説明

動物骨材のクラック形成装置及び形成方法

【課題】動物骨材にクラックを形成し、さらに骨髄液抽出の簡易化を可能とする。
【解決の手段】動物骨材にクラックを形成する動物骨材のクラック形成装置であって、水が充填された容器体と、前記水中に配備された第1の電極と、前記水中であって、前記第1の電極に対向する位置に配置される接地電極と、前記第1の電極に接続され、高電圧パルスを発生する高電圧パルス発生部とを備え、前記第1の電極と前記接地電極との間に前記動物骨材を配置し、前記第1の電極に前記動物骨材を接触もしくは近接非接触させた状態で前記高圧電圧パルス発生部が高電圧パルスを印加し、前記動物骨材にクラックを形成することを特徴とする動物骨材のクラック形成装置を用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧パルス・衝撃波を利用し、動物骨材のような硬質な食材にクラックを形成し、クラックを形成した動物骨材から骨髄液を抽出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
今までは、動物骨材抽出液由来のスープを作成する上で長時間ガス火などを用いて煮込む必要があった。
【0003】
そのため、事前に動物骨材をある程度に切断し、抽出効率を高めている技術があった。
【0004】
また、動物骨材に圧縮処理を行い、無数のひびを形成させ、かつ、高密度の動物骨材の塊状体を作成し効率よくだしをとるための技術があった。
【0005】
【特許文献1】特許第3650095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、豚骨、鶏がら等の動物骨材を脱血処理した後凍結処理し、この凍結処理した動物骨材を圧縮処理して塊状体とし、この塊状体を通水性を有する素材で形成した収納体に収納するスープだし取り用の動物骨材ブロック形成方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1によれば、凍結処理を必要とするため、凍結時に動物骨材の細胞が変質して旨みを損なう虞があるという問題があった。また、特許文献1によれば、圧縮処理の際にひびを形成するが、その際プレス機を用いるため、例えば馬や牛の大腿骨等のように硬い骨の場合にプレス機が大型化する虞があるという問題があった。
【0008】
そこで、上述の課題に鑑み、本発明の目的は、動物骨材の凍結及び圧縮処理を行うことなく、動物骨材にクラックを形成可能な動物骨材のクラック形成装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、動物骨材にクラックを形成する動物骨材のクラック形成装置であって、水が充填された容器体と、前記水中に配備された第1の電極と、前記水中であって、前記第1の電極に対向する位置に配置される接地電極と、前記第1の電極に接続され、高電圧パルスを発生する高電圧パルス発生部とを備え、前記第1の電極と前記接地電極との間に前記動物骨材を配置し、前記第1の電極に前記動物骨材を接触もしくは近接非接触させた状態で前記高圧電圧パルス発生部が高電圧パルスを印加し、前記動物骨材にクラックを形成することを特徴とする動物骨材のクラック形成装置を用いることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、水が充填された容器体と、前記水中に配置された第1の電極と、前記水中であって、前記第1の電極に対向する位置に配置される接地電極と、前記第1の電極に接続され、高電圧パルスを発生する高電圧パルス発生部とを備える動物骨材クラック形成装置、を用いた動物骨材形成方法であって、前記第1の電極と前記接地電極との間に動物骨材を配置し、前記第1の電極に前記動物骨材を接触もしくは近接非接触させた状態で前記高電圧パルス発生部が高電圧パルスを印加することを特徴とする動物骨材のクラック形成方法を用いること特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、水が充填された容器体と、前記水中に配置された第1の電極と、前記水中であって、前記第1の電極に対向する位置に配置される接地電極と、前記第1の電極に接続され、高電圧パルスを発生する高電圧パルス発生部とを備える動物骨材クラック形成装置を用いて骨髄液を抽出する方法であって、前記第1の電極と前記接地電極との間に、クラックが形成された動物骨材を配置し、前記第1の電極に、前記クラックが形成された動物骨材を接触もしくは近接非接触させた状態で前記高電圧パルス発生部が高電圧パルスを印加することで前記クラックが形成された動物骨材の骨髄細胞膜を破壊し、骨髄液を抽出することを特徴とする骨髄液を抽出する方法を用いることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項2に記載の発明において、動物骨材のクラック形成方法により得られたクラックが形成された動物骨材を原料とした食品を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、動物骨材にクラックを形成する動物骨材のクラック形成装置であって、水が充填された容器体と、前記水中に配備された第1の電極と、前記水中であって、前記第1の電極に対向する位置に配置される接地電極と、前記第1の電極に接続され、高電圧パルスを発生する高電圧パルス発生部とを備え、前記第1の電極と前記接地電極との間に前記動物骨材を配置し、前記第1の電極に前記動物骨材を接触もしくは近接非接触させた状態で前記高圧電圧パルス発生部が高電圧パルスを印加し、前記動物骨材にクラックを形成する構成であるから、印加された高電圧パルスによる衝撃波及び動物骨材の空胞の熱膨張によってクラックが動物骨材に形成されるので、凍結及び圧縮処理を行うことなく、動物骨材にクラックを形成可能な動物骨材のクラック形成装置を提供できる。
【0014】
請求項2の発明によれば、水が充填された容器体と、前記水中に配置された第1の電極と、前記水中であって、前記第1の電極に対向する位置に配置される接地電極と、前記第1の電極に接続され、高電圧パルスを発生する高電圧パルス発生部とを備える動物骨材クラック形成装置、を用いた動物骨材形成方法であって、前記第1の電極と前記接地電極との間に動物骨材を配置し、前記第1の電極に前記動物骨材を接触もしくは近接非接触させた状態で前記高電圧パルス発生部が高電圧パルスを印加する構成であるから、印加された高電圧パルスによる衝撃波及び動物骨材の空胞の熱膨張によってクラックが動物骨材に形成されるので、凍結及び圧縮処理を行うことなく、動物骨材にクラックを形成可能な動物骨材のクラック形成方法を提供できる。
【0015】
請求項3の発明によれば、水が充填された容器体と、前記水中に配置された第1の電極と、前記水中であって、前記第1の電極に対向する位置に配置される接地電極と、前記第1の電極に接続され、高電圧パルスを発生する高電圧パルス発生部とを備える動物骨材クラック形成装置を用いて骨髄液を抽出する方法であって、前記第1の電極と前記接地電極との間に、クラックが形成された動物骨材を配置し、
前記第1の電極に、前記クラックが形成された動物骨材を接触もしくは近接非接触させた状態で前記高電圧パルス発生部が高電圧パルスを印加することで前記クラックが形成された動物骨材の骨髄細胞膜を破壊あい骨髄液を抽出する構成であるから、高電圧パルスを用いてエレクトロポレーションにより骨髄細胞膜を破壊し骨髄液を抽出することができるので、凍結処理や圧縮処理をすることなくクラックが形成された動物骨材から骨髄液を抽出する方法を提供できる。
【0016】
請求項4の発明によれば、請求項2に動物骨材のクラック形成方法により得られたクラックが形成された動物骨材を原料とした食品であるから、凍結処理や圧縮処理を施さずに形成されたクラックを有する動物骨材を原料とすることができるので、凍結処理や圧縮処理によって旨みを損なうことなく食品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本実施形態の動物骨材のクラック形成装置11について図1を用いて説明する。本実施形態の動物骨材のクラック形成装置11は、容器体1と、第1の電極2と、接地電極3と高電界パルス発生部4とを備える。

【0018】
まず、容器体1は、例えば、円筒状の縦長の鍋のようなもので、側面が不導体のコーティングもしくは、不導体のプラスチックのような物質でできており、底部の全体もしくは一部が金属部分でできている。
【0019】
第1の電極2は、不導体でコーティングされた金属ケーブルである。その第1の電極2の水中パルス放電部分である金属は1〜5mm剥き出しになっている。その金属の材質は、白金、金、鉄などの溶解しにくい人体に無害な金属を使用する。なお、第1の電極2は電極支持体5によって支えられており、高電圧パルス発生部4の導線が電極支持体5に繋がっており、電極支持体内部で第1の電極2と連結できるようになっている。
【0020】
接地電極3は容器体1の底部で構成される。これに限らず容器体を不導体で形成し、底部中央部分に金属を配置したりすることで、接地電極3とすることができる。接地電極3は連結部6により高電界パルス発生部4と連結する。
【0021】
高電圧パルス発生部4は例えば公知のマルクス式パルスジェネレーターなどの高電圧を発生可能な装置で形成される・
【0022】
クラック形成装置11を使用した動物骨材のクラック形成方法について図1を用いて説明する。図1に示されるように例えば鍋等の容器体1に動物骨材7を入れ鍋に水8を満たす。例えば公知のマルクス式パルスジェネレーター等の高電界パルス発生部4より電極支持体5に付属する第1の電極2を動物骨材7接着もしくは近接非接着し、水面よりも下になるように配置する。その後、400KV 以上の高電圧パルスを発生させ動物骨材骨質部に高電圧をかけ、パルス印加時の水が液体から気体に変化する際の急激な体積変化による衝撃波と高電界パルスの影響による骨質部の空隙部にある空気・液胞などの急激な熱膨張により、動物骨材7の表面にクラックを形成させることができる。電界強度により第1の電極2から動物骨材7まで10cmほど離れていても衝撃波によるエネルギーは十分に維持される。また、電圧を変えることで好みのクラック形成ができ、動物骨材表面部にクラックが形成される程度から完全粉砕まで行える。さらに下処理として、弱い衝撃波で動物骨材の脱血処理、除身処理が行える。
【0023】
骨髄液抽出方法について図2を用いて説明する。図2に示されるように機器としてはクラック形成装置11の装置と同様の装置を使用する。クラックを入れた動物骨材9にさらに高電界パルスを印加することにより、骨質部分よりも誘電性を持つ骨髄膜と骨髄細胞10の細胞膜に電界がかかる。そして、エレクトロポレーションの原理で膜を分極化させ、不可逆的に孔を開ける。その結果、骨髄細胞10より骨髄液が浸潤し、骨のクラックから骨髄液が容易に外に漏出するようになる。
【0024】
高電界パルスの強度を変化させることにより、従来では用いることが難しかった硬い馬の動物骨材7などにも容易にクラックを形成することができる。また、動物骨質部に大きなクラックを数本入れ、エレクトロポレーションにより骨髄を抽出することにより、清湯のような澄んだスープが作成できる。また、骨質部の破壊を重点的に行うことにより白濁したスープを作成できる。目的に応じた電界強度で処理をした後に煮込みなどの加熱処理を加え、様々なスープを作成することができる。さらに、高電界パルスの放電間隔を制御することにより、非加熱的に処理をすることができ、熱に弱いタンパク質などが生理活性を維持されたまま抽出することも可能であり、研究や医療の分野への応用ができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
大規模施設などで動物骨材からのスープの作成を行う場合、前段階操作で本方法を遂行することにより、ガス代の大幅な軽減が可能となる。また、今まで抽出に不向きだった馬などの大きくて硬質な骨からも抽出できることにより食材利用の幅が広がることが可能となる。さらに非加熱処理抽出ができることで医療・研究分野への貢献もできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施例の動物骨材へのクラック形成を示す説明平面図である。
【図2】本実施例の高電界パルスを用いた骨髄細胞破壊を示す説明平面図である。
【符号の説明】
【0027】
1・・・鍋容器体
2・・・第1の電極
3・・・接地電極
4・・・高電界パルス発生部
5・・・電極支持体
6・・・連結部
7・・・動物骨材
8・・・水
9・・・クラックを入れた動物骨材
10・・・骨髄細胞
11・・・動物骨材クラック形成装置
L・・・水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物骨材にクラックを形成する動物骨材のクラック形成装置であって、
水が充填された容器体と、
前記水中に配備された第1の電極と、
前記水中であって、前記第1の電極に対向する位置に配置される接地電極と、
前記第1の電極に接続され、高電圧パルスを発生する高電圧パルス発生部とを備え、
前記第1の電極と前記接地電極との間に前記動物骨材を配置し、前記第1の電極に前記動物骨材を接触もしくは近接非接触させた状態で前記高圧電圧パルス発生部が高電圧パルスを印加し、前記動物骨材にクラックを形成することを特徴とする動物骨材のクラック形成装置。

【請求項2】
水が充填された容器体と、
前記水中に配置された第1の電極と、
前記水中であって、前記第1の電極に対向する位置に配置される接地電極と、
前記第1の電極に接続され、高電圧パルスを発生する高電圧パルス発生部とを備える動物骨材クラック形成装置、を用いた動物骨材形成方法であって、
前記第1の電極と前記接地電極との間に動物骨材を配置し、
前記第1の電極に前記動物骨材を接触もしくは近接非接触させた状態で前記高電圧パルス発生部が高電圧パルスを印加することを特徴とする動物骨材のクラック形成方法。

【請求項3】
水が充填された容器体と、
前記水中に配置された第1の電極と、
前記水中であって、前記第1の電極に対向する位置に配置される接地電極と、
前記第1の電極に接続され、高電圧パルスを発生する高電圧パルス発生部とを備える動物骨材クラック形成装置を用いて骨髄液を抽出する方法であって、
前記第1の電極と前記接地電極との間に、クラックが形成された動物骨材を配置し、
前記第1の電極に、前記クラックが形成された動物骨材を接触もしくは近接非接触させた状態で前記高電圧パルス発生部が高電圧パルスを印加することで前記クラックが形成された動物骨材の骨髄細胞膜を破壊し、骨髄液を抽出することを特徴とする骨髄液を抽出する方法。

【請求項4】
請求項2の動物骨材のクラック形成方法により得られたクラックが形成された動物骨材を原料とした食品。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−177099(P2011−177099A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43763(P2010−43763)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【Fターム(参考)】