説明

動物細胞の培養構築物

【課題】
長期に亘り実質細胞の機能を保持した培養細胞構築物の提供。
【解決手段】
支持体上の小領域上に実質細胞と非実質細胞の共培養物が接着しており、該小領域が一定の微細な面積または直径を有し、それらの各々が親水性ポリマーで形成された支持体上の表面で少なくとも約100μm隔離されている培養細胞構築物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物細胞の培養物および該培養細胞構築物に関し、より具体的には培養細胞のスフェロイドを含有する共培養物および該共培養物を表面に担持するバイオデバイスに関する。バイオデバイスもしくは共培養物それ自体は、例えば、動物細胞の生理学的または病態生理学的状質に係る検査または移植医療、器官再生工学、ハイブリット型人工器官等の技術分野で用いることができる。
【背景技術】
【0002】
動物細胞は機能的な観点から、大きく実質細胞(parenchymal cell)とそれ以外の非実質細胞(nonparenchymal cell)に分類できる。これらのうち、実質細胞は、組織または器官の機能をつかさどる細胞である。例えば、肝臓の実質細胞である肝細胞(hepatocyte)は多種多様な物質の合成、分解、貯蔵を引き受けており、生命体にとって極めて重要な基本的単位である。
【0003】
したがって、生命体における肝細胞の機能の発現を生体外で模倣すべく、該細胞の各種培養系が提案されている。例えば、特許文献1には、親水性かつ細胞非親和性(cytophobic)物質で形成された領域により隔離された細胞親和性(cytophilic)領域での肝細胞の培養方法またはそのためのデバイスが記載されている。そのデバイスでは疎水性表面または荷電部(−COO、PO)をもつ化合物もしくは細胞外マトリックス構成タンパク質等で形成された表面領域(一般的には、1〜2500μm、好ましくは1〜500μm)に個々の細胞が接種されている。この特許明細書で主として記載されまたは意図されている培養は、所謂、単層培養に属するとみなせる。他方、肝細胞の機能の向上、例えば、肝特異的タンパク質の分泌の増強を目的にした立体培養(three−dimensional growth pattern)も試みられている(非特許文献1参照)。この培養法では、I型コラーゲンや特殊な細胞外マトリックスのゲル上で正常なヒトの肝細胞由来の細胞株が培養されている。
【0004】
さらに、各種実質細胞または非実質細胞の各培養細胞を、毒性試験を初めとする各種目的に応じて都合よく使用できるようにするためのデバイスとして、培養細胞が一定の様式で配列するようにパターン化されたものも提供されている[例えば、特許文献2(細胞接着性表面と細胞非接着性表面を有する細胞の配列制御用具)、上述の特許文献1(肝細胞の培養)、特許文献3(内皮細胞の培養)、特許文献4内皮細胞の培養)等]。
【0005】
上述のように単層培養に比べ立体培養の方が、一般により生体内肝細胞の機能に近い機能をもつ培養細胞が得られるようであるが、このような立体培養系の培養細胞は培養支持体から剥離され易く、立体培養系をパターン表面上に実現した例はなく、いまだ、かような機能の発現の程度および機能の維持期間等について満足できるものとはいえない。
【0006】
また、本来、動物の器官は、さまざまな性質の組織(同様の機能をもつ細胞の集まりである。)から構成されており、それらの構成単位である細胞は、同一もしくは異種の細胞間の相互作用を介して機能等が保全されている場合が多い。そのため、非特許文献2には、実質細胞と隣接する非実質細胞間の異型細胞相互作用が細胞の増殖、移動および/または分化を修飾するとの観点から、肝細胞と非実質細胞である線維芽細胞との共培養(cocultivation)による肝細胞の表現型の保存について研究した結果が記載されている。このような共培養では、同一平面上で培養非実質細胞により周囲が取りかこまれた単層の培養肝細胞はそれらの境界線から3ないしは4個の細胞以上離れると、例えば細胞内アルブミン産生能は、純粋肝細胞培養物と同程度まで低下することが教示されている
。それ故、このような共培養系では培養肝細胞の凝集物中の細胞がそれらの全体にわたって安定に肝特異的機能を発揮させることは困難である。
【0007】
したがって、本発明の目的は肝細胞を包含する実質細胞の特異的な機能がより強く、かつ、長期にわたって維持でき、しかも微細パターン化(micropatterning)した際には、該パターンが安定に維持できる培養動物細胞系を提供することにある。
【0008】
【特許文献1】R.Singhvi et al.米国特許第5,976,826号明細書
【特許文献2】特開平3−7576号公報
【特許文献3】特許第2973976号公報
【特許文献4】特開平7−308186号公報
【非特許文献1】M.Smalley et al.In Vitro Cell.Dev.Biol.Anim.(1999)35、pp.22−32)
【非特許文献2】S.N.Bhatia et al.The FASEB Journal,Vol.13(1999);1883−1900
【発明の開示】
【0009】
本発明者らは、相互に異なる二種の細胞のうち、一つの細胞として肝細胞の培養系および該培養系から取得される培養肝細胞の機能について検討した。その結果、上述のS.N.Bhatia et al.に教示されるような同一平面上で、異型境界面(heterotypic interface)を介する相互作用が起こるように肝細胞と非実質細胞の共培養を行うのでなく、肝細胞を培養内皮細胞または線維芽細胞の一定領域の細胞単層上で培養すると培養肝細胞は該単層表面上に接触して接着したスフェロイドを形成し、しかもこうして形成されたスフェロイドは肝細胞に特異的な機能、例えば、アルブミンを長期にわたり安定して産生しうることを見出した。また、これらのスフェロイドと、これらのスフェロイドに接触した下層を形成する肝細胞とは異なる細胞の単層とを含んでなる共培養物、ならびに該共培養物とそれらの支持体からなる培養細胞構築物(以下、スフェロイド/培養細胞単層/支持体という場合あり)は、支持体からの各培養細胞の剥離に対して抵抗性(安定性)も示す。さらに、このような培養細胞構築物は、肝細胞以外のスフェロイドを形成することのできる実質細胞または非実質細胞に適用した場合にもこれらの細胞の機能を保持するスフェロイド含有培養細胞構築物を提供しうることも見出した。
【0010】
さらに本発明者らは、該スフェロイドの下層を形成する(または基礎となる)細胞のうちの内皮細胞もしくは線維芽細胞は、一般的に増殖力および/または運動性が強く、接種されそして培養される支持体の小領域の周辺に移住して増殖する傾向を有するが、一定の親水性かつ細胞非親和性物質となりうるポリマー表面で該小領域を取りかこめば、該内皮細胞または線維芽細胞等の培養細胞の該小領域からの移住ないしは移動を抑制でき、しかもこれらの培養細胞上に形成されるスフェロイドの移住ないしは移動も抑制でき、こうして特殊の形態をした共培養物が安定に支持体上に保持できることも見出した。
【0011】
したがって、本発明によれば、支持体上に相互に異なる動物細胞の1または2以上の共培養物を含んでなる培養細胞構築物が提供される。このような培養細胞構築物中の各共培養物は、相互に異なる細胞の1種、好ましくは実質細胞の培養細胞に由来するスフェロイド、ならびに該スフェロイドに接触した下層を形成し、そして該スフェロイドを形成する細胞を生存および機能させることができる、該細胞とは異なるもう1種の細胞に由来する培養細胞の実質的に単層を含んでなるものである。
【0012】
また別の態様の本発明として、2以上の上記共培養物で形成された表面を含んでなるバイオデバイスが提供される。
【0013】
さらなる別の態様の本発明として、支持体上に相互に異なる動物細胞の1または2以上の共培養物を含んでなる培養細胞構築物の作成方法であって、共培養物を接着すべき材料表面に動物細胞表面受容体に対するリガンドの結合ドメインを構成する単糖またはオリゴ糖およびオリゴペプチドからなる群より選ばれる化合物をいずれか一方の末端に共有結合したか、または未結合のポリエチレングリコールセグメントをベースとするポリマー層を形成し、少なくとも約100μmずつ隔離された約50〜100μmの直径を有する円形状のホールを複数待つマスクパターンを介して前記ポリマー層をプラズマ処理し、こうして前記ホールに相当する領域のポリマー層を除去し、必要があれば、ポリマー層が除去された小領域に細胞親和性物質を塗布し、該小領域上で内皮細胞または線維芽細胞を培養して培養細胞の単層を形成し、次いで該培養細胞上で該培養細胞とは異なる細胞を培養することにより該異なる細胞のスフェロイドを形成する、ことを特徴とする隔離された複数の小領域上に培養細胞から形成されたスフェロイドを担持する共培養物を含んでなる培養細胞構築物の作成方法も提供される。
【0014】
また、本発明は、上記の培養細胞構築物の支持体から剥離された共培養物それ自体も提供される。
【0015】
これらの本発明によれば、上述の肝細胞と内皮細胞または線維芽細胞とを用いる、培養によって得られるのと同様の効果が達成される。例えば、本発明に従う培養肝細胞スフェロイドは、最低3週間は高レベルでアルブミン産生能を維持する。
【0016】
<発明を実施するための最良の形態>
本発明に従えば、共培養される相互に異なる動物細胞のうち一つは、後述する共培養によりスフェロイドを形成することのできる細胞であれば、いずれの細胞であってもよいが、好ましくは実質細胞である。実質細胞とは、組織または器官で、その機能をつかさどる部分となる細胞を意味する。例えば、肝臓の実質細胞は肝細胞であり、肺の実質細胞は肺胞上皮細胞である。このような定義に包含され、本発明の目的に沿う細胞のいずれも、本発明にいう実質細胞である。限定されるものでないが、本願発明での使用が特に強く企図されている実質細胞としては、肝細胞、膵ベータ細胞、心筋細胞、グリア細胞、皮膚上皮細胞、軟骨細胞、骨細胞および胚性もしくは成体幹細胞を挙げることができる。しかし、上記の定義に包含される実質細胞以外の非実質細胞であっても、上述のとおり、スフェロイドを形成でき、本発明の目的に沿うものであれば、上記動物細胞に包含される。
【0017】
共培養される相互に異なる動物細胞のもう一つの細胞としては、共培養したとき、上記のスフェロイドを形成できる細胞を生存および機能させるのに役立つことができる該細胞とは異なる細胞であれば、いかなる細胞であってもよく、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞等の細胞を挙げることができる。好ましくは内皮細胞、特に血管内皮細胞、特に好ましくは臍帯静脈血管内皮細胞である。また、別の好ましいものとしては、線維芽細胞であり、線維芽細胞は動物個体内の殆どすべての組織中に分散して存在する中胚葉由葉細胞であるが、上記の培養を行うことによりスフェロイドを形成する細胞に応じて、すなわち該細胞の存在する臓器の形態形成に重要な役割を果たす線維芽細胞が好ましくは使用できる。なお、共培養される相互に異なる動物細胞の組み合わせてしては限定されるものでないが、上記の組み合わせに加えて、線維芽細胞−内皮細胞、上皮細胞−内皮細胞のような非実質細胞−非実質細胞、心筋細胞−肝細胞、膵ベータ細胞−肝細胞のような実質細胞−実質細胞の組み合わせであってもよい。
【0018】
以上の細胞はそれらが存在する動物起源のものであれば、いかなる動物のものであってもよく、例えば、家禽類、哺乳動物、特に、ヒト由来のものであることができる。
【0019】
これらの相互に異なる動物細胞は、本発明に従って共培養すると、内皮細胞、上皮細胞または線維芽細胞が培養支持体表面上で足場依存性細胞またはフィーダー細胞として実質的に培養細胞の単層を形成し、次いで該単層上で培養された該単層を形成する細胞とは異なる細胞、好ましくは実質細胞は該単層を構成する培養細胞と接触し、異型相互作用を行うことにより、相当する細胞に特異的な機能を長期にわたり安定に保持する。ここにいう、実質的に培養細胞の単層を形成するとは、該細胞層を形成する領域の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上が培養細胞の単層からなることを意味する。また、共培養とは、いずれかの時期に、上記相互に異なる動物細胞が一緒に培養されればよく、本願発明では、例えば、内皮細胞または線維芽細胞がまず培養されて単層を形成した後、これらの培養細胞と、さらに実質細胞が一緒に培養される場合を参照すれば理解が容易になろう。
【0020】
かような例えば、内皮細胞、上皮細胞または線維芽細胞は培養支持体表面の小領域上で培養され、その小領域上にそれらの培養細胞からなるフィーダー層が構築され、その後、フィーダー層の表面上に該フィーダー層と直接接触する、好ましくは実質細胞由来のスフェロイドからなる共培養物とを含んでなる培養細胞構築物が提供できる。ある細胞由来の培養細胞から形成されるスフェロイドとは、「スフェロイド」の語が意味するとおりの実質的に球状をした培養実質細胞の凝集塊を意味し、図5として添付された共焦点レーザー顕微鏡写真にみられる形態またはそれに近似する形態のものをいう。実質的に球状と称しているのは、完全な球状なものに限定されるものでなく、いくらか扁平状になった形態をも包含せしめる意図の下に使用している。
【0021】
上記の小領域は、本発明の目的を達成できるものであれば、限定されるものでないが、一般的には約1,000〜約200,000μm、好ましくは約1,500〜約50,000μmを有するいかなる形状、例えば、円形、四角形を初めとする多角形、楕円形、等であることができる。円形のものが好ましいが、この場合、直径が約40〜約500μm、好ましくは約50〜200μm、より好ましくは約50〜約100μmであり、より大きな直径を有する小領域上にフィーダー細胞層およびさらにその上にスフェロイドを担持する培養細胞構築物は、支持体表面から各培養物または共培養物が剥離し易い傾向を示すか、あるいはスフェロイドがその起源の実質細胞の機能を安定して保持しない場合が生じる。
【0022】
上述したとおり、例えばこのような小領域上で、内皮細胞、上皮細胞または線維芽細胞を培養する際に、これらの培養細胞は小領域以外に移住し、上記に特定した小領域上での培養物を形成できない場合がある。
【0023】
本発明によれば、このような不都合を回避するための手段として、該小領域の周囲を取りかこむ親水性かつ細胞非親和性物質で作製した表面が提供される。このような物質の詳細については後述するが、従来、例えば、上述の特許文献1によれば、シアル酸、レクチン、ポリガラクトースおよび他の炭水化物が細胞の結合を媒介する(“to mediate cell binding”)との教示があり、また、例えば、P.H.Weigel et al.,J.Bio.Chem.Vol.254(1979)10830−10838によれば、平らなポリアクリルアミドゲルに共有結合した糖類に肝細胞が特異的に接着するとの例証があるが、本発明にいう「細胞非親和性物質」は、これの教示とは独立し、むしろ対立するものをも包含する場合があることに注意する必要がある。
【0024】
具体的には、本発明に従う親水性かつ細胞非親和性物質は、該物質で作製した表面に、上記の足場依存性培養細胞またはフィーダー層形成培養細胞が後述するような培養条件下では、まったく接着できないか、かりに接着しても、緩和な洗浄もしくはすすぎによって、容易に脱着することができ、その後の実質細胞の培養に際し、安定に長期にわたる培養
を行うことができないか、さらには培養実質細胞も接着し難い性質の表面を作製しうる物質である。このような表面を形成することのできる物質の一部は、例えば、上述の特許文献1に記載されている細胞非親和性または疎生物性(biophobic)の単分子層を形成する物質であることができる。好ましいものとしてはポリエチレングリコール(以下「PEG」という場合あり)部分を含む化合物が挙げられる。ちなみに、該特許明細書には、6個のエチレングリコール単位を有する化合物(例、HS(CH11(OCHCHOH)が具体的に使用されている。
【0025】
さらに本発明で好ましく使用でき、本発明をより一層独得なものにするのは、細胞表面受容体に対するリガンドの結合ドメインを構成する、より具体的には、糖類に肝細胞が接着するといわれているにもかかわらず、単糖もしくはオリゴ糖またはある種のオリゴペプチドをいずれか一方の末端に共有結合したポリエチレングリコールセグメントをベースとする糖誘導体もしくはペプチド誘導体または多糖を細胞非親和性物質として使用できることにある。
【0026】
したがって上記の小領域を取りかこむ表面も、特許文献1に記載されているような化合物を用いて作製できるが、好ましくは、PEGセグメントをベースとするポリマーを用いるのがよい。PEGセグメントをベースにするとは、これらのポリマーが糖残基をもたない場合には、形成された表面が主としてPEGセグメントの自由鎖によって覆われることを可能にするようにPEGセグメントを含んでなることを意味し、かような作用を発揮する限り、ホモポリマーまたはブロックコポリマー、あるいはこれらの誘導体であることができる。なお、自由鎖とは、水性媒体中におかれたとき、当該セグメントが実質的に自由なコンホーメーションをとりうるポリマー鎖の状態をいう。
【0027】
限定されるものでないが、かようなポリマー、さらには糖残基をもつ糖誘導体またはオリゴペプチド残基をもつペプチド誘導体は次の一般式(I)で表すことができる。
【0028】
一般式(I)
【0029】
【化1】

【0030】
上式中、L、LおよびLは独立して、原子価結合、酸素原子またはリンカーを表し、但し、mが0である場合には、LとLは一緒になって原子価結合、酸素原子または1個のリンカーとなることができ、
Bは式
【0031】
【化2】

【0032】
を表し、ここでRおよびRは独立して、水素原子、炭素原子1〜5個のアルキル基であり、そしてpは2〜5の整数であり、
Xは水素原子、糖残基またはペプチド残基を表し、
Yは水素原子またはデバイス表面へ、当該ポリマーを結合または付着することのできる官能基を表し、
mは0〜10,000の整数であり、そして
nは10〜20,000の整数である。
【0033】
また、L、LおよびLは、Lが原子価結合、−(CH−O−、−(CH−COO−、−(CH−S−、または−CO−(CH−NH−のリンカーを表すか、あるいはmが0である場合には、LとLは一緒になって、上記でLについて定義したリンカーであることができ、ここで、qは2〜6の整数であり、あるいはmが0以外の場合には、Lは−O−または−O−CHCH−Oであり、
が原子価結合または−(CH−であり、ここでrは1〜6の整数であることができる。
【0034】
これらのポリマーは、例えば、本発明者らの一部によって開示された、WO96/32434(または米国特許第5,037,969号)、WO96/33233(または米国特許第5,925,720号)およびWO97/06202(または米国特許第5,929,177号)、ならびにJo et al.,Biomaterials,21、605−612、2002に記載のポリマーそれら自体もしくは若干修飾するか、またはそれらに準じて製造したものを用いることができる。
【0035】
本発明に従えば、上記一般式(I)のXが糖残基、例えば、細胞表面受容体に対するリガンドの結合ドメインを構成する、単糖またはオリゴ糖(例えば、糖単位を11個まで、好ましくは7個まで有してもよい)、特に、二糖の残基であると、かかるポリマーから形成された表面は、本発明にいう培養細胞の接着を強く防ぐことができるので、特に好ましい。Xが単糖を表わすポリマーについては、上述のWO96/32434(または米国特許第5,037,969号)に記載されており、またそこに記載の方法に従って、所望の各種の糖残基を担持されることができる。同様にXが多糖残基を表わすポリマーも、オリゴ糖残基を表わすポリマーも、前記方法を若干改変することによって製造することができる。しかし、別法として、上述のWO96/33233(または米国特許第5,925,720号)に記載されているX部分にアセタール基を有するポリマーをアルデヒド基に転化した後、単糖またはオリゴ糖に、必要により予めアミノ基を導入しておき、そのアミノ基と前記アルデヒド基を利用する還元アミノ化反応により、Xが糖残基であるポリマーを得ることもできる。このような単糖またはオリゴ糖としては、少なくとも1個のガラクトピラノシル基を含むものが好ましい。限定されることがないが、かかるオリゴ糖としては、ラクトース、各種シアロオリゴ糖を挙げることができる。また、上記一般式(I)のXが細胞表面受容体に対するリガンドの結合ドメインを構成する、オリゴペプチド残基である親水性ポリマーも、本発明で好ましく使用できる。該リガンドは、レクチン水溶性シグナル分子(例えば、タンパク質ホルモン、成長因子タンパク質)であることができる。限定されるものではないが、オリゴペプチドとしては、少なくともアルギニン(Arg)、グリシン(Gly)、アスパラギン酸(Asp)を含み、全体として水溶性となりうるアミノ酸残基が10個までのものを挙げることができる。
【0036】
上記のような糖類を共有結合したPEGをベースとするポリマーの糖誘導体の他に、本発明では、多糖、例えば、ポリガラクトース、シアル酸、その他のレクチンが結合しうる多糖それら自体を親水性ポリマーとして使用することができる。親水性ポリマーは、当業者であれば、上記に例示したポリマーから理解できるが、本願発明に従う細胞の培養条件下では、ポリマー全体が周囲条件下で水に可溶性であるか、またはポリマーを構成するセグメントに相当するポリマー(上記例でいえば、ポリエチレン)が水に可溶性であるポリマーを意味する。当業者であれば、例えば後述する実施例を参照に、かようなポリマーから、本発明で都合よく利用できる具体的なポリマーを容易に選択できるであろう。
【0037】
一般式(I)における、Y、場合によりY−L−(B)−は、該親水性物質の表面を
形成しようとするその下層(培養支持体表面、デバイス表面を直接もしくは間接的に形成する基板、フィルム、塗膜もしくは蒸着膜であることができる)の性質によって、適宜選ぶことができる。例えば、該支持体表面は、一般式(I)のポリマーを確実に付着もしくは結合することができるような表面を有することができる。限定されるものでないが、該支持体表面に、シリコーンが塗布されているかまたは、例えば水酸基を有する表面がシラン処理のような疎水化処理が施されている場合には、一般式(I)のmが0以外で、例えば5以上の整数を表わすブロックコポリマーとなるようにY−L−(B)−部分を選び、かようなエステルセグメントの疎水性を利用して、該ポリマーを該支持体表面に付着して、親水性物質の表面を形成することができる。かような例では、ポリマーのさらなる付着を強化するために、該エステルセグメントに相当するホモポリマーを予め支持体表面に付着しておき、次いで該ブロックコポリマーを付着させると、剥離等に対して良好な抵抗性を示す親水性物質の表面を作製できる。
【0038】
また、上述の特許文献1に記載されているような官能基を支持体表面が有している場合には、基Yは、かような官能基と反応して共有結合、例えば、−CONH−、−CONHCO−、−S−S−、−O−、−Si−O−、−NH−、等を形成しうる別の官能基であることができる。Yに、これらの官能基を導入する方法、また、そのような官能基を有するポリマーは、上記の本発明者らの一部による開示に従う特許明細書に記載されている。他方、官能基を有する支持体表面の提供は、上記特許文献1に一部は記載されており、その他、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリルアミド等を塗布した表面をそれ自体公知の方法でプラズマ処理するか、あるいは上記官能基に相当する保護された官能基を有するモノマーをそれ自体公知のプラズマ重合法にかけ、次いで、必要により、保護基を脱離することによって調製できる。
【0039】
また、支持体表面が、金、銀、銅、等の金属からなるときは、基Yを、例えば、メルカプト基とすることにより、一般式(I)のポリマーを下層に、所謂、化学吸着させることができ、目的の表面を作製することができる。
【0040】
他方、該小領域は、その表面を必要により細胞親和性となるように処理してもよい。本明細書にいう「細胞親和性」とは、上述の内皮細胞、上皮細胞または線維芽細胞をかような性質を有する表面で培養したとき、培養細胞が接着し、こうして接着した細胞が、緩和な洗浄やすすぎによって脱着しないような表面をいう。このような表面は、疎水性基(炭化水素基、アルキルシリル基、フッ化アルキル基等)をもつ化合物または荷電基(例、−COO、−PO、等)をもつ化合物(細胞外マトリックスを構成するタンパク質を包含する)で形成されたものであることができる。このような表面の作製は、上述の親水性物質の表面の作製法において、親水性物質(または親水性ポリマー)に代え、上記のいずれかの化合物を用いて処理することにより行うことができる。
【0041】
細胞親和性表面の小領域は、当業者にそれ自体周知のパターン形成法またはミクロパターン化(micropatterning)法に従って作製することができる。しかし、好ましくは、まず、親水性ポリマーの表面を適当な支持体上に形成しておき、その上に、小領域に相当するホールが所望の形式で配列されているパターンを設置し、そのホールを介して、例えばH+Nを用いるプラズマ処理を行って該表面を形成していたポリマー層を除去し、こうして得られた小領域を、必要により、上記細胞親和性表面を形成しうる化合物で処理して、作製することができる。上記「必要により」と記述したのは、親水性ポリマーの表面を堆積させた表面(デバイス自体の表面でありうる)が、上記プラズマ処理によって悪影響を受けないように形成された細胞親和性表面であれば、上記任意の処理は必要ないことを意図している。
【0042】
こうして作製される小領域間の間隔は、最短で約100μmであることが好ましい。足
場依存性細胞またはフィーダー層作成細胞として内皮細胞または線維芽細胞等を選ぶ培養系では、複数の小領域がこのような間隔で親水性ポリマーの表面領域によって隔離されていると、前記小領域上の培養内皮細胞または線維芽細胞、ならびに培養実質細胞、特に肝細胞スフェロイド相互間で連接または架橋が実質的に起こらない。「連接または架橋が実質的に起こらない」とは、多数あるもののうちの1つの小領域上の培養肝細胞スフェロイドが他の小領域上のそれと形態上接続したものが、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは0%であることを意味する。
【0043】
このような、所望の様式で整列した(またはパターン化された)、培養細胞から形成されたスフェロイドを含む共培養物を担持する培養細胞構築物は、都合よくはもう一つの本発明の態様である、培養細胞構築物の作成方法によって得ることができる。
【0044】
(A)細胞を培養すべき支持体表面にPEGセグメントをベースとするポリマー、好ましくは、上記一般式(I)で表されるポリマー、特に好ましくは式中のXが糖残基またはオリゴペプチド残基であるポリマーの有機溶媒(例えばトルエン)の溶液または水性溶液を、スピンコートする。なお、例えば該支持体表面の材料がガラス製である場合は、その表面上の水酸基を疎水性のシランカップリング剤を用いて、予め疎水化処理をしておくと、その後、小領域を細胞親和性処理する必要がない場合がある。シラン処理は、それ自体既知の方法、例えば、H.Otsuka et al.,Biomacromolecules,2000、1、21−27に記載されている方法を参照することができる。なお、一般式(I)のXに相当する基がアセタールである場合のポリマーを予めスピンコートし、その後、予めアミノ基を導入した糖のアミノ基と、上記アセタールの脱保護によって露出するアルデヒドとの間で還元アミノ化反応を行い、糖残基を前記ポリマーに導入してもよい。このポリマー層の厚さは、使用するポリマーの種類によって、最適の厚さが変動するので限定できないが、小領域上のフィーダー培養細胞または該培養細胞とは異なる、例えば培養実質細胞と別の小領域上のこれらの細胞間の接着を防止できる厚さであればよい。このような厚さについて、当業者は小実験を行うことにより容易に決定することができるのであろう。限定されるものでないが、一般的な単分子膜厚が最低必要であろう。
【0045】
(B)段階(A)で得られる表面上に、小領域(好ましくは、約50〜500μmの直径を有する円形状)のホールを複数持つマスクパターンを置き、プラズマ発生装置により、H+Nを用いるプラズマ処理し、こうしてホールに相当する領域のポリマー層を破壊、除去して、例えば、疎水性処理表面を露出させる。
【0046】
(C)必要があれば、ポリマー層を除去して露出した表面に、前記マスクパターンを介して、細胞親和性基を有するモノマーをプラズマ重合、または、該モノマー由来のポリマーをコートすることにより、該表面を細胞親和性に修飾してもよい。
【0047】
(D)こうして細胞親和性小領域を有する表面上で、例えば内皮細胞(適当であれば、市販の細胞、例えば、大日本製薬製の「ヒト臍帯静脈血管内皮細胞」、等)を、このような細胞を培養できる培養基(適当であれば、市販の培養基、例えば、大日本製薬製の「VE培地」)を用いて培養して、培養細胞層を形成する。この培養は、例えば、特許第2973976号公報に記載の方法に従うか、またはそれらを改変して行うことができる。
【0048】
(E)段階(D)で形成されたフィーダー培養細胞層上で、該細胞層を形成する細胞とは異なる細胞、好ましくは実質細胞を培養する。実質細胞を始めとする細胞は、初代細胞が好ましいが、本発明方法に従って培養したとき、上記細胞層上に培養細胞スフェロイドを形成しうるものであれば、系統化(または株化)された細胞やいかなる形質転換もしくはトランフェクションされた細胞であってもよい。また、フィーダー層を形成する内皮細胞または線維芽細胞もスフェロイドを形成する細胞、好ましくは実質細胞も、起源に制限
されることなく使用できるが、同種の動物細胞を使用するのが好ましい。かような細胞のうち、細胞の培養も、それ自体既知の培養法(例えば、S.N.Bhatia,et al.,Biotech.Prog.1998、14、378−387参照)によって培養することができる。かような細胞として肝細胞を用いる場合の培養は、通常、少なくとも24時間後には、培養肝細胞スフェロイドが前記小領域上のフィーダー培養細胞層上に形成できる。
【0049】
肝細胞以外の他の細胞も、それ自体既知の培養法により培養し、培養実質細胞のスフェロイドを前記小領域上のフィーダー培養細胞層上に形成できる。限定されるものでないが、心筋細胞の培養については、T.Shimizu et al.,Journal of Biomedical Materials Research、60(1)(2002):110−117、G.Illiano et al.,American Journal of Hypertension 15(2002):638−643を、グリア細胞の培養については、C.Gamboa et al.,Neurochemistry International 40(2002):397−403を、そして膵ベータ細胞の培養については、J.L.Petit−Thevenin et al.,Biochemica et Biophysica Acta 1530(2001):184−198を、それぞれ参照できる。
【0050】
本発明で使用する動物細胞は、それぞれ既知の、例えば外科的手法により、それぞれ得られる、好ましくは初代細胞であることができるが、例えば、(財)ヒューマンサイエンス振興財団、その他の供給元から市販されているものであってもよい。
【0051】
以上により得ることのできる共培養物を、支持体表面上に有する培養細胞構築物はそれ自体を表面とするバイオデバイス、あるいは該共培養物で表面を形成したバイオデバイスを作製するのに使用できる。限定されるものでないが、このようなバイオデバイスとしては、培養実質細胞の毒性を検査するためのデバイス、培養実質細胞の機能を賦活化する物質をスクリーニングするためのデバイス、実質細胞不全の医療サポート用デバイスおよび実質細胞の生理作用を模擬試験をするためのデバイス等を挙げることができる。
【0052】
本発明に従う、バイオデバイス上に担持される共培養物(培養細胞から形成されるスフェロイドおよび該スフェロイドに接触した下層を形成した、該スフェロイドを形成する細胞とは異なる培養細胞の実質的に単層を含んでなる)は、長期にわたり安定に該デバイス表面に保持され、各実質細胞に特異的な機能(肝細胞以外の膵ベータ細胞にあっては、例えば、インスリン分泌機能、心筋細胞にあっては、拍動運動機能)も保持しうる。例えば、肝細胞を用いて作製されうる本発明のバイオデバイスは、所定の配列パターンで形態の均質なスフェロイドが担持されたものであり、また、該スフェロイドは実質的に各小領域ごと独立した形状を有している。さらに本発明に従うバイオデバイス上のスフェロイドは高レベルの肝細胞機能(例えば、高レベルのアルブミン産生能)が、最低でも3週間安定に維持されている。したがって、このようなバイオデバイスは例えば、肝機能に影響を及ぼしうる環境または物質のスクリーニングに用いることができる。かような影響はスフェロイドの形態の変化や産物、例えばアルブミンの産生能の変化をモニターすることにより、判価しうる。
【0053】
本発明に従う、上記の培養細胞構築物中に含まれる共培養物は、物理的または生化学的に処理することにより、支持体から剥離された培養物それら自体を提供できる。このような遊離した形態にある共培養物も、本発明の一態様であり、例えば、移植医療、器官再生工学、ハイブリッド型人工器官で用いることができる。
【0054】
以下、具体例をあげて、本発明をさらに説明するが、これらは、本発明の理解を容易に
する目的で提供するにすぎない。
【0055】
a)細胞培養床の作成
ホワイトスライドグラス(26×76×0.8mm/Takahashi Giken
Glass Co.,Ltd.)を硫酸/過酸化水素(50/50)で60分間煮沸し、次いで洗浄した後、エタノール/水(95/5)中の2%[3−(メタクリロイルオキシ)プロピル]トリメトキシシラン溶液を用いるシランカップリングにより上記グラス表面を疎水処理した。こうして調製された疎水処理スライドグラス表面に分子量20000のポリラクチドの4%トルエン溶液をスピンコーティングし、次いでアセタール−ポリエチレングリコール(分子量6000)−コーポリラクチド(分子量8000)(以下、アセタール−PEG/PLAという)のアルデヒド化物とアミノフェニルラクトースとの還元アミノ化により得たラクトース−PEG/PLAの2%トルエン溶液を、さらにスピンコーティングし、約100μm厚の高分子層表面を形成した。こうして得られた高分子層表面上にそれぞれ相互に100μm間隔で離れた100μmの円形状の孔をもつマスクパターンを置き、H+Nのプラズマ処理した[ICP power:500W、Bias power:30W(Vdc=60V)、N+H=50sccm/30sccm、2×10−5Torr]。プラズマ処理により、上記マスクパターンに従うガラス表面が露出した孔が形成された(図1参照)。
【0056】
上記表面にダルベッコの改変イーグル培地(DMEN、Gibco)(インスリン、ウシ胎仔血清、グルカゴン、上皮増殖因子、ペニシリン、ヒドロコルチゾンおよびストレプトマイシン補足)を施用し、上記孔に対応した細胞接着ドメイン(または細胞培養床)を形成した。
【0057】
b)細胞培養
a)で得た細胞培養床上に血管内皮細胞(Bovine aorti endotherial cell)を1×10cell/cmにて播種した後、5% CO雰囲気下、37℃で24時間静置培養した。こうして、露出した孔のガラスパターンに沿って内皮細胞が接着した(図2参照)。次いで、ラット肝臓からコラゲナーゼ灌流法により調製した初代肝細胞を1×10cell/cmにて播種した後、5% CO雰囲気下、37℃で24時間静置培養すると、上記パターン状にドメインを形成した内皮細胞の上だけに肝細胞が接着し、スフェロイド状のアレイを形成した(図3参照)。これらの肝スフェロイドは、少なくとも3週間は肝機能(例えば、アルブミン産生能)を維持し、細胞骨格が確認できる(スフェロイドの3次元拡大像については、図5参照)。
【0058】
なお、ラクトース−PEG/PLA表面上でも、100μmの円形状の孔が100μm間隔未満になると、内皮細胞のパターンが隣接のものどうしがつながり、さらに間隔を短かくすると、細胞はシート状になる場合がある(図4参照)。通常、パターン化された内皮細胞層が存在しないと、培養肝細胞のスフェロイドパターンは形成されない。
【0059】
産業上の利用可能性
上記のようにして得られる、例えば、肝スフェロイドアレイは、それらの肝スフェロイドが長期にわたって肝機能を維持し、また、カルチャーディッシュ1部屋当たり、例えば、数万個の肝スフェロイドを存在せしめることができる(理論上は無制限)ので、1度に数万種の薬物アッセイを行うのに利用できる。また、該アレイから剥離される共培養物、例えば、培養肝スフェロイドは、移植医療、肝再生工学の技術分野で利用できるであろう。したがって、本発明は、薬物の作用を評価するための検査を行う産業、あるいは医療サポート用産業で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例で調製された、マスクパターンに従って形成されたガラス表面の露出孔を表わす図面に代わる顕微鏡写真である。
【図2】図1のパターン化した孔に由来する細胞培養床に培養内皮細胞が接着した状態を表わす図面に代わる顕微鏡写真である。
【図3】図2のパターン状にドメインを形成した内皮細胞の上だけに肝細胞が接着し、肝細胞スフェロイドが形成された状態を表わす図面に代わる顕微鏡写真である。
【図4】100μmの円形状の孔の間の距離が、100μm未満になった場合に、培養内皮細胞のパターンがつながる場合があることを示す図に代わる顕微鏡写真である。
【図5】内皮細胞の上にパターン状に形成された肝スフェロイドの3次元像を表わす図に代わる共焦点レーザー顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上の微細パターン化した複数の小領域上に相互に異なる動物細胞の共培養物が接着した培養細胞構築物であって、
該共培養物の1種が、肝細胞、膵ベータ細胞、心筋細胞、グリア細胞、皮膚上皮細胞、軟骨細胞、骨細胞および幹細胞からなる群より選ばれる実質細胞由来の培養細胞から形成されたスフェロイドを含んでなり;
該共培養物のもう1種が、該スフェロイドに接触した下層を形成し、そして内皮細胞または線維芽細胞に由来する培養細胞であり;
該小領域が円形、多角形または楕円形であって、約1,500μm〜約50,000μmの面積を有するか、または円形とした場合に約40μm〜約500μmの直径を有し;そして
該小領域の各々が親水性かつ細胞非親和性ポリマーで形成された支持体上の表面で少なくとも約100μm隔離されている、
上記培養細胞構築物。
【請求項2】
請求項1記載の培養細胞構築物であって、該小領域が直径約50μm〜約200μmの円形である、上記構築物。
【請求項3】
請求項1記載の培養細胞構築物であって、該小領域が直径約100μmであり、そして該小領域の各々が約100μm隔離されている、上記構築物。
【請求項4】
スフェロイドを形成する細胞が肝細胞である、請求項1〜3のいずれか一に記載の培養細胞構築物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の培養細胞構築物で形成された表面を含んでなるバイオデバイス。
【請求項6】
バイオデバイスが、スフェロイドを形成する細胞の毒性を検査するためのデバイス、スフェロイドを形成する細胞の機能を賦活化する物質をスクリーニングするためのデバイス、スフェロイドを形成する細胞不全の医療サポート用デバイスおよび実質細胞の生理作用の模擬試験をするためのデバイスからなる群より選ばれる請求項5記載のバイオデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−119010(P2008−119010A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23913(P2008−23913)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【分割の表示】特願2003−515653(P2003−515653)の分割
【原出願日】平成14年7月25日(2002.7.25)
【出願人】(304063912)株式会社トランスパレント (7)
【Fターム(参考)】