説明

動的加硫されたアロイの製造方法

少なくとも1のイソブチレン含有エラストマーと、少なくとも1の熱可塑性樹脂とから成る動的加硫されたアロイを製造する方法であって、熱可塑性樹脂と、少なくとも1の可塑剤とを第1溶融加工装置で混練して樹脂マスターバッチを製造する工程と;エラストマー、少なくとも1の硬化剤、及び樹脂マスターバッチを第2溶融加工装置の供給口に供給する工程と;第2溶融加工装置の内容物を動的加硫条件下で混練して動的加硫されたアロイを製造する工程とが含まれ、エラストマーが、熱可塑性樹脂の連続相中に分散相として存在する、動的加硫されたアロイを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は動的加硫されたアロイ、及び動的加硫されたアロイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの熱可塑性エラストマーが知られており、タイヤやその他のゴム工業、及びその他の工業分野において用いられている。
【0003】
このような熱可塑性エラストマー組成物の1種は、例えばポリアミドやポリアミドブレンド物等の熱可塑性樹脂中に、例えばブチルゴム, ハロブチルゴム, または臭素化イソブチレンパラ-メチルスチレンコポリマー等の低空気透過性ゴムが分散された構成となっている。これらのゴムは動的加硫(静的加硫ではゴムを成型中に硬化させるが、これとは逆にゴムを溶融混練中に硬化させる)条件下で加硫され、熱可塑性樹脂の連続相中に、均一で親和性の有る粒状相となって分散される。ゴムは剪断混練条件下で硬化されるため、このような組成物は一般に動的加硫されたアロイ (DVA)として知られている。通常、熱可塑性エラストマーを製造するための剪断混練は、例えば多軸押出機等の混練機により行われている。
【0004】
樹脂とゴムの剪断混練により、組成物に熱可塑性と同様の性質を付与することができる。このように熱可塑性を有することは、柔軟性、強度、及び伸びが求められるタイヤのインナーライナーに好ましい。このように動的加硫された組成物は、従来のブロモブチル製インナーライナーよりも高い空気不透過性を有する。動的加硫された組成物の空気不透過性が増加することにより、インナーライナー材の厚みを薄くすることができる。しかし、この組成物は熱可塑性を示すものの、この組成物中の樹脂成分はエラストマー成分よりも柔軟性が乏しく、また、材料が曝される操作温度が低くなると、柔軟性の低下により組成物の低温耐疲労特性及び低温耐クラッキング特性が低下する。
【0005】
EP 0 969 039 Alに、実用的耐久性を有する組成物を得るためには熱可塑性樹脂中に分散させるゴムの粒径を小さくすることが重要であること、特にこのような組成物が空気タイヤのインナーライナーに用いられる場合に重要であることが開示されている。またEP 0 969 039 Alには、ゴム/樹脂の溶融粘度の比を1に保ちながら組成物中のゴムの量を増加させることによって、空気タイヤのインナーライナーとして十分な耐久性、十分な柔軟性、強さ、及び伸びを有する熱可塑性エラストマー組成物を製造しようとすると、ゴムが組成物のマトリックスの主成分になり、組成物は熱可塑性を示さなくなることが開示されている。
【0006】
米国特許出願公開No. 2006/0293457には、 a) 少なくとも3本の噛み合いスクリューを有するマルチスクリュー押出機で熱可塑性ポリマー及び加硫可能なエラストマーのブレンド物を溶融加工し、b) 押出機の長さ方向に沿って始点から46%の点においてa)で溶融加工したブレンド物に少なくとも1の硬化剤を添加するか、または別の押出機によりa)で溶融加工したブレンド物に少なくとも1の硬化剤を添加してブレンド物の硬化を開始させ;前記エラストマーの少なくとも一部を反応性溶融プロセスで硬化させることにより熱可塑性加硫物を製造する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
DVAを製造する製造方法はDVAのモルフォロジーに大きく影響し、またこのためDVAの物性にも影響する。特に、DVAの低温耐久性は組成だけではなく、最終製品のモルフォロジーにも依存する。従って、従来の方法で得られる現行のDVAのモルフォロジー及び物性と同等又はより優れたモルフォロジー及び物性を有するDVAを製造することが可能なDVA製造プロセスが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、熱可塑性樹脂及びエラストマーから成る動的加硫されたアロイ (DVA)の製造方法に関する。好ましくは、エラストマーはイソブチレン含有エラストマー等の低空気透過性ゴムであり、最も好ましくはエラストマーはハロゲン化されている。この製造方法では、エラストマー及び熱可塑性樹脂を、混合物を動的加硫可能な混練機に供給する。この発明のDVAは改善された低温耐疲労特性を有するので、アロイが比較的低い使用温度で繰り返し応力を受けたときでも、クラッキングが発生する可能性が低減される。このような特性はDVAの加工方法に影響されるものであり、本願に低温疲労特性が改善されたDVAを製造する方法を開示する。
【0009】
一態様では、この発明により動的加硫されたアロイを製造する方法が提供され、この製造方法では少なくとも1の熱可塑性樹脂、及び少なくとも1の可塑剤を第1溶融加工装置で混練して樹脂マスターバッチを製造し、少なくとも1のエラストマー、少なくとも1の硬化剤、及び前記樹脂マスターバッチを剪断条件下において第2溶融加工装置で混練する。
【0010】
以下、この発明の様々な構成、実施態様及び有利な効果について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】動的加硫されたアロイを製造する方法を表す模式図であり、この図ではゴムマスターバッチ及び粒状ゴムが使用されている。
【図2】この発明に係る動的加硫されたアロイの製造方法の一実施形態を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態の例等の様々な実施形態、変形例、及び実施例、及び請求項に係る発明を理解するために本願で用いられる定義を下記に示す。下記に特定の好ましい実施形態を示すが、当業者であればこれらの実施形態は例示に過ぎず、他の態様で実施できることを理解できるであろう。侵害の認定に当っては、この発明の範囲には、特許請求の範囲及びその均等物、及び開示された構成要件または数値限定の均等物が含まれる。「発明」とは、各請求項に定義された1以上の発明を意味するが、全発明である必要は無い。
【0013】
本願で「動的加硫」と言うときは、熱可塑性樹脂及び加硫可能なエラストマーが高剪断条件下で加硫される加硫プロセスを意味する。剪断混練の結果、加硫可能なエラストマーは架橋されると同時に熱可塑性樹脂中に「ミクロゲル」の小粒子となって分散され、動的加硫されたアロイ (DVA)となる。
【0014】
動的加硫は、エラストマーの硬化温度以上の温度において各原料を混練することにより行われる。混練プロセスで用いられる混練機の非限定的例示として、ロールミル、バンバリーTM混練機、連続混練機、ニーダ、または例えば二軸押出機等の混練押出機が挙げられる。DVAの特徴は、エラストマー成分が完全に硬化されているにも関わらず、DVAを押出、射出成型、圧縮成型等の従来のゴムの加工方法により加工及び再加工できることである。スクラップまたはフラッシングを回収して再加工することができる。
【0015】
この発明のDVAは、エラストマーが微少粒子となって熱可塑性樹脂中に均一に分散されたモルフォロジーを有する。ゴムと樹脂の比が1.0以上のときでも、熱可塑性樹脂成分が連続相となり、エラストマーが分散相となる。分散されたエラストマーの粒径及び樹脂相の構造を制御することによりDVAの耐久性を向上させ、特に低温における耐久性を向上させる。
【0016】
好ましくは、少なくとも1の熱可塑性樹脂、及び少なくとも1の可塑剤を第1溶融加工装置で混練して樹脂マスターバッチを製造し;少なくとも1のエラストマー、少なくとも1の硬化剤、及び前記樹脂マスターバッチを剪断条件下において第2溶融加工装置で混練することにより、動的加硫されたアロイを製造する。
【0017】
好ましい実施形態では、動的加硫されたアロイは少なくとも1のハロゲン化されたイソブチレン含有エラストマーと、少なくとも1の熱可塑性樹脂とから成り、前記熱可塑性樹脂と少なくとも1の可塑剤をマルチスクリュー押出機で混練して樹脂マスターバッチを製造し;前記エラストマー、少なくとも1の硬化剤、及び前記樹脂マスターバッチを第2マルチスクリュー押出機の供給口に供給し;第2マルチスクリュー押出機の内容物を動的加硫されたアロイが製造され得る温度及び剪断の動的加硫条件下で混練し、ここでエラストマーは、熱可塑性樹脂の連続相中に加硫または一部加硫された小粒子の分散相として存在する。
【0018】
<熱可塑性樹脂>
本願で「熱可塑性樹脂」と言うときは、高温に曝されたとき軟化または溶融し、低温または室温にされたとき元の状態に戻る物質を意味する。本願では、熱可塑性樹脂は、加熱したとき、架橋または硬化によって固化する熱硬化性またはエラストマー性物質とは区別される。
【0019】
DVAに使用する好ましい熱可塑性樹脂として、ポリアミド, ポリイミド, ポリカーボネート, ポリエステル, ポリスルホン, ポリラクトン, ポリアセタール, アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂 (ABS), ポリフェニレンオキシド(PPO), ポリフェニレンスルフィド (PPS), ポリスチレン, スチレン-アクリロニトリル樹脂 (SAN), スチレン無水マレイン酸樹脂 (SMA), 芳香族ポリケトン (例えばPEEK, PED, 及びPEKK)、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される樹脂が挙げられる。
【0020】
好ましい熱可塑性ポリアミド(ナイロン)は、結晶性または樹脂性の高分子量固形ポリマーから成り、ポリマー鎖中に再硬化性アミドユニットを有するコポリマー及びターポリマーが含まれる。繊維用ナイロン及び成型用ナイロンのいずれも好適に用いられる。ポリアミドの例として、ポリカプロラクタム(ナイロン-6), ポリラウリルラクタム(ナイロン-12), ポリヘキサメチレンアジピン酸アミド(ナイロン-6,6) ポリヘキサメチレンアゼライン酸アミド(ナイロン-6, 9), ポリヘキサメチレンセバシン酸アミド(ナイロン-6,10), ポリヘキサメチレンイソフタル酸アミド(ナイロン-6, IP), ナイロン 6,66 コポリマー,及び11-アミノ-ウンデカン酸(ナイロン- 11)の重縮合化合物が挙げられる。
【0021】
本願での使用に適した熱可塑性ポリエステルとして、酸無水物と単独または混合ジオールと、脂肪族または芳香族ポリカルボン酸エステルの単独または混合物のポリマー反応生成物が挙げられる。好ましいポリエステルは、ナフタレン酸またはフタル酸等の芳香族ジカルボン酸と、C2からC4のジオールとから誘導され、例えばポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等である。好ましいポリエステルの融点は160℃から260℃である。
【0022】
好ましい熱可塑性樹脂の融点は少なくとも150℃である。ひとつの実施形態では、熱可塑性樹脂の融点は約150℃から約250℃である。
【0023】
<エラストマー>
DVAのエラストマー成分は、熱硬化性、エラストマー性物質の組み合わせから選択される。最終製品に不透過性が求められる場合、少なくとも1の低空気透過エラストマーを用いることが望ましい。好ましい低空気透過性エラストマーは、ブチルゴム, ハロゲン化ブチルゴム, 星状分岐ブチルゴム, ハロゲン化星状分岐ブチルゴム, ポリ(イソブチレン-co-アルキルスチレン), ハロゲン化ポリ(イソブチレン-co-アルキルスチレン), 及びイソブチレン-イソプレン- アルキルスチレンターポリマー等のイソブチレン含有エラストマーである。
【0024】
好ましいハロゲン化イソブチレンエラストマー成分として、数平均分子量Mnが 少なくとも約25,000,好ましくは少なくとも約50,000, 好ましくは少なくとも約75,000, 好ましくは少なくとも約100,000,好ましくは少なくとも約150,000のコポリマー(例えば臭素化イソブチレンパラメチルスチレンコポリマー)が挙げられる。このようなコポリマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわちMw/Mnは約6未満, 好ましくは約4未満, より好ましくは約 2.5未満,最も好ましくは約2.0未満である。別の実施形態では、好ましいハロゲン化イソブチレンエラストマー成分として125℃のムーニー粘度(1+4) (ASTM D 1646-99準拠)が25以上、好ましくは30以上、より好ましくは40以上のコポリマー(例えば臭素化イソブチレンパラメチルスチレンコポリマー)が挙げられる。
【0025】
好ましいエラストマーとして、ハロゲン化された、またはハロゲン化されていないイソブチレンとパラアルキルスチレンのコポリマーが挙げられる。好ましくは、イソブチレンとパラアルキルスチレンのコポリマーはハロゲン化されている。このようなエラストマーは、本願に参照として組み込まれる欧州特許出願0 344 021号に開示されている。このようなコポリマーは、好ましくは実質的に均一な組成分布を有する。パラ-アルキルスチレン部位の好ましいアルキル基として、炭素数が1から5のアルキル基、炭素数が1から5の一級ハロアルキル基、炭素数が1から5の二級ハロアルキル基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましいコポリマーはイソブチレンとパラメチルスチレンから成る。好ましい臭素化イソブチレン−パラメチルスチレンコポリマーは、 5から12重量%のパラメチルスチレンと、0.3から1.8mol%の臭素化パラメチルスチレンとを含有し、125℃のムーニー粘度(1+4)(ASTM D 1646-99準拠)が30から65である。
【0026】
このようなハロゲン化イソブチレンエラストマーコポリマーは、イソブチレンと、コポリマーの総重量を基準として約0.5から約25%、好ましくは約2から約20%のp-アルキルスチレン、好ましくはp-メチルスチレンとを重合した後、ハロゲン化する。ハロゲン(例えばBrおよび/またはCl, 好ましくはBr)の含有量は、コポリマーの総重量を基準として約10重量%未満、より好ましくは約0.1から約0.7重量%である。
【0027】
この発明のエラストマー組成物には、上記の必須原料に加え、加硫剤または架橋剤、または加硫促進剤または架橋促進剤が含有されている。これらの添加剤の添加量は、本願の目的に反しない限り、公知の量である。
【0028】
DVA中の熱可塑性樹脂とエラストマーの重量比は、ひとつの実施形態では5/95から75/25、別の実施形態では10/90から75/25である。この比は、可塑性樹脂とエラストマーの総量を100重量部としたときの値である。
【0029】
動的加硫されたアロイには、アロイブレンドの重量を基準として熱可塑性樹脂が約10から98 wt%含まれ、別の実施形態では約20から95wt%含まれる。また別の実施形態では、動的加硫されたアロイ中には35から90wt%の範囲の可塑性樹脂が含まれる。DVA中のエラストマーの量は、アロイブレンドの重量を基準として約2から90wt%の範囲であり、別の実施形態では約5から80wt%の範囲である。また別の実施形態では、DVA中のエラストマーの量は10から65wt%の範囲である。
【0030】
<第2エラストマー>
いくつかの実施形態では、DVAにはさらに第2エラストマーが含有される。第2エラストマーはどのようなエラストマーでもよいが、好ましくは、第2エラストマーはイソブチレン含有エラストマー以外のエラストマーである。好ましい第2エラストマーの例として、無水マレイン酸変性コポリマーが挙げられる。好ましくは、第2エラストマーは無水マレイン酸変性エチレン-エチルアクリレート等の、無水マレイン酸及びエステル官能基を含むコポリマーである。
【0031】
第2エラストマーは、エラストマー及び熱可塑性樹脂マスターバッチと同時にDVA製造押出機に投入することができる。あるいは、DVA製造押出機にエラストマー及び熱可塑性樹脂マスターバッチを投入した前、または後に投入することができる。
【0032】
DVA中の第2エラストマーは約2wt% から約45wt%の範囲である。DVAに少なくとも1のエラストマーと第2エラストマーとが含まれる場合、エラストマー及び第2エラストマーの総量は、好ましくは約2wt%から約90wt%の範囲である。
【0033】
<DVAの混練>
DVAを製造する方法には、エラストマーと熱可塑性樹脂の混練工程が含まれる。好ましくは、混練はスクリュー式押出機等の溶融加工装置を用いて行われる。この方法では、架橋可能なエラストマー、オイル、熱可塑性樹脂、硬化剤、及び触媒を加工可能で、硬化を生じさせるために十分な高温と高剪断速度を生じさせることができる装置であれば、どのような溶融加工装置でも用いることができる。好ましい溶融加工装置の非限定的例示としてバス・コニーダ(buss-co kneader), 遊星押出機(planetary extruder), 2以上のスクリューチップを備える同方向、または逆回転マルチスクリュー押出機, 2以上のスクリューチップを備える同方向回転噛合い押出機, リング押出機(ring extruder)が挙げられる。スクリューチップとは、押出機のスクリューのフライトの先端縁を意味する。1以上の加工装置を直列または連続で用いることができ、好ましくは直列で用いることができる。好ましくは、溶融ブレンディングは溶融されるか、または溶融状態の材料中で生じる。材料は溶融加工装置に導入されるときは溶融状態である。溶融加工装置は、材料を混練する前に材料を溶融させておくために用いてもよいし、用いなくてもよい。
【0034】
好ましい実施形態では、二軸押出機(TSE)を用いる。好ましくは同方向回転噛合いスクリューを用いる。市販の好ましいTSEの例として、Coperion Co社の直径83 mm, L/D 46のタイプ3スクリューチップ(ZSK 83)が挙げられる。
【0035】
連続プロセスでは、材料を押出機中で溶融及び混練して動的加硫する。あるいは、1の押出機中で溶融及び混練して溶融状態で別の押出機へ移すか、または押出機間でペレット化する場合はペレットの形状で別の押出機へ移し、更に動的加硫する。また、硬化剤を用いて、または用いずに、ポリマー成分を1以上の溶融コンパウンダー中で混練し、次に1以上の押出機中で硬化を生じさせる。
【0036】
所望の混練を行うために、各成分の連続ニーディング/混練に2以上のタイプの押出機を用いることができる。押出機の混練における管理項目の1つは、押出機に供給された全エネルギーを、押出機を通過した材料の質量で割り算して求められる比エネルギーである。押出機に供給される全エネルギーの量は押出機中の溶融温度、押出機中の押出ブロックを回転させるために必要なエネルギー量、押出機を通過する材料の質量、及び押出機を通過する材料の速度に影響される。例えば、低粘度、低融点で少量の材料を押出機に通過させるとき、材料を押出機に通過させるために必要なエネルギーは大した量ではない。従来の条件では、エラストマー及び熱可塑性樹脂成分を動的に混練するために必要な比エネルギーは約0.35 kw-hr/kg以上である。
【0037】
動的加硫プロセスにおいて、いくつかの重要な反応/作用が生じる。第1に、熱可塑性樹脂とエラストマーとの間の反応である。例えば、熱可塑性樹脂成分、例えば熱可塑性樹脂がポリアミドの場合にはアミン基が、ハロゲン化されたエラストマーのペンダントハロゲン基と反応する。この界面反応の結果、高粘度のコポリマーが生成する。またこの反応により、エラストマーが熱可塑性樹脂中に微粒子となって分散する。一方、剪断混練により物理的作用が生じ、減衰現象、及びキャピラリー液滴分裂等のその他の公知の液滴分裂作用が生じる。熱可塑性樹脂にグラフト化された大きなゴム粒子の端部は、剪断混練過程及びコポリマーの伸長流動過程において、ゴム粒子本体から引き離される。過剰なエネルギーまたは混練系に適用される過度な温度によりDVAが過剰に加熱されたとき、エラストマーの架橋により減衰現象及び公知の液滴分裂作用が低下し、エラストマーをDVA中に微細粒子として分散させる能力が低下する。
【0038】
界面でのグラフト化反応及び剪断混練により、DVAはナイロンの連続相中に小粒径のエラストマーが均一に分散した状態となる。DVAの加工工程において、特に主成分がエラストマーのブレンド物の場合、混練の初期段階では、2種の原料(すなわちエラストマーと熱可塑性樹脂)はいずれも溶融し、より低軟化温度のエラストマー及び熱可塑性樹脂が共連続相のモルフォロジーを形成する。界面でのグラフト化反応が生じるに従い界面張力が低下して二相が相溶性になるに従いエラストマー相が低減する。エラストマー相が分散するに従い、エラストマーは熱可塑性樹脂相中に分散した不連続相となる。
【0039】
さらに、上記のニーディング工程中に、エラストマーに一般的に添加されるフィラー等の様々なコンパウンディング材、種々のオイル、老化防止剤、補強材、可塑剤、軟化剤、または種々の添加剤(加硫剤を除く)を添加し、あるいはエラストマー及び熱可塑性樹脂を組合わせてニーディングする前に、エラストマー単独とこれらの添加剤等とを混合しておくことができる。
【0040】
DVAを調製した後、すなわち、混練してアロイを形成した後、更に加工してペレットやその他の所望の形状、または製品にすることができる。
【0041】
DVAを製造するプロセスは、DVAのモルフォロジーに影響を及ぼす。好ましくはこの発明の方法は従来の混練プロセスにより得られるDVAのモルフォロジーを維持するか、殆ど損なわないか、または改善する。DVAのモルフォロジーは、キャピラリー粘度、及び押出物表面粗さ等のDVAの物性、または原子間力顕微鏡等の分析装置によって測定することができる。
【0042】
DVAのキャピラリー粘度は、ラボラトリーキャピラリーレオメータ(LCR)を用い、修正ASTM D-3835-02試験法に従って測定することができる。この修正試験法では、試験を220℃で行い、1200s-1で測定する。キャピラリー粘度の増加は、剪断混練中に生じる粘度低下が小さいことを示している。好ましくは、DVAの平均LCR粘度は少なくとも300 Pa-secである。ひとつの実施形態では、LCR粘度は約200 Pa-secから約350 Pa-secの範囲であり、または約215 Pa-secから約300 Pa-secの範囲である。
【0043】
押出物表面粗さ(ESR)はDVAの表面の滑らかさの指標であり、値が小さいほど滑らかな表面であることを示す。ESRはFederal社のSurfanalizerを用いて、製造者の取扱説明書に従って測定する。この値が小さいことは、エラストマー相が熱可塑性樹脂の連続相中により均一かつ良好に分散していることも示す。ESRは最終用途の製品のDVAの性能に影響するため、特に重要な押出特性である。好ましくはDVAのESR値は80以下である。別の実施形態では、ESR値は約20から約70の範囲である。別の実施形態では、DVAのESR値は約30から約60の範囲である。
【0044】
公知のDVA製造プロセスは多段プロセスである。DVAは先ず(i) ゴム成分及び必要な硬化剤を含有するゴムマスターバッチと、(ii) 熱可塑性樹脂及び可塑剤を含有する樹脂マスターバッチとを予備混練して製造される。
【0045】
従来、ゴムマスターバッチはエラストマー成分及び架橋剤が均一に混合された状態になるまで混練して調製されている。この混練は架橋温度以下で行われる。エラストマー成分及び架橋剤の混練には、通常のニーダやバンバリーミキサー等が用いられる。このとき、適切な量のカーボン、オイル、炭酸カルシウム等の充填剤をゴムマスターバッチに添加することができる。混練中に材料の温度が高くなりすぎると、混練機中でエラストマーの架橋が生じるため、温度を架橋温度以下、通常は120℃以下に保つ必要がある。通常、ゴムマスターバッチは、樹脂マスターバッチとの混練に備え、造粒機を用いて粒状化加工することにより小粒状にする。
【0046】
通常、樹脂マスターバッチは、樹脂及び可塑剤を混合して二軸押出機で混練することにより製造される。次に樹脂マスターバッチをペレット化する。ペレット化した樹脂マスターバッチは、直ちに使用するか、または貯蔵しておいて後で使用する。次に、ゴムマスターバッチ、樹脂マスターバッチ、及び残余の材料を押出機等の混練機に供給し、好ましくは押出機の投入口に供給する。また、マレイン酸変性エチレンエチルアクリレート等の第2エラストマーを、ゴムマスターバッチ及び樹脂マスターバッチを押出機に投入する前または後に、DVAに添加する。エラストマー成分は動的加硫され、溶融混練の間に、熱可塑性樹脂の連続相中にエラストマー成分の不連続相が分散した状態となる。溶融混練温度は、少なくとも熱可塑性樹脂が溶融する温度でなければならない。混練時の剪断速度は通常500から7500sec-1である。総混練時間は通常30秒から10分間である。
【0047】
図1に、従来のDVA製造プロセスの例を示す。導管10からエラストマー及び硬化剤を混練装置11に供給し、直ちに混練してゴムマスターバッチを製造する。他の公知の添加剤もゴムマスターバッチ中に混合する。導管12を通してゴムマスターバッチを混練装置11から取り出し、ゴム粉砕機13へ送る。ゴム粉砕機13によりゴムマスターバッチを小さな粒状に粉砕して、導管14から取り出す。樹脂マスターバッチは、押出機19で混練する。供給孔20から熱可塑性樹脂を押出機19に供給する。樹脂マスターバッチに可塑剤及びその他の添加剤を供給孔20、または他の押出機19の供給ポートから添加することができる。導管23を通して樹脂マスターバッチを押出機19から取り出し、ペレタイザ22へ送る。導管16を通してペレット化した樹脂マスターバッチをペレタイザ22から取り出す。このペレットを、供給孔17からDVA加工押出機18に供給する。樹脂マスターバッチ16、ゴムマスターバッチ14、及び第2エラストマー等の他の添加剤15を、押出機18中で動的加硫する。通常、樹脂マスターバッチ16、ゴムマスターバッチ14、他の添加剤15は、供給孔17から供給する。次に、導管21を通してDVAを取り出す。
【0048】
ゴムマスターバッチ製造工程は、硬化剤をエラストマー中に完全に分散させるために必要であると考えられていた。エラストマーと硬化剤を緊密に混練してゴムマスターバッチとすることにより、硬化剤の分散が良くなり、エラストマーの硬化速度を制御し易くなると考えられていた。これにより、原料間の異なる反応が可能になり、最終的にDVA中で残余の熱可塑性樹脂と組み合わされてより効率的に機能する、より均一で望ましいシステムが得られると考えられていた。
【0049】
従来のDVA製造プロセスでは、いくつかのシーケンシャルでパラレルな混合操作が必要であった。最終DVA製品中に所望のモルフォロジーを生成させるためには、二段混合操作が必要であると考えられていた。ゴムマスターバッチの予備混練は主にエラストマーと硬化剤の均一なブレンドの実現に寄与し、ゴムマスターバッチと樹脂マスターバッチの動的混練は主に分散相となる物質の粒径の減少に寄与すると考えられていた。
【0050】
この発明のプロセスでは、少なくとも1の熱可塑性樹脂と少なくとも1の可塑剤とを第1溶融加工装置中で混練して樹脂マスターバッチを製造し;次に少なくとも1のエラストマーと、少なくとも1の硬化剤と、樹脂マスターバッチとを、第2溶融加工装置中において動的加硫温度及び剪断条件下で混練することによりDVAを製造する。好ましくは、この発明の方法にはゴムマスターバッチを調製する工程は含まれておらず、エラストマー及び硬化剤を予備混練することなくDVA溶融加工装置に直接添加する。ゴムマスターバッチを調製する工程を削除することにより、DVAの製造に要する装置及び時間が削減される結果、DVAの製造コストが削減される。
【0051】
好ましい実施形態では、動的加硫されたアロイは少なくとも1のハロゲン化イソブチレン含有エラストマーと、少なくとも1の熱可塑性樹脂とから成る。熱可塑性樹脂と可塑剤とを第1溶融加工装置で混練して樹脂マスターバッチを調製してDVAを製造する。第1溶融加工装置は二軸押出機等のマルチスクリュー押出機であることが好ましい。適切な任意の公知の可塑剤を用いることができる。可塑剤は、熱可塑性樹脂を膨潤/膨張させることが好ましい。好ましい可塑剤はn-ブチルベンゼンスルホンアミドである。好ましい市販の可塑剤の例としてUnitex社のUniplex 214が挙げられる。任意に、樹脂マスターバッチをペレット化することができる。樹脂マスターバッチをペレット化した場合、ペレットを直ちに第2溶融加工装置の供給孔に直接供給してもよいし、またはペレットを貯蔵した後に使用してもよい。
【0052】
次に、エラストマー、少なくとも1の硬化剤、及び樹脂マスターバッチを第2溶融加工装置の供給孔に供給する。任意に第2エラストマーを第2溶融加工装置の供給孔に供給することができる。次に第2溶融加工装置の内容物を動的加硫温度及び剪断条件下で混練して、動的加硫されたアロイを製造する。動的加硫されたアロイでは、熱可塑性樹脂の連続相中に、エラストマーが加硫または一部加硫された小粒子の分散相として存在している。好ましくは、第2溶融加工装置は二軸押出機等のマルチスクリュー押出機である。
【0053】
好ましくは、動的加硫条件は、熱可塑性樹脂の連続相中にエラストマー成分を不連続相として分散させることができる温度及び剪断条件である。溶融混練温度は、少なくとも熱可塑性樹脂が溶融する温度である。混練時の剪断速度は、通常500から7500sec-1である。総混練時間は通常30秒から10分である。
【0054】
この発明の実施形態について図2を参照して更に詳しく説明する。樹脂マスターバッチを第1二軸押出機(TES)19で混練する。樹脂を供給孔20から第1TES19に供給する。可塑剤等の公知の添加剤を供給孔20から第1TES19に供給するか、または第1TES19の長さ方向に設けられたサイド注入ポートから添加する。導管23を通して樹脂マスターバッチを第1TES19から取り出し、ペレタイザ22へ送る。ペレット化した樹脂マスターバッチを導管16を通してペレタイザ22から取り出す。ペレット16を供給孔17からDVA加工押出機18に供給する。エラストマー、硬化剤、任意に無水マレイン酸変性エチレンエチルアクリレート等の第2エラストマー、またはその他の添加剤を、供給孔17からDVA加工押出機18に供給する。好ましくは、DVA加工押出機は二軸押出機である。あるいは、添加剤をDVA加工押出機18の長さ方向に設けられたサイド注入ポートから添加することもできる。エラストマー及び硬化剤は、予備混練することなくDVA加工押出機に直接供給する。次に、エラストマー、硬化剤、樹脂マスターバッチ、及びその他の添加剤をDVA加工押出機18中で剪断混練することにより動的加硫する。導管21を通して最終DVA製品をDVA加工押出機18から取り出す。
【0055】
特定の実施形態に基づき説明したが、当業者であればこの発明の要旨から逸脱しない範囲で様々な修正が可能であり容易に実施できる。この明細書の記載は、この発明のいくつかの実施形態を説明するためだけのものであり、この発明はこれらの特定の実施形態に限定されると解釈することはできない。従って特許請求の範囲は実施例及び明細書の記載に限定されず、当業者にとって均等と見なせる範囲を含め、本願に開示した特許性のある特徴及び構成要件もこの発明の範囲に含まれる。
【0056】
<実施例>
この発明に係るDVAの製造方法を、以下の非限定的実施例を参照しながら説明する。
【0057】
DVAの物性測定には可能な限り標準ASTM試験法を用いた。実施例で用いた試験方法を表1にまとめて示す。
【0058】
DVAの伸び(UE)はASTM D412に準拠して測定した。UEは、その材料の試験片が破断するまで引き伸ばすことができる距離を示す。
【0059】
M100試験はその材料の弾性率を測定するものであり、単位面積当たりに100%伸長する力による変形に対する抵抗性を示す。
【0060】
重量増加パーセンテージ試験(WtGain%)はサンプルが耐油膨潤性において吸収したオイルの量の測定値である。この試験はASTM D471及びISO 1817に準拠する。DVAを121℃のIRM 903オイル中に24時間浸漬する。WtGain%はDVAの架橋(架橋密度)の進行度の間接的指標である。重量増加値はエラストマーが油展されているか否か、及びどの程度油展されているかに依存するが、同一組成の複数のDVAの場合、重量増加値により複数のDVA間の相対的な架橋度が示される。
【0061】
引張永久歪(TensSet) はDVAを伸長させたとき生じる永久的変形の指標である。長さ50.8 mm (2インチ)、幅2.54 mm (0.1インチ)、厚み2.03 mm (0.08インチ)の試験片を射出成型した平板から切り取り、23℃で100%伸長させて10分間放置する。次に試験片を23℃で10分間緩和させる。最初の試験片の長さからの変化を測定し、TensSetを式TnSet% = ((L1-L0)/L0)×100により計算する。ここでL0は試験片の最初の長さであり、L1は最終的な長さである。
【0062】
DVAのキャピラリー粘度は、ラボラトリーキャピラリーレオメータ(LCR)を用い、修正ASTM D-3835-02試験法に従って測定することができる。この修正試験法では、試験を220℃で行い、1200s-1で測定する。キャピラリー粘度の増加は、剪断混練中に生じ得る粘度低下が小さいことを示している。
【0063】
ESRはDVAの表面の滑らかさの指標であり、値が小さいほど滑らかな表面であることを示す。ESRはFederal社のSurfanalizerを用い、製造者の取扱説明書に従って測定する。値が小さいことは、エラストマー相が熱可塑性樹脂の連続相中により均一かつ良好に分散していることを示す。ESRは最終用途の製品のDVAの性能に影響するため、特に重要な押出特性である。
【0064】
等価ゴム直径はDVA中のエラストマー粒子についての測定値である。DVAサンプルの30ミクロン×30ミクロンの切断面を原子間力顕微鏡で観察して、粒子数を数える。粒子のアスペクト比は、エラストマー粒子の長径と短径の比である。等価ゴム直径は、粒子の長径に沿って測定した長さに相当するフェレー径である。
【表1】

【0065】
実施例に用いた種々の成分のリストを表2に示す。
【表2】

【0066】
全ての実施例について同一のDVA処方を用い、各サンプルを異なる方法で調製した。DVA組成物には、ハロゲン化したイソブチレンとパラ-アルキルスチレンのコポリマーが49.12 wt%、ナイロン6,66が30.93 wt%、n-ブチルベンゼンスルホンアミド(可塑剤)が13.26 wt%が含有されており、組成物の残余の成分は、硬化剤及びその他の公知の添加剤であった。表3にサンプルの処方を示す。
【表3】

【0067】
サンプルA1及びA2は、従来のDVA製造方法により調製した。サンプルBl, B2, B3, 及びB4は、この発明の一実施形態により調製した。実施例で用いた全てのDVAサンプルはWerner & Pfleiderer社製の83mm二軸押出機(3-ローベ(lobe))を用いて調製した。この押出機は15のバレルセクションを有し、L/Dが46、複数の添加剤注入可能点があり、最大回転数は390RPMである。
【0068】
サンプルAl及びA2は従来の方法で調製した。先ずゴムマスターバッチを、バッチ式インターナルミキサーを用いて調製した。ゴムマスターバッチには、Exxpro 98-4、ZnO、ステアリン酸、ZnSt、及びタルクが含有されていた。ゴムマスターバッチを調製した後、ゴム粉砕機に供給した。
樹脂マスターバッチは、二軸押出機を用いて調製した後、ペレット化してからDVA加工二軸押出機に供給した。樹脂マスターバッチには、ナイロン6/66, Uniplex 214, Irganox 1098, Tinuvin 622LD,及びヨウ化銅が含有されていた。粉砕したゴムマスターバッチ、第2エラストマー(AR201)、及びペレット化した樹脂マスターバッチをDVA加工二軸押出機に供給した。
【0069】
サンプルBl, B2, B3, 及びB4は、この発明の一実施形態を用いて調製した。樹脂マスターバッチは従来の方法で調製した。しかし、ゴムマスターバッチは調製しなかった。樹脂マスターバッチ、第2エラストマー、エラストマー、硬化剤、及び残余の全ての原料をDVA加工二軸押出機の供給孔に直接供給した。
【0070】
各サンプルについて種々の物性を測定した結果を表4に示す。
【表4】

【0071】
この発明の方法によりゴムマスターバッチを調製することなく製造したDVAは、従来の方法で製造したDVAと同等または優れた物性を示した。硬化剤及びエラストマーを直接DVA加工二軸押出機に供給することにより、従来の方法で製造したDVAと同等または優れたモルフォロジーを有するDVAが得られた。DVAを環状のタイヤ内部に硬化/接着するインナーライナーとして用いたとき、またはタイヤの内部空間の別のインナーチューブとして用いたとき、DVAの有する空気保持性能、応力低減、クラッキングの減少、及び耐久性能により、タイヤの性能が改良される。
【0072】
本願に引用した全ての特許及び特許出願、試験方法(例えばASTM、UL規格等)、及びその他の文献は、それが許される法域において、 本願発明と抵触しない範囲で参照として本願に組み込まれる。
【0073】
数値範囲について複数の下限値及び上限値が記載されている場合、いずれかの下限値からいずれかの上限値までの数値範囲が含まれる。この発明の特定の実施形態について開示したが、当業者であれば本願発明の要旨から逸脱しない範囲で種々変更して実施することができるであろう。従って特許請求の範囲に係る発明は実施例及び明細書の記載により限定されず、当業者にとって均等と見なせる範囲を含め、本願に開示した特許性のある特徴及び構成要件もこの発明の範囲に含まれる。
【0074】
以上、この発明について様々な実施形態及び実施例に基づいて説明した。当業者であれば、これらの開示に基づきこの発明を種々変更して実施することができるであろう。このような変更例も、この発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的加硫されたアロイを製造する方法であって、前記アロイは少なくとも1のイソブチレン含有エラストマーと、少なくとも1の熱可塑性樹脂とから成り、
a)前記熱可塑性樹脂と、少なくとも1の可塑剤とを第1溶融加工装置で混練して樹脂マスターバッチを製造する工程と;
b)前記エラストマー、少なくとも1の硬化剤、及び前記樹脂マスターバッチを第2溶融加工装置の供給口に供給する工程と;
c)第2溶融加工装置の内容物を動的加硫条件下で混練して動的加硫されたアロイを製造する工程とが含まれ、
前記エラストマーが、熱可塑性樹脂の連続相中に、加硫または一部加硫された小粒子の分散相として存在する、動的加硫されたアロイを製造する方法。
【請求項2】
前記エラストマーがハロゲン化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エラストマーがイソブチレンとアルキルスチレンとのコポリマーである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記エラストマーが前記アロイ中に約2から約90wt%含有されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記エラストマー及び前記硬化剤を予備混練することなく、前記第2溶融加工装置の前記供給口に供給する、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2溶融加工装置の前記内容物の混練により、押出物表面粗さが80以下の動的加硫されたアロイが産出される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2溶融加工装置の前記内容物の混練により、ラボラトリーキャピラリーレオメータ粘度の値が200から350Pa−secの範囲の動的加硫されたアロイが産出される、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1溶融加工装置がマルチスクリュー押出機である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2溶融加工装置がマルチスクリュー押出機である、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホネート、ポリアクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル樹脂、スチレン無水マレイン酸樹脂、 芳香族ポリケトン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂が、ナイロン−6、ナイロン−12、ナイロン−6,6、ナイロン−6,9、ナイロン−6,10、ナイロン6,66コポリマー、ナイロン−11、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記樹脂マスターバッチを前記第2溶融加工装置の供給孔に供給する前にペレット化する工程を備える、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
さらに、第2エラストマーを前記第2溶融加工装置の供給孔に供給する工程を備える、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2エラストマーがマレイン酸変性エチレンエチルアクリレートである、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1のハロゲン化されたイソブチレン含有エラストマーと、少なくとも1の熱可塑性樹脂とから成る動的加硫されたアロイであって、
a)前記熱可塑性樹脂と少なくとも1の可塑剤とをマルチスクリュー押出機で混練して樹脂マスターバッチを製造する工程と;
b)前記エラストマー、少なくとも1の硬化剤、及び前記樹脂マスターバッチを第2マルチスクリュー押出機の供給口に供給する工程と;
c)前記第2マルチスクリュー押出機の内容物を動的加硫されたアロイが製造される動的加硫条件下で混練する工程とを含むプロセスにより製造され、
前記エラストマーが、熱可塑性樹脂の連続相中に加硫または一部加硫された小粒子の分散相として存在する、動的加硫されたアロイ。
【請求項16】
前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホネート、ポリアクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル樹脂、スチレン無水マレイン酸樹脂、 芳香族ポリケトン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項14に記載の動的加硫されたアロイ。
【請求項17】
前記エラストマーがイソブチレンとアルキルスチレンとのコポリマーである、請求項15または16に記載の動的加硫されたアロイ。
【請求項18】
前記エラストマーが前記アロイ中に約2から約90wt%含有されている、請求項15から17のいずれか1項に記載の動的加硫されたアロイ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−522955(P2011−522955A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513529(P2011−513529)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/043777
【国際公開番号】WO2009/151859
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】