説明

包装箱

【課題】簡単に不正開封ができないようにするとともに、不正開封がされた場合でもそのことを容易に識別することのできる包装箱を提供すること。
【解決手段】天面蓋10の差し込み片13に前側面7の上縁部に外側から差し込まれる切り込み形成された舌片14を備え、この舌片14が差し込まれる前側面7の部分に外側から押圧されることにより破断する開封部20を備える。さらに、舌片14に係止部を設け、開封部20に舌片14を前側面7の外側に差し込んだ際に、この係止部に係合可能な係合部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収納する紙製の包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
商業経済において、一般消費財の多くは、内部の商品を保護し、商品を消費者にアッピールし、消費者の購買意欲を高めるために、包装箱に収納されて販売されている。包装箱は大型のものは段ボールが使用され、小型のものは厚紙が使用されている。図7は従来の厚紙製の包装箱の一例を示しており、1枚の厚紙をプレス成形により型取りしたものを組み立てたものである。図7において、この包装箱は、底面101と前後左右の側面102、103、104、105と天面蓋106、左右の補助蓋107、108および差し込み片109とで構成されている。前側面102の中央上縁から下部にかけて、開封のためのミシン目で囲まれた開封部110が形成されている。天面蓋106の先端部に連設された差し込み片109を前側面102の内側に差し込んで、封緘テープ111を、天面蓋106から開封部110にかけて貼着するようにしてある。
【0003】
このような包装箱においては、内部の商品が盗まれたり、摩り替えられたり、収納商品が汚染されないように、最終的に封緘テープ111やラベルにより封止されるが、それでも不正を行おうとする者がいる。例えば、図7の包装箱では、図8に示すように、天面蓋106と前側面102との間の隙間112にカッターナイフの刃先を差し込んで、封緘テープ111を切断するような不正が行われる。このような包装箱の不正開封や改ざんは極力防止しなければならず、それを目的とした発明もなされている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−298049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
包装箱の不正開封防止は、法規で規定されている場合もある。例えば、薬事法施行規則第59条には、「封を開かなければ医薬品を取り出すことができず、かつ、封を開いた後には容易に現状に復することができないように施さなければならない。」と規定されている。特に、上記のようにカッターナイフ等により封緘テープを切断した場合には、目視では切断されていることを確認しにくいので、そのまま商品が流通して消費者の手に渡ってしまい、信頼性および品質の点で問題が生じることがあった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、簡単に不正開封ができないようにするとともに、不正開封がされた場合でもそのことを容易に識別することのできる包装箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の包装箱は、底面と前後左右の4つの側面と後側面の上縁部に連設された天面蓋とを備え、前記天面蓋の前端部に連設された差し込み片を前側面の内側に差し込んで蓋をし、前記天面蓋と前記前側面との間に封緘テープまたはラベルを貼着して固定する包装箱において、前記天面蓋の差し込み片に前記前側面の上縁部に外側から差し込まれる切り込み形成された舌片を備え、前記舌片が差し込まれる前記前側面の部分に外側から押圧されることにより破断して前記前側面から前記舌片とともに離脱可能な開封部を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、天面蓋と前側面との隙間は、前側面の外側に差し込まれた舌片により中断されるので、封緘テープまたはラベルを天面蓋から開封部にかけて貼着することにより、カッターナイフの刃先を天面蓋と前側面との隙間に差し込んで封緘テープまたはラベルを切断しようとしても、容易に切断することができない。このため、不正開封を防止することができる。また、開封部を指で押し込むことにより不正に開封した場合には、開封したことを開封部の離脱により容易に見分けることができる。
【0008】
また、本発明の包装箱は、前記舌片に係止部を設け、前記開封部に、前記差し込み片の前記前側面に対する差し込み終了時に前記係止部に係合する係合部を備えたことを特徴とする。
【0009】
このような構成、例えば舌片の両側に連続して係止部を切り込み形成し、開封部の上縁両側にこの係止部に係合可能な係合片を設けることにより、差し込み片を前側面に完全に差し込んだ場合には、舌片の両側に形成した係止部が開封部に形成した係合部に係合してロックされるので、たとえカッターナイフ等で封緘テープまたはラベルを切断したとしても、天面蓋を容易に開けることができず、無理矢理に開ければ、包装箱が変形したり、係合部が破損するので、不正開封を容易に見分けることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の包装箱は、天面蓋の差し込み片に前側面の上縁部に外側から差し込まれる切り込み形成された舌片を設けるとともに、舌片が差し込まれる前側面の部分に外側から押圧されることにより破断して前側面から舌片とともに離脱可能な開封部を備えているので、簡単に不正開封ができず、また、不正開封がされた場合にはそのことを容易に識別することができるため、収納商品の信頼性および品質を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本実施の形態におけるプレス成形で型抜きされた包装箱の展開した状態を示している。図1において、底面は主底面1、右補助底面2、押え底面3および左補助底面4で構成される。側面は後側面5、右側面6、前側面7、左側面8および糊代9で構成される。天面は天面蓋10、右補助蓋11、左補助蓋12および差し込み片13で構成される。天面蓋10の前端縁に連設された差し込み片13の中央部には、半円状の舌片14が切り込み形成され、舌片14の両側には、舌片14とは逆向きの小さな円弧状の係止部15、16が連続して切り込み形成されている。さらに、舌片14の中央部には縦方向にスリット17が形成され、このスリット17により舌片14が引き起こしやすくなっている。一方、前側面7の上縁部7aには、係止部15、16に係合可能な疣状の係合部18、19が切り込み形成されており、その下部には、親指程度の大きさに周囲をミシン目20aで囲まれた開封部20が形成されている。また、右補助底面2および左補助底面4には、それぞれ糊代21、22が連設されている。
【0012】
図2は本実施の形態における包装箱の組み立て過程を説明する斜視図である。右補助底面2および左補助底面4の糊代21および22のみが外側に折り曲げられ、その他は全て内側に折り曲げられる。右補助底面2および左補助底面4のみが外側に折り曲げられるのは、糊代21および22の内側に外側から糊を塗布しやすくするためである。まず、主底面1を内側に折り曲げ、各側面5、6、7、8を順次内側に折り曲げながら、押さえ底面3を主底面1の外側に折り曲げ、さらにその外側に補助底面2、4を折り曲げる。次いで、左側面8に連設された糊代9の外面に糊を塗布して後側面5の内面端部に接合し、右補助底面2および左補助底面4の糊代21および22の内面に外側から糊を塗布してそれぞれ主底面1および押え面3に接合する。これにより図3のような箱が完成する。そして、この箱に商品を収納して、差し込み片13を前側面7の内側に差し込んで天面蓋10を閉じる。
【0013】
図4は天面蓋10の差し込み片13を前側面7の内側に差し込む際の動作の過程を示している。まず図4(a)において、差し込み片13の先端部を前側面7の内側に差し込み、舌片14が前側面7の外側に出るように差し込み片13を押し込んでいく。そして、図4(b)に示すように、舌片14の両側の係止部15、16が係合部18、19に近づくようにさらに押し込んでいくと、係止部15、16が係合部18、19の切り込み18a、19aの中に入り込んでいき、さらに押し込んで完全に押し込まれると、図4(c)のように、係止部15、16が係合部18、19の下に潜り込んで係合部18、19と同一面内で係合する。この最終状態において、差し込み片13の上縁13aと前側面7との上縁7aとが一致する。これにより、差し込み片13を持ち上げても、係止部15、16が係合部18、19に引っ掛かって簡単には持ち上げることができない。無理に持ち上げようとすると、差し込み片13が変形するか、または係合部18、19が変形または破断される。したがって、不正開封を行った場合には、そのことを容易に識別することができる。
【0014】
図4aは、差し込み片13の舌片と前側面7との係合の別の態様を示している。差し込み片13の舌片24は、差し込み片13の上縁13aから半円状に形成され、その下部には矢印形状の係止部25が連設されている。係止部25の中央部には、下端部から舌片24にかけて上下方向にスリット25aが形成されている。一方、前側面7の上縁7aから下方にかけて周囲をミシン目26aで囲まれた開封部26が形成され、開封部26の中には、係止部25が差し込まれる係合部であるスリット27が形成されている。差し込み片13の上縁13aから係止部25の先端までの寸法と前側面7の上縁7aからスリット27までの寸法は略等しく、係止部25の幅とスリット27の幅は略等しい。
【0015】
差し込み片13の先端部を前側面7の内側に差し込み、舌片24が前側面7の外側に出るように差し込み片13を押し込んでいく。そして、舌片14の係止部25を前側面7のスリット27の中に押し込んでいくと、係止部25がスリット25aのために内側に撓んでスリット27の中に入り込んでいき、差し込み片13の上縁13aと前側面7との上縁7aとが一致するまで押し込んだ時には、係止部25の先端部はスリット27の中に完全に入り込み、係止部25は紙の弾性で元の状態に復帰し、スリット27に係止される。したがって、差し込み片13を無理に持ち上げようとしても、差し込み片13が変形するか、または係止部25が変形または破壊されるので、不正開封を行った場合には、そのことを容易に識別することができる。なお、係止部25にスリット25aを設けなくても、係止部25を斜めにして片方からスリット27に挿入し、片方がスリット27に入った後は、係止部25をその方向にずらして、もう一方をスリット27に差し込むようにしてもよい。また、係止部25の先端形状は、突起状であれば任意に設定可能である。
【0016】
この包装箱内に商品を詰め、上記のようにして、天面蓋10を閉じた後、図5に示すように、封緘テープ23またはラベルを天面蓋10から舌片14を通って開封部20にかけて貼着する。これにより包装が完了する。このような包装箱は、天面蓋10と前側面7との間の隙間が舌片14によって中断され、その上に封緘テープ23が貼着されているので、封緘テープ23をカッターナイフ等で切断することが難しく、不正開封しようとする者の意欲を殺ぐことができる。さらに、カッターナイフ等で封緘テープ23を切断できたとしても、図4、図4aのようなロック構造により、天面蓋10を容易に開けることができない。さらに、前側面の開封部20を指で押し込んで、開封部20共々天面蓋10を開けた場合には、図6に示すように、前側面7に開封部20が離脱した形跡が残るので、開封したことが一目瞭然となる。したがって、不正に開封した場合には、そのことを容易に認識することができる。
【0017】
以上の説明では、厚紙を利用した包装箱について説明したが、段ボールを利用した包装箱についても同様に実施可能であり、収納する商品の種別は問わない。また、封緘テープまたはラベルは、一般的なものでも実施可能であるが、容易に切断できないもの、容易に切断できるが切断面ががたがたになって切断したことが一目瞭然になるようなもの、または剥がした痕跡が残るようなテープまたはラベルを使用すると、よりセキュリティ性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態における包装箱の展開平面図である。
【図2】本発明の実施の形態における包装箱の組み立てを説明する斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態における包装箱の組み立て状態の斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態における係止部と係合部との係合を説明する部分正面図である。
【図4a】本発明の実施の形態における別の係止部と係合部との係合を説明する部分正面図である。
【図5】本発明の実施の形態における包装箱の完成状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態における包装箱の開封状態を示す斜視図である。
【図7】従来の包装箱を示す斜視図である。
【図8】従来の包装箱の不正開封を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
1 主底面
2 右補助底面
3 押え底面
4 左補助底面
5 後側面
6 右側面
7 前側面
8 左側面
9 糊代
10 天面蓋
11 右補助蓋
12 左補助蓋
13 差し込み片
14、24 舌片
15、16、25 係止部
17 スリット
18、19、27 係合部
20、26 開封部
21、22 糊代
23 封緘テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と前後左右の4つの側面と後側面の上縁部に連設された天面蓋とを備え、前記天面蓋の前端部に連設された差し込み片を前側面の内側に差し込んで蓋をし、前記天面蓋と前記前側面との間に封緘テープまたはラベルを貼着して固定する包装箱において、前記天面蓋の差し込み片に前記前側面の上縁部に外側から差し込まれる切り込み形成された舌片を備え、前記舌片が差し込まれる前記前側面の部分に外側から押圧されることにより破断して前記前側面から前記舌片とともに離脱可能な開封部を備えたことを特徴とする包装箱。
【請求項2】
前記舌片に係止部を設け、前記開封部に、前記差し込み片の前記前側面に対する差し込み終了時に前記係止部に係合する係合部を備えたことを特徴とする請求項1記載の包装箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4a】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−191178(P2007−191178A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10029(P2006−10029)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(390008707)丸金印刷株式会社 (8)
【Fターム(参考)】