害虫動物、例えば、昆虫による攻撃から保護する忌避物質、臭い改変剤、または処置された動物もしくはその他の処置されていない個々の動物の行動を改変する薬剤を含む、請求項7から9のいずれかに記載の薬物デリバリーシステム。
【請求項11】
粒子が、その治療目的または有益な目的にとって適した濃度、すなわち、0.01%〜99.9%の動物にとって有益な有効成分または薬剤を含む、請求項4から10のいずれかに記載の薬物デリバリーシステム。
【請求項12】
粒子が、0.001μm〜10μm、好ましくは、0.1μm〜2μmの直径を有する、請求項4から11のいずれかに記載の薬物デリバリーシステム。
【請求項13】
微粒子が、ピレスロイド型の薬物を含み、前記薬物が、動物の毛皮に投与され、副作用、すなわち、皮膚刺激を引き起こすことなくピレスロイドを長期間にわたってデリバリーする、請求項4から12のいずれかに記載の薬物デリバリーシステム。
【請求項1】
動物の毛の表面と選択的に結合する抗体。
【請求項2】
ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または全長抗体、二量体分泌型IgA、多量体IgMなどの組換え抗体、およびF(ab’)2断片、Fab断片、Fv断片、一本鎖Fv抗体(scFv)、二重特異性scFv、ダイアボディー、トリアボディー、テトラボディー、ディングルドメイン抗体(dAb)、ミノボディーまたは分子認識単位(MRU)などの、それらの断片を含む群から選択される、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
ハイブリドーマ細胞、合成、半合成、ナイーブおよび免疫担当ファージライブラリーまたはリボソームディスプレイライブラリー由来である、または完全合成デザイナー抗体の作製による、請求項2に記載の抗体。
【請求項4】
1種の動物種の毛と選択的に結合する、請求項1および3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ラマおよび/またはウマの毛と選択的に結合する、請求項1および3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体を含む薬物デリバリーシステム。
【請求項7】
さらに、固体粒子の表面と結合または接着しており、それによって、これらの粒子を動物毛に選択的に結合させる、請求項1から6に記載の抗体を含む薬物デリバリーシステム。
【請求項8】
第1の工程で、抗体が動物毛と選択的に結合し、第2の工程で、粒子が、動物毛とカップリングしている抗体と結合されるような様式で、動物毛と選択的に結合する抗体と、有効成分を含有する粒子との製剤を含む、請求項7に記載の薬物デリバリーシステム。
【請求項9】
第1の工程で、抗体を保持する、適したスペーサー/媒介物/中間体カップリング剤が、前記抗体を介して動物毛と選択的に結合されるようになり、第2の工程で、粒子が、前記スペーサー/媒介物/カップリング剤との結合によって動物毛と連結されるようになるような様式で、前記スペーサー/媒介物/カップリング剤と連結または化学的に結合された、動物毛結合抗体と、粒子との製剤を含む、請求項7に記載の薬物デリバリーシステム。
【請求項10】
粒子が、動物にとって有益な有効成分または薬剤、すなわち、処置が適用される動物と相互作用する薬物、殺虫剤、ヘアまたはスキンケア物質、処置された動物を有害な害虫動物、例えば、昆虫による攻撃から保護する忌避物質、臭い改変剤、または処置された動物もしくはその他の処置されていない個々の動物の行動を改変する薬剤を含む、請求項7から9のいずれかに記載の薬物デリバリーシステム。
【請求項11】
粒子が、その治療目的または有益な目的にとって適した濃度、すなわち、0.01%〜99.9%の動物にとって有益な有効成分または薬剤を含む、請求項4から10のいずれかに記載の薬物デリバリーシステム。
【請求項12】
粒子が、0.001μm〜10μm、好ましくは、0.1μm〜2μmの直径を有する、請求項4から11のいずれかに記載の薬物デリバリーシステム。
【請求項13】
微粒子が、ピレスロイド型の薬物を含み、前記薬物が、動物の毛皮に投与され、副作用、すなわち、皮膚刺激を引き起こすことなくピレスロイドを長期間にわたってデリバリーする、請求項4から12のいずれかに記載の薬物デリバリーシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12−1】
【図12−2】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12−1】
【図12−2】
【図13】
【公表番号】特表2011−502178(P2011−502178A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532477(P2010−532477)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009110
【国際公開番号】WO2009/056280
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(507113188)バイエル・シェーリング・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Schering Pharma Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009110
【国際公開番号】WO2009/056280
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(507113188)バイエル・シェーリング・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Schering Pharma Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】
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