説明

包装用箱

【課題】 物品の包装工程での部品点数が削減され包装作業が簡略化でき、別の付帯部品を必要とすることなく、物品の収納空間の長さを物品の長さに応じて調整可能な包装用箱を提供する。
【解決手段】 包装用箱は、折り曲げ可能な材質の板状部材によって略直方体形状に形成され、内部に長手方向に沿って長尺の物品が収納可能な収納空間と、該収納空間の両端部に、前記物品の両端面にそれぞれ当接して該物品に加わる衝撃を和らげる長方形状の緩衝固定板を備え、該緩衝固定板は、一つの短辺側の縁辺が前記包装用箱の壁構成部材の縁辺と、互いに相手方に対して折り曲げるための折曲線を共有して連続し一体的に形成され、前記収納空間の両端部に、コの字の右側が前記包装用箱の中心部に臨む断面コの字形スペーサーと、L字の一辺を成す部分の板面が前記包装用箱の端壁内面と接触している断面L字形中敷き、のいずれかの形態を構成するように折り曲げて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の保管や搬送などに使用される包装用箱に係り、特に長さが複数種類ある長尺製品に好適な包装用箱に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品は近年、各産業分野での様々な用途に対応して、多品種少量生産されることも珍しくなくなってきている。そうして生産される工業製品のおいては、外観形状は同一または略同一で、製品のある部分の寸法、例えば長尺物の場合の長さ、だけが異なるというケースも少なくない。
【0003】
そうした場合、そのような製品を包装する包装用箱は、長さだけの違いでそれに応じた包装箱を用意するのは不便であり、これを1種類で済ませられれば、包装用箱の生産効率や包装用箱材料の省資源の面で有益である。そこで従来は、同一系統の製品を1種類の包装用箱で賄う場合、その系統の製品のうち最大寸法のものに合わせて箱を作っておき、それよりも小さい寸法の製品を包装する場合は、生じた余剰空間にスペーサーを充填するという手法が取られてきた。スペーサーの利用という考え方は、例えば特許文献1にも登場する。特許文献1には、長さあるいは太さが異なる複数本の石英ガラス母材を1つの箱に梱包する方法が記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の包装(梱包)方法では、太さが同じで長さだけが異なる製品を包装する場合、スペーサーを必ず用意する必要がある上に、製品の長さが複数種類ある場合、それに応じて複数種類のスペーサーを用意する必要があり、製品の包装工程における部品点数が増え、それに伴ない包装工程における包装作業が煩雑化するという問題があった。
【0005】
ところで、この種のスペーサーには、包装する製品を、容易に動かないようにその収納空間に確実に保持固定する役割が必要である。その製品がガラス製品など、破損し易いものである場合は、更に衝撃を緩衝する作用も要求される。従って、その場合、スペーサーの寸法は、遊びがあるのは好ましくなく、要求寸法に厳密に合致させる必要がある。一方、製品の側から言えば、例えば特注品などにおいては、標準品に対して長さが数mm程度違っているというケースも稀ではなく、そうした場合、予め用意した複数種のスペーサーをどのように組み合わせても必要な長さが実現できず、改めて要求寸法に合わせてスペーサーを作り直す必要が生じることも起こり得る。このように、従来の方法では、要求寸法への適応という点で欠点を抱えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−238841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するために創出されたものであり、物品の包装工程での部品点数が削減され包装作業が簡略化でき、また、別の付帯部品を必要とすることなく、物品の収納空間の長さを物品の長さに応じて調整可能な包装用箱を提供することを課題とする。更には、物品を包装用箱内部の収納空間に確実に保持固定する包装用箱を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題点を解決するために、本発明は次の構成とする。すなわち、請求項1に記載の包装用箱は、折り曲げ可能な材質の板状部材によって形成され、略長方形状を成す底壁と、これに対向する天壁と、互いに対向する一対の側壁と、互いに対向する一対の端壁とにより略直方体形状に形成された包装用箱であって、内部に前記側壁の延在方向に沿って長尺の物品が収納可能な収納空間を備え、該収納空間の両端部に、前記物品の両端面にそれぞれ当接して該物品に加わる衝撃を和らげ該物品の姿勢を固定する長方形状の緩衝固定板を備え、該緩衝固定板は、一つの短辺側の縁辺が前記包装用箱の端壁の縁辺、または側壁、底壁、天壁の長手方向の縁辺と、互いに相手方に対して折り曲げるための折曲線を共有して連続し一体的に形成され、かつ前記収納空間の両端部に、コの字の右側が前記包装用箱の中心部に臨み断面の少なくとも一部がコの字形を成すスペーサーと、L字の一辺を成す部分の板面が前記包装用箱の端壁と接触している断面L字形中敷き、のいずれかの形態を構成するように折り曲げて配置され、また、前記緩衝固定板は、一方の長辺側の縁辺に板面に連なる矩形状突起を有し、前記包装用箱の側壁、底壁または天壁の内面の縁辺部に、前記突起が差し込み可能な複数の矩形状孔部が形成され、そのうちの一つの矩形状孔部に前記矩形状突起が差し込まれていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の包装用箱は、折り曲げ可能な材質の板状部材によって形成され、略長方形状を成す底壁と、これに対向する天壁と、互いに対向する一対の側壁と、互いに対向する一対の端壁とにより略直方体形状に形成された包装用箱であって、内部に前記側壁の延在方向に沿って長尺の物品が収納可能な収納空間を備え、該収納空間の両端部に、前記物品の両端面にそれぞれ当接して該物品に加わる衝撃を和らげ該物品の姿勢を固定する長方形状の緩衝固定板を備え、該緩衝固定板は、一つの短辺側の縁辺が前記包装用箱の端壁の縁辺、または側壁、底壁、天壁の長手方向の縁辺と、互いに相手方に対して折り曲げるための折曲線を共有して連続し一体的に形成され、かつ前記収納空間の両端部に、コの字の右側が前記包装用箱の中心部に臨む断面コの字形スペーサーと、L字の一辺を成す部分の板面が前記包装用箱の端壁内面と接触している断面L字形中敷き、のいずれかの形態を構成するように折り曲げて配置され、また、前記断面コの字形スペーサーのコの字の端を成す縁辺は、前記包装用箱の端壁内面と必ず当接するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
要するに、請求項1及び2に記載の包装用箱はいずれも、包装用箱の内部の物品の収納空間の両端でスペーサーまたは中敷きのいずれの形態も取り得る緩衝固定板が、包装用箱を形成する板状部材と一体的に形成されている。そして、請求項1に記載の包装用箱では、その端壁を除く壁の内面の縁辺部に、前記緩衝固定板の一方の長辺側の縁辺部に形成された矩形状突起が差し込み可能な矩形状孔部、が形成されている。請求項2に記載の包装用箱では、緩衝固定板の突起及びこれを差し込み可能な孔部はないが、断面コの字形スペーサーのコの字の端を成す縁辺が包装用箱の端壁と必ず当接するように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1及び2に記載の発明によれば、いずれも、収納空間の両端に配置される緩衝固定板は、包装用箱を形成する板状部材と一体的に形成されていると共にスペーサーまたは中敷きのいずれの形態も取り得るので、別の付帯部品を必要とすることなく、収納空間の長手方向の長さを収納物品の長さに応じて調整することが可能であり、従って、製品の包装工程での部品点数が削減され、包装作業が簡略化され迅速化されるという効果を発揮する。また、収納物品の端面がこのスペーサーまたは中敷きに必ず当接するよう構成されているので、収納物品が包装用箱内部で動くことなく確実に保持固定されるという効果を発揮する。
【0012】
また、請求項1に記載の発明によれば、上記共通の効果に加えて、緩衝固定板が断面コの字形スぺーサーの形態を取る際に、緩衝固定板の縁辺部の矩形状突起が差し込み可能な、包装用箱の端壁を除く内壁の縁辺部の矩形状孔部が複数設けられている場合には、1種類の包装用箱で少なくとも3種類以上の異なる長さの物品の収納に適応できるという効果を発揮する。
【0013】
更に、請求項2に記載の発明によれば、上記共通の効果に加えて、断面コの字形スペーサーのコの字の端を成す縁辺が包装用箱の端壁と必ず当接する構造となっているので、内部は突起や差し込み孔が無い単純な構造でありながら、1種類の包装用箱で最大4種類の異なる長さの物品の収納に適応できるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の包装用箱の内部に物品が収納された様子を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の実施形態の包装用箱の内部構造を抽象的に示す模式的断面図である。
【図3】本発明の実施形態の包装用箱の内部構造を抽象的に示す模式的断面図である。
【図4】本発明の実施形態の包装用箱の内部構造を抽象的に示す模式的断面図である。
【図5】本発明の実施例の包装用箱の外観斜視図である。
【図6】本発明の実施例の包装用箱の展開図である。
【図7】本発明の実施例の包装用箱の端部における、長手方向に垂直な面の模式的断面図である。
【図8】本発明の実施例の包装用箱の内部構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の作用及び最良の実施形態を、例を挙げて説明する。まず、内部構造が簡単な、請求項2に記載の発明に対応した実施形態から説明する。請求項2に記載の包装用箱は、その内部の端部に配置される緩衝固定板がその縁辺に板面に連なる矩形状突起を備えておらず、また壁内面の縁辺部にその突起が差し込み可能な矩形状孔部も有していないため、この緩衝固定板自体は収納物品がない状態では固定されないが、収納物品の長さに応じた位置に予め折り目が設けられており、物品収納時には、断面コの字形スペーサーと断面L字形中敷きのいずれの形態を取る場合も、それぞれ、その物品の端面に当接した断面コの字形スペーサーまたは断面L字形中敷きが同物品により端部方向に押されて、同スペーサーのコの字の端を成す縁辺(先端)または同中敷きのL字の一辺を成す板面が包装用箱の端壁と必ず当接する構造となっている。こうして、収納物品が包装用箱内部で固定されることになる。
【0016】
以下の説明では、包装用箱の端面が正方形、従って包装用箱の全体形状が略正四角柱形状である場合を取り上げるが、本発明はこれに限定されることはなく、包装用箱の端面が長方形で、包装用箱の全体形状が直方体形状であってもよい。また、以下の説明では、包装用箱は、その長手方向に平行な面から見て、内部構造も含めて、左右対称である場合を取り上げるが、本発明はこれに限定されることはなく、左右非対称に構成されていてもよい。例えば内部構造で、緩衝固定板の長さが左右で異なっていてもよい。その場合、緩衝固定板の突起が差し込まれる孔部の位置が左右非対称となる。なお、本発明では、包装用箱を構成する6つの壁の壁面を、箱の外側に露出している側を「外面」、箱の内側に露出している側を「内面」と称して区別する。これは、壁部材はある大きさの厚みを有しており、それらが組み合わされて直方体状包装用箱が構成されると、一般的には外面と内面の大きさが同じにはならないからである。
【0017】
本発明の包装用箱は、手で容易に折り曲げ可能であると共に略元の形状に復元することも容易な材質の部材、例えば、包装用箱に広く利用されている、厚さ3mm程度のダンボール紙から構成される。図1は、そのようなダンボール紙製で長さ1m程度の四角柱形状に構成された包装用箱の内部に、石英ガラス製直管状容器の内部に金属ないし金属化合物と希ガスとを封入し両端部に電極(図示せず)を封着すると共に、両端にセラミック製口金を有する、全長500〜1000mm程度、中央部外径がいずれも30mm程度の高圧放電ランプ30(30A、30B、30C)を1体収納した様子を、同包装用箱の真上から見た模式的断面図として示したものであり、3通りの内部構造を有する包装用箱それぞれに長さの異なる3種類の同高圧放電ランプが収納されている様子が、長さの長い順に(a)〜(c)に示されている。包装用箱の壁部の厚みや縦横比は幾分誇張して、また中央部は省略して描かれている。
【0018】
図1において、11、12は包装用箱10の端壁、13、14は側壁である。奥に底壁16が見えている。20L、20Rは、緩衝固定板であり、左右対称に(同じ寸法形状に)構成され、包装用箱10と同材質で、それぞれ、例えば端壁11、12と連続し一体的に形成されている。図1(a)は、両方の緩衝固定板20L、20Rが共に「断面L字形中敷き」の形態を取る場合を、図1(b)は、一方の緩衝固定板20Lが「断面コの字形スペーサー」の形態を、他方の緩衝固定板20Rが「断面L字形中敷き」の形態を取る場合を、図1(c)は、両方の緩衝固定板20L、20Rが共に「断面コの字形スペーサー」の形態を取る場合を、それぞれ示している。ここで、「断面L字形」及び「断面コの字形」とは、包装用箱の長手方向に平行な断面で見た場合の緩衝固定板の断面形状をいい、緩衝固定板の厚みが形作る概略図形で表現している。緩衝固定板20L、20Rの断面は、その厚み方向の断面図において、そのままの状態あるいは裏から透視した状態のいずれかで、L字またはコの字を形成する。コの字を形成する場合、コの字の右側が包装用箱の中心部に臨む配置となる。
【0019】
図2は、図1と同じく包装用箱の真上から見た模式的断面図であり、図1において収納物品を省略し、包装用箱の部分だけを取り出して、内部構造の説明に適するように更に抽象化し、図1(a)〜(c)のそれぞれに対応する内部構造を模式的に示したものである。緩衝固定板20L、20Rは、箱本体の構成部材と区別し易いように太線で描いてある。緩衝固定板の太線上の黒丸は、緩衝固定板の折曲部または先端部を表わしている。
【0020】
図2に示すように、緩衝固定板20L、20Rは、4つの折曲部L1(R1)、L2(R2)、L3(R3)、L4(R4)を有している。L5(R5)は先端部である。このうち、L1(R1)は、折曲部であると共に、包装用箱10の端壁11(12)と折曲線を共有して一体的に連続している箇所でもある。
【0021】
緩衝固定板20L、20Rは、断面L字形中敷きの形態を取る場合(図2(a))は、折曲部L1(R1)とL2(R2)の2箇所で折り曲げられ、図上で線分L1L2(R1R2)で表わされる部分(L字の一辺を成す部分)の板面は端壁11(12)の内面に当接している。線分L2L5(R2R5)で表わされる部分の板面は、側壁14(13)に対して平行に延在しているが、必ずしも完全に側壁14(13)に接触している必要はなく、側壁14(13)との間に僅かに隙間を有していてもよい。図2(a)に示した例では、L字の形態が左右対称(L字としては互いに逆L字)であるが、本発明では、L字の形態が左右非対称(左右で同じL字)であってもよい。
【0022】
断面コの字形スペーサーの形態を取る場合(図2(b)、(c))は、折曲部L1(R1)、L3(R3)及びL4(R4)の3箇所にて折り曲げられ、先端部L5(R5)で表される板の縁辺(コの字の端を成す縁辺)が端壁11(12)の内面に当接している。線分L1L3(R1R3)及び線分L4L5(R4R5)で表わされる部分の板面は、それぞれ、側壁13及び14、あるいは側壁14及び13に対して平行に延在しているが、必ずしも完全に側壁13、14に接触している必要はなく、側壁13、14との間に僅かに隙間を有していてもよい。図2(b)に示した例では、左側の緩衝固定板20Lが断面コの字形スペーサーの形態を、右側の緩衝固定板20Rが断面L字形中敷きの形態を取っているが、本発明では、逆の組合せ、すなわち左側の緩衝固定板20Lが断面L字形中敷きの形態を、右側の緩衝固定板20Rが断面コの字形スペーサーの形態を取っていてもよい。
【0023】
なお、図上において、線分L1L3(R1R3)は線分L4L5(R4R5)と長さが等しいという関係にある。また、線分L2L5(R2R5)で表わされる部分の板面が完全に側壁14(13)に接触し、かつ線分L1L3(R1R3)及び線分L4L5(R4R5)で表わされる部分の板面が完全に側壁13、14に接触している場合には、線分L1L2(R1R2)は線分L3L4(R3R4)と長さが等しいという関係にある。
【0024】
緩衝固定板20L、20Rが、折曲部L1(R1)において端壁11(12)に対して折り曲げる折曲角度は、断面L字形中敷きの形態と断面コの字形スペーサーの形態とで互いに90°異なっている。包装用箱の材料に、例えばダンボール紙を用い、折曲部における折り曲げ方を適宜工夫すれば、このような状態を実現することは容易に可能である。ダンボール紙の持つ柔軟性を利用することにより、緩衝固定板が断面L字形中敷きと断面コの字形スペーサーの両方の形態を取ることが可能になる。
【0025】
図2で示される実施形態では、包装用箱10の端部の内部構造は、2つの緩衝固定板20L、20Rが、両者共、断面L字形中敷きの形態を取る場合(図2(a))、一方が断面コの字形スペーサー、他方が断面L字形中敷きの形態を取る場合(図2(b))及び両者共、断面コの字形スペーサーの形態を取る場合(図2(c))の3通り可能であるので、1種類の包装用箱を用いて長さの異なる3種類の物品(高圧放電ランプ30)を収納することができる。すなわち、最長の長さのランプ30Aを収納するには図2(a)に示される内部構造の箱を、2番目の長さのランプ30Bを収納するには図2(b)に示される内部構造の箱を、最短の長さのランプ30Cを収納するには図2(c)に示される内部構造の箱を、それぞれ利用すればよい。なお、緩衝固定板を形成する長方形の長辺の長さが左右で異なるように構成されている場合には、一方が断面コの字形スペーサー、他方が断面L字形中敷きの形態を取る際に、2通りの長さの物品が収納可能であるので、1種類の包装用箱で最大4種類の異なる長さの物品を収納することができる。
【0026】
次に、請求項1に記載の発明に対応した実施形態を説明する。この説明においても、図2と同様、抽象化した模式的断面図である図3、図4を用いる。請求項1に記載の発明に対応した実施形態は、包装用箱の端壁を除く内壁の縁辺部に、前記緩衝固定板の一方の長辺側の縁辺部に形成された矩形状突起が差し込み可能な矩形状孔部が形成されており、緩衝固定板は収納物品がない状態でも固定されるタイプであり、いくつもの種類の実施形態が存在する。その一部を例示したのが図3、図4である。図3は、突起と孔部が設けられている以外は同じ内部構造を有する包装用箱を、図2(a)〜(c)に対応させてそれぞれ、図3(a)〜(c)として示している。図4では、右側の描画を省略している。
【0027】
図3において、21L、21Rは、緩衝固定板20L、20Rの一方の長辺側の縁辺に板面に連なって形成された矩形状突起である。図3(a)に示されるように、緩衝固定板20L、20Rが断面L字形中敷きの形態を取る場合には、矩形状突起21L、21Rは、底壁16の内面の縁辺部に形成された矩形状孔部17L、17Rに差し込まれており、断面L字形の形態が固定される。図3(b)、(c)に示されるように、緩衝固定板20L、20Rが断面コの字形スペーサーの形態を取る場合には、底壁16の内面の縁辺部に形成された矩形状孔部18L、18Rに差し込まれており、断面コの字形の形態が固定される。緩衝固定板20L、20Rが断面L字形中敷きの形態を取る場合と断面コの字形スペーサーの形態を取る場合とで、矩形状突起21L、21Rが差し込まれる矩形状孔部の位置が異なるので、符号を変えて区別している。矩形状孔部17L、17Rは矩形状孔部18L、18Rよりも中心寄りに形成される。
【0028】
図3に示した実施形態では、図2に示した実施形態と同様、先端部L5(R5)で表される板の縁辺(コの字の端を成す縁辺)が端壁11(12)の内面に当接している。しかし、本発明はこれに限定されることはなく、先端部L5(R5)で表される板の縁辺(コの字の端を成す縁辺)が端壁11(12)の内面との間に隙間を有していてもよい。この隙間が顕著に大きく確保されている例が、図4に示した実施形態に現われている。
【0029】
図4に示した実施形態では、緩衝固定板20L、20Rが取る断面コの字形スペーサーの形態は、図4(b)と(c)に示す2種類存在する。図4(c)に示す形態の場合は、先端部L5(R5)で表される板の縁辺が端壁11(12)の内面に当接している(この時、矩形状突起21L、21Rは矩形状孔部181L、181Rに差し込まれている)。一方、図4(b)に示す形態の場合は、矩形状突起21L、21Rが、矩形状孔部181L、181Rよりも中央寄りに形成された矩形状孔部182L、182Rに差し込まれ、先端部L5(R5)で表される板の縁辺と端壁11(12)の内面との間に大きな隙間が形成されている。
【0030】
なお、本発明では、緩衝固定板20L、20Rの断面が形成するコの字形の概略図形は、図4(b)に示す形態のように、緩衝固定板20L、20Rの断面全体ではなく、一部がコの字形を形成していてもよい。
【0031】
緩衝固定板20L、20Rが断面コの字形スペーサーの形態を取る場合に矩形状突起21L、21Rが差し込まれる矩形状孔部を複数設けておくことにより、包装用箱内部に収納可能な物品の長さの種類を増やすことができる。図4に示した実施形態では、1種類の包装用箱で、長さの異なる5種類の物品(ランプ)を収納することが可能である。緩衝固定板20L、20Rの同じ矩形状突起21L、21Rが、矩形状孔部181L、181Rにも、矩形状孔部182L、182Rにも差し込み可能とするには、緩衝固定板すなわち包装用箱を、ダンボール紙等の、任意の箇所で折り曲げ可能な柔軟性のある材料を用いて構成すればよい。なお、緩衝固定板を形成する長方形の長辺の長さが左右で異なるように構成されている場合には、更に多くの種類の異なる長さの物品を1種類の包装用箱に収納することが可能である。
【実施例1】
【0032】
本発明の実施例について説明する。図5は、実施例の包装用箱の外観斜視図である。包装用箱10は、端壁11、側壁14、天壁15、及び図では見えていない端壁12、側壁13、底壁16の6つの壁部から構成される。図6は、厚さ3mmのダンボール紙を材料として組み立てられる実施例の包装用箱の展開図を示したもので、この展開図のダンボール紙から、端面が61mm×53mmの長方形で長さが1323mmの直方体形状の包装用箱10が製作される。この包装用箱10は耐衝撃性を高めるために、箱本体が二重壁構造(一部、三重壁構造)となっている。展開図において、上側にある部材14S、16S、13S、15Sはそれぞれ、側壁14、底壁16、側壁13、天壁15の外側を構成する。また、下側にある部材14U、16U、13U、15Uは、それぞれ、側壁14、底壁16、側壁13、天壁15の内側を構成し、側壁14の稜部14Cで折り返して順次内側に折り込まれる。部材14SSは、部材14Sの外側から被さるようにして配置され、側壁14の三重壁の一部を構成する。端壁11及び12も二重壁構造であり、それぞれ、部材11U、12Uが、稜部11C、12Cで折り返して部材11S、12Sの内側に折り込まれる。こうして、包装用箱10が組み立てられる。図7は、実施例の包装用箱の長手方向に垂直な面の断面図を、各壁部を構成する板部材を太線で抽象化して示したもので、各板部材の折り曲げ方を示している。
【0033】
図6中で斜線が付された部分が緩衝固定板20L、20Rであり、端壁11、12の二重壁の内側を構成する部材に連なり一体的に形成され、その大きさは191mm×39mmの長方形状であり、厚みについては“一重”である。その長辺側の縁辺部に幅15mm、突出長3mmの矩形状突起21L、21Rが形成されている。なお、この突起は、図6に示す例のように、矩形状孔部に差し込み易くするため、完全な矩形(長方形)でなく、先端側の辺が(14mmで)僅かに短い台形に形成されていてもよい。要するに、ここで言う「矩形状突起」の「矩形状」とは、完全な矩形または殆ど矩形に近い台形であればよい。
【0034】
この実施例の包装用箱10は、緩衝固定板20L、20Rが断面コの字形スペーサーの形態を取る場合に、先端部L5(R5)で表される板の縁辺(コの字の端を成す縁辺)が端壁11(12)の内面に必ず当接するタイプの箱であり、緩衝固定板20L、20Rが断面L字形中敷きの形態を取る場合に矩形状突起21L、21Rが差し込まれる矩形状孔部17L、17Rと、断面コの字形スペーサーの形態を取る場合に矩形状突起21L、21Rが差し込まれる矩形状孔部18L、18Rが、底壁16(17L、17Rは部材16S、18L、18Rは部材16U)の縁辺部にそれぞれ形成されている。その孔部の差込口の大きさは、17mm×3.5mmである。
【0035】
25L、25Rは、箱本体の端壁を構成する部位の組立て用の矩形状突起であり、矩形状孔部26L、26Rに差し込まれる。箱本体にはこの他にも矩形状突起とこれが差し込まれる矩形状孔部が形成されているが、説明は省略する。
【0036】
緩衝固定板20L、20Rは、包装用箱10内部の端部で断面L字形中敷きと断面コの字形スペーサーのいずれかの形態を取るので、前述の通り、包装用箱10内部で3通りの長さの収納空間を実現することができる。図8(a)〜(c)は、この3通りの収納空間が形成された包装用箱10の内部構造を、箱を開けた状態で真上から撮影された写真(中央部を省略)で示したものである。両端壁11、12と、側壁14と、底壁16と、側壁13の一部、及び断面L字形中敷きと断面コの字形スペーサーのいずれかの形態を取る緩衝固定板20L、20Rが現われている。この実施例では、長さ1300mm、管径30mm、長さ1227mm、管径28mm、及び長さ1154mm、管径25mm、の3種類の管状長尺放電ランプを収納するのに1種類の包装用箱で対応できる。
【0037】
上記実施例の包装用箱は、箱本体が二重壁構造(一部、三重壁構造)となっていたが、本発明はこれに限定されることはなく、箱本体が一重壁構造(一部、二重壁構造)であってもよい。
【0038】
また、緩衝固定板20L、20Rが断面コの字形スペーサーの形態を取る場合に、矩形状突起21L、21Rが差し込まれる矩形状孔部が、底壁16の縁辺部に沿って複数設けられており、従って緩衝固定板20L、20Rの先端部L5(R5)で表される板の縁辺が端壁11(12)の内面に当接しない形態を取ることが可能なように構成されていてもよい。その場合、箱に収納可能な、長さの異なる物品の種類は、上記実施例よりも更に増やすことができる。
【0039】
なお、以上の説明では、緩衝固定板は、包装用箱の端壁を構成する部材の縁辺に連なり一体的に形成されている場合についてだけ取り上げ、しかも、包装用箱の展開図の上で、長手方向に対して垂直に延在するように配置されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、緩衝固定板は、包装用箱の側壁、底壁または天壁の長手方向の縁辺でそれを構成する部材と連なり一体的に形成されていてもよい。但し、包装用箱の側壁、底壁または天壁の長手方向の縁辺で連なる場合、緩衝固定板が包装用箱内の端部で前述同様の構造を形成するには、包装用箱の展開図の上で、緩衝固定板が長手方向に対して平行に延在するような配置を取る必要が生じる。しかし、包装用箱は、母材のダンボール紙から展開図の形状を刳り貫いた板材を用いて製作されることを考慮すると、展開図上で緩衝固定板がそのような配置を取ることは、余材となる板材部分の面積を大きくする。従って、緩衝固定板と包装用箱を構成する部材との連続の仕方は、省資源の観点からは、包装用箱の端壁を構成する部材の縁辺において展開図上で長手方向に直交する方向で連なるようにすることが好ましい。ちなみに、図6に示した例では、1600mm×500mmの大きさの母材ダンボール紙が用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、複数種類の異なる長さの長尺製品の収納に1種類の包装用箱で対応する場合に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10…包装用箱
11、12…端壁
13、14…側壁
15…天壁
16…底壁
L1、L2、L3、L4、R1、R2、R3、R4…折曲部
L5、R5…先端部
17L、17R、18L、18R…矩形状孔部
181L、181R、182L、182R…矩形状孔部
20L、20R…緩衝固定板
21L、21R…矩形状突起
11S、12S…外側端壁
11U、12U…内側端壁
13S、14S…外側側壁
13U、14U…内側側壁
15S…外側天壁
15U…内側天壁
16S…外側底壁
16U…内側底壁
11C、12C、14C…稜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げ可能な材質の板状部材によって形成され、略長方形状を成す底壁と、これに対向する天壁と、互いに対向する一対の側壁と、互いに対向する一対の端壁とにより略直方体形状に形成された包装用箱であって、内部に前記側壁の延在方向に沿って長尺の物品が収納可能な収納空間を備え、該収納空間の両端部に、前記物品の両端面にそれぞれ当接して該物品に加わる衝撃を和らげ該物品の姿勢を固定する長方形状の緩衝固定板を備え、該緩衝固定板は、一つの短辺側の縁辺が前記包装用箱の端壁の縁辺、または側壁、底壁、天壁の長手方向の縁辺と、互いに相手方に対して折り曲げるための折曲線を共有して連続し一体的に形成され、かつ前記収納空間の両端部に、コの字の右側が前記包装用箱の中心部に臨み断面の少なくとも一部がコの字形を成すスペーサーと、L字の一辺を成す部分の板面が前記包装用箱の端壁と接触している断面L字形中敷き、のいずれかの形態を構成するように折り曲げて配置され、また、前記緩衝固定板は、一方の長辺側の縁辺に板面に連なる矩形状突起を有し、前記包装用箱の側壁、底壁または天壁の内面の縁辺部に、前記突起が差し込み可能な複数の矩形状孔部が形成され、そのうちの一つの矩形状孔部に前記矩形状突起が差し込まれていることを特徴とする包装用箱。
【請求項2】
折り曲げ可能な材質の板状部材によって形成され、略長方形状を成す底壁と、これに対向する天壁と、互いに対向する一対の側壁と、互いに対向する一対の端壁とにより略直方体形状に形成された包装用箱であって、内部に前記側壁の延在方向に沿って長尺の物品が収納可能な収納空間を備え、該収納空間の両端部に、前記物品の両端面にそれぞれ当接して該物品に加わる衝撃を和らげ該物品の姿勢を固定する長方形状の緩衝固定板を備え、該緩衝固定板は、一つの短辺側の縁辺が前記包装用箱の端壁の縁辺、または側壁、底壁、天壁の長手方向の縁辺と、互いに相手方に対して折り曲げるための折曲線を共有して連続し一体的に形成され、かつ前記収納空間の両端部に、コの字の右側が前記包装用箱の中心部に臨む断面コの字形スペーサーと、L字の一辺を成す部分の板面が前記包装用箱の端壁内面と接触している断面L字形中敷き、のいずれかの形態を構成するように折り曲げて配置され、また、前記断面コの字形スペーサーのコの字の端を成す縁辺は、前記包装用箱の端壁内面と必ず当接するように構成されていることを特徴とする包装用箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−163202(P2010−163202A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8914(P2009−8914)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】