説明

包装体の連続的な殺菌方法及び殺菌装置

【課題】殺菌を確実に行うことが可能であり、かつ、シート部材を高い効率で搬送することが可能な殺菌方法及び殺菌装置を提供すること。
【解決手段】導入部7と、成形ユニットと、充填ユニットと、搬出部と、少なくとも1つの搬送手段2とを含んで成る包装体用殺菌装置1において、前記導入部7を、紫外線照射装置を含んで構成するか、又は紫外線照射装置として形成するとともに、該紫外線照射装置を、放射線をパルス状に照射するよう構成した。さらに、前記導入部7に気体用管路を接続するとともに少なくとも1つの気体排出部を設け、所定の動作状態において、該気体排出部によりシートフォイル4の搬送方向に対して逆方向の気体の流れを生成可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導入部と、成形ユニットと、充填ユニットと、搬出部と、少なくとも1つの搬送手段とを含んで成る包装体用殺菌装置にであって、前記導入部を、紫外線照射装置を含んで構成するか、又は紫外線照射装置として形成するとともに、該紫外線照射装置を、放射線をパルス状に高出力で照射するよう構成した殺菌装置に関するものである。さらに、本発明は、このような殺菌装置を用いた殺菌方法にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品業界及び飲料業界においては殺菌装置及び殺菌方法が広く知られているとともに、ブロー成形及び/又は深絞り成形によって一体形状の固体の堅固な容器、ビンなどを製造する技術は、非常に成熟した技術となっている。すなわち、製造品の表面は平滑であり、通常、溝、しわなどは発生しない。
【0003】
一方、柔軟な包装体においては、生産過程に起因して、あまり平滑でなく、かつ、接続部と剥離部を備えた表面となる。この場合、包装体を成形するためには、折り曲げエッジ部、接着剤塗布面及び折り範囲を甘受する必要がある。しかし、これにより、洗浄液又は殺菌液の通路が狭くなるとともに、この洗浄液又は殺菌液が通過しづらい溝、折り目、エッジ部などが生じてしまう。
【0004】
ところで、通常、液体の製品には柔軟な容器が用いられ、これを熱処理することが考えられるが、該熱処理は、これにより製品の劣化につながるため好ましくない。したがって、常温以下での無菌充填が望まれる。また、水、蒸気又は殺菌液による一般的な洗浄ステップのほかに、工業的な飲料充填装置において、H22によって殺菌を行うことがよく知られている。特許文献1には、このような無菌の成形、充填及び密封方法が開示されている。
【0005】
このようなシステムが基本的に信頼性をもって動作するとしても、殺菌すべき表面の湿潤度合が非常に短時間で制限されており、わずかな病原菌数における動作速度の増大は、上記のようなシステムによっては得ることができないか、あるいはできても是認できないほどの手間やコストを伴った上で得ることができる。
【0006】
さらに、上記のような容器を製造するためのシートフォイルを加工前に殺菌し、クリーンルームにおいて加工を行うことが知られている。また、1968年出願の特許文献2には、シートフォイルを第1のステップにおいて湿潤洗浄ステーションを通過させて洗浄し、その後、シートフォイルを、適当な殺菌のために紫外線源を通過させることが既に提案されている。
【0007】
なお、特許文献3〜6にも同様なものが開示されているが、第1のステップにおける洗浄は、それぞれ適当な液体槽においてなされるようになっている。そして、第1のステップにつづいて、シートフォイルは、空洞部において上方へ案内され、この際に水気が切られる。また、紫外線ランプの手前において乾燥装置のスクレーパが設けられている。ここで、バンド部材の動作速度が大きい場合において、紫外線照射だけでは不十分であるため、前記第1のステップにおいてある程度の殺菌をあらかじめ行えるよう、上記のような湿潤的で一部機械式の洗浄工程が必要となる。
【0008】
しかしながら、湿潤的で機械的なシートフォイルの処理は手間がかかるとともに、場合によっては液体の除去及び乾燥が不完全で、製品の悪化を招きかねないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第05/120960号
【特許文献2】英国特許第1,166,010号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第4007714号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第4209838号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第19626705号明細書
【特許文献6】国際公開第99/21593号
【特許文献7】独国特許出願公開第19613357号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記問題にかんがみてなされたもので、その目的とするところは、上述の欠点を解消するとともに、シート部材を高い効率で搬送することが可能な殺菌方法及び殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、構成部材である導入部と、成形ユニットと、充填ユニットと、搬出部と、少なくとも1つの搬送手段とを含んで成る包装体用殺菌装置において、前記導入部を、紫外線照射装置を含んで構成するか、又は紫外線照射装置として形成するとともに、該紫外線照射装置を、放射線をパルス状に高い出力で、又は非常に高い出力で照射するよう構成したことによって達成される。
【0012】
また、本発明の一実施形態は、前記紫外線照射装置の照射出力を、10〜50kW/cm2、理想的には15〜25kW/cm2としたことを特徴としている。このようなパルス状の照射により、病原菌、バクテリア及びウイルスに対して特に高い殺菌効果が見込まれる。また、本発明によれば、紫外線照射パルスの長さを100〜500μs、理想的には250〜350μsとしている。このようなパルス長さとすることで、過熱及びこれによる材料の損傷を防止することが可能である。
【0013】
そして、特許文献7に開示されているように、光熱的及び光化学的な反応によって非常に強力な圧力上昇及び温度上昇が細胞に生じ、照射された光の紫外線成分がDNA成分を破壊するよう作用する。これにより、バクテリア、カビ類及びウイルスが死滅することになる。そのため、湿潤的な洗浄過程及び細菌を死滅させる追加的な物質を用いることなくlog3〜log5程度の細菌の減少を生じさせることが可能である。
【0014】
また、本発明の一実施形態は、前記導入部に隣接する内部空間に連通した通気口を含んで構成したことを特徴としている。このような通気口により、内部空間内に大気圧よりも高い圧力を生じさせることができ、病原性の菌類、カビ類などの流入を確実に阻止するか、又は許容範囲まで削減することが可能である。
【0015】
また、本発明の好ましい実施形態は、前記導入部に気体用管路を接続するとともに少なくとも1つの気体排出部を設け、所定の動作状態において、該気体排出部によりシートフォイルの搬送方向に対して逆方向の気体の流れを生成可能に構成したことを特徴としている。シートフォイルに対して平行かつ逆方向のこのような気体の流れによって、遮断効果のほか、紫外線照射域の冷却効果も得られる。
【0016】
さらに、本発明による殺菌装置の一実施形態は、前記導入部の前方にリザーバローラを設けたことを特徴としている。ここで、このリザーバローラは、殺菌装置のづ入部に固定されているか、又は着脱自在に結合されている。そして、適当なガイド部材又は搬送部材によって、シートフォイルがリザーバローラから殺菌装置の入口へと案内される。
【0017】
また、本発明は包装体の殺菌方法にも関するものであり、該殺菌方法においては、上述のいずれかの実施形態による殺菌装置が使用される。そして、本発明による殺菌方法は、
a)第1のステップとして、前記シートフォイルを所定のローラ又はリザーバによって前記導入部に案内するステップと、
b)前記導入部において、前記シートフォイルに対して少なくとも一方向から、理想的には周囲からパルス状の紫外線を照射するステップと、
c)前記シートフォイルを包装体に成形するステップと、
d)該包装体に充填し、該包装体を封止するステップと、
e)最後のステップとして、前記包装体を前記搬送手段によって前記殺菌装置から持ち上げるか又は搬出するステップと
を行うことを特徴としている。
【0018】
また、前記殺菌装置の内圧を大気圧よりも高く設定し、前記導入部を通して前記殺菌装置の内部から外部へ気体が流れるようにすると、本発明による殺菌方法をより良好に行うことが可能である。理想的には、前記殺菌装置の内部へ、又は少なくとも前記導入部の出口へクリーンルーム内の気体と同質の気体の流れを案内することが望ましい。このような気体を、理想的には、殺菌装置の内部へ導入する前にフィルタ要素又は膜状モジュールを通過させて浄化するのが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、殺菌を確実に行うことが可能であるとともに、シート部材を高い効率で搬送することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による殺菌装置の断面図である。
【図2】導入部の詳細を紫外線照射装置と共に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1には殺菌装置1の入口側に設けられた供給装置2が示されており、この供給装置2には、リザーバローラとも呼ばれるシートフォイルローラ3が懸装されている。ここで、このシートフォイルローラ3は、基本的に連続的に回転するようになっている。そして、シートフォイル4が穿孔機構5を介して案内され、この穿孔機構5で必要な穿孔を行うことが可能となっている。その後、シートフォイル4は照射区間6へ導入される。なお、この照射区間6は、基本的に、導入部7と、紫外線照射装置8と、フォーマット調整用スイングアーム9と、ローラとして形成された適当な方向転換部材10とを含んで構成されている。
【0023】
しかして、照射区間6には包装体製造区間11が隣接しており、この包装体製造区間11では、例えば折り成形機12などの適当な手段によって空の包装体が製造される。この空の包装体は、充填区間13へ搬送され、そこで充填及び封止された後、不図示の搬出部を介して殺菌装置1から搬出される。
【0024】
図示の装置においては、殺菌装置1の全長にわたって通気用天井14が延設されており、該通気用天井14は、フィルタ部材を含んで構成され、定常的で乱流のない流れを形成するものとなっている。ここで、流れ方向は、上から下へ垂直に示した矢印15によって示唆されている。なお、通気用開口部は図示されていない。
【0025】
図2には供給装置2及び穿孔機構5並びに導入部7及び紫外線照射装置8を備えた照射区間6の詳細が示されており、シートフォイル4が紫外線照射装置8において上下両方向から紫外線源16によって照射されていることが分かる。ここで、扇状に略示した線は紫外線17である。さらに、水平状の案内通路18は、殺菌装置1への入口となっていることも分かる。
【符号の説明】
【0026】
1 殺菌装置
2 供給装置
3 シートフォイルローラ
4 シートフォイル
5 穿孔機構
6 照射区間
7 導入部
8 紫外線照射装置
9 フォーマット調整用スイングアーム
10 方向転換部材
11 包装体製造区間
12 折り成形機
13 充填区間
14 通気用天井
15 流れ方向を示す矢印
16 紫外線源
17 紫外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入部と、成形ユニットと、充填ユニットと、搬出部と、少なくとも1つの搬送手段とを含んで成る包装体用殺菌装置において、
前記導入部を、紫外線照射装置を含んで構成するか、又は紫外線照射装置として形成するとともに、該紫外線照射装置を、放射線をパルス状に照射するよう構成したことを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
前記紫外線照射装置の照射出力を、10000〜50000W/cm2、特に15000〜250000W/cm2としたことを特徴とする請求項1記載の殺菌装置。
【請求項3】
紫外線照射パルスの長さを100〜500μs、理想的には250〜350μsとしたことを特徴とする請求項1又は2記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記導入部に隣接する内部空間に連通した通気口を含んで構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記導入部に気体用管路を接続するとともに少なくとも1つの気体排出部を設け、所定の動作状態において、該気体排出部によりシートフォイルの搬送方向に対して逆方向の気体の流れを生成可能に構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記導入部の前方にリザーバローラを設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項7】
包装体の殺菌方法において、
請求項1〜6のいずれかに記載の殺菌装置を用いるとともに、
a)第1のステップとして、前記シートフォイルを所定のローラ又はリザーバによって前記導入部に案内するステップと、
b)前記導入部において、前記シートフォイルに対して少なくとも一方向から、理想的には周囲からパルス状の紫外線を照射するステップと、
c)前記シートフォイルを包装体に成形するステップと、
d)該包装体に充填し、該包装体を封止するステップと、
e)最後のステップとして、前記包装体を前記搬送手段によって前記殺菌装置から持ち上げるか又は搬出するステップと
を行うことを特徴とする殺菌方法。
【請求項8】
前記殺菌装置の内圧を大気圧よりも高く設定し、前記導入部を通して前記殺菌装置の内部から外部へ気体が流れるようにすることを特徴とする請求項7記載の殺菌方法。
【請求項9】
前記殺菌装置の内部へ、又は少なくとも前記導入部の出口へクリーンルーム内の気体と同質の気体の流れを案内することを特徴とする請求項8記載の殺菌方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−516564(P2010−516564A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545830(P2009−545830)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010944
【国際公開番号】WO2008/086868
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(598125028)カーハーエス・アクチエンゲゼルシヤフト (125)
【Fターム(参考)】