説明

包装容器

【課題】収容される商品の形態に関係なく容易に取り出すとともに、上面板の意図しない開き出しを規制する。
【解決手段】正面板4の上端部に取出開口4aを形成するとともに、その近傍の左右端縁に左右の側面板を越えて外方に突出する係止凸部4xを形成する。また、背面板に上面板を連設するとともに、上面板に係止板8を連設してこれらの上面板および係止板8を接続板12を介して連結し、さらに、接続板12に正面板4の係止凸部4xに対応して係止凹部12aを形成する。これにより、係止板8の回動により、接続板12の係止凹部12aを係止凸部4xと係合させて係止板8を介して正面板4の取出開口4aおよび上面板を介して上面板側開口を閉鎖し、あるいは、接続板12の係止凹部12aによる係止凸部4xとの係合状態を解除させて正面板4の取出開口4aおよび上面板側開口を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菓子などの包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、下面板、左右の側面板、上面板、背面板および正面板を備え、内部にタブレット状や粒状のガムやチョコレートなどの菓子を収容してなる包装容器が知られている。このような包装容器においては、必要に応じて上面板を開放操作し、内部に収容された菓子を上面板側開口を通して取り出すようにしている。
【0003】
このような包装容器において、例えば、特許文献1に示されるように、上面板に連設された係止板の内面に係止片を貼着する一方、上面板の上端縁に被係止片を連設し、包装容器の上面板側開口を上面板によって閉鎖している状態において、係止板の内面に貼着された係止片の内端縁を被係止片の先端縁に係止させて係止板に連設された上面板の意図しない開き出しを規制することが提案されている。
【0004】
そして、包装容器の上面板側開口が上面板によって閉鎖されている状態において、係止板を引き上げることにより、係止板に貼着された係止片が被係止片を立ち上げつつ弾性変形させて乗り越えることから、係止板に連設された上面板を回動させて上面板側開口を開放させることができる。
【0005】
また、菓子を取り出した後、上面板を押し下げることにより、上面板に連設された係止板が該係止板の内面に貼着された係止片とともに被係止片を押し倒して被係止片を乗り越え、係止片の内端縁を被係止片の先端縁に係止させることから、係止板、すなわち、上面板の開き出しを規制して上面板側開口を閉鎖状態に維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−169333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述した包装容器においては、正面板の上端縁に連設された被係止片に対して係止板に貼着された係止片を係止させる必要がある。ここで、正面板の上端部に商品を摘み上げるための取出開口を形成すると、その開口の下端縁に被係止片を連設することになる。この場合、被係止片と係止される係止片が貼着される係止板としては、取出開口を覆う長さに加えて、係止板を貼着するスペースおよび被係止片の高さに相当する長さを必要とする大きなものとなる。この結果、包装容器の見栄えが低下するばかりでなく、大きな係止板および該係止板を上面板と連結するための大きな係止片が必要となり、コートボールに多くのロスを発生させるとともに、歩留りが低下し、コストアップを招くものとなる。
【0008】
これにより、被係止片を正面板に設ける包装容器においては、正面板の上端部に取出開口を形成することができず、収容できる商品としては、タブレット状や粒状の菓子など、包装容器を傾けることによって取り出せる商品に限定されるという欠点があった。すなわち、例えば、スティック状袋体に収容された顆粒状や粉状の薬品や包装紙に包装された板状の菓子などの商品の場合、密着した状態で包装容器に収容されるため、商品を上面板側開口から取り出しにくく、収容対象の商品からは除外されていた。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、収容される商品の形態に関係なく容易に取り出すことができるとともに、上面板の意図しない開き出しを規制することのできる菓子などの包装容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下面板、左右の側面板、上面板、背面板および正面板を備えた包装容器において、正面板の上端部に取出開口を形成するとともに、その近傍の左右端縁に左右の側面板を越えて外方に突出する係止凸部を形成し、また、背面板に上面板を連設するとともに、上面板に係止板を連設してこれらの上面板および係止板を接続板を介して連結し、さらに、接続板に正面板の係止凸部に対応して係止凹部を形成してなり、係止板の回動により、接続板の係止凹部を係止凸部と係合させて係止板および上面板を介してそれぞれ正面板の取出開口および上面板側開口を閉鎖し、あるいは、接続板の係止凹部による係止凸部との係合状態を解除させて正面板の取出開口および上面板側開口を開放することを特徴とするものである。
【0011】
本発明によれば、コートボールを展開図にしたがって打ち抜いた後、折り目に沿って折り込むこととともに、所定部分を貼着して包装容器が組み立てられ、菓子などの商品が収容されて出荷される。
【0012】
ここで、上面板側開口を上面板によって閉鎖している状態では、正面板の係止凸部に接続板の係止凹部が係合しており、意図しない接続板の回動が規制されている。すなわち、接続板を介して接続された係止板および上面板の回動が規制される。これにより、包装容器の上面板側開口および正面板の取出開口は、意図しない開き出しが規制された上面板および係止板によって閉鎖状態に維持されている。
【0013】
一方、上面板側開口を開放させる方向に係止板を回動させると、係止板に連結された接続板も追従して回動し、正面板の係止凸部に係合している接続板の係止凹部近傍が弾性変形して係止凸部を乗り越える。これにより、係止板とともに接続板を介して連結された上面板も追従して回動し、正面板の取出開口および上面板側開口を開放させることができる。この際、包装容器に収容された商品は、正面板の取出開口を通して一部露出されることから、正面板の取出開口を利用して容易に引き出すことができ、これまで収容が敬遠されていた形態の商品であっても収容することが可能となる。例えば、スティック状の商品や板状の商品が密に収容されたとしても、取出開口を利用して容易に取り出すことが可能となり、収容できる商品の形態を拡大することができる。
【0014】
また、上面板側開口を閉鎖する方向に上面板を回動させると、上面板に連結された係止板および接続板も追従して回動することから、接続板の係止凹部近傍が正面板の係止凸部に接触して押し広げる方向に弾性変形し、係止凸部を乗り越える。そして、係止凸部を乗り越えれば、元の状態に復元することで正面板の係止凸部に接続板の係止凹部が係合し、意図しない接続板の回動が規制される。これにより、包装容器の上面板側開口および正面板の取出開口は、意図しない開き出しが規制された上面板および係止板によって閉鎖状態に維持される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、収容される商品の形態に関係なく容易に取り出すことができるとともに、上面板の意図しない開き出しを規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の包装容器の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の包装容器の上面板を回動して示す斜視図である。
【図3】図1の包装容器の展開図である。
【図4】図1の包装容器の組立工程を示す説明図である。
【図5】図1の包装容器の組立工程を示す説明図である。
【図6】図1の包装容器の組立工程を示す説明図およびそのA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1および図2には、本発明の包装容器1の一実施形態が示されている。
【0019】
この包装容器1は、コートボールを図3に示す展開図にしたがって打ち抜いた後、折り目に沿って折り込むこととともに、所定部分を貼着して組み立てられる。そして、包装容器1に菓子などの商品を収容して適宜包装した後、出荷される。
【0020】
この包装容器1は、図3の展開図において、背面板2の左端縁に、右側面板3、正面板4、左側面板5が折り目a,b,cを介して順に連設されるとともに、背面板2の右端縁に糊代6が折り目dを介して連設される一方、背面板2の上端縁に上面板7および係止板8が折り目e,fを介して順に連設されるとともに、背面板2の下端縁に糊代9が折り目gを介して連設され、また、右側面板3および左側面板5の各下端縁にそれぞれフラップ10が折り目hを介して連設され、さらに、正面板4の下端縁に下面板11が折り目iを介して連設され、さらにまた、上面板7の左右各端縁にそれぞれ接続板12が折り目jを介して連設されて構成されている。
【0021】
そして、正面板4の上端部には、取出開口4aが形成されており、この取出開口4aを通して包装容器1に収容された菓子などの商品を取り出すことができる。また、正面板4には、取出開口4aの下方に位置して、上方に凸の円弧状切れ目mが形成されており、この円弧状切れ目mに係止板8の先端縁部を差し込むことができる。すなわち、正面板4の円弧状切れ目mは、係止板8の高さ(折り目fから係止板8の上端縁までの距離)に対応して、その先端縁部を差し込むことができるように形成されている。さらに、正面板4と右側面板3との折り目bおよび正面板4と左側面板5との折り目cは、取出開口4aの下端縁に略対応する位置において、一定長さにわたって不連続に形成されており、その不連続部分には、それぞれ左右の側面板3,5側にわずかに突出する円弧状切れ目nが形成されている。これにより、包装容器1が組み立てられた際に、正面板4の上端部近傍の左右各端縁には、円弧状切れ目nによる係止凸部4xが左右の側面板3,5から切り起こされるとともに、左右の側面板3,5の外面をわずかに越えて延出するようになっている。
【0022】
一方、各接続板12には、上面板7と係止板8との折り目fに連続する折り目kが形成されており、折り目kよりも上方の部分121が、接続片として係止板8に貼着されるようになっている。そして、接続板12の折り目kよりも上方の部分121は、係止板8に対向する端縁部が一部切除されている。また、接続板12には、折り目kの外方側端縁部において、一定深さおよび幅の係止凹部12aが形成されている。この係止凹部12aは、その深さが前述した円弧状切れ目nの弦に略相当する長さに設定され、また、折り目fと折り目jとの交点から係止凹部12aの底までの距離は、正面板4の円弧状切れ目nと折り目bとの上端側交点と、折り目eと折り目bとの仮想交点との間の距離に略一致するように設定されている。
【0023】
なお、係止凹部12aの幅は、前述した正面板4の円弧状切れ目nによる係止凸部4xを上下方向から挟み込むとともに、各接続板12における係止凹部12aよりも下方側の端縁部が係止凸部4xの裏面に略接触するように、コートボールの厚みに対応して設定されている。
【0024】
次に、このように構成された包装容器1の組立手順について説明する。
【0025】
まず、図3の展開図にしたがってコートボールを打ち抜くとともに、裏面が上面を向くように反転させた後、糊代6を背面板2に対して折り目dに沿って谷折りし(図4参照)、その表面に接着剤を塗布した後、正面板4を左側面板5とともに右側面板3に対して折り目bに沿って谷折りし、左側面板5の裏面を糊代6に貼着する(図5参照)。
【0026】
次いで、背面板2が下面に位置するように配置した後、背面板2に対して右側面板3を折り目aに沿って谷折りして起立させることにより、長手方向の両端が開口された包装容器1を形成する。この際、正面板4の上端部近傍の左右各端縁には、円弧状切れ目nによって右側面板3および左側面板5から切り起こされた係止凸部4xがそれらの外面をわずかに越えて延出している。
【0027】
この後、各接続板12を折り目kに沿ってそれぞれ谷折りするとともに、上面板7に対して各接続板12を折り目jに沿ってそれぞれ谷折りし、さらに、上面板7を背面板2に対して折り目eに沿って谷折りする。
【0028】
この際、図6に示すように、各接続板12の折り目kよりも上方の部分121が正面板4の取出開口4aを覆うように正面板4に重なって配置されるとともに、折り目kよりも下方の部分がそれぞれ左右の側面板3,5に重なって配置される。そして、各接続板12の折り目kは、それぞれ正面板2と右側面板3との辺および正面板2と左側面板5との辺に重なって配置されるとともに、折り目k上に形成された係止凹部12aは、係止凸部4xに嵌まり込んで係合する。すなわち、各接続板12における係止凹部12aよりも下方側の端縁部が係止凸部4xの下面に略接触状態で配置されて係合する(図6(b)参照)。
【0029】
この後、正面板4に載置された各接続板12の折り目kよりも上方の部分121の表面に接着剤を塗布し、係止板8を上面板7に対して折り目fに沿って谷折りして係止板8を貼着する。
【0030】
次いで、上面板7が下面に位置するように包装容器1を倒立させ、下面板11側開口を通して設定数量の菓子などの商品を供給した後、各フラップ10を左右の側面板3,5に対して折り目hに沿ってそれぞれ谷折りし、さらに、糊代9を背面板2に対して折り目gに沿って谷折りするとともに、その表面に接着剤を塗布し、下面板11を正面板4に対して折り目iに沿って谷折りし、下面板11を糊代9に貼着する。これにより、内部に菓子などの商品が収容された包装容器1が形成される(図1参照)。この後、詳細には図示しないが、包装容器1はフィルムで包装されて出荷される。
【0031】
ところで、商品を購入した消費者はフィルムを剥離した後、係止板8を引き上げることにより、係止板8と一体の上面板7を回動させ、上面板7側開口を開放させることができ、上面板7側開口を通して菓子などの商品を取り出すことができる。
【0032】
すなわち、包装容器1の上面板7側開口が上面板7によって閉鎖されている状態においては、接続板12における係止凹部12aよりも下方側の端縁部が正面板4の係止凸部4xの下方に位置して係合しており、接続板12の意図しない上方への回動が規制されている。これにより、接続板12を介して連結された係止板8および上面板7の意図しない開き出しが規制されている。この状態から、係止板8を引き上げれば、係止板8に接続された接続板12が追従して回動し、接続板12における係止凹部12aよりも下方側の端縁部が正面板4の係止凸部4xに係合して外方に開き出すように弾性変形して乗り越える。この際、接続板12における係止凹部12aよりも下方側の端縁部が元の状態に復元し、左右の側面板3,5に突き当たってカチッと音を発することから、係合状態が解除されたことを音でも確認することができる。
【0033】
これにより、係止板8および上面板7を回動させて、正面板4の取出開口4aを開放させるとともに、上面板7側開口を開放させることができる。したがって、包装容器1に収容された菓子などの商品は、正面板4の取出開口4aを通して一部が露出し、正面板4の取出開口4aおよび上面板7側開口を通して商品を容易に取り出すことができる。
【0034】
一方、商品を取り出して上面板7側開口を閉鎖する場合は、上面板7を押し下げることにより、上面板7に接続された係止板8および接続板12も追従して回動し、接続板12の折り目kよりも下方の部分が左右の側面板3,5に沿って回動する。そして、接続板12における係止凹部12aよりも下方側の端縁部が正面板4の係止凸部4xに上方から係合して外方に開き出すように弾性変形して乗り越える。この後、接続板12における切欠凹部12aよりも下方側の端縁部が元の状態に復元し、正面板4の係止凸部4xの下方に位置して係合し、接続板12の開き出し、すなわち、上面板7および係止板8の開き出しを規制する。これにより、係止板8および上面板7を回動させて、正面板4の取出開口4aを閉鎖させるとともに、上面板7側開口を閉鎖させ、その閉鎖状態を維持することができる。この際、接続板12における係止凹部12aよりも下方側の端縁部が元の状態に復元し、左右の側面板3,5に突き当たってカチッと音を発することから、係合されたことを音でも確認することができる。
【0035】
以上のように、上面板7側開口とともに正面板4の取出開口4aを利用して商品を取り出すことができることから、従来の包装容器では、商品が密着して取り出しにくさの観点から敬遠されていた多様な包装形態の商品を収容することが可能となる。例えば、タブレット状や粒状の菓子など以外に、顆粒状あるいは粉末状薬品や砂糖などをスティック状包装袋に収容した商品や、板状のガムや菓子などを包装紙で包装した商品であっても収容することができる。
【0036】
また、係止凸部4xに対する係止凹部12aの係合によって、これまでと同様に意図しない上面板7の開き出しを規制することができるとともに、必要に応じて簡単に弾性変形させて係合状態を解除させ、上面板7側開口および取出開口4aを開放させることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 包装容器
2 背面板
3,5 側面板
4 正面板
4a 取出開口
4x 係止凸部
6,9 糊代
7 上面板
8 係止板
11 下面板
12 接続板
12a 係止凹部
a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k 折り目
m,n 切れ目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面板、左右の側面板、上面板、背面板および正面板を備えた包装容器において、正面板の上端部に取出開口を形成するとともに、その近傍の左右端縁に左右の側面板を越えて外方に突出する係止凸部を形成し、また、背面板に上面板を連設するとともに、上面板に係止板を連設してこれらの上面板および係止板を接続板を介して連結し、さらに、接続板に正面板の係止凸部に対応して係止凹部を形成してなり、係止板の回動により、接続板の係止凹部を係止凸部と係合させて係止板および上面板を介してそれぞれ正面板の取出開口および上面板側開口を閉鎖し、あるいは、接続板の係止凹部による係止凸部との係合状態を解除させて正面板の取出開口および上面板側開口を開放することを特徴とする包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−254320(P2010−254320A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104145(P2009−104145)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000106885)シグマ紙業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】