説明

包装即席麺及びその製造方法、並びに包装即席麺とカップ状容器からなる即席麺セット、及びその調理方法

【課題】 市販の即席カップ麺のように、熱湯を注加するだけで、麺、スープ、具材が復元して喫食でき、それでいて即席カップ麺の場合とは異なり、容器を廃棄することなく、しかも廃棄する包材を極力減らした即席麺を提供する。
【解決手段】 包装体から容器に移し、熱湯を注加して喫食する包装即席麺であって、該包装即席麺は、麺塊と、具材及び又はスープが包装体に内包されており、該包装体は、開口蓋を有する深絞り型の軟包材よりなる包装体であり、該包装体内には、底部に具材及び又はスープが配置され、その上に麺塊が該具材やスープを覆うように配置され、該麺塊と、具材及び又はスープが、該包装体内で脱気包装されることにより、一体的に封入されてなる、包装即席麺。及び、該包装即席麺に適合するカップ状容器との即席麺セットを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体から容器に移して喫食する包装即席麺に関する。
【背景技術】
【0002】
即席カップ麺は、使い捨てのカップ容器に即席麺塊とスープ、及び必要に応じて具材等がセットで封入されており、熱湯を注加するだけで調理、喫食できる極めて簡便性の高い食品である。しかし、即席カップ麺は、1食分ずつ容器に包装されているので、保管や、小売店での販売に際して、スペースを取るという問題点がある。また、カップ容器は使い捨てのため、簡便性の点ではきわめて優れているが、不経済な面もあり、廃棄に伴うごみ処理の問題もある。
【0003】
そこで、容器を使い捨てでなく、再使用可能なものとし、中身の麺塊とスープを再充填して使用するアイデアが特許文献1、2等に記載されている。また、実際にこのような商品として、本出願人は包装即席麺(商品名「マグヌードル」)を販売している。これは、一食分ずつ、即席麺塊とスープがそれぞれ個別にピロー包装されており、手持ちのマグカップ等に麺塊とスープを入れて、これに熱湯を注加して喫食するものである。また、特許文献3には、1つの調理容器に複数の個包装された麺塊と個包装されたスープをセットにした即席麺のセットが開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1、2には、再使用する容器に使用される即席麺や調理容器の形状に関する具体的な記載が無い。また、前記マグヌードル(商品名)や特許文献3は、スープと麺塊がそれぞれ個別に包装されているため、それぞれに包材を必要とし、喫食時もこれらを一つ一つ開封しなければならず、手間を要する。さらに、スープ、麺塊以外に、即席カップ麺並みの具材を添付する場合には、具材についても個包装する必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−59983号
【特許文献2】特開2002−320455号
【特許文献3】実開昭51−97587号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、市販の即席カップ麺のように、熱湯を注加するだけで、麺、スープ、具材が復元して喫食でき、それでいて即席カップ麺の場合とは異なり、容器を廃棄することなく、しかも廃棄する包材を極力減らした即席麺を提供することを課題とした。
【0007】
そこで、まず、本発明者らは、当該課題に対して、即席麺塊とスープ、及び具材を一つの袋状の包材に包装して詰替え用とし、別に用意したカップ容器に、この詰め替え用の即席麺塊等を空けて、これに注湯することで、調理、喫食することを考えた。しかし、この場合、麺がスープまみれになって調理時のハンドリングが悪く、スープがカップ容器の底部に落ちるとスープが溶解せずにダマになる場合があり、また、具材が容器底部に落ちて調理時の見栄えが悪い等の問題があった。さらに、麺塊を通常の即席麺1食分の大きさに成型すると、包装体内で麺塊が動いて破損しやすく、手持ちのマグカップ等を用いてこれを調理する場合には、カップの形状等によっては、麺の湯戻りが悪い場合もあった。
【0008】
すなわち、本発明はこのような問題点をも解決しつつ、かつ上記課題、すなわち、市販の即席カップ麺のように、熱湯を注加するだけで、麺、スープ、具材が復元して喫食でき、それでいて即席カップ麺の場合とは異なり、容器を廃棄することなく、しかも廃棄する包材を極力減らした即席麺を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に対し、本発明者らは、以下のような包装即席麺を、別途用意する容器を用いて調理することで、これを解決した。すなわち、本発明は、
包装体から容器に移し、熱湯を注加して喫食する包装即席麺であって、
該包装即席麺は、麺塊と、具材及び又はスープが包装体に内包されており、
該包装体は、開口蓋を有する深絞り型の軟包材よりなる包装体であり、
該包装体内には、底部に具材及び又はスープが配置され、その上に麺塊が該具材やスープを覆うように配置され、該麺塊と、具材及び又はスープが、該包装体内で脱気包装されることにより、一体的に封入されてなる、包装即席麺である。
【0010】
この包装即席麺は、喫食時には、包装体の開口蓋を剥ぎ取り、容器(調理容器)に包装体の底部を上にした状態でその中身を投入すれば、該容器内で、具材、スープ(粉末、顆粒、板状等固形のもの)が麺塊上に載置された状態となり、これに熱湯を注加すれば喫食できる。このような形態であれば、手持ちの容器等に移し替える際のハンドリング性が良く、スープが麺塊の上面に載置されるため、注加する熱湯が直接スープにかかり、溶けにくいスープも容易に溶かすことができる。また、軟包材で全体が脱気包装されているため、保存時、移送時に、包装体内で麺塊や具材、スープは固定されて動きにくく、破損しにくく、保存性も向上する。
【0011】
さらに、本発明は、前記麺塊が、略円錐台形状であって、該麺塊の最も広い平面部が、前記包装体内で該包装体の底部側になるように配置されてなることが好ましい。このような形態であれば、投入する容器(調理容器)の開口が即席麺塊より若干大きい程度であっても、麺塊を上下逆転させることにより(麺塊の小さい平面を下に向けて)容易に容器内に投入でき、しかも、容器内に投入した時に、麺塊の広い平面上に具材とスープをきれいに載置させた状態とすることができる。
【0012】
また、本発明は、前記包装体が、その開口部が底部と略同型同大、又は底部より若干広く形成された、略円柱形状の深絞り型の包装体であり、前記包装体底部内側面が、ほぼ全周に渡って前記麺塊と当接している包装体であることが好ましい。すなわち、後の調理工程で容器内に麺塊を投入したときの、容器内で上になる麺塊の面の周縁部と、包装体の底部内側面が、ほぼ全周に渡って当接している状態(線状又は面状に当接している状態)であることが好ましく、このような状態であれば、該麺塊の周縁部と包装体底部内側面の間にほとんど隙間がなく、封入された具材や、スープが包装体内で包装体開口部側へ移動するのを防止できる。そして、このような包装体であれば、脱気包装した時、深絞り型の包装体本体がしわになる部分が少なく、包装体の蓋部の歪みも少なく、蓋部に記載する文字等が読みにくくならない。また、調理時、容器内に麺塊等を投入する際に具材やスープが麺塊と包装体の隙間から脱落しにくい。
【0013】
また、前記包装体については、開口部周縁に幅広のフラットなフランジ部を有し、前記開口蓋が、該フランジ部の全周、好ましくはほぼ全面でイージーピール性を有するように接着してなる形態(手で容易に引き剥がすことができる状態)であることが好ましい。このような構造の蓋材であれば、手で簡単に包装体の開口部全面を開口でき、取り出しやすいと共に、高い密封性が維持でき、保存性にも優れる。
【0014】
さらに、本発明は、上記の各包装即席麺において、使用する容器(調理容器)との関係が、次のような関係であることが好ましい。すなわち、前記容器が、開口部が底面より広いテーパー形状を有するカップ状容器であり、前記麺塊が、該テーパー形状を有するカップ状容器の容器内において、その中間位置で該麺塊側面と該カップ状容器内側面が当接して保持されるように成型されてなる形状である、包装即席麺である。このように、カップ状容器内で、麺塊が容器の底に着かずに中空保持される構造とすれば、麺塊が容器内で固定されて動きにくく、熱湯が麺塊底面にも回るため、湯戻り性が向上する。
【0015】
また、上記各包装即席麺は、次のようにして製造できる。すなわち、本発明は、
深絞り型の包装体内に即席麺塊が脱気包装された包装即席麺の製造方法であって、
軟包材よりなり、深絞り型の凹部が形成され、フランジ部を有する包装体を供給する工程、
該凹部に具材及び又はスープを収容する工程、
該収容した具材及び又はスープに被せるように即席麺塊を収容する工程、
即席麺塊を収容した後、減圧下で、前記凹部周縁のフランジ部をフィルム状の軟包材でシールして密封する工程、の各工程を含む包装即席麺の製造方法である。
【0016】
次に、本発明は前述した課題に対し、次のようなカップ状容器と、これに投入して詰め替えて使用することのできる包装即席麺とのセットを提案する。すなわち、本発明は、
再使用可能なカップ状容器と、該カップ状容器に中身を移し、熱湯を注加して喫食する包装即席麺とからなる、即席麺セットであって、
前記カップ状容器は、開口部が底面より広いテーパー形状を有する容器であり、
前記包装即席麺は、開口蓋を有する深絞り型の軟包材からなる包装体内に、該包装体内の底部に具材及び又はスープが、その上に麺塊が該具材及び又はスープを覆うように配置され、かつ、該麺塊は、該テーパー形状を有するカップ状容器の容器内において、その中間位置で該麺塊側面と該カップ状容器内側面が当接して保持される形状であり、これら麺塊と具材及び又はスープが、該包装体内に脱気包装され、一体的に封入されてなる包装即席麺である、カップ状容器と包装即席麺からなる即席麺セットである。
【0017】
このように、専用のカップ状容器を使用することで、包装体内の即席麺塊をカップ状容器内に簡単に確実に投入でき、かつ、麺塊を容器内で中空保持構造(宙吊り状態)に固定して収容することができるため、戻りにくい麺塊底部の復元性を向上させることができる。
【0018】
特に、次のような麺塊構造とすることで、麺塊はカップ状容器内で、しっかりと中空保持構造を取ることができ、好ましい。すなわち、前記麺塊形状が、麺塊の広い平面がカップ状容器の開口より小さく、麺塊の小さい平面がカップ状容器の内底面より広い形状の円錐台形であり、さらに好ましくは、該麺塊形状が、前記カップ状容器の容器内側面のテーパー形状と略同一の側面形状を有し、該麺塊を該カップ状容器に充填した時に、該麺塊側面と容器内側面がほぼ全周で接する形状とする。
【0019】
また、本発明は、上記包装即席麺について、次のような調理方法を取ることが望ましい。すなわち、
上記した包装即席麺の蓋を剥がし、蓋を剥がした前記包装体のフランジ部にカップ状容器の開口部をかぶせ、次いで、かぶせたまま上下回転して位置を逆転させることにより、該カップ状容器内に、好ましくは前記麺塊を、該カップ状容器側面の中間位置に保持して、麺塊上面にスープ及び又は具材を載置した状態とし、これに熱湯を注加して調理する。
【0020】
なお、この場合、包装体の開口部は幅広いフランジ部を持ち、その全面が開口するように、かつ、イージーピール性を有するように、具体的には、スライスハムの包装体のような開口部であることが特に好ましく、また、カップ状容器の開口部に対して、該包装体の開口部はこれよりも小さく、一方、包装体のフランジ外縁は、これよりも広い形状であることが望ましい。このような手順で、本発明の各包装即席麺をカップ状容器に投入すれば、カップ状容器内の所定の位置に、包装体の中身に直接触れることなく、簡単にスープや具材を上にした状態で収容することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の包装即席麺によれは、市販の即席カップ麺のように、熱湯を注加するだけで、麺、スープ、具材が復元して喫食でき、それでいて即席カップ麺の場合とは異なり、容器を再使用して用いるため、カップ容器を廃棄することがない。そして、その他の廃棄する包材も極力減らすことができ、また、即席カップ麺のように1食ごとにカップを添付しないため、保存、移送に際してスペースを減らすこともできる。
【0022】
さらに、本発明の包装即席麺は、軟包材に脱気包装されているため、包装体内で具材やスープ、麺塊が固定され、麺塊等が壊れにくいだけでなく、保存性も向上する。そして、麺塊等包装体の中身に触れることなく、調理容器に移し替えることができ、手を汚すことはない。また、移し替えた際に、スープ、具材が麺塊上面に載置されるので、見栄えが良く、スープが麺塊上に載置されるので、溶けにくいスープでも、スープ上に直接注湯でき、溶けずにダマになることも少ない。
【0023】
特に、本発明の包装即席麺に適合する専用のカップ容器を用いる場合、麺塊をカップ容器内に、底部を浮かせた中空保持の状態で収容できるので、戻りにくい麺塊底面も良好に復元でき、比較的大きな麺塊でも復元できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を製造工程に従って具体的に説明する。
本発明では、まず即席麺塊と、具材、スープを用意する。即席麺塊は常法によって製造すればよく、油揚げ麺、熱風乾燥麺、凍結乾燥麺等、それぞれの製法に従って製造する。具体的には、小麦粉等原料粉に、副原料、練り水を加えて混練した後、圧延・切出して麺線とするか、押出して麺線とした後、麺線を蒸煮又は茹でてα化処理し、必要に応じて着味した後、これをリテーナに入れて、油揚げ、あるいは熱風乾燥、マイクロウェーブ乾燥、凍結乾燥等を行って乾燥処理する。
【0025】
この際、麺塊形状は、熱湯を注加して復元する時に容器に奪われる熱量が少ない、縦長のカップ状容器に適応したものが好ましく、具体的には円柱形、角柱形、円錐台形、角錐台形のものが良い。特に、スープのような流動性の食品を入れる容器としては、容器開口部が円周を形成していないと食べにくいので、これに合わせて麺塊は円柱形、円錐台形であることが望ましい。さらに、製造時の麺塊のリテーナからの型抜けの問題や、麺塊上面を広くすることで、載置される具材の量を増やし、見栄えが良できる等の点から、円錐台形の麺塊形状のものが最も好ましい。これは、現在、縦型容器入りの即席カップ麺に使用されている形状と同様のものである。
【0026】
このような形状に成型する方法は、油揚げ麺の場合はフライリテーナの形状を、熱風乾燥麺や凍結乾燥麺の場合は、乾燥庫や凍結庫に投入するリテーナの形状を、所望する製品形状と同型として、それぞれα化済みの麺線をリテーナに投入し、乾燥、又は凍結処理すれば良い。しかし、本発明の包装即席麺の場合、麺塊は包装体に脱気包装されるので、脱気包装時の麺塊の壊れや包装体への麺塊の突刺しの問題から、麺塊形状は麺塊内に部分的に広い空隙部や、バリの生じていない形状とすることが好ましい。このような空隙部やバリを生じない麺塊にするためには、リテーナの形状を投入される麺の量に対して、通常の即席カップ麺の場合よりも若干タイトに設計すれば良く、その他にも、麺塊を乾燥前、乾燥中に機械的に圧縮する工程を加えて製造しても良い。なお、あまりタイトにして、麺線密度を上げすぎると、麺塊内部の乾燥が不十分になり、復元性が悪くなる。
【0027】
具材やスープも常法によって製造すればよい。具材は、凍結乾燥具材の他、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、フライ乾燥等の手段で乾燥し、熱湯によって復元可能なものが使用できる。例えば、一般的な即席カップ麺に使用されている、エビ、チャーシュー、かまぼこ、ねぎ、もやし、天ぷら、油揚げ等各種の乾燥具材が使用でき、あるいは、澱粉液等結着剤や賦型剤を添加して型に入れて乾燥した成型乾燥具材も使用できる。
【0028】
スープは、粉末状、顆粒状、板状、ペレット状等、固体で溶けやすいものが使用できる。スープには各種調味料、香辛料、塩、粉末醤油、糖、香料の他エキス類、油脂、色素等を配合したものが使用される。溶解しやすいように、造粒工程を有して製造されたものが好ましく、造粒方法としては、流動層造粒、噴霧造粒、解砕造粒等各種のものが使用できる。
【0029】
また、スープと具材は、板状等の形態に、共に一つに成型した形態とすることもできる。この場合は、前記成型具材と同様、結着材として澱粉、デキストリン、ゼラチン等を加え、型枠に入れて乾燥し、成型する。さらに、スープや具材を予め麺塊に結着させてしまうこともできる。その方法としては、板状、ペレット状等に成型した具材やスープを可食性の接着剤で麺塊表面に結着させる方法、前記結着材を含む具材やスープを加熱、又は麺塊表面を加熱して、これを熱融着させる方法等が可能である。
【0030】
このように製造した即席麺塊、具材及び又はスープは、軟包材で製造された深絞り型の包装体内に、具材、スープが該包装体底部に、そしてその上に麺塊が、具材やスープを覆い被さるように収容される。
深絞り型の包装体の製造方法としてはナイロン、ポリプロピレン等を主体とする軟包材のシートを加熱、軟化させて、これをキャビティー側から減圧吸引して、深絞り型に成型する、いわゆる真空成型方法が使用できる。あるいは、キャビティー側から減圧して軟包材を引き込み、プラグで押し込んで成型する等、各種の方法で製造可能である。深絞り型の包装体の深さは、収容する麺塊の高さ+具材・スープの高さより、若干大きい程度が良く、形状は、開口部と底部の内径がほぼ同じか、開口部の方が若干広い略円柱形状(断面U字形、又はコの字を1/4回転させた形)が好ましい。また、そのサイズは、麺塊と包装体内面との間にあまり大きな隙間が生じない形状が好ましい。このように成型することで、具材やスープ、麺塊が包装体内にタイトに固定され、脱気包装時にしわが少なくなり、包装体に印刷した図や文字が見辛くなりにくい。
【0031】
また、このように真空成型法等で深絞り型に成型する時、深絞り型にキャビティー内に引き込まれた部分が麺塊等を収納する部分となり、引き込まれない周縁がフランジ部となる。該フランジ部は、イージーピール性を付与して蓋材と接着させる場合には、蓋材のシートと一体化される部分であるため、フラットであることが好ましく、手で摘んで引き剥がすことがた易い程度に幅を持たせて形成する必要がある。
【0032】
蓋部となるシートはポリプロピレン、PET等を主体とする軟包材のシートが用いられ、深絞り型のシートのフランジ部と接着されて一体化される。深絞り型の包装体本体となるシートと、蓋材となるシートの接着面の少なくとも一方のシートの表面には、イージーピール性の機能を付与する場合には、このような性質を有する樹脂を積層しておく。イージーピール性の素材としては、EVAなどの易接着樹脂の他、ポリプロピレン系樹脂等が、包装体本体側の材質と蓋材側の材質に応じて選択される。ここで、イージーピール性のシール強度としては、手で引き剥がすことのできる接着強度で、かつ製造時、保存時等に剥離せず、包装体内を密封できる強度である必要があり、200〜1500g/15mm程度であることが最も好ましい。
【0033】
このように形成した深絞り型の包装体本体に、前述の具材、スープを投入して収納する。具材を先に、続いてスープを投入するのが好ましいが、同時に投入しても、スープを先に投入してもよく、先述したように、具材とスープを一体成型したものを投入することもできる。続いて、先に収納された具材、スープを覆うように麺塊を投入する。麺塊は、調理時に容器内で上になる部分(上面)を包装体内の底部向けて投入する。麺塊が円錐台形等の広い平面を有する場合には、当該最も広い平面を調理時の麺塊上面とし、深絞り型の包装体の底部に向けて投入するのがよい。
【0034】
このように、麺塊の広い平面を深絞り型の包装体の底部に向けて投入した時の包装体と麺塊との関係は、該包装体内側面が、ほぼ全周に渡って前記麺塊と当接している状態が望ましい。すなわち、麺塊の広い平面の外縁と包装体底部内側面(底部がRを形成している場合、R部分も含む)がほぼ全周で接していることで、具材やスープが、麺塊の広い平面によって包装体底部に押し付けられて固定された状態となり、該具材やスープが包装体の開口部側に回り込むことがない。
【0035】
具材、スープ、麺塊を収容した包装体は、フランジ部に蓋材となる軟包材のシートを被せて、かつ、包装体内を脱気するために、減圧下で積層、接着させる。接着は、フランジ部のほぼ全面が接着した、スライスハムのパックのような形態で接着させるのが最も好ましいが、フランジ部の外縁や開口端部を密封できるように、全周にわたってシールすればよい。なお、接着方法は、通常熱融着によるが、その他の方法でも可能である。
【0036】
このようにして、蓋材のシートと、深絞り型の包装体本体のフランジ部を接着、一体化させた後、隣同士連結しているフランジ部を、一食分ずつになるように、切断して完成する。完成した本発明の包装即席麺の斜視図の具体例を図1に示した。図1は包装体底部を上にした図であり、該包装体底部は、具材等が載置された麺塊の上面側で、調理の際に、容器内に投入した際に、容器内で上になる面である。
【0037】
次に、本発明の包装即席麺を調理する場合に最も適当な容器について説明する。本発明の包装即席麺に特に好ましい容器は、包装即席麺の麺塊が容器内底部に麺塊底部が着かずに容器内側面の中間位置で、麺塊が保持されるような形状の、開口部に向けて外拡するテーパー形状を有するカップ状容器である。材質としては、ポリプロピレン、PET、ポリスチレン等各種硬質の合成樹脂のものや、ガラス製、陶器製、金属製等、あらゆる材質が可能である。ただし、保温性、喫食時の断熱性、再使用のための洗浄のし易さ等を考慮すれば、二重壁等の断熱性を付与した、合成樹脂製やガラス製のものが、最も好ましい。また、保温性の観点から、復元調理時に蓋をできるよう、蓋を有する容器が好ましい。本発明においては、このようなカップ状容器が最も好ましいが、通常のマグカップや、コップ、あるいは多少深めの丼型容器等、それに類する形態のものも使用できる。
【0038】
次に、本発明の包装即席麺の調理方法を説明する。本発明の包装即席麺は、包装体の蓋部のシールを剥がして開口し、包装体から中身を取り出して、これをカップ状容器に投入し、熱湯を上から注加すればよいが、以下のような方法で容器に投入することで、麺塊に直接手を触れることなく、容器内に、具材やスープを上にして収容することができる。
【0039】
すなわち、最も良い方法としては、図2のように包装体底部を下に向け、包装即席麺の開口蓋を剥がし、蓋を剥がした前記包装体の開口部を覆うように容器の開口部を包装体のフランジ部にかぶせ、次いで、かぶせたまま上下回転して位置を逆転させ、図3のように、カップ状容器内に麺塊と、固体状のスープ及び、又は具材を押し出して投入し、これに熱湯を注加して調理するのである。
【0040】
本発明の包装即席麺は蓋を剥がすと麺塊の底面が露出し、包装体内に空気が入るために、軟包材は深絞り型に成型したときの状態にほぼ復元する。すると、麺塊側面と包装体の間に隙間が生じるので、包装体を逆さまに向ければ、麺塊を包装体から落下させることができる。この時、容器開口部に向けて包装体開口部を下に向けて麺塊を容器内に投入しても良いが、下に向ける間に麺屑や、スープが容器外にこぼれるのを防ぐために、前記のように、容器を逆さに向けて、麺塊に覆い被し、これを上下回転して反転すれば、麺塊は容器内に、包装体の底部にあった具材やスープが載置された麺塊上面部を上にして、収納することができる。
【0041】
以上のようにして、容器内に麺塊を収納した後、熱湯を注加し、好ましくは蓋をして、いわゆる即席カップ麺と同様に復元調理して、喫食する。なお、本発明の包装即席麺用に所定形状に成型したカップ状容器を用いる場合には、該容器に注湯量が最適となる位置に喫水線を入れておくのが良い。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の一実施例を記載する。本実施例は図1に図示した本発明の包装即席麺の製造方法と、調理方法を示すものである。
小麦粉850g、澱粉150gの原料粉に、食塩20gかんすい2gを溶解させた練水約350mlを添加し、ミキサーでよく混練し、麺生地を作成した。この麺生地を連続圧延機で厚さ0.7mmに圧延し、切り刃20番で切出して麺線とした。これを蒸気蒸し機で蒸し、水1lに食塩80gとグルタミン酸ソーダ10gを溶かした着味液に短時間浸漬し、1食分95gにカットした。この麺線を逆円錐台形で、リテーナサイズ内径が、上径85mm、下径75mm深さ43mmのフライリテーナに投入し、パーム油で150℃3分間フライ処理し、油揚げ麺塊を作成した。麺塊のサイズは上径81mm、下径74mm高さ43mm、重量60gであった。
【0043】
一方、ボトムフィルム(深絞り型の包装体本体)として、ナイロン100μの上にエチレン−ビニルアルコール樹脂20μ、イージーピール層130μが積層されたシート(三菱樹脂株式会社製:共押しフィルム「E951」)を、真空成型法で深絞り型に成型した。該深絞り型の包装体本体の開口径は90mmで、開口部からほぼ垂直に内壁面を形成し、底部には若干R(R=10)を形成した深さ60mmの断面略U字形とした。開口部周縁には隣り合う深絞り型の包装体開口部との間に、幅広のフランジ部を有する。
【0044】
この深絞り型包装体の内部に、即席麺用の具材、FDエビ2g、FD豚ミンチ2g、ADネギ0.5g、FDスクランブルエッグ3gを充填し、その後、流動層造粒した顆粒状の醤油ベースの即席麺用スープ3gを充填した。さらに、その上から、前記作成した油揚げ麺塊を、麺塊上面(平面の広い側)を下にして充填した。
【0045】
このように、麺塊等を充填した包装体本体上に、そのフランジ部に重ね合わせるようにトップフィルム(開口蓋になる部分)を配置し、減圧吸引しながらフランジ部とトップフィルムを熱融着させ(熱融着させた部分が図1の斜線で示した部分)、次いで1食分ずつにフランジ部を切断、切り離した。トップフィルの材質は、外側から、フランジ部と接着する部分に向けて順に、延伸ポリプロピレン20μ、アルミナ蒸着PET12μ、ポリエチレン50μである。
【0046】
このようにして、製造された本発明の包装即席麺が、図1に示したものである。
これを、壁面が二重構造のポリプロピレン製の逆円錐台形カップ容器(内径が、開口径92mm、底面径約66mm、深さ約105mmの逆円錐台形)を用いて、次のように調理する。
【0047】
すなわち、図2に示すように、包装即席麺のイージーピール性の蓋シートを引き剥がし、麺塊を露出させた。麺塊は麺塊底部が露出した状態であり、カップ容器に移した際に、下となる部分が露出している。この麺塊を、麺塊の入った包装体のフランジ上に、包装体開口部を全て覆うように前記カップ容器を被せた。これを上下逆転させて、図3のようにカップ容器の上に麺塊の入った包装体が位置するようにした。次いで包装体の底部、すなわち、具材やスープの載置された麺塊上面側から包装体底部を押し込み(矢印)、内容物をカップ容器内に投入した。
【0048】
この時、麺塊は略円錐台形の広い面が上になり、麺塊の上に具材とスープが載置された状態で、容器内面中間位置で麺塊が宙吊り状態となってセットされた。このカップ容器内に熱湯300mlを注加し、該カップ状容器に蓋をして3分間調理した。調理後の即席麺は、麺塊、スープ、具材の全てが適切に復元しており、市販のカップ麺と比較して、全く遜色のないの品質のものであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の包装即席麺は、マグカップ等再使用できる容器を用いて、従来の即席カップ麺同様に、熱湯を注加するだけで喫食できる即席麺を提供するもので、しかも、カップを使い捨てにする必要が無いため、環境保護の点からも利用される可能性がある。特に、本発明の包装即席麺に適合したカップ状容器とセットで用いる場合、湯戻り性、スープの液量等の点においても、一定の良好な品質を有するように調理することができ、該包装即席麺は、このような該カップ状容器の詰め替え用即席麺としても使用される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る包装即席麺の具体例の斜視図。
【図2】本発明に係る包装即席麺蓋部を剥がしていく場合の具体例の斜視図。
【図3】本発明に係る包装即席麺蓋部のシールを剥がした後に、カップ状容器内に麺塊と、固体状のスープ及び具材の投入する場合の斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装体から容器に移し、熱湯を注加して喫食する包装即席麺であって、
該包装即席麺は、麺塊と、具材及び又はスープが包装体に内包されており、
該包装体は、開口蓋を有する深絞り型の軟包材よりなる包装体であり、
該包装体内には、底部に具材及び又はスープが配置され、その上に麺塊が該具材やスープを覆うように配置され、
該麺塊と、具材及び又はスープが、該包装体内で脱気包装されることにより、一体的に封入されてなる包装即席麺。
【請求項2】
前記麺塊が、略円錐台形状であって、該麺塊の最も広い平面部が、前記包装体内で該包装体の底部側になるように配置されてなる、請求項1に記載の包装即席麺。
【請求項3】
前記包装体は、開口部が底部と略同型同大、又は底部より若干広く形成された、略円柱形状の深絞り型の包装体であり、該包装体底部内側面が、ほぼ全周に渡って前記麺塊と当接している、請求項1または2に記載する包装即席麺。
【請求項4】
前記包装体が、開口部周縁に幅広のフラットなフランジ部を有し、前記開口蓋が、該フランジ部の全周で、イージーピール性を有するように接着されている、請求項1から3のいずれかに記載する包装即席麺。
【請求項5】
前記容器が、開口部が底面より広いテーパー形状を有するカップ状容器であり、前記麺塊が、該テーパー形状を有するカップ状容器の容器内において、その中間位置で該麺塊側面と該カップ状容器内側面が当接して保持されるように成型されてなる形状である、請求項1から4のいずれかに記載する包装即席麺。
【請求項6】
深絞り型の包装体内に、即席麺塊が脱気包装された包装即席麺の製造方法であって、
軟包材よりなり、深絞り型の凹部の形成されたフランジ部を有する包装体を供給する工程、
該凹部に具材及び又はスープを収容する工程、
該収容した具材及び又はスープに被せるように即席麺塊を収容する工程、
即席麺塊を収容した後、減圧下で、前記フランジ部をフィルム状の軟包材でシールして密封する工程、
の各工程を含む包装即席麺の製造方法。
【請求項7】
再使用可能なカップ状容器と、該カップ状容器に中身を移し、熱湯を注加して喫食する包装即席麺とからなる、即席麺セットであって、
前記カップ状容器は、開口部が底面より広いテーパー形状を有する容器であり、
前記包装即席麺は、開口蓋を有する深絞り型の軟包材からなる包装体内に、該包装体内の底部に具材及び又はスープが、その上に麺塊が該具材及び又はスープを覆うように配置され、かつ、該麺塊は、該テーパー形状を有するカップ状容器の容器内において、その中間位置で該麺塊側面と該カップ状容器内側面が当接して保持される形状であり、これら麺塊と具材及び又はスープが、該包装体内に脱気包装されることにより一体的に封入された包装即席麺である、
カップ状容器と包装即席麺からなる即席麺セット。
【請求項8】
請求項5に記載する包装即席麺の調理方法であって、
前記包装即席麺の蓋を剥がし、蓋を剥がした前記包装体の開口部に前記カップ状容器のフランジ部をかぶせ、次いで、かぶせたまま上下回転して位置を逆転させることにより、該カップ状容器内に前記麺塊を、上面にスープ及び又は具材を載置した状態で該カップ状容器側面の中間位置に保持されるように充填し、これに熱湯を注加して調理する、包装即席麺の調理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−74432(P2008−74432A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254247(P2006−254247)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000226976)日清食品株式会社 (127)
【Fターム(参考)】