説明

包布展張方法及び包布展張機

【課題】 表裏2枚重ねの布片を有した包布(全包布)では、洗濯・乾燥後には表裏両布片が部分的に多数箇所でくっついていて、公知の布類展張機では表裏各布片をきれいに展張させることが困難であった。
【解決手段】 表裏2枚の布片を有し且つ一縁部に布団出し入れ用の開口部を設けた包布Sの一辺の両端角部を一対のチャック21で掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その包布Sのチャック掴持部分を左右に離間させることにより、包布Sを吊上げ状態で展張させるようにしたものにおいて、包布Sを開口部が下向きになる姿勢で吊上げて左右に展張させた状態で、該展張吊上げ包布Sにおける開口部から表裏両布片間に空気を吹き込んで、該表裏両布片を剥離させるようにすることにより、展張包布の表裏各布片をそれぞれきれいに展張させ得るようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、一縁部に布団出し入れ用の開口部を設けた包布を吊上げ状態で展張させるための包布展張方法及び包布展張機に関するものである。尚、本願で対象にしている包布は、表裏2枚の布片の一縁部に布団出し入れ用の開口部を有した袋状の布団包布であって、全包布と称されるものである。
【背景技術】
【0002】
ランドリー工場においては、シーツや布団包布のような大面積布類を洗濯・乾燥後にプレス機でプレスしたり、折畳み機で折畳む作業が行われるが、その次工程装置(以下、プレス機で説明する)に布類を供給する際には、予め布類をきれいに展張させておく必要がある。
【0003】
ところで、シーツや布団包布のような大面積の布類を展張させるとともに、その展張布類を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張機として、従来から図6〜図7に示すものがある。尚、この種の公知の布類展張機としては、例えば、特開2001−159067号公報(特許文献1)に示されるものがある。
【0004】
この図6〜図7の布類展張機は、次のように機能する。まず、洗濯・乾燥済みの布類からその一辺の両端角部Sa,Saを捜し出して、その両端角部Sa,Saをそれぞれ投入装置1の各チャック(一対の投入チャック)11,11に掴持させる(図6、図7の符号Sの状態)。その状態でスタートボタンを押すと、各投入チャック11,11が布類両端角部Sa,Saを掴持したまま上動して、その布類両端角部を所定高位置にある各チャック(一対の受取チャック)21,21に受け渡し(符号S1の状態)、次に各受取チャック21,21がそれぞれ左右動装置(サーボモータ)22,22により左右外側に移動して、布類の上辺部を展張させる(図6の符号S2の状態)。続いて、送込みローラ34が送込み方向に高速回転(図7で右回転)するとともに、切換ダンバー36が鎖線図示(符号36′)側に切換えられて吸気ファン33により吸気ボックス31内の空気が吸引され、布類の下端側が符号S3の状態を経て符号S4のように吸気ボックス31内に吸い込まれる。このとき、この布類S4には、吸気ファン33の吸引作用により下方へのテンションがかけられて、該布類が方形状に展張される。その後、切換ダンバー36が実線図示側に切換えられ、各受取チャック21,21で掴持されていた布類S4の上辺部分が吸着ボックス41の先端側上面に吸着・保持され、該吸着ボックス41が鎖線図示(符号41′)するように後退し、そのとき布類上辺部分が吸着コンベア51上に移乗され(符号S5の状態)、該布類S5が展張状態のままで吸着コンベア51及び排出コンベア52を経てプレス機側に搬送される。
【0005】
【特許文献1】特開2001−159067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図6〜図7に示す布類展張機では、展張すへき布類がシーツのような1枚ものの場合には、各受取チャック21,21及び左右動装置22,22による左右展張作用と、吸気ボックス31及び吸気ファン33による下方吸引作用とによって、比較的容易に且つきれいに展張させることができるが、図8〜図9に示すような全包布Sでは、きれいに展張させるのに次のような難点があった。
【0007】
即ち、図8〜図9に示す全包布Sは、表裏2枚の布片SA,SBを有し、その一縁部(図8、図9の状態では下縁部)に布団出し入れ用の開口部Pが設けられている。そして、この全包布Sは、洗濯・乾燥後の状態(布類展張機にかける前の状態)では、図8に示すように表裏各布片SA,SBにそれぞれ多数の皺C,C・・があるとともに、図9に示すように両布片SA,SBが部分的に多数箇所で接合していて(符号Eで示すくっつき部分)、両布片SA,SB間に多数の空気溜まり部D,D・・(弛み部となる)が存在している。
【0008】
図8〜図9に示す全包布Sも図6〜図7に示すような布類展張機で展張されるが、この全包布Sでは、表裏両布片SA,SBが部分的に多数箇所で接合(図9の符号E)しているので、図6〜図7の布類展張機による上記左右展張作用と上記下方吸引作用だけでは、両布片SA,SBのくっつき部分E,E・・(多数箇所ある)が容易に剥離することがなく、両布片SA,SB間には多数の空気溜まり部D,D・・が弛み部となって残ったままとなる。そして、このように両布片SA,SB間に空気溜まり部(弛み部)D,D・・が残ったままで展張包布Sが後送されてプレス機でプレスされると、該弛み部分を折返し状態で押し潰して明確な折り皺が発生するという問題がある。このように、折り皺の付いた包布では、見栄えが悪くなるとともに、顧客から苦情が出ることになる。
【0009】
尚、この種の布類展張機の中には、例えば特開平7−54262号公報に示されるように、展張吊上げ状態の包布の背面側を左右に展張させるための背面展張装置(左右一対の拡張ベルト)を備えたものもあるが、この各拡張ベルトは、包布の背面に摺接してその背面布片を左右に引っ張る機能を有しているものの、表裏各布片を剥離させたり、両布片間の空気溜まり部の空気を排除したりする機能はほとんどない。従って、特許文献1の布類展張機では、包布前面側の布片に皺や弛み部が残ったままでプレス機側に送られることがあり、その場合には明確な折り皺が発生する。
【0010】
そこで、本願発明は、表裏2枚の布片を有した包布であっても、表裏両布片をそれぞれきれいに展張させ得るようにした包布展張方法及び包布展張機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
【0012】
本願請求項1の発明
本願請求項1の発明は、表裏2枚の布片を有し且つ一縁部に布団出し入れ用の開口部を設けた包布の一辺の両端角部を一対のチャックで掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その包布のチャック掴持部分を左右に離間させることにより、包布を吊上げ状態で展張させるようにした包布展張方法を対象にしている。
【0013】
そして、本願請求項1の包布展張方法では、包布を開口部が下向きになる姿勢で吊上げて左右に展張させた状態で、該展張吊上げ包布における開口部から表裏両布片間に空気を吹き込んで、該表裏両布片を剥離させるようにすることを特徴としている。
【0014】
洗濯・乾燥後の包布(表裏2枚の布片を有した包布)は、吊上げて左右に展張させても表裏両布片が部分的に多数箇所で接合していて、両布片間に多数の空気溜まり部(弛み部)が存在している。そして、この両布片間に多数の空気溜まり部がある状態(両布片が部分的に多数箇所で接合している状態)では、展張時に吸引装置による下方吸引作用が働いても、両布片をそれぞれ十分に展張させることができない。
【0015】
ところで、本願請求項1のように、展張吊上げ包布に対して、その開口部から両布片間に空気を吹き込むと、その吹き込み空気によって表裏の布片が膨れ、該両布片が全面に亘って剥離するようになる。そして、包布を一旦膨らせた後、吸引装置により下方から吸引すると、両布片がそれぞれ下方にテンションがかけられながら該両布片間の空気も吸引されて、両布片がそれぞれきれいに展張された状態で全面接合する(両布片間に空気溜まり部が存在しない)ようになる。
【0016】
本願請求項2の発明
本願請求項2の発明は、表裏2枚の布片を有し且つ一縁部に布団出し入れ用の開口部を設けた包布の一辺の両端角部を一対のチャックで掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その包布のチャック掴持部分を左右に離間させることにより、包布を吊上げ状態で展張させるようにした包布展張機を対象にしている。
【0017】
そして、本願請求項2の包布展張機は、包布を開口部が下向きになる姿勢で吊上げて展張させた状態で、該展張吊上げ包布における開口部から表裏両布片間に空気を吹き込み得る空気吹込装置を備えていることを特徴としている。
【0018】
この請求項2の包布展張機は、上記請求項1の包布展張方法を行うためのものであって、展張吊上げ包布に対して、空気吹込装置により包布開口部から両布片間に空気を吹き込み得るようになっている。従って、この請求項2の包布展張機でも、上記請求項1の機能を達成し得る。
【発明の効果】
【0019】
本願請求項1の包布展張方法、及び本願請求項2の包布展張機では、展張吊上げ包布に対して、その開口部から表裏両布片間に空気を吹き込むようにしているので、洗濯・乾燥後の包布(表裏両布片が部分的にくっついて両布片間に空気溜まり部がある)であっても、上記の吹き込み空気により両布片を全面に亘って簡単に剥離させることができる。
【0020】
従って、本願各請求項の発明によれば、包布の表裏各布片をそれぞれきれいに展張させることができ、後のプレス工程において折り皺が発生しなくなるという効果がある。
【実施例】
【0021】
以下、図1〜図5を参照して本願実施例の包布展張方法及び包布展張機を説明する。尚、この実施例の包布展張機は、シーツのような1枚ものの布類も何ら問題なく展張させることができるが、特に図8に示すような表裏2枚の布片SA,SBを有し且つ一縁部に布団出し入れ用の開口部Pを設けた包布(全包布と称される)Sを展張させるのに適したものである。
【0022】
まず、この実施例の包布展張機の基本構成を図1〜図3を参照して説明する。この包布展張機は、機枠10内に、投入装置1と、左右展張装置2と、吸引装置3と、受渡し装置4と、搬送装置5とをそれぞれ設置しているとともに、展張吊上げ状態の包布S2の両布片SA,SB間に空気を吹き込むための空気吹込装置6を備えている。
【0023】
機枠10は、その下面の4箇所においてそれぞれ脚13,13・・で支持しており、該機枠10の下面と床面との間に、後述の送気通路64(前後向き通路66)を設置するためのスペースを設けている。
【0024】
投入装置1は、展張すべき包布Sの一辺の両端角部Sa,Saを掴持する一対の投入チャック11,11を有し、該各投入チャック11,11を昇降装置12(図2)で上下動させ得るようにしたものである。尚、昇降装置12にはロッドレスシリンダが使用されている。
【0025】
各投入チャック11,11は、人の肩幅程度の間隔で左右に並置されている。そして、この各投入チャック11,11は、昇降装置12により投入作業高さとなる低位置(図1、図2の高さ)と包布全体を吊下げ得る高位置(包布の掴持部分を後述の受取チャック21に受け渡し得る高さ)との間で上下動せしめられる。そして、処理される包布Sは、低位置において一辺の両端角部Sa,Saを各投入チャック11,11で掴持させた後、昇降装置12で受け渡し高さまで上昇せしめられる。
【0026】
左右展張装置2は、所定高位置において投入装置1の各投入チャック11,11から包布の両端角部Sa,Saをそれぞれ受け取る一対の受取チャック21,21を有し、該各受取チャック21,21をそれぞれ左右動装置(可逆回転可能なサーボモータを使用)22,22で左右方向に移動させ得るようにしたものである。各受取チャック21,21は、図1に示すように待機状態では機体の幅中央部において投入装置1の各投入チャック11,11の間隔と同間隔で待機しており、包布の両端角部Sa,Saを受け取った後(符号S1の状態)、左右動装置22,22により包布の上辺部が緊張するまで左右外方に移動せしめられる(包布が符号S2の展張吊上げ状態となる)。
【0027】
吸引装置3(図2)は、受取チャック21,21が左右移動する部分の下方位置に吸気ボックス31を設けるとともに、該吸気ボックス31内の空気を吸気ファン33で吸引し得るものが採用されている。吸気ボックス31と吸気ファン33とを連続させる吸気通路32中には、切換ダンパー36が設けられており、該切換ダンパー36が図2の鎖線図示する符号36′の側に位置するときに、吸気ボックス31内が吸気ファン33によって吸気されるようになっている。又、吸気ボックス31の前壁上端部には、左右2本の送込みローラ34,34が設けられている。この各送込みローラ34,34は、それぞれモータ35,35によって所定タイミングで送込み方向(図2の右回転方向)に回転せしめられる。
【0028】
そして、この吸引装置3は、包布が展張吊上げ状態(符号S2の状態)において、送込みローラ34を送込み方向に回転させるとともに、吸気ボックス31内を吸引することにより、展張吊上げ状態の包布S2の下部側を送込みローラ34を乗り越えて吸気ボックス31内に吸引し(図4の符号S3の状態を経て符号S4の状態になる)、そのとき包布の下部側にテンション作用が働いて、展張吊上げ状態の包布S4を下方に展張させる機能が発生する。
【0029】
受渡し装置4は、各受取チャック21,21により展張吊上げ状態で支持されている包布(図4の符号S4)の上縁部を受け取る吸着ボックス41と、該吸着ボックス41内を吸引する吸気フアン42と、吸着ボックス41を前後に進退させる伸縮シリンダ43とを有している。吸着ボックス41の先端部上面(包布受取面)には、多数の小孔を形成しており、該吸着ボックス41内を吸気ファン42で吸引することにより、包布受取面に包布上縁部を吸着(保持)させ得るようになっている。そして、この受渡し装置4は、吸着ボックス41が前位置にある状態で包布受取面に包布上縁部を吸着させた後、該吸着ボックス41を図2に鎖線図示(符号41′)する位置まで後退させる間に、該包布上縁部を搬送装置5(吸着コンベア51)の始端部上に移乗させるように作動する。
【0030】
搬送装置5は、手前側に多数の小孔を設けた吸着コンベア51と、その後端部に連続する搬出コンベア52有している。吸着コンベア51の始端部は、前位置にある吸着ボックス41の先端部(包布受取面)よりやや後側の直下近傍に位置している。吸着コンベア51の上面走行部の下面には、吸気ボックス53が設置されていて、該吸気ボックス53内を吸気することで、吸着コンベア51の上面に包布上縁部を吸着させ得るようになっている。
【0031】
吸着コンベア51側の吸気ボックス53内は、上記吸引装置3の吸気ファン33を共用して、吸引装置3の吸気ボックス31とは択一的に吸気される。即ち、図2において、切換ダンパー36が実線図示位置にあるときには、吸引装置3側の吸気ボックス31内の吸気が停止する一方、吸着コンベア51側の吸気ボックス53内がダクト54を通して吸気され、切換ダンパーが鎖線図示する符号36′側に切換わると、逆に吸着コンベア51側の吸気ボックス53内の吸気が停止する一方、吸引装置3側の吸気ボックス31内が吸気されるようになっている。
【0032】
包布に対する空気吹込装置6は、図2に示すように、機枠10の背面側に送気ファン61を設けるとともに、該送気ファン61からの送気通路64を機枠10の背面側から前面側に跨がって設置している。
【0033】
送気ファン61の吸気口には、吸気ダクト62が取付けられている。この吸気ダクト62内には、ダンパー63が設けられていて、該ダンパーを図3に符号63で示す点線図示位置(吸気ダクト開位置)と符号63′で示す鎖線図示位置(吸気ダクト閉位置)との間で作動させ得るようになっている。尚、このダンパー63の作動タイミングについては後述する。
【0034】
送気通路64は、送気ファン61の送気口に接続された可撓管65と、該可撓管65のの下端から機枠下面の背面側から前面側に跨がる長さを有する前後向き通路66と、該前後向き通路66の前端部において上向きに突出する吹出筒67とを有している。吹出筒67は、例えば60〜70cm程度の高さを有しており、図1及び図2に符号S1,S2で示す包布吊上げ状態において、該吊上げ布類(S1,S2)の下部側が所定上下長さ(例えば、30〜40mm)だけ被さるようにしている。
【0035】
送気通路64の前後向き通路66と吹出筒67とは、床面上に敷設した台板71上で各車輪72,72・・によって前後動可能に設置されている。尚、送気通路64の左右の動きは適宜のガイド装置で禁止している。
【0036】
そして、この送気通路64は、前後向き通路66部分を伸縮シリンダ70で押し引き操作することにより、図2において実線図示する前進位置と鎖線図示(符号64′,67′)する後退位置との間で移動させ得るようになっている。又、送気通路64が前進位置(図2の実線図示位置)にあるときには、吹出筒67が投入位置で待機している各投入チャック11,11間の直下に位置し、送気通路64が後退位置(図2の鎖線図示位置)にあるときには、吹出筒67′が上方で待機している各受取チャック21,21間の直下に位置するようにしている。
【0037】
次に、この実施例の包布展張機の作動方法(包布展張方法を含む)を図4〜図5を併用して説明する。尚、運転時の初期状態では、吸引装置3の吸気フアン33、空気吹込装置6の送気ファン61、及び搬出コンベア52等はそれぞれ作動している。又、吸引装置3の切換ダンバー36は図2の実線図示位置にあって、吸気ボックス31は吸気停止状態にある。さらに、空気吹込装置6の吹出筒67は、図2に実線図示する前進位置にあり(伸縮シリンダ70が伸長している)、且つ空気吹込装置6のダンパー63は閉状態(図3の符号63′の状態)となっている。
【0038】
包布を包布展張機に供給するには、作業位置において包布Sの開口部P(図8参照)がある縁部を捜し出して該開口部Pを空気吹込装置6の吹出筒67に被せる一方、該開口部Pに対向する縁部の両端角部Sa,Saを投入装置1の各投入チャック11,11にそれぞれ掴持させる(図1、図2の符号Sの状態)。この状態では、包布Sの大部分の面積は表裏両布片SA,SBがくっついたままである。
【0039】
この状態でスタートスイッチを押すと、空気吹込装置6のダンパー63が開側に作動して、送気ファン61からの空気Aが送気通路64を通って吹出筒67の先端から包布S内に吹き込まれ、該包布が図2に符号S′で示すように膨らむ。そして、その直後(又はそれと同時)に昇降装置12により各投入チャック11,11が包布両端角部Sa,Saを掴持したまま所定高さまで上動して、包布両端角部を上方で待機している各受取チャック21,21に受け渡す(図1、図2の符号S1の状態)。又、昇降装置12の作動と同時に空気吹込装置6の伸縮シリンダ70が縮小して、送気通路64を図2の鎖線図示位置(符号64′の位置)まで後退させる(このとき、吹出筒67が符号67′で示す受取チャック21の直下に位置する)。
【0040】
続いて、各左右動装置22,22により各受取チャック21,21が左右離間方向に移動して包布を吊上げ状態で左右に展張させる(図1、図2の符号S2の状態)。これまでの行程の間は、吹出筒67から空気Aが連続して包布内に吹き込まれており、従って展張吊上げ状態の包布S2は図2に示すように前後に膨れて表裏各布片SA,SBが全面に亘って剥離した状態となる。
【0041】
次に、包布が左右に展張された後、空気吹込装置6のダンパー63が閉側に作動し(図3の符号63′)、続いて送込みローラ34が送込み方向に高速回転するとともに、吸引装置3の切換ダンパー36が鎖線図示(符号36′)側に切換えられる。すると、展張吊上げ包布S2の下端側が図4の符号S3の状態を経て符号S4で示すように吸気ボックス31内に吸い込まれ、吸気ファン33の吸引作用により展張吊上げ包布S4に対して下方へのテンションがかけられる。このとき、展張吊上げ包布S4の表裏各布片は、予め全面に亘って剥離されているので、表裏各布片に対してそれぞれ下方にテンションがかかり、且つ両布片間の空気も吸引されることにより、両布片がそれぞれ展張状態(両布片に弛み部がない状態)で全面接合する。
【0042】
その後、図4の状態から、切換ダンパー36′が実線図示側に切換えられ(吸着コンベア51の吸気ボックス53内が吸気される)、各受取チャック21,21が開放されて、包布の上辺部分が吸着ボックス41の先端側上面に吸着・保持される。続いて、吸着ボックス41が図5に実線図示する位置を経て鎖線図示位置(符号41′)まで後退するが、その間に包布上辺部分が吸着コンベア51上に移乗され、該包布が順次吸着コンベア51及び排出コンベア52を経てプレス工程側に搬送される。尚、展張吊上げ包布の下端側が吸気ボックス31内に吸引された後、空気吹込装置6の伸縮シリンダ70が伸長して、送気通路64が図5に鎖線図示(符号64′)するように前進位置まで移動し(可撓管が符号65′、吹出筒が符号67′の状態となる)、次の包布をかけ得る位置で待機する。
【0043】
このように、この包布展張機を使用すれば、表裏2枚の布片を有した包布(全包布)Sであっても、表裏の各布片をそれぞれきれいに展張させた状態でプレス工程側に搬送させることができ、折り皺のない状態で加工できる。
【0044】
尚、この包布展張機で、シーツのような1枚ものの布類も展張・搬送できるが、その場合には、空気吹込装置6の送気通路64を図4に示す後退位置に押し込んでおくと、作業位置で布類を投入チャック11,11に掴持させるときの邪魔にならない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本願実施例の包布展張機の正面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】図2のIII−III拡大矢視図である。
【図4】図2の状態からの作動変化図である。
【図5】図4の状態からの作動変化図である。
【図6】公知例の布類展張機の正面図である。
【図7】図6の布類展張機の作動説明図である。
【図8】本願で処理すべき包布の正面図である。
【図9】図8のIX−IX拡大断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1は投入装置、2は左右展張装置、3は吸引装置、4は受渡し装置、5は搬送装置、6は空気吹込装置、11は投入チャック、21は受取チャック、22は左右動装置、31は吸気ボックス、33は吸気ファン、34は送込みローラ、61は送気ファン、62は吸気ダクト、63はダンパー、64は送気通路、67は吹出筒、70は伸縮シリンダ、Sは包布、SA,SBは布片、Saは包布角部、Pは開口部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏2枚の布片(SA,SB)を有し且つ一縁部に布団出し入れ用の開口部(P)を設けた包布(S)の一辺の両端角部(Sa,Sa)を一対のチャック(21,21)で掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その包布(S)のチャック掴持部分(Sa,Sa)を左右に離間させることにより、包布(S)を吊上げ状態で展張させるようにした包布展張方法であって、
前記包布(S)を前記開口部(P)が下向きになる姿勢で吊上げて左右に展張させた状態で、該展張吊上げ包布(S)における前記開口部(P)から表裏両布片(SA,SB)間に空気(A)を吹き込んで、該表裏両布片(SA,SB)を剥離させるようにする、
ことを特徴とする包布展張方法。
【請求項2】
表裏2枚の布片(SA,SB)を有し且つ一縁部に布団出し入れ用の開口部(P)を設けた包布(S)の一辺の両端角部(Sa,Sa)を一対のチャック(21,21)で掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その包布(S)のチャック掴持部分(Sa,Sa)を左右に離間させることにより、包布(S)を吊上げ状態で展張させるようにした包布展張機であって、
前記包布(S)を前記開口部(P)が下向きになる姿勢で吊上げて左右に展張させた状態で、該展張吊上げ包布(S)における前記開口部(P)から表裏両布片(SA,SB)間に空気(A)を吹き込み得る空気吹込装置(6)を備えている、
ことを特徴とする包布展張機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−115498(P2008−115498A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300171(P2006−300171)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(502407130)株式会社プレックス (75)
【Fターム(参考)】