説明

勾配屋根の緑化構造と緑化工法

【課題】勾配屋根に効率的に安全性に優れる緑化面を構築しえる緑化構造を実現する。
【解決手段】屋根下地上に形成された防水層と植物の毛根等の装置外への侵出を防止するために前記防水層上に固着張設されるルートガードと、ルートガード上に設けられ、上方から浸透する雨水あるいはその他の手段による潅水等を保持・排水し、保持した水分を植物の根部に供給するとともに積層される土壌を把持するための給・排水ユニットと、屋根下地上に設置されて前記給・排水ユニットに係合してこれを固定する固定手段と、前記給・排水ユニットの底部に形成されて前記固定手段に嵌合する開口部とを、具えてなり、前記固定手段に前記開口部を嵌合して前記給・排水ユニットを防水層上に保持するようにした勾配屋根の緑化構造を提供して上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、勾配屋根の緑化構造に関し、詳しくは、植物を植栽する給・排水ユニットを勾配屋根に安定的かつ効率よく敷設できる勾配屋根の緑化構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建造物の屋上やその他の空間に大規模に植物を植栽し、都市部における無機的な空間の緑化を図る試みが盛んになされるようになっている。
このような時、多くの場合は、建造物等のスラブ面の防水層上に押えのコンクリート層を形成し、この上に、植栽層として、砂、砂利等からなる砂利層と、客土層を順次積層して植物を植栽するようにしている。
【0003】
しかしながら、植物にとって十分な保水性、排水性を得るためには、防水層にかなりの土砂を導入する必要があり、しかもコンクリート層はかなりの重量を有するため、これらの重量が建造物に悪影響を及ぼすという問題がある。
そこで、本出願人は、先に保水性、排水性に優れた軽量の植栽装置を開示している(例えば特許2531542号公報参照)。
【0004】
この植栽装置は、建造物の屋上等に形成されているスラブ面に防水層を固定するとともに、この防水層の上面に、不織布等を有する保水材と、凹部及び凸部2を有するドレイン板等とからなる保水給排水手段を設け、さらにこの保水給排水手段の上方に砂利層および客土層からなる植栽層を積層したものとなっており、前記保水給排水手段等によって適正な保水性、排水性を得られるものとなっている。
このため、排水を考慮して設けられていたコンクリート層が不要となり、保水性の向上によって植栽層も草木の根毛の長さなどを考慮した必要最小限の厚さ、例えば50mm程度に設定することが可能となっている。
なお、本願発明に関する文献としてつぎのようなものが存在する。
【特許文献1】特許2531542号公報
【特許文献2】特許第2717632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、上記従来の植栽装置においては、装置全体が軽量化され、建造物に対する悪影響を回避し得るという優れた機能を有しているが、未だ改良すべき幾つかの課題を包含している。
すなわち、上記従来の技術に係る植栽装置は勾配屋根の緑化には向いていない。 すなわち、勾配部分に砂利層および客土層からなる植栽層を積層した保水給排水手段を設置して、緑化面を形成するには、植栽装置を安定的かつ効率よく設置できる必要があるが、従来このような条件を解決する技術は実現していない。 本願発明は、このような問題を解決して、勾配屋根に安全かつ効率的に緑化面を構築しえる緑化構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、勾配屋根の緑化構造であって、屋根下地上に形成された防水層と植物の毛根等の装置外への侵出を防止するために前記防水層上に固着張設されるルートガードと、ルートガード上に設けられ、上方から浸透する雨水あるいはその他の手段による潅水等を保持・排水し、保持した水分を植物の根部に供給するとともに積層される土壌を把持するための給・排水ユニットと、屋根下地上に設置されて前記給・排水ユニットに係合してこれを固定する固定手段と、前記給・排水ユニットの底部に形成されて前記固定手段に嵌合する開口部とを、具えてなり、前記固定手段に前記開口部を嵌合して前記給・排水ユニットを防水層上に保持するようにした勾配屋根の緑化構造を提供して、上記課題の解決を図ろうとするものである。
【0007】
上記の勾配屋根の緑化構造において、前記固定手段は柱状体で形成し、この柱状体の下端の外周縁にはフランジ部を具える構成となすことがある。
【0008】
また、上記いずれかの勾配屋根の緑化構造において、前記固定手段は複数配設するとともに、各固定手段に係合しそれらを連繋固定するための係止手段を屋根下地に固着する構成とすることがある。
【0009】
段落0008記載の勾配屋根の緑化構造において、前記係止手段は、複数の固定手段に係合する係止孔を具える連結帯で構成し、前記係止孔を固定手段に嵌合して固定手段同士を連繋固定するようになすことがある。
【0010】
また、段落0008記載の勾配屋根の緑化構造において、前記係止手段は、複数の固定手段に係合するストッパーを具える連結帯で構成し、前記ストッパーを各固定手段に係合させて固定手段同士を連繋固定する構成となすことがある。
【0011】
段落0010記載の勾配屋根の緑化構造において、連結帯のストッパーは打ち抜き加工により立設した突起により構成するとともに、勾配方向の各連結帯の端部相互の連結は一方の連結帯の突起に他方の連結帯の突起打ち抜きにより形成された打ち抜き孔に嵌合するように構成することがある。
【0012】
段落0008記載の勾配屋根の緑化構造において、前記係止手段は、複数の固定手段に架装される輪状部を具える連結ワイヤーで構成し、前記輪状部を固定手段に嵌合して固定手段同士を連繋固定するように構成することがある。
【0013】
段落00008記載の勾配屋根の緑化構造において、前記係止手段は、複数の固定手段に架装される当接部を具える連結ワイヤーで構成し、前記連結ワイヤーを固定手段としての柱状体に上下方向に形成した溝部に嵌合して前記当接部を固定手段としての柱状体に係合させて固定手段同士を連繋固定するようになすことがある。
【0014】
段落0008ないし0011いずれか記載の勾配屋根の緑化構造において、前記連結帯は金属、樹脂、繊維のいずれかで形成することがある。
【0015】
段落0007ないし0012いずれか記載の勾配屋根の緑化構造において、前記柱状体は断面円錐台形状の中空体で構成することがある。
【0016】
さらに、本願発明は、次の工程からなる勾配屋根の緑化工法を提供して上記課題を解決する。
イ: 防水層表面に、構築しようとする緑化面の形状面積に見合ったルートガードを張設し、この上に、緑化面に必要な数の中空体を固着する工程、
ロ: 次いで、連結帯をその係止孔を介して中空体の下部まで嵌合して各中空体同士を連繋するとともに、連結帯をも下地に固定し、中空体の施工面(屋根下地)への固定を強化する工程。
ハ: 単位面積に成形された給・排水ユニットを施工面の被覆に必要な数だけ用意して、これらの底部に設けられた開口部を介し中空体に嵌合して給・排水ユニットを施工面に接着剤により敷設固定する工程。
【0017】
さらに、本願発明は、周縁に側壁を有して勾配屋根の施工面に敷設される植栽トレーと、施工面に固定されて前記植栽トレーに貫通してこれを係止固定する支柱と、前記支柱群に架装されて施工面と植栽トレー底部間に設置される連結帯を具えてなる勾配屋根の緑化構造を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本願発明は、勾配屋根における緑化構造において、上方から浸透する雨水あるいはその他の手段による潅水等を保持・排水し、保持した水分を植物の根部に供給するとともに積層される土壌を把持するための給・排水ユニットと、屋根下地上に設置されて前記給・排水ユニットに係合してこれを固定する固定手段と、前記給・排水ユニットの底部に形成されて前記固定手段に嵌合する開口部とを、具えてなり、前記固定手段に前記開口部を嵌合して前記給・排水ユニットを防水層上に保持するように構成したので、緑化構造の構築の際に固定手段の給・排水ユニットへの組み付けをきわめて容易迅速になすことが可能となり、構築の作業効率向上、給・排水ユニットの安定的な敷設、施工コストの低減等の効果を得ることができ、勾配屋根の緑化実現に資するところが大きい。
また、この緑化構造は給・排水ユニットの下地への取り付けが強固かつ容易であるのでシステム自体の安全性は無論のこと、施工工事における安全性も容易に確保できる。
【最も望ましい実施の形態】
【0019】
勾配屋根に給・排水ユニットを敷設するにあたり、この給・排水ユニットを安定的に据え付けることが安全性を確保する上での最大の眼目となる。 屋根下地に給・排水ユニットをボルトや釘打ちで固定すれば安全性は確保できるが、そうすると防水層に孔を穿つことになり、このようなことは、雨漏りの最大の原因ともなるから、防水安全性を保持する上で禁忌事項である。
【0020】
このため、本願発明では、屋根下地に給・排水ユニットを敷設するにあたり防水層に一切の孔を穿つような手法は排除し、替わりに、柱状体の固定手段を下地に固定してこの柱状体により給・排水ユニットを固定している。 そして、もちろん、固定手段の屋根下地へのこていには釘打ち、ボルト等、防水層に孔を形成するような手法は採用せず、接着工法により固定する。
【0021】
柱状体の接着剤による固定に重ねて、屋根下地に接着固定される係止手段により固定手段としての前記柱状体を連繋固定する。 柱状体の下端の外周縁にはフランジ部を形成して、屋根下地その他への接着固定の強化を図る。
【0022】
係止手段は、複数の固定手段に係合する係止孔を具える連結帯で構成し、係止孔を固定手段としての柱状体に嵌合して柱状体同士を安定的に連繋固定する。 連結帯は、樹脂材、金属材で形成できるが、施工現場での加工性を考慮して、金切り鋏の使用が可能なステンレス、アルミ等の金属薄板が好ましい。
【0023】
係止手段は、また、固定手段である柱状体に係合するストッパーを具える連結帯で構成し、このストッパーを柱状体のフランジ部に噛ませるようにして柱状体を支持することもある。 前記同様に、連結帯は、樹脂材、金属材で形成できるが、施工現場での加工性を考慮して、金切り鋏の使用が可能なステンレス、アルミ等の金属薄板が好ましく、金属材で形成する場合、連結帯のストッパーは打ち抜き加工により立設する。こうすると、ストッパー打ち抜き跡の開口部を利用して、連結帯相互を接続することができる。 すなわち、連結帯を延長する必要が生じた場合、勾配方向の各連結帯の端部相互の連結は一方の連結帯の突起に、他方の連結帯の突起打ち抜きにより形成された打ち抜き孔に嵌合することにより、迅速、容易に安全性の高い接続をなすことができる。
なお、ストッパーを有する上記連結帯を使用する場合、連結帯を先に屋根下地(防水層等)に接着固定した上で、ストッパーに適合する位置に柱状体を固定していけば良いから、前記の係止孔を具える連結帯を使用する場合に比較して、柱状体の設置位置を厳密に割り出す必要がなく施工性に優れる。
【0024】
ストッパーを有する連結帯による勾配屋根の緑化は、次のような工程が望ましい。
イ: 防水層表面に、構築しようとする緑化面の形状面積に見合ったルートガードを張設する工程、
ロ: 次いで、ストッパーを具える連結帯をルートガード上に接着固定する工程、
ハ: 連結帯上に柱状体のフランジ部を接着ともに、フランジ部端をスジ部端をストッパーに係合かみ合わせる工程、
ニ: 単位面積に成形された給・排水ユニットを施工面の被覆に必要な数だけ用意して、これらの底部に設けられた開口部を介し柱状体に嵌合して給・排水ユニットを施工面に接着剤により敷設固定する工程。
【実施例】
【0025】
以下、この発明の1実施例を図面に基づき説明する。
図1は、当該実施例に係る緑化構造の一部断面図である。 図において、Aは、勾配屋根の下地1に形成された防水層、Bは防水層Aの表面に敷設されたルートガードで植物根の侵入を防止するものである。 Cは、固定手段としての柱状体2により施工面に係止固定される給・排水ユニットであり、この給・排水ユニットCには客土層Dが積層されている。客土層Dは礫状骨材をベースに植物の永続的な成育に不可欠な有機質その他で生成される保水性、排水性、緩衝に優れた軽量人工土壌で形成されていて、この土壌は、後述する給・排水ユニットCにおける通直管2aに囲繞される空間、すなわち保水部2、あるいは突条3に囲繞される空間に入り込み、これにより客土層Dは給・排水ユニットCにしっかりと把持されることとなり、勾配屋根等の傾斜部にも緑化面を安定して構築できる。
【0026】
4は、固定手段としての中空柱状体で、断面が円錐台形状をなし、後述のように給・排水ユニットCの開口部に嵌合して給・排水ユニットCを保持固定している。 そして、この固定手段としての中空体4は、後述のように、係止手段としての連結帯により複数の柱状体4同士が勾配屋根の下地1に連結固定されるようになっている。 なお、中空体4も客土層D中に埋設されるから客土層Dの揺動を防止し、緑化面の勾配屋根等の傾斜部への安定的構築に効果を奏する。
【0027】
図2は、前記中空柱状体4の固定状況を示す要部断面図である。 中空柱状体4は、下端周縁のフランジ部4aをルートガードB上面に固着されており、さらに中空柱状体4はこれに嵌合装着された連結帯5によりフランジ部4aにおいて他の中空柱状体(不図示)と連繋されている。
すなわち、図3に示すように、連結帯5には中空柱状体4の下端の径とほぼ同じ径を有する係止孔5aが形成され、この係止孔5aを介して連結帯5は、中空柱状体4,4の下端まで嵌合され、中空柱状体4,4.....を互いに連繋するようになっている。
中空柱状体4はそのフランジ部4aを介して屋根下地1に固着されているが、さらに連結帯5により各個の中空柱状体4が連結されるとともに屋根下地に固着される連結帯5を介して屋根下地に支持される。
【0028】
図4は、複数の中空柱状体4に嵌合、それらを連結して各単位面積の大きさの給・排水基盤Cの取り付け箇所への固定を強化するための連結帯5の装着状態を示す斜視図である。 すなわち、並列した各中空柱状体4には、前記連結帯5がその係止孔5aを介して嵌合され、さらに所定の単位面積の大きさに設定された複数の給・排水ユニットCがその開口部を介して中空柱状体4に嵌合し、勾配屋根の下地1上に固定されている。 連結帯5は、この実施例では金切り鋏みによる加工が可能で施工が容易な金属薄板(ステンレス)で形成されている。
【0029】
図5は所定の単位面積に形成された前記給・排水ユニットCを示す一部切欠斜視図である。
給・排水ユニットCは、通直管2aに囲繞される空間、すなわち保水部2、突状3に囲繞される複数の空間、すなわち給水源としての保水部3aを具える一方、単数または複数の開口部6が底部に形成されている。
【0030】
図6は、勾配屋根の下地に、固定された中空体4に給・排水ユニットCを前記開口部6を嵌合して固定した状態を示す斜視図である。 図5に示す開口部6を有する給・排水ユニットCは、勾配屋根の下地1に並立固定された中空体4(図4参照)に、前記開口部6を介して順次嵌合固定されることになる。 給・排水ユニットCの底部は接着剤により屋根下地1に固定される。
【0031】
このように、各給・排水ユニットCは設置面に接着剤で固定されているが、このままでは斜面に位置するため接着力が徐々に劣化しズレを生じやすい。 そこで、各給・排水基盤C、C,C相互を中空体4に係合される連結帯5により連結するようにしている。したがって、いずれかの給・排水ユニットCの設置面への固着力が劣化しても、この給・排水ユニットCは連結帯5を介して他の給・排水基盤Cに連繋されているから、にわかに給・排水基盤Cが滑落してしまうようなことはない。
【0032】
次に、勾配屋根における緑化構造の上記実施例の施工手順を説明する。 まず、防水層A表面に、構築しようとする緑化面の形状面積に見合ったルートガードBを張設し、この上に、緑化面に必要な数の中空柱状体を固着する。 次いで、連結帯をその係止孔を介して中空柱状体の下部まで嵌合して各中空柱状体同士を連繋するとともに、連結帯をも下地に固定し、中空柱状体の施工面(屋根下地)への固定を強化する。 単位面積に形成された給・排水ユニットを施工面の被覆に必要な数だけ用意して、これらの底部に設けられた開口部を介し嵌合して中空柱状体を敷設する。 この敷設時に給・排水ユニットの底部は接着剤等により施工面に固着される。 次いで、給・排水ユニットに中空柱状体の高さまで、土壌を収容して客土層を構築し、所望の植物を植栽する。 植物の植栽に際しては、風対策として客土層の上面にネットを張設することもある。
【0033】
図7は、緑化構造の他の実施例を示す一部断面側面図である。
図において、11は勾配屋根における緑化構造の設置面、10、10,10は樹脂または金属製で周縁に側壁を有する植栽トレーで、設置場所に応じて所定数が配置される。 前記植栽トレー10は設置面1に固定される支柱11(ここでは中空円錐台形状に形成されている)が植栽トレー10の底面を貫通して上方に立設されており、底面を設置面に接着固定される植栽トレー10を係合支持していて、それら植栽トレー10の固定状態をさらに強化している。 そして、係止手段としての連結帯51がこれに形成され支柱11に嵌合する係止孔(不図示)を介して各支柱11間に架設されて支柱群を係止している。この連結帯51の装着により植栽トレー10の取り付け面1における固定はさらに確保できることになる。
【0034】
図8は、緑化構造のさらに他の実施例を示す一部切欠斜視図である。 図において、51は、細い長手状のステンレス薄板で形成された連結帯で、所定箇所にストッパー51aを有して、屋根下地のルートガード上に接着固定されている。 固定手段としての前述した中空柱状体4はルートガードおよび連結帯51上に接着固定され、フランジ部4aの一端(勾配屋根の下流方向)はストッパー51aにかみ合い支持されている。
【0035】
図9は、上記の連結帯51の一部切欠断面図である。 この連結帯51において、ストッパー51aは、プレスによる打ち抜きにより鈎針状に形成されており、この打ち抜きにより、ストッパー51aの足元には打ち抜き穴51bが形成されている。 鈎針状のストッパー51aにより上述のように中空柱状体4のフランジ部4aの一端が係止され、中空柱状体4は勾配屋根上でしっかりと保持され、これに係合固定される給・排水ユニットも屋根下地上に安定的に固定される。
【0036】
図10は、上述の連結帯51の延長接続構造を示す一部切欠断面図である。 連結帯51は予め所定の単位長さ(該実施例では3m)に形成されているから、勾配屋根の緑化面で、勾配方向の長さが連結帯51の単位長さを超える場合には、連結帯51の端部をジョイントして延伸する必要がある。 図において、B51は勾配方向で上流側の連結帯、A51は下流側の連結帯を示している。両連結帯はその端部をジョイントして延伸されている。すなわち、上流側の連結帯B51の端部のストッパー51aに下流側の連結帯A51端部のストッパー51aを重ね合わせることにより連結帯A51とB51とはジョイントされる。 ストッパー51a同士の重ね合わせに際して、上流側のストッパー51aは下流側の打ち抜き穴51bに嵌合するから、双方のストッパー51aはぴったりと重ね合わさることができる。
【0037】
図11は、前記係止手段の他の実施例と複数の固定手段(中空柱状体)との関連構成を示す一部切欠斜視図である。 この実施例において、係止手段は輪状部を具える連結ワイヤー52で構成し、前記輪状部を固定手段に嵌合して固定手段同士を連繋固定するようになっている。 図において、連結ワイヤー52は所定間隔を置いて設けられる輪状部52aを有していて、この輪状部52aが中空柱状体4の下端まで嵌合して各中空柱状体4を連繋固定する。
【0038】
図12は、前記係止手段のさらに他の実施例と複数の固定手段(中空柱状体)との関連構成を示す一部切欠斜視図である。 この実施例において、係止手段は当接部53aを具える連結ワイヤー53で構成し、固定手段としての柱状体41には、上下方向に形成した溝部41bが形成されている。 柱状体41の下部にはフランジ部41aが設けられてこれを介して柱状体41は下地1に接着固定されている。 前記連結ワイヤー53を前記溝部41bに嵌合して柱状体41の下端に架装し、前記当接部53aを柱状体41又はフランジ部41aの勾配下流方向(図で左方)に当接係止させて柱状体41同士を連繋固定するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】緑化構造の一実施例を示す一部断面図である。
【図2】中空柱状体4の固定状況を示す要部断面図である。
【図3】連結帯とこの連結帯の中空柱状体への架装手順を示す斜視図である。
【図4】中空柱状体、給・排水ユニットC、連結帯の関連構成を示す斜視図である。
【図5】所定の単位面積に形成された前記給・排水ユニットCを示す一部切欠斜視図である。
【図6】中空柱状体と給・排水ユニットCとの係合状態を示す斜視図である。
【図7】請求項8に係る緑化構造の一実施形態を示す一部断面側面図である。
【図8】緑化構造のさらに他の実施例を示す一部切欠斜視図である。
【図9】図8に示す連結帯51の一部切欠断面図である。
【図10】図9に示す連結帯51の延長接続構造を示す一部切欠断面図である。
【図11】係止手段の他の実施例と複数の固定手段(中空柱状体)との関連構成を示す一部切欠斜視図である。
【図12】係止手段のさらに他の実施例と複数の固定手段(中空柱状体)との関連構成を示す一部切欠斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
A.......防水層
B.......ルートガード
C.......給・排水ユニット(保水給排水手段)
D.......客土層
1.......屋根下地
2.......排水部
2a......通直管
3.......突条
4.......中空柱状体
4a......フランジ部
5.......連結帯(係止手段)
5a......係止孔
6.......給・排水ユニットの開口部
7.......開口部周縁における斜面を有する立壁
10......植栽トレー
11......支柱
51......連結帯(係止手段)
51a.....ストッパー
51b.....打ち抜き穴
52......連結ワイヤー(係止手段)
52a.....輪状部
53......連結ワイヤー(係止手段)
53a.....当接部
41......柱状体
41b.....溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配屋根の緑化構造であって、屋根下地上に形成された防水層と植物の毛根等の装置外への侵出を防止するために前記防水層上に固着張設されるルートガードと、ルートガード上に設けられ、上方から浸透する雨水あるいはその他の手段による潅水等を保持・排水し、保持した水分を植物の根部に供給するとともに積層される土壌を把持するための給・排水ユニットと、屋根下地上に設置されて前記給・排水ユニットに係合してこれを固定する固定手段と、前記給・排水ユニットの底部に形成されて前記固定手段に嵌合する開口部とを、具えてなり、前記固定手段に前記開口部を嵌合して前記給・排水ユニットを防水層上に保持するようにしたことを特徴とする勾配屋根の緑化構造。
【請求項2】
請求項1記載の勾配屋根の緑化構造において、前記固定手段は柱状体で形成し、この柱状体の下端の外周縁にはフランジ部を具えることを特徴とする勾配屋根の緑化構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の勾配屋根の緑化構造において、前記固定手段は複数配設するとともに、各固定手段に係合しそれらを連繋固定するための係止手段を屋根下地に固着したことを特徴とする勾配屋根の緑化構造。
【請求項4】
請求項3記載の勾配屋根の緑化構造において、前記係止手段は、複数の固定手段に係合する係止孔を具える連結帯で構成し、前記係止孔を固定手段に嵌合して固定手段同士を連繋固定するようにしたことを特徴とする勾配屋根の緑化構造。
【請求項5】
請求項3記載の勾配屋根の緑化構造において、前記係止手段は、複数の固定手段に係合するストッパーを具える連結帯で構成し、前記ストッパーを各固定手段に係合させて固定手段同士を連繋固定するようにしたことを特徴とする勾配屋根の緑化構造。
【請求項6】
請求項5記載の勾配屋根の緑化構造において、連結帯のストッパーは打ち抜き加工により立設した突起により構成するとともに、勾配方向の各連結帯の端部相互の連結は一方の連結帯の突起に他方の連結帯の突起打ち抜きにより形成された打ち抜き孔に嵌合するようにしたこと
を特徴とする勾配屋根の緑化構造。
【請求項7】
請求項3記載の勾配屋根の緑化構造において、前記係止手段は、複数の固定手段に架装される輪状部を具える連結ワイヤーで構成し、前記輪状部を固定手段に嵌合して固定手段同士を連繋固定するようにしたことを特徴とする勾配屋根の緑化構造。
【請求項8】
請求項3記載の勾配屋根の緑化構造において、前記係止手段は、複数の固定手段に架装される当接部を具える連結ワイヤーで構成し、前記連結ワイヤーを固定手段としての柱状体に上下方向に形成した溝部に嵌合して前記当接部を固定手段としての柱状体に係合させて固定手段同士を連繋固定するようにしたことを特徴とする勾配屋根の緑化構造。
【請求項9】
請求項4ないし6いずれか記載の勾配屋根の緑化構造において、前記連結帯は金属、樹脂、繊維のいずれかで形成したことを特徴とする勾配屋根の緑化構造。
【請求項10】
請求項2ないし7いずれか記載の勾配屋根の緑化構造において、前記柱状体は断面円錐台形状の中空体で構成したことを特徴とする勾配屋根の緑化構造。
【請求項11】
次の工程からなる勾配屋根の緑化工法。
イ: 防水層表面に、構築しようとする緑化面の形状面積に見合ったルートガードを張設し、この上に、緑化面に必要な数の中空体を固着する工程、
ロ: 次いで、連結帯をその係止孔を介して中空体の下部まで嵌合して各中空体同士を連繋するとともに、連結帯をも下地に固定し、中空体の施工面(屋根下地)への固定を強化する工程。
ハ: 単位面積に成形された給・排水ユニットを施工面の被覆に必要な数だけ用意して、これらの底部に設けられた開口部を介し中空体に嵌合して給・排水ユニットを施工面に接着剤により敷設固定する工程。
【請求項12】
周縁に側壁を有して勾配屋根の施工面に敷設される植栽トレーと、施工面に固定されて前記植栽トレーに貫通してこれを係止固定する支柱と、前記支柱群に架装されて施工面と植栽トレー底部間に設置される連結帯を具えてなる勾配屋根の緑化構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−71036(P2010−71036A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242438(P2008−242438)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000217365)田島ルーフィング株式会社 (78)
【出願人】(505466826)田島緑化株式会社 (27)
【Fターム(参考)】