説明

化学物質及び生物物質検知装置及び方法

本発明は、非実験室条件で手持ち式または携帯用ユニットを使用して、化学物質または生物物質を同定するための装置及び方法を提供する。より具体的には、このシステムは、デジタルコントローラによって安定化させた、可変波長チューナブルレーザーのアレイを含む携帯用ユニットを使用する。この装置は、蛍光を励起するのに使用した狭周波数帯の光源で、試験用のサンプルを励起する。蛍光応答は、広帯域検出器で検出され、デジタル化される。この情報は、その後、サンプルの同定の決定に使用される適切なシグニチャのデータベースを収容しているリモートサーバに無線手段を介して送られる。その結果は、携帯用ユニットまたは携帯情報端末(PDA)に送り返される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的方法を使用して生物物質及び化合物を検出するために使用されるセンサー装置及び一連の方法に関する。この検知装置は、可変波長チューナブルレーザー、光検出器、デジタルコントローラ、及び、無線送信機、を含む、幾つかの電気及び光学の素子で構成される。この方法は、レーザー波長調整、光検出器制御、データ調節、及び、伝送プロトコルソフトウエアを含む、センサーの制御を必要とする幾つかの工程で構成される。
【背景技術】
【0002】
物質や薬物の検出に使用された典型的なアプローチは、レーザー誘起ブレークダウン分光法(Laser Induced Breakdown Spectroscopy:LIBS)を使用する。強い強度のレーザー光がサンプルに照射され、それはプラズマに気化する。サンプルが気化するときに、多重電子遷移によって光の広周波数帯スペクトルが放出される。そしてこの光は、解析されたサンプルの強度に対する波長の外形を順に決定する、光スペクトル解析器に送信される。そのスペクトルデータは、スペクトル中のノイズを除去するためにコンピュータ中のデジタル信号処理(digital signal processing:DSP)によってその後処理される。最終的に、得られたフィルター処理したスペクトルは、既知の生物物質及び化学物質の識別シグニチャのデータベースと比較される。このLIBSアプローチの幾つかの不利な点は、
1.LIBSは、サンプルをプラズマに変えるため、分析工程でサンプルを破壊する。
2.サンプルを破壊することにより現れたスペクトルが、サンプルの一部であり有機分子の一部を通常形成する複合分子に必ずしも必要ではない構成要素(エレメント)に対応する。
3.多数の原子エネルギー準位の電子遷移が一度に発生するため、得られた広帯域スペクトルは実質的な量のノイズを有する。広ノイズスペクトルは、様々な化合物の存在を決定するために、有意な量のデジタル信号処理を必要とする。この状態は、得られたデータの信頼性を低下させる。
4.要求されるDSPの有意水準及び多大な形跡のデータベースによって、有意な処理能力及びメモリを有するコンピュータが必要とされる。これは、センサーを持ち運ぶために、パッケージのサイズを増大させ、また、大きなバッテリーを必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図1(100)は、物質を検知する現在の方法を示す。図示したこの方法は、赤外線照明技術を含む他のアプローチと同様に、LIBSのアプローチを含む。広帯域光源(101)は、光線(102)を発生させて、未知な物質(103)に光をあてるために使用される。この未知な物質(103)の原料は、光を吸収して、光学スペクトル分析器で構成される検出器(105)により検出される放射光(104)を生み出すことによって、順に反応する。この方法の問題は、広帯域数帯の光源(101)がサンプルの原子中の多数の殻の中で一度に電子遷移を生み出すために、放射光(104)がかなりの量のノイズをも含む広帯域の広いスペクトル(106)を有すること、である。
【0004】
図2(200)は、未知の物質(103)を検知するのに使用される装置を示す。光源(101)及び検出器(105)は、未知の物質(103)から広いスペクトル(106)を捉えるのに使用される。装置は、バッテリー及び電源(201)を含む。加えて、一旦広いスペクトル(106)が得られたら、ラップトップコンピュータ(202)を使用してデジタル信号処理を実行する必要性が生じる。このコンピュータは、デジタル信号処理アルゴリズムを遂行するために要求される全ての数学的計算を実行するために高い処理能力を備えることを必要とする。加えて、ラップトップコンピュータ(202)は、既知の化学及び生物サンプルの識別シグニチャの情報を蓄えるために、大きな外部ディスクドライブを含むことを必要とする。全体の装置は、大きく、重く、そして、非常にコストがかかるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、未知な物質の検出方法及び装置で構成される。この感知装置は、センサーとPDA電話機とで構成される。本発明で使用される方法は、レーザー誘起分光法(Laser Induced Spectroscopy)と称される。しかしながら、本発明では、可変波長チューナブルレーザーは結果を向上させるために使用される。センサーは可変波長チューナブルレーザーのアレイを含む。センサー中に含まれるデジタルコントローラーは、各レーザーを制御する。デジタルコントローラは、レーザーが光振動数の狭帯域の光を放射することを、確実にする。
【0006】
化学物質及び生物物質を解析するための典型的な領域は、光の波長の300ナノメートルから900ナノメートルである。それぞれのレーザーは、光の狭い波長に調整される。そのレーザーの強度もまた所定の水準に制御される。
【0007】
波長及び強度は、未知な物質から強い放射スペクトルを得るために、適切に設定される。光源の波長は、強く信頼できるスペクトルを検出するために、適当な強度のスペクトルのある領域から他の領域に、連続的に変化する。我々が適切なレーザーの波長及び強度を変化させる度に、検出されたスペクトルはデジタル化される。情報がデジタル化された後、それは格納のための携帯情報端末(Personal Digital Assistant)及び電話ユニット(PDA-unit)に送られる。一旦、デジタル化され格納された対応する放射スペクトルで波長及び強度の全掃引が実行されると、そのPDA電話は、そのデータをリモートサーバに無線手段を通して送信する。そのリモートサーバは、その情報をフィルターするために使用するデジタル信号処理プログラムを含むことができる。そのサーバーは、その化学物質または物質が何であるかを決定するための解析ツール及びデータベースを含むこともできる。そのサーバは、インターネットまたは他の手段を通して研究所のデータベースに接続することもできる。一旦その物質が同定されると、そのシステムは、物質の同定、または、物質が操作者に危険をもたらす場合の進め方の指示に関連する情報を、PDA電話に送信できる。イオンを描写するセンサーのアレイの本発明はファイルされた中に置かれ得る。アレイからのデータは、ハブを使用することによって無線手段を通して収集することができる。
【0008】
本発明の利点は、検出されたスペクトル(305)が高い信号対雑音比を示すことである。これは、検出の信頼性を増大させるであろう。
【0009】
本発明の別の利点は、検出工程がサンプルを破壊しないということである。
【0010】
さらに、本発明の別の利点は、リモートサーバ(403)のデータベースの使用によって、センサーが携帯可能で、精度が向上することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の詳細、及びその好適な実施形態は、図面を参照してさらに理解されるであろう。図1は物質の感知のための現在の方法を示す。図2は現状の方法で物質の同定のために使用される装置である。図3はこの発明で使用される方法を示す。図4は本発明の実施形態によって物質の同定に使用するための装置である。図5はこの発明での携帯用の光生化学センサのブロック図である。
【0012】
図3はこの発明での物質を検知するための方法を示す。携帯用のセンサー(301)は、可変波長チューナブルレーザーのアレイを含む。携帯用のセンサー(301)は、狭周波域のスペクトル(302)のレーザー光を放出する。未知な物質(303)は、そのレーザー光(302)を吸収する。
【0013】
未知な物質(303)中の原子は、レーザー光を吸収し、順に光(304)の放出スペクトルを生み出す。そのスペクトルは、情報を格納するセンサー(301)の内側の内部検出器によって検出される。感知工程は、内部レーザーを調整することによってレーザー光(302)のスペクトルの帯域群を掃引するセンサー(301)で継続される。異なる帯域のスペクトルが未知な物質(303)に用いられる毎に、対応する放出されたスペクトル(304)が検出される。スペクトルの一帯域の未知な物質(303)の応答だけが一度に検出されるので、検出されたスペクトル(304)はグラフ(305)に示したように低ノイズで向上した応答を生み出す。
【0014】
図(400)は、物質同定のための装置及び方法全体を示す。一旦放出されたスペクトル(305)がプローブ(301)によって検知されると、情報は無線リンクを通して互換性があるPDA電話(401)に転送される。PDA電話(401)は、そのセンサー情報を無線送信(402)を通してリモートサーバ(403)に転送する。そのリモートサーバ(403)は、未知な物質(103)のためのスペクトルの解析を行うために、高性能コンピュータ及び広範囲に及ぶデータベースを含む。リモートサーバ(403)は、代替の手段によって研究センターに常駐する広範囲のデータベースに接続され得る。そのリモートサーバは、データベースからの情報を使用して未知な物質の同定を行う。その物質の同定が一旦確立されると、そのサーバは、操作者が取るべき行動またはその物質が危険をもたらす場合の予防措置を考慮した指示をPDA電話に送信する。
【0015】
図5は携帯用センサー(301)の可能な実施形態を示す。可変波長チューナブルレーザー(501−504)のアレイは、光ヘッド(505)に接続される。可変波長チューナブルレーザー(501−504)のそれぞれ一つは、狭周波数帯のレーザー光(302)を供給するために使用される。未知な物質(103)によっては、図中に示したものよりも多くのレーザーが要求され得る。その光ヘッド(505)は、全てのレーザー(501−504)から光を集め、光を集中し、そして、光線(302)を生み出す。そのビームは順に、未知な物質(103)を含むサンプルフォルダー(506)に用いられる。放出されたスペクトル(304)は検出器(507)によって集められる。その検出器は、電荷結合素子を含む光スペクトル解析器を備えてもよい。いくつかの応用では、電荷結合素子は単一のフォトダイオード検出器で代用し得る。携帯用センサー(301)も、レーザー(501−504)の温度を制御するために使用されるヒーター冷却器(508)を含み得る。レーザーアレイコントローラー及びチューナー(509)は、正確な波長に対するレーザー光(501−504)を生み出すために要求される値にヒーター冷却器(508)の温度を定めるために使用される。バッテリー及び電源(510)もまた、携帯用センサー(301)の一部である。無線送受信機(511)はそのセンサー情報をPDA電話(401)に送るために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】物質の感知のための現在の方法を示す。
【図2】現状の方法で物質の同定のために使用される装置である。
【図3】本発明で使用される方法を示す。
【図4】本発明の実施形態によって物質の同定に使用するための装置である。
【図5】本発明での携帯用の光生化学センサのブロック図である。
【符号の説明】
【0017】
103 未知な物質
301 センサー、プローブ
302 レーザー光、狭周波域のスペクトル
303 未知な物質
304 光、放出されたスペクトル、検出されたスペクトル
305 グラフ、放出されたスペクトル
400 図
401 PDA電話
402 無線送信
403 リモートサーバ
501−504 可変波長チューナブルレーザー
505 光ヘッド
506 サンプルフォルダー
507 検出器
508 ヒーター冷却器
509 チューナー
510 電源
511 無線送受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変波長チューナブルレーザーアレイ(501−504)と、
光ヘッド(505)と、
試料ホルダー(506)と、
光検出器(507)と、
熱冷却素子(508)と、
コントローラー及びチューナー(509)と、
バッテリー及び電力供給ユニット(510)と、
無線送信機(511)と、
を備える生化学センサー(301)であって、
該センサー(301)は化学物質及び生物物質を検出するために必要な結合及び機能性を提供する、生化学センサー。
【請求項2】
前記センサーは、携帯用かつ手持ち式の用途に適合するコンポーネントを含む、請求項1に記載の生化学センサー。
【請求項3】
蛍光を供給するために狭周波数帯レーザー励起源を使用する、化学物質または生物物質を検知する方法。
【請求項4】
検知した情報は、分析のために離れた位置に無線手段を通して送られる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記分析は、リモートサーバに収容しているデータベースを使用して行われる、請求項4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−528782(P2006−528782A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532299(P2006−532299)
【出願日】平成16年2月25日(2004.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/005627
【国際公開番号】WO2005/001431
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505320872)セイックス・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】