説明

包装容器用の切断刃およびそれを有する包装容器

【課題】ラップフィルム等のロール状被包装物を軽い力で切断することができ、耐久性のある非金属製のV字状切断刃と、該切断刃を備える包装用容器を提供する。
【解決手段】本発明による切断刃24は、中央エリア28と、この中央エリアの両側に配置される側部エリア30とに区画される。中央エリアは、1本〜7本の第1歯34からなり、その歯間ピッチP1,P2は側部エリアを構成する第2歯32のピッチP3よりも大きい。また、歯34の歯先は歯32の歯先と一直線上にある。この構成では、切断開始時、ラップフィルム14に接する歯の数が少ないため、切断に要する力は小さくてすむ。また、歯34が突出していないので、ラップフィルムの引っ掛かりによる歯の変形が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のコアにロール状に巻かれたラップフィルム等を包装するための包装容器に関し、特に包装容器に用いられる切断刃に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から種々の形式のラップフィルム用包装容器が知られている。その多くは厚紙製であり、ロール状に巻かれたラップフィルムを収納する容器本体と、この容器本体に一体的に設けられた蓋体とから構成される。そして、容器から引き出されたラップフィルムは、蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた鋸歯状の切断刃によって切断される。
【0003】
この種の切断刃の形状は、フィルムを容易に切断できるように、直線状に変えて切断刃の中間部が側部エリアよりも容器の底辺に近づいているV字状のものがある。これは、切断刃の最も突き出している部分からラップフィルムを切断し始めることで、切断を確実に且つ容易に行うための形状である。
【0004】
また、切断刃は、一般的には、金属製のものが用いられているが、近年の環境問題への配慮から、紙製や樹脂製の非金属製の切断刃が検討されている。
【0005】
ところが、非金属製の切断刃は、金属製の切断刃ほどの良好な切断性を発揮することは難しい。特に伸縮性に富んだポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等のフィルムの切断には大きな力を要するため、使用するにつれて容器や歯が傷み使用上不都合を生じる場合があった。かかる点を改善するため、例えば下記の特許文献1,2に開示されているように、切断刃の中央エリアの歯をその側部のエリアの歯よりも大きくし突出させて、切断性を向上させることが試みられている。
【特許文献1】登録実用新案第2547868号公報
【特許文献2】実開平7−11527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような特許文献1に示すように、中央エリアの歯を側部エリアの歯よりも大きくした切断刃にあっては、ラップフィルムを切断時に引っ張ると、歯先にせん断力が作用して変形するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ラップフィルム等のロール状被包装物を容易にかつ確実に切断することができ、耐久性にも優れた非金属製の切断刃を提供することにある。また、本発明の別の目的は、かかる非金属製の切断刃を備えた包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による切断刃は、ラップフィルム等のロール状被包装物を包装するための包装容器における蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた、樹脂からなるV字状の切断刃において、
(a)1本〜7本の第1歯からなる中央エリアと、前記中央エリアの両側に配置され、前記第1歯よりも小さな複数の第2歯からなる側部エリアとから構成されており、
(b)前記中央エリアにおける前記第1歯と、前記側部エリアの前記中央エリアに隣接する位置に置かれた前記第2歯との歯間ピッチが、前記側部エリアにおける前記第2歯の歯間ピッチよりも大きく、
(c)前記側部エリアのそれぞれにおける前記第2歯の歯先を結ぶ直線上に、当該側部エリアに隣接する前記中央エリアの部分における前記第1歯の歯先が配置されている、
ことを特徴としている。
【0009】
かかる構成においては、第2歯は第1歯よりも外側に突出していないため、ラップフィルム等に引っ掛かって変形する不具合がない。また、切断当初、ラップフィルムに接する歯の歯間ピッチが大きいため、突き刺しに要する力は小さくてすむ。
【0010】
また、第1歯同士の歯間、及び/又は、隣り合う第1歯と第2歯との間を略円弧形状とすることが好ましい。かかる形状とすれば、歯の形状はいわゆる銀杏の葉の形状となり、切断性を確保するため歯先角度を鋭角にしつつ、歯間ピッチを広げることが可能となる。これにより、一定の長さでの歯の本数を増やさずに済み、ラップフィルムの突き刺しに要する力が大きくなるのを抑制することができる。また、末端ほど幅が広くなるため、歯の耐久性向上の効果も得られる。
【0011】
また、非金属製の切断刃は、バルカナイズドファイバや樹脂含浸紙、樹脂製のものがあげられるが、その中でも強度に優れる樹脂製のものが好ましく、更には樹脂の中でも環境に優しい生分解性樹脂が好ましい。生分解性樹脂とは、使用中は従来の樹脂と同程度の機能を保ちながら、使用後廃棄されたとき、自然界に存在する微生物の働きによって低分子化合物に分解され、最終的には炭酸ガスと水に完全分解される高分子素材であり、このような機能を有することから、より環境に配慮した切断刃を提供することができる。
【0012】
本発明の切断刃は、これを包装容器に接着すれば、切断性に優れた包装容器を提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の切断刃及びそれを備える包装容器においては、ラップフィルムを切断するに際して大きな力が必要ない。この効果は、歯先を過度に鋭利にする必要性を低減するものであり、歯自体の耐久性の向上にも大いに寄与する。
【0014】
また、特定の歯が他の歯よりも突出しているものではないため、ラップフィルムの引っ掛かりによる歯の変形、損傷が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明が適用された包装容器10の形態を示す斜視図である。この容器10は、1枚の厚紙、好ましくはコートボール紙から作られている。図1に示すように、容器10は、円筒状の紙管12にロール状に巻き付けられたラップフィルム14を収納するための容器本体16と、この容器本体16に一体的に設けられた蓋体18とから構成されている。閉蓋時、この容器10の全体形状は略直方体形状をなす。なお、本実施形態では、ラップフィルムはポリ塩化ビニリデンからなるものとする。
【0016】
容器本体16の上部は、ラップフィルム14を引き出すための開口部として開放されている。また、蓋体18は、容器本体16の後面壁の頂縁20から連続して延びている。従って、蓋体18は容器本体16に対して回動可能であり、容器本体16の開口部を覆うことができるよう構成されている。
【0017】
蓋体18の前面壁22の先端縁はV字状をなし、その形状に合わせたV字状の切断刃24が前面壁22の裏面に接着されている。このようなV字状切断刃24を採用した包装容器10を用いてラップフィルム14を切断する場合、図1に示す如く、一方の手でラップフィルム14の先端部を把持し、他方の手で容器10を握ると共にその手の親指を蓋体前面壁22の中央部にあてがい、容器10を前側、すなわち矢印Aの方向にひねる。これにより、V字状切断刃24の中央エリアにある歯がラップフィルム14を貫き、そのままラップフィルム14を引くと、ラップフィルム14は切り開かれて切断される。
【0018】
次に、本実施形態に係る切断刃24について更に詳細に説明する。
【0019】
切断刃24は樹脂製であり、本実施形態では、特に環境に配慮すべく、生分解性樹脂が採用されている。生分解性樹脂としては、代表的なものとしてポリ乳酸、ポリグリコール酸等が挙げられる。その中でも、本発明においては、特許第3573605号に開示されたポリ乳酸系の樹脂組成物を2軸延伸したものが好適に用いられる。更に具体的には、ポリ乳酸系の樹脂組成物を2軸延伸したシートからプレス加工やレーザ切削法等により本発明に開示された形状の歯を成形することにより、切断刃24を得ることができる。なお、樹脂以外の成分としては、特許第3573605号に開示される無機充填剤以外に、熱安定剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、離型剤、顔料、染料等を含んでいてもかまわない。
【0020】
本実施形態に係る切断刃24は、V字の頂点を通る中心線(図2の符号CL)を中心として左右対称となっており、中央エリア28と、その両側に位置する側部エリア30との、三つのエリアに区分されている。
【0021】
側部エリア30における歯(第2歯)32は、従来一般の比較的小さな歯と実質的に同じであり、同じ寸法の二等辺三角形の歯が用いられている。
【0022】
中央エリア28における歯(第1歯)34は1〜7本であり、本実施形態では図2に明示するように3本あり、1本はV字の頂点部に位置し、残りの2本はその両側に対称的に配置されている。なお、以下の説明では、歯の参照符号32,34に、適宜、アルファベットの添え字を付す。
【0023】
中央エリアにおける歯34は、側部エリア30の歯32と実質的に同じ歯高Hである。具体的には、歯高Hは1.8〜2.2mmであることが好ましい。これによって、側部エリア30のそれぞれにおける歯32の歯先を結ぶ直線L上に、当該側部エリア30に隣接する中央エリア28の部分における歯34a,34bの歯先が位置することとなる。
【0024】
また、頂点部の歯34aと左右の歯34bとの間の歯間ピッチP1、及び、側部エリア30の最も内側の歯32aとそれに隣接する中央エリア28の歯34bとの間の歯間ピッチP2は、実質的に一定であり、側部エリア30の歯32同士の歯間ピッチP3よりも広い。具体的には、側部エリア30の歯間ピッチP3が2.5〜3.0mmである場合、中央エリア28の歯間ピッチP1,P2は7〜10mmである。
【0025】
更に、中央エリア28における頂点部の歯34aと左右の歯34bとの間の谷部、及び、側部エリア30の最も内側の歯32aとそれに隣接する中央エリア28の歯34bとの間の谷部は、略円弧形状とされている。前述したように、歯32と歯34の歯高Hが略一定であるので、中央エリア28の歯間ピッチP1,P2が7〜10mmである場合、円弧形状の谷部の曲率半径Rは4〜7.5mmとなる。
【0026】
次に、上述したような切断刃24を有する包装容器10を用いてラップフィルム14を切断する場合について説明する。
【0027】
まず、図1に示すように、一方の手で包装容器10を握り、他方の手でラップフィルム14の先端部を把持し、所望量だけ引き出す。そして、容器10を握っている手の親指を蓋体前面壁22の中央部にあてがい、包装容器10を前側、すなわち矢印Aの方向にひねる。
【0028】
この際、最初に切断刃24の頂点部にある歯34aがラップフィルム14に接触し、これを突き刺す。また、ほぼ同時に、第2番目の歯34b、更には第3番目の歯32aがラップフィルム14に接し、これを突き刺す。このように、最初にラップフィルム14に接するのは、歯間ピッチの大きな最大5本の歯34a,34b,32aのみであるため、切断当初に包装容器10をひねる力は小さなものですむ。すなわち、各歯34a,34b,32aがラップフィルム14を突き刺すために必要な最小限の力は一定であるため、その力の5倍のみの力が包装容器10をひねる最小の力となる。全ての歯が一定の狭いピッチとなっている一般的な切断刃の場合には、ラップフィルム14に接する歯の本数が多数となるため、包装容器10に加える力は必然的に大きなものとなっていたが、本実施形態ではそのような問題はない。
【0029】
また、本実施形態の包装容器10の場合、蓋体前面壁22の中央部が親指で押さえ付けられるため、切断刃24の中央エリア28の撓みが抑制され、歯間ピッチを大きくしても、蓋体前面壁22の面に直交する方向における歯34a,34b,32aの位置ずれが防止され、安定した切断性を呈することとなる。
【0030】
更に、歯34は他の歯32から突出していないため、切断時にラップフィルム14を引っ張っても、特定の歯にラップフィルムが引っ掛かって大きなせん断力を受けることもない。従って、歯32,34の先端が変形したり折れたりするような不具合も生じない。
【0031】
また、歯34a,34b間の谷部、歯34b,32a間の谷部が円弧形状となっているため、歯先角度を鋭角に保持しつつ、末端ほど幅が広く、耐久性を向上させることが可能となっている。谷部を平坦にすることも考えられるが、平坦にすると、突き刺し後におけるラップフィルム14の切り開きの際にかかる抵抗が大きくなるが、本実施形態のように円弧形状とした場合には、歯34a,34b,32aの縁とラップフィルム14とが点接触するため、その抵抗も小さなものですむ。更に、円弧形状とした場合、歯を二等辺三角形とした場合よりも、同一長さ範囲内では、歯の本数を少なくすることができ、これも切断に要する力の軽減に寄与している
【0032】
更に、包装容器10を矢印A方向にひねると、側部エリア30の歯32がラップフィルム14を突き刺し、ラップフィルム14の切り開きが側部エリア30の外側へと進んでいく。中央エリア28の歯34によりラップフィルム14に十分な大きさの初期切り開き部が形成されたならば、以降はラップフィルム14を切断するのに特に大きな力は不要であり、歯32からなる側部エリア30においても円滑にラップフィルム14は切断されていく。
【0033】
このように、ラップフィルム14を切断する際、格別に大きな力は必要なく、これは、各歯32,34の歯先角度を過度に小さくする必要性を減らすものであり、ひいては各歯32,34の耐久性を向上させることにもなる。
【0034】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0035】
例えば、上記実施形態ではラップフィルムはポリ塩化ビニリデンからなるものとしているが、他の樹脂からなるラップフィルムであっても本発明を適用することができる。かかる場合、歯高、歯間ピッチ等は上記寸法から適宜変更され得る。
【0036】
更に、包装容器に収容されるロール状被包装体は樹脂のラップフィルムのみならず、アルミフォイルや紙であってもよい。
【0037】
また、切断刃は樹脂以外の非金属、例えばバルカナイズドファイバや樹脂含浸紙等のものでも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による包装容器の好適な一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態である樹脂製の切断刃の中央部の拡大図である。
【符号の説明】
【0039】
10…包装容器、12…紙管、14…ラップフィルム(ロール状被包装物)、16…容器本体、18…蓋体、22…蓋体の前面壁、24…切断刃、28…中央エリア、30…側部エリア、32…歯(第2歯)、34…歯(第1歯)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状被包装物を包装するための包装容器における蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた、非金属製のV字状の切断刃において、
1本〜7本の第1歯からなる中央エリアと、前記中央エリアの両側に配置され、前記第1歯よりも小さな複数の第2歯からなる側部エリアとから構成されており、
前記中央エリアにおける前記第1歯と、前記側部エリアの前記中央エリアに隣接する位置に置かれた前記第2歯との歯間ピッチが、前記側部エリアにおける前記第2歯の歯間ピッチよりも大きく、
前記側部エリアのそれぞれにおける前記第2歯の歯先を結ぶ直線上に、当該側部エリアに隣接する前記中央エリアの部分における前記第1歯の歯先が配置されていることを特徴とする包装容器用の切断刃。
【請求項2】
前記第1歯同士の歯間、及び/又は、隣り合う前記第1歯と前記第2歯との間が略円弧形状となっていることを特徴とする請求項1に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項3】
前記切断刃が樹脂からなる請求項1又は2に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項4】
前記樹脂が生分解性樹脂である請求項3に記載の包装容器用の切断刃
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された切断刃を有する包装容器


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−320609(P2007−320609A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151877(P2006−151877)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】