包埋カセット印字装置
【課題】作業効率を向上して作業者の負担を軽減するとともに、収容容器に包埋カセットを収容する際の入れ間違いを防止して高精度な品質管理を行うことができること。
【解決手段】制御部41は、カセット収納部21から所定の種類のカセットを所定の順番で取り出してカセット印字部24に搬送し、印字されたカセットを容器保持部25にセットされたベース容器に搬送するようにカセット搬送部46を制御することを特徴とする。
【解決手段】制御部41は、カセット収納部21から所定の種類のカセットを所定の順番で取り出してカセット印字部24に搬送し、印字されたカセットを容器保持部25にセットされたベース容器に搬送するようにカセット搬送部46を制御することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包埋カセット印字装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、臨床検査や前臨床検査等に用いられる薄切片標本を作製する装置として、ミクロトームが一般的に知られている。この薄切片標本は、厚さが数μm(例えば、3μm〜5μm)の薄切片をスライドガラス等の基板上に固定させたものである。薄切片は、包埋剤によって生体試料を包埋した包埋ブロックを上述した厚さで極薄に薄切して作製されたものである。また、包埋ブロックは、人体や試験動物等から取り出されてホルマリン固定された生体試料をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィンで固めてブロック状に作製したものである。この包埋ブロックの作製には、一般的に専用の容器である包埋カセットが使用されている。
【0003】
この包埋カセットは、耐キシレン性、耐アルコール性、耐酸性、耐ホルマリン性を有する材料により形成され、包埋ブロックが固定される収容部を備えており、収容部の底面はメッシュ状に形成されている。つまり、包埋カセットは、収容部の底面を介して表側と裏側とが連通するようになっている。
【0004】
ここで、包埋カセットに固定された包埋ブロックの品質管理を正確に行うために、包埋ブロック内に包埋されている生体試料の種類等を認識する識別コードを包埋カセットに印字する包埋カセット印字装置が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。この包埋カセット印字装置は、印字前の包埋カセットが保持されたホルダと、ホルダから連続的に搬送される包埋カセットに対して印字を行う印字部とを備え、この印字部において熱転写式やドットインパクト式等の接触式の印字方式により包埋カセットの印字面に印字を行うものである。
【非特許文献1】病理検査機器:印字.サクラファインテックジャパン株式会社.平成20年7月24日.<URL:http://www.sakura−finetek.com/product/category/kiki/inji.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、包埋ブロックを使用する前臨床試験等においては、試験対象となる動物等の主な臓器全てについて、様々な断面で切断した包埋ブロックが必要であり、また試験結果を統計処理するために試験個体数を増すことが一般的である。したがって、必要となる包埋ブロック及び包埋ブロックが固定される包埋カセットが容易に数百個に達する。また、それに伴い包埋カセット印字装置により一度に印字する包埋カセットの数が増大するとともに、包埋カセットの印字面に印字されるデータ量も増大する。
【0006】
しかしながら、上述した包埋カセット印字装置では、一般的に印字された包埋カセットは印字後に排出口から排出されるのみであるため、排出された後に人為的に試験動物毎や臓器毎、試験毎に整理して包埋カセットの収容容器等に収容していく必要がある。この場合、上述したように包埋カセット印字装置では、一度に大量(例えば、数百個)の包埋カセットに様々なデータを印字する必要があるため、印字された識別コードを作業者が識別して整理するのでは、作業効率が悪く、また作業者に対する負担も大きい。
また、印字された包埋カセットを収容容器に収容する際に、包埋カセットを入れ間違う虞もある。
【0007】
そこで、本発明は、このような事情に考慮してなされたものであって、作業効率を向上して作業者の負担を軽減するとともに、収容容器に包埋カセットを収容する際の入れ間違いを防止して高精度な品質管理を行うことができる包埋カセット印字装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る包埋カセット印字装置は、パラフィン置換処理された生体試料が包埋剤に包埋されてなる包埋ブロックの載置台として使用される包埋カセットの印字面に前記生体試料の識別コードを印字する包埋カセット印字装置であって、前記包埋カセットが種類毎に収納されるカセット収納部と、前記包埋カセットの前記印字面に印字を行うカセット印字部と、印字された前記包埋カセットを収容する収容容器がセットされる容器保持部と、前記包埋カセット収納部から前記カセット印字部へ、また前記カセット印字部から前記容器保持部にセットされた前記収容容器内へと、前記包埋カセットを搬送するカセット搬送部と、前記カセット搬送部の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記カセット収納部から所定の種類の前記包埋カセットを所定の順番で取り出して前記カセット印字部に搬送し、印字された前記包埋カセットを前記容器保持部にセットされた前記収容容器に搬送するように前記カセット搬送部を制御することを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、カセット搬送部は制御部から出力された信号に基づいて、所定の種類の包埋カセットを所定の順番で取り出してカセット印字部に搬送し、搬送した包埋カセットに対して順次印字していくようになっている。その後、印字された包埋カセットが順次容器保持部にセットされた収容容器内に配列されていくことで、収容容器に配列される包埋カセットが自動的に所定の試験動物毎や臓器毎、試験毎に整理された状態で配列される。つまり、予め制御部に入力された情報に基づいて、包埋カセットの種類と識別コードとを対応付けて所定の分類毎に自動的に印字が行われた後に、印字された包埋カセットがそのまま収容容器に収容される。そのため、従来のように印字された包埋カセットが排出口から1個ずつ排出されるのみの構成と異なり、印字された包埋カセットを人為的に配列していく必要がない。
これにより、従来のように作業員が包埋カセットに印字された識別コードを識別して包埋カセットを整理する場合に比べて、作業効率を大幅に向上させることができるとともに、作業者に対する負担も軽減することができる。また、印字された包埋カセットを収容容器に配列する際に、包埋カセットを入れ間違う虞もない。
したがって、所定の分類毎に整理された状態で包埋カセットを収容容器に箱詰めすることができるため、その後の包埋ブロックの作製工程等にスムーズに移行することができるとともに、包埋カセットに固定される包埋ブロックの品質管理を正確に行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る包埋カセット印字装置は、前記容器保持部にセットされる前記収容容器をストックしておく容器ストック部と、印字された前記包埋カセットが収容された前記収容容器を収納する容器収納部と、前記容器ストック部にストックされた前記収容容器を前記容器保持部に搬送するとともに、前記包埋カセットが収容された前記収容容器を前記容器収納部へと搬送する容器搬送部とを備えていることを特徴としている。
この構成によれば、容器搬送部により、容器ストック部から容器保持部へ収容容器を供給することができるとともに、収容容器への包埋カセットの収容が終了した後に容器保持部から容器収納部まで収容容器を搬送することで、収容容器の供給及び搬送も自動的に行うことができる。これにより、作業効率をより向上させることができるとともに、作業者に対する負担も軽減することができる。
【0011】
また、本発明に係る包埋カセット印字装置は、前記カセット印字部は、レーザマーカ装置を備え、前記レーザマーカ装置から照射されるレーザ光により前記包埋カセットの前記印字面に対して印字を行うことを特徴としている。
この構成によれば、レーザ光を利用して印字面を削り、識別コードを刻印することができるので、従来のような接触式の印刷方式と異なり、包埋ブロックを作製する作業中に識別コードが擦れ等によって剥がれてしまうことがない。そのため、包埋ブロックの品質管理を常に正確に行うことができる。
また、レーザ光を利用して識別コードを印字できるので、印字スピードが速く、印字作業を短時間で行うことができる。そのため、作業効率を向上することができる。また、非接触で識別コードを刻印できるので、印字面の表面粗さに影響を受けることなく識別コードを表示することができる。またこれに加えて、印字面とレーザマーカの印字ヘッド面とが厳密に一致していなくても印字不良が生じない。そのため、過度の注意を払わずに印字面上に成膜することができる。
【0012】
また、本発明に係る包埋カセット印字装置は、前記カセット収納部には、印字前の前記包埋カセットが種類別に所定個数配列されたカセットパックが挿入され、前記カセットパックにおける前記カセット収納部への挿入方向に沿う面には溝が形成される一方、前記カセット収納部には前記溝に係合して前記カセットパックを前記カセット収納部内へ案内するレールが形成され、前記溝は、前記カセットパックにおける一端から前記カセット収納部への挿入方向に沿う中途部まで形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、カセットパックに形成された溝がカセットパックにおけるカセット収納部への挿入方向に沿う面の一端から中途部までしか形成されていないため、カセットパックを他端側から挿入しようとした場合には、カセットパックの他端側の端面とカセット収納部におけるレールの端面とが接触してカセットパックが挿入できないようになっている。これにより、カセットパックの誤挿入を防止することができるため、カセット搬送部によりカセットを正常な向きで取り出すことができ、カセットへの印字を正しく行うことができる。
【0013】
また、本発明に係る包埋カセット印字装置は、前記カセット収納部は、前記カセットパックが挿入される受入側から、前記カセット搬送部により前記包埋カセットが取り出される取出側にかけて、下方に向けて傾斜していることを特徴としている。
この構成によれば、カセット収納部が受入側から取出側にかけて下方に向けて傾斜しているため、包埋カセットが取出側から取り出されると、取り出された包埋カセットより後側に配列された包埋カセットが重力によって自動的に滑り落ちていくことになる。そのため、例えば前側の包埋カセットが取り出される度に後側の包埋カセットを順次取出側へ供給するような機構を別途設ける必要がないため、装置の製造コストを低減することができる。
【0014】
また、本発明に係る包埋カセット印字装置は、前記カセットパック内には、前記カセット収納部への挿入方向に沿って前記包埋カセットが重ね合わされた状態で配列され、前記包埋カセットの裏面側には隣接する前記包埋カセットとの接触面積を減少させるための凸部が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、包埋カセットの裏面側にレールが形成されているため、カセットパックに配列された包埋カセット同士はレールを介して接触した状態で配列されることとなる。つまり、カセットパック内において隣接する包埋カセット同士は線接触している状態となり、隣接する包埋カセット同士が表裏面全体で面接触している構成に比べて接触面積を減少させることができる。これにより、包埋カセット同士が面接触している場合に比べて、隣接する包埋カセット同士間の摩擦力が小さくなるため、包埋カセットの取り出し時に隣接する包埋カセットが引き摺られてカセットパックから飛び出てくることを防ぎ、所定の包埋カセットを1枚のみ確実に引き抜くことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る包埋カセット印字装置によれば、カセット搬送部は制御部から出力された信号に基づいて、所定の種類の包埋カセットを所定の順番で取り出してカセット印字部に搬送し、搬送した包埋カセットに対して順次印字していくようになっている。その後、印字された包埋カセットが順次容器保持部にセットされた収容容器内に配列されていくことで、収容容器に配列される包埋カセットが自動的に所定の試験動物毎や臓器毎、試験毎に整理された状態で配列される。つまり、予め制御部に入力された情報に基づいて、包埋カセットの種類と識別コードとを対応付けて所定の分類毎に自動的に印字が行われた後に、印字された包埋カセットがそのまま収容容器に収容される。そのため、従来のように印字された包埋カセットが排出口から1個ずつ排出されるのみの構成と異なり、印字された包埋カセットを人為的に配列していく必要がない。
これにより、従来のように作業員が包埋カセットに印字された識別コードを識別して包埋カセットを整理する場合に比べて、作業効率を大幅に向上させることができるとともに、作業者に対する負担も軽減することができる。また、印字された包埋カセットを収容容器に配列する際に、包埋カセットを入れ間違う虞もない。
したがって、所定の分類毎に整理された状態で包埋カセットを収容容器に箱詰めすることができるため、その後の包埋ブロックの作製工程等にスムーズに移行することができるとともに、包埋カセットに固定される包埋ブロックの品質管理を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図1〜12に基づいて説明する。
(包埋カセット)
まず、後述する包埋カセット印字装置(以下、印字装置という)により印字を行う包埋カセット(以下、カセットという)について説明する。図1はカセットの正面斜視図であり、図2はカセットの平面図(背面図)、図3はカセットの側面図である。
図1〜3に示すように、カセット1は、パラフィン置換処理された生体試料S(図4参照)がパラフィン(包埋剤)Pに包埋されてなる包埋ブロックB(図4参照)を作製するにあたり、包埋ブロックBの載置台として使用されるものである。
【0017】
カセット1は、耐キシレン性、耐アルコール性に優れたポリアセタールやフッ素樹脂等からなり、その中央部に凹部10が形成されている。カセット1は、上面視矩形状に形成されており、上面側が凹部10の開口となっている。また、カセット1の底面2aには、その中央部にメッシュ部3が形成されている。このメッシュ部3は、底面2aを厚さ方向に貫通する複数の貫通孔11がアレイ状に形成されたものであり、この貫通孔11を介して凹部10の底面2a側と上面側とが連通するようになっている。また、凹部10を囲む側壁4のうち、長手方向一端側(図1における奥側)の側壁4aには、その上端縁から後方に向けて延出する突部5が形成されている。
【0018】
一方、凹部10を囲む側壁4のうち、長手方向一端側(図1における手前側)の側壁4bには、その上端縁から前方へ向けて下方に傾斜した状態で延出する傾斜面2bが形成されている。この傾斜面2bは、カセット1の底面2aに対して所定の角度で傾斜しており、その下端縁が底面2aと面一に形成されている。
また、上述した傾斜面2b上には、その全面に薄膜層15が設けられている。本実施形態の薄膜層15は、カセット1と同様に、耐キシレン性及び耐アルコール性を有し、薄膜形成が容易で、且つ樹脂との密着性の比較的優れウレタン樹脂等の樹脂が成膜されたものである。この際、薄膜層15は、膜厚が5μm以上、500μm以下の範囲内に収まるように膜厚調整されている。また、この薄膜層15は、後述する印字装置におけるレーザマーカ装置から照射されたレーザ光に沿って分解することで、識別コードCを表示するようになっている。これについては、後に詳細に説明する。なお、薄膜層15は、カセット1の色に対して少なくとも明度が異なる色とされている。
【0019】
ここで、カセット1の底面2aには、その厚さ方向に沿って突出する一対のレール(凸部)6が形成されている。このレール6は、カセット1の幅方向における両側方において、カセット1の長手方向における全長に亘って互いに平行に形成されており、メッシュ部3の両側方を囲むように形成されている。したがって、カセット1が載置台(例えば、机等)に載置される際には、レール6の下面と載置台の上面とが当接した状態、すなわち底面2aと載置台の上面との間に間隙を有した状態でカセット1が載置される。
【0020】
上述したように、傾斜面2b上に形成された薄膜層15には、包埋ブロックB内に包埋されている生体試料Sの種類等を認識する識別コードCが、後述する印字装置20のレーザマーカにより印字されている。識別コードCは、例えば所定の前臨床試験等を識別する試験番号C1や、試験グループを識別する群番号C2、試験サンプルとなる生体試料Sを識別する動物番号C3、生体試料Sの雌雄を識別する雌雄コードC4、生体試料Sの臓器の種類を識別するブロック番号C5等により構成されている。そして、作業者は識別コードCを確認することで、所定のカセット1に固定された包埋ブロックBの情報(試験番号、群番号、動物番号、雌雄、ブロック番号等)を即座に識別できるようになっている。また、薄膜層15上には、上述した包埋ブロックBの情報が2次元バーコードに変換された読取部C6も形成されており、図示しないバーコードリーダにより読み取ることで、上述した包埋ブロックBの情報を読み取れるようになっている。なお、識別コードCは上述したパターンに限られることはなく、番号やコードのパターン、レイアウト等は適宜変更が可能である。
【0021】
次に、上述したカセットを利用して包埋ブロックを作製する場合について説明する。図4は、包埋ブロックが固定されたカセットを示す側面図である。
始めに作業者は、ホルマリン固定された生体試料を準備し、この生体試料を適当な大きさに切断した後、生体試料のパラフィン置換処理を行う。具体的には、まず薬剤としてアルコールが満たされたパレット内に生体試料を浸漬し、水分や脂質をアルコールで置換、すなわち脱水処理、脱脂処理する。その後、パレット内の薬剤をキシレンに入れ替える。これにより、先ほど置換したアルコールを、キシレンに置換する。そして、最後にパレット内の薬剤を液状のパラフィンに入れ換えて、先ほど置換したキシレンを、パラフィンに置換する。これにより、水分や脂質がパラフィン置換処理された生体試料を作製することができる。
【0022】
パラフィン置換処理作業が終了した後、液状のパラフィンが満たされた包埋皿を用意しておく。そして、パラフィン置換に用いたパレット内から生体試料Sを取り出すとともに、取り出した生体試料Sを包埋皿内に収容してパラフィンに浸漬させる。そして、浸漬した生体試料Sに対応した識別コードCが印字されたカセット1を用意し、このカセット1に生体試料Sをパラフィンとともに固定する。具体的には、カセット1の底面2aによって包埋皿を覆うようにカセット1を載置する。この際、カセット1の貫通孔11内を通って凹部10内にもパラフィンが入り込むように、包埋皿内のパラフィンの量が調整されている。この状態で、包埋皿を冷却してパラフィンを冷却固化させる。
【0023】
これにより、図4に示すように、生体試料SがパラフィンPにより包埋された包埋ブロックBを作製することができる。この際、包埋ブロックBは、カセット1の底面2aにくっ付いて繋がった状態となっている。そして、最後に底面2aに包埋ブロックBが繋がったカセット1を包埋皿から取り外して裏返しにする。その結果、カセット1の底面2a上に固体された包埋ブロックBを得ることができる。そして、作業者はカセット1に印字された識別コードCを確認することで、カセット1に固定された包埋ブロックBの情報を即座に識別できるようになっている。
【0024】
(印字装置ユニット)
次に、上述したカセットの薄膜層へ識別コードの印字を行う印字ユニットについて説明する。図5は、印字装置ユニットのブロック図である。
図5に示すように、印字装置ユニット80は、印字装置20と印字装置20に接続され印字装置20の制御を行う制御用PC81とで構成されている。
【0025】
(印字装置)
図6は印字装置の概略構成図(側面図)である。
図6に示すように、印字装置20は、カセット収納部21、容器ストック部22、搬送部23、カセット印字部24、容器保持部25、集塵機26、及び容器収納部27がケーシング30内に内装されて構成されている。また、印字装置20は後述する制御部41及び通信部40(図5参照)も備えている。
カセット収納部21は、上述したカセット1が種類別に所定個数毎に箱詰めされてなるカセットパック50(図7参照)を収納保持するものであり、複数種類のカセットパック50がそれぞれ収納される複数の収納ラック31を備えている。
【0026】
図7は、カセットパックの概略構成図(側面図)、図8は収納ラックの概略構成図(側面図)、図9はカセットパックのセット時における収納ラックの概略構成図(側面図)、図10は背面図である。
図7,9,10に示すように、上述したカセット1は、プラスチック等からなるカセットパック50に種類別に所定個数毎に箱詰めされた状態となっている。具体的に、カセットパック50には、カセット1の色や大きさ、メッシュ部3の粗さの異なるカセット1が、それぞれ種類毎に仕分けされた状態で箱詰めされている。
カセットパック50は、上部開口部を有する箱型形状のものであり、その内側にカセット1を収容する収容部51が形成されている。収容部51内には、収容部51の幅方向とカセット1の幅方向とを一致させるとともに、長手方向とカセット1の厚さ方向とを一致させた状態で、カセット1が複数枚収容されている。つまり、カセット1は、その傾斜面2bを上方に向けた状態で、かつ隣接するカセット1の底面2a側と上面側とを重ね合わせた状態で縦型に配列されている。したがって、隣接するカセット1は底面2aに形成されたレール6を介して重ね合わされており、カセット1同士が線接触した状態で収容されている。
【0027】
ここで、カセットパック50の幅方向における両側面には、カセットパック50の内側(収容部51内)へ向けて窪んだ溝52が形成されている。この溝52は、収納ラック31の後述するレール33に案内されるものであり、カセットパック50の長手方向(挿入方向)における一端側(図7中左側)の端面から他端側(図7中右側)に向かってカセットパック50の中途部まで形成されている。つまり、カセットパック50の長手方向における一端側の端面では溝52が開放されている一方、他端側の端面には溝52は形成されていない。
【0028】
図8〜10に示すように、収納ラック31は、上述したカセットパック50を収納保持しておくものであり、ケーシング30の幅方向(X方向)一端側の上部においてケーシング30の幅方向(X方向)及び高さ方向(Y方向)に沿って複数列配列されている。収納ラック31は、ケーシング30の奥行き方向(Z方向)に延びる正面視C字状のものであり、下壁35と下壁35から立設する一対の側壁34とを備え、これら下壁35と一対の側壁34間にカセットパック50を保持する凹部32を構成している。つまり、これら収納ラック31の凹部32にカセット1が種類毎にそれぞれ収容された複数のカセットパック50を収納保持しておくことで、所定のカセット1が選択して取り出されるようになっている。
【0029】
また、収納ラック31の長手方向(Z方向)における一端側(図8における左側)は、カセットパック50に収容されたカセット1が取り出される取出口、他端側はカセットパック50が挿入される受入口を構成している。つまり、カセットパック50は、収納ラック31の受入口側から取出口側に向けて挿入されることで収納ラック31にセットされている。また、収納ラック31は、他端側から一端側にかけて下方に向けて傾斜しており、取出口側からカセット1が取り出されると、カセットパック50内に収容されたカセット1が重力によってカセット1の厚さ方向に沿ってスライドするようになっている。そのため、例えば前側のカセット1が取り出される度に後側のカセット1を順次取出口へ供給するような機構を別途設ける必要がないため、装置の製造コストを低減することができる。
【0030】
また、収納ラック31における凹部32を構成する一対の側壁34には、凹部32の内側に向けて(対向する側壁34に向けて)突出するレール33が形成されている。このレール33は、上述したカセットパック50の溝52に係合して凹部32内でカセットパック50を案内するものであり、収納ラック31の受入口側の端部から側壁34の長手方向における中途部まで形成されている。
【0031】
図6に戻り、収納容器ストック部22は、識別コードCが印字されたカセット1を箱詰めするための空の収容容器36をストックしておくものであり、ケーシング30内における幅方向(X方向)他端側の下部に配置されたベースストック部37とカバーストック部38とを備えている。なお、本実施形態の収容容器36は、印字されたカセット1を受け入れる収容凹部36cを備えたベース容器36aと、このベース容器36aの収容凹部36cを閉塞するように形成されたカバー容器36bとで分割構成されている。
【0032】
ベースストック部37は、収容容器36のうちベース容器36aをストックしておくものであり、複数のベース容器36aがそれぞれの収容凹部36c同士を重ね合わされた状態で、上方に向けて積み重ねられている。
カバーストック部38は、ベースストック部37に隣接して配置され、収容容器36のうちカバー容器36bをストックしておくものであり、複数のカバー容器36bがベース容器36aとの対向面を下方に向けた状態で重ね合わされている。
【0033】
搬送部23は、ベース部43と、このベース部43を支持するスライドレール44と、ベース部43にスライド可能に支持されたカセット搬送部46及び容器搬送部47とを備えている。
スライドレール44は、ケーシング30内の下部においてケーシング30の幅方向(X方向)に沿って延出しており、このスライドレール44上にはベース部43がスライド可能に支持されている。ベース部43は、スライドレール44上に設けられた下部ベース43aと、下部ベース43aの上面からケーシング30の高さ方向(Y方向)に延出する上部ベース43bとを備えている。
【0034】
上部ベース43bの幅方向(X方向)における一側には、容器搬送部47が設けられている。この容器搬送部47は、容器ストック部22から容器保持部25へ、また容器保持部25から容器収納部27へと収容容器36(ベース容器36a及びカバー容器36b)を搬送するものであり、上部ベース43b上を高さ方向(Y方向)に沿って移動可能に構成されている。
また、上部ベース43bの幅方向(X方向)における他側には、カセット搬送部46が設けられている。このカセット搬送部46は、カセット収納部21からカセット印字部24へ、またカセット印字部24から容器保持部25にセットされたベース容器36aの収容凹部36c内へとカセット1を搬送するものであり、上部ベース43b上を高さ方向(Y方向)に沿って移動可能に構成されている。したがって、搬送部23は、XY平面上を移動可能に構成されており、ケーシング30内においてカセット1及び収容容器36の取り出し及び搬送が可能になっている。
【0035】
カセット印字部24は、カセット搬送部46により搬送されたカセット1の薄膜層15に対して上述した識別コードCの印字を行うものであり、図示しないレーザマーカを備えている。このレーザマーカにより薄膜層15にレーザ光を照射することで、薄膜層15がレーザ光に沿って分解される。これにより、薄膜層15上に上述した識別コードCを印字することができる。
【0036】
容器保持部25は、カセット印字部24で印字されたカセット1の収容容器36への箱詰めが行われる場所であり、カセット収納部21の下方に設けられ、容器保持部25の載置面25a上にはベースストック部37から容器搬送部47により搬送されたベース容器36aがセットされている。そして、カセット印字部24で印字されたカセット1は、カセット搬送部46により容器保持部25にセットされたベース容器36aの収容凹部36c内へ順次搬送される。その後、収容凹部36c内が満たされた時点で、容器搬送部47により容器保持部25へカバー容器36bが搬送され、ベース容器36aが閉塞される。これにより、カセット1の収容容器36への箱詰めが完了する。
【0037】
容器収納部27は、カセット収納部21と容器ストック部22との間に設けられ、カセット1の箱詰めが完了した収容容器36を保持させる収納トレイ48を備えている。この収納トレイ48は、ケーシング30の幅方向(X方向)及び高さ方向(Y方向)に沿って複数列配列されており、箱詰めが完了した収容容器36は容器搬送部47により容器保持部25から収納トレイ48に1つずつ搬送される。そして、作業者は、箱詰めされた収容容器36を収納トレイ48から取り出せるようになっている。
【0038】
集塵機26は、カセット印字部24においてレーザ印字時に分解された薄膜層15の塵埃を回収するものであり、ケーシング30の下部に設けられた吸引部60と、吸引部60からカセット印字部24まで連通する吸引パイプ61とで構成されている。吸引パイプ61は、一端が吸引部60に接続される一方、他端が吸引部60から上方へ延びてカセット印字部24内を臨むように配置されている。吸引部60には、吸引パイプ61に接続されカセット印字部24で発生した塵埃を吸引する吸引ポンプと、吸引ポンプにより吸引された塵埃を回収する吸引タンク(ともに不図示)とが設けられている。
【0039】
図5に戻り、制御用PC81は、カセット1の薄膜層15へ印字する識別コードCを決定するためのものであり、例えば、上述した包埋ブロックBの情報(試験番号、群番号、動物番号、雌雄、ブロック番号等)を識別コードCとして入力し、この情報をID信号として印字装置20の通信部40へ出力するようになっている。また、制御用PC81では、カセット収納部21に収納されたカセット1の種類(カセットの色や、メッシュ部の粗さ、カセットの大きさ)も選択できるようになっており、選択したカセット情報を識別コードCと対応付けてカセット情報信号として通信部40へ出力する。つまり、制御用PC81は、所定の種類のカセット1に対して所定の順番で印字を行うように印字装置20に信号(ID情報、カセット情報)を出力できるようになっている。
【0040】
また、上述したように印字装置20は、カセット印字部24及び搬送部23を統括的に制御する制御部41と、制御用PC81との通信を行う通信部40とを備えている。
通信部40は、制御用PC81と印字装置20との境界となるものであり、制御用PC81から出力されたID信号とカセット情報信号とを受信して制御部41へ出力するものである。
制御部41は、制御用PC81から通信部40を介して送られたID信号をカセット印字部24へ、カセット情報信号を搬送部23へ出力するものであり、カセット印字部24及び搬送部23はこれら出力信号に基づいて動作を行うようになっている。
【0041】
(カセットの印字方法)
次に、上述した印字装置(印字ユニット)におけるカセットの印字方法について説明する。図11は、カセットパック及び収納ラックの概略構成図(側面図)であり、カセットパックのセット方法を示す説明図である。
まず、図11に示すように、カセット収納部21の収納ラック31に印字前のカセット1が箱詰めされたカセットパック50をセットする。具体的には、収納ラック31の長手方向(Z方向)とカセットパック50の長手方向とを一致させた状態で、収納ラック31の受入口側から取出口側に向けてカセットパック50を挿入する。この時、カセットパック50の長手方向における一端側から挿入していき、カセットパック50の一端側の端面から形成された溝52内に、収納ラック31に形成されたレール33を係合させた状態で挿入していく。すると、カセットパック50は、レール33に案内されて収納ラック31の取出口側まで挿入され、カセットパック50のセットが完了する。なお、その他の収納ラック31に対しても上述と同様の方法により順次カセットパック50をセットしていく。この時、試験内容や、用途に応じて、色や大きさ、メッシュ部の粗さの異なるカセット1が箱詰めされた複数種類のカセットパックをセットする。
【0042】
ところで、収納ラック31へカセットパック50をセットする際には、上述したようにカセットパック50の一端側から収納ラック31へ挿入しなければならない。万が一カセットパック50の挿入方向を誤ると、カセット1の向きが異なった状態でカセットパック50が挿入されてしまい、その後の印字が正しく行われない可能性がある。
そこで、本実施形態では、上述したようにカセットパック50の長手方向における一端では溝52が開放されている一方、他端側の端面には溝52は形成されていない。そのため、カセットパック50を他端側から挿入しようとした場合には、カセットパック50の他端側の端面と収納ラック31におけるレール33の端面とが接触してカセットパック50が挿入できないようになっている。これにより、カセットパック50の誤挿入を防止することができ、カセット搬送部46によりカセット1を正常な向きで取り出すことができ、カセット1への印字を正しく行うことができる。
【0043】
次に、図5,6に示すように、収納ラック31にセットしたカセット1の種類と収納ラック31の場所とを対応付けて制御用PC81に入力した後、カセット1に印字する識別コードC及び印字時に選択するカセット1の種類を対応付けて制御用PC81に入力する。具体的には、印字するカセット1の種類(カセット1の色や大きさ、メッシュ部3の粗さ)を選択するとともに、作製する包埋ブロックBの情報(試験番号、群番号、動物番号、雌雄、ブロック番号等)を入力する。そして、カセット1の種類及び作製する包埋ブロックBの情報を入力した後、これらの情報をカセット情報信号及びID信号として印字装置20に向けて出力する。
【0044】
制御用PC81から出力されたカセット情報信号及びID信号は、印字装置20の通信部40を介して制御部41に入力される。そして、制御部41はカセット印字部24に向けてID情報信号を出力するとともに、カセット情報信号を搬送部23(カセット搬送部46及び容器搬送部47)に向けて出力する。
【0045】
そこで、まず容器搬送部47はカセット情報信号を受信すると、この信号に基づいて容器ストック部22まで収容容器36を取りに行く。具体的には、容器搬送部47が容器ストック部22のベースストック部37まで移動してベース容器36aを取り出し、容器保持部25まで搬送する。そして、容器保持部25までベース容器36aを搬送した後、ベース容器36aの収容凹部36cを上方に向けた状態で容器保持部25の載置面25a上にベース容器36aを載置する。
【0046】
次に、カセット搬送部46はカセット情報信号を受信すると、この信号に基づいて各収納ラック31にセットされたカセット1から所定の種類のカセット1を選択し、選択したカセット1を収納ラック31から取り出す。具体的には、カセット搬送部46は所定のカセット1がセットされた収納ラック31の位置まで移動し、収納ラック31の取出口からカセット1を1枚取り出す。
【0047】
ここで、図12は収納ラックの拡大図であり、カセット取り出し時を示す説明図である。
図12に示すように、カセット搬送部(図6参照)は、所定の収納ラック31の位置まで移動すると、カセットパック50内に配列されたカセット1のうち、最前列(カセットパック50の一端側)のカセット1を斜め上方に向けて引き抜くように取り出す(図12中矢印K参照)。
【0048】
ところで、本実施形態の収納ラック31は受入口から取出口にかけて下方に向けて傾斜しているため、カセットパック50内に配列されたカセット1同士には、後側から前側に向けてカセット1の重さ分の荷重が作用している。したがって、カセットパック50内に配列されたカセット1のうち最前列のカセット1のみを抜き出そうとしても、重ね合わされたカセット1まで引き摺って抜き出してしまう可能性がある。この場合、引き摺られたカセット1は、収納ラック31から落下する虞がある。
【0049】
そこで、本実施形態においてカセットパック50内に配列されたカセット1同士は、カセット1の底面2aに形成されたレール6を介して隣接するカセット1と接触した状態で配列されているため、隣接するカセット1同士は線接触している。つまり、隣接するカセット1同士が底面2aと上面とで面接触している構成に比べて接触面積が小さくなるように設定されている。これにより、カセット1同士が面接触している場合に比べて、隣接するカセット1同士間の摩擦力が小さくなるため、カセット1の取り出し時に隣接するカセット1が引き摺られてカセットパック50から飛び出てくることを防ぎ、所定のカセット1を1枚のみ確実に引き抜くことができる。その後、カセットパック50内に配列されたカセット1は、互いに平行な状態を保ったままカセットパック50の前方へ滑り落ちていく(図12中矢印L参照)。
【0050】
そして、図5,6に戻り、収納ラック31から抜き出したカセット1をカセット印字部24まで搬送し、カセット印字部24においてカセット1に印字を行う。具体的には、カセット印字部24は制御部41から出力されたID情報信号に基づいて、レーザマーカを薄膜層15に対して照射する。そして、薄膜層15は、レーザマーカから照射されたレーザ光に沿って分解されることで、薄膜層15上にID情報信号に応じた所定の識別コードCが印字されるようになっている。なお、カセット印字部24においてカセット1への印字が行われている際には、集塵機26の吸引ポンプが作動している。これにより、薄膜層15から分解された塵は吸引パイプを介して回収されるため、カセット印字部24内やケーシング30内に塵が堆積することがない。その結果、ケーシング30を清潔に保ち、メンテナンスが容易になる。
【0051】
次に、カセット搬送部46により印字されたカセット1を容器保持部25へ搬送し、容器保持部25にセットされたベース容器36aの収容凹部36c内に配列していく。
【0052】
そして、カセット1をベース容器36a内に搬送した後、再び以上の工程を繰り返すことで、容器保持部25にセットされたベース容器36aの収容凹部36c内に、印字されたカセット1が順次配列されていく。この時、本実施形態では、カセット搬送部46に入力されたカセット情報に基づいて、所定の種類のカセット1を所定の順番で収納ラック31から取り出すとともに、制御部41に入力されたID情報信号に基づいて、収納ラック31から取り出された所定のカセット1に所定の順番、例えば試験動物毎や臓器毎、試験毎となるように印字が行われていく。すなわち、カセット搬送部46は所定のカセット1を所定の順番で取り出してカセット印字部24に搬送し、搬送したカセット1に対して所定の順番で順次識別コードCを印字していくようになっている。その後、印字されたカセット1が順次容器保持部25に載置されたベース容器36aの収容凹部36c内に配列されていくことで、収容凹部36c内に配列されるカセット1が所定の試験動物毎や臓器毎、試験毎に整理された状態で配列される。
【0053】
その後、ベース容器36aの収容凹部36c内が印字されたカセット1で満たされたら、カバー容器36bによりベース容器36aを閉塞する。具体的には、容器搬送部47がカバーストック部38まで移動してカバーストック部38にストックされている収容容器36のカバー容器36bを取り出し、容器保持部25まで搬送する。そして、容器保持部25までカバー容器36bを搬送した後、ベース容器36aの収容凹部36cを閉塞するようにカバー容器36bをセットする。これにより、識別コードC順に配列されたカセット1が収容容器36内に箱詰めされた状態となる。
【0054】
そして、カセット1の箱詰めが完了した収容容器36を容器収納部27へ搬送する。具体的には、容器保持部25の載置面25a上に載置された収容容器36を容器搬送部47により容器収納部27へ向けて搬送し、容器収納部27の収納トレイ48に収納する。
以上の工程を繰り返すことにより、識別コードC順に箱詰めされたカセット1が順次収納トレイ48に収納され、作業者は収納トレイ48から箱詰めされたカセット1を取り出すことができる。これにより、その後の包埋ブロックBの作製工程等にスムーズに移行することができる。
【0055】
このように、上述の実施形態では、カセット収納部21から所定のカセット1を所定の順番で取り出してカセット印字部24に搬送し、印字されたカセット1を容器保持部25にセットされたベース容器36aに搬送するようにカセット搬送部46を制御する構成とした。
この構成によれば、制御部41に入力されたID情報信号に基づいて、所定のカセット1に所定の順番で印字が行われ、印字されたカセット1が順次ベース容器36aの収容凹部36c内に配列されていくことで、収容凹部36c内に配列されるカセット1が自動的に所定の試験動物毎や臓器毎、試験毎に整理された状態で配列される。つまり、予め入力されたID情報及びカセット情報に基づいて、カセット1の種類と識別コードCとを対応付けて所定の分類毎に自動的に印字が行われた後に、印字されたカセットがそのまま収容容器に収容される。そのため、従来のように印字されたカセットが排出口から1個ずつ排出されるのみの構成と異なり、印字されたカセットを人為的に配列していく必要がない。
これにより、従来のように作業員がカセットに印字された識別コードCを識別してカセットを整理する場合に比べて、作業効率を大幅に向上させることができるとともに、作業者に対する負担も軽減することができる。また、印字されたカセット1をベース容器36aに配列する際に、カセット1を入れ間違う虞もない。
したがって、所定の分類毎に整理された状態でカセット1を収容容器36に箱詰めすることができるため、その後の包埋ブロックBの作製工程等にスムーズに移行することができるとともに、カセット1に固定される包埋ブロックBの品質管理を正確に行うことができる。
【0056】
また、本実施形態では、容器搬送部47により、容器ストック部22から容器保持部25へ収容容器36(ベース容器36a及びカバー容器36b)を供給することができるとともに、ベース容器36aへのカセット1の収容が終了した後に容器保持部25から容器収納部27まで収容容器36を搬送することで、収容容器36の供給及び搬送を自動的に行うことができる。
このように、本実施形態の印字装置20では、ケーシング30内でカセット1の印字から、収容容器36の供給及び搬送、箱詰めまでを一括して行うことができる。これにより、作業効率をより向上させることができるとともに、作業者に対する負担も軽減することができる。また、印字されたカセット1をベース容器36aに配列する際に、カセット1を入れ間違う虞もない。
【0057】
また、本実施形態では、カセット印字部24に設置されたレーザマーカによりカセット1の薄膜層15に対して識別コードCの印字を行う構成とした。
この構成によれば、レーザ光を利用して薄膜層15を削り、識別コードCを刻印することができるので、従来のような接触式の印刷方式と異なり、印字を失敗することが極めて少ない。また、包埋ブロックBを作製する作業中に識別コードCが擦れ等によって剥がれてしまうことが皆無である。そのため、包埋ブロックBの品質管理を常に正確に行うことができる。
また、レーザ光を利用して識別コードCを印字できるので、印字スピードが速く、印字作業を短時間で行うことができる。そのため、作業効率を向上することができる。また、非接触で識別コードCを刻印できるので、薄膜層15の表面粗さに影響を受けることなく識別コードCを表示することができる。またこれに加えて、印字される面とレーザマーカの印字ヘッド面とが厳密に一致していなくても印字不良が生じない。そのため、過度の注意を払わずに薄膜層15を傾斜面2b上に成膜することができる。
【0058】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、薄膜層15の配置位置に傾斜面2bを形成したが、これに限られず、カセット1の表面上に形成されていれば傾斜面2bを形成する必要はなく、どの位置であっても構わない。
【0059】
さらに、上記実施形態では、カセット1上に薄膜層15を設け、薄膜層15をレーザ光で分解することで識別コードCを表示する構成としたが、薄膜層15をなくしても構わない。また、カセット印字部24にレーザマーカを設置し、レーザマーカから照射されるレーザ光により印字を行う構成について説明したが、レーザマーカ以外の方法により印字を行う構成でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態におけるカセットの正面斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるカセットの平面図(背面図)である。
【図3】本発明の実施形態におけるカセットの側面図である。
【図4】本発明の実施形態における包埋ブロックが固定されたカセットを示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態における印字装置ユニットのブロック図である。
【図6】本発明の実施形態における印字装置の概略構成図(側面図)である。
【図7】本発明の実施形態におけるカセットパックの概略構成図(側面図)である。
【図8】本発明の実施形態における収納ラックの概略構成図(側面図)である。
【図9】本発明の実施形態におけるカセットパックのセット時における収納ラックの概略構成図(側面図)である。
【図10】本発明の実施形態におけるカセットパックのセット時における収納ラックの概略構成図(背面図)である。
【図11】本発明の実施形態におけるカセットパック及び収納ラックの概略構成図(側面図)であり、カセットパックのセット方法を示す説明図である。
【図12】本発明の実施形態における収納ラックの拡大図であり、カセット取り出し時を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1…カセット(包埋カセット) 2a…底面(裏面) 6…レール(凸部) 15…薄膜層(印字面) 20…印字装置(包埋カセット印字装置) 21…カセット収納部 22…容器ストック部 24…カセット印字部 25…容器保持部 27…容器収納部 33…レール 36…収容容器 41…制御部 46…カセット搬送部 47…容器搬送部 50…カセットパック 52…溝 C…識別コード P…パラフィン(包埋剤) S…生体試料
【技術分野】
【0001】
本発明は、包埋カセット印字装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、臨床検査や前臨床検査等に用いられる薄切片標本を作製する装置として、ミクロトームが一般的に知られている。この薄切片標本は、厚さが数μm(例えば、3μm〜5μm)の薄切片をスライドガラス等の基板上に固定させたものである。薄切片は、包埋剤によって生体試料を包埋した包埋ブロックを上述した厚さで極薄に薄切して作製されたものである。また、包埋ブロックは、人体や試験動物等から取り出されてホルマリン固定された生体試料をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィンで固めてブロック状に作製したものである。この包埋ブロックの作製には、一般的に専用の容器である包埋カセットが使用されている。
【0003】
この包埋カセットは、耐キシレン性、耐アルコール性、耐酸性、耐ホルマリン性を有する材料により形成され、包埋ブロックが固定される収容部を備えており、収容部の底面はメッシュ状に形成されている。つまり、包埋カセットは、収容部の底面を介して表側と裏側とが連通するようになっている。
【0004】
ここで、包埋カセットに固定された包埋ブロックの品質管理を正確に行うために、包埋ブロック内に包埋されている生体試料の種類等を認識する識別コードを包埋カセットに印字する包埋カセット印字装置が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。この包埋カセット印字装置は、印字前の包埋カセットが保持されたホルダと、ホルダから連続的に搬送される包埋カセットに対して印字を行う印字部とを備え、この印字部において熱転写式やドットインパクト式等の接触式の印字方式により包埋カセットの印字面に印字を行うものである。
【非特許文献1】病理検査機器:印字.サクラファインテックジャパン株式会社.平成20年7月24日.<URL:http://www.sakura−finetek.com/product/category/kiki/inji.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、包埋ブロックを使用する前臨床試験等においては、試験対象となる動物等の主な臓器全てについて、様々な断面で切断した包埋ブロックが必要であり、また試験結果を統計処理するために試験個体数を増すことが一般的である。したがって、必要となる包埋ブロック及び包埋ブロックが固定される包埋カセットが容易に数百個に達する。また、それに伴い包埋カセット印字装置により一度に印字する包埋カセットの数が増大するとともに、包埋カセットの印字面に印字されるデータ量も増大する。
【0006】
しかしながら、上述した包埋カセット印字装置では、一般的に印字された包埋カセットは印字後に排出口から排出されるのみであるため、排出された後に人為的に試験動物毎や臓器毎、試験毎に整理して包埋カセットの収容容器等に収容していく必要がある。この場合、上述したように包埋カセット印字装置では、一度に大量(例えば、数百個)の包埋カセットに様々なデータを印字する必要があるため、印字された識別コードを作業者が識別して整理するのでは、作業効率が悪く、また作業者に対する負担も大きい。
また、印字された包埋カセットを収容容器に収容する際に、包埋カセットを入れ間違う虞もある。
【0007】
そこで、本発明は、このような事情に考慮してなされたものであって、作業効率を向上して作業者の負担を軽減するとともに、収容容器に包埋カセットを収容する際の入れ間違いを防止して高精度な品質管理を行うことができる包埋カセット印字装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る包埋カセット印字装置は、パラフィン置換処理された生体試料が包埋剤に包埋されてなる包埋ブロックの載置台として使用される包埋カセットの印字面に前記生体試料の識別コードを印字する包埋カセット印字装置であって、前記包埋カセットが種類毎に収納されるカセット収納部と、前記包埋カセットの前記印字面に印字を行うカセット印字部と、印字された前記包埋カセットを収容する収容容器がセットされる容器保持部と、前記包埋カセット収納部から前記カセット印字部へ、また前記カセット印字部から前記容器保持部にセットされた前記収容容器内へと、前記包埋カセットを搬送するカセット搬送部と、前記カセット搬送部の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記カセット収納部から所定の種類の前記包埋カセットを所定の順番で取り出して前記カセット印字部に搬送し、印字された前記包埋カセットを前記容器保持部にセットされた前記収容容器に搬送するように前記カセット搬送部を制御することを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、カセット搬送部は制御部から出力された信号に基づいて、所定の種類の包埋カセットを所定の順番で取り出してカセット印字部に搬送し、搬送した包埋カセットに対して順次印字していくようになっている。その後、印字された包埋カセットが順次容器保持部にセットされた収容容器内に配列されていくことで、収容容器に配列される包埋カセットが自動的に所定の試験動物毎や臓器毎、試験毎に整理された状態で配列される。つまり、予め制御部に入力された情報に基づいて、包埋カセットの種類と識別コードとを対応付けて所定の分類毎に自動的に印字が行われた後に、印字された包埋カセットがそのまま収容容器に収容される。そのため、従来のように印字された包埋カセットが排出口から1個ずつ排出されるのみの構成と異なり、印字された包埋カセットを人為的に配列していく必要がない。
これにより、従来のように作業員が包埋カセットに印字された識別コードを識別して包埋カセットを整理する場合に比べて、作業効率を大幅に向上させることができるとともに、作業者に対する負担も軽減することができる。また、印字された包埋カセットを収容容器に配列する際に、包埋カセットを入れ間違う虞もない。
したがって、所定の分類毎に整理された状態で包埋カセットを収容容器に箱詰めすることができるため、その後の包埋ブロックの作製工程等にスムーズに移行することができるとともに、包埋カセットに固定される包埋ブロックの品質管理を正確に行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る包埋カセット印字装置は、前記容器保持部にセットされる前記収容容器をストックしておく容器ストック部と、印字された前記包埋カセットが収容された前記収容容器を収納する容器収納部と、前記容器ストック部にストックされた前記収容容器を前記容器保持部に搬送するとともに、前記包埋カセットが収容された前記収容容器を前記容器収納部へと搬送する容器搬送部とを備えていることを特徴としている。
この構成によれば、容器搬送部により、容器ストック部から容器保持部へ収容容器を供給することができるとともに、収容容器への包埋カセットの収容が終了した後に容器保持部から容器収納部まで収容容器を搬送することで、収容容器の供給及び搬送も自動的に行うことができる。これにより、作業効率をより向上させることができるとともに、作業者に対する負担も軽減することができる。
【0011】
また、本発明に係る包埋カセット印字装置は、前記カセット印字部は、レーザマーカ装置を備え、前記レーザマーカ装置から照射されるレーザ光により前記包埋カセットの前記印字面に対して印字を行うことを特徴としている。
この構成によれば、レーザ光を利用して印字面を削り、識別コードを刻印することができるので、従来のような接触式の印刷方式と異なり、包埋ブロックを作製する作業中に識別コードが擦れ等によって剥がれてしまうことがない。そのため、包埋ブロックの品質管理を常に正確に行うことができる。
また、レーザ光を利用して識別コードを印字できるので、印字スピードが速く、印字作業を短時間で行うことができる。そのため、作業効率を向上することができる。また、非接触で識別コードを刻印できるので、印字面の表面粗さに影響を受けることなく識別コードを表示することができる。またこれに加えて、印字面とレーザマーカの印字ヘッド面とが厳密に一致していなくても印字不良が生じない。そのため、過度の注意を払わずに印字面上に成膜することができる。
【0012】
また、本発明に係る包埋カセット印字装置は、前記カセット収納部には、印字前の前記包埋カセットが種類別に所定個数配列されたカセットパックが挿入され、前記カセットパックにおける前記カセット収納部への挿入方向に沿う面には溝が形成される一方、前記カセット収納部には前記溝に係合して前記カセットパックを前記カセット収納部内へ案内するレールが形成され、前記溝は、前記カセットパックにおける一端から前記カセット収納部への挿入方向に沿う中途部まで形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、カセットパックに形成された溝がカセットパックにおけるカセット収納部への挿入方向に沿う面の一端から中途部までしか形成されていないため、カセットパックを他端側から挿入しようとした場合には、カセットパックの他端側の端面とカセット収納部におけるレールの端面とが接触してカセットパックが挿入できないようになっている。これにより、カセットパックの誤挿入を防止することができるため、カセット搬送部によりカセットを正常な向きで取り出すことができ、カセットへの印字を正しく行うことができる。
【0013】
また、本発明に係る包埋カセット印字装置は、前記カセット収納部は、前記カセットパックが挿入される受入側から、前記カセット搬送部により前記包埋カセットが取り出される取出側にかけて、下方に向けて傾斜していることを特徴としている。
この構成によれば、カセット収納部が受入側から取出側にかけて下方に向けて傾斜しているため、包埋カセットが取出側から取り出されると、取り出された包埋カセットより後側に配列された包埋カセットが重力によって自動的に滑り落ちていくことになる。そのため、例えば前側の包埋カセットが取り出される度に後側の包埋カセットを順次取出側へ供給するような機構を別途設ける必要がないため、装置の製造コストを低減することができる。
【0014】
また、本発明に係る包埋カセット印字装置は、前記カセットパック内には、前記カセット収納部への挿入方向に沿って前記包埋カセットが重ね合わされた状態で配列され、前記包埋カセットの裏面側には隣接する前記包埋カセットとの接触面積を減少させるための凸部が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、包埋カセットの裏面側にレールが形成されているため、カセットパックに配列された包埋カセット同士はレールを介して接触した状態で配列されることとなる。つまり、カセットパック内において隣接する包埋カセット同士は線接触している状態となり、隣接する包埋カセット同士が表裏面全体で面接触している構成に比べて接触面積を減少させることができる。これにより、包埋カセット同士が面接触している場合に比べて、隣接する包埋カセット同士間の摩擦力が小さくなるため、包埋カセットの取り出し時に隣接する包埋カセットが引き摺られてカセットパックから飛び出てくることを防ぎ、所定の包埋カセットを1枚のみ確実に引き抜くことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る包埋カセット印字装置によれば、カセット搬送部は制御部から出力された信号に基づいて、所定の種類の包埋カセットを所定の順番で取り出してカセット印字部に搬送し、搬送した包埋カセットに対して順次印字していくようになっている。その後、印字された包埋カセットが順次容器保持部にセットされた収容容器内に配列されていくことで、収容容器に配列される包埋カセットが自動的に所定の試験動物毎や臓器毎、試験毎に整理された状態で配列される。つまり、予め制御部に入力された情報に基づいて、包埋カセットの種類と識別コードとを対応付けて所定の分類毎に自動的に印字が行われた後に、印字された包埋カセットがそのまま収容容器に収容される。そのため、従来のように印字された包埋カセットが排出口から1個ずつ排出されるのみの構成と異なり、印字された包埋カセットを人為的に配列していく必要がない。
これにより、従来のように作業員が包埋カセットに印字された識別コードを識別して包埋カセットを整理する場合に比べて、作業効率を大幅に向上させることができるとともに、作業者に対する負担も軽減することができる。また、印字された包埋カセットを収容容器に配列する際に、包埋カセットを入れ間違う虞もない。
したがって、所定の分類毎に整理された状態で包埋カセットを収容容器に箱詰めすることができるため、その後の包埋ブロックの作製工程等にスムーズに移行することができるとともに、包埋カセットに固定される包埋ブロックの品質管理を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図1〜12に基づいて説明する。
(包埋カセット)
まず、後述する包埋カセット印字装置(以下、印字装置という)により印字を行う包埋カセット(以下、カセットという)について説明する。図1はカセットの正面斜視図であり、図2はカセットの平面図(背面図)、図3はカセットの側面図である。
図1〜3に示すように、カセット1は、パラフィン置換処理された生体試料S(図4参照)がパラフィン(包埋剤)Pに包埋されてなる包埋ブロックB(図4参照)を作製するにあたり、包埋ブロックBの載置台として使用されるものである。
【0017】
カセット1は、耐キシレン性、耐アルコール性に優れたポリアセタールやフッ素樹脂等からなり、その中央部に凹部10が形成されている。カセット1は、上面視矩形状に形成されており、上面側が凹部10の開口となっている。また、カセット1の底面2aには、その中央部にメッシュ部3が形成されている。このメッシュ部3は、底面2aを厚さ方向に貫通する複数の貫通孔11がアレイ状に形成されたものであり、この貫通孔11を介して凹部10の底面2a側と上面側とが連通するようになっている。また、凹部10を囲む側壁4のうち、長手方向一端側(図1における奥側)の側壁4aには、その上端縁から後方に向けて延出する突部5が形成されている。
【0018】
一方、凹部10を囲む側壁4のうち、長手方向一端側(図1における手前側)の側壁4bには、その上端縁から前方へ向けて下方に傾斜した状態で延出する傾斜面2bが形成されている。この傾斜面2bは、カセット1の底面2aに対して所定の角度で傾斜しており、その下端縁が底面2aと面一に形成されている。
また、上述した傾斜面2b上には、その全面に薄膜層15が設けられている。本実施形態の薄膜層15は、カセット1と同様に、耐キシレン性及び耐アルコール性を有し、薄膜形成が容易で、且つ樹脂との密着性の比較的優れウレタン樹脂等の樹脂が成膜されたものである。この際、薄膜層15は、膜厚が5μm以上、500μm以下の範囲内に収まるように膜厚調整されている。また、この薄膜層15は、後述する印字装置におけるレーザマーカ装置から照射されたレーザ光に沿って分解することで、識別コードCを表示するようになっている。これについては、後に詳細に説明する。なお、薄膜層15は、カセット1の色に対して少なくとも明度が異なる色とされている。
【0019】
ここで、カセット1の底面2aには、その厚さ方向に沿って突出する一対のレール(凸部)6が形成されている。このレール6は、カセット1の幅方向における両側方において、カセット1の長手方向における全長に亘って互いに平行に形成されており、メッシュ部3の両側方を囲むように形成されている。したがって、カセット1が載置台(例えば、机等)に載置される際には、レール6の下面と載置台の上面とが当接した状態、すなわち底面2aと載置台の上面との間に間隙を有した状態でカセット1が載置される。
【0020】
上述したように、傾斜面2b上に形成された薄膜層15には、包埋ブロックB内に包埋されている生体試料Sの種類等を認識する識別コードCが、後述する印字装置20のレーザマーカにより印字されている。識別コードCは、例えば所定の前臨床試験等を識別する試験番号C1や、試験グループを識別する群番号C2、試験サンプルとなる生体試料Sを識別する動物番号C3、生体試料Sの雌雄を識別する雌雄コードC4、生体試料Sの臓器の種類を識別するブロック番号C5等により構成されている。そして、作業者は識別コードCを確認することで、所定のカセット1に固定された包埋ブロックBの情報(試験番号、群番号、動物番号、雌雄、ブロック番号等)を即座に識別できるようになっている。また、薄膜層15上には、上述した包埋ブロックBの情報が2次元バーコードに変換された読取部C6も形成されており、図示しないバーコードリーダにより読み取ることで、上述した包埋ブロックBの情報を読み取れるようになっている。なお、識別コードCは上述したパターンに限られることはなく、番号やコードのパターン、レイアウト等は適宜変更が可能である。
【0021】
次に、上述したカセットを利用して包埋ブロックを作製する場合について説明する。図4は、包埋ブロックが固定されたカセットを示す側面図である。
始めに作業者は、ホルマリン固定された生体試料を準備し、この生体試料を適当な大きさに切断した後、生体試料のパラフィン置換処理を行う。具体的には、まず薬剤としてアルコールが満たされたパレット内に生体試料を浸漬し、水分や脂質をアルコールで置換、すなわち脱水処理、脱脂処理する。その後、パレット内の薬剤をキシレンに入れ替える。これにより、先ほど置換したアルコールを、キシレンに置換する。そして、最後にパレット内の薬剤を液状のパラフィンに入れ換えて、先ほど置換したキシレンを、パラフィンに置換する。これにより、水分や脂質がパラフィン置換処理された生体試料を作製することができる。
【0022】
パラフィン置換処理作業が終了した後、液状のパラフィンが満たされた包埋皿を用意しておく。そして、パラフィン置換に用いたパレット内から生体試料Sを取り出すとともに、取り出した生体試料Sを包埋皿内に収容してパラフィンに浸漬させる。そして、浸漬した生体試料Sに対応した識別コードCが印字されたカセット1を用意し、このカセット1に生体試料Sをパラフィンとともに固定する。具体的には、カセット1の底面2aによって包埋皿を覆うようにカセット1を載置する。この際、カセット1の貫通孔11内を通って凹部10内にもパラフィンが入り込むように、包埋皿内のパラフィンの量が調整されている。この状態で、包埋皿を冷却してパラフィンを冷却固化させる。
【0023】
これにより、図4に示すように、生体試料SがパラフィンPにより包埋された包埋ブロックBを作製することができる。この際、包埋ブロックBは、カセット1の底面2aにくっ付いて繋がった状態となっている。そして、最後に底面2aに包埋ブロックBが繋がったカセット1を包埋皿から取り外して裏返しにする。その結果、カセット1の底面2a上に固体された包埋ブロックBを得ることができる。そして、作業者はカセット1に印字された識別コードCを確認することで、カセット1に固定された包埋ブロックBの情報を即座に識別できるようになっている。
【0024】
(印字装置ユニット)
次に、上述したカセットの薄膜層へ識別コードの印字を行う印字ユニットについて説明する。図5は、印字装置ユニットのブロック図である。
図5に示すように、印字装置ユニット80は、印字装置20と印字装置20に接続され印字装置20の制御を行う制御用PC81とで構成されている。
【0025】
(印字装置)
図6は印字装置の概略構成図(側面図)である。
図6に示すように、印字装置20は、カセット収納部21、容器ストック部22、搬送部23、カセット印字部24、容器保持部25、集塵機26、及び容器収納部27がケーシング30内に内装されて構成されている。また、印字装置20は後述する制御部41及び通信部40(図5参照)も備えている。
カセット収納部21は、上述したカセット1が種類別に所定個数毎に箱詰めされてなるカセットパック50(図7参照)を収納保持するものであり、複数種類のカセットパック50がそれぞれ収納される複数の収納ラック31を備えている。
【0026】
図7は、カセットパックの概略構成図(側面図)、図8は収納ラックの概略構成図(側面図)、図9はカセットパックのセット時における収納ラックの概略構成図(側面図)、図10は背面図である。
図7,9,10に示すように、上述したカセット1は、プラスチック等からなるカセットパック50に種類別に所定個数毎に箱詰めされた状態となっている。具体的に、カセットパック50には、カセット1の色や大きさ、メッシュ部3の粗さの異なるカセット1が、それぞれ種類毎に仕分けされた状態で箱詰めされている。
カセットパック50は、上部開口部を有する箱型形状のものであり、その内側にカセット1を収容する収容部51が形成されている。収容部51内には、収容部51の幅方向とカセット1の幅方向とを一致させるとともに、長手方向とカセット1の厚さ方向とを一致させた状態で、カセット1が複数枚収容されている。つまり、カセット1は、その傾斜面2bを上方に向けた状態で、かつ隣接するカセット1の底面2a側と上面側とを重ね合わせた状態で縦型に配列されている。したがって、隣接するカセット1は底面2aに形成されたレール6を介して重ね合わされており、カセット1同士が線接触した状態で収容されている。
【0027】
ここで、カセットパック50の幅方向における両側面には、カセットパック50の内側(収容部51内)へ向けて窪んだ溝52が形成されている。この溝52は、収納ラック31の後述するレール33に案内されるものであり、カセットパック50の長手方向(挿入方向)における一端側(図7中左側)の端面から他端側(図7中右側)に向かってカセットパック50の中途部まで形成されている。つまり、カセットパック50の長手方向における一端側の端面では溝52が開放されている一方、他端側の端面には溝52は形成されていない。
【0028】
図8〜10に示すように、収納ラック31は、上述したカセットパック50を収納保持しておくものであり、ケーシング30の幅方向(X方向)一端側の上部においてケーシング30の幅方向(X方向)及び高さ方向(Y方向)に沿って複数列配列されている。収納ラック31は、ケーシング30の奥行き方向(Z方向)に延びる正面視C字状のものであり、下壁35と下壁35から立設する一対の側壁34とを備え、これら下壁35と一対の側壁34間にカセットパック50を保持する凹部32を構成している。つまり、これら収納ラック31の凹部32にカセット1が種類毎にそれぞれ収容された複数のカセットパック50を収納保持しておくことで、所定のカセット1が選択して取り出されるようになっている。
【0029】
また、収納ラック31の長手方向(Z方向)における一端側(図8における左側)は、カセットパック50に収容されたカセット1が取り出される取出口、他端側はカセットパック50が挿入される受入口を構成している。つまり、カセットパック50は、収納ラック31の受入口側から取出口側に向けて挿入されることで収納ラック31にセットされている。また、収納ラック31は、他端側から一端側にかけて下方に向けて傾斜しており、取出口側からカセット1が取り出されると、カセットパック50内に収容されたカセット1が重力によってカセット1の厚さ方向に沿ってスライドするようになっている。そのため、例えば前側のカセット1が取り出される度に後側のカセット1を順次取出口へ供給するような機構を別途設ける必要がないため、装置の製造コストを低減することができる。
【0030】
また、収納ラック31における凹部32を構成する一対の側壁34には、凹部32の内側に向けて(対向する側壁34に向けて)突出するレール33が形成されている。このレール33は、上述したカセットパック50の溝52に係合して凹部32内でカセットパック50を案内するものであり、収納ラック31の受入口側の端部から側壁34の長手方向における中途部まで形成されている。
【0031】
図6に戻り、収納容器ストック部22は、識別コードCが印字されたカセット1を箱詰めするための空の収容容器36をストックしておくものであり、ケーシング30内における幅方向(X方向)他端側の下部に配置されたベースストック部37とカバーストック部38とを備えている。なお、本実施形態の収容容器36は、印字されたカセット1を受け入れる収容凹部36cを備えたベース容器36aと、このベース容器36aの収容凹部36cを閉塞するように形成されたカバー容器36bとで分割構成されている。
【0032】
ベースストック部37は、収容容器36のうちベース容器36aをストックしておくものであり、複数のベース容器36aがそれぞれの収容凹部36c同士を重ね合わされた状態で、上方に向けて積み重ねられている。
カバーストック部38は、ベースストック部37に隣接して配置され、収容容器36のうちカバー容器36bをストックしておくものであり、複数のカバー容器36bがベース容器36aとの対向面を下方に向けた状態で重ね合わされている。
【0033】
搬送部23は、ベース部43と、このベース部43を支持するスライドレール44と、ベース部43にスライド可能に支持されたカセット搬送部46及び容器搬送部47とを備えている。
スライドレール44は、ケーシング30内の下部においてケーシング30の幅方向(X方向)に沿って延出しており、このスライドレール44上にはベース部43がスライド可能に支持されている。ベース部43は、スライドレール44上に設けられた下部ベース43aと、下部ベース43aの上面からケーシング30の高さ方向(Y方向)に延出する上部ベース43bとを備えている。
【0034】
上部ベース43bの幅方向(X方向)における一側には、容器搬送部47が設けられている。この容器搬送部47は、容器ストック部22から容器保持部25へ、また容器保持部25から容器収納部27へと収容容器36(ベース容器36a及びカバー容器36b)を搬送するものであり、上部ベース43b上を高さ方向(Y方向)に沿って移動可能に構成されている。
また、上部ベース43bの幅方向(X方向)における他側には、カセット搬送部46が設けられている。このカセット搬送部46は、カセット収納部21からカセット印字部24へ、またカセット印字部24から容器保持部25にセットされたベース容器36aの収容凹部36c内へとカセット1を搬送するものであり、上部ベース43b上を高さ方向(Y方向)に沿って移動可能に構成されている。したがって、搬送部23は、XY平面上を移動可能に構成されており、ケーシング30内においてカセット1及び収容容器36の取り出し及び搬送が可能になっている。
【0035】
カセット印字部24は、カセット搬送部46により搬送されたカセット1の薄膜層15に対して上述した識別コードCの印字を行うものであり、図示しないレーザマーカを備えている。このレーザマーカにより薄膜層15にレーザ光を照射することで、薄膜層15がレーザ光に沿って分解される。これにより、薄膜層15上に上述した識別コードCを印字することができる。
【0036】
容器保持部25は、カセット印字部24で印字されたカセット1の収容容器36への箱詰めが行われる場所であり、カセット収納部21の下方に設けられ、容器保持部25の載置面25a上にはベースストック部37から容器搬送部47により搬送されたベース容器36aがセットされている。そして、カセット印字部24で印字されたカセット1は、カセット搬送部46により容器保持部25にセットされたベース容器36aの収容凹部36c内へ順次搬送される。その後、収容凹部36c内が満たされた時点で、容器搬送部47により容器保持部25へカバー容器36bが搬送され、ベース容器36aが閉塞される。これにより、カセット1の収容容器36への箱詰めが完了する。
【0037】
容器収納部27は、カセット収納部21と容器ストック部22との間に設けられ、カセット1の箱詰めが完了した収容容器36を保持させる収納トレイ48を備えている。この収納トレイ48は、ケーシング30の幅方向(X方向)及び高さ方向(Y方向)に沿って複数列配列されており、箱詰めが完了した収容容器36は容器搬送部47により容器保持部25から収納トレイ48に1つずつ搬送される。そして、作業者は、箱詰めされた収容容器36を収納トレイ48から取り出せるようになっている。
【0038】
集塵機26は、カセット印字部24においてレーザ印字時に分解された薄膜層15の塵埃を回収するものであり、ケーシング30の下部に設けられた吸引部60と、吸引部60からカセット印字部24まで連通する吸引パイプ61とで構成されている。吸引パイプ61は、一端が吸引部60に接続される一方、他端が吸引部60から上方へ延びてカセット印字部24内を臨むように配置されている。吸引部60には、吸引パイプ61に接続されカセット印字部24で発生した塵埃を吸引する吸引ポンプと、吸引ポンプにより吸引された塵埃を回収する吸引タンク(ともに不図示)とが設けられている。
【0039】
図5に戻り、制御用PC81は、カセット1の薄膜層15へ印字する識別コードCを決定するためのものであり、例えば、上述した包埋ブロックBの情報(試験番号、群番号、動物番号、雌雄、ブロック番号等)を識別コードCとして入力し、この情報をID信号として印字装置20の通信部40へ出力するようになっている。また、制御用PC81では、カセット収納部21に収納されたカセット1の種類(カセットの色や、メッシュ部の粗さ、カセットの大きさ)も選択できるようになっており、選択したカセット情報を識別コードCと対応付けてカセット情報信号として通信部40へ出力する。つまり、制御用PC81は、所定の種類のカセット1に対して所定の順番で印字を行うように印字装置20に信号(ID情報、カセット情報)を出力できるようになっている。
【0040】
また、上述したように印字装置20は、カセット印字部24及び搬送部23を統括的に制御する制御部41と、制御用PC81との通信を行う通信部40とを備えている。
通信部40は、制御用PC81と印字装置20との境界となるものであり、制御用PC81から出力されたID信号とカセット情報信号とを受信して制御部41へ出力するものである。
制御部41は、制御用PC81から通信部40を介して送られたID信号をカセット印字部24へ、カセット情報信号を搬送部23へ出力するものであり、カセット印字部24及び搬送部23はこれら出力信号に基づいて動作を行うようになっている。
【0041】
(カセットの印字方法)
次に、上述した印字装置(印字ユニット)におけるカセットの印字方法について説明する。図11は、カセットパック及び収納ラックの概略構成図(側面図)であり、カセットパックのセット方法を示す説明図である。
まず、図11に示すように、カセット収納部21の収納ラック31に印字前のカセット1が箱詰めされたカセットパック50をセットする。具体的には、収納ラック31の長手方向(Z方向)とカセットパック50の長手方向とを一致させた状態で、収納ラック31の受入口側から取出口側に向けてカセットパック50を挿入する。この時、カセットパック50の長手方向における一端側から挿入していき、カセットパック50の一端側の端面から形成された溝52内に、収納ラック31に形成されたレール33を係合させた状態で挿入していく。すると、カセットパック50は、レール33に案内されて収納ラック31の取出口側まで挿入され、カセットパック50のセットが完了する。なお、その他の収納ラック31に対しても上述と同様の方法により順次カセットパック50をセットしていく。この時、試験内容や、用途に応じて、色や大きさ、メッシュ部の粗さの異なるカセット1が箱詰めされた複数種類のカセットパックをセットする。
【0042】
ところで、収納ラック31へカセットパック50をセットする際には、上述したようにカセットパック50の一端側から収納ラック31へ挿入しなければならない。万が一カセットパック50の挿入方向を誤ると、カセット1の向きが異なった状態でカセットパック50が挿入されてしまい、その後の印字が正しく行われない可能性がある。
そこで、本実施形態では、上述したようにカセットパック50の長手方向における一端では溝52が開放されている一方、他端側の端面には溝52は形成されていない。そのため、カセットパック50を他端側から挿入しようとした場合には、カセットパック50の他端側の端面と収納ラック31におけるレール33の端面とが接触してカセットパック50が挿入できないようになっている。これにより、カセットパック50の誤挿入を防止することができ、カセット搬送部46によりカセット1を正常な向きで取り出すことができ、カセット1への印字を正しく行うことができる。
【0043】
次に、図5,6に示すように、収納ラック31にセットしたカセット1の種類と収納ラック31の場所とを対応付けて制御用PC81に入力した後、カセット1に印字する識別コードC及び印字時に選択するカセット1の種類を対応付けて制御用PC81に入力する。具体的には、印字するカセット1の種類(カセット1の色や大きさ、メッシュ部3の粗さ)を選択するとともに、作製する包埋ブロックBの情報(試験番号、群番号、動物番号、雌雄、ブロック番号等)を入力する。そして、カセット1の種類及び作製する包埋ブロックBの情報を入力した後、これらの情報をカセット情報信号及びID信号として印字装置20に向けて出力する。
【0044】
制御用PC81から出力されたカセット情報信号及びID信号は、印字装置20の通信部40を介して制御部41に入力される。そして、制御部41はカセット印字部24に向けてID情報信号を出力するとともに、カセット情報信号を搬送部23(カセット搬送部46及び容器搬送部47)に向けて出力する。
【0045】
そこで、まず容器搬送部47はカセット情報信号を受信すると、この信号に基づいて容器ストック部22まで収容容器36を取りに行く。具体的には、容器搬送部47が容器ストック部22のベースストック部37まで移動してベース容器36aを取り出し、容器保持部25まで搬送する。そして、容器保持部25までベース容器36aを搬送した後、ベース容器36aの収容凹部36cを上方に向けた状態で容器保持部25の載置面25a上にベース容器36aを載置する。
【0046】
次に、カセット搬送部46はカセット情報信号を受信すると、この信号に基づいて各収納ラック31にセットされたカセット1から所定の種類のカセット1を選択し、選択したカセット1を収納ラック31から取り出す。具体的には、カセット搬送部46は所定のカセット1がセットされた収納ラック31の位置まで移動し、収納ラック31の取出口からカセット1を1枚取り出す。
【0047】
ここで、図12は収納ラックの拡大図であり、カセット取り出し時を示す説明図である。
図12に示すように、カセット搬送部(図6参照)は、所定の収納ラック31の位置まで移動すると、カセットパック50内に配列されたカセット1のうち、最前列(カセットパック50の一端側)のカセット1を斜め上方に向けて引き抜くように取り出す(図12中矢印K参照)。
【0048】
ところで、本実施形態の収納ラック31は受入口から取出口にかけて下方に向けて傾斜しているため、カセットパック50内に配列されたカセット1同士には、後側から前側に向けてカセット1の重さ分の荷重が作用している。したがって、カセットパック50内に配列されたカセット1のうち最前列のカセット1のみを抜き出そうとしても、重ね合わされたカセット1まで引き摺って抜き出してしまう可能性がある。この場合、引き摺られたカセット1は、収納ラック31から落下する虞がある。
【0049】
そこで、本実施形態においてカセットパック50内に配列されたカセット1同士は、カセット1の底面2aに形成されたレール6を介して隣接するカセット1と接触した状態で配列されているため、隣接するカセット1同士は線接触している。つまり、隣接するカセット1同士が底面2aと上面とで面接触している構成に比べて接触面積が小さくなるように設定されている。これにより、カセット1同士が面接触している場合に比べて、隣接するカセット1同士間の摩擦力が小さくなるため、カセット1の取り出し時に隣接するカセット1が引き摺られてカセットパック50から飛び出てくることを防ぎ、所定のカセット1を1枚のみ確実に引き抜くことができる。その後、カセットパック50内に配列されたカセット1は、互いに平行な状態を保ったままカセットパック50の前方へ滑り落ちていく(図12中矢印L参照)。
【0050】
そして、図5,6に戻り、収納ラック31から抜き出したカセット1をカセット印字部24まで搬送し、カセット印字部24においてカセット1に印字を行う。具体的には、カセット印字部24は制御部41から出力されたID情報信号に基づいて、レーザマーカを薄膜層15に対して照射する。そして、薄膜層15は、レーザマーカから照射されたレーザ光に沿って分解されることで、薄膜層15上にID情報信号に応じた所定の識別コードCが印字されるようになっている。なお、カセット印字部24においてカセット1への印字が行われている際には、集塵機26の吸引ポンプが作動している。これにより、薄膜層15から分解された塵は吸引パイプを介して回収されるため、カセット印字部24内やケーシング30内に塵が堆積することがない。その結果、ケーシング30を清潔に保ち、メンテナンスが容易になる。
【0051】
次に、カセット搬送部46により印字されたカセット1を容器保持部25へ搬送し、容器保持部25にセットされたベース容器36aの収容凹部36c内に配列していく。
【0052】
そして、カセット1をベース容器36a内に搬送した後、再び以上の工程を繰り返すことで、容器保持部25にセットされたベース容器36aの収容凹部36c内に、印字されたカセット1が順次配列されていく。この時、本実施形態では、カセット搬送部46に入力されたカセット情報に基づいて、所定の種類のカセット1を所定の順番で収納ラック31から取り出すとともに、制御部41に入力されたID情報信号に基づいて、収納ラック31から取り出された所定のカセット1に所定の順番、例えば試験動物毎や臓器毎、試験毎となるように印字が行われていく。すなわち、カセット搬送部46は所定のカセット1を所定の順番で取り出してカセット印字部24に搬送し、搬送したカセット1に対して所定の順番で順次識別コードCを印字していくようになっている。その後、印字されたカセット1が順次容器保持部25に載置されたベース容器36aの収容凹部36c内に配列されていくことで、収容凹部36c内に配列されるカセット1が所定の試験動物毎や臓器毎、試験毎に整理された状態で配列される。
【0053】
その後、ベース容器36aの収容凹部36c内が印字されたカセット1で満たされたら、カバー容器36bによりベース容器36aを閉塞する。具体的には、容器搬送部47がカバーストック部38まで移動してカバーストック部38にストックされている収容容器36のカバー容器36bを取り出し、容器保持部25まで搬送する。そして、容器保持部25までカバー容器36bを搬送した後、ベース容器36aの収容凹部36cを閉塞するようにカバー容器36bをセットする。これにより、識別コードC順に配列されたカセット1が収容容器36内に箱詰めされた状態となる。
【0054】
そして、カセット1の箱詰めが完了した収容容器36を容器収納部27へ搬送する。具体的には、容器保持部25の載置面25a上に載置された収容容器36を容器搬送部47により容器収納部27へ向けて搬送し、容器収納部27の収納トレイ48に収納する。
以上の工程を繰り返すことにより、識別コードC順に箱詰めされたカセット1が順次収納トレイ48に収納され、作業者は収納トレイ48から箱詰めされたカセット1を取り出すことができる。これにより、その後の包埋ブロックBの作製工程等にスムーズに移行することができる。
【0055】
このように、上述の実施形態では、カセット収納部21から所定のカセット1を所定の順番で取り出してカセット印字部24に搬送し、印字されたカセット1を容器保持部25にセットされたベース容器36aに搬送するようにカセット搬送部46を制御する構成とした。
この構成によれば、制御部41に入力されたID情報信号に基づいて、所定のカセット1に所定の順番で印字が行われ、印字されたカセット1が順次ベース容器36aの収容凹部36c内に配列されていくことで、収容凹部36c内に配列されるカセット1が自動的に所定の試験動物毎や臓器毎、試験毎に整理された状態で配列される。つまり、予め入力されたID情報及びカセット情報に基づいて、カセット1の種類と識別コードCとを対応付けて所定の分類毎に自動的に印字が行われた後に、印字されたカセットがそのまま収容容器に収容される。そのため、従来のように印字されたカセットが排出口から1個ずつ排出されるのみの構成と異なり、印字されたカセットを人為的に配列していく必要がない。
これにより、従来のように作業員がカセットに印字された識別コードCを識別してカセットを整理する場合に比べて、作業効率を大幅に向上させることができるとともに、作業者に対する負担も軽減することができる。また、印字されたカセット1をベース容器36aに配列する際に、カセット1を入れ間違う虞もない。
したがって、所定の分類毎に整理された状態でカセット1を収容容器36に箱詰めすることができるため、その後の包埋ブロックBの作製工程等にスムーズに移行することができるとともに、カセット1に固定される包埋ブロックBの品質管理を正確に行うことができる。
【0056】
また、本実施形態では、容器搬送部47により、容器ストック部22から容器保持部25へ収容容器36(ベース容器36a及びカバー容器36b)を供給することができるとともに、ベース容器36aへのカセット1の収容が終了した後に容器保持部25から容器収納部27まで収容容器36を搬送することで、収容容器36の供給及び搬送を自動的に行うことができる。
このように、本実施形態の印字装置20では、ケーシング30内でカセット1の印字から、収容容器36の供給及び搬送、箱詰めまでを一括して行うことができる。これにより、作業効率をより向上させることができるとともに、作業者に対する負担も軽減することができる。また、印字されたカセット1をベース容器36aに配列する際に、カセット1を入れ間違う虞もない。
【0057】
また、本実施形態では、カセット印字部24に設置されたレーザマーカによりカセット1の薄膜層15に対して識別コードCの印字を行う構成とした。
この構成によれば、レーザ光を利用して薄膜層15を削り、識別コードCを刻印することができるので、従来のような接触式の印刷方式と異なり、印字を失敗することが極めて少ない。また、包埋ブロックBを作製する作業中に識別コードCが擦れ等によって剥がれてしまうことが皆無である。そのため、包埋ブロックBの品質管理を常に正確に行うことができる。
また、レーザ光を利用して識別コードCを印字できるので、印字スピードが速く、印字作業を短時間で行うことができる。そのため、作業効率を向上することができる。また、非接触で識別コードCを刻印できるので、薄膜層15の表面粗さに影響を受けることなく識別コードCを表示することができる。またこれに加えて、印字される面とレーザマーカの印字ヘッド面とが厳密に一致していなくても印字不良が生じない。そのため、過度の注意を払わずに薄膜層15を傾斜面2b上に成膜することができる。
【0058】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、薄膜層15の配置位置に傾斜面2bを形成したが、これに限られず、カセット1の表面上に形成されていれば傾斜面2bを形成する必要はなく、どの位置であっても構わない。
【0059】
さらに、上記実施形態では、カセット1上に薄膜層15を設け、薄膜層15をレーザ光で分解することで識別コードCを表示する構成としたが、薄膜層15をなくしても構わない。また、カセット印字部24にレーザマーカを設置し、レーザマーカから照射されるレーザ光により印字を行う構成について説明したが、レーザマーカ以外の方法により印字を行う構成でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態におけるカセットの正面斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるカセットの平面図(背面図)である。
【図3】本発明の実施形態におけるカセットの側面図である。
【図4】本発明の実施形態における包埋ブロックが固定されたカセットを示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態における印字装置ユニットのブロック図である。
【図6】本発明の実施形態における印字装置の概略構成図(側面図)である。
【図7】本発明の実施形態におけるカセットパックの概略構成図(側面図)である。
【図8】本発明の実施形態における収納ラックの概略構成図(側面図)である。
【図9】本発明の実施形態におけるカセットパックのセット時における収納ラックの概略構成図(側面図)である。
【図10】本発明の実施形態におけるカセットパックのセット時における収納ラックの概略構成図(背面図)である。
【図11】本発明の実施形態におけるカセットパック及び収納ラックの概略構成図(側面図)であり、カセットパックのセット方法を示す説明図である。
【図12】本発明の実施形態における収納ラックの拡大図であり、カセット取り出し時を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1…カセット(包埋カセット) 2a…底面(裏面) 6…レール(凸部) 15…薄膜層(印字面) 20…印字装置(包埋カセット印字装置) 21…カセット収納部 22…容器ストック部 24…カセット印字部 25…容器保持部 27…容器収納部 33…レール 36…収容容器 41…制御部 46…カセット搬送部 47…容器搬送部 50…カセットパック 52…溝 C…識別コード P…パラフィン(包埋剤) S…生体試料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラフィン置換処理された生体試料が包埋剤に包埋されてなる包埋ブロックの載置台として使用される包埋カセットの印字面に前記生体試料の識別コードを印字する包埋カセット印字装置であって、
前記包埋カセットが種類毎に収納されるカセット収納部と、
前記包埋カセットの前記印字面に印字を行うカセット印字部と、
印字された前記包埋カセットを収容する収容容器がセットされる容器保持部と、
前記包埋カセット収納部から前記カセット印字部へ、また前記カセット印字部から前記容器保持部にセットされた前記収容容器内へと、前記包埋カセットを搬送するカセット搬送部と、
前記カセット搬送部の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記カセット収納部から所定の種類の前記包埋カセットを所定の順番で取り出して前記カセット印字部に搬送し、印字された前記包埋カセットを前記容器保持部にセットされた前記収容容器に搬送するように前記カセット搬送部を制御することを特徴とする包埋カセット印字装置。
【請求項2】
前記容器保持部にセットされる前記収容容器をストックしておく容器ストック部と、
印字された前記包埋カセットが収容された前記収容容器を収納する容器収納部と、
前記容器ストック部にストックされた前記収容容器を前記容器保持部に搬送するとともに、前記包埋カセットが収容された前記収容容器を前記容器収納部へと搬送する容器搬送部とを備えていることを特徴とする請求項1記載の包埋カセット印字装置。
【請求項3】
前記カセット印字部は、レーザマーカ装置を備え、前記レーザマーカ装置から照射されるレーザ光により前記包埋カセットの前記印字面に対して印字を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の包埋カセット印字装置。
【請求項4】
前記カセット収納部には、印字前の前記包埋カセットが種類別に所定個数配列されたカセットパックが挿入され、
前記カセットパックにおける前記カセット収納部への挿入方向に沿う面には溝が形成される一方、前記カセット収納部には前記溝に係合して前記カセットパックを前記カセット収納部内へ案内するレールが形成され、
前記溝は、前記カセットパックにおける一端から前記カセット収納部への挿入方向に沿う中途部まで形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の包埋カセット印字装置。
【請求項5】
前記カセット収納部は、前記カセットパックが挿入される受入側から、前記カセット搬送部により前記包埋カセットが取り出される取出側にかけて、下方に向けて傾斜していることを特徴とする請求項4記載の包埋カセット印字装置。
【請求項6】
前記カセットパック内には、前記カセット収納部への挿入方向に沿って前記包埋カセットが重ね合わされた状態で配列され、前記包埋カセットの裏面側には隣接する前記包埋カセットとの接触面積を減少させるための凸部が形成されていることを特徴とする請求項4または請求項5記載の包埋カセット印字装置。
【請求項1】
パラフィン置換処理された生体試料が包埋剤に包埋されてなる包埋ブロックの載置台として使用される包埋カセットの印字面に前記生体試料の識別コードを印字する包埋カセット印字装置であって、
前記包埋カセットが種類毎に収納されるカセット収納部と、
前記包埋カセットの前記印字面に印字を行うカセット印字部と、
印字された前記包埋カセットを収容する収容容器がセットされる容器保持部と、
前記包埋カセット収納部から前記カセット印字部へ、また前記カセット印字部から前記容器保持部にセットされた前記収容容器内へと、前記包埋カセットを搬送するカセット搬送部と、
前記カセット搬送部の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記カセット収納部から所定の種類の前記包埋カセットを所定の順番で取り出して前記カセット印字部に搬送し、印字された前記包埋カセットを前記容器保持部にセットされた前記収容容器に搬送するように前記カセット搬送部を制御することを特徴とする包埋カセット印字装置。
【請求項2】
前記容器保持部にセットされる前記収容容器をストックしておく容器ストック部と、
印字された前記包埋カセットが収容された前記収容容器を収納する容器収納部と、
前記容器ストック部にストックされた前記収容容器を前記容器保持部に搬送するとともに、前記包埋カセットが収容された前記収容容器を前記容器収納部へと搬送する容器搬送部とを備えていることを特徴とする請求項1記載の包埋カセット印字装置。
【請求項3】
前記カセット印字部は、レーザマーカ装置を備え、前記レーザマーカ装置から照射されるレーザ光により前記包埋カセットの前記印字面に対して印字を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の包埋カセット印字装置。
【請求項4】
前記カセット収納部には、印字前の前記包埋カセットが種類別に所定個数配列されたカセットパックが挿入され、
前記カセットパックにおける前記カセット収納部への挿入方向に沿う面には溝が形成される一方、前記カセット収納部には前記溝に係合して前記カセットパックを前記カセット収納部内へ案内するレールが形成され、
前記溝は、前記カセットパックにおける一端から前記カセット収納部への挿入方向に沿う中途部まで形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の包埋カセット印字装置。
【請求項5】
前記カセット収納部は、前記カセットパックが挿入される受入側から、前記カセット搬送部により前記包埋カセットが取り出される取出側にかけて、下方に向けて傾斜していることを特徴とする請求項4記載の包埋カセット印字装置。
【請求項6】
前記カセットパック内には、前記カセット収納部への挿入方向に沿って前記包埋カセットが重ね合わされた状態で配列され、前記包埋カセットの裏面側には隣接する前記包埋カセットとの接触面積を減少させるための凸部が形成されていることを特徴とする請求項4または請求項5記載の包埋カセット印字装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−54480(P2010−54480A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222689(P2008−222689)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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