説明

包装箱

【課題】コーナーカット部が掌や指関節にしっかりと引っ掛かり、持ち易い改良された包装箱を提供する。
【解決手段】上面板25、底面板21、側面板11,15を有して形成される帯状の胴部、内フラップ31,35、外フラップ41,45を備えてなるラップアラウンド式の包装箱であって、上面4N角形を形成するために、上面板、底面板は四隅に切り欠き角部を有し、内フラップと胴部とが接続する箇所において折り曲げ連接側片38が介在し、側面板は、折り曲げ連接片との接合部における折目線を山折りすることにより形成された第1の基準稜線の近傍に、平行に配置された少なくとも2本の防滑性塗料の側面板塗布ラインが塗布され、外フラップは、内フラップと折り曲げ連接片との接合部における折目線を山折りすることにより形成された第2の基準稜線の近傍に、平行に配置された少なくとも2本の防滑性塗料の外フラップ塗布ラインが塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面板、底面板、およびこれらを連結する側面板を有して形成される帯状の胴部、ならびに内フラップおよび外フラップを備えてなるラップアラウンド式の包装箱であって、上面から見た形態が4N角形(Nは2以上の整数を表す)の形態を備えてなる包装箱(いわゆるコーナーカットカートン)に関する。
【背景技術】
【0002】
上面から見た形態が4N角形(Nは2以上の整数を表す)の形態を備えてなる包装箱、例えば、ダンボールケースの四隅に切り欠き角部(コーナーカット部)を面取りして10面体にしたコーナーカットカートンに関して、本出願人は、特許3780249号を取得している。この特許によれば、自動梱包の容易性・確実性に優れ、しかも箱にしっかり感を与え、異物も入りにくい形態の包装箱を得ることができる。デザイン性および取り扱い性も好評である。
【0003】
しかしながら、このようなコーナーカットカートンに関しては、特定の持ち方、例えば、図7に示されるようにコーナーカットカートンを縦にして身体正面で抱える場合、切り欠き角部(コーナーカット部)が掌や指関節に引っ掛かり難くなる。そのため、掌から滑ったり、下部を支える指先のみに力が掛かったりして、持ち難いと感じることがある。このような不便さは、多少なりとも商品そのものへのマイナスイメージに繋がってしまうおそれがある。
【0004】
【特許文献1】特許3780249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような課題を解決するために本願発明は創案されたものであって、その目的は、いわゆるコーナーカットカートンを縦にして身体正面で抱える場合であっても、コーナーカット部が掌や指関節にしっかりと引っ掛かり、持ち難いと感じることが極めて少なくなり、しかもコストアップに繋がることのない改良された包装箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明は、上面板、底面板、およびこれらを連結する側面板を有して形成される帯状の胴部、ならびに内フラップおよび外フラップを備えてなるラップアラウンド式の包装箱であって、当該包装箱は、上面4N角形(Nは2以上の整数を表す)を形成するために、前記上面板および底面板は四隅に切り欠き角部(コーナーカット部)を有し、内フラップと胴部とが接続する箇所において折り曲げ連接側片が介在されており、前記上面板は、その表面全域に防滑性塗料が塗布されており、前記下面板は、その表面全域に対して、y%の面積Aに防滑性塗料が塗布されており(ただしyは、少なくとも75%)、残余の(100−y)%の面積Bに防滑性塗料が塗布されておらず、前記側面板は、前記側面板と前記折り曲げ連接片との接合部における折目線を山折りすることにより形成された第1の基準稜線の近傍に、第1の基準稜線に平行に配置された少なくとも2本の防滑性塗料の側面板塗布ラインが塗布されており、前記外フラップは、前記内フラップと前記折り曲げ連接片との接合部における折目線を山折りすることにより形成された第2の基準稜線の近傍に、第2の基準稜線に平行に配置された少なくとも2本の防滑性塗料の外フラップ塗布ラインが塗布されており、前記第1の基準稜線に平行に配置された前記2本の側面板塗布ラインは、第1の基準稜線から側面板側に、第1の基準稜線に沿った防滑性塗料の第I−1塗布ライン、および第1の基準稜線から側面板側にP1mm(ただし、P1=20〜30mm)離れた位置の平行ラインを中心にして、第1の基準稜線と実質的に平行に形成された防滑性塗料の第I−2塗布ラインであり、前記第2の基準稜線に平行に配置された2本の外フラップ塗布ラインは、第2の基準稜線から外フラップ側に、第2の基準稜線に沿った防滑性塗料の第II−1塗布ライン、および第2の基準稜線から外フラップ側にP2mm(ただし、P2=20〜30mm)離れた位置の平行ラインを中心にして、第2の基準稜線と実質的に平行に形成された防滑性塗料の第II−2塗布ラインであり、前記第I−1塗布ライン、第I−2塗布ライン、第II−1塗布ライン、および第II−2塗布ラインの箱全体に形成される総和面積をStとした場合、前記面積Bとの関係で、下記式(1)
B≧St …式(1)
が成立するように第I−1塗布ライン、第I−2塗布ライン、第II−1塗布ライン、および第II−2塗布ラインが形成されているように構成される。
【0007】
また、本発明の包装箱の好ましい態様として、前記第I−1塗布ラインの幅は、少なくとも5mmであり、前記第I−2塗布ラインの幅は少なくとも8mmであり、前記第II−1塗布ラインの幅は、少なくとも5mmであり、前記第II−2塗布ラインの幅は少なくとも8mmであるように構成される。
【0008】
また、本発明の包装箱の好ましい態様として、前記第I−1塗布ラインの幅は、5〜9mmであり、前記第I−2塗布ラインの幅は8〜12mmであり、前記第II−1塗布ラインの幅は、5〜9mmであり、前記第II−2塗布ラインの幅は8〜12mmであるように構成される。
【0009】
また、本発明の包装箱の好ましい態様として、前記下面板における防滑性塗料が塗布されている面積Aのエリアは、下面板の外枠を含む外周縁エリアであり、前記下面板における防滑性塗料が塗布されていない面積Bのエリアは、下面板の中心エリアであるように構成される。
【0010】
また、本発明の包装箱の好ましい態様として、前記下面板における防滑性塗料が塗布されていない面積Bのエリアは、下面板の中心エリアであり、前記下面板の外形形状と略相似の長方形形状をなすように構成される。
【0011】
また、本発明の包装箱の好ましい態様として、Nは2であり8角形箱であるように構成される。
【0012】
また、本発明の包装箱の好ましい態様として、折り曲げ連接側片の長さを規定する前記第1の基準稜線と前記第2の基準稜線との間の距離が、25〜30mmであるように構成される。
【0013】
また、本発明の包装箱の好ましい態様として、箱内に収納される容器製品物が缶ビールであるように構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上面板、底面板、およびこれらを連結する側面板を有して形成される帯状の胴部、ならびに内フラップおよび外フラップを備えてなるラップアラウンド式の包装箱であって、当該包装箱は、上面4N角形(Nは2以上の整数を表す)を形成するために、前記上面板および底面板は四隅に切り欠き角部(コーナーカット部)を有し、内フラップと胴部とが接続する箇所において折り曲げ連接側片が介在されており、前記上面板は、その表面全域に防滑性塗料が塗布されており、前記下面板は、その表面全域に対して、y%の面積Aに防滑性塗料が塗布されており(ただしyは、少なくとも75%)、残余の(100−y)%の面積Bに防滑性塗料が塗布されておらず、前記側面板は、前記側面板と前記折り曲げ連接片との接合部における折目線を山折りすることにより形成された第1の基準稜線の近傍に、第1の基準稜線に平行に配置された少なくとも2本の防滑性塗料の側面板塗布ラインが塗布されており、前記外フラップは、前記内フラップと前記折り曲げ連接片との接合部における折目線を山折りすることにより形成された第2の基準稜線の近傍に、第2の基準稜線に平行に配置された少なくとも2本の防滑性塗料の外フラップ塗布ラインが塗布されており、前記第1の基準稜線に平行に配置された前記2本の側面板塗布ラインは、第1の基準稜線から側面板側に、第1の基準稜線に沿った防滑性塗料の第I−1塗布ライン、および第1の基準稜線から側面板側にP1mm(ただし、P1=20〜30mm)離れた位置の平行ラインを中心にして、第1の基準稜線と実質的に平行に形成された防滑性塗料の第I−2塗布ラインであり、前記第2の基準稜線に平行に配置された2本の外フラップ塗布ラインは、第2の基準稜線から外フラップ側に、第2の基準稜線に沿った防滑性塗料の第II−1塗布ライン、および第2の基準稜線から外フラップ側にP2mm(ただし、P2=20〜30mm)離れた位置の平行ラインを中心にして、第2の基準稜線と実質的に平行に形成された防滑性塗料の第II−2塗布ラインであり、前記第I−1塗布ライン、第I−2塗布ライン、第II−1塗布ライン、および第II−2塗布ラインの箱全体に形成される総和面積をStとした場合、前記面積Bとの関係で、下記式(1)
B≧St …式(1)
が成立するように第I−1塗布ライン、第I−2塗布ライン、第II−1塗布ライン、および第II−2塗布ラインが形成されているので、いわゆるコーナーカットカートンを縦にして身体正面で抱える場合であっても、コーナーカット部が掌や指関節にしっかりと引っ掛かり、持ち難いと感じることが極めて少なくなるという効果が発現する。しかも、コストアップに繋がることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の包装箱の具体的実施の形態の一例について、図1〜図6を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、本発明の包装箱1の展開された図面の一例を示したものであり、図面で現れている面が箱の表面に該当する。
【0017】
図2〜図4は、本発明の包装箱の構造を理解する上で、本発明の包装箱の組み立て方の一例を示すものであり、図1に示される展開された箱オリジナル紙を自動梱包装置を用いて順次組み立てられていく状況の一例を模式的に示した概略斜視図である。なお、図2(a)は、箱オリジナル紙の内面側であり、図1に示される展開された箱オリジナル紙を裏表ひっくり返した状態に相当する。
【0018】
図5は、本発明の要部を説明するためのコーナーカット部の拡大図である。
図6は、本発明の底部を見た図面である。
【0019】
本発明の包装箱1の形態は、図1に示される展開図および図4(b)の概略組み立て完了図から理解することができる。すなわち、まず最初に、例えば、複数枚(本実施の形態では4枚)の板体11,21,15,25が連なって形成される帯状の胴部で容器製品物(缶ビールなどの缶製品群)を包み込むように収納した後、糊代片9で帯状の胴部を筒状に一体固着することにより筒状の胴部が形成される。
【0020】
その後、図1に示される折り目線61,65,81,85から4つの折り曲げ連接側片38(略長方形形状)が内側に折り込まれ、さらに折り目線62,66,82,86から4つの内フラップ31,31,35,35が内側に折り込まれる。
【0021】
次いで、この折り込まれた4つの内フラップ31,31,35,35の外面の所定位置に糊付けがなされる。
【0022】
次いで、この糊付け面に向けて、折り目線71,75,91,95から4つの外フラップ41,41,45,45が折り込まれ、包装箱1が完成する。この状態は、いわゆる出荷箱に相当する。
【0023】
なお、本発明において、上記包装箱の組み立て手順は、箱の形態を特定するためにその一例を示したものであり、上述の手順に限定されるものではない。
【0024】
本発明における包装箱は、上面板25の胴部を構成する側には、対向する一対の側面板11,15が連接して形成されており、上面板25の開口側の両端部にはそれぞれ上面側の外フラップ45,45が連接して形成されている。
【0025】
同様に、底面板21の胴部を構成する側には、前述した一対の側面板11,15が連接して形成されており、底面板21の開口側の両端部にはそれぞれ下面側の外フラップ41,41が形成されている。
【0026】
さらに、側面板11の開口側の両端部にはそれぞれ折り曲げ連接側片38を介して内フラップ31,31が連接して形成されるとともに、これらによって一体化側面部30が構
成されている。
【0027】
同様に側面板15の開口側の両端部にはそれぞれ折り曲げ連接側片38を介して内フラップ35,35が連接して形成されるとともに、これらによって一体化側面部30が構成されている。
【0028】
本発明においては折り曲げ連接側片38の形成により、内フラップが連接される胴部の角があたかも切り取られた形態をなしている(図1の符号H相当部分)。つまり、切り欠き角部(コーナーカット部)を備えている。そのため、本実施の形態における上面板25からみた平面形状は、箱の角部が切り取られたような変形8角形となっている。本発明においては図示されるような変形8角形が最も好ましい形態と言えるが、折り曲げ連接側片38部分にさらに角部を所定数量、追加形成することにより変形12角形,変形16角形,変形20角形,……とすることができる。すなわち、本発明における包装箱は、上面4N角形(Nは2以上の整数を表し、好ましくはN=2である)の形態をなし、当該形態のために、内フラップが胴部と接続する箇所において折り曲げ連接側片38が介在されており、内フラップが連接される胴部の角が切り取られた形態をなしているのである。4N角形とするのは、コーナー部(角部)のスペースはいわゆるデッドスペースとなるため不要とも考えられること、さらにはハンドリング性の向上を図るためや、視覚デザイン性の向上のためである。
【0029】
このような本発明の包装箱は、例えば、店頭で中身の容器製品物を陳列する際に、予め包装箱の側面板11,15に形成された一対の引裂き開始片12,13,16,17をそれぞれ、側面板11,15の中央から両端に向かって引くことにより、この引裂き開始片11,13,16,17と連なる引裂き帯体4,5が除去され、これに伴い箱体の上下がそれぞれ分断され、上蓋が取り外された後、下部に残った残余の下部箱がそのまま商品を載せる紙トレーとして利用されるようになっている。このようないわゆるジッパー機能は従来一般に形成されるものであるが、必要に応じてそのジッパーの作製を省略してもよい。
以下、図2〜図4に基づき本発明の包装箱の組み立て(自動組み立て・梱包)の一例を経時的に説明する。
【0030】
図2(a)に示されるごとく展開された状態にある包装箱の板状体は、図2(b)に示されるごとく側面板11,15をそれぞれ立ち上げるように折り込まれる。この時、コンベアの片側に位置する(図面の手前側に位置する)折り曲げ連接側片38および内フラップ35、並びに折り曲げ連接側片38および内フラップ31は、順次、図3(a)に示されるように回動する第1のカムローラ100によって折り目線に沿って折り曲げられていく。
そして、折り曲げられた後は、第1のカムローラ100の下流側に設置されたコンベヤガイド200によってその折り曲げ形態が維持され、このままの状態でさらに下流へと搬送される。そして、缶供給の位置まで組み立て途中の箱が搬送されると、図3(b)に示されるように一群の缶ビール製品が供給され(図のCAN FEED)、底面板21の上に所定量の缶ビール製品が挿入・載置される。
【0031】
次いで、図4(a)に示されるように、今度はコンベヤの反対側(缶ビール製品挿入側)に位置する折り曲げ連接側片38および内フラップ35、並びに折り曲げ連接側片38および内フラップ31(未だ折り曲げられていない)は、順次、図4(a)に示されるように回動する第2のカムローラ120によって折り目線に沿って折り曲げられていく。
【0032】
そして、折り曲げられた後は、第2のカムローラ120の下流側に設置されたコンベヤガイド220によってその折り曲げ形態が維持され、このままの状態でさらに下流へと搬送される。
【0033】
次いで、図4(b)に示されるように上面板25が被せられるように折り曲げられるとともに、外フラップ41,45が折り曲げられる。その後、上面板25と糊代片9とが接着されるとともに、外フラップ41,45と内フラップ31,35との接着が行なわれて包装箱の組み立て梱包が完了する。なお、本発明でいう内フラップとは、出荷箱状態で内側に位置するフラップをいい、外フラップとは、出荷箱状態で外側に位置するフラップをいう。
【0034】
(本発明の包装箱の要部の説明)
本発明の包装箱の上面板25(図1)は、その表面全域に防滑性塗料が塗布されている。上面板25には、その商品イメージを反映した見栄えの良いデザインが全面に印刷されており、その印刷面の表面をコートするように防滑性塗料が全面に塗布されている。
【0035】
この一方で、下面板21(図1)は、その表面全域に対して、y%の面積Aに防滑性塗料が塗布されている。残余の(100−y)%の面積Bには、防滑性塗料が塗布されていない。下面板21には、一般に、デザイン印刷はなされておらず、無地のダンボール面の上に防滑性塗料が塗布される。
【0036】
このような下面板21の好適な防滑性塗料の塗布例が、図6に示される。図6に示されるように、下面板21における防滑性塗料が塗布されている面積Aのエリアは、下面板の外枠を含む外周縁エリアであり、下面板21における防滑性塗料が塗布されていない面積Bのエリアは、下面板の中心エリアである。面積Bのエリアは、下面板の中心エリアであって、例えば、下面板21の外形形状と略相似の長方形形状をなしていることが望ましい。下面板21(図1)において防滑性塗料が塗布されている面積Aの割合を示すy(%)の値は、y=75%以上、特に、y=75〜85%とすることが望ましい。上面板25および下面板21に防滑性塗料(防滑ニス)を塗るのは、包装箱を積み重ねた状態で搬送する際の荷ズレの発生等を防止するためである。下面板21におけるy値が75%未満となると、荷ズレのおそれが生じる。
【0037】
本発明では、下面板21における防滑性塗料の塗布量を、上記の塗料塗布効果を発現できる必要最小限の量に抑えて、その結果、余った防滑性塗料を、本願発明の効果を発現させるべく、切り欠き角部(コーナーカット部)近傍の側面板および外フラップの所定のエリアに塗布するものである。コストアップをしないことを前提に発明を構成しているため、防滑性塗料のトータル使用量は、従来の使用量と同等か、それ以下となるように設定される。
【0038】
ここでは、図5に示される一つの切り欠き角部(コーナーカット部;コーナーとも称す)を代表例としてとり挙げて本発明の要部を具体的に説明する。他のコーナーにおいても同様な設定がなされることは勿論である。
【0039】
図5(図1も参照のこと)に示されるように、本発明の包装箱の側面板11は、側面板11と折り曲げ連接片38との接合部における折目線61(65)を山折りすることにより形成された第1の基準稜線(R1)の近傍に、第1の基準稜線(R1)に平行に配置された少なくとも2本の防滑性塗料の側面板塗布ライン111,112が塗布されている。
【0040】
図5(図1も参照のこと)に示されるように、本発明の包装箱の外フラップ41、45は、内フラップ31と折り曲げ連接片28との接合部における折目線62(66)を山折りすることにより形成された第2の基準稜線(R2)の近傍に、第2の基準稜線(R2)に平行に配置された少なくとも2本の防滑性塗料の外フラップ塗布ライン410、420が塗布されている。外フラップ塗布ライン410は、上下の外フラップ41、45の端部のライン411、451の組合せから構成されており、図面では中ほどが抜けて完全なラインではないが、本発明では、このような組合せラインも一本の完成されたラインとして考える。発明本来の効果が発現できるからである。同様に、外フラップ塗布ライン420は、上下の外フラップ41、45の端部のライン412、452の組合せから構成されており、仮に、多少のラインずれが生じていても、本発明では、このような組合せラインも一本の完成されたラインとして考える。発明本来の効果が発現できるからである。
【0041】
図5に示されるように、本発明における第1の基準稜線(R1)に平行に配置された一つの側面板塗布ライン111は、第1の基準稜線(R1)から側面板11側に、第1の基準稜線(R1)に沿った幅L1の防滑性塗料の第I−1塗布ライン111である。もう一つの側面板塗布ライン112は、第1の基準稜線(R1)から側面板11側にP1mm(ただし、P1=20〜30mm)離れた位置の平行ラインを中心にして、第1の基準稜線(R1)と実質的に平行に形成された幅L2の防滑性塗料の第I−2塗布ライン112である。
さらに、図5に示されるように、本発明における第2の基準稜線(R2)に平行に配置された一つの外フラップ塗布ライン410は、第2の基準稜線(R2)から外フラップ側に、第2の基準稜線に沿った幅L3の防滑性塗料の第II−1塗布ライン410である。もう一つの外フラップ塗布ライン420は、第2の基準稜線(R2)から外フラップ側にP2mm(ただし、P2=20〜30mm)離れた位置の平行ラインを中心にして、第2の基準稜線(R2)と実質的に平行に形成された幅L4の防滑性塗料の第II−2塗布ライン420である。
【0042】
このような4本の塗布ライン111、112、410.420は、4つの各コーナー近傍にそれぞれ、同様な仕様で形成されている。このことは、図1に示される包装箱の展開図を参照すれば容易に理解することができる。また、図1に示される展開図より、折り目線61,65,81,85が、それぞれ第1の基準稜線(R1)を形成し、折り目線62,66,82,86が、それぞれ第2の基準稜線(R2)を形成していることがわかる。また、側面板15における防滑性塗料の側面板塗布ライン151および152が、防滑性塗料の第I−1塗布ライン151、および防滑性塗料の第I−2塗布ライン152を、それぞれ形成していることがわかる。
【0043】
本発明において、第I−1塗布ライン111,151、第I−2塗布ライン112,152、第II−1塗布ライン410(411+451)、および第II−2塗布ライン420(412+452)の箱全体に形成されるラインの総和面積をStとした場合、前記下面板21における面積Bとの関係で、下記式(1)
B≧St …式(1)
の関係が成り立つように第I−1塗布ライン、第I−2塗布ライン、第II−1塗布ライン、および第II−2塗布ラインが形成される。コストアップを抑制しつつ、従来の機能に加えて、本発明の持ちやすさという効果を発現させようとするものである。
【0044】
第I−1塗布ライン111,151の幅L1は、少なくとも5mmであり、好ましくは5〜9mmの範囲に設定される。図示のごとくラインの片側は第1の基準稜線(R1)に沿って(接して)形成されている。
【0045】
また、第I−2塗布ライン112,152の幅L2は、少なくとも8mmであり、好ましくは8〜12mmの範囲に設定される。P1は20〜30mmの範囲である。
【0046】
また、第II−1塗布ライン410(411+451)の幅L3は、少なくとも5mmであり、好ましくは5〜9mmの範囲に設定される。
【0047】
また、第II−2塗布ライン420(412+452)の幅L4は、少なくとも8mmであり、好ましくは8〜12mmの範囲に設定される。P2は20〜30mmの範囲である。
【0048】
このような各ラインの仕様は、本願発明者がB≧Stの条件を厳守しながら鋭意実験を行った結果得られたものであり、このような仕様にしてはじめて、いわゆるコーナーカットカートンを縦にして身体正面で抱える場合であっても、コーナーカット部が掌や指関節にしっかりと引っ掛かり、持ちやすいと感じる効果が発現するのである。また、各ラインの塗布仕様は塗布率100%のベタ塗りとすることが好ましいが、塗布率60%以上(好ましくは、75〜95%)の各種の塗りパターン仕様とすることもできる。
【0049】
また、折り曲げ連接側片38が相当するコーナーカット面に防滑性塗料を塗布しても効果は期待できない。コーナーカット面は、指が掛からずに、掌が位置するので手指に対する滑り防止効果が発揮されないことが圧力センサーの解析などから判明している。力のかかる部位は、親指を除く4指の第2・3関節間の指腹、4指の指先、そして親指の第1・2関節の指腹と指先であることが圧力センサーの解析で判明している。
【0050】
これらについては、後述する実験例を参照されたい。
【0051】
なお、折り曲げ連接側片38の長さを規定する第1の基準稜線(R1)と第2の基準稜線(R2)との間の距離は、25〜30mm程度である。
【0052】
なお、防滑性塗料は、いわゆる防滑ニスと呼ばれているものと同義であり、ダンボール等に滑り止めとして使用される公知の種々のものが利用できる。
【実施例】
【0053】
(1)持ち易さ官能評価
現行品仕様と同じ大きさの包装箱において、下記表1に示すような防滑性塗料塗布ラインを形成した各種のサンプルを作製した。
【0054】
これらの各種サンプルについて、男性10名、女性10名のパネラーで、持ち易さの官能試験を行った。
【0055】
・一回目は軍手、二回目は素手で、体の正面に縦に抱える姿勢で包装箱を持った。
・現行品と各サンプル包装箱について持ち易さを評価した。
総合評価基準は以下のとおり。
◎…総合的に非常に持ち良いと感じる
○…総合的に持ち良いと感じる
△…すこし持ち難いと感じる
×…持ち難いと感じる
結果を下記表1に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
(2)圧力分布による持ち易さ、持ち難さの検証
圧力グローブセンサー(ニッタ(株)社製)を予め貼り付けた白手袋を両手に装着し、包装箱を身体の前で縦持ちした状態での手指の圧力を測定しつつ、持ち易さ、持ち難さの検証を行った。
【0058】
本発明品は「持ち易い」と感じることができ、その場合において、力のかかる部位は、親指を除く4指の第2・3関節間の指腹、4指の指先、そして親指の第1・2関節の指腹と指先であることが圧力センサーの解析で判明した。
【0059】
また、「滑って持ち難い」と感じた従来品において、力のかかる部位は、親指を除く指先のみであることが圧力センサーの解析で判明した。
【0060】
なお、コーナーカット面は、指が掛からずに、掌が位置するので手指に対する滑り防止効果が発揮されないことが圧力センサーの解析で判明した。実際に、コーナーカット面のみに防滑性塗料を塗布しても「持ち易い」と感じることはなかった。
【0061】
(3)実輸送試験
約2500Kmの実輸送を行った。12tトラック(エアーサスペンション仕様)を使用して、1パレットに8面7段、合計56個の包装箱をパレタイズして、トラック荷台後部に設置した。約2500Kmの実輸送を行った後に、荷ズレやカートン側面の防滑ニス塗布による汚れ、摺れの状況を外観検査した。
【0062】
下面板21(図1)において防滑性塗料が塗布されている面積Aの割合を示すy(%)の値が75%以上あれば荷ズレ等の問題はないことが確認された。さらに、本願発明品(表1の実施例1〜6)の防滑ニス塗布による汚れ、擦れの状況は、特に問題ないことが確認できた。
【0063】
以上の結果より本発明の効果は明らかである。
すなわち、本発明は、上面板、底面板、およびこれらを連結する側面板を有して形成される帯状の胴部、ならびに内フラップおよび外フラップを備えてなるラップアラウンド式の包装箱であって、当該包装箱は、上面4N角形(Nは2以上の整数を表す)を形成するために、前記上面板および底面板は四隅に切り欠き角部(コーナーカット部)を有し、内フラップと胴部とが接続する箇所において折り曲げ連接側片が介在されており、前記上面板は、その表面全域に防滑性塗料が塗布されており、前記下面板は、その表面全域に対して、y%の面積Aに防滑性塗料が塗布されており(ただしyは、少なくとも75%)、残余の(100−y)%の面積Bに防滑性塗料が塗布されておらず、前記側面板は、前記側面板と前記折り曲げ連接片との接合部における折目線を山折りすることにより形成された第1の基準稜線の近傍に、第1の基準稜線に平行に配置された少なくとも2本の防滑性塗料の側面板塗布ラインが塗布されており、前記外フラップは、前記内フラップと前記折り曲げ連接片との接合部における折目線を山折りすることにより形成された第2の基準稜線の近傍に、第2の基準稜線に平行に配置された少なくとも2本の防滑性塗料の外フラップ塗布ラインが塗布されており、前記第1の基準稜線に平行に配置された前記2本の側面板塗布ラインは、第1の基準稜線から側面板側に、第1の基準稜線に沿った防滑性塗料の第I−1塗布ライン、および第1の基準稜線から側面板側にP1mm(ただし、P1=20〜30mm)離れた位置の平行ラインを中心にして、第1の基準稜線と実質的に平行に形成された防滑性塗料の第I−2塗布ラインであり、前記第2の基準稜線に平行に配置された2本の外フラップ塗布ラインは、第2の基準稜線から外フラップ側に、第2の基準稜線に沿った防滑性塗料の第II−1塗布ライン、および第2の基準稜線から外フラップ側にP2mm(ただし、P2=20〜30mm)離れた位置の平行ラインを中心にして、第2の基準稜線と実質的に平行に形成された防滑性塗料の第II−2塗布ラインであり、前記第I−1塗布ライン、第I−2塗布ライン、第II−1塗布ライン、および第II−2塗布ラインの箱全体に形成される総和面積をStとした場合、前記面積Bとの関係で、下記式(1)
B≧St …式(1)
が成立するように前記第I−1塗布ライン、第I−2塗布ライン、第II−1塗布ライン、および第II−2塗布ラインが形成されているので、いわゆるコーナーカットカートンを縦にして身体正面で抱える場合であっても、コーナーカット部が掌や指関節にしっかりと引っ掛かり、持ち難いと感じることが極めて少なくなるという効果が発現する。しかも、コストアップに繋がることもない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の包装箱の展開図の一例を示したものである。
【図2】(a),(b)はそれぞれ、自動梱包装置を用いて順次組み立てられていく状況の一例を模式的に示した包装箱の概略斜視図である。
【図3】(a),(b)はそれぞれ、自動梱包装置を用いて順次組み立てられていく状況の一例を模式的に示した包装箱の概略斜視図である。
【図4】(a),(b)はそれぞれ、自動梱包装置を用いて順次組み立てられていく状況の一例を模式的に示した包装箱の概略斜視図である。
【図5】図5は、本発明の要部を説明するためのコーナーカット部の拡大図である。
【図6】図6は、本発明の底部を見た図面である。
【図7】図7は、コーナーカットカートンを縦にして身体正面で抱える場合の状況を説明するための図面である。
【符号の説明】
【0065】
1…包装箱
4,5…引裂き帯体
11,15…側面板
21…底面板
25…上面板
31,35…内フラップ
38…折り曲げ連接側片
41,45…外フラップ
111,151…第I−1塗布ライン
112,152…第I−2塗布ライン
410…第II−1塗布ライン
420…第II−2塗布ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面板、底面板、およびこれらを連結する側面板を有して形成される帯状の胴部、ならびに内フラップおよび外フラップを備えてなるラップアラウンド式の包装箱であって、
当該包装箱は、上面4N角形(Nは2以上の整数を表す)を形成するために、前記上面板および底面板は四隅に切り欠き角部(コーナーカット部)を有し、内フラップと胴部とが接続する箇所において折り曲げ連接側片が介在されており、
前記上面板は、その表面全域に防滑性塗料が塗布されており、
前記下面板は、その表面全域に対して、y%の面積Aに防滑性塗料が塗布されており(ただしyは、少なくとも75%)、残余の(100−y)%の面積Bに防滑性塗料が塗布されておらず、
前記側面板は、前記側面板と前記折り曲げ連接片との接合部における折目線を山折りすることにより形成された第1の基準稜線の近傍に、第1の基準稜線に平行に配置された少なくとも2本の防滑性塗料の側面板塗布ラインが塗布されており、
前記外フラップは、前記内フラップと前記折り曲げ連接片との接合部における折目線を山折りすることにより形成された第2の基準稜線の近傍に、第2の基準稜線に平行に配置された少なくとも2本の防滑性塗料の外フラップ塗布ラインが塗布されており、
前記第1の基準稜線に平行に配置された前記2本の側面板塗布ラインは、第1の基準稜線から側面板側に、第1の基準稜線に沿った防滑性塗料の第I−1塗布ライン、および第1の基準稜線から側面板側にP1mm(ただし、P1=20〜30mm)離れた位置の平行ラインを中心にして、第1の基準稜線と実質的に平行に形成された防滑性塗料の第I−2塗布ラインであり、
前記第2の基準稜線に平行に配置された2本の外フラップ塗布ラインは、第2の基準稜線から外フラップ側に、第2の基準稜線に沿った防滑性塗料の第II−1塗布ライン、および第2の基準稜線から外フラップ側にP2mm(ただし、P2=20〜30mm)離れた位置の平行ラインを中心にして、第2の基準稜線と実質的に平行に形成された防滑性塗料の第II−2塗布ラインであり、
前記第I−1塗布ライン、第I−2塗布ライン、第II−1塗布ライン、および第II−2塗布ラインの箱全体に形成される総和面積をStとした場合、前記面積Bとの関係で、下記式(1)
B≧St …式(1)
が成立するように第I−1塗布ライン、第I−2塗布ライン、第II−1塗布ライン、および第II−2塗布ラインが形成されていることを特徴とする包装箱。
【請求項2】
前記第I−1塗布ラインの幅は、少なくとも5mmであり、前記第I−2塗布ラインの幅は少なくとも8mmであり、
前記第II−1塗布ラインの幅は、少なくとも5mmであり、前記第II−2塗布ラインの幅は少なくとも8mmである請求項1に記載の包装箱。
【請求項3】
前記第I−1塗布ラインの幅は、5〜9mmであり、前記第I−2塗布ラインの幅は8〜12mmであり、
前記第II−1塗布ラインの幅は、5〜9mmであり、前記第II−2塗布ラインの幅は8〜12mmである請求項2に記載の包装箱。
【請求項4】
前記下面板における防滑性塗料が塗布されている面積Aのエリアは、下面板の外枠を含む外周縁エリアであり、
前記下面板における防滑性塗料が塗布されていない面積Bのエリアは、下面板の中心エリアである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の包装箱。
【請求項5】
前記下面板における防滑性塗料が塗布されていない面積Bのエリアは、下面板の中心エリアであり、前記下面板の外形形状と略相似の長方形形状をなしている請求項4に記載の包装箱。
【請求項6】
Nは2であり8角形箱である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の包装箱。
【請求項7】
折り曲げ連接側片の長さを規定する前記第1の基準稜線と前記第2の基準稜線との間の距離が、25〜30mmである請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の包装箱。
【請求項8】
箱内に収納される容器製品物が缶ビールである請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の包装箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−298458(P2009−298458A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157500(P2008−157500)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】