説明

包装用容器

【課題】通常の使用状態では付されている識別模様Sを視認することができず、必要とする場合には、簡単な操作を行うことで識別模様Sを視認することができ、さらに、前記操作を中止することで再び識別模様Sを視認できない状態に戻すことのできる包装用容器1を得る。
【解決手段】包装用容器1は、基板21と基板21から立ち上がる側壁22〜24とを備え、隣接する側壁同士の一方の側壁の側端縁には他方の側壁に重畳される接続片23aが形成され、他方の側壁22と前記接続片23aが重畳される重畳部において前記接続23a片の一部および側壁22の一部が互い接着される構成を備える。そして、その重畳部の接続片と他方の側壁とが対向する面、かつ接着がなされていない領域における接続片または側壁の双方またはいずれか一方には識別模様Sが付されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装用容器に関し、使用者が通常は視認できない箇所に何らかの識別模様が付されている包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等を収容して販売等に供される包装用容器において、収容物品と関連する識別模様を包装用容器に付すことが行われる。例えば、特許文献1には、同じ形態の食品包装用容器であっても、それを上から見るだけで、どの用途に使用すべきかを容易に識別できるように、包装用容器の内面側に適宜の識別模様を形成したものが記載されている。また、特許文献1に記載の包装用容器は、基板が底板であり該底板から立ち上がる4つの側壁を備えた箱型の下容器部分と、基板が蓋板であり該蓋板から立ち上がる4つの側壁を備えた箱型の上容器部分とがヒンジ部を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−228768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
識別模様を付した包装用容器において、特許文献1に記載のように、その識別模様が外側から容易に視認できることが好ましい場合もある。一方、通常の使用状態では使用者等はその識別模様を視認することができず、何らかの操作をしたときにのみ、識別模様を視認できる形態であることが望ましい場合もある。そのような例としては、包装用容器に食品等を収容して販売するときに、販売する側のみが認識しておきたい情報や、購買者にある確率で景品等を与えようとするときの当たりマーク等の当たりくじ情報が挙げられる。その場合、識別模様を認識するために所定の操作をしたときに、容器が現状に復帰しない程度にまで破壊してしまうことは包装用容器として不適切であり、所定の操作をした後でも、初期の状態にほぼ復帰することが望まれる。また、認識のための所定の操作はきわめて容易であることも望まれる。
【0005】
しかしながら、現在、そのような要請に適切に答えることのできる包装用容器は提案されていない。そこで、本発明は、上記の要請に応えることのできる包装用容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による包装用容器は、基板と基板から立ち上がる側壁とを備え、隣接する側壁同士の一方の側壁の側端縁には他方の側壁に重畳される接続片が形成され、他方の側壁と前記接続片が重畳される重畳部において前記接続片の一部および側壁の一部が互い接着される構成を一部に備える包装用容器であって、前記重畳部の接続片と他方の側壁とが対向する面、かつ接着がなされていない領域における前記接続片または側壁の双方またはいずれか一方には識別模様が付されていることを特徴とする。
【0007】
上記の包装用容器では、隣接する側壁同士の一方の側壁の側端縁に形成した接続片と他方の側壁とは面接触した状態で重畳し、その重畳した部分の一部で互い接着している構成を備えており、隣接する側壁同士は安定した状態で連結している。そして、前記重畳部の接続片と他方の側壁とが対向する面であって接着がなされていない領域には識別模様が付されているので、該重畳部において接続片と側壁部とが面接触状態にある限りは、使用者は、付されている識別模様を視認することができない。しかし、使用者が指先等で、重畳部の前記接着されていない領域における接続片と側壁部との間をわずかに広げる操作を行うことにより、形成された隙間から識別模様を視認できるようになる。また、隙間を広げる操作を停止すると、接続片と側壁部は自己の持つ弾性力により面接触した状態に戻ることができるので、包装用容器はほぼ当初の状態に復帰する。
【0008】
上記のように、本発明による包装用容器では、通常の使用状態では容器に付されている識別模様を視認することができず、視認を必要とする場合には、面接触している接続片と側壁部の重畳部をわずかに広げるという簡単な操作を行うのみで、それを行うことができる。さらに、前記操作を中止することで、包装用容器は再び識別模様を視認できない状態に復帰する。
【0009】
付与する識別模様は、線、文字、図形、記号、もしくは、これらの結合、またはこれらと色彩との結合等であってよく、制限はない。したがって、文字模様、絵模様、線模様等であってよく、それらの組み合わせ模様であってもよい。台紙と色彩を異ならせることで識別模様としてもよい。いずれの場合も、印刷模様であることが、量産性およびコストの観点から望ましい。
【0010】
本発明による包装用容器の好ましい態様では、少なくとも前記接着片の接着がなされている領域およびその近傍には接着に用いられる未硬化の接着剤の移動を規制することのできる規制手段が形成されている。この態様では、前記重畳部の一部に塗布した接着剤が識別模様を付した領域にまで広がるのを容易に阻止することができるので、製函時での接着剤の塗布作業が容易になるとともに、識別模様を付した領域が接着された状態となるのを確実に回避することができる。前記規制手段は微少な凹凸等であってもよいが、形成が容易なことと接着剤のアンカー効果が生じやすいことから、ミシン目であることは好ましい。
【0011】
本発明による包装用容器の好ましい態様では、前記重畳部における外側に位置する前記接続片または側壁に摘み片が形成されている。ここで「外側」とは、当該包装用容器における食品等の物品を収容する側の面とは反対の側をいう。この態様では、前記摘み片を利用することで、重畳部の前記接着されていない領域における接続片と側壁部との間にわずかな隙間を形成する操作を、容易に行えるようになる。
【0012】
本発明による包装用容器の全体形状に制限はなく、基板と基板から立ち上がる側壁とを備え、隣接する側壁同士の一方の側壁の側端縁に形成した接続片が他方の側壁に重畳しかつ該重畳部において互い接着している構成を少なくとも一部に備える包装用容器であればよい。
【0013】
包装用容器の一つの具体的な例としては、前記特許文献1に記載されるような、基板が底板であり該底板から立ち上がる4つの側壁を備えた箱型の下容器部分と、基板が蓋板であり該蓋板から立ち上がる4つの側壁を備えた箱型の上容器部分とがヒンジ部を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようにされている包装用容器であって、該包装用容器の前記上容器部分における前記ヒンジ部とは反対側の前記重畳部に前記識別模様が形成されている包装用容器が挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通常の使用状態では付されている識別模様を視認することができず、必要とする場合には、簡単な操作を行うことで識別模様を視認することができ、さらに、前記操作を中止することで再び識別模様を視認できない状態に戻すことのできる包装用容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による包装用容器の一例を示す展開図。
【図2】図1に展開図で示す包装用容器を組み立てた状態で示す図。
【図3】図1に展開図で示す包装用容器を閉じた状態で示す図。
【図4】付与した識別模様を視認するときの状態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明による包装用容器の一例を示す展開図であり、包装用容器の物品収容面側を裏面側として示している。図示する包装用容器1は、箱型の下容器部分aと箱型の上容器部分bとからなり、両者はヒンジ部Pで接続している。
【0017】
下容器部分aは、基板を構成する矩形状の底板11と、該基板(底板11)から立ち上がる4つの側壁である、前板12、左右の側板13、14および後板15を備える。前板12はその両側端縁に接続片12a、12aを有し、また、後板15もその両側縁に接続片15a、15aを有している。上容器部分bも、同様に、基板を構成する蓋板21と、該基板(蓋板21)から立ち上がる4つの側壁である、前板22、左右の側板23、24および後板25を備える。後板25はその両側に接続片25a、25aを有し、左右の側板23、24は前板22側に延出する接続片23a、24aを有している。そして、下容器部分aの後板15の上縁と上容器部分bの後板25の下縁とは連接しており、その部分が組み立て後に包装用容器1のヒンジ部Pとなる。
【0018】
図示の例において、上容器部分bの一方の側壁23から延出する接続片23aの表面であって、基板である蓋板21から遠ざかる領域に、適宜の識別模様S(図では星の印)が印刷等によって付されている。
【0019】
組み立てに当たっては、上記展開図として示したブランクスが図示しない製函機にかけられ箱状に折り曲げられ、それにより、前記各接続片とそこに隣接する側壁の側端部とは面接触状態で重畳した姿勢となり、該重畳部において接着接合される。
【0020】
より詳細には、最初に、底板11と蓋板21の周囲に位置する各前板12と22、各左右の側板13、14と23、24および各後板15と25が、底板11と蓋板21に対して立ち上がった姿勢、図1では底板11と蓋板21から紙面の後ろ側に折り曲げられた姿勢とされる。
【0021】
そして、下容器部分aにおいては、前板12の両側の接続片12a、12aがほぼ90度に内側に折り曲げられて、左右の側板13、14の前板12側の側端縁内側面に重畳した姿勢とされ、また、後板15の両側の接続片15a、15aもほぼ90度に内側に折り曲げられて、左右の側板13、14の後板15側の側端縁内側面に重畳した姿勢とされる。また、折り曲げの過程で、前記重畳することとなる領域の各接続片側あるいは各側壁側のいずれか一方には接着剤が塗布され、立ち上げ後に前記重畳部を圧着することで、前板12、左右の側板13、14、後板15である4つの側壁における隣接する側壁同士は、前記接続片を介して、互いに一体に接続された状態となり、4つの側壁によって4つの角部を持つ周側壁が形成されて、図2に示すように、箱型の下容器部分aとされる。
【0022】
上容器部分bにおいては、後板25の両側の接続片25a、25aがほぼ90度に内側に折り曲げられて左右の側板23、24の後板25側の側端縁内側面に重畳した姿勢とされ、また、左右の側板23、24の接続片23a、24aもほぼ90度に内側に折り曲げられて前板22の両側端縁内側面に重畳した姿勢とされる。折り曲げの過程において、前記重畳することとなる領域の各接続片側あるいは各側壁側のいずれか一方には接着剤が塗布され、立ち上げ後に前記重畳部を圧着することで、前板22、左右の側板23、24、後板25である4つの側壁における隣接する側壁同士は、前記接続片を介して、互いに一体に接続された状態となり、4つの側壁によって4つの角部を持つ周側壁が形成されて、図2に示すように、箱型の上容器部分bとされる。
【0023】
ただし、上容器部分bにおいて、前記識別模様Sを付した接続片23aとそこに対向する前板22の側端縁との重畳部においては、接着剤の塗布は、図1に符号Qで示すように、識別模様Sに掛からない領域、すなわち、接続片23aまたは前板22の前記側端縁における前記蓋板21側に寄った領域に対してのみ行われる。そのために、形成された上容器部分bにおける前板22と側板23とで形成される角部では、接続片23aと前板22の側端縁とは面接触してはいるが、少なくとも前記識別模様Sを付した領域では、両者は接着していない状態となる。
【0024】
また、図示の例において、組み立てた姿勢で、下容器部分aにおける前板12の両側の接続片12a、12aの一部12b、12bと左右の側壁13、14の先端部13b、14bによって、前方に突出する第1の係止爪12B、12Bが形成される。また、上容器部分bにおける左右の側板23、24の接続片23a、24aの先端部23b、24bと前板22の上縁の左右端部22b、22bによって、第2の係止爪23B、24Bが形成される。
【0025】
図2に示す、組み立て後の開いた姿勢から、下容器部分a内にハンバーガーのような食品(不図示)を入れた後、上容器部分bを、ヒンジ部Pを支点として下容器部分aの上に向けて回動する。それにより、図3に示すように、下容器部分aの前板12と左右の側板13、14の一部は上容器部分bの前板22と左右の側板23、24の内側に入り込んだ姿勢となるとともに、前記第2の係止爪23B、24Bは、第1の係止爪12B、12Bの先端部を滑るようにして次第に下方に移動していき、第1の係止爪12B、12Bを乗り越える。それにより、包装用容器1は、図3に示すように、閉じた姿勢となり、購買者に供される。
【0026】
本発明による包装用容器1において、図2に示す開いた姿勢、および図3に示す閉じた姿勢のいずれにおいても、そのままの姿勢では、前記した識別模様Sは面接触している接続片23aと前板22との重畳部内に位置しているので、購買者らはそれを視認することはできない。しかし、前記したように、識別模様Sが形成されている周辺には接着剤が塗布されてなく接着はしていないので、重畳部における非接着領域を開く操作を行うことにより、購買者らは、そこに付されている識別模様Sを視認できるようになる。また、視認後に、重畳部に作用している力を開放することにより、重畳部は素材の持つ復元力によって再び元の面接触した状態に戻ることができる。
【0027】
より具体的には、識別模様Sを視認しようとするときに、購買者らは、上容器部分aの前板22の上縁に形成した左右の端部22b、22bのうちの、識別模様Sが隠蔽されている側の端部22bを摘み片として利用し、図4に示すように、そこを少し持ち上げるようにする。すなわち、本実施の態様では、重畳部の外側に位置する端部22bが接続片23aの先端部23bよりも延出されている。したがって、重畳部から延出された端部22bを摘み片として、購買者が端部22bと先端部23bとを別に摘むことができるため、端部22bと先端部23bとを容易に離すことができる。それにより、その近傍の前板22の部分は、接続片23aから離れるようにして持ち上げられる。そして、前記重畳部での識別模様Sが形成されている領域には隙間ができることとなり、その隙間から購買者は接続片23aに付されている識別模様Sを視認することができる。前記重畳部の識別模様よりも前記天板21に寄った部分は接着剤により一体に固定されており、症状部の全領域が分離することはない。
【0028】
識別模様Sを視認した後に、端部22bを開放すると、前板22の持つ復元力により、前板22は元の位置、すなわち、図2に示すように、接続片23aと面接触状態に重畳した位置に復帰する。そのままで、収容した食品の保管や搬送に供される。
【0029】
図示の形態の包装用容器1において、接着剤が塗布される領域Qおよびその近傍には、複数本のミシン目30が並列されて、塗布した接着剤が流れ出るのを規制するための規制手段として形成されている。したがって、複数本のミシン目30は、接着剤が移動するのを規制する方向に垂直(直角)に走られて形成されていることが好ましい。ミシン目30があることにより、そこに塗布された液状の接着剤が前記識別模様Sを形成した領域まで流動するのを阻止することができる。規制手段はミシン目30に限らないが、ミシン目30の場合、その開いている部分に接着剤が入り込むことで、接着剤に対するアンカー効果も発揮する。
【0030】
上記の包装用容器1は、本発明による包装用容器の一実施の形態であって、他に多くの変形例が存在する。例えば、接続片23aにのみ識別模様Sを形成した形成したが、他方の接続片23bにも同様にして識別模様Sを形成してもよい。その場合には、接続片23aの場合と同様にして接着剤の塗布やミシン目30の形成を行う。また、製函するときに、前板22の外側に前記した接続片23a、24aが重畳するようにしてもよい。その場合には、前記識別模様Sを接続片23a、24aの図1で示す裏面側に形成する。
【0031】
包装用容器の全体形状が、図1〜図4に示した下容器部分aと上容器部分bが連接した箱型形状のものである必要もない。例えば、上容器部分bのみからなる形態でもよい。さらに、一つの角部に前記した識別模様Sを隠蔽した重畳部が形成されていればよく、容器としての残りの形状はまったく任意である。
【符号の説明】
【0032】
1…食品包装用容器、
a…下容器部分、
b…上容器部分、
P…ヒンジ部
S…識別模様、
Q…接着剤塗布領域、
11,21…基板(底板、天板)、
12〜15,22〜25…側壁、
30…ミシン目。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と基板から立ち上がる側壁とを備え、隣接する側壁同士の一方の側壁の側端縁には他方の側壁に重畳される接続片が形成され、前記他方の側壁と前記接続片が重畳される重畳部において前記接続片の一部および側壁の一部が互い接着される構成を一部に備える包装用容器であって、
前記重畳部の接続片と他方の側壁とが対向する面、かつ接着がなされていない領域における前記接続片または側壁の双方またはいずれか一方には識別模様が付されていることを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
少なくとも前記接着片の接着がなされている領域およびその近傍には接着に用いられる未硬化の接着剤の移動を規制することのできる規制手段が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の包装用容器。
【請求項3】
前記規制手段がミシン目であることを特徴とする請求項2に記載の包装用容器。
【請求項4】
前記重畳部における外側に位置する前記接続片または他方の側壁に摘み片が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の包装用容器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の包装用容器であって、該包装用容器は、基板が底板であり該底板から立ち上がる4つの側壁を備えた箱型の下容器部分と、基板が蓋板であり該蓋板から立ち上がる4つの側壁を備えた箱型の上容器部分とがヒンジ部を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようにされている包装用容器であり、該包装用容器の前記上容器部分における前記ヒンジ部とは反対側の前記重畳部に前記識別模様が形成されていることを特徴とする包装用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−166840(P2012−166840A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31014(P2011−31014)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】