説明

包装用袋

【課題】合成樹脂製気泡シートを用いた包装用袋において、被包装物の表面に気泡パターンが転写することを防止する。
【解決手段】被包装物を内部に収納可能であり、被包装物を出し入れ可能な開口部11が設けられた外側袋体10と、被包装物を内部に収納可能であり、袋体10の内部において、開口部11を除いた袋体10の内壁を覆うように設けられた袋状の多孔質シート13とを備える包装用袋において、袋体10は、少なくとも凹凸シート101と平坦シート102、103とが接合され、気体が密閉された多数の気泡部104が形成されている合成樹脂製気泡シート100から構成されており、多孔質シート13の一部が袋体10に固定されている。多孔質シート13は、不織布から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製気泡シートからなる包装用袋に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の車両用バンパー等の車両用部品は、例えば補修部品として輸送されることが多い。また、近年ではノックダウン生産のために車両用部品が他国に輸送されるケースも増加している。車両用部品の輸送時には、保護のために何らかの包装をする必要がある。このような車両用部品(バンパー)を包装するために合成樹脂製気泡シートを用いることが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−205818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、多数の気泡部を有する気泡シートは、表面に気泡部のパターンが現れている。このため、車両用部品のような被包装物の表面が柔軟性を有している場合には、気泡シートの気泡パターンが被包装物の表面に転写(スタンピング)されるおそれがある。このように、気泡シートの気泡パターンが被包装物の表面に転写された場合、被包装物の品質の低下につながる。特に被包装物の表面に塗装が施されている場合には、塗装面が完全に乾燥硬化するのに長期間を必要とするため、特にこのような問題が生じやすい。
【0004】
そこで本発明は、合成樹脂製気泡シートを用いた包装用袋において、被包装物の表面に気泡パターンが転写することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の発明は、被包装物を内部に収納可能であり、被包装物を出し入れ可能な開口部(11)が設けられた外側袋体(10)と、袋体(10)の内部において、開口部(11)を除いた袋体(10)の内壁を覆うように設けられた多孔質シート(13)とを備え、
袋体(10)は、少なくとも凹凸シート(101)と平坦シート(102、103)とが接合され、気体が密閉された多数の気泡部(104)が形成されている合成樹脂製気泡シート(100)から構成されており、多孔質シート(13)の一部が袋体(10)に固定されていることを特徴としている。
【0006】
これにより、被包装物が多孔質シート(13)で覆われるため、袋体(10)の内壁面に直に接触することがなく、気泡シート(100)の気泡パターンが被包装物の表面に転写することを防止できる。また、多孔質シート(13)は、被包装物との接触面積が小さいので、多孔質シート(13)自体が被包装物の表面に張り付くことがない。このため、被包装物の表面に塗装が施されている場合や被包装物を包装した状態で長期間保管する必要がある場合のような被包装物の表面に気泡パターンが転写しやすい状況に、本発明の包装用袋は特に有効である。
【0007】
さらに、多孔質シート(13)の一部が袋体(10)に固定されていることにより、多孔質シート(13)の他の部分は袋体(10)に固定されていないこととなり、多孔質シート(13)は被包装物とともに袋体(10)内部で動くことができる。このため、被包装物が多孔質シート(13)を介して袋体(10)に接触する部分が変化するので、気泡シート(100)の気泡パターンが被包装物の表面に転写することをより効果的に防止できる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、多孔質シート(13)は、袋体(10)における対向する一対の端部で袋体(10)に固定されていることを特徴としている。これにより、多孔質シート(13)が離れた二箇所で袋体(10)に固定されることとなり、多孔質シート(13)が袋体(10)の内部で必要以上に移動することを防止できる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明では、多孔質シート(13)は、不織布から構成されていることを特徴としている。不織布は、柔軟性を有しているため、被包装物を包装した場合に被包装物に傷が付きにくい。
【0010】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態の包装用袋は、車両用バンパーの包装に好適に用いることができる。
【0012】
図1は本実施形態の包装用袋の構成を示しており、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A断面図である。図1(a)に示すように、包装用袋は内部に被包装物を収納可能な袋体10を備えている。
【0013】
袋体10は、合成樹脂製気泡シート100から構成されている。図2(a)は合成樹脂製気泡シート100の斜視図であり、図2(b)は合成樹脂製気泡シート100を分解した状態を示す斜視図である。
【0014】
図2(a)、(b)に示すように、気泡シート100は合成樹脂製中空部材として構成されている。気泡シート100は、凹凸シート101と、凹凸シート101の両面に接合された2枚の平坦シート102、103とからなる3層構造となっている。凹凸シート101には複数の中空状(例えば円柱状)の突起部101aがエンボス加工されており、凹凸シート101の突起部先端側(図1の上側)に第1平坦シート102が接合されている。また、凹凸シート101の突起部開口側(図1の下側)には第2平坦シート103が接合され、これにより空気が封入された気泡部104が形成される。気泡シート100は、柔軟性を有しており、気泡部104により緩衝効果に優れるので、包装材料として好適に用いることができる。図2(a)において破線で示すように、気泡シート100の表面には、気泡パターンが現れている。気泡パターンは、凹凸シート101の突起部101aと平坦シート102、103とが接触する部位に形成される。本実施形態では、突起部101aが円柱状であるので、気泡パターンはいわゆる水玉模様となっている。
【0015】
本実施形態では、気泡シート100を構成する合成樹脂として、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂を用いている。気泡シート100は、本実施形態のように柔軟性が必要とされる場合には単位面積当り重量(目付重量)を30〜300グラム/m2とすることが望ましい。車両バンパーのような被包装物は、大きな部材ゆえに被包装物を収納した状態で作業者が床を引きずるような状況も考えられる。このため、気泡シート100は、ポリエチレンより耐摩耗性にすぐれたポリプロピレンを重量比で60%以上含有していることが望ましく、さらに目付重量を100〜150グラム/m2とすることが望ましい。
【0016】
図1に戻り、袋体10は長方形状の平袋として構成されている。袋体10は、被包装物である被包装物を収納可能な大きさであればよく、具体的寸法は車種に応じて適宜選択すればよい。袋体10の一面側には、開口部11が設けられている。開口部11は、袋体10の一端側から他端側にかけて形成されている。袋体10における開口部11と平行な辺は半折り又は熱融着されている。開口部11と直交する辺には、熱融着により2枚のシートが接合されたシール部12が設けられている。
【0017】
袋体10の内部には、多孔質シート13が設けられている。多孔質シート13は、袋体10内に収納される被包装物に気泡シート100の気泡パターンが転写することを防止するために、袋体10の内壁面と被包装物との間に位置するシート状部材である。多孔質シート13は、表面が凹凸状となっている多孔質材料からなり、被包装物との接触面積が少なくなっている。本実施形態では、多孔質シート13として不織布を用いている。不織布は、繊維を織らずに絡み合わせてシート状にしたものであり、柔軟性を有しており、被包装物を包装した場合に被包装物に傷が付きにくい。
【0018】
多孔質シート13は、袋体10とほぼ同一寸法の袋状部材として構成され、開口部11を除いて袋体10の内壁全体に覆うように設けられている。つまり、本実施形態の包装用袋は袋体10と多孔質シート13とからなる二重構造の袋として構成されている。多孔質シート13は、その一部でのみ袋体10に固定されており、大部分は袋体10に固定されていない。具体的には、多孔質シート13は、袋体10のシール部12でのみ袋体10に固定されており、多孔質シート13は一対の端部でのみ袋体10に固定されている。シール部12以外では、多孔質シート13は袋体10に固定されておらず、単に袋体10と重なった状態となっている。
【0019】
本実施形態の包装用袋により被包装物を包装する際には、開口部11から被包装物を袋体10および多孔質シート13の内部に挿入する。その後、開口部11をテープなどで閉鎖することで、包装作業が完了する。
【0020】
以上説明した本実施形態の包装用袋によれば、被包装物が多孔質シート13で覆われるため、袋体10の内壁面に直に接触することがなく、気泡シート100の気泡パターンが被包装物の表面に転写することを防止できる。また、多孔質シート13は、被包装物との接触面積が小さいので、多孔質シート13自体が被包装物の表面に張り付くことがない。このため、被包装物の表面に塗装が施されている場合や被包装物を包装した状態で長期間保管する必要がある場合のような被包装物の表面に気泡パターンが転写しやすい状況に、本実施形態の包装用袋は特に有効である。
【0021】
特に本実施形態の包装用袋では、多孔質シート13が一部でのみ袋体10に固定されており、多孔質シート13の他の部分は袋体10に固定されていないので、多孔質シート13は被包装物とともに袋体10内部で動くことができる。このため、被包装物が多孔質シート13を介して袋体10に接触する部分が変化するので、気泡シート100の気泡パターンが被包装物の表面に転写することをより効果的に防止できる。
【0022】
また、本実施形態の包装用袋では、多孔質シート13は、袋体10における対向する一対の端部で袋体10に固定されている。このため、多孔質シート13が離れた二箇所で袋体10に固定されることとなり、多孔質シート13が袋体10の内部で必要以上に移動することを防止でき、袋状である多孔質シート13の形状を維持しやすい。
【0023】
また、被包装物を収納した状態で包装用袋を移動させる場合には、袋体10の内部で被包装物が移動することが想定されるが、このような場合でも袋体10内部で多孔質シート13が被包装物とともに移動するので、被包装物の表面が袋体10の内壁面との摩擦により傷つくことを抑制することができる。
【0024】
また、段ボール製包装容器は、被包装物を包装した後の容積が容器自体の容積に左右されるが、本実施形態の包装用袋は、柔軟性を有する気泡シート100から構成されているので、被包装物の形状に応じて変形するので嵩張らず、包装された状態の被包装物の大きさが包装前より大幅に大きくなることがない。このため、本実施形態の包装用袋は、被包装物を包装された状態をコンパクトにすることができる。このため、包装用袋で被包装物を包装した際の収納スペースを削減することができる。さらに気泡シート100は、包装に用いる前の資材として保管する際にも、段ボール箱に比較して保管スペースが少なくて済む。
【0025】
また、袋体10を構成する合成樹脂製気泡シート100は、容易にリサイクルすることができるオレフィン系樹脂を用いているので、環境面でも好ましい。さらに多孔質シート13として用いている不織布は通常、合成樹脂製気泡シート100と同質のポリプロピレンから構成されているので、リサイクルの際に分別処理を行う必要がない。
【0026】
(他の実施形態)
なお、包装用袋の袋体10は上記実施形態で開示した構成に限らず、種々改変可能である。例えば、図3に示すように、袋体10の開口部11における対向する縁部を重なり合う構成としてもよい。図3に示す例では、図3(a)における上側の縁部が上側に位置し、図3(a)における下側の縁部が下側に位置するように重なり合う。また、図4に示すように、開口部11における一面側が他面側より長く形成することで、袋体10の開口部11にベロ14を設けてもよい。この場合には、袋体10および多孔質シート13の内部に被包装物を収納した後で、ベロ14を折曲げて開口部11を閉じるようにすればよい。
【0027】
また、上記実施形態では、袋体10を長方形状の平袋として構成したが、平袋に限らず、例えば側辺や底部にマチが設けられたガゼット袋として構成してもよく、長方形状に限らず、他の形状としてもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、多孔質シート13を袋体10における開口部11と直交する一対の辺で固定したが、固定位置はこれに限定されるものではない。多孔質シート13はその一部が袋体10に固定されていればよく、例えば、袋体10の開口部11のみで袋体10と多孔質シート13とを固定してもよい。
【0029】
また、上記実施形態では、多孔質シート13として不織布を用いたが、これに限らず、不織布以外の布、和紙やクラフト紙などの紙、押出発泡成形により成形される発泡シートなどの多孔質シートを用いることができる。
【0030】
また、上記実施形態では、包装用袋で包装する被包装物を車両用バンパーとしたが、これに限らず、例えば液晶パネルなどの物品を被包装物としてもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、袋体10を構成する気泡シート100を凹凸シート101の両面に2枚の平坦シート102、103を接合した3層品を用いたが、1枚の平坦シート102が凹凸シート101における突起部101aの開口部側に接合された2層品を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)は包装用袋の正面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図2】(a)は合成樹脂製気泡シートの斜視図であり、(b)は合成樹脂製気泡シートを分解した状態を示す斜視図である。
【図3】(a)は包装用袋の変形例を示す正面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図4】(a)は包装用袋の変形例を示す正面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10…袋体、11…開口部、12…シール部、13…多孔質シート、100…合成樹脂製気泡シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被包装物を内部に収納可能であり、前記被包装物を出し入れ可能な開口部(11)が設けられた袋体(10)と、
前記袋体(10)の内部において、前記開口部(11)を除いた前記袋体(10)の内壁を覆うように設けられた多孔質シート(13)とを備え、
前記袋体(10)は、少なくとも凹凸シート(101)と平坦シート(102、103)とが接合され、気体が密閉された多数の気泡部(104)が形成されている合成樹脂製気泡シート(100)から構成されており、
前記多孔質シート(13)の一部が前記袋体(10)に固定されていることを特徴とする包装用袋。
【請求項2】
前記多孔質シート(13)は、前記袋体(10)における対向する一対の端部で前記袋体(10)に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の包装用袋。
【請求項3】
前記多孔質シート(13)は、不織布から構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装用袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−95302(P2010−95302A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269462(P2008−269462)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】