説明

化学処理装置

【課題】ワークタルミを発生させずにメッキ等化学処理が行なえ、化学処理槽内において下端搬送クランプ群からワークが外れる現象を防止できる化学処理装置を提供する。
【解決手段】長尺シート状ワーク1を搬送するワーク搬送装置20とワークの化学処理を行う化学処理槽4を備え、化学処理槽搬入時にワーク上端と下端をクランプし化学処理槽搬出時に開放する上下端搬送クランプ5、6群を有する化学処理装置において、ワーク搬送装置の上端搬送クランプ群が上側エンドレスベルト81に固定され、下端搬送クランプ群が下側エンドレスベルト82に鉛直方向へ移動可能に取付けられかつ各下端搬送クランプを鉛直下方向へ向けて付勢する付勢手段が設けられ、更に下端搬送クランプ群の化学処理槽内における移動下限位置を規制するための下限位置規制手段が化学処理槽内底面の下端搬送クランプ群の移動方向に沿って設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板のように極めて薄く柔軟性のある長尺シート状のワークを一定速度で搬送しながら化学処理を行う化学処理装置に係り、特に、ワークにタルミを発生させることなく化学処理が行えると共に化学処理槽内において下端搬送クランプ群からワークが外れる現象を防止できる化学処理装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は極めて薄く柔軟性のあるフレキシブル基板を使用することが多くなってきている。こうしたフレキシブル基板に対応させて、特許文献1には、リールに巻かれた長尺シート状のワーク(基板材料)をその幅方向を上下方向にして(すなわち、ワーク面を垂直方向にして)連続的に供給するワーク供給装置と、上記ワークをその幅方向を上下方向にして連続的にリールに巻き取るワーク巻取装置との間にメッキ処理槽を配置し、ワーク(基板材料)を長尺シート状のままメッキ処理する装置が提案されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載されたメッキ装置においては、長尺シート状ワーク(基板材料)の上端のみをクランプしながら搬送を行う構造になっているため、上記ワークの幅が広くかつ厚みが極めて薄い場合にはワークの搬送を行う工程あるいはメッキ処理を行う工程の際にワークにタルミが発生し、ワークの幅方向を上下方向にしながら安定して搬送することが困難となる問題点を有していた。
【0004】
そこで、本出願人は、長尺シート状ワーク(基板材料)の上端に加えて長尺シート状ワークの下端をもクランプしながら搬送するワーク搬送装置が付設された化学処理装置を提案している(特許文献2参照)。
【0005】
すなわち、本出願人が提案した化学処理装置は、リールに巻かれた長尺シート状のワークをその幅方向を上下方向にして連続的に供給するワーク供給装置と、上記ワークをその幅方向を上下方向にして連続的にリールに巻き取るワーク巻取装置と、上記ワーク供給装置とワーク巻取装置との間に配置されかつその幅方向を上下方向にして搬送される上記ワークに対し化学処理を行う化学処理槽とを具備する化学処理装置であって、上記ワークの化学処理槽搬入時にワークの上端および下端をそれぞれクランプする上下端搬送クランプ群を有しかつ上下端搬送クランプ群は独立駆動される一対のエンドレスベルトにそれぞれ等間隔で取付けられて定寸毎に上記ワークをクランプしながらその幅方向を上下方向にして搬送すると共に、上記ワークの化学処理槽搬出時に上下端搬送クランプが順次開放されて化学処理されたワークのみをその幅方向を上下方向にしてワーク巻取装置のリールに巻き取らせるワーク搬送装置が設けられていることを特徴とするものであった。
【0006】
そして、ワーク搬送装置が付設された上記化学処理装置によれば、長尺シート状ワークの上端および下端をそれぞれクランプしながら搬送する構造になっているため、上記ワークの幅が広くかつ厚みが極めて薄い場合でも、ワーク搬送を行う工程あるいは化学処理を行う工程の際にワークにタルミが発生し難くなる利点を有するものであった。特に、上方側に配置された上側エンドレスベルトに上端搬送クランプ群が固定して取付けられ、下方側に配置された下側エンドレスベルトに下端搬送クランプ群が鉛直方向へ移動可能な状態で取付けられる構造にした場合、下端搬送クランプ群の自重により鉛直方向へ力を作用させながら上記ワークが搬送されることになるため、更にワークにタルミが発生し難くなってワークの幅方向を上下方向にしながら安定して搬送できる利点を有するものであった。
【0007】
但し、下端搬送クランプ群が鉛直方向へ移動可能な状態で下側エンドレスベルトに取付けられる構造にした特許文献2に係る上記化学処理装置においては、ワークに作用する鉛直方向への力が下端搬送クランプ群の自重により決まってしまうため、化学処理槽内において上下端搬送クランプ群やワーク等に大きな浮力が作用するような場合にワークタルミを防止する最適な力を得ることが難しい。そこで、この問題に対処するため、本出願人は、上記下側エンドレスベルトと各下端搬送クランプとの間に各下端搬送クランプを鉛直下方向へ向けて付勢する付勢手段を設け、ワークに作用させる鉛直方向への力を任意に調整できる化学処理装置も既に提案している(特許文献3参照)。
【0008】
ところで、上記化学処理槽内に収容された化学処理液の特性如何によっては、化学処理槽内においてワークと下端搬送クランプ群との摩擦係数が低下してしまうことがあり、これに起因して、下側エンドレスベルトに対し上記下端搬送クランプ群が鉛直方向へ移動可能に取り付けられた化学処理装置においては、化学処理槽内において下端搬送クランプ群が自重等により沈んだときに下端搬送クランプからワーク下端が外れることがあった。このため、化学処理槽内においてワークタルミが発生し、メッキ等の化学処理が十分になされなくなる問題が存在した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−193794号公報
【特許文献2】特開2009−120889号公報
【特許文献3】特願2010−111068号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、長尺シート状ワークの幅が更に広くかつ厚みが更に薄い場合でもワークタルミを発生させることなく安定して化学処理が行える化学処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、請求項1に係る発明は、
リールに巻かれた長尺シート状のワークをその幅方向を上下方向にして連続的に供給するワーク供給装置と、上記ワークをその幅方向を上下方向にして連続的にリールに巻き取るワーク巻取装置と、上記ワーク供給装置とワーク巻取装置との間に配置されかつその幅方向を上下方向にして搬送される上記ワークに対し化学処理を行う化学処理槽と、上記ワークの化学処理槽搬入時にワークの上端および下端をそれぞれクランプする上下端搬送クランプ群を有しかつ上下端搬送クランプ群は独立駆動される一対のエンドレスベルトにそれぞれ等間隔で取付けられて定寸毎に上記ワークをクランプしながらその幅方向を上下方向にして搬送すると共に上記ワークの化学処理槽搬出時に上下端搬送クランプが順次開放されて化学処理されたワークのみをその幅方向を上下方向にして上記ワーク巻取装置のリールに巻き取らせるワーク搬送装置とを備え、上記上側エンドレスベルトに上端搬送クランプ群が固定して取付けられ、上記下側エンドレスベルトに下端搬送クランプ群が鉛直方向へ移動可能に取り付けられている化学処理装置において、
化学処理槽内における上記下端搬送クランプ群の移動下限位置を規制するための下限位置規制手段が、化学処理槽内底面の下端搬送クランプ群の移動方向に沿って設けられていることを特徴とし、
請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の発明に係る化学処理装置において、
幅方向へ伸びる長尺孔が略等間隔で長さ方向に亘り複数個設けられた第一長尺状板材と、長尺孔に対応する部位に設けられかつ位置固定用ボルトが嵌入されると共に位置固定用ボルト先端を固定するナットが組み込まれた複数個の嵌入孔を有する第二長尺状板材とを備え、第二長尺状板材に対する第一長尺状板材の高さ方向位置を調整した後、第一長尺状板材の上記長尺孔側から第二長尺状板材の嵌入孔へ向けて位置固定用ボルトを嵌入し、かつ、第二長尺状板材に組み込まれたナットにより位置固定用ボルト先端を固定して上記下限位置規制手段が構成されていることを特徴とし、
請求項3に係る発明は、
請求項1または2に記載の発明に係る化学処理装置において、
上記第一長尺状板材の長尺孔並びに第二長尺状板材の嵌入孔の各開口縁部に座繰(ザグリ)部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の発明に係る化学処理装置において、
上記下側エンドレスベルトと各下端搬送クランプとの間に各下端搬送クランプを鉛直下方向へ向けて付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とし、
請求項5に係る発明は、
請求項4に記載の発明に係る化学処理装置において、
上記下側エンドレスベルトに着脱可能に取り付けられる上側部材並びに下側部材と、上記上側部材と下側部材間に設けられた隙間を上下方向へ移動すると共に上記下端搬送クランプが固定されるスライドブロックと、上側部材とスライドブロックとの隙間に設けられかつ上記スライドブロックを上側部材側から下側部材側へ向けて付勢する圧縮バネと、上記上側部材と下側部材間の上記隙間に設けられかつ圧縮バネとスライドブロックを案内するためのシャフトとで上記付勢手段が構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
次に、請求項6に係る発明は、
請求項1〜5のいずれかに記載の発明に係る化学処理装置において、
上記化学処理槽に搬入されかつ搬出される上端搬送クランプ群の化学処理槽内における搬送位置を、上端搬送クランプ群の搬入前と搬出後における搬送基準位置より上方側へ変位させる変位レールが化学処理槽内に設けられ、ワークの上端に張りを与えながらワークが化学処理槽内を搬送される構造になっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る化学処理装置によれば、
化学処理槽内における下端搬送クランプ群の移動下限位置を規制するための下限位置規制手段が、化学処理槽内底面の下端搬送クランプ群の移動方向に沿って設けられているため、化学処理槽内でワークと下端搬送クランプ群の摩擦係数が低下した場合であっても下端搬送クランプからワークが外れることがない。
【0015】
このため、化学処理槽内に収容された処理液の特性如何に拘わらずワークの化学処理を安定して行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る化学処理装置の側面図。
【図2】本発明に係る化学処理装置の平面図。
【図3】本発明に係る化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置の上端搬送クランプが開放された状態を示す説明図。
【図4】ワーク搬送装置の下端搬送クランプが開放された状態を示す説明図。
【図5】ワークの上端および下端がワーク搬送装置の上下搬送クランプにそれぞれクランプされて搬送される状態を示す説明図。
【図6】化学処理槽内底面に下端搬送クランプ群の下限位置規制手段を有するワーク搬送装置の上下搬送クランプにワーク上端および下端がそれぞれクランプされて搬送される状態を示す説明図。
【図7】図7(A)は第一長尺状板材と第二長尺状板材とでその主要部が構成される下限位置規制手段の構成説明図、図7(B)は上記第一長尺状板材の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照し詳細に説明する。
【0018】
尚、図1は本発明に係る化学処理装置の側面図、図2はその平面図を示しており、また、図3は上記化学処理装置に組み込まれたワーク搬送装置の上端クランプが開放された状態を示す説明図、図4は上記ワーク搬送装置の下端搬送クランプが開放された状態を示す説明図、図5はワークの上端および下端がワーク搬送装置の上下端搬送クランプにそれぞれクランプされて搬送される状態を示す説明図、図6は化学処理槽内底面に下端搬送クランプ群の下限位置規制手段を有するワーク搬送装置の上下搬送クランプにワーク上端および下端がそれぞれクランプされて搬送される状態を示す説明図、図7(A)は第一長尺状板材と第二長尺状板材とでその主要部が構成される下限位置規制手段の構成説明図、図7(B)は上記第一長尺状板材の正面図である。
【0019】
まず、本発明に係る化学処理装置は、図1および図2に示すようにリールに巻かれた長尺シート状のワーク1をその幅方向を上下方向にして連続的に供給するワーク供給装置2と、上記ワーク1をその幅方向を上下方向にして連続的にリールに巻き取るワーク巻取装置3と、上記ワーク供給装置2とワーク巻取装置3との間に配置されて上記ワーク1に対しメッキ等の化学処理を行う化学処理槽4と、この化学処理槽4内に未処理のワーク1をその幅方向を上下方向にして搬入しかつ処理後のワーク1をその幅方向を上下方向にして搬出するワーク搬送装置20とでその主要部が構成されている。
【0020】
すなわち、リールに巻かれた長尺シート状のワーク1を供給するワーク供給装置2と、このワーク1をリールに巻き取るワーク巻取装置3と、これ等ワーク供給装置2とワーク巻取装置3間に配置された化学処理槽4を備えており、この化学処理槽4は必要な工程に応じ複数の槽により構成されている。また、ワーク1はその幅方向を上下方向にしてワーク供給装置2からワーク巻取装置3へ連続して搬送されるため、上記化学処理槽4への搬入時にワーク1の上端と下端をそれぞれクランプしながら搬送するワーク搬送装置20が設けられている。
【0021】
このワーク搬送装置20は、ワーク1上端をクランプする複数の上端搬送クランプ5並びにワーク1下端をクランプする複数の下端搬送クランプ6と、ゴムが被覆された上側プーリー101と所定距離を介し対向配置された上側プーリー121との間に巻回され上記上端搬送クランプ5群が取付けられる上側エンドレスベルト81と、ゴムが被覆された下側プーリー102と所定距離を介し対向配置された下側プーリー122との間に巻回され上記下端搬送クランプ6群が取付けられる下側エンドレスベルト82と、上記上側プーリー101と下側プーリー102にそれぞれ設けられて上側エンドレスベルト81と下側エンドレスベルト82とを独立駆動する上下独立した一対のサーボモータ91、92と、上記エンドレスベルト81、82の近傍に付設されかつ各エンドレスベルトに設けられたマーク(図示せず)を検知して各エンドレスベルトの移動量をそれぞれに検出する光電センサー11と、上記上側プーリー101と下側プーリー102の外周面近傍に沿って設けられかつ上端搬送クランプ5群と下端搬送クランプ6群に付帯されたローラー21、22(図3および図4参照)が接触するタイミングで上端搬送クランプ5群と下端搬送クランプ6群の各クランプが開放される円弧形状の当て板7を備えている。
【0022】
そして、上記ワーク1の化学処理槽4搬入時に、上端搬送クランプ5群と下端搬送クランプ6群に付帯されたローラー21、22が上記当て板7に押し当てられて開放されていた各クランプが、ローラー21、22と当て板7との接触が終了して各クランプが閉止するタイミングで、ワーク供給装置2からその幅方向を上下方向にして供給されてきたワーク1の上端および下端を上端搬送クランプ5群と下端搬送クランプ6群とで滑らかにクランプすると共に、上端搬送クランプ5群と下端搬送クランプ6群は独立駆動される一対のエンドレスベルト81、82にそれぞれ等間隔で取付けられて定寸毎に上記ワーク1をクランプしながらその幅方向を上下方向にして化学処理槽4内に搬入させる。
【0023】
また、化学処理された上記ワーク1の化学処理槽4搬出時には、上端搬送クランプ5群と下端搬送クランプ6群に付帯されたローラー21、22が上記当て板7に順次押し当てられて各クランプが開放され、化学処理されたワーク1のみがその幅方向を上下方向にしてワーク巻取装置3のリールに巻き取られる。
【0024】
尚、上端搬送クランプ5群と下端搬送クランプ6群が取付けられた上端エンドレスベルト81と下端エンドレスベルト82は、独立駆動する上下独立したサーボモータ91、92とこれ等サーボモータ91、92に直結されたゴム被覆の上側プーリー101と下側プーリー102によって滑り無く回転し、かつ、各エンドレスベルトに設けられた上記マークが光電センサー11により検出されて各エンドレスベルトの移動量に変換され、この移動量に基づき上下独立したサーボモータ91、92により上端搬送クランプ5群と下端搬送クランプ6群の搬送速度が制御されて、上端搬送クランプ5群と下端搬送クランプ6群が同期しながら上記ワーク1を搬送することが可能となる。
【0025】
ところで、上側エンドレスベルト81に取付けられる上端搬送クランプ5群と下側エンドレスベルト82に取付けられる下端搬送クランプ6群との間隔を、長尺シート状ワーク1の幅寸法に対応させて機械的に一定の間隔に配置させることは機械組立精度上困難である。このため、上端搬送クランプ5群に関しては、図3に示すように止め具200を用いて上側エンドレスベルト81に上端搬送クランプ5群を固定し搬送中の基準位置とし、上端搬送クランプ5群がゴム被覆の上側プーリー101位置に搬送されたときには、上側プーリー101に設けられた溝13により位置規制して上側プーリー101搬送中の基準位置とするようになっている。他方、下側エンドレスベルト82に取付けられる下端搬送クランプ6群に関しては、上記ワーク1に作用させる鉛直方向への力を任意に調整できるようにするため、図4に示すように下側エンドレスベルト82に対し下端搬送クランプ6群が鉛直方向へ移動可能に取付けられており、かつ、上記下側エンドレスベルト82と各下端搬送クランプ6との間には各下端搬送クランプ6を鉛直下方向へ向けて付勢する以下の付勢手段が設けられている。すなわち、図4と図5に示すように、上記付勢手段は、下側エンドレスベルト82の上端側と下端側に止め具200を用いて着脱可能に取り付けられた上側部材30a並びに下側部材30bと、上側部材30aと下側部材30b間の隙間を上下方向へ移動すると共に上記下端搬送クランプ6が固定されるスライドブロック31と、上側部材30aとスライドブロック31との隙間に設けられかつ上記スライドブロック31を上側部材30a側から下側部材30b側へ向けて付勢する圧縮バネ30と、上記上側部材30aと下側部材30b間の上記隙間に設けられかつ圧縮バネ30とスライドブロック31を案内するためのシャフト32とで構成されており、上記上側部材30aとスライドブロック31との隙間に設けられる圧縮バネ30の種類を適宜変更することで上記ワーク1に作用させる鉛直方向への力を任意に調整することが可能となる。
【0026】
尚、図4と図5においては、上側部材30aと下側部材30bがそれぞれ板状の別部材で構成され、別部材の上記上側部材30aを取り外すことにより圧縮バネ30の交換が可能となるようになっているが、必ずしもこのような構造に限定されることはなく、例えば、帯状板材とその両端側から上側部材30a側に向けて延びる一対の板材とでコ字形状の下側部材30bを形成し、かつ、コ字形状の下側部材30bと板状の上側部材30aとで中央に矩形状開口部を有する額縁状の取付け材としてもよく、かつ、額縁状の取付け材の下側部材30bのみが下側エンドレスベルト82の下端側に止め具200を用いて着脱可能に取り付けられる構造としてもよい。
【0027】
また、上記長尺シート状ワーク1の幅方向両端が上端搬送クランプ5群と下端搬送クランプ6群により引っ張られた状態で搬送されるようにするため、上端搬送クランプ5における一対のクランプ先端を図3に示すように断面略J字形状の弾性材料により構成し、長尺シート状ワーク1の上端をクランプしたときに上記クランプ先端が弾性変形してワーク1の上端を鉛直上方向へ引き上げる構造にしてもよい。
【0028】
更に、この化学処理装置においては、長尺シート状ワーク1の上端に張りを与えながらワーク1が化学処理槽4内を搬送されるようにするため、上記化学処理槽4に搬入されかつ搬出される上端搬送クランプ5群の化学処理槽4内における搬送位置を、上端搬送クランプ5群の搬入前と搬出後における搬送基準位置より上方側へ変位させる変位レール40(図5参照)が、化学処理槽4内の上端搬送クランプ5群の移動方向に沿って設けられている。尚、化学処理槽4内に設けられる上記変位レール40については、複数のレールで変位レールを構成し、上端搬送クランプ5群の搬入前と搬出後における搬送基準位置と変位レール40による搬送位置との変位がスムーズになされるように調整することが好ましく、かつ、変位レール40の高さ方向の位置をボルト等により適宜調整して長尺シート状ワーク1の上端に張りを与えながらワーク1が化学処理槽4内を搬送されるようにすることが望ましい。
【0029】
上述した構成を採ることで、長尺シート状ワーク1搬送時におけるワーク1上端の位置が上端搬送クランプ5群により決定され、ワーク1の幅にならいながら下端搬送クランプ6群が上記ワーク1に対し鉛直下方向に力を作用させ、かつ、ワーク1の幅方向を上下方向とした両端に張りを与えながらワーク1の搬送を行うことができるため、ワーク搬送時におけるワークタルミを解消させることが可能となる。但し、ワーク1が存在しないクランプ開始前の下端搬送クランプ6群に関しては下端搬送クランプ6群の位置を決める必要があるため、図4に示すように下端搬送クランプ6群には専用のベアリング14が備えられており、下端搬送クランプ6群の位置を決めるための位置きめ板15がクランプ開始前の下端クランプ位置に付帯されている。
【0030】
また、この化学処理装置においては、化学処理槽4内において摩擦係数の低減等に起因して下端搬送クランプ6からワーク1が外れてしまう現象を回避するため、図6に示すように化学処理槽4内底面に板状の下限位置規制手段300が設けられ、この下限位置規制手段300に下端搬送クランプ6群の上記ベアリング14が係合して化学処理槽4内における下端搬送クランプ6群の移動下限位置を規制するようになっている。すなわち、化学処理槽4内に収容された処理液の特性如何によって化学処理槽4内でワーク1と下端搬送クランプ6群の摩擦係数が低下した場合であっても、化学処理槽4内における下端搬送クランプ6群の下方向への変位が規制されるため、下端搬送クランプ6からワーク1が外れることがなく安定してワーク1の化学処理が行なえるようになっている。
【0031】
尚、この化学処理装置において下限位置規制手段300が1枚の板状部材により構成されているが、上記下限位置規制手段300の構成は任意であり、複数枚の板状部材を組み合わせて高さ方向の規制位置を調整できるように構成してもよいし、下端搬送クランプ6群の移動方向に亘り下端搬送クランプ6群が上下方向へ順次変位する構成にしてもよく任意である。すなわち、上記化学処理槽4内において、摩擦係数の低減等に起因して下端搬送クランプ6からワーク1下端が外れる現象を回避できるならば以下に例示するように下限位置規制手段300の構成は任意である。
【0032】
例えば、図7(A)〜(B)に示すように一対の第二長尺状板材300aと第一長尺状板材300bとで下限位置規制手段300の本体を構成し、上記第一長尺状板材300bが第二長尺状板材300aに対し上方向へ移動可能に設けられて高さ方向の規制位置を調整できる構造体が挙げられる。具体的には、図7(B)に示すように幅方向へ伸びる長尺孔301bが略等間隔で長さ方向に亘り複数個(図7Bでは3個)設けられた第一長尺状板材300bと、上記長尺孔301bに対応する部位に設けられかつ位置固定用ボルト302が嵌入されると共に位置固定用ボルト302の先端を固定するナット303が組み込まれた複数個(図7Aでは長尺孔301bの個数に合わせて3個)の嵌入孔301aを有する第二長尺状板材300aとで下限位置規制手段300の本体を構成する構造体が例示される。そして、第二長尺状板材300aに対する第一長尺状板材300bの高さ方向位置を調整して所望の規制位置に設定した後、第一長尺状板材300bの上記長尺孔301b側から第二長尺状板材300aの嵌入孔301aへ向けて位置固定用ボルト302を嵌入し、かつ、第二長尺状板材300aに組み込まれたナット303により位置固定用ボルト302先端を固定して下限位置規制手段300を構成することができる。尚、上記嵌入孔301aと長尺孔301bの各開口縁部については、図7(A)〜(B)に示すように座繰(ザグリ)部305を設けることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る化学処理装置によれば、長尺シート状ワーク上端と下端がそれぞれクランプされると共に、化学処理槽内においてワーク下端側が適正な引っ張り力により鉛直下方向へ引っ張られた状態で搬送される構造になっているため、ワーク幅が広くかつ厚みが極めて薄い場合でもワークタルミを発生させること無く安定してワークの化学処理を行なうことが可能となる。従って、フレキシブル基板のメッキ等の化学処理装置に用いられる産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0034】
1 ワーク
2 ワーク供給装置
3 ワーク巻取装置
4 化学処理槽
5 上端搬送クランプ
6 下端搬送クランプ
7 当て板
11 光電センサー
13 溝
14 ベアリング
15 位置決め板
20 ワーク搬送装置
21 ローラー
22 ローラー
30 圧縮バネ
30a 上側部材
30b 下側部材
31 スライドブロック
32 シャフト
40 複数に分割された搬送レール
81 上側エンドレスベルト
82 下側エンドレスベルト
91 サーボモータ
92 サーボモータ
101 ゴムが被覆された上側プーリー
102 ゴムが被覆された下側プーリー
121 上側プーリー
122 下側プーリー
200 止め具
300 下限位置規制手段
300a 第二長尺状板材
300b 第一長尺状板材
301a 嵌入孔
301b 長尺孔
302 位置固定用ボルト
303 ナット
305 座繰(ザグリ)部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リールに巻かれた長尺シート状のワークをその幅方向を上下方向にして連続的に供給するワーク供給装置と、上記ワークをその幅方向を上下方向にして連続的にリールに巻き取るワーク巻取装置と、上記ワーク供給装置とワーク巻取装置との間に配置されかつその幅方向を上下方向にして搬送される上記ワークに対し化学処理を行う化学処理槽と、上記ワークの化学処理槽搬入時にワークの上端および下端をそれぞれクランプする上下端搬送クランプ群を有しかつ上下端搬送クランプ群は独立駆動される一対のエンドレスベルトにそれぞれ等間隔で取付けられて定寸毎に上記ワークをクランプしながらその幅方向を上下方向にして搬送すると共に上記ワークの化学処理槽搬出時に上下端搬送クランプが順次開放されて化学処理されたワークのみをその幅方向を上下方向にして上記ワーク巻取装置のリールに巻き取らせるワーク搬送装置とを備え、上記上側エンドレスベルトに上端搬送クランプ群が固定して取付けられ、上記下側エンドレスベルトに下端搬送クランプ群が鉛直方向へ移動可能に取り付けられている化学処理装置において、
化学処理槽内における上記下端搬送クランプ群の移動下限位置を規制するための下限位置規制手段が、化学処理槽内底面の下端搬送クランプ群の移動方向に沿って設けられていることを特徴とする化学処理装置。
【請求項2】
幅方向へ伸びる長尺孔が略等間隔で長さ方向に亘り複数個設けられた第一長尺状板材と、長尺孔に対応する部位に設けられかつ位置固定用ボルトが嵌入されると共に位置固定用ボルト先端を固定するナットが組み込まれた複数個の嵌入孔を有する第二長尺状板材とを備え、第二長尺状板材に対する第一長尺状板材の高さ方向位置を調整した後、第一長尺状板材の上記長尺孔側から第二長尺状板材の嵌入孔へ向けて位置固定用ボルトを嵌入し、かつ、第二長尺状板材に組み込まれたナットにより位置固定用ボルト先端を固定して上記下限位置規制手段が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の化学処理装置。
【請求項3】
上記第一長尺状板材の長尺孔並びに第二長尺状板材の嵌入孔の各開口縁部に座繰(ザグリ)部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の化学処理装置。
【請求項4】
上記下側エンドレスベルトと各下端搬送クランプとの間に各下端搬送クランプを鉛直下方向へ向けて付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化学処理装置。
【請求項5】
上記下側エンドレスベルトに着脱可能に取り付けられる上側部材並びに下側部材と、上記上側部材と下側部材間に設けられた隙間を上下方向へ移動すると共に上記下端搬送クランプが固定されるスライドブロックと、上側部材とスライドブロックとの隙間に設けられかつ上記スライドブロックを上側部材側から下側部材側へ向けて付勢する圧縮バネと、上記上側部材と下側部材間の上記隙間に設けられかつ圧縮バネとスライドブロックを案内するためのシャフトとで上記付勢手段が構成されていることを特徴とする請求項4に記載の化学処理装置。
【請求項6】
上記化学処理槽に搬入されかつ搬出される上端搬送クランプ群の化学処理槽内における搬送位置を、上端搬送クランプ群の搬入前と搬出後における搬送基準位置より上方側へ変位させる変位レールが化学処理槽内に設けられ、ワークの上端に張りを与えながらワークが化学処理槽内を搬送される構造になっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化学処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−149300(P2012−149300A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8576(P2011−8576)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】