説明

包装容器用の切断刃及びそれを有する包装容器

【課題】十分優れた切断性を有し、且つ巻戻りの発生を十分に抑制できる切断刃を提供すること。
【解決手段】包装容器用の切断刃24は、中央エリア28とその両側に側部エリア30とに区分される。中央エリア28は、歯高の高い複数の第1歯38と、それより歯高の低い複数の第2歯とを有し、第1歯の一つがV字の頂点部に配置され、他の第1歯38が頂点部の第1歯38を中心に所定の間隔で配置され、第2歯が第1歯間に配置されている。第1歯の歯先を結ぶ直線L1、第2歯の歯先を結ぶ直線L2、並びに第1歯及び第2歯の歯元を結ぶ第3直線が互いに平行で、L2はL1とL3との間に位置する。側部エリア30は、複数本の側部歯31を有し、側部歯31の歯先はL2上又はL2とL3との間に位置している。切断刃24の少なくとも一方の主面は、0.8μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のコアにロール状に巻かれたラップフィルムを収容するための包装容器、及び当該包装容器に用いられる切断刃に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から種々の形式のラップフィルム用包装容器が知られている。その多くは厚紙製であり、ロール状に巻かれたラップフィルムを収納する容器本体と、この容器本体に一体的に設けられた蓋体とから構成される。そして、容器から引き出されたラップフィルムは、蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた鋸歯状の切断刃によって切断される。
【0003】
この種の切断刃としては、フィルムを容易に切断できるように、直線状の形状のものに代えて、切断刃の中間部が側部エリアよりも容器の底辺に近づいているV字状の形状のものが用いられている。これは、切断刃の最も突き出している部分からラップフィルムを切断し始めることで、切断を確実に且つ容易に行うための形状である。
【0004】
ところで、切断刃は、一般的には、金属製のものが用いられている(例えば、特許文献1)。このような、金属製の切断刃には、切断性に加えて、ラップフィルムに密着しない性質を有することが求められている。この理由は、ラップフィルム等のロール状包装物を収容する包装容器において、切断後のラップフィルムの先端部が蓋体の開放時に包装容器内に入り込む、いわゆる「巻戻り」現象を防止するためである。この「巻戻り」現象が発生すると、ラップフィルム先端部が包装容器内に収容されているラップフィルムに張り付くため、次回使用時においてラップフィルム先端部を取り出すことが困難になる。そこで、この「巻戻り」を防止するために、特許文献1では、金属性の切断刃の表面の粗さを調整することが提案されている。しかしながら、近年の環境問題や安全性への配慮から、従来の金属製の切断刃に代えて、紙製や樹脂製の非金属製の切断刃が検討されている。
【0005】
ところが、非金属製の切断刃は、金属製の切断刃ほどの良好な切断性を発揮することは難しく、特に伸縮性に富んだポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等のフィルムの切断には大きな力を要するため、使用するにつれて容器や歯が傷み使用上不都合を生じる場合があった。かかる点を改善するため、例えば下記の特許文献2〜5に開示されているように、切断刃の中央エリアの歯をその側部のエリアの歯よりも大きいものとしたり、逆に切断刃の中央エリアの歯をその側部のエリアよりも小さいものとしたり、歯の先端を鋭くしたりして切断性を向上させることが試みられている。
【特許文献1】特許第2621988号公報
【特許文献2】特開2006−21292号公報
【特許文献3】登録実用新案第2547868号公報
【特許文献4】実開平7−11527号公報
【特許文献5】特開2006−188285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上述した特許文献2の切断刃は、紙鋸刃の各歯の先端を鋭くしているが、各歯の大きさが全て同一であることから切断性に問題がある。また、上述した特許文献3及び4の切断刃には、側部エリアに比べて中央エリアにかなり大きな大歯が設けられているため、耐久性や切断時のフィーリング(官能性)等に問題がある。また、上述した特許文献5の切断刃には、中央部に配置された小刃山と両端部に配置された大刃山との間に切り替え刃山が設けられているが、切断時のフィーリング(官能性)が未だ十分ではない。かかる状況の下、より切断性能が向上した非金属製の切断刃が求められている。
【0007】
本発明者らは、まず、ラップフィルム等のロール状包装物を容易に且つ確実に切断することができる非金属製の切断刃を得るために、種々の切断刃の形状を検討した。そして、切断刃の中央部に配置される中央エリアにフィルムの突き刺しに適した大歯を備え、中央エリアの両側に配置される側部エリアに切り開きに適した比較的小さい歯を備える樹脂製の切断刃を開発した。
【0008】
しかしながら、上述の形状を有する樹脂製の切断刃を用いてラップフィルムを切断する際に、「巻戻り」現象が発生する場合があることを見出した。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、切断刃の形状及び表面粗さを最適化することによって、十分優れた切断性を有し、且つ巻戻りの発生を十分に抑制できる切断刃、及びかかる切断刃を備える包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の切断刃は、ロール状包装物を収容する包装容器に取り付けられて前記ロール状包装物を切断する、複数の歯を備える非金属製のV字状の切断刃において、
(a)V字の頂点部を含む中央エリアと前記中央エリアの両側に配置される側部エリアとに区分され、
(b)前記中央エリアは、それぞれ同一歯高である複数本の第1歯と、前記第1歯よりも歯高が低くそれぞれ同一歯高である複数本の第2歯とを有し、
(c)前記第1歯の一つが前記頂点部に配置されると共に、前記第1歯の他のものが前記頂点部の第1歯を中心に所定の間隔で配置されており、
(d)前記第2歯が前記第1歯間に配置されており、
(e)前記第1歯の歯先を結ぶ第1直線、前記第2歯の歯先を結ぶ第2直線、及び前記第1歯及び前記第2歯の歯元を結ぶ第3直線が互いに平行で、前記第2直線は前記第1直線と前記第3直線との間に位置しており、
(f)前記側部エリアは、複数本の側部歯を有し、
(g)前記側部歯の歯先は、前記第2直線上又は前記第2直線と前記第3直線の間に位置しており、
(h)少なくとも一方の主面は0.8μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有する
ことを特徴としている。
【0011】
切断刃に上述の構成の中央エリアを設けることで、媒体であるラップフィルム等の切断が、中央エリアによる切断当初の「突き刺し」段階と、その後の側部エリアによる「切り開き」段階の2段階に分割される。更には、「突き刺し」段階は、歯高の最も高い第1歯による突き刺し工程と、第1歯より歯高の低い第2歯による突き刺し工程の2工程に分割される。切断当初、ラップフィルムに接する歯は第1歯のみであるため、突き刺しに要する力は小さくてすむ。また、第1歯のみでは第1歯間の谷部の抵抗によりラップフィルムの突き刺しに力を要することとなるが、第1歯で突き刺した後には第2歯がラップフィルムを貫くことで、円滑にラップフィルムを突き刺すことが可能となる。また、切断刃の主面の算術平均粗さ(Ra)を0.8μm以上にすることにより、ラップフィルムが切断刃に密着してラップフィルムの巻戻りが発生し、ラップフィルム同士が相互に接着するのを防止することができる。なお、切断刃の算術平均粗さはJIS B 0601に準拠して測定することができる。また、各歯の歯高は、隣り合う歯によって形成された溝の底部、すなわち歯元の複数を結ぶ第3直線と、当該歯の歯先との最短距離として測定することができる。
【0012】
本発明の切断刃は、主成分としてポリエステル樹脂を含有することが好ましい。切断刃が主成分としてポリエステル樹脂を含有することにより、より十分に優れた切断性、切断時のフィーリング及び耐久性を兼ね備えた切断刃を得ることができる。また、巻戻りの発生を一層十分に抑制することができる。
【0013】
本発明の切断刃に含まれるポリエステル樹脂は、ポリ乳酸系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂の少なくとも一方であることが好ましい。これによって、より十分に優れた切断性、切断時のフィーリング及び耐久性を兼ね備えた切断刃を得ることができる。なお、生分解性を有するポリ乳酸系樹脂は、環境保護の点からも好ましく用いられる。
【0014】
本発明の切断刃は、引張弾性率1.5〜10GPa、ロックウェル硬さ8〜100(HRM)であることが好ましい。このような切断刃であれば、良好な切断性、良好な切れ味及び優れた耐久性の全てを一層高水準で達成することができる。
【0015】
また、側部エリアは、交互に配置された歯高の異なる大小2種の側部歯を有することが好ましい。
【0016】
このように側部エリアに歯高の異なる大小2種の側部歯を交互に配置することによって、「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行時及び「切り開き」段階において、同時にラップフィルムと接する側部歯の本数を少なくすることができる。したがって、歯高が単一の複数の側部歯を備える場合よりも「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行がより円滑化されるとともに、より小さい力でラップフィルムを切り開き切断することが可能となる。
【0017】
また、本発明の切断刃は、側部エリアの外側における切断刃の端部に、前記側部エリアの前記側部歯よりも歯高の高い歯を有することが好ましい。
【0018】
このように側部エリアの外側における切断刃の端部に側部エリアの側部歯よりも歯高の高い歯を配置することによって、ラップフィルムの切断をラップフィルムの端から開始する場合にも、ラップフィルムの切断が「突き刺し」段階と「切り開き」段階との2段階に分割される。切断当初、ラップフィルムに接する歯は側部エリアの外側の端部に配置される歯高の高い歯のみであるため、突き刺しに要する力は小さくてすむ。したがって、ラップフィルムの切断をラップフィルムの端部から開始する場合及びラップフィルムの中央部から開始する場合の双方において、ラップフィルムを容易に切断することができる。
【0019】
なお、側部歯の歯高は、第2歯の歯高と同じ高さか又は第2歯の歯高よりも低いことが好ましい。第2歯による切断後は、特に力をかけずにラップフィルムを側部歯により切り開き切断することが可能であり、比較的小さな歯で良好な使用感が得られるからである。
【0020】
また、第1歯、第2歯、側部歯及び端部に配置される歯の少なくとも一つにおける斜辺を、内側に凹んだ円弧状とすること、すなわち歯の形状をいわゆる銀杏の葉の形状とすることが好適である。かかる形状にすれば、切断性を確保するため歯先角度を鋭角にしつつ、歯間ピッチを広げることが可能となる。これにより、一定の長さでの歯の本数を増やさずに済み、ラップフィルムの突き刺しに要する力が大きくなるのを抑制することができる。また、末端ほど幅が広くなるため、歯の耐久性向上の効果も得られる。
【0021】
本発明の切断刃は、その主面に垂直な方向に複数の層が積層された積層構造を有することが好ましい。このように積層構造とすることによって、非金属製の切断刃の強度と耐久性とを向上させることができる。また、ラップフィルムの切断時に切断刃が変形し難くなり、切断性を一層向上させることができる。
【0022】
本発明ではまた、上記の切断刃を備える包装容器を提供する。この包装容器は、上述の特徴を有する切断刃を具備するため、切断性に優れた包装容器を提供できる。なお、包装容器における蓋体の前面壁の裏面に取り付けられる切断刃は、蓋体の前面壁に対向する主面とは逆側の主面(閉蓋時にラップフィルムと接する面)が0.8μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有することが好ましい。このような包装容器は、ラップフィルムの巻戻りを十分に抑制することができる。
【0023】
本発明の包装容器は、蓋体の前面壁によって覆われる、容器本体の壁面の少なくとも一部に粘着部を有することが好ましい。これによって、切断されたラップフィルムの先端部が容器本体の壁面の粘着部に貼り付いて、巻戻りの発生を一層十分に抑制することができる。
【0024】
本発明の切断刃は、変性ポリエチレン樹脂を介して包装容器の蓋体の前面壁の裏面に取り付けられることが好ましい。これによって、切断刃を十分な強度で包装容器に確実に固定することができる。変性ポリエチレン樹脂としては、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレン樹脂を主成分とするアイオノマー等が挙げられる。これらのうち、特にエチレンメタクリル酸共重合体が好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、切断刃の形状及び表面粗さを最適化することによって、十分優れた切断性、切断時の良好なフィーリング及び十分な耐久性を兼ね備えた切断刃、及びかかる切断刃を備える包装容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[第一の実施形態]
図1は、本発明が適用された包装容器10の形態を示す斜視図である。この包装容器10は、1枚の厚紙、好ましくはコートボール紙から作られている。図1に示すように、包装容器10は、円筒状の紙管12にロール状に巻き付けられたラップフィルム14を収納するための容器本体16と、この容器本体16に一体的に設けられた蓋体18とから構成されている。閉蓋時、この包装容器10の全体形状は略直方体形状をなす。なお、本実施形態では、ラップフィルムはポリ塩化ビニリデンからなるものとする。
【0027】
容器本体16の上部は、ラップフィルム14を引き出すための開口部として開放されている。また、蓋体18は、容器本体16の後面壁の頂縁20から連続して延びている。従って、蓋体18は容器本体16に対して回動可能であり、容器本体16の開口部と容器本体の前面壁27の一部とを覆うことができるように構成されている。そして、容器本体の前面壁27の一部(蓋体の前面壁22に覆われる領域の一部)に粘着部を有する。粘着部は、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、合成ゴムをベースとしたホットメルト樹脂、あるいは、アクリル系、酢酸ビニル系又は合成ゴム系のエマルジョンを容器本体の前面壁27に塗布し、必要に応じて乾燥させることによって形成することができる。
【0028】
蓋体18の前面壁22の先端縁はV字状をなし、その形状に合わせて切断刃24もV字状のものが用いられている。このようなV字状の切断刃24を採用した包装容器10を用いてラップフィルム14を切断する場合、図1に示す如く、一方の手でラップフィルム14の先端部を把持し、他方の手で包装容器10を握ると共にその手の親指を蓋体前面壁22の中央部にあてがい、包装容器10を前側、すなわち矢印Aの方向にひねる。これにより、V字状切断刃24の中央エリアにある歯がラップフィルム14を貫き、そのままラップフィルム14を引くと、ラップフィルム14は切り開かれて切断される。
【0029】
切断後のラップフィルム14の先端部は、容器本体の前面壁27の一部に備えられる粘着部に張り付く。これによって、再びラップフィルム14を引き出す際に、ラップフィルム14の先端部を容易に取り出すことができる。
【0030】
次に、本実施形態に係る切断刃24について更に詳細に説明する。
【0031】
図2は、本発明の第一の実施形態にかかる切断刃の中央部の拡大図である。切断刃24の主成分はポリエステル樹脂である。このような切断刃24は、ポリエステル樹脂を二軸延伸したシートにプレス加工やレーザ切削法を施して本発明の形状の歯に成形して得ることができる。
【0032】
本実施形態に係る切断刃24は、V字の頂点を通る中心線(図2の符号CL)を中心として左右対称となっており、中央エリア28と、その両側に位置する側部エリア30との、三つのエリアに区分されている。
【0033】
側部エリア30における歯(側部歯)31は一定の寸法であり、従来一般に用いられている歯と同程度の比較的小さなものが用いられている。以下、この寸法の歯を「小歯」と称する。
【0034】
本実施形態に係る中央エリア28は、図2に明示するように、15本の歯35,36,38から構成される。中央エリア28における歯は、側部エリア30の側部歯31と同じ寸法の小歯35、小歯35よりも歯高の高い歯(第2歯:以下「中歯」と称する)36、及び、中歯36よりも更に歯高の高い歯(第1歯:以下「大歯」と称する)38の3種類となっている。なお、以下の説明では、中歯及び大歯の参照符号36,38に、適宜、アルファベットの添え字を付す。
【0035】
大歯38の1本(38a)は、切断刃24のV字の頂点部(中央エリア28の長手方向中心)に位置し、他の大歯38b,38cは中央の大歯38aを中心にして左右に2本ずつ、一定の間隔で配置されている。中央の第1番目の大歯38aの歯先と、左右各側にある第2番目と第3番目の大歯38b,38cの歯先とは、直線で結ぶことができ、左右各側のこの直線(第1直線)L1は、中央エリア28の左右各側にある中歯36の歯先よりも前側(図1の蓋体前面壁22の先端縁から離れる側)に位置している。
【0036】
また、中央エリア28における中歯36は、左右各側に4本ずつ、計8本、配置されている。中央側の4本の中歯36a,36bは大歯38a,38b,38c間に一定の間隔で配置されており、同間隔で他の4本の中歯36c,36dが第3番目の大歯38cの外側に配置されている。左右各側の中歯36a、36b、36c及び36dの歯先は直線(第2直線)L2で結ぶことができ、左右各側のこの直線L2は、前記直線L1及び歯元を結ぶ第3直線(L3)と実質的に平行であり、且つ、前記直線L1よりも後側(蓋体前面壁22の先端縁に近い側)に位置している。すなわち、直線L2は、直線L1と直線L3との間に位置している。
【0037】
また、左右各側の側部エリア30における側部歯31の歯先を結ぶ直線(第4直線)L4は、同側の直線L1、L2及びL3と実質的に平行であり、且つ、当該直線L1及びL2よりも後側(蓋体前面壁22の先端縁に近い側)に位置している。すなわち、左右各側の直線L4は、直線L2とL3との間に位置している。
【0038】
更に、中央エリア28の小歯35は、左右各側において、第3番目と第4番目の中歯36c,36dの間に配置されており、その歯先は、側部エリア30の側部歯31の歯先を結ぶ直線L4の延長線上に位置している。
【0039】
本実施形態にかかる切断刃24において、小歯35、中歯36、大歯38、側部歯31のそれぞれの歯先角度α(図2)は、ラップフィルム14の突き刺しに適した角度とされている。ラップフィルム14がポリ塩化ビニリデンからなる本実施形態では、歯先角度αは30°〜90°の範囲が好ましく、40°〜70°がより好ましい。90°よりも大きいと、ラップフィルム14を突き刺すのに多大な力が必要となり、30°よりも小さいと、歯31〜38自体の耐久性を損なうからである。
【0040】
また、小歯35、中歯36、大歯38、側部歯31のそれぞれの形状は、単純な二等辺三角形状であってもよいが、本実施形態では、斜辺が内側に凹んだ円弧状になっている末広がり形状ないしは銀杏の葉の形状とすることが好適である。歯先角度αを、前述の鋭角に保持しつつ、耐久性を向上させるためである。また、かかる形状とした場合、二等辺三角形よりも、同一長さ範囲内では、歯の本数を少なくすることができ、後述するが、切断に要する力の軽減に寄与している。
【0041】
次に、本実施形態にかかる切断刃24を有する包装容器10を用いてラップフィルム14を切断する場合について説明する。
【0042】
まず、図1に示すように、一方の手で包装容器10を握り、他方の手でラップフィルム14の先端部を把持し、所望量だけ引き出す。そして、包装容器10を握っている手の親指を蓋体前面壁22の中央部にあてがい、包装容器10を前側、すなわち矢印Aの方向にひねる。
【0043】
この際、最初に切断刃24の頂点部にある第1番目の大歯38aがラップフィルム14に接触し、これを突き刺す。また、ほぼ同時に、第2番目の大歯38b、更には第3番目の大歯38cがラップフィルム14に接し、これを突き刺す。このように、最初にラップフィルム14に接するのは、歯間ピッチの大きな最大5本の大歯38のみであるため、切断当初に包装容器10をひねる力は小さなものですむ。すなわち、各大歯38がラップフィルム14を突き刺すために必要な最小限の力は一定であるため、その力の5倍のみの力が包装容器10をひねる最小の力となる。従来の如く、歯先角度を小さくし、歯間ピッチを小さくしたものでは、ラップフィルム14に接する歯の本数が多数となるため、包装容器10に加える力は必然的に大きなものとなり、使用のフィーリングも損なうものであったが、本実施形態ではそのような問題はない。
【0044】
続いて、ラップフィルム14には中歯36が接し、これらの中歯36によりラップフィルム14が貫かれる。ここで、仮に中歯36がないと仮定すると、大歯38間のピッチが広いため、歯38間の谷部が抵抗となってラップフィルム14の切り開きに大きな力を要することになる。しかしながら、本実施形態では、大歯38によるラップフィルム14の突き刺しに引き続いて中歯36が大歯38間のラップフィルム14を貫くことになるため、ラップフィルム14の突き刺しが円滑化される。なお、ラップフィルム14に同時に接する中歯36の数は最大8本であるが、実際に同時にラップフィルム14に接する中歯36の数は8本よりも少なく、また大歯38によってもラップフィルム14の突き刺しが行われて周辺部が脆弱化しているため、中歯36による突き刺しに要する力は大歯38による突き刺し時に比して更に小さなものとなる。このようにして、大歯38による第1段階の切断から中歯による第2段階の切断も、使用者に抵抗感を与えることなく、円滑に行われることとなる。
【0045】
更に、包装容器10を矢印A方向にひねると、中央エリア28の小歯35が、第3番目と第4番目の中歯36c,36d間のラップフィルム14を突き刺し、ラップフィルム14の切り開きが側部エリア30へと進んでいく。ラップフィルム14に十分な大きさの初期突き刺し部が形成されたならば、以降はラップフィルム14を切断するのに特に大きな力は不要であり、側部歯31からなる側部エリア30においても円滑にラップフィルム14は切り開かれ切断されていく。
【0046】
本実施形態にかかる切断刃24を用いれば、ラップフィルム14を切断する際、格別に大きな力は必要なく、これは、各歯31,35,36,38の歯先角度αを過度に小さくする必要性を減らすものであり、ひいては各歯31,35,36,38の耐久性を向上させることにもなる。
【0047】
なお、大歯38及び中歯36の歯高(突出量)を過度に大きくした場合、切断刃24の固定部からの距離、すなわち蓋体前面壁22の先端縁からの距離が長くなり、耐久性が損なわれる恐れがある。また、歯高が大きければ、包装容器10を使用する者の手を傷つける恐れもある。このため、切断性、耐久性及び安全性の面から、例えば、中央エリア28の大歯38の歯高H1は、好ましくは1.0〜4.0mm、より好ましくは1.2〜3.5mm、さらに好ましくは1.5〜3.0mm、中歯36の歯高H2は、好ましくは1.0〜3.0mm、より好ましくは1.2〜2.5mm、小歯35の歯高H3は、好ましくは0.5〜2.5mm、より好ましくは0.6〜2.0mmとするのがよい。
【0048】
また、中央エリア28の歯間ピッチは、大歯38間が好ましくは3.0〜9.0mm、より好ましくは4.0〜7.0mm、さらに好ましくは4.5〜6.0mm、中歯36間も好ましくは3.0〜9.0mm、より好ましくは4.0〜7.0mm、さらに好ましくは4.5〜6.0mmとするのがよい。歯間ピッチが9.0mmを超えた場合には、ラップフィルム14の第1段階の突き刺しにおいて大歯38間の谷部(歯元)にフィルム14が引っかかって切断に支障が生じ、歯間ピッチが3.0mmよりも狭い場合には、中央エリア28に設けられる歯の本数が増加し、その結果突き刺しに必要な力が大きくなり本発明の目的を達成できないからである。
【0049】
側部エリア30の側部歯31の歯高H3は、好ましくは0.3〜2.5mm、より好ましくは0.5〜2.0mm程度とするのがよい。また、側部歯31の歯間ピッチは、好ましくは1.0〜3.2mm、より好ましくは1.2〜2.5mmとするのがよい。
【0050】
[第二の実施形態]
図3は、本発明の第二の実施形態にかかる切断刃の中央部の拡大図である。第二の実施形態にかかる切断刃24は、中央エリア28とその両側に位置する側部エリア30とから構成され、中央エリア28に、第一の実施形態にかかる切断刃24の中央エリア28と同様の歯の構成を有する。ただし、第二の実施形態にかかる切断刃24は、側部エリア30に歯高の異なる大小2種の側部歯を備えている点で、第一の実施形態にかかる切断刃24と異なっている。
【0051】
図4は、本発明の第二の実施形態にかかる切断刃の片側の側部エリアの一部拡大図である。図4の切断刃24は、側部エリア30に小歯35と同じ寸法である複数の側部歯(以下、「側部第1歯」と称する)31と、側部第1歯31に挟まれるように側部第1歯31より小さい複数の側部歯(以下、「側部第2歯」と称する)32とを備えている。側部エリア30には、中央エリア28に属する中刃36dに隣接するように側部第1歯31が配置され、側部第2歯32及び側部第1歯31が切断刃24の長手方向に一定の間隔で交互に配置されている。なお、図4には、便宜上5本の側部歯しか示していないが、実際は側部第1歯31及び側部第2歯32が交互に切断刃24の端まで設けられている。また、図4には、切断刃24の一方の側部エリアしか示していないが、当該切断刃24は他方の側部エリアにも対称に同様の歯の構成を備えている。
【0052】
側部エリア30に配置された複数の側部第1歯31の歯先と中央エリア28の小歯35の歯先とは、直線で結ぶことができ、この直線(第4直線)L4は、大歯の歯先を結ぶ直線L1、中歯の歯先を結ぶ直線L2、及び歯元を結ぶ直線(第3直線)L3と実質的に平行であり、且つ、前記直線L1及びL2よりも後側(蓋体前面壁22の先端縁に近い側)に位置している。すなわち、直線L4は、直線L2と直線L3との間に位置している。
【0053】
また、複数の側部第2歯32の歯先は直線で結ぶことができ、この直線(第5直線)L5は、前記直線L1、L2、L3及びL4と実質的に平行であり、且つ、前記直線L1、L2、及びL4よりも後側(蓋体前面壁22の先端縁に近い側)に位置している。すなわち、直線L5は、直線L4と直線L3との間に位置している。
【0054】
本実施形態にかかる切断刃24において、小歯35、中歯36、大歯38、側部第1歯31,側部第2歯32のそれぞれの歯先角度α(図3)は、ラップフィルム14の突き刺しに適した角度とされている。ラップフィルム14がポリ塩化ビニリデンからなる本実施形態では、歯先角度αは30°〜90°の範囲が好ましく、40°〜70°がより好ましい。90°よりも大きいと、ラップフィルム14を突き刺すのに多大な力が必要となり、30°よりも小さいと、歯31〜38自体の耐久性を損なうからである。
【0055】
また、小歯35、中歯36、大歯38、側部第1歯31,側部第2歯32のそれぞれの形状は、単純な二等辺三角形状であってもよいが、本実施形態では、斜辺が内側に凹んだ円弧状になっている末広がり形状ないしは銀杏の葉の形状とすることが好適である。歯先角度αを、前述の鋭角に保持しつつ、耐久性を向上させるためである。また、かかる形状とした場合、二等辺三角形よりも、同一長さ範囲内では、歯の本数を少なくすることができ、切断に要する力の軽減に寄与している。
【0056】
次に、本実施形態にかかる切断刃24を有する包装容器10を用いてラップフィルム14を切断する場合について説明する。
【0057】
上述の第一の実施形態と同様に、まず、図1に示すように、一方の手で包装容器10を握り、他方の手でラップフィルム14の先端部を把持し、所望量だけ引き出す。そして、包装容器10を握っている手の親指を蓋体前面壁22の中央部にあてがい、包装容器10を前側、すなわち矢印Aの方向にひねる。本実施形態にかかる切断刃24は、中央エリア28に、上述の第一の実施形態にかかる切断刃の中央エリアと同様の歯の構成を有する。したがって、第一の実施形態と同様に、ラップフィルム14に十分な大きさの初期突き刺し部が容易に形成される。
【0058】
本実施形態にかかる切断刃24は、側部エリアに図4に示すような歯の構成を有する。したがって、切断刃24の中央エリア28でラップフィルム14の「突き刺し」が行われた後、中央エリア28に近い方に配置されている数本の側部第1歯31がラップフィルム14に接し、「切り開き」が開始される。側部第1歯31による「切り開き」がある程度進行した後、ラップフィルム14は中央エリア28に近い方に配置されている数本の側部第2歯32に接し、ラップフィルム14は切り開かれ切断されていく。
【0059】
図4に示すような、側部エリアに歯高が互いに異なる大小二種の側部歯(側部第1歯31と側部第2歯32)を備える本実施形態にかかる切断刃24を用いれば、「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行時及び「切り開き」段階の進行時に、ラップフィルム14に同時に接する側部歯の本数が少なくなるため、突き刺し段階から切り開き段階の移行に要する力、及び切り開き段階の進行に要する力を一層小さくすることができる。
【0060】
本実施形態にかかる切断刃24を用いれば、ラップフィルム14を切断する際、格別に大きな力は必要なく、これは、各歯31,32,35,36,38の歯先角度αを過度に小さくする必要性を減らすものであり、ひいては各歯31,32,35,36,38の耐久性を向上させることにもなる。
【0061】
なお、大歯38及び中歯36の歯高(突出量)を過度に大きくした場合、切断刃24の固定部からの距離、すなわち蓋体前面壁22の先端縁からの距離が長くなり、耐久性が損なわれる恐れがある。また、歯高が大きければ、包装容器10を使用する者の手を傷つける恐れもある。このため、切断性、耐久性及び安全性の面から、例えば、中央エリア28の大歯38の歯高H1は、好ましくは1.0〜4.0mm、より好ましくは1.2〜3.5mm、さらに好ましくは1.5〜3.0mm、中歯36の歯高H2は、好ましくは1.0〜3.0mm、より好ましくは1.2〜2.5mm、小歯35の歯高H3は、好ましくは0.5〜2.5mm、より好ましくは0.6〜2.0mmとするのがよい。
【0062】
中央エリア28の歯間ピッチは、大歯38間が好ましくは3.0〜9.0mm、より好ましくは4.0〜7.0mm、さらに好ましくは4.5〜6.0mm、中歯36間も好ましくは3.0〜9.0mm、より好ましくは4.0〜7.0mm、さらに好ましくは4.5〜6.0mmとするのがよい。歯間ピッチが9.0mmを超えた場合には、ラップフィルム14の第1段階の突き刺しにおいて大歯38間の谷部(歯元)にフィルム14が引っかかって切断に支障が生じ、歯間ピッチが3.0mmよりも狭い場合には、中央エリア28に設けられる歯の本数が増加し、その結果突き刺しに必要な力が大きくなり本発明の目的を達成できないからである。
【0063】
側部エリア30の側部第1歯31の歯高H3は、好ましくは0.3〜2.5mm、より好ましくは0.5〜2.0mmとするのがよい。また、側部第2歯32の歯高H4は、好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.5〜1.2mm程度とするのがよい。また、側部第1歯31間及び側歯2歯32間の歯間ピッチは、好ましくは1.0〜3.5mm、より好ましくは1.2〜3.0mmとするのがよい。切断刃24が側部エリア30にこのような歯の構成を備えることによって、ラップフィルムの切り開きをより一層円滑に行うことができる。
【0064】
[第三の実施形態]
図5は、本発明の第三の実施形態にかかる切断刃の片側の側部エリアの一部拡大図である。図5の切断刃24は、図示しないが、中央エリア28とその両側に位置する側部エリア30とから構成され、中央エリア28に、第一及び第二の実施形態にかかる切断刃24の中央エリア28と同様の歯の構成を有する。ただし、図5の切断刃24は、側部エリア30に小歯35より小さい複数の側部歯(以下、「側部第3歯」と称する)33と、側部第3歯33に挟まれるように小歯35より大きく中歯36より小さい複数の側部歯(以下、「側部第4歯」と称する)34とを備えている点で、第一及び第二の実施形態にかかる切断刃24と異なっている。側部エリア30には、中央エリア28に属する中歯36dに隣接するように側部第3歯33が配置され、側部第3歯33及び側部第4歯34が切断刃24の長手方向に交互に配置されている。なお、図5には、便宜上4本の側部歯しか示していないが、実際は側部第3歯33及び側部第4歯34が交互に切断刃24の端まで設けられている。また、図5には、切断刃24の一方の側部エリアしか示していないが、当該切断刃24は他方の側部エリアにも対称に同様の歯の構成を備えている。
【0065】
側部エリア30に配置された複数の側部第4歯34の歯先は、直線で結ぶことができ、この直線(第6直線)L6は、大歯の歯先を結ぶ直線L1、中歯の歯先を結ぶL2及び歯元を結ぶ直線(第3直線)L3と実質的に平行であり、且つ、前記直線L1及びL2よりも後側(蓋体前面壁22の先端縁に近い側)に位置している。すなわち、直線L6は、直線L2と第3直線L3との間に位置している。
【0066】
また、複数の側部第3歯33の歯先は、直線で結ぶことができ、この直線(第7直線)L7は、前記直線L1、L2、L3及びL6と実質的に平行であり、且つ、前記直線L1、L2及びL6よりも後側(蓋体前面壁22の先端縁に近い側)に位置している。すなわち、直線L7は、直線L6と直線L3との間に位置している。なお、中央エリアの小歯35の歯先は前記直線L6とL7との間に位置している。
【0067】
本実施形態にかかる切断刃24において、小歯35、中歯36、大歯38、側部第3歯33、側部第4歯34のそれぞれの歯先角度α(図5)は、ラップフィルム14の突き刺しに適した角度とされている。ラップフィルム14がポリ塩化ビニリデンからなる本実施形態では、歯先角度αは30°〜90°の範囲が好ましく、40°〜70°がより好ましい。90°よりも大きいと、ラップフィルム14を突き刺すのに多大な力が必要となり、30°よりも小さいと、歯33〜38自体の耐久性を損なうからである。
【0068】
また、小歯35、中歯36、大歯38、側部第3歯33及び側部第4歯34のそれぞれの形状は、単純な二等辺三角形状であってもよいが、本実施形態では、斜辺が内側に凹んだ円弧状になっている末広がり形状ないしは銀杏の葉の形状とすることが好適である。歯先角度αを、前述の鋭角に保持しつつ、耐久性を向上させるためである。また、かかる形状とした場合、二等辺三角形よりも、同一長さ範囲内では、歯の本数を少なくすることができ、切断に要する力の軽減に寄与している。
【0069】
次に、本実施形態にかかる切断刃24を有する包装容器10を用いてラップフィルム14を切断する場合について説明する。
【0070】
上述の第一の実施形態と同様に、まず、図1に示すように、一方の手で包装容器10を握り、他方の手でラップフィルム14の先端部を把持し、所望量だけ引き出す。そして、包装容器10を握っている手の親指を蓋体前面壁22の中央部にあてがい、包装容器10を前側、すなわち矢印Aの方向にひねる。本実施形態にかかる切断刃24は、中央エリア28に、上述の第一の実施形態にかかる切断刃の中央エリアと同様の歯の構成を有する。したがって、第一の実施形態と同様に、ラップフィルム14に十分な大きさの初期突き刺し部が容易に形成される。
【0071】
本実施形態にかかる切断刃24は、側部エリア30に、図5のような歯の構成を有する。したがって、切断刃24の中央エリア28でラップフィルム14の「突き刺し」に続いて、中央エリア28に近い方に配置されている数本の側部第4歯34がラップフィルム14に接し、「切り開き」に移行する。側部第4歯34による「切り開き」がある程度進行した後、ラップフィルム14は中央エリア28に近い方に配置されている数本の側部第3歯33に接し、ラップフィルム14は切り開かれ切断されていく。
【0072】
図5に示すように、小歯35よりも歯高の高い側部第4歯34を備える切断刃24を用いれば、「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行を一層円滑にすることができる。また、側部エリア30に歯高が互いに異なる大小二種の側部歯(側部第3歯33と側部第4歯34)を備えているため、「切り開き」段階において、ラップフィルム14に同時に接する側部歯の本数が少なくなり、「切り開き」の進行に要する力を一層小さくすることができる。
【0073】
上述の本実施形態にかかる切断刃24を用いれば、ラップフィルム14を切断する際、格別に大きな力は必要なく、これは、各歯33,34,35,36,38の歯先角度αを過度に小さくする必要性を減らすものであり、ひいては各歯33,34,35,36,38の耐久性を向上させることにもなる。
【0074】
なお、大歯38及び中歯36の歯高(突出量)を過度に大きくした場合、切断刃24の固定部からの距離、すなわち蓋体前面壁22の先端縁からの距離が長くなり、耐久性が損なわれる恐れがある。また、歯高が大きければ、包装容器10を使用する者の手を傷つける恐れもある。このため、切断性、耐久性及び安全性の面から、例えば、中央エリア28の大歯38の歯高H1は、好ましくは1.0〜4.0mm、より好ましくは1.2〜3.5mm、さらに好ましくは1.5〜3.0mm、中歯36の歯高H2は、好ましくは1.0〜3.0mm、より好ましくは1.2〜2.5mm、小歯35の歯高H3は、好ましくは0.5〜2.5mm、より好ましくは0.6〜2.0mmとするのがよい。
【0075】
中央エリア28の歯間ピッチは、大歯38間が好ましくは3.0〜9.0mm、より好ましくは4.0〜7.0mm、さらに好ましくは4.5〜6.0mm、中歯36間も好ましくは3.0〜9.0mm、より好ましくは4.0〜7.0mm、さらに好ましくは4.5〜6.0mmとするのがよい。歯間ピッチが9.0mmを超えた場合には、ラップフィルム14の第1段階の突き刺しにおいて大歯38間の谷部(歯元)にフィルム14が引っかかって切断に支障が生じ、歯間ピッチが3.0mmよりも狭い場合には、中央エリア28に設けられる歯の本数が増加し、その結果突き刺しに必要な力が大きくなり本発明の目的を達成できないからである。
【0076】
側部エリア30の側部第3歯33の歯高H6は、好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.5〜1.2mm程度とするのがよい。また、側部第4歯34の歯高H5は、好ましくは0.5〜2.0mm、より好ましくは1.7〜1.8mm程度とするのがよい。また、側部第3歯33間及び側歯4歯34間の歯間ピッチは、好ましくは1.0〜3.0mm、より好ましくは1.5〜2.5mmとするのがよい。切断刃24が側部エリア30にこのような歯の構成を備えることによって、ラップフィルムの切り開きをより一層円滑に行うことができる。
【0077】
[第一、第二、第三の実施形態の変形例]
図6は、第一、第二又は第三の実施形態の変形例にかかる切断刃における片側の端部の一部拡大図である。図6の切断刃24は、側部エリア30の外側、すなわち切断刃24の両端部29に、側部エリア30の側部歯31及び側部歯32よりも大きい歯39と、側部歯31と同じ大きさの歯31aとを備えている。
【0078】
切断刃24の端部29には、歯39と歯31aとが切断刃24の長手方向に一定の間隔で交互に配置されている。歯39の歯先は、直線で結ぶことができ、この直線L8は側部エリア30の側部歯の歯先を結ぶ直線(例えば、直線L4及びL5)、並びに歯元を結ぶ直線L3と実質的に平行であり、且つ、これらの直線よりも前側(蓋体前面壁22の先端縁から離れる側)に位置している。すなわち、直線L4及びL5は、直線L8と直線L3との間に位置している。なお、歯31aは、側部歯31と同じ大きさであるため、歯31aの歯先は側部歯31の歯先を結ぶ直線L4上に位置している。なお、図6には、切断刃24の一方の側部エリア30及び端部29しか示していないが、当該切断刃24は他方の側部エリア30及び端部29にも対称に同様の歯の構成を備えている。本実施形態にかかる切断刃24は、各側部エリア30に歯39と歯31aとをそれぞれ2本ずつ備えている。
【0079】
かかる構成を備える切断刃24であれば、ラップフィルム14を端から切断する場合であっても、切断刃24の端部29に配置される歯39によって、ラップフィルム14の「突き刺し」が行われる。また、端部29の歯39の間には、歯39よりも歯高の低い歯31aを備えるため、ラップフィルム14の「突き刺し」において、ラップフィルム14に同時に接する歯の本数を減らすことができる。したがって、ラップフィルム14の「突き刺し」を容易にすることができる。このラップフィルム14の「突き刺し」の後、端部29の歯31a及び側部エリア30の端部に近い方に配置されている数本の側部歯がラップフィルム14に接し、「切り開き」が進行する。これによって、ラップフィルム14は円滑に切り開かれ切断されていく。
【0080】
なお、切断刃24の端部29に配置される歯39の歯高H7は、切断性、耐久性及び安全性の面から、例えば、1.0〜4.0mm、より好ましくは1.0〜2.5mm程度とするのがよい。また、歯39間の歯間ピッチは、例えば、1.0〜9.0mm、好ましくは2.0〜7.0mm、より好ましくは2.5〜6.5mmとするのがよい。切断刃24が側部エリア30の外側の端部にこのような歯の構成を備えることによって、ラップフィルムの切断をラップフィルムの端部から開始した場合にも、ラップフィルムの切断を円滑に行うことができる。なお、切断刃24の両方の端部29に備えられる歯39の本数は、合計2〜50本程度とすることが好ましい。
【0081】
また、切断刃24の端部29に配置される歯31aの歯高H3は、好ましくは0.3〜2.5mm、より好ましくは0.5〜2.0mmとするのがよい。また、歯31a間の歯間ピッチは、1.0〜9.0mm、好ましくは2.0〜7.0mm、より好ましくは2.5〜6.5mmとするのがよい。切断刃24が端部29にこのような歯の構成を備えることによって、ラップフィルムの切り開きをより一層円滑に行うことができる。
【0082】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0083】
例えば、図7は、本発明の別の実施形態にかかる切断刃の中央部の拡大図である。図7の切断刃の側部エリア30には、長手方向に歯高の異なる大小2種の側部歯31,37が交互に設けられている。そして、中央エリア28の中歯36の歯先を結ぶ直線L2が、側部エリア30の側部歯37の歯先を通っている。また、中央エリア28の小歯35の歯先と側部エリア30の側部歯31の歯先とを結ぶ直線L4は、中央エリア28の大歯38の歯先を結ぶ直線L1、中央エリア28の中歯36を結ぶ直線L2、及び歯元を結ぶ直線L3と実質的に平行であり、且つ、前記直線L1及びL2よりも後側(蓋体前面壁22の先端縁に近い側)に位置している。すなわち、直線L4は、直線L2と直線L3との間に位置している。この図7に示すような切断刃24を用いた場合も、上述の第一、第二及び第三の実施形態と同様に、ラップフィルムは、その中央部に小さい力で初期突き刺し部が形成された後、円滑に切り開かれて容易に切断される。
【0084】
上記の各実施形態における切断刃24の主面24aの算術平均粗さ(Ra)は0.8μm以上である。この主面24aは、ラップフィルム14の切断時にラップフィルム14と接触する。当該主面24aは、上記の算術平均粗さ(Ra)を有しているため、ラップフィルム14との密着力を十分低減することができる。なお、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601に準拠して測定することができる。
【0085】
JIS B0601に準拠して測定される切断刃24の主面24aの算術平均粗さ(Ra)は、0.8〜100μmであることが好ましく、0.9〜50μmであることがより好ましく、1.0〜30μmであることがさらに好ましい。該算術平均粗さ(Ra)が1.0μm以上の場合、ラップフィルムの切断刃への密着力をより十分に低減することができる。これによって、切断後における包装容器内のラップフィルムの先端部を一層確実に容器本体の前面壁27(図1)の粘着部に張り付かせることが可能となり、蓋体開放操作時にラップフィルム同士が相互に接着する「巻戻り」現象を確実に防止することができる。一方、該算術平均粗さ(Ra)を30μm以下とすることにより、切断刃の強度を十分に維持することができる。
【0086】
JIS B0601に準拠して測定される切断刃24の主面24aの最大高さ(Ry)は、10〜100μmであることが好ましく、15〜50μmであることがより好ましく、20〜45μmであることがさらに好ましい。切断刃24の主面24aの該最大高さ(Ry)が10μm未満の場合、ラップフィルムの先端部が切断刃の主面に密着する傾向がある。一方、該最大高さ(Ry)が100μmを超える場合、切断刃の強度及び耐久性が損なわれる傾向がある。
【0087】
なお、このような所定の算術平均粗さ(Ra)の主面24aを有する切断刃24は、切断刃の素材の主面を粗面化処理することによって得ることができる。かかる粗面化処理は、切断刃の素材の表面を、当該素材加工時にエンボス加工することによって行なうことができる。また、切断刃形成用の組成物に無機系充填剤を添加したり、無機系粉体等を切断刃の素材表面に塗布したりすることによっても所定の算術平均粗さ(Ra)の主面24aを有する切断刃24を得ることができる。また、切断刃24は、別途粗面化加工したシートやフィルムを切断刃の素材表面に取り付けることによっても得ることができる。なお、無機充填剤及び無機系粉体としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、タルク等の無機粉体を用いることができる。
【0088】
上述の各実施形態にかかる切断刃の材質としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂)、PES(ポリエーテルサルフォン樹脂)等を挙げることができる。
【0089】
このように種々の樹脂成分を用いることが可能であるが、本発明の切断刃は、主成分としてポリエステル樹脂を含有することが好ましい。このような材質とすることによって、ラップフィルムの「突き刺し」及び「切り開き」の進行を一層円滑にすることができ、また、切断刃の耐久性を優れたものとすることができる。なお、ポリエステル樹脂の中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂及びポリ乳酸樹脂が特に好ましい。
【0090】
上述の各実施形態にかかる切断刃は、上述の樹脂成分にそれ以外の成分を添加した組成物を用いて形成することができる。樹脂成分以外の成分としては、特許第3573605号に開示される無機充填剤の他、熱安定剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、離型剤、顔料、染料等を含んでいてもかまわない。無機充填剤としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、タルク等の無機粉体を用いることができる。
【0091】
ただし、本発明の効果を十分に得る観点から、切断刃全体に対して、ポリエステル樹脂の含有量が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。また、本発明の効果を一層十分に得る観点から、本発明の切断刃はポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリ乳酸樹脂からなる切断刃であることが特に好ましい。なお、本発明の切断刃に用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂としては、結晶性のものが好ましい。
【0092】
本発明の切断刃は、これらの材料を、厚さ0.05〜0.5mm、好ましくは厚さ0.1〜0.3mm、より好ましくは厚さ0.15〜0.28mmのシート状とした後に、金型による打ち抜き加工により形成することができる。なお、切断刃の厚さが大きくなると十分良好な切断性が得られない傾向があり、切断刃の厚みが小さくなると良好な切れ味が損なわれる傾向がある。切断刃の厚さを0.15〜0.28mmとすることによって、良好な切断性と良好な切れ味とを高水準で両立できる切断刃を得ることができる。シートとしては二軸延伸されたものが好ましく用いられる。
【0093】
また、上記各実施形態の切断刃は、上述の材質からなる複数の樹脂シートが積層された積層型シートから形成されることが好ましい。このような積層型シートを用いた積層刃を採用することによって、切断刃の耐久性を向上させることができる。なお、積層型シートの積層数、積層方法は特に限定されない。
【0094】
この積層型シートを用いる場合も、ラップフィルム切断時にラップフィルムと接触する切断刃の主面(包装容器閉蓋時にラップフィルムと接する側の面)は0.8μm以上の算術平均粗さを有する。
【0095】
なお、上記各実施形態に用いられる切断刃としては、良好な切断性と切断時の良好なフィーリングとを高水準で両立する観点から、引張弾性率が1.5〜10.0GPaであることが好ましく、引張り弾性率が3.0〜4.5GPaであることがより好ましい。また、良好な切断性と耐久性とを高水準で両立する観点から、ロックウェル硬さが8〜100(HRM)であることが好ましく、50〜80(HRM)であることがより好ましい。なお、ここでいう引張弾性率は、JIS K 7127に準拠して測定される数値をいい、ロックウェル硬さはJIS K 7202に準拠して測定される数値をいう。
【0096】
なお、上記の各実施形態ではラップフィルムはポリ塩化ビニリデンからなるものとしているが、他の樹脂からなるラップフィルムであっても本発明を適用することができる。かかる場合、歯高、歯間ピッチ、歯先角度等は上記寸法から適宜変更され得る。
【0097】
また、中央エリアを構成する歯の本数は、上記の各実施形態より多くても或いは少なくてもよいが、ラップフィルムが2段階以上で歯に接するよう構成することが必須条件となる。
【0098】
更に、ロール状包装物はラップフィルムのみならず、アルミフォイルや紙であってもよい。
【0099】
図8は、本発明の一実施形態に係る切断刃が、シーラント材を介して、蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた包装容器の積層部の模式断面図である。
【0100】
包装容器の積層部50では、蓋体の前面壁22の裏面22a上に、シーラント材40、接着層42、切断刃24がこの順で積層されている。切断刃24は、接着層42側から順に樹脂成分を主成分とする層24bと層24cとが積層されている。層24bと層24cとの間には接着層が設けられていてもよい。
【0101】
ポリウレタン系の接着剤(接着層42)によって、変性ポリエチレン樹脂であるシーラント材40と接着された切断刃24は、該シーラント材40と包装容器蓋体の前面壁の裏面22aとを超音波接着法で接着することにより、包装容器の前面壁の裏面22aに取り付けられる。このようにシーラント材40を介して包装容器蓋体の前面壁の裏面22aに取り付けられた切断刃24は、十分な接着力によって包装容器蓋体に固定されるため、包装容器蓋体から容易に剥離しない。なお、切断刃24の主面24aは、0.8μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有する。このため、ラップフィルムの切断刃24の主面24aへの密着力を十分低減することができる。
【0102】
包装容器蓋体の前面壁の裏面に切断刃を取り付ける方法としては、公知のコールドグルー法、又は感圧接着剤法等であってもよい。
【実施例】
【0103】
以下、実施例、比較例及び参考例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0104】
まず、切断刃に用いられる材質の機械物性の評価を以下の通り行った。まず、表1に示す各材料からなる厚み250〜255μmのシートを準備した。
【0105】
【表1】

【0106】
<引張弾性率評価>
TENSILON RTM−100(TOYO BALDWIN製、商品名)を用い、JIS K 7127に準拠して表1の各シートの破断強伸度測定を行い、引張弾性率を求めた。その結果を表2に示す。表2の結果から、ポリエチレンテレフタレート樹脂製であるシート1,2,3は引張弾性率が高く、変形し難いことから切断刃の材料として好適であることが分かった。
【0107】
【表2】

【0108】
<ロックウェル硬さの評価>
デジタル式ロックウェル硬さ試験機DRH−M型(松沢精機製、商品名)を用い、JIS K 7202に準拠して表1の各シートのロックウェル硬さ測定を行った。
【0109】
ロックウェル硬さの測定結果を表3に示す。表3の結果から、ポリエチレンテレフタレート樹脂製であるシート1,2,3はロックウェル硬さが高いことから切断刃の材料として好適であることが分かった。また、未延伸のポリエチレンテレフタレート樹脂であるシート4は、他の未延伸のシート6,7,8よりも高いロックウェル硬さを示した。ポリ乳酸樹脂であるシート5,6,7は、ポリプロピレン樹脂製のシート8よりも高いロックウェル硬さを示した。
【0110】
【表3】

【0111】
次に、上述の切断刃の形状に最適な材質を検討するため、以下の通り、材質の異なる同一歯形状の切断刃を複数準備して、切れ味の評価を行った。
【0112】
(参考例1)
市販のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製のシート1(厚み:250μm)を用いてV字状の切断刃を作製した。この切断刃は、図7に示すような中央エリア、及びその両外側に隣接する側部エリアを備える。具体的には、中央エリアに大歯38を5本、中歯36を8本、小歯35を2本有し、側部エリアに大きさの異なる大小2種の側部歯31及び側部歯37をそれぞれ37−38本有する。なお、大歯38の歯高は1.7mm、中歯36の歯高は1.2mm、小歯35の歯高は0.8mm、側部歯31の歯高は0.8mm、側部歯37の歯高は1.2mmである。
【0113】
この切断刃とシーラント材(エチレンメタクリル酸共重合体)とをポリウレタン系の接着剤で接着し、当該シーラント材と株式会社クレハにより製造、販売されている登録商標「NEWクレラップ」に使用されている包装容器(長さ約31cm、幅4.5cm、高さ4.5cmのコートボール紙製の容器)とを超音波接着法で接着した。これによって、切断刃がエチレンメタクリル酸共重合体からなるシーラント材を介して蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた包装容器を得た。
【0114】
(参考例2)
参考例1のポリエチレンテレフタレート樹脂製のシート1に代えて、市販のポリエチレンテレフタレート樹脂製のシート3(厚み:250μm)を用いたこと以外は参考例1と同様にして、切断刃、及び切断刃が蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた包装容器を得た。
【0115】
(参考例3)
参考例1のポリエチレンテレフタレート樹脂製のシート1に代えて、市販のポリ乳酸樹脂製のシート5(厚み:250μm)を用いたこと以外は参考例1と同様にして、切断刃、及び切断刃が蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた包装容器を得た。
【0116】
(参考例4)
参考例1のポリエチレンテレフタレート樹脂製のシート1に代えて、市販のポリプロピレン樹脂製のシート8(厚み:255μm)を用いたこと以外は参考例1と同様にして、切断刃、及び切断刃が蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた包装容器を得た。
【0117】
(参考例5)
参考例1のポリエチレンテレフタレート樹脂製のシート1に代えて、一般的な市販のポリプロピレン樹脂製の未延伸シート(厚み:275μm)を用いたこと以外は参考例1と同様にして、切断刃、及び切断刃が蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた包装容器を得た。
【0118】
(参考例6)
参考例1のポリエチレンテレフタレート樹脂製のシート1に代えて、一般的な市販のポリ乳酸樹脂製の未延伸シート(厚み:200μm)を用いたこと以外は参考例1と同様にして、切断刃、及び切断刃が蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた包装容器を得た。
【0119】
(参考例7)
参考例1のポリエチレンテレフタレート樹脂製のシート1に代えて、市販のポリ乳酸樹脂製のシート6(厚み:250μm)を用いたこと以外は参考例1と同様にして、切断刃、及び切断刃が蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた包装容器を得た。
【0120】
(参考例8)
参考例1のポリエチレンテレフタレート樹脂製のシート1に代えて、フィラーとしてタルクを10質量%含有する一般的な市販のポリスチレン樹脂製の未延伸シート(厚み:200μm)を用いたこと以外は参考例1と同様にして、切断刃、及び切断刃が蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた包装容器を得た。
【0121】
(参考例9)
参考例1のポリエチレンテレフタレート樹脂製のシート1に代えて、フィラーとしてタルクを10質量%含有する一般的な市販のポリスチレン樹脂製の未延伸シート(厚み:250μm)を用いたこと以外は参考例1と同様にして、切断刃、及び切断刃が蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた包装容器を得た。
【0122】
(参考例10)
参考例1のポリエチレンテレフタレート樹脂製のシート1に代えて、フィラーとしてタルクを20質量%含有する一般的な市販のポリスチレン樹脂製の未延伸シート(厚み:200μm)を用いたこと以外は参考例1と同様にして、切断刃、及び切断刃が蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた包装容器を得た。
【0123】
(参考例11)
参考例1のポリエチレンテレフタレート樹脂製のシート1に代えて、フィラーとしてタルクを20質量%含有する一般的な市販のポリスチレン樹脂製の未延伸シート(厚み:250μm)を用いたこと以外は参考例1と同様にして、切断刃、及び切断刃が蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた包装容器を得た。
【0124】
<官能性試験>
参考例1〜11の包装容器を用いて、官能性試験を行った。モニター10人が、上記包装容器から引き出されたラップフィルムの切断を行い、切断時の切れ味(フィーリング)を評価した。評価基準は、参考例3を基準(3点)として以下の通り行った。
【0125】
(官能性試験評価基準)
5点・・・参考例3に比べて切れ味が明らかに優れている。
4点・・・参考例3に比べて切れ味が若干優れている。
3点・・・参考例3と同等の切れ味である。
2点・・・参考例3に比べて切れ味が若干劣っている。
1点・・・参考例3に比べて切れ味が明らかに劣っている。
【0126】
各モニターの採点の平均値を官能性試験の評価結果とした。官能性試験の評価結果を表4に示す。
【0127】
【表4】

【0128】
官能性試験の結果、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリ乳酸樹脂製の切断刃が、他の樹脂製の切断刃よりも良好な切れ味を有することが分かった。また、同等の材質で比較した場合(参考例6と参考例7)、切断刃の厚みが薄くなると切れ味が低下する傾向があった。
【0129】
次に、ラップフィルムと接触する主面の算術平均粗さ(Ra)が異なる切断刃を準備して、切断刃とラップフィルムとの密着力の評価を行った。
【0130】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート樹脂を主成分とするシート材料(東レ株式会社製、商品名:ルミラーX44、厚さ:25μm)を準備した。当該シート材料の表面(主面)は、表5に示す算術平均粗さ(Ra)及び最大粗さ(Ry)を有する。このシート材料と市販のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製のシート(東レ株式会社製、商品名:ルミラーS10、二軸延伸(結晶性)、厚み:250μm)とを、ポリウレタン系接着剤で貼り合わせて、シート状の刃材を得た。この刃材から、図2及び図4の歯の構成を有するV字状の切断刃を作製した。これによって、表5に示す算術平均粗さ(Ra)及び最大粗さ(Ry)の主面を有するV字状の切断刃を得た。なお、主面の算術平均粗さ(Ra)、最大粗さ(Ry)はJIS B0601に準拠して、超深度形状測定顕微鏡(株式会社キーエンス製、商品名:VK8500)を用いて計測した。
【0131】
作製した切断刃の主面(表5に示す算術平均粗さ(Ra)及び最大粗さ(Ry)を有する面)の中央部分にラップフィルム(幅50mm)の先端部を密着させたのち、先端部とは反対側のフィルム端部を切断刃の中央エリアにおける歯先の向きと同じ方向に200mm/minの速度で引っ張って、ラップフィルムを切断刃から剥離するために必要な力を測定した。この測定を3回行って、それらの平均値を密着力とした。結果は表5に示す通りであった。
【0132】
(実施例2)
市販のポリ乳酸樹脂(三井化学株式会社製、商品名:LACEA TOF−250、厚さ250μm)のシート材料を準備した。当該シート材料の表面は、表5に示す算術平均粗さ(Ra)及び最大粗さ(Ry)を有する。このシート材料から、図2及び図4の歯の構成を有するV字状の切断刃を作製した。これによって、表5に示す算術平均粗さ(Ra)及び最大粗さ(Ry)の主面を有するV字状の切断刃を得た。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果は表5に示す通りであった。
【0133】
(比較例1)
市販のポリエチレンテレフタレート樹脂製のシート1(厚み:250μm)を用いてV字状の切断刃を作製したこと以外は実施例2と同様にしてV字状の切断刃を作製し、評価を行った。結果は表5に示す通りであった。
【0134】
【表5】

【0135】
密着力測定の結果、実施例1の切断刃には、ラップフィルムが全く密着しなかった。また、実施例2の切断刃の密着力は、実用上全く問題のない範囲であった。したがって、これらの切断刃は、優れた切断性、耐久性を有すると共にラップフィルムの巻戻りを十分に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明が適用された包装容器10の形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態にかかる切断刃の中央部の拡大図である。
【図3】本発明の第二の実施形態にかかる切断刃の中央部の拡大図である。
【図4】本発明の第二の実施形態にかかる切断刃の片側の側部エリアの一部拡大図である。
【図5】本発明の第三の実施形態にかかる切断刃の片側の側部エリアの一部拡大図である。
【図6】第一、第二又は第三の実施形態の変形例にかかる切断刃における片側の端部の一部拡大図である。
【図7】本発明の別の実施形態にかかる切断刃の中央部の拡大図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る切断刃がシーラント材を介して蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた包装容器の積層部の模式断面図である。
【符号の説明】
【0137】
10…包装容器、12…紙管、14…ラップフィルム、16…容器本体、18…蓋体、20…容器本体の後面壁の頂縁、22…蓋体の前面壁、22a…裏面、24…切断刃、24a…主面、26…容器本体の前面壁の底辺、27…容器本体の前面壁、28…中央エリア、29…端部、30…側部エリア、31…側部第1歯(側部歯)、32…側部第2歯(側部歯)、33…側部第3歯(側部歯)、34…側部第4歯(側部歯)、35…小歯、36…中歯(第2歯)、37…側部歯、38…大歯(第1歯)、39,39a…歯、40…シーラント材、42…接着層、50…積層部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状包装物を収容する包装容器に取り付けられて前記ロール状包装物を切断する、複数の歯を備える非金属製のV字状の切断刃において、
V字の頂点部を含む中央エリアと前記中央エリアの両側に配置される側部エリアとに区分され、
前記中央エリアは、
それぞれ同一歯高である複数本の第1歯と、前記第1歯よりも歯高が低くそれぞれ同一歯高である複数本の第2歯とを有し、
前記第1歯の一つが前記頂点部に配置されると共に、前記第1歯の他のものが前記頂点部の第1歯を中心に所定の間隔で配置されており、
前記第2歯が前記第1歯間に配置されており、
前記第1歯の歯先を結ぶ第1直線、前記第2歯の歯先を結ぶ第2直線、及び前記第1歯及び前記第2歯の歯元を結ぶ第3直線が互いに平行で、前記第2直線は前記第1直線と前記第3直線との間に位置しており、
前記側部エリアは、
複数本の側部歯を有し、前記側部歯の歯先は、前記第2直線上又は前記第2直線と前記第3直線の間に位置しており、
少なくとも一方の主面は0.8μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有することを特徴とする包装容器用の切断刃。
【請求項2】
主成分としてポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1記載の包装容器用の切断刃。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂が、ポリ乳酸系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂の少なくとも一方であることを特徴とする請求項2記載の包装容器用の切断刃。
【請求項4】
引張弾性率が1.5〜10GPa、ロックウェル硬さが8〜100(HRM)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項5】
前記側部エリアは、交互に配置された歯高の異なる大小2種の側部歯を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項6】
前記側部エリアの外側における前記切断刃の端部に、前記側部エリアの前記側部歯よりも歯高の高い歯を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項7】
前記側部歯の歯高が、前記第2歯と同じ高さか又は前記第2歯よりも低いことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項8】
前記第1歯、前記第2歯、前記側部歯及び前記端部に配置される歯の少なくとも一つにおける斜辺が内側に凹んだ円弧状となっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項9】
前記主面に垂直な方向に複数の層が積層された積層構造を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の包装容器の切断刃。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載された切断刃を蓋体の前面壁の裏面に備え、
前記切断刃における前記蓋体の前面壁に対向する主面とは逆側の主面が0.8μm以上の算術平均粗さ(Ra)を有することを特徴とする包装容器。
【請求項11】
前記蓋体の前面壁によって覆われる、容器本体の壁面の少なくとも一部に粘着部を有することを特徴とする請求項10記載の包装容器。
【請求項12】
前記切断刃が変性ポリエチレン樹脂を介して前記蓋体の前面壁の裏面に取り付けられていることを特徴とする請求項10又は11記載の包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−107049(P2009−107049A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280853(P2007−280853)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】