説明

化学増幅型レジスト組成物及びそれに用いられる塩

【課題】解像度およびマスクエラーエンハンスメントファクターに優れた化学増幅型レジスト組成物を提供すること。
【解決手段】式(A1)で表される塩を酸発生剤としてレジスト組成物に使用すれば、上記目的を達成できる[式(A1)中、Z+は有機カチオンを表す。Q1及びQ2はフッ素原子又はペルフルオロアルキル基を表す。Ra1は2価の環式の脂肪族炭化水素基等を表す。Ra2は式(II−1)又は式(II−2)で表される脱離基である。式(II−1)及び式(II−2)中、Ra3及びRa4は水素原子又は脂肪族炭化水素基を表す。Ra5は脂肪族炭化水素基を表す。Ra6は2価の脂肪族炭化水素基を表す。Ra7は脂肪族炭化水素基を表す。]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学増幅型レジスト組成物及びそれに用いられる塩に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体分野ではさらなる微細加工が絶えず求められており、フォトレジストの露光光源の短波長化が進められている。しかし短波長化は露光強度の低下を招く。この問題を解消するため、酸発生剤を利用した化学増幅型レジスト組成物が開発された。光照射によって酸発生剤から発生した酸が触媒として作用することによって可溶化反応(ポジ型の場合)及び硬化反応(ネガ型の場合)が促進されるため、化学増幅型レジスト組成物は高感度を実現できる。このような酸発生剤として、例えばトリフェニルスルホニウム 1−アダマンチルメトキシカルボニルジフルオロメタンスルホナートなどが知られている(特許文献1の実施例)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−4561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化学増幅型レジスト組成物には、高い解像度及び良好なマスクエラーエンハンスメントファクターが求められる。本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、その目的は、解像度およびマスクエラーエンハンスメントファクターに優れた化学増幅型レジスト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、新規の塩を酸発生剤としてレジスト組成物で使用すれば、上記目的を達成できることを見出した。
【0006】
本発明は、以下の発明を含む。
〔1〕 式(A1)で表される塩。
【0007】
【化1】


[式(A1)中、Z+は有機カチオンを表す。Q1及びQ2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は直鎖状又は分枝鎖状のC1-6ペルフルオロアルキル基を表す。La1は、−(CH2m1−を表し;m1は1〜6の整数を表し;前記−(CH2m1−のメチレン基は酸素原子(−O−)又はカルボニル基(−CO−)で置換されていてもよく;前記−(CH2m1−の水素原子は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-4脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。La2は、単結合、−O−(CH2L1−又は−CO−O−(CH2L1−を表し;L1は、1〜6の整数を表し;前記−(CH2L1−のメチレン基は酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよく;前記−(CH2L1−の水素原子は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-4脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。Ra1は、2価の環式のC4-36脂肪族炭化水素基又は2価のC6-18芳香族炭化水素基を表し;前記2価の環式の脂肪族炭化水素基又は前記芳香族炭化水素基の水素原子は、ハロゲン原子、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-12脂肪族炭化水素基、C7-21アラルキル基、グリシドキシ基、或いはC2-4アシル基で置換されていてもよく;前記2価の環式の脂肪族炭化水素基の水素原子は、C6-20芳香族炭化水素基で置換されていてもよく;前記直鎖状、分枝鎖状又は環式の脂肪族炭化水素基、或いは前記アラルキル基のメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。Ra2は、式(II−1)又は式(II−2)で表される脱離基である。]
【0008】
【化2】


[式(II−1)中、Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、水素原子、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基を表す。Ra5は、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-24脂肪族炭化水素基を表す。
式(II−2)中、Ra6は、2価のC2-24脂肪族炭化水素基を表す。Ra7は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基を表す。]
【0009】
〔2〕 Ra1が、式(I−1)、式(I−2)、式(I−3)又は式(I−4)のいずれかで表される〔1〕に記載の塩。
【0010】
【化3】

【0011】
〔3〕 La1が、−CO−O−又は−CO−O−(CH2k1−であり、k1が1〜4の整数である〔1〕又は〔2〕に記載の塩。
【0012】
〔4〕 式(a1−1−1)、式(a1−1−2)、式(a1−1−3)、式(a1−1−4)、式(a1−1−5)、式(a1−2−1)、式(a1−3−1)、式(a1−4−1)又は式(a1−5−1)で表されるアニオンを含む〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の塩。
【0013】
【化4】

【0014】
〔5〕 Z+が、式(a2−1)又は式(a2−2)で表される〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の塩。
【0015】
【化5】


[式(a2−1)中、Ra8〜Ra10は、それぞれ独立に、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-30脂肪族炭化水素基、或いはC6-18芳香族炭化水素基を表し;前記脂肪族炭化水素基又は前記芳香族炭化水素基の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基、グリシドキシ基或いはC2-4アシル基で置換されていてもよく;前記脂肪族炭化水素基の水素原子はC6-18芳香族炭化水素基で置換されていてもよく;前記芳香族炭化水素基は、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-36脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。]
【0016】
【化6】


[式(a2−2)中、Ra11及びRa12は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基を表し、n1及びo1は、それぞれ独立に0又は1を表す。但しn1又はo1が0であるとは、それぞれの置換基が存在しないことを意味する。]
【0017】
〔6〕 Z+が、式(a2−1−1)で表される〔5〕に記載の塩。
【0018】
【化7】


[式(a2−1−1)中、Ra23〜Ra25は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-36脂肪族炭化水素基、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基を表し;前記脂肪族炭化水素基の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基、C6-12芳香族炭化水素基、グリシドキシ基或いはC2-4アシル基で置換されていてもよく;w1〜y1は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。但しw1〜y1のいずれかが0であるとは、それぞれ、Ra23〜Ra25のいずれかがが存在しないことを意味し、w1〜y1のいずれかが2以上のとき、それぞれ、複数のRa23〜Ra25のいずれかは、互いに同一でも異なってもよい。]
【0019】
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の塩を含む酸発生剤。
【0020】
〔8〕 〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の塩及び酸の作用によりアルカリ可溶となる樹脂を含むレジスト組成物。
【0021】
〔9〕 さらに塩基性化合物を含有する〔8〕に記載のレジスト組成物。
【発明の効果】
【0022】
式(A1)で表される塩を使用すれば、化学増幅型レジスト組成物の解像度及びマスクエラーエンハンスメントファクターを、従来のものよりも一層向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〈塩(A1)〉
本発明の式(A1)で表される塩について説明する。なお、本明細書では、式(A1)で表される塩を「塩(A1)」と略称することがある。その他の化学式で表される塩、化合物、モノマー及び基も、同様に略称することがある。また、本明細書の化学式は立体異性も包含する。本明細書において「Cx-y脂肪族炭化水素基」とは、炭素数がx以上y以下である脂肪族炭化水素基を表す。但しこの炭素数には、脂肪族炭化水素基が有する置換基(例えば芳香族炭化水素基又はアシル基等)の炭素数は含まれない。脂肪族炭化水素基以外の基の「Cx-y」も同様の意味を有する。また本明細書において「メチレン基が酸素原子等で置換されている脂肪族炭化水素基」等とは、「見掛け上、脂肪族炭化水素基のメチレン基が酸素原子等で置換されたとみなされる基」を意味し、「実際上、脂肪族炭化水素基を合成した後に、メチレン基を酸素原子等で置換して得られる基」等を意味しない。「水素原子が脂環式炭化水素基等で置換されている脂肪族炭化水素基」等の表現も同様の意味を有する。
【0024】
本発明の塩(A1)は、脂肪族炭化水素の環又は芳香環(Ra1)上の置換基末端にRa2で保護されたカルボキシ基(−COORa2)を有する。この保護されたカルボキシ基は、酸と接触するとRa2が脱離し、遊離カルボキシ基(−COOH)を形成する。このような本発明の塩(A1)を酸発生剤として化学増幅型レジスト組成物に使用すれば、レジスト膜の露光部では、樹脂だけでなく、酸発生剤のアルカリ溶解性も向上する。そのため露光部では、基板付近のレジスト膜下部まで溶解性が増して現像でのレジスト膜の抜け性が向上し、レジストパターンの裾引き形状が改善される。その結果、レジスト組成物の解像度及びマスクエラーエンハンスメントファクターが向上する。以下、塩(A1)の構造、即ち式(A1)について順に説明する。
【0025】
【化8】

【0026】
式(A1)中、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、フッ素原子又はC1-6ペルフルオロアルキル基を表す。Q1及びQ2のC1-6ペルフルオロアルキル基としては、例えばペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−n−ブチル基、ペルフルオロ−sec−ブチル基、ペルフルオロ−tert−ブチル基、ペルフルオロ−n−ペンチル基、ペルフルオロ−n−ヘキシル基などが挙げられる。Q1及びQ2としては、ペルフルオロメチル基及びフッ素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0027】
式(A1)中、La1は、−(CH2m1−であり、m1は1〜6の整数である。La1のメチレン鎖は、側鎖として、直鎖状又は分枝鎖状のC1-4脂肪族炭化水素基を有していてもよい。またLa1は、メチレン基が酸素原子又はカルボニル基で置換されたものでもよい。結合方向を示すためにRa1も記載して説明すると、La1は、好ましくは−CO−O−Ra1、又は−CO−O−(CH2k1−Ra1であり(前記式中、k1は、1〜4の整数、好ましくは1又は2を表す)、より好ましくは−CO−O−Ra1である。
【0028】
式(A1)中La2は、結合方向を示すためにRa1も記載して説明すると、単結合、Ra1−O−(CH2L1−又はRa1−CO−O−(CH2L1−であり、L1は、1〜6の整数である。La1に含まれるメチレン鎖は、側鎖として、直鎖状又は分枝鎖状のC1-4脂肪族炭化水素基を有していてもよい。またLa1に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。La2は、好ましくは単結合又はRa1−O−(CH2j1−(前記式中j1は、1又は2を表す)であり、より好ましくは単結合である。
【0029】
式(A1)中、Ra1は、2価の環式のC4-36脂肪族炭化水素基又は2価のC6-18芳香族炭化水素基、好ましくは2価の環式のC4-36脂肪族炭化水素基を表す。Ra1の環式の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基は、置換基として、ハロゲン原子、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-12脂肪族炭化水素基、C6-20芳香族炭化水素基、C7-21アラルキル基、グリシドキシ基、或いはC2-4アシル基を有していてもよい。またRa1中に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。
【0030】
a1の置換基であるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、フッ素原子及び塩素原子が好ましい。置換基としての脂肪族炭化水素基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基などの鎖状脂肪族炭化水素基;並びにシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基及びイソボルニル基などの環式脂肪族炭化水素基;が挙げられる。置換基としての芳香族炭化水素基は、例えばフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などである。置換基としてのアラルキル基は、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、トリチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基などである。置換基としてのアシル基は、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などである。Ra1が複数の置換基を有する場合、それらは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0031】
a1の環式の脂肪族炭化水素基は、単環式又は多環式のいずれでもよい。単環式の脂肪族炭化水素基としては、シクロアルカンジイル基(例えばシクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロヘプタンジイル基、シクロオクタンジイル基)やシクロアルケンジイル基(例えばシクロペンテンジイル基、シクロヘキセンジイル基、シクロヘプテンジイル基、シクロオクテンジイル基)などが挙げられる。多環式の脂肪族炭化水素基としては、縮合芳香族炭化水素基を水素化して得られる基(例えばヒドロナフタレンジイル基)、橋かけ環状炭化水素基(例えばアダマンタンジイル基、ノルボルナンジイル基、ノルボルネンジイル基)などが挙げられる。さらに下記のような、橋かけ環(例えばノルボルナン環)と単環(例えばシクロヘプタン環やシクロヘキサン環)又は多環(例えばデカヒドロナフタレン環)とが縮合した形状の基、或いは橋かけ環同士が縮合した形状の基も、Ra1の環式の脂肪族炭化水素基に含まれる。
【0032】
【化9】

【0033】
a1の環式の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。メチレン基が酸素原子で置換された環式の脂肪族炭化水素基(即ち環状エーテルの基)としては、オキソランジイル基(テトラヒドロフランジイル基)、オキサンジイル基(テトラヒドロ−2H−ピランジイル基)、オキセパンジイル基などが挙げられる。メチレン基がカルボニル基で置換された環式の脂肪族炭化水素基としては、シクロヘキサノンジイル基、オキソノルボルナンジイル基、オキソアダマンタンジイル基などが挙げられる。隣り合う2つのメチレン基が、酸素原子及びカルボニル基で置換された環式の脂肪族炭化水素基(即ちラクトン環の基)としては、2−オキソテトラヒドロフランジイル基(γ−ブチロラクトンジイル基)、2−オキソテトラヒドロ−2H−ピランジイル基(δ−バレロラクトンジイル基)、2−オキソオキセパンジイル基(ε−カプロラクトンジイル基)などが挙げられる。その他、メチレン基が酸素原子又はカルボニル基で置換された環式の脂肪族炭化水素基として、以下のような縮合環が挙げられる。
【0034】
【化10】

【0035】
a1の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基、フェナントレンジイル基、アントラセンジイル基などが挙げられる。
【0036】
上述したRa1の中で、式(I−1)で表されるアダマンタンジイル基、式(I−2)で表されるシクロヘキサンジイル基、式(I−3)で表される5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナンジイル基、及び式(I−4)で表されるフェニレン基が好ましく、アダマンタンジイル基(I−1)がより好ましい。
【0037】
【化11】

【0038】
a1及びLa2の順に位置番号を割り当てると、基(I−1)は、好ましくはアダマンタン−1,3−ジイル基、アダマンタン−1,4−ジイル基又はアダマンタン−2,5−ジイル基であり、より好ましくはアダマンタン−2,5−ジイル基である。同様にLa1及びLa2の順に位置番号を割り当てると、基(I−2)は、好ましくはシクロヘキサン−1,4−ジイル基であり、基(I−3)は、好ましくは5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2,9−ジイル基であり、基(I−4)は、好ましくは1,4−フェニレン基である。
【0039】
式(A1)中、Ra2は、式(II−1)又は式(II−2)で表される脱離基である。
【0040】
【化12】

【0041】
式(II−1)中、Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、水素原子、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基を表す。Ra3及びRa4の脂肪族炭化水素基の炭素数上限は、好ましくは6、より好ましくは4である。Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-4脂肪族炭化水素基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)であり、より好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0042】
式(II−1)中、Ra5は、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-24脂肪族炭化水素基を表す。Ra5の脂肪族炭化水素基としては、Ra1の置換基として例示したものが挙げられる。Ra5は、好ましくは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基、より好ましくは直鎖状又は分枝鎖状のC1-4脂肪族炭化水素基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)であり、さらに好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0043】
式(II−2)中、Ra6は2価のC2-24脂肪族炭化水素基を表す。即ちRa6とRa6が結合する炭素原子とは、環式のC3-25脂肪族炭化水素基を形成する。このRa6と炭素原子とが形成する環式の脂肪族炭化水素基を、以下、「Ra6の環式の脂肪族炭化水素基」と略称する。
【0044】
a6の環式の脂肪族炭化水素基は、単環式又は多環式のいずれでもよい。単環式の脂肪族炭化水素基には、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基)やシクロアルケニル基(例えばシクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基)などが含まれる。多環式の脂肪族炭化水素基には、縮合芳香族炭化水素基を水素化して得られる基(例えばヒドロナフチル基)、橋かけ環状炭化水素基(例えばアダマンチル基、ノルボルニル基)などが含まれる。橋かけ環状炭化水素基は、その内部に不飽和結合を有していてもよい(例えばノルボルネンイル基など)。さらに下記のような、橋かけ環(例えばノルボルナン環)と単環(例えばシクロヘプタン環やシクロヘキサン環)又は多環(例えばデカヒドロナフタレン環)とが縮合した形状の基、或いは橋かけ環同士が縮合した形状の基も、環式の脂肪族炭化水素基に含まれる。Ra6の環式の脂肪族炭化水素基は、好ましくはアダマンチル基又はシクロへキシル基である。
【0045】
【化13】

【0046】
式(II−2)中、Ra7は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基を表す。Ra7の炭素数上限は、好ましくは6、より好ましくは4である。Ra7は、好ましくは直鎖状又は分枝鎖状のC1-4脂肪族炭化水素基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0047】
本発明の塩(A1)は、好ましくは式(a1−1−1)、式(a1−1−2)、式(a1−1−3)、式(a1−1−4)、式(a1−1−5)、式(a1−2−1)、式(a1−3−1)、式(a1−4−1)又は式(a1−5−1)で表されるアニオンを含む。
【0048】
【化14】

【0049】
次に塩(A1)に含まれるカチオンZ+について説明する。Z+としては、通常の酸発生剤に含まれるカチオン、例えばスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン、ホスホニウムカチオンなどが挙げられる。これらの中でも、スルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンが好ましく、アリールスルホニウムカチオンがより好ましい。
【0050】
式(A1)中のZ+は、好ましくは式(a2−1)〜式(a2−4)のいずれかで表される。
【0051】
【化15】

【0052】
式(a2−1)中、Ra8〜Ra10は、それぞれ独立に、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-30脂肪族炭化水素基、或いはC6-18芳香族炭化水素基を表し;前記脂肪族炭化水素基又は前記芳香族炭化水素基の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基、グリシドキシ基或いはC2-4アシル基で置換されていてもよく;前記脂肪族炭化水素基の水素原子はC6-18芳香族炭化水素基で置換されていてもよく;前記芳香族炭化水素基は、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-36脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。尚、カチオンZ+に含まれる脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基及びアシル基の具体例としては、上述したものが挙げられる。
【0053】
式(a2−2)中、Ra11及びRa12は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基(好ましくはC1-12アルキル基、より好ましくはC1-6アルキル基)、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基(好ましくはC1-6アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基)を表し、n1及びo1は、それぞれ独立に0又は1を表す。但しn1又はo1が0であるとは、それぞれの置換基が存在しないことを意味する。
【0054】
式(a2−3)中、Ra13及びRa14は、それぞれ独立に、直鎖状又は分枝鎖状C1-12脂肪族炭化水素基(好ましくはC1-12アルキル基、より好ましくはC1-6アルキル基)、環式のC3-12脂肪族炭化水素基(好ましくはC3-12シクロアルキル基、より好ましくはC3-6シクロアルキル基、さらに好ましはシクロヘプチル基又はシクロへキシル基)を表す。Ra15は、水素原子、直鎖状又は分枝鎖状C1-12脂肪族炭化水素基を表し、好ましくは水素原子である。Ra16は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基(好ましくはC1-12アルキル基、より好ましくはC1-6アルキル基)、C3-12環式の脂肪族炭化水素基(好ましくはC3-12シクロアルキル基、より好ましくはC3-6シクロアルキル基)、或いはC6-20芳香族炭化水素基(好ましくはフェニル基又はナフチル基)を表す。但しRa16の芳香族炭化水素基は、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-12脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基などで置換されていてもよい。
【0055】
式(a2−3)中、Ra13とRa14と、及びRa15とRa16とは、互いに結合して3員環〜12員環(好ましくは3員環〜6員環)を形成していてもよく、これらの環のメチレン基は、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル基(−CO−)で置換されていてもよい。Ra13及びRa14が形成する環としては、例えばチオラン−1−イウム環(テトラヒドロチオフェニウム環)、チアン−1−イウム環、1,4−オキサチアン−4−イウム環などが挙げられる。Ra15及びRa16が形成する環としては、例えばオキソシクロヘプタン環、オキソシクロヘキサン環、オキソノルボルナン環、オキソアダマンタン環などが挙げられる。
【0056】
式(a2−4)中、Ra17〜Ra22は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基(好ましくはC1-12アルキル基、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基、エチル基又はtert−ブチル基)、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基(好ましくはC1-6アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基)を表す。La3は、硫黄原子又は酸素原子を表す。p1〜u1は、それぞれ独立に、0〜2の整数を表し、v1は0又は1を表す。但しp1〜v1のいずれかが0であるとは、それぞれの置換基が存在しないことを意味し、p1〜u1のいずれかが2であるとき、それぞれ、複数のRa17〜Ra22のいずれかは互いに同一でも異なってもよい。
【0057】
カチオン(a2−1)〜カチオン(a2−4)の中でも、カチオン(a2−1)が好ましく、式(a2−1−1)で表されるものがより好ましい。
【0058】
【化16】

【0059】
式(a2−1−1)中、Ra23〜Ra25は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-36脂肪族炭化水素基(好ましくは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基(特にイソプロピル基)、ブチル基(特にtert−ブチル基)、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、又はオクチル基)、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基(好ましくはC1-6アルコキシ基)を表す。Ra23〜Ra25の脂肪族炭化水素基は、置換基としてハロゲン原子、ヒドロキシ基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基、C6-12芳香族炭化水素基、グリシドキシ基或いはC2-4アシル基を有してもよい。w1〜y1は、それぞれ独立に0〜3の整数(好ましくは0又は1)を表す。但しw1〜y1のいずれかが0であるとは、それぞれ、Ra23〜Ra25のいずれかがが存在しないことを意味し、w1〜y1のいずれかが2以上のとき、それぞれ、複数のRa23〜Ra25のいずれかは、互いに同一でも異なってもよい。カチオン(a2−1−1)の中でも、トリフェニルスルホニウムカチオン、トリス(p−トリル)スルホニウムカチオン、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムカチオンが好ましい。
【0060】
次に塩(A1)に含まれる具体的なカチオンを例示する。まずカチオン(a2−1−1)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0061】
【化17】

【0062】
【化18】

【0063】
カチオン(a2−2)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0064】
【化19】

【0065】
カチオン(a2−3)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0066】
【化20】

【0067】
【化21】

【0068】
カチオン(a2−4)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0069】
【化22】

【0070】
【化23】

【0071】
【化24】

【0072】
【化25】

【0073】
塩(A1)は、上述のアニオンとカチオンとの組合せである。上述のアニオンとカチオンとは任意に組み合わせることができるが、アニオン(a1−1−1)、アニオン(a1−1−2)、アニオン(a1−1−3)、アニオン(a1−1−4)、アニオン(a1−1−5)、アニオン(a1−2−1)、アニオン(a1−3−1)、アニオン(a1−4−1)及びアニオン(a1−5−1)のいずれかとカチオン(a2−1−1)又はカチオン(a2−2)との組合せが好ましく、前記アニオン(a1−1−1)〜アニオン(a1−4−1)のいずれかとトリフェニルスルホニウムカチオンとの組合せがより好ましい。
【0074】
本発明の塩(A1)は、有機合成で既知の反応によって製造できる。例えばLa1が−CO−O−である塩(A1−I)は、エステル(A1−Ia)とアルコール(A1−Ib)とを用いるエステル交換反応によって製造できる(下記式中、Ra26は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-4アルキル基、好ましくはメチル基を表す。その他の記号は前記と同じである。)。
【0075】
【化26】

【0076】
エステル交換反応は、通常、クロロホルム、ジクロロエタン、トルエン、エチルベンゼン、モノクロロベンゼン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性溶媒中で撹拌しながら、0〜150℃程度(好ましくは50〜100℃程度)の温度範囲で行えばよい。
【0077】
エステル交換反応では、触媒を使用してもよい。エステル交換触媒としては、リチウムアミド(LiNH2)、リチウムハイドライド、サマリウムクロライドなどの塩基性触媒が挙げられる。塩基性触媒は過剰に使用してもよいが、エステル(A1−Ia)1モルに対して、通常、0.1〜2.0モル程度である。
【0078】
またLa2が−CO−O−(CH2L1−である塩(A1−II)は、例えば、カルボン酸塩(A1−IIa)とハロゲン化アルキル(A1−IIb)とを用いるエステル化反応によって製造できる(下記式中、M1はアルカリ金属を表す。X1はハロゲン原子を表す。その他の記号は前記と同じである。)。
【0079】
【化27】

【0080】
1としては、高い反応性を示すCs、K及びNaが好ましく、中でも入手が容易なK及びNaがより好ましい。X1としては、反応性や入手容易性から、I、Br及びClが好ましい。ヨウ化アルカリ金属の存在下で、臭化アルキル又は塩化アルキルを用いるエステル化反応を行ってもよい。
【0081】
ハロゲン化アルキルを用いるエステル化反応は、通常、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒中で撹拌しながら、0〜150℃程度(好ましくは50〜100℃程度)の温度範囲で行えばよい。
【0082】
またLa2が−O−(CH2L1−である塩(A1−III)は、例えば、アルコキシド(A1−IIIa)とハロゲン化アルキル(A1−IIIb)とを用いるエーテル化反応(ウィリアムソン・エーテル合成)によって製造できる(下記式中、M2はアルカリ金属を表す。X2はハロゲン原子を表す。その他の記号は前記と同じである。)。
【0083】
【化28】

【0084】
2としては、Li、Na及びKが好ましい。アルコキシド(A1−IIIa)は、対応するアルコールと強塩基(例えば水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムヘキサメチルジシラジド又はリチウムジイソプロピルアミドなど)とから容易に調製できる。X2としては、I、Br及びClが好ましい。
【0085】
エーテル化反応は、通常、クロロホルム、ジクロロエタン、トルエン、エチルベンゼン、モノクロロベンゼン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性溶媒中で撹拌しながら、0〜150℃程度(好ましくは10〜80℃程度)の温度範囲で行えばよい。
【0086】
また本発明の塩(A1)は、塩(A1a)と塩(A1b)とを用いるカチオン交換反応によっても製造できる。このカチオン交換反応の出発原料である塩(A1a)は、有機合成で既知の反応、例えば上述したエステル交換反応、エステル化反応及びエーテル化反応などを適宜採用することによって製造できる(下記式中、M3は、アルカリ金属を表す。X3は、Br又はIを表す。その他の記号は前記と同じである。)。
【0087】
【化29】

【0088】
カチオン交換反応は、通常、クロロホルム、アセトニトリル、水、メタノール等の不活性溶媒中で撹拌しながら、0〜150℃程度(好ましくは0〜100℃程度)の温度範囲で行えばよい。塩(A1b)の使用量は、塩(A1a)1モルに対して、通常、0.5〜2モル程度である。カチオン交換反応では、触媒(例えば塩化銀、ジメチル硫酸等)を用いてもよい。
【0089】
上記のようにして得られた本発明の塩(A1)は、分液、水洗、再結晶などで精製してもよい。
【0090】
本発明の塩(A1)は、酸発生剤、特に化学増幅型レジスト組成物用の酸発生剤として好適である。本発明の塩(A1)を酸発生剤として使用すれば、優れた解像度およびマスクエラーエンハンスメントファクターを達成できる。本発明の塩(A1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また本発明の効果を阻害しない範囲で、本発明の塩(A1)と他の酸発生剤とを併用してもよい。
【0091】
〈レジスト組成物〉
本発明は、塩(A1)と酸の作用によりアルカリ可溶となる樹脂(以下、樹脂(B)と略称することがある)とを含有するレジスト組成物も提供する。本発明のレジスト組成物中の塩(A1)の含有量は、樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上(好ましくは3質量部以上)、好ましくは30質量部以下(より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下)である。
【0092】
本発明のレジスト組成物は、化学増幅型ポジ型レジスト組成物として有用である。一般的な化学増幅型ポジ型レジスト組成物は、酸発生剤(A)のほかに、樹脂(B)及び溶剤(D)、場合により塩基性化合物(C)を含有する。以下、これら各成分について順に説明する。
【0093】
〈酸の作用によりアルカリ可溶となる樹脂(B)〉
樹脂(B)は、酸の作用によりアルカリ可溶となるモノマー(以下「酸可溶化モノマー(b1)」と略称することがある)を重合することによって製造できる。酸可溶化モノマー(b1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお「酸の作用によりアルカリ可溶となる」とは、「酸との接触前ではアルカリ水溶液に不溶又は難溶であるが、酸との接触後にはアルカリ水溶液に可溶となる」ことを意味する。
【0094】
酸可溶化モノマー(b1)としては、酸に不安定な基を有するモノマーが挙げられる。ここで「酸に不安定な基」とは、酸と接触すると脱離基が開裂して、親水性基(例えばヒドロキシ基又はカルボキシ基)を形成する基を意味する。酸に不安定な基としては、例えば、オキシ基(−O−)が3級炭素原子(但し橋かけ環状炭化水素基の橋頭炭素原子を除く)と結合した下記式(III)で表されるアルコキシカルボニル基(即ち3級アルコール残基を有するエステル結合)が挙げられる。
【0095】
【化30】

【0096】
式(III)中、Rb1〜Rb3は、それぞれ独立に、直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族炭化水素基を表すか;或いはRb1及びRb2は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0097】
酸に不安定な基(III)としては、例えば1,1−ジアルキルアルコキシカルボニル基(式(III)中、Rb1〜Rb3がアルキル基であるもの、好ましくはtert−ブトキシカルボニル基)、2−アルキル−2−アダマンチルオキシカルボニル基(式(III)中、Rb1、Rb2及び炭素原子がアダマンチル基を形成し、Rb3がアルキル基であるもの)、及び1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルコキシカルボニル基(式(III)中、Rb1及びRb2がアルキル基であり、Rb3がアダマンチル基であるもの)などが挙げられる。
【0098】
酸可溶化モノマー(b1)は、好ましくは酸に不安定な基(III)及びオレフィン性二重結合を有するモノマー、より好ましくは酸に不安定な基(III)を有する(メタ)アクリル酸エステル、ノルボルネンカルボン酸エステル、トリシクロデセンカルボン酸エステル、又はテトラシクロデセンカルボン酸エステルである。なお本明細書において「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル」を総称する。他の「(メタ)アクリル」等の記載も同様の意味を有する。
【0099】
環式の脂肪族炭化水素基のような嵩高い構造(例えばシクロヘキサン環、アダマンタン環、又はノルボルナン環)を有する酸可溶化モノマー(b1)を重合して得られる樹脂を使用すれば、レジストの解像度を向上させることができる。そのような嵩高い構造を有する酸可溶化モノマーとしては、式(b1−1)、式(b1−2)及び式(b1−3)で表されるモノマーが好ましい。なおノルボルネン環を有する酸可溶化モノマー(b1−3)は、レジストの解像度を向上させる作用だけではなく、樹脂の主鎖に剛直なノルボルナン環を導入してレジストのドライエッチング耐性を向上させるという作用も有する。
【0100】
【化31】

【0101】
式(b1−1)及び式(b1−2)中、Rb4及びRb5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(好ましくは塩素原子)又はメチル基を表し、好ましくはメチル基である。
【0102】
式(b1−1)及び式(b1−2)中、Rb6及びRb7は、それぞれ独立に、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-10脂肪族炭化水素(好ましくは直鎖状又は分枝鎖状のC1-8脂肪族炭化水素)を表す。Rb6及びRb7の脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。Rb6及びRb7の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、1−メチルエチル基(イソプロピル基)、1,1−ジメチルエチル基(tert−ブチル基)、2,2−ジメチルエチル基、プロピル基、1−メチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−プロピルブチル基、ペンチル基、1−メチルペンチル基、ヘキシル基、1,4−ジメチルヘキシル基、ヘプチル基、1−メチルヘプチル基、オクチル基などの鎖状脂肪族炭化水素基;及びシクロヘプチル基、メチルヘプチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、ノルボルニル基、メチルノルボルニル基などの環式脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0103】
式(b1−1)及び式(b1−2)中、m2は、0〜14の整数を表す。n2は、0〜10の整数を表す。但しm2又はn2が0であるとは、それぞれ、メチル基が存在しないことを意味する。m2及びn2は、それぞれ独立に、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0104】
式(b1−3)中、Rb8は、水素原子、C1-3アルキル基、カルボキシ基、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基(−COORb12)を表し;前記アルキル基の水素原子はヒドロキシ基等で置換されていてもよい。Rb12は、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-8脂肪族炭化水素基を表し;前記脂肪族炭化水素基の水素原子はヒドロキシ基で置換されていてもよく;前記脂肪族炭化水素基のメチレン基は酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。Rb8の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基などが挙げられる。Rb12としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、2−オキソ−オキソラン−3−イル基、2−オキソ−オキソラン−4−イル基などが挙げられる。
【0105】
式(b1−3)中、Rb9〜Rb11は、それぞれ独立に、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-12脂肪族炭化水素基を表すか;或いはRb9及びRb10は互いに結合して環を形成していてもよく;前記脂肪族炭化水素基の水素原子はヒドロキシ基等で置換されていてもよく;前記脂肪族炭化水素基のメチレン基は酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。
【0106】
アダマンチル基を有する酸可溶化モノマー(b1−1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−イソプロピル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−ブチル−2−アダマンチル、α−クロロアクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、α−クロロアクリル酸2−エチル−2−アダマンチルなどが挙げられる。これらの中でも、感度及び耐熱性に優れた樹脂を得ることができる(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル及び(メタ)アクリル酸2−イソプロピル−2−アダマンチルが好ましく、メタクリル酸エステル形態のものがより好ましい。
【0107】
シクロへキシル基を有する酸可溶化モノマー(b1−2)は、好ましくは(メタ)アクリル酸1−エチル−1−シクロヘキシルであり、より好ましくはメタクリル酸1−エチル−1−シクロヘキシルである。
【0108】
ノルボルネン環を有する酸可溶化モノマー(b1−3)としては、例えば、5−ノルボルネン−2−カルボン酸−tert−ブチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−シクロヘキシル−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチルシクロヘキシル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−メチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−エチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−メチルシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチル−1−(4−オキソシクロヘキシル)エチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチルなどが挙げられる。
【0109】
酸可溶化モノマー(b1−1)〜(b1−3)の中でも、アダマンチル基を有する酸可溶化モノマー(b1−1)が好ましい。酸可溶化モノマー(b1−1)を用いれば、解像度に優れたレジスト組成物が得られる傾向がある。Rb6がアルキル基である酸可溶化モノマー(b1−1)は、通常、2−アルキル−2−アダマンタノール又はその金属塩と(メタ)アクリル酸ハライドとの反応によって製造できる。
【0110】
樹脂(B)は、好ましくは、酸可溶化モノマー(b1)と、酸に不安定な基を有さない他のモノマーとの共重合体である。樹脂(B)が共重合体である場合、酸可溶化モノマー(b1)に由来する構造単位は、全構造単位100モル%に対して、好ましくは10〜80モル%である。またアダマンチル基を有する酸可溶化モノマー(特に酸可溶化モノマー(b1−1))に由来する構造単位を、酸可溶化モノマー(b1)100モル%に対して15モル%以上とすることが好ましい。アダマンチル基を有する酸可溶化モノマーの比率が増えると、レジストのドライエッチング耐性が向上する。
【0111】
他のモノマーとしては、酸に不安定な基を有さない(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル類、ノルボルネン類、ヒドロキシスチレン類、脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物(例えば無水マレイン酸)、無水イタコン酸などが挙げられる。
【0112】
他のモノマーとしてヒドロキシスチレン類(例えばp−ヒドロキシスチレン又はm−ヒドロキシスチレン)のようなヒドロキシ基を有するモノマー(以下「ヒドロキシ基含有モノマー(b2)」と略称することがある)を使用すれば、レジストの解像度及び基板への密着性を向上させることができる。またアセトキシスチレン類を他のモノマーとして使用し、重合後に酸で脱アセチル化することによって、樹脂中にヒドロキシ基を形成してもよい。
【0113】
レジスト組成物をKrFエキシマレーザ露光(248nm)に用いる場合、ヒドロキシ基含有モノマー(b2)としてヒドロキシスチレン類を使用しても、充分な透過率を得ることができる。しかしより短波長のArFエキシマレーザ露光(193nm)などを用いる場合は、ヒドロキシ基含有モノマー(b2)は、好ましくは式(b2−1)で表されるモノマーである。アダマンチル基を有するヒドロキシ基含有モノマー(b2−1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0114】
【化32】

【0115】
式(b2−1)中、Rb13は、水素原子又はメチル基を表し、好ましくはメチル基である。Rb14及びRb15は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基を表す。o2は、0〜10の整数(好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1)を表す。但しo2が0であるとは、メチル基が存在しないことを意味する。
【0116】
アダマンチル基を有するヒドロキシ基含有モノマー(b2−1)は、好ましくは(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル又は(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルであり、より好ましくは(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルであり、さらに好ましくはメタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルである。ヒドロキシ基含有モノマー(b2−1)は、対応するヒドロキシアダマンタンと(メタ)アクリル酸とを反応させることによって製造できる。また(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルなどは市販されている。
【0117】
ラクトン環を有するモノマー(以下「ラクトン環含有モノマー(b3)」と略称することがある)を使用すれば、ヒドロキシ基含有モノマーと同様に、レジストの解像度及び基板への密着性を向上させることができる。ラクトン環は、例えばβ−プロピオラクトン環、γ−ブチロラクトン環、δ−バレロラクトン環のような単環でもよく、或いは単環状のラクトン環と他の環との縮合環でもよい。これらラクトン環の中で、γ−ブチロラクトン環、及びγ−ブチロラクトン環と他の環との縮合ラクトン環が好ましい。
【0118】
ラクトン環含有モノマー(b3)は、好ましくは式(b3−1)、式(b3−2)又は式(b3−3)で表されるモノマーであり、これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0119】
【化33】

【0120】
式(b3−1)〜式(b3−3)中、Rb16〜Rb18は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、好ましくはメチル基である。Rb19〜Rb21は、それぞれ独立に、メチル基、トリフルオロメチル基又はハロゲン原子を表し;p2〜r2は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。但しp2〜r2のいずれかが0であるとは、それぞれ、Rb19〜Rb21のいずれかかが存在しないことを意味し、p2〜r2のいずれかがが2以上のとき、それぞれ、複数のRb19〜Rb21のいずれかは、互いに同一でも異なってもよい。
【0121】
式(b3−1)中、(メタ)アクリロイルオキシ基の好ましい結合位置は、γ−ラクトン環のα位又はβ位であり、より好ましくはα位である。式(b3−2)中、(メタ)アクリロイルオキシ基の好ましい結合位置は、5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン環の2位又は3位であり、より好ましくは2位である。式(b3−3)中、(メタ)アクリロイルオキシ基の好ましい結合位置は、7−オキソ−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン環の4位である。
【0122】
γ−ブチロラクトン環を有するラクトン環含有モノマー(b3−1)としては、例えば、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトンなどが挙げられ、これらの中でもα−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(即ち(メタ)アクリル酸テトラヒドロ−2−オキソ−3−フリル)が好ましい。
【0123】
縮合ラクトン環を有するラクトン環含有モノマー(b3−2)としては、例えば、下記式で表されるものが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルが好ましい。
【0124】
【化34】

【0125】
縮合ラクトン環を有するラクトン環含有モノマー(b3−3)としては、例えば、下記式で表されるものが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸7−オキソ−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−4−イルが好ましい。
【0126】
【化35】

【0127】
γ−ラクトン環を有するラクトン環含有モノマー(b3−1)は、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とハロゲン原子(好ましくは臭素原子)を含有するγ−ブチロラクトン類とを反応させるか;或いは(メタ)アクリル酸ハライド、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルとヒドロキシ基を有するγ−ブチロラクトン類とを反応させることによって製造できる。縮合したラクトン環を有するラクトン環含有モノマー(b3−2)及び(b3−3)は、(メタ)アクリル酸類と下記式に示すようなヒドロキシ基を有する縮合ラクトン類とを反応させることによって製造できる(例えば特開2000−26446号公報参照)。
【0128】
【化36】

【0129】
酸に不安定な基を有さない他のモノマーとしては、下記式(b4−1)で表されるノルボルネン環を有するモノマーが挙げられる。上述したようにノルボルネン環を有するモノマーは、樹脂の主鎖に剛直なノルボルナン環を導入してレジストのドライエッチング耐性を向上させることができる。
【0130】
【化37】

【0131】
式(b4−1)中、Rb22及びRb23は、それぞれ独立に、水素原子、C1-3アルキル基、カルボキシ基、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基(−COORb24)を表すか、或いはRb22及びRb23は、互いに結合してカルボニルオキシカルボニル基:−CO−O−CO−を形成し;前記アルキル基の水素原子はヒドロキシ基等で置換されていてもよい。Rb24は、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-8脂肪族炭化水素基を表し;前記脂肪族炭化水素基の水素原子はヒドロキシ基で置換されていてもよく;前記脂肪族炭化水素基のメチレン基は酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。但しRb24は、3級炭素原子がオキシ基(−O−)と結合するものを除く。Rb22及びRb23の脂肪族炭化水素基並びにRb24の具体例としては、ノルボルネン環を有する酸可溶化モノマー(b1−3)で説明したものが挙げられる。
【0132】
ノルボルネン環を有するモノマー(b4−1)としては、例えば、2−ノルボルネン、2−ヒドロキシ−5−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシ−1−エチル、5−ノルボルネン−2−メタノール、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0133】
好ましい樹脂(B)は、少なくとも、酸可溶化モノマー(b1){好ましくはアダマンチル基を有する酸可溶化モノマー(b1−1)}、ヒドロキシ基含有モノマー(b2){好ましくはアダマンチル基を有するヒドロキシ基含有モノマー(b2−1)}及びラクトン環含有モノマー(b3){好ましくはγ−ラクトン環を有するラクトン環含有モノマー(b3−1)}を重合させた共重合体である。
【0134】
樹脂(B)の重量平均分子量は、好ましくは2,500以上(より好ましくは3,000以上)、好ましくは100,000以下(より好ましくは50,000以下、さらに好ましくは20,000以下)である。
【0135】
樹脂(B)の製造方法に特に限定は無く、該分野で既知の重合方法及び条件を適宜採用すればよい。なお環式の脂肪族炭化水素基内にオレフィン性二重結合を有するモノマー(例えばノルボルネン環を有する酸可溶化モノマー(b1−3))は重合性が低いため、樹脂中で予定する構造単位の含有量よりも過剰に使用することが好ましい。
【0136】
〈塩基性化合物(C)〉
本発明のレジスト組成物に、クエンチャーとして塩基性化合物(C)を添加してもよい。例えば、露光後の引き置きに伴う酸失活によって生ずるレジスト膜の性能劣化を、塩基性化合物(C)を使用することで抑制できる。塩基性化合物(C)を使用する場合、その量は、樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上(より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上)、好ましくは5質量部以下(より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下)である。
【0137】
塩基性化合物(C)は、窒素含有塩基性化合物が好ましい。窒素含有塩基性化合物には、アミン及びアンモニウムヒドロキシドが含まれる。アミンは、脂肪族アミンでも、芳香族アミンでもよい。脂肪族アミンは、1級アミン〜3級アミンのいずれも使用できる。芳香族アミンは、アニリンのような芳香族環にアミノ基が結合したものや、ピリジンのような複素芳香族アミンのいずれでもよい。好ましい塩基性化合物(C)は、式(C1)で表される芳香族アミン、特に式(C1−1)で表されるアニリンである。
【0138】
【化38】

【0139】
式(C1)中、Arc1は、C6-20芳香族炭化水素基を表す。Rc1及びRc2は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、環式のC5-10脂肪族炭化水素基、或いはC6-20芳香族炭化水素基を表す。但し脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基は、ヒドロキシ基、アミノ基、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-6アルコキシ基で置換されていてもよい。さらに脂肪族炭化水素基はC6-20芳香族炭化水素基で置換されていてもよく、芳香族炭化水素基は直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、環式のC5-10脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。またアルコキシ基は、ヒドロキシ基、アミノ基或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-6アルコキシ基で置換されていてもよく、アミノ基は、C1-4脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。
【0140】
式(C1−1)中、Rc1及びRc2は、前記と同じである。Rc3は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、環式のC5-10脂肪族炭化水素基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6アルコキシ基、或いはC6-20芳香族炭化水素基を表す。但し前記脂肪族炭化水素基、前記アルコキシ基および前記芳香族炭化水素基は、式(C1)で説明した置換基を有していてもよい。m3は0〜3の整数を表す。但しm3が0であるとは、Rc3が存在しないことを意味し、m3が2以上のとき、複数のRc3は、互いに同一でも異なってもよい。
【0141】
芳香族アミン(C1)としては、例えば1−ナフチルアミン及び2−ナフチルアミンなどが挙げられる。アニリン(C1−1)としては、例えばアニリン、ジイソプロピルアニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミンなどが挙げられる。これらの中でもジイソプロピルアニリン(特に2,6−ジイソプロピルアニリン)が好ましい。
【0142】
別の好ましい塩基性化合物(C)は、式(C2)で表される4級アンモニウムヒドロキシドである。
【0143】
【化39】

【0144】
式(C2)中、Rc4〜Rc6は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、環式のC5-10脂肪族炭化水素基、或いはC6-20芳香族炭化水素基を表す。Rc7は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、或いは環式のC5-10脂肪族炭化水素基を表す。但し前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基は、式(C1)で説明した置換基を有していてもよい。
【0145】
4級アンモニウムヒドロキシド(C2)としては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−オクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−トリフルオロメチルフェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
【0146】
その他の塩基性化合物(C)としては、式(C3)〜式(C11)で表される化合物が挙げられる。
【0147】
【化40】

【0148】
式(C3)中のRc8は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、或いは環式のC5-10脂肪族炭化水素基を表し、Rc9及びRc10は、水素原子、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、或いは環式のC5-10脂肪族炭化水素基を表す。式(C4)〜式(C8)中の窒素原子と結合するRc11〜Rc14、Rc16〜Rc19及びRc22は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、環式のC5-10脂肪族炭化水素基、或いはC6-20芳香族炭化水素基を表す。式(C6)中のRc15は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、環式のC3-6脂肪族炭化水素基、或いはC2-6アルカノイル基を表し、n3は0〜8の整数を表す。但しn3が0であるとは、Rc15が存在しないことを意味し、n3が2以上のとき、複数のRc15は、互いに同一でも異なってもよい。式(C8)中の芳香族炭素と結合するRc23は、水素原子、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、環式のC5-10脂肪族炭化水素基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6アルコキシ基、或いはC6-20芳香族炭化水素基を表す。式(C7)及び式(C9)〜式(C11)中の芳香族炭素と結合するRc20、Rc21及びRc24〜Rc28は、それぞれ独立に、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、環式のC5-10脂肪族炭化水素基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6アルコキシ基、或いはC6-20芳香族炭化水素基を表し、o3〜u3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。但しo3〜u3のいずれかが0であるとは、それぞれの置換基が存在しないことを意味し、o3〜u3のいずれかが2以上であるとき、それぞれ、複数のRc20〜Rc28のいずれかは互いに同一でも異なってもよい。式(C7)及び式(C10)のLc1及びLc2は、それぞれ独立に、2価のC2-6脂肪族炭化水素基(好ましくはC2-6アルキレン基)、カルボニル基、−N(Rc29)−、チオ基(−S−)、ジチオ基(−S−S−)、又はこれらの組合せを表し、Rc29は、水素原子、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基を表す。また式(C3)〜式(C11)中の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基および芳香族炭化水素基は、式(C1)で説明した置換基を有していてもよい。
【0149】
化合物(C3)としては、例えば、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミンエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0150】
化合物(C4)としては、例えばピペラジンなどが挙げられる。化合物(C5)としては、例えばモルホリンなどが挙げられる。化合物(C6)としては、例えばピペリジン、及び特開平11−52575号公報に記載されているピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物などが挙げられる。化合物(C7)としては、例えば2,2’−メチレンビスアニリンなどが挙げられる。
【0151】
化合物(C8)としては、例えば、イミダゾール、4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。化合物(C9)としては、例えば、ピリジン、4−メチルピリジンなどが挙げられる。化合物(C10)としては、例えば、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(2−ピリジル)エテン、1,2−ジ(4−ピリジル)エテン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ジ(4−ピリジルオキシ)エタン、ジ(2−ピリジル)ケトン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジピリジルアミン、2,2’−ジピコリルアミンなどが挙げられる。化合物(C11)としては、例えばビピリジンなどが挙げられる。
【0152】
〈溶剤(D)〉
溶剤(D)としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル類;乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類;γ−ブチロラクトンのような環状エステル類;などを挙げることができる。溶剤(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0153】
溶剤(D)の含有量は、レジスト組成物全体に対して、通常、50質量%以上(好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上)、99質量%以下(好ましくは97質量%以下)である。
【0154】
〈その他の任意成分(E)〉
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、その他の任意成分(E)を含有していてもよい。任意成分(E)に特に限定は無く、レジスト分野で公知の添加剤、例えば増感剤、溶解抑止剤、他の樹脂、界面活性剤、安定剤、染料などを利用できる。
【0155】
〈レジストパターンの製造方法〉
レジストパターンの製造方法は、通常、
(1)レジスト組成物を基体上に塗布してレジスト膜を得る工程(以下「塗布工程1」と略称する)と、
(2)レジスト膜をプリベークする工程(以下「プリベーク工程2」と略称する)と、
(3)プリベークしたレジスト膜を露光する工程(以下「露光工程3」と略称する)と、
(4)露光したレジスト膜をポストエクスポージャーベークする工程(以下「ポストエクスポージャーベーク工程4」と略称する)と、
(5)ポストエクスポージャーベークしたレジスト膜をアルカリ現像液で現像してレジストパターンを得る工程(以下「現像工程5」と略称する)と
を含む。以下、各工程を順に説明する。
【0156】
〈塗布工程1〉
レジスト組成物を塗布するにあたっては、予め、レジスト組成物の各成分を溶剤中で混合した後、ポアサイズが0.2μm以下程度のフィルタでろ過しておくことが望ましい。ろ過することで、レジスト組成物を塗布する際の均一性が向上する。
【0157】
レジスト組成物が塗布される基体としては、用途に応じて適宜設定でき、例えばセンサ、回路、トランジスタなどが形成されたシリコンウエハ、石英ウエハなどが挙げられる。
【0158】
基体上にレジスト組成物の塗膜を形成する方法は特に限定されず、スピンコート法などの通常の塗布方法を適宜採用できる。
【0159】
〈プリベーク工程2〉
プリベークによって、レジスト膜の機械的強度を高め、露光後のレジスト膜中の活性種(H+)の拡散度合いを調整することができる。プリベーク温度(TPB)は、例えば50〜200℃程度である。
【0160】
〈露光工程3〉
プリベーク後のレジスト膜に、目的のパターン(例えばコンタクトホール)に対応するマスクを介して露光が行われる。露光は、ドライ露光でも、液浸露光でもよい。露光機としては、例えば縮小投影型露光装置が用いられる。露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2レーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するもの等、種々のものを使用できる。露光量は、各成分の種類及び含有量に応じて適宜選択すればよい。
【0161】
〈ポストエクスポージャーベーク工程4〉
露光後のレジスト膜で活性種(H+)の拡散及び活性種による反応を促進するために、ポストエクスポージャーベークが行われる。ポストエクスポージャーベーク温度(TPEB)は、通常50〜200℃程度、好ましくは70〜150℃程度である。
【0162】
〈現像工程5〉
現像は、現像装置を用いて、レジスト膜が設けられた基体を通常の現像液に接触することで行えばよい。現像液としては、例えばアルカリ水溶液(詳しくは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドや(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液等)が用いられる。現像液には、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。現像液を振り切り、水洗し、次いで水を除去することによってレジストパターンを形成することが好ましい。
【実施例】
【0163】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。以下において、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記がないかぎり質量基準である。
【0164】
化合物の構造はNMR(日本電子製EX−270型)、質量分析(LC:Agilent製1100型、MASS:Agilent製LC/MSD型またはLC/MSD TOF型)で確認した。
【0165】
樹脂の重量平均分子量は、以下の条件でゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した。
【0166】
装置:HLC−8120GPC型(東ソー社製)
カラム:「TSKgel Multipore HXL−M」3連結+「ガードカラム」(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μL
【0167】
1.酸発生剤の合成
(1)塩(A1−1−1)の合成
塩(A1−1−1a)10.00部及びクロロホルム80.00部を仕込み、攪拌して溶解させた後、これに化合物(A1−1−1b)7.97部(純度97.1%)を仕込み、次いでリチウムアミド(LiNH2)0.15部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。さらにモレキュラーシーブ(5A;和光純薬工業(株)製)13.00部を添加し、60℃で8時間加熱攪拌した。23℃まで冷却した後、濾過して、濾液を取り出した。濾液にイオン交換水24.53部を添加し、攪拌した後、分液を行って有機層を回収した。回収した有機層の水洗操作を2回行った。水洗後の有機層に活性炭1.33部を添加し、攪拌した後、濾過して濾液を回収し、該濾液を濃縮することによって淡黄色オイル20.20部を得た。得られた淡黄色オイル20.20部にアセトニトリル60.60部を添加して溶解した後、濃縮し、更に酢酸エチル81.80部を添加した。得られた溶液を濃縮した後、メチル−tert−ブチルエーテル76.60部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去して下層を取り出し、これを濃縮した。得られた濃縮液に酢酸エチル66.00部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去し、下層を取り出してこれを濃縮することによって、淡黄色オイルとして塩(A1−1−1)11.96部(純度100%、収率81.9%)を得た。
【0168】
【化41】

【0169】
塩(A1−1−1)の物性データ
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 397.1
1H−NMR(ジメチルスルホキシド−d6、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)1.40−2.18(m,13H)、3.33(s,3H)、4.93(brs,1H)、5.18(s,2H)、7.77−7.88(m,15H)
【0170】
(2)塩(A1−2−1)の合成
化合物(A1−1−1b)7.97部(純度97.1%)の代わりに化合物(A1−2−1b)6.54部(純度95.0%)を使用したこと以外は、塩(A1−1−1)の合成と同様にして、淡黄色オイルとして塩(A1−2−1)8.36部(純度100%、収率62.4%)を得た。
【0171】
【化42】

【0172】
塩(A1−2−1)の物性データ
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 345.1
1H−NMR(ジメチルスルホキシド−d6、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)1.39−1.98(m,8H)、2.32(m,1H)、3.24(s,3H)、3.94(m,1H)、5.18(s,2H)、7.77−7.88(m,15H)
【0173】
(3)塩(A1−3−1)の合成
化合物(A1−1−1b)7.97部(純度97.1%)の代わりに化合物(A1−3−1b)7.99部(純度100%)を使用したこと以外は、塩(A1−1−1)の合成と同様にして、淡黄色オイルとして塩(A1−3−1)11.52部(純度100%、収率79.0%)を得た。
【0174】
【化43】

【0175】
塩(A1−3−1)の物性データ
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 399.0
1H−NMR(ジメチルスルホキシド−d6、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)1.41−2.09(m,3H)、2.66(m,1H)、2.91(d,1H)、2.98(m,1H)、3.25(s,3H)、4.59(s,1H)、4.89(m,1H)、5.18(s,2H)、7.76−7.91(m,15H)
【0176】
(4)塩(A1−4−1)の合成
化合物(A1−1−1b)7.97部(純度97.1%)の代わりに化合物(A1−4−1b)8.84部(純度68.0%)を使用したこと以外は、塩(A1−1−1)の合成と同様にして、淡黄色オイルとして塩(A1−4−1)4.14部(純度100%、収率31.2%)を得た。
【0177】
【化44】

【0178】
塩(A1−4−1)の物性データ
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 339.0
1H−NMR(ジメチルスルホキシド−d6、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)3.24(s,3H)、5.33(s,2H)、6.78(m,2H)、6.92(m,2H)、7.70−7.90(m,15H)
【0179】
(5)塩(A1−1−2)の合成
塩(A1−1−1)6.60部、クロロホルム40.00部、1N(1mol/L)塩酸水溶液7.70部及びメタノール7.70部の混合溶液を仕込み、23℃で15時間撹拌した。その後、1N(1mol/L)炭酸水素ナトリウム水溶液40.00部を仕込み、攪拌した後、分液した。イオン交換水40.00部を仕込み、攪拌した後、分液した。有機層の水洗操作を3回行った。水洗後の有機層に活性炭1.00部を添加し、攪拌した後、濾過して濾液を回収し、該濾液を濃縮することにより、淡黄色オイルとして、塩(A1−1−2a)7.71部を得た。
【0180】
【化45】

【0181】
塩(A1−1−2a)3.09部、N,N−ジメチルホルムアミド15.50部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、次いで炭酸カリウム0.56部及びヨウ化カリウム0.17部を加えて50℃で1時間攪拌した。その後40℃まで冷却し、化合物(A1−1−2b)1.21部をN,N−ジメチルホルムアミド9.0部に溶解させた溶液を滴下し、40℃で23時間反応させた。反応後に冷却し、クロロホルム30.00部及びイオン交換水30.00部を加えて攪拌した後、分離した。有機層をイオン交換水30.00部で水層が中性になるまで水洗を繰り返した。有機層に活性炭1.2部を加えて攪拌した後、濾過した。濾液を濃縮し、酢酸エチル10部を加えて攪拌した後、上澄み液を除去した。残渣にtert−ブチルメチルエーテル10部を加えて攪拌した後、上澄み液を除去した。残渣をクロロホルムに溶解させた後、濃縮することによって、燈色オイルとして塩(A1−1−2)1.09部(純度100%、収率27%)を得た。
【0182】
【化46】

【0183】
塩(A1−1−2)の物性データ
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 559.2
1H−NMR(ジメチルスルホキシド−d6、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)1.26−2.38(m,27H)、1.59(s,3H)、4.79(s,2H)、4.93(brs,1H)、7.77−7.88(m,15H)
【0184】
(6)塩(A1−1−3)の合成
塩(A1−1−3a)5.88部、化合物(A1−1−2b)2.43部、ジクロロエタン40.00部を仕込み、これを攪拌して溶解させた後、これに水素化ナトリウム0.24部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。さらに15時間撹拌した後、イオン交換水40.00部を仕込み、攪拌した後、分液した。有機層の水洗操作を3回行った。水洗後の有機層に活性炭1.00部を添加し、攪拌した後、濾過して濾液を回収し、該濾液を濃縮することによって淡黄色オイル7.90部を得た。得られた淡黄色オイル7.90部にアセトニトリル24.00部を添加して溶解した後、濃縮し、更に酢酸エチル40.00部を添加した。得られた溶液を濃縮した後、メチル−tert−ブチルエーテル40.00部を添加し、これを攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去して下層を取り出し、これを濃縮した。得られた濃縮液に、酢酸エチル40.00部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去し、下層を取り出してこれを濃縮することにより、淡黄色オイルとして塩(A1−1−3)4.38部(純度100%、収率55.1%)を得た。
【0185】
【化47】

【0186】
塩(A1−1−3)の物性データ
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 531.2
1H−NMR(ジメチルスルホキシド−d6、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)1.28−2.38(m,27H)、1.59(s,3H)、3.52(m,1H)、4.08(s,2H)、7.77−7.88(m,15H)
【0187】
(7)塩(A1−1−4)の合成
塩(A1−1−4a)6.03部、化合物(A1−1−2b)2.43部、及びジクロロエタン40.00部を仕込み、これを攪拌して溶解させた後、これに水素化ナトリウム0.24部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。さらに15時間撹拌した後、イオン交換水40.00部を仕込み、攪拌した後、分液した。有機層の水洗操作を3回行った。水洗後の有機層に活性炭1.00部を添加し、攪拌した後、濾過して濾液を回収し、該濾液を濃縮することによって淡黄色オイル7.71部を得た。得られた淡黄色オイル7.71部にアセトニトリル24.00部を添加して溶解した後、濃縮し、更に酢酸エチル40.00部を添加した。得られた溶液を濃縮した後、メチル−tert−ブチルエーテル40.00部を添加し、これを攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去して下層を取り出し、これを濃縮した。得られた濃縮液に、酢酸エチル40.00部を添加して、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去し、下層を取り出してこれを濃縮することによって、淡黄色オイルとして塩(A1−1−4)3.28部(純度100%、収率40.5%)を得た。
【0188】
【化48】

【0189】
塩(A1−1−4)の物性データ
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 545.2
1H−NMR(ジメチルスルホキシド−d6、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)1.28−2.38(m,28H)、1.59(s,3H)、3.85(s,2H)、4.10(s,2H)、7.77−7.88(m,15H)
【0190】
(8)塩(A2−1−1)の合成
式(A2−1−1b)で表される塩は、特開2008−13551公報(段落[0116]参照)に記載された方法で合成した。式(A2−1−1b)で表される塩11.80部、クロロホルム400部及びイオン交換水200部を加えた。得られた混合物に、式(A2−1−1a)で表される塩20.50部及びイオン交換水200部を添加した。得られた混合物を23℃で15時間撹拌した後、分液した。得られた有機層にイオン交換水200部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、分液することにより有機層を回収した。この水洗の操作を3回行った。得られた有機層を濃縮した後、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル200部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、ろ過することにより、式(A2−1−1c)で表される塩12.52部を得た。
【0191】
【化49】

【0192】
塩(A2−1−1c)10.93部及びクロロホルム80.00部を仕込み、攪拌して溶解させた後、これに化合物(A1−1−1c)7.97部(純度97.1%)を仕込み、次いでリチウムアミド(LiNH2)0.15部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。さらにモレキュラーシーブ(5A;和光純薬工業(株)製)13.00部を添加し、60℃で8時間加熱攪拌した。23℃まで冷却した後、濾過して、濾液を取り出した。濾液にイオン交換水25.00部を添加し、攪拌した後、分液を行って有機層を回収した。回収した有機層の水洗操作を2回行った。水洗後の有機層に活性炭1.20部を添加し、攪拌した後、濾過して濾液を回収し、該濾液を濃縮することによって淡黄色オイル21.23部を得た。得られた淡黄色オイル21.23部にアセトニトリル63.69部を添加して溶解した後、濃縮し、更に酢酸エチル84.92部を添加した。得られた溶液を濃縮した後、メチル−tert−ブチルエーテル80.00部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去して下層を取り出し、これを濃縮した。得られた濃縮液に酢酸エチル70.00部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去し、下層を取り出してこれを濃縮することによって、塩(A2−1−1)12.04部を得た。
【0193】
【化50】

【0194】
塩(A2−1−1)の物性データ
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 305.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 397.1
【0195】
(9)塩(A3−1−1)の合成
塩(A2−1−1b)11.80部、クロロホルム400部及びイオン交換水200部を加えた。得られた混合物に、式(A3−1−1a)で表される塩18.00部及びイオン交換水200部を添加した。得られた混合物を23℃で15時間撹拌した後、分液した。得られた有機層にイオン交換水200部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、分液することにより有機層を回収した。この水洗の操作を3回行った。得られた有機層を濃縮した後、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル150部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、ろ過することにより、式(A3−1−1c)で表される塩11.81部を得た。
【0196】
【化51】

【0197】
塩(A3−1−1c)10.40部及びクロロホルム80.00部を仕込み、攪拌して溶解させた後、これに化合物(A1−1−1c)7.97部(純度97.1%)を仕込み、次いでリチウムアミド(LiNH2)0.15部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。さらにモレキュラーシーブ(5A;和光純薬工業(株)製)13.00部を添加し、60℃で8時間加熱攪拌した。23℃まで冷却した後、濾過して、濾液を取り出した。濾液にイオン交換水24.53部を添加し、攪拌した後、分液を行って有機層を回収した。回収した有機層の水洗操作を2回行った。水洗後の有機層に活性炭1.00部を添加し、攪拌した後、濾過して濾液を回収し、該濾液を濃縮することによって淡黄色オイル20.18部を得た。得られた淡黄色オイル20.18部にアセトニトリル60.54部を添加して溶解した後、濃縮し、更に酢酸エチル81.72部を添加した。得られた溶液を濃縮した後、メチル−tert−ブチルエーテル80.00部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去して下層を取り出し、これを濃縮した。得られた濃縮液に酢酸エチル60.00部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去し、下層を取り出してこれを濃縮することによって、塩(A3−1−1)11.57部を得た。
【0198】
【化52】

【0199】
塩(A3−1−1)の物性データ
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 281.0
MS(ESI(−)Spectrum):M− 397.1
【0200】
(10)塩(A4−1−1)の合成
塩(A2−1−1b)11.80部、クロロホルム300部及びイオン交換水150部を加えた。得られた混合物に、式(A4−1−1a)で表される塩16.33部及びイオン交換水150部を添加した。得られた混合物を23℃で15時間撹拌した後、分液した。得られた有機層にイオン交換水150部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、分液することにより有機層を回収した。この水洗の操作を3回行った。得られた有機層を濃縮した後、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル150部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、ろ過することにより、式(A4−1−1c)で表される塩10.21部を得た。
【0201】
【化53】

【0202】
塩(A4−1−1c)8.77部及びクロロホルム70.00部を仕込み、攪拌して溶解させた後、これに化合物(A1−1−1c)7.97部(純度97.1%)を仕込み、次いでリチウムアミド(LiNH2)0.15部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。さらにモレキュラーシーブ(5A;和光純薬工業(株)製)10.00部を添加し、60℃で8時間加熱攪拌した。23℃まで冷却した後、濾過して、濾液を取り出した。濾液にイオン交換水20.00部を添加し、攪拌した後、分液を行って有機層を回収した。回収した有機層の水洗操作を2回行った。水洗後の有機層に活性炭1.00部を添加し、攪拌した後、濾過して濾液を回収し、該濾液を濃縮することによって淡黄色オイル15.73部を得た。得られた淡黄色オイル15.73部にアセトニトリル47.19部を添加して溶解した後、濃縮し、更に酢酸エチル62.92部を添加した。得られた溶液を濃縮した後、メチル−tert−ブチルエーテル60.00部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去して下層を取り出し、これを濃縮した。得られた濃縮液に酢酸エチル40.00部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去し、下層を取り出してこれを濃縮することによって、塩(A4−1−1)8.28部を得た。
【0203】
【化54】

【0204】
塩(A4−1−1)の物性データ
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 207.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 397.1
【0205】
(11)塩(A5−1−2)の合成
リチウムアルミニウムハイドライド10.4部、無水テトラヒドロフラン(無水THF)120部を仕込み23℃で30分間攪拌した。次いで、式(A5−1−2a)で表される化合物62.2部を無水THF900部に溶かした溶液を氷冷下で滴下し、23℃で5時間攪拌した。反応マスに酢酸エチル50.0部、6N(6mol/L)塩酸50.00部を添加、攪拌後、分液を行った。有機層を濃縮後、カラム(メルク シリカゲル60−200メッシュ 展開溶媒:クロロホルム/メタノール=5/1)分取することにより、式(A5−1−2b)で表される化合物を84.7部(純度60%)を得た。
また、式(A5−1−2c)で表される化合物4.55部、無水THF90部を添加し室温で30分間攪拌し溶解した。この溶液にカルボニルジイミダゾール3.77部、無水THF45部の混合溶液を室温で滴下し、23℃で4時間攪拌した。得られた反応溶液を、塩(A5−1−2b)7.87部(純度60%)、無水THF50部の混合中に、55℃で30分間かけて滴下した。反応溶液を65℃で18時間加熱し、冷却後、ろ過した。得られたろ液を濃縮し、濃縮物をカラム(メルク シリカゲル60−200メッシュ 展開溶媒:クロロホルム/メタノール=5/1)分取することにより、式(A5−1−2d)で表される化合物4.44部を得た。
【0206】
【化55】

【0207】
次いで、式(A5−1−2d)で表される化合物1.01部及びクロロホルム20部を仕込み、23℃で30分間攪拌後、更に式(A5−1−2e)で表される化合物(13.1%水溶液)6.3部を23℃で加えた。12時間室温で攪拌した後、分液を行った。有機層にイオン交換水10部を添加、分液水洗を行った。この操作を5回行った。その後、硫酸マグネシウム1.00部を添加、23℃で30分間攪拌後、ろ過し、ろ液を濃縮して、式(A5−1−2g)で表される化合物1.28部を得た。
【0208】
【化56】

【0209】
塩(A5−1−2g)6.03部、化合物(A1−1−2b)2.43部及びジクロロエタン40.00部を仕込み、これを攪拌して溶解させた後、これに水素化ナトリウム0.24部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。さらに15時間撹拌した後、イオン交換水40.00部を仕込み、攪拌した後、分液した。有機層の水洗操作を3回行った。水洗後の有機層に活性炭1.00部を添加し、攪拌した後、濾過して濾液を回収し、該濾液を濃縮することによって淡黄色オイル6.98部を得た。得られた淡黄色オイル6.98部にアセトニトリル21.00部を添加して溶解した後、濃縮し、更に酢酸エチル30.00部を添加した。得られた溶液を濃縮した後、メチル−tert−ブチルエーテル30.00部を添加し、これを攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去して下層を取り出し、これを濃縮した。得られた濃縮液に、酢酸エチル30.00部を添加して、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去し、下層を取り出してこれを濃縮することによって、塩(A5−1−2)2.84部を得た。
【0210】
【化57】

【0211】
塩(A5−1−2)の物性データ
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 545.2
【0212】
(12)塩(A6−1−1)の合成
式(A2−1−1b)で表される塩は、特開2008−13551公報に記載された方法で合成した。式(A2−1−1b)で表される塩11.80部、クロロホルム400部及びイオン交換水200部を加えた。得られた混合物に、式(A6−1−1a)で表される塩21.34部及びイオン交換水200部を添加した。得られた混合物を23℃で15時間撹拌した後、分液した。得られた有機層にイオン交換水200部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、分液することにより有機層を回収した。この水洗の操作を3回行った。得られた有機層を濃縮した後、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル200部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、ろ過することにより、式(A6−1−1c)で表される塩13.04部を得た。
【0213】
【化58】

【0214】
塩(A6−1−1c)11.24部及びクロロホルム80.00部を仕込み、攪拌して溶解させた後、これに化合物(A1−1−1c)7.97部(純度97.1%)を仕込み、次いでリチウムアミド(LiNH2)0.15部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。さらにモレキュラーシーブ(5A;和光純薬工業(株)製)13.00部を添加し、60℃で8時間加熱攪拌した。23℃まで冷却した後、濾過して、濾液を取り出した。濾液にイオン交換水25.00部を添加し、攪拌した後、分液を行って有機層を回収した。回収した有機層の水洗操作を2回行った。水洗後の有機層に活性炭1.00部を添加し、攪拌した後、濾過して濾液を回収し、該濾液を濃縮することによって淡黄色オイル22.68部を得た。得られた淡黄色オイル22.68部にアセトニトリル68.04部を添加して溶解した後、濃縮し、更に酢酸エチル90.72部を添加した。得られた溶液を濃縮した後、メチル−tert−ブチルエーテル90.00部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去して下層を取り出し、これを濃縮した。得られた濃縮液に酢酸エチル80.00部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去し、下層を取り出してこれを濃縮することによって、塩(A6−1−1)12.39部を得た。
【0215】
【化59】

【0216】
塩(A6−1−1)の物性データ
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 319.2
MS(ESI(−)Spectrum):M− 397.1
【0217】
2.樹脂の合成
〔樹脂B1の合成〕
モノマー(b1−1−1)、モノマー(b2−1−1)及びモノマー(b3−1−1)を、モル比50:25:25の割合で仕込み、次いでモノマーの全質量に対して1.5質量倍のジオキサンを加えた。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)をモノマーの全モル数に対して、それぞれ1モル%及び3モル%の割合で添加し、これを77℃で約5時間加熱した。その後に反応液を大量のメタノール及び水の混合溶媒(メタノール:水=4:1)に注いで沈殿させ、濾過を行った。残渣を大量のメタノール溶媒に添加し、リパルプ操作を3回行うことによって精製し、重量平均分子量が約8000の共重合体を収率60%で得た。この共重合体は、各モノマーから導かれる構造単位を有するものであり、これを樹脂(B1)とする。
【0218】
【化60】

【0219】
〔樹脂B2の合成〕
モノマー(b1−1−1)、モノマー(b1−2−1)、モノマー(b2−1−1)、モノマー(b3−1−1)及びモノマー(b3−2−1)を、モル比30:14:6:20:30の割合で仕込み、次いでモノマーの全質量に対して1.5質量倍のジオキサンを加えた。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)をモノマーの全モル数に対して、それぞれ1モル%及び3モル%の割合で添加し、これを77℃で約5時間加熱した。その後に反応液を大量のメタノール及び水の混合溶媒(メタノール:水=4:1)に注いで沈殿させ、濾過を行った。残渣を大量のメタノール溶媒に添加し、リパルプ操作を3回行うことによって精製し、重量平均分子量が約7000の共重合体を収率68%で得た。この共重合体は、各モノマーから導かれる構造単位を有するものであり、これを樹脂(B2)とする。
【0220】
【化61】

【0221】
3.レジスト組成物の調製及び特性評価
上記のようにして得られた塩(A1−1−1)、塩(A1−1−2)、塩(A1−1−3)、塩(A1−1−4)、塩(A1−2−1)、塩(A1−3−1)、塩(A1−4−1)、塩(A2−1−1)、塩(A3−1−1)、塩(A4−1−1)、塩(A5−1−2)又は塩(A6−1−1)及び樹脂(B1)又は樹脂(B2)、並びに表1に記載の各成分、溶剤を混合して溶解し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルタで濾過して、液状のレジスト組成物を調製した。そして以下のようにしてこれらのレジスト組成物からレジストパターンを製造し、その特性を(解像度及びマクスエラーエンハンスメントファクター)を評価した。また比較用として式(X)で表される酸発生剤(トリフェニルスルホニウム 1−アダマンチルメトキシカルボニルジフルオロメタンスルホナート)を用いてレジスト組成物(製造例No.20)を調整し、その特性も評価した。結果を表2に示す。
【0222】
【表1】

【0223】
表1中、樹脂B1、B2、酸発生剤X、塩基性化合物C1、並びに、溶剤の種類及び使用量は以下の通りである。
【0224】
<樹脂>
樹脂B1、B2:上記樹脂合成例参照
【0225】
<酸発生剤>
酸発生剤X:
【0226】
【化62】

【0227】
<塩基性化合物>
塩基性化合物C1:2,6−ジイソプロピルアニリン
【0228】
<溶剤>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 265部
2−ヘプタノン 20.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20.0部
γ−ブチロラクトン 3.5部
【0229】
(1)レジストパターンの製造
シリコンウェハに、有機反射防止膜用組成物(ARC−29;日産化学(株)製)を塗布して、205℃及び60秒の条件でベークすることによって、厚さ780Åの有機反射防止膜を形成した。次いで前記有機反射防止膜の上に、レジスト組成物を乾燥後の膜厚が85nmとなるようにスピンコートした。レジスト組成物を塗布した後、得られたシリコンウェハをダイレクトホットプレート上にて、表1に記載の温度(TPB)で60秒間プリベークした。このようにしてプリベーク後のレジスト膜が形成されたシリコンウェハに、ArFエキシマステッパー(FPA5000−AS3;(株)キヤノン製、NA=0.75、2/3Annular)用いて、ダークフィールドラインアンドスペースパターンを有するマスクを介して、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。なお「ダークフィールドラインアンドスペースパターンを有するマスク」とは、ベースの遮光部(クロム層)に透光部(ガラス面)が形成されたマスクであって、遮光部と透光部との線幅が1:1となるように、外側に遮光部、及び内側に透光部を有するマスクをいう。
【0230】
露光後に、ホットプレート上にて表1に記載の温度(TPEB)で60秒間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。
【0231】
線幅100nmのラインアンドスペースパターンを形成するためのマスクで形成されたレジストパターンの線幅が100nmとなる露光量を「線幅100nmにおける実効感度」とし、線幅85nmのラインアンドスペースパターンを形成するためのマスクで形成されたレジストパターンの線幅が85nmとなる露光量を「線幅85nmにおける実効感度」とした。前記レジストパターンの線幅は走査型電子顕微鏡(S−4100;(株)日立製作所製)で測定した。
【0232】
(2)解像度評価
製造例No.20(比較例)のレジスト組成物を基準(△)として、以下のようにして解像度を評価した。詳しくは線幅100nmにおける実効感度において、100nmよりも小さい線幅を形成するためのマスクを用いてもパターンを解像できるかどうかを測定し、製造例No.20のレジスト組成物よりも小さい線幅のマスクを使用してもパターンを解像できるものを○(良好)と、製造例No.20のレジスト組成物と同等の線幅のマスクでしかパターンを解像できないものを△(基準)と、製造例No.20のレジスト組成物よりも大きい線幅のマスクでしかパターンを解像できないものを×(不良)と評価した。
【0233】
(3)マスクエラーエンハンスメントファクター(MEEF)評価
線幅85nmにおける実効感度において、それぞれ90nm、95nm及び100nmのサイズのマスクを用いてパターンを形成し、マスクサイズを横軸に、各マスクを用いて形成したパターンの線幅を縦軸にプロットした時の直線の傾きをMEEFとして算出した。製造例No.20(比較例)のレジスト組成物のMEEFを基準(△)とし、これと比べてMEEFが小さくなっているものを○(良好)と、同等のものを△(基準)と、大きくなっているものを×(不良)と評価した。
【0234】
【表2】

【0235】
表2の結果から、本発明の塩(A1)を酸発生剤として使用したレジスト組成物(製造例No.1〜19)は、従来の酸発生剤を使用したレジスト組成物(製造例No.20)と比べて、良好なマスクエラーエンハンスメントファクターを示すことが分かる。また本発明の塩(A1)を使用すれば、従来のものと同等以上の解像度を達成できる。
【産業上の利用可能性】
【0236】
本発明の塩(A1)は、化学増幅型レジスト組成物用の酸発生剤として有用である。塩(A1)を含むレジスト組成物は、従来のものと同等以上の解像度、及び従来のものよりも優れたマスクエラーエンハンスメントファクターを示す。塩(A1)を含むレジスト組成物は、ArF又はKrFなどのエキシマレーザーリソグラフィ、及びArF液浸露光リソグラフィなどに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A1)で表される塩。
【化1】


[式(A1)中、Z+は有機カチオンを表す。Q1及びQ2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は直鎖状又は分枝鎖状のC1-6ペルフルオロアルキル基を表す。La1は、−(CH2m1−を表し;m1は1〜6の整数を表し;前記−(CH2m1−のメチレン基は酸素原子(−O−)又はカルボニル基(−CO−)で置換されていてもよく;前記−(CH2m1−の水素原子は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-4脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。La2は、単結合、−O−(CH2L1−又は−CO−O−(CH2L1−を表し;L1は、1〜6の整数を表し;前記−(CH2L1−のメチレン基は酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよく;前記−(CH2L1−の水素原子は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-4脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。Ra1は、2価の環式のC4-36脂肪族炭化水素基又は2価のC6-18芳香族炭化水素基を表し;前記2価の環式の脂肪族炭化水素基又は前記芳香族炭化水素基の水素原子は、ハロゲン原子、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-12脂肪族炭化水素基、C7-21アラルキル基、グリシドキシ基、或いはC2-4アシル基で置換されていてもよく;前記2価の環式の脂肪族炭化水素基の水素原子は、C6-20芳香族炭化水素基で置換されていてもよく;前記直鎖状、分枝鎖状又は環式の脂肪族炭化水素基、或いは前記アラルキル基のメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。Ra2は、式(II−1)又は式(II−2)で表される脱離基である。]
【化2】


[式(II−1)中、Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、水素原子、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基を表す。Ra5は、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-24脂肪族炭化水素基を表す。
式(II−2)中、Ra6は、2価のC2-24脂肪族炭化水素基を表す。Ra7は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基を表す。]
【請求項2】
a1が、式(I−1)、式(I−2)、式(I−3)又は式(I−4)のいずれかで表される請求項1に記載の塩。
【化3】

【請求項3】
a1が、−CO−O−又は−CO−O−(CH2k1−であり、k1が1〜4の整数である請求項1又は2に記載の塩。
【請求項4】
式(a1−1−1)、式(a1−1−2)、式(a1−1−3)、式(a1−1−4)、式(a1−1−5)、式(a1−2−1)、式(a1−3−1)、式(a1−4−1)又は式(a1−5−1)で表されるアニオンを含む請求項1〜3のいずれかに記載の塩。
【化4】

【請求項5】
+が、式(a2−1)又は式(a2−2)で表される請求項1〜4のいずれかに記載の塩。
【化5】


[式(a2−1)中、Ra8〜Ra10は、それぞれ独立に、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-30脂肪族炭化水素基、或いはC6-18芳香族炭化水素基を表し;前記脂肪族炭化水素基又は前記芳香族炭化水素基の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基、グリシドキシ基或いはC2-4アシル基で置換されていてもよく;前記脂肪族炭化水素基の水素原子はC6-18芳香族炭化水素基で置換されていてもよく;前記芳香族炭化水素基は、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-36脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。]
【化6】


[式(a2−2)中、Ra11及びRa12は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基を表し、n1及びo1は、それぞれ独立に0又は1を表す。但しn1又はo1が0であるとは、それぞれの置換基が存在しないことを意味する。]
【請求項6】
+が、式(a2−1−1)で表される請求項5に記載の塩。
【化7】


[式(a2−1−1)中、Ra23〜Ra25は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、直鎖状、分枝鎖状又は環式のC1-36脂肪族炭化水素基、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基を表し;前記脂肪族炭化水素基の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基、C6-12芳香族炭化水素基、グリシドキシ基或いはC2-4アシル基で置換されていてもよく;w1〜y1は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。但しw1〜y1のいずれかが0であるとは、それぞれ、Ra23〜Ra25のいずれかがが存在しないことを意味し、w1〜y1のいずれかが2以上のとき、それぞれ、複数のRa23〜Ra25のいずれかは、互いに同一でも異なってもよい。]
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の塩を含む酸発生剤。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の塩及び酸の作用によりアルカリ可溶となる樹脂を含むレジスト組成物。
【請求項9】
さらに塩基性化合物を含有する請求項8に記載のレジスト組成物。

【公開番号】特開2011−46694(P2011−46694A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168013(P2010−168013)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】