説明

包装体

【課題】 無菌状態を維持するための包装袋から不潔域の人間が直接手を触れずに中の器具類を取り出すことが可能な包装体を提供する。
【解決手段】 医療用製品200を、無菌状態を維持したまま収納、保存する包装体であって、医療用製品200を密封する包装袋100と、包装袋100の内側で医療用製品200を締め付ける帯状体120とを有することを特徴とする包装体。包装袋100にはノッチ111とテープ110が設けられ、それによって、帯状体120の把持部のみを露呈させるよう開封することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル等の使い捨て医療用器具を用いた診断や治療などの手術に利用するための医療用器具を収納するための包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
院内感染などのリスクを低減するため、使い捨て医療用器具を用いた診断や治療などの医療処置の普及が進んでいる。そのような中でも、患者の腕や脚等に形成した動脈へ貫通する穿刺孔に、カテーテルを始めとする各種器具を導入して行われるカテーテル処置は、一度の処置で特に数多くの使い捨て医療用器具を使用する。
【0003】
具体的には、造影装置上に敷く使い捨ての不織布(ドレープ)や、患者に抗血栓薬であるヘパリンを点滴するための針やチューブの集合からなる点滴のためのセットなどの手術前の準備段階に使用する器具や消毒薬などの薬剤、医師の手術衣、消毒薬を塗布するための脱脂綿類等やピンセット、鉗子、はさみ類、手術の開始後に用いる切皮メス、留置針、イントロデューサシースとダイレータ、イントロデューサ用ガイドワイヤ、シリンジ、血管造影カテーテル、血管造影カテーテル用ガイドワイヤ、血管造影剤、マイクロカテーテル等の診断や治療に用いる器具、PTCA(経皮的血管拡張術)用ガイディングカテーテル(心臓右側用形状、左側用形状他)、PTCA用ガイドワイヤ、PTCA用バルーンカテーテル、バルーン拡張用器具(インデフレータ)、ステントデリバリーカテーテル、手術後に用いる止血用デバイス、各種薬剤を一次保管するためのビーカー、カップ類等、非常に多種多様に渡った数十種類もの医療器具および薬剤が使用される。これらの器具類は基本的に使い捨てのものとされることが多い。
【0004】
使い捨ての器具類は、製造業者において密封包装された状態で滅菌され、納品されている。従って、使用時には、無菌状態を維持する包装から中の器具を取り出す必要がある。従来、このような器具類は、看護師等により事前にテーブル上に配置されるなどの準備が行われているが、医師のように入念な消毒を行わない(以下、不潔域に位置するという)看護師は直接患者の血液に触れ得る器具には触ることを許されない。逆に、清潔域と呼ばれる、直接患者に接するため入念な消毒を行った医師らは、不潔域である包装の外側(雑菌が付着している可能性がある)に触れることは許されない。従って、このような場合には、不潔域の人間が鉗子類を用いるなどして遠隔的に包装から器具を取り出すなど、非常に煩雑な作業を行う必要があった。
【0005】
このような状況下において、カテーテル処置に使用される器具をひとつのトレイに同封してキット化し、購入や配置の手間を簡略化するとともに、誤使用や誤準備を防止しようとする動きがある。例えば、特許文献1参照。
【0006】
しかしながら、このようなキットにおいても、無菌状態を維持するための包装袋から看護師等の不潔域の人間が直接手を触れずに中の器具類を取り出すのは困難であった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−130132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされ、無菌状態を維持するための包装袋から不潔域の人間が直接手を触れずに中の器具類を取り出すことが可能な包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)から(9)の本発明により達成される。
【0010】
(1)医療用製品を、無菌状態を維持したまま収納、保存する包装体であって、前記医療用製品を密封する包装袋と、該包装袋の内側で前記医療用製品を締め付ける帯状体とを有することを特徴とする包装体。
【0011】
(2)前記包装体が四角形をなし、該四角形の一辺を切り取ることによって開封するよう構成されたものであることを特徴とする上記(1)に記載の包装体。
【0012】
(3)前記包装体が開封された際に、前記帯状体の少なくとも一部が前記包装体の外部に露出されることを特徴とする上記(2)に記載の包装体。
【0013】
(4)前記医療用製品が、トレイ内に配置されたものであることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の包装体。
【0014】
(5)前記医療用製品が、トレイ内に配置された複数の器具を布状体で包んだものであることを特徴とする上記(4)に記載の包装体。
【0015】
(6)前記包装体の少なくとも一部が合成樹脂製シートから構成されてなることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の包装体。
【0016】
(7)前記合成樹脂製シートの側部に少なくとも一つのノッチが設けられ、該ノッチの近傍から切り取りラインを形成する少なくとも一つのテープが前記合成樹脂製シートの表面または内面に貼り付けられてなる上記(6)に記載の包装体。
【0017】
(8)前記合成樹脂製シートが延伸配向されたものであることを特徴とする上記(7)に記載の包装体。
【0018】
(9)前記包装体が前記合成樹脂製シートとガス透過性シートとから構成されてなることを特徴とする上記(6)ないし(8)のいずれかに記載の包装体。
【発明の効果】
【0019】
本発明の包装体によれば、無菌状態に密封された医療用製品を、帯状体を持って引き出すことにより、手に触れることなく包装袋から取り出すことが可能となるため、手術の準備時間が短縮できるとともに、医師や看護師などの医療従事者の負担を軽減することが可能となる。また、帯状体は、包装袋の中で、医療用製品が荷崩れするのを防ぐ役割も有する。
【0020】
更に、包装袋にノッチと、それに沿った切り取りラインを形成するテープを設けることにより、開封時に帯状体が保持に適した部分のみを露出することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の包装体を添付図面に示す好適構成例に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本例の包装体の実施形態である医療製品収納パック100の構成例を示した上面図、図2は同側面断面図、図3は図1の裏面を示す図である。なお、図1〜3においては、収納される医療用製品は省略してある。
【0023】
医療製品収納パック100は、医療用製品を収納する収納部101を有し、収納部101に、密封された状態で医療用製品が収納される。具体的には、図2に断面で示すように、主に上表面を形成する透明な合成樹脂製シート102と、下面を形成するガス透過性シート103とで構成して、図1及び図3に示すように、両シート102,103の周囲のシール部104を接着(シール)して、両シート102,103の間で形成される空間を、収納部101とする。
【0024】
ガス透過性シート103は容易に切り裂くのは難しいが、合成樹脂製シート102は容易に切り裂くことができる性質を持っている。この性質を利用し、医療用製品を取り出すための開封は合成樹脂製シートによって構成される部分を切り取ることで行うものとしている。
【0025】
このような形態の医療製品収納パック100は、合成樹脂製シート102を一方の短辺(図中右側)で折り返して、一部下面も構成し、ガス透過性シート103の図3中右側端部に接着し(シール部105)、袋体を作成する。作成された袋体に医療用製品を封入する際には、図1中右側端部の合成樹脂製シート102(折り返し部分)をカットし、医療用製品を挿入して再度シールする。滅菌は、その状態で行われる。なお、袋体を作製する場合に、合成樹脂製シート102の端部を折り返す代わりに、2枚の合成樹脂製シートを上下に貼りあわせて作製することもできる。その場合には、下側(ガス透過性シート103側)の合成樹脂製シートは、ガス透過性シート103の一辺に接着され(シール部105)、図1中右側端部は未シール状態にしておけば、医療用製品を挿入する際に改めてカットを行う必要が無い。
【0026】
ガス透過性シート103は、不織布等からなり、ガス(気体)は透過するが、細菌類は通さない性質を有するシートである。ガス透過性のシート103を使用してあることで、滅菌にエチレンオキサイドガスを使用できる。なお、ガンマ線滅菌や電子線滅菌等、ガスを使用しない滅菌の場合は、ガス透過性のシートを使用しないで密封される包装形態としてもよい。
【0027】
合成樹脂製シート102は延伸配向されたフィルムからなり、特定の方向にのみ引き裂きやすくなっている。医療製品収納パック100は、合成樹脂製シート102側を引き裂いて開封するような構成になっている。合成樹脂製シート102は、例えばポリエチレンの内層とPTFEの外層とからなる。このような構成によれば、ポリエチレンの内層が加熱により接着層となり、所望の箇所をガス透過性シート103と接着することができる。
【0028】
合成樹脂製シート102は長方形のパックの短辺方向(図1の上下方向)に延伸されており、その延伸方向に沿って切断ガイド用のテープ110が貼り付けてある。テープ110は、合成樹脂製シート102の材料よりも強度の高い粘着テープ材料で形成されており、合成樹脂製シート102を切り裂く際に保護層として作用するため、切断線は、テープ110に沿ったものとなる。テープ110は、合成樹脂製シート102上に2ヶ所設けられたノッチ(V字状の切り込み)111の間を結ぶライン上に沿って、3本設けられている。具体的には、医療製品収納パック100の上面に2本、下面に1本である。下面においては、図3中左側(ガス透過性シート103側)にはテープを貼らなくても、裂け難い性質を持つガス透過性シート103がガイド役を兼ねるためである。このようなテープ110を設けることによって、使用者がノッチ111の一方から合成樹脂製シート102の切り裂きを行えば、テープ110によって予め定められたラインに沿って合成樹脂製シート102が切断され、医療製品収納パック100は、図1〜3中右側に大きな開口を得ることができる。なお、テープ110は合成樹脂製シート102の表面または内面に貼り付けることができる。また、合成樹脂製シート102は必ずしも延伸配向されていなくても、裂けやすい性質であれば実施可能である。
【0029】
また、テープ110は、合成樹脂製シート102のカーリング(丸まり)の防止にも役立っている。すなわち、内層と外層で素材の異なる合成樹脂製シート102は、特にポリエチレンからなる内層側に収縮性があり、内側に丸まる性質があるが、合成樹脂製シート102の外側表面は不潔域であるため、中の医療製品に外側表面が触れることは避けなければならない。テープ110が上面の製品側(図1における左側)にも設けられていることにより、合成樹脂製シート102のカーリング、すなわち、内部医療製品の汚染の虞を回避することができる。
【0030】
収納部101に収納される医療用製品200としては、例えば、人体の、特に血管に導入するカテーテル及びその付属品などの医療用器具がある。このような医療用器具は、滅菌されたものである必要がある。通常これらは一回限りの使い捨て製品であり、滅菌状態で密封された包装形態で販売される。
【0031】
図4、図5は、医療用製品200の構成を説明する図である。図4に示すように、医療製品収納パック100に収納される医療用製品200は、硬質のプラスチックなどで成型されたトレイ201内にカテーテルやシリンジ(注射器)、注射針、鉗子、脱脂綿等の医療用器具類202を収納し、その上に医師の身に付ける術衣や手袋、マスク、ドレープ(シーツの代わりに用いるなどする不織布)等203を乗せ、図5(a)(b)に示すように、覆布204で包んだものである。覆布204は、手術の際に器具類を置くために使用されるワゴン(図示せず)の上に被せてワゴン表面の雑菌から医療用器具類を保護するための布状体であり、通常ドレープと同様の不織布からなる。
【0032】
図4のトレイ201内に設置された医療用器具類などに対し、図5(a)に示すように図の上下方向から覆布204を被せ、左右は、矢印205に示す方向に折りたたむように被せる。
【0033】
本発明においては更に、図5(c)に示すように、医療用製品200の長手方向に、帯120が巻きつけられている。帯120は、合成樹脂製シート102と同様の樹脂フィルムから作成することができる。帯120が医療製品収納パック100内で医療用製品200をドレープの上から締め付けていることによって、ドレープが緩衝材の役割を兼ね、帯120が荷紐の役割を兼ねることとなるため、医療製品収納パック100内で医療用製品200が荷崩れを起こすことを防止することができるとともに、医療製品収納パック100を開封した際に、帯120を引っ張ることによって、医療用製品200に直接手を触れることなく医療用製品200を取り出すことができる。
【0034】
帯120は、一本の帯を医療用製品200の周囲に巻いた後、図6に示すような複数の三角形状の熱融着部121で接着される。ここで、三角形状の頂点側は帯120の端部側を向き、底辺側は医療用製品200側を向くように構成される。このような構成によれば、帯120の両端部を引き離す方向に引っ張ることによって容易に帯120を医療用製品200から除去することができるが、医療用製品200側から帯120を引き剥がすのは困難となる。これにより、運送中や保管中に帯200が外れるのを防止することができる。
【0035】
ここで、帯120は延伸配向を持つ2層のフィルムから構成されている。2層のフィルムを使用する理由として、1層のフィルムでは樹脂の厚み分全てが融着されるため、引き離す際には熱融着部121における三角形の頂点においても、多少の力が必要である。本実施形態においては、2層のフィルムを使用することで内側層は融着されるが外側層は融着されない構成となる。その結果、三角形の頂点を基点に小さな力で層を剥離させることができる。なお、剥離の際には、延伸されたフィルムの引裂け性によって、より容易に外すことができる。
【0036】
図7は、医療製品収納パック100の開封から中の医療用製品200の取出しまでの様子を説明する図である。図7(a)は、医療用製品200を密封状態で封入した状態を示す。図7(b)はノッチ111から医療製品収納パック100の端部を切り取った状態を示している。図7(b)の状態では、帯120の端部が開口から飛び出している。図7(c)は、医療製品収納パック100における切り取った側とは反対側の端部を手で押え、帯120を引いて内部の医療用製品200を取り出す様子を示すものである。このような手順を踏むことによって、不潔域の人間が中の医療用製品200に直接手を触れることなく、医療用製品200を容易に取り出すことができる。取り出した後は、帯120の両端部を手で持って、反対方向に引き離すことで帯120は容易に分離し、取り外すことができる。
【0037】
上述した実施の形態では、医療用製品200として、血管に導入するカテーテル及びその付属品などの手術に使用する医療用器具を例としたが、滅菌された状態で包装材内に封入されて販売される医療用製品であれば、医薬品も含め、他の如何なる医療用製品にも適用が可能である。
【実施例】
【0038】
本発明の医療製品収納パック100を、以下の寸法で作成した。
【0039】
医療製品収納パック100:600mm×850mm
合成樹脂製シート102:600mm×1000mm(端部150mmを折り返し)
ガス透過性シート103:600×700mm
帯200:30mm×1700mm
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本例の包装体の実施形態である医療製品収納パック100の構成例を示した上面図である。
【図2】図1の医療製品収納パック100の側面断面図である。
【図3】図1の裏面を示す図である。
【図4】医療用製品200の構成を説明する図である。
【図5】医療用製品200を覆布204で覆い、帯120を巻く様子を説明する図である。
【図6】帯120の接着の形態を示す図である。
【図7】医療製品収納パック100の開封から中の医療用製品200の取出しまでの様子を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
100 医療製品収納パック
101 収納部
102 合成樹脂製シート
103 ガス透過性シート
110 テープ
111 ノッチ
120 帯
200 医療用製品



【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用製品を、無菌状態を維持したまま収納、保存する包装体であって、前記医療用製品を密封する包装袋と、該包装袋の内側で前記医療用製品を締め付ける帯状体とを有することを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記包装体が四角形をなし、該四角形の一辺を切り取ることによって開封するよう構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記包装体が開封された際に、前記帯状体の少なくとも一部が前記包装体の外部に露出されることを特徴とする請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
前記医療用製品が、トレイ内に配置されたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の包装体。
【請求項5】
前記医療用製品が、トレイ内に配置された複数の器具を布状体で包んだものであることを特徴とする請求項4に記載の包装体。
【請求項6】
前記包装体の少なくとも一部が合成樹脂製シートから構成されてなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の包装体。
【請求項7】
前記合成樹脂製シートの側部に少なくとも一つのノッチが設けられ、該ノッチの近傍から切り取りラインを形成する少なくとも一つのテープが前記合成樹脂製シートの表面または内面に貼り付けられてなる請求項6に記載の包装体。
【請求項8】
前記合成樹脂製シートが延伸配向されたものであることを特徴とする請求項7に記載の包装体。
【請求項9】
前記包装体が前記合成樹脂製シートとガス透過性シートとから構成されてなることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の包装体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−131284(P2006−131284A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323846(P2004−323846)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】