説明

化学物質検出方法およびシステム

サンプル中に関係ある被分析物を検知するシステムおよび方法が提供される。方法は関係あるイオンでないイオンをろ過して取り除き、かつイオン易動度スペクトルを生成するために、サンプルからイオン易動度分光測定式探知器を通過して得られた1組のイオンを通過することを含んでいる。少なくともいくつかのイオンのマススペクトルは質量分析計を使用して生成される。また方法は、関係あるピークがイオン易動度スペクトルとマススペクトルの1つ以上で見つかる場合で、且つ、関係あるピークは、関係ある被分析物に関連したピークの所定パターンに従うか、イオン移動度分光分析によって確認される場合に、関係ある被分析物がサンプルにあることを決定することを含んでいる。この方法の変形例も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連する出願への相互参照]
本出願は、同時係属中の米国の仮の特許出願連続番号No.61/068,515(‘515出願)に関連しており、優先権を請求する。‘515出願は2008年3月8日に申請され、「化学物質検出方法およびシステム」との発明の名称をつけられる。‘515出願の全部の主題および明細書の情報は、参照によって全体がここに組込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明の主題は、一般に化学物質検出システムに関し、特に1つ以上のイオン易動度分光測定式探知器(ion mobility spectrometer)および質量分析計(mass spectrometer)を有する化学物質検出システムに関する。
【0003】
化学物質検出システムは特別の脅威を検知するために使用される。例えば、これらの脅威は爆発物、違法医薬品、化学兵器、汚染物質および毒素を含んでいる。これらの検出システムの多くはイオン易動度分光測定式探知器を含んでいる。イオン易動度分光測定式探知器は、サンプル中の被分析物から得られたイオンの存在を測定する。イオンはサンプルからの蒸気分子のイオン化により生成される。サンプルは、爆発物、麻薬又は別の化学物質について調べられている環境空気、包装、荷物又は人からの粒子状物質の形式、又は環境空気からの蒸気の形式で得られる。
【0004】
サンプル中の被分析物から得られるイオンは、イオン易動度スペクトル上でピークとして表わされる。スペクトル中のピークは、関係ある特別のイオンがサンプルの中にあるかどうか判断するために使用される。関係あるイオンは、関係ある特別の被分析物に関係しているイオンである。関係ある被分析物は、爆発物、薬、化学兵器および検知されるように探し求められる別の化学薬品で普通に見つかる化学種である。
【0005】
イオン易動度分光測定式探知器に関連した1つの問題は分光計の分解能である。ある場合には、既知の分光計が、サンプルのバックグラウンドの中にある化学物質と関係ある被分析物を区別するのに苦労する。これらの装置は誤検出と検出漏れのアラームを生成する。分光計が、スペクトル中のピークは脅威を表わすと誤解する場合、誤検出アラームが生じる。分光計が、関係ある被分析物に対応するスペクトル中のピークを、関係ある被分析物に対応するものと誤解する場合、検出漏れのアラームが生じる。関係あるピークが別のピークによって抑制されるか隠される場合、検出漏れのアラームも生じる。これらの別のピークは、関係ある被分析物でないサンプル中の別の被分析物に関係している。
【0006】
したがって、サンプル中に1つ以上の関係ある被分析物が存在することを、より正確に検知する改善された化学物質検出システムに対する需要が存在する。そのようなシステムは、爆発物、違法医薬品、化学兵器、毒素又は汚染物質を検知するための既存の手続きを改善できる。
【発明の概要】
【0007】
本実施例では、サンプル中の関係ある被分析物を検知する方法が提供される。本方法は関係あるイオンでないイオンを濾過して取り除き、かつイオン易動度スペクトルを生成するために、イオン易動度分光測定式探知器を通してサンプルから得られた1組のイオンを通過することを含んでいる。少なくとも幾つかのイオンのマススペクトルは質量分析計を使用して生成される。本方法はまた、関係あるピークがイオン易動度スペクトルとマススペクトルの1つ以上で見つかり、関係あるピークが、関係ある被分析物に関連したピークの所定パターンに従う場合に、関係ある被分析物がサンプル中にあると決定することを含んでいる。随意的に、通過する操作は互いに直列の関係がある複数のイオン易動度分光測定式探知器を通してイオンを通過することを含む。関係あるピークは、関係ある被分析物の分子(モノマー)、並びに二量体、三量体などと同様なそのクラスタに関連したイオンから形成された分子のピーク、関係ある被分析物から得られたイオン破片から作られたイオン破片ピーク(ion fragment peak)、関係ある被分析物(モノマー、二量体、三量体、その他、又はモノマーの破片)とドーパントの間の反応から形成された化学種から形成されたドーパント関連のピーク、又は関係ある被分析物と関係する別のピークの1つ以上を含んで構成される。当該別のピークは、分子と、関係ある被分析物の破片と、基質の電子/プロトン親和力の高い要素との間の特定の錯体(complexes)を含む。一実施例では、本方法は関係あるピークが、マススペクトルに関係ある被分析物と関係する、分子のピーク(モノマー、二量体、三量体、その他の少なくとも1つ)並びに、イオン破片又はドーパント関連のピーク又は別のピークの少なくとも一つを含んでいる場合に、関係ある被分析物がサンプル中に存在すると定めることを含む。
【0008】
別の実施例では、サンプル中の関係ある被分析物を検知するためのシステムが提供される。本システムはイオン易動度分光測定式探知器、質量分析計および計算装置を有する。イオン易動度分光測定式探知器は関係あるイオンでないイオンを濾過して取り除き、かつイオン易動度スペクトルを生成するために、サンプルから得られた1組のイオンを受け取るように構成される。イオン易動度分光測定式探知器から少なくともいくつかのイオンを受け取り、かつイオン易動度分光測定式探知器から受け取られるイオンのマススペクトルを生成するために、質量分析計は、イオン易動度分光測定式探知器と直列に接続される。計算装置は、関係あるピークがイオン易動度スペクトルとマススペクトルの1つ以上で見つかり、関係あるピークが、関係ある被分析物に関連したピークの所定パターンに従うか、又はイオン易動度ピークが確認される場合、関係ある被分析物がサンプル中にあることを決定する。随意的に、システムは、イオン易動度分光測定式探知器と質量分析計と直列に接続される少なくとも1台の追加の質量分析計を有する。別の実施例では、システムは、単一の質量分析計に結合された一続きのフィールド補償イオン易動度分光測定式探知器を有する。別の実施例では、一続きのイオン易動度分光測定式探知器は一続きの質量分析計に接続される。質量分析計と追加の質量分析計の各々によって受け取られるイオンは、マススペクトルを生成するために使用される。一実施例では、計算装置は、関係あるピークが、マススペクトルに関係ある被分析物と関係する、分子のピーク、並びに、イオン破片ピーク、ドーパント関連のピーク、および別のピークの少なくとも1つを含んでおり、また既知のピークパターンが続く場合に、関係ある被分析物がサンプル中に存在すると定める。
【0009】
別の実施例では、関係ある被分析物がサンプル中にあるかどうか判断するように構成された計算装置用のコンピュータ可読記憶媒体が提供される。コンピュータ可読記憶媒体は、サンプルから得られたイオンのイオン易動度スペクトルとマススペクトルの1つ以上を生成し、かつイオン易動度スペクトルとマススペクトルの1つ以上の中で関係あるピークを検知するように計算装置を命令する命令を有する。その命令は、関係あるピークが関係ある被分析物に関連したピークの所定パターンに従うか、そして関係あるピークがピークの所定パターンに従う場合に、関係ある被分析物がサンプル中にあるとの通知を提供するかどうか判断するように計算装置を命令する。任意的に、その命令は、関係ある分子のピーク(例えばモノマー、二量体、三量体、その他)、および、関係あるイオン破片ピーク、関係あるドーパント関連のピーク(例えば分子ドーパント、断片ドーパント(fragment-dopant))、又は関係ある被分析物と関係する別のピークの少なくとも1つが、マススペクトルで見つかる場合に、通知を提供するように計算装置を命令する。一実施例では、命令は、イオン易動度分光測定式探知器の第1の電場を使用して関係あるピークの一部を得ると共に、イオン易動度分光測定式探知器の第2の電場を使用して、関係あるピークの追加部分を得ることにより、関係あるピークの存在を確認するように計算装置に命令する。
【0010】
別の実施例では、サンプル中の関係ある被分析物を検知するための別のシステムが提供される。システムは第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器と計算装置を有する。第1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器は、セットから関係あるイオンでないイオンを除去して取り除くように、サンプルから生成された1セットのイオンを受け取り、及び/又は、第1のイオン易動度スペクトルを生成する。第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器は、第1のFCIMS(フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器)と接続され、第2のイオン易動度スペクトルを生成するように、第1のFCIMSからイオンを受け取る。ここで、第2の電場は第1の電場より少なくとも4倍高い。関係あるピークが第1と第2のイオン易動度スペクトルの1つ以上にある場合に、サンプル中に関係ある被分析物の存在を決定するために、計算装置は第1と第2のイオン易動度スペクトルを分析する。任意的に、関係あるピークが第1と第2のFCIMSの少なくとも一方で確認される場合、計算装置は、関係ある被分析物の存在を決定する。一実施例では、第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器の各々は、第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器によって取り除かれるか検知される前に、イオンが通り抜けるような電場を生成するように構成された電極プレートに対向することを含む。第1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器の電極プレートは、第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器の電極プレートとは異なる距離によって分離されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は一実施例による化学物質検出システムの構成図である。
【図2】図2は別の実施例による化学物質検出システムの構成図である。
【図3】図3は図1に示されるフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器の構成図である。
【図4】図4は図3に示されるフィルタステージの第1と第2の電極プレートの間で移動するプラスイオンの構成横断面図である。
【図5】図5は様々な電界の強さでの3つのイオン種の各々のイオン移動度曲線を示すグラフである。
【図6】図6は図1に示される継ぎ手の構成図である。
【図7】図7は図1に示される質量分析計の構成図である。
【図8】図8は図1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器又は質量分析計104によって生成されたスペクトルの一実施例である。
【図9】図9は一実施例によるサンプル中の関係ある被分析物の存在を検知する方法のフローチャートである。
【図10】図10は別の実施例によるサンプル中の関係ある被分析物の存在を検知する方法のフローチャートである。
【図11】図11は別の実施例によるサンプル中の関係ある被分析物の存在を検知する方法のフローチャートである。
【図12】図12は一実施例によるスペクトル中に関係あるピークの存在を確認する方法のフローチャートである。
【図13】図13は一実施例による確認モードでのフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器を使用して得られるスペクトル中の関係あるピークである。
【図14】図14は一実施例によるフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器を使用して得られるスペクトル中の別のタイプのピークである。
【図15】図15は別の実施例によるサンプル中の関係ある被分析物の存在を検知する方法と、確認する方法のフローチャートである。
【図16】図16は本発明の実施例がコンピュータ可読媒体上に記憶され、配布され、インストールされる例となる手法のブロック図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は一実施例による化学物質検出システム100の構成図である。システム100はサンプル中の関係ある被分析物の存在を検知する。サンプルはパッケージ又は別の対象物、空気、または人から得られる。関係のある被分析物は、例えば、特別の化学薬品又は1つ以上の爆発物、違法医薬品、化学兵器、産業毒素又は環境汚染物に関係している被分析物である。例えば、一定の化学種は、起爆装置に隣接した位置で頻繁に見つけられる。これらの化学種は関係のある被分析物である。
【0013】
検出システム100は、質量分析計104が相互連結されたフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102を有する。フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、1組のイオンを生成するためにサンプル108からの被分析物をイオン化できる分光計である。実施例では、(図8に示されるような)ピークのスペクトル810(イオン易動度スペクトル810と呼ばれる)を生成するために、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、イオンの一組中でのイオンの存在を測定する。下記に述べられるように、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、電場を生成する(図3に示される)電極プレート316と318の間にイオンを通過させることにより、イオン易動度スペクトル810を生成する。あるイオンはプレート316と318の一方に引きつけられるが、残りのイオンがプレート316と318の間を通過して、検知される。ピークは、サンプル中の様々な被分析物から得られたイオンを表わす。サンプル中の被分析物の同一性は、多数のピークが検知されるピークのパターンに加えて、イオン易動度スペクトル810上のピークの位置、ピークの高さ、ピークの幅、およびピークの形状の1つ以上から決定される。特別のサンプル108用に生成されるイオン易動度スペクトル810は、サンプル108の単一か多数のピークの特徴的な性質である。サンプル108中の被分析物を識別するために、2つ以上のイオン易動度スペクトル810が互いと比較される。加えて、2つ以上のイオン易動度スペクトル810がサンプル108中の被分析物の検知を確認するか検証するために比較される。
【0014】
フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、イオンの一組から関係ないイオンを取り除く。例えば、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、関係ないイオンであるイオンを取り除いて、イオン易動度スペクトル810を提供するか、又は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器は、イオン易動度スペクトル810を提供せずに、関係ないイオンであるイオンを取り除く。関係あるイオンは関係ある被分析物から生成されるイオンである。イオンの一組に関係のある残余イオンは、イオンの流れ110としてフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102から出力される。イオンの質量や質量電荷比が、関係ある質量や質量電荷比の範囲内にある場合に、質量分析計104によってイオンが関係あるイオンであると定められる。
【0015】
一実施例では、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、イオンの一組中の関係あるイオンだけの存在を検知する。フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、サンプル108から得られた全イオンの存在を検知することを試みる代わりに、関係あるイオンの存在を専ら検知することにより、特別のサンプル108用のイオン易動度スペクトル810を生成するのに必要な時間の量を減らす。フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、関係あるイオンでないイオンを取り除いた後であって、イオン流110中の1つ以上の残余イオンの一組を通過させる前に、関係あるイオンの存在を検知する。フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、サンプル108から得られたイオン易動度スペクトル810を計算装置112まで伝える。
【0016】
イオンの流れ110は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102から継ぎ手106まで通される。継ぎ手106は質量分析計104をフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102に相互連結させる。質量分析計104中に真空レベルを維持する間に、継ぎ手106によってフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102が質量分析計104に接続される。継ぎ手106は、イオンの流れ110を受け取り集中させる。その後、継ぎ手106は、質量分析計104にイオンの流れ110を向ける。一実施例では、継ぎ手106はイオン漏斗を有する。別の実施例では、継ぎ手106はイオン試料採取器とイオン・スキマーコーン(円錐形イオン採取器)を有する。
【0017】
質量分析計104は、継ぎ手106からイオンの流れ110を受け取る。質量分析計104は、イオンの一組中の関係あるイオンの存在を測定する。一実施例では、質量分析計104は分子とフラグメント・イオンを生成し、またそれらの存在を検知する。例えば、質量分析計104は、イオンおよび中性のサンプル分子の流れ110の上で電子衝撃、大気圧化学イオン化又は別のイオン化方法を使用することにより、追加のイオンを生成してもよい。質量分析計104は、(マススペクトル810として参照された)関係ある被分析物と関係する分子イオン、及び/又はイオン破片、及び/又はドーパント関連のピーク、及び/又は別のピークを表わすスペクトル810を生成する。マススペクトル810は計算装置112に伝えられる。
【0018】
計算装置112は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102からイオン易動度スペクトル810を受け取り、質量分析計104からマススペクトル810を受け取る。その後、計算装置112は、関係ある被分析物がサンプル108の中にあるかどうか判断するために、イオン易動度スペクトル810とマススペクトル810中の1つ以上のピークを比較する。例えば、計算装置112は、1つ以上の関係ある被分析物がサンプル108にあるかどうか判断するために、質量分析計104によって生成されたマススペクトル810を調べる。計算装置112は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102によって生成されたイオン易動度スペクトル810、および質量分析計104によって生成されたマススペクトル810の両方を調べる。計算装置112は、1つ以上の特別の分子のピークが各スペクトル810中にあるかどうか判断するために、これらのスペクトル810を調べる。1つ以上の特別の分子のピークが両方のスペクトル810中にあることを計算装置112が決定する場合、各スペクトル810にその分子のピークに関連した被分析物がサンプル108の中にあると計算装置112が決定する。一実施例では、分子のピークは関係ある分子のピークを含んでおり、関係ある被分析物で見つかった1つ以上の分子に関連したピークである。分子のピークは、分子のモノマー、二量体、三量体、その他を含むのに加えて、ドーパント・イオンを含む、FCIMSのイオン化領域に存在する別のイオンを有するこれらの種のクラスタを含む。
【0019】
計算装置112は、1つ以上のイオン破片ピークがマススペクトル810にあるかどうか判断する。一実施例では、イオン破片ピークは、関係ある被分析物から得られたイオンの破片から得られるピークを有する。下記に述べられるように、破片は質量分析計104とFCIMSの中に生成される。一実施例では、イオン易動度スペクトル810は、パターン中に配置された1つ以上の分子のピークと、1つ以上のイオン破片ピーク(またはイオン化領域の別のイオンを備えたイオン破片ピークのクラスタ)を有する。イオン易動度スペクトル810中のパターンは、ピークの形状と幅に加えて、ピークの振幅又は高さと同様に、互いに関しての分子ピークとイオン破片ピークの相対的位置を有する。イオン易動度スペクトル810とマススペクトル810の各々の中に特別の分子のピークが存在する場合、特別のイオン破片に関連した1つ以上のイオン破片ピークが、マススペクトル810で見つかる。また、マススペクトル810中の分子ピークとイオン破片ピークのパターンは、関係ある被分析物のマススペクトル810中の分子ピークとイオン破片ピークのパターンと同様である。そこで、計算装置112はそれらのピークに関連した被分析物がサンプル108中にあると決定する。
【0020】
下記に述べられるように、1つ以上のドーパントがフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102へ導入される。望ましくは、ドーパントは、サンプル108中の関係ある被分析物と接続するか、又は他の場合には、反応してもよい。ドーパントと関係ある被分析物との組み合わせ又はクラスタ、又はドーパントと関係ある被分析物のフラグメントとの組み合わせかクラスタ、又はドーパントと関係ある被分析物の別の組み合わせも、ドーパント関連のピークと呼ばれるイオン易動度スペクトル810中のピークを生成する。計算装置112は、分子のピーク、イオン破片ピークおよび1つ以上のドーパント関連のピークが、実施例中のイオン易動度スペクトル810にある場合、関係ある被分析物がサンプル108中にあると決定する。関係ある被分析物と関係する別のピークが、スペクトル中にあってもよい。また、計算装置112は、関係ある被分析物と関係する分子のピーク、イオン破片ピーク、1つ以上のドーパント関連のピーク又は別のピークが、実施例中のイオン易動度スペクトル810の中にある場合、関係ある被分析物がサンプル108の中にあると決定する。
【0021】
代替例として、検出システム100は、互いが相互連結された2つの異なるフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器を含んでいてもよい。例えば、図1の参照番号102、104は2つの異なるフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、104を表わす。フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、104は、異なる距離だけ離れている電極プレート316、318(図3に示される)を有する点で異なる。例えば、第1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102には、第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器104の電極プレート316、318より大きな分離距離330(図3に示される)によって分離される電極プレート316、318がある。第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、104として使用される装置の1つの具体例は、第1のイオン易動度分光測定式探知器102としてシオニクス(Sionex)社によって製造されたマイクロ・ディーエム・エックス(microDMx)(登録商標)センサー、第2のイオン易動度分光測定式探知器104としてオゥルストーン・ナノテック(Owlstone Nanotech)社によって製造されたローンスター(Lonestar)(登録商標)モニター、又はツーリスト(Tourist)(登録商標)テスト・プラットフォーム中で使用されるFAIMSセンサーを有する。別の例において、装置のシーケンスは逆にされてもよい。
【0022】
一実施例では、第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、104の間の継ぎ手106は、第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、104の間の真空を維持しない。例えば、第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、104のいずれにも真空を達成し又は維持する必要がないとき、継ぎ手106は真空を維持しない。
【0023】
別の実施例では、第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、104の間の継ぎ手106は、第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、104の間の真空を維持する。例えば、第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、104の何れか一方又は両方に真空を達成し又は維持する必要があるとき、継ぎ手106は真空を維持しなければならない。
【0024】
別の実施例では、第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、104の間の継ぎ手106は、第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、104の間の周囲圧力より高圧を維持する。例えば、第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102の何れか一方又は両方に、周囲圧力より高圧を達成し又は維持する必要があるとき、継ぎ手106は高圧を維持しなければならない。
【0025】
第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器104と比較される場合に、第1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、サンプル中の異なるイオンを識別する際の分解能を改善する一方で、電極プレート316、318の間のより大きな分離距離330を伴って、プレート316と318の間でより低い電場を達成する。第1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器104へ残余のイオンを通過する前に関係あるイオンでないイオンをろ過して取り除くために、第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器104に関してこの改善された分解能を使用する。対照的に、第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器104は、サンプル中の特定のイオン間の分離を改善することができるような、実質的により大きな電場を生成すると共に、第1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102に形成できない、新しい特定のイオンの構成を生成する。また、第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器は、第2のイオン易動度スペクトルを集める前に関係あるイオンでないイオンをろ過して取り除く。第1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器104からの特定のピークの組み合わせによって、サンプル108中に関係ある被分析物の検知について、全体的な選択性が向上することにつながる。
【0026】
図2は、別の実施例による化学物質検出システム200の構成図である。検出システム200は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202の直列部206と、質量分析計104、210の直列部214を追加した検出システム100(図1に示される)と同様である。例えばグリフィン・アナリティカル・テクノロジーズ・エルエルシー(Griffin Analytical Technologies, LLC)によって製造された円筒状イオントラップは、質量分析計104、210を互いに連結するために使用される。または、直列部214は、グリフィン社からの円筒状イオントラップのシリーズを構成する。直列部206は、互いが相互連結された2つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202を有する。2つのフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202が直列部206に示されているが、直列部206は直列中で相互に連結した多数のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202を含んでいてもよい。代替例として、直列部206は単一のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102を有していてもよい。直列部214は、互いが相互連結された2つ以上の質量分析計104、210を有する。2台の質量分析計104、210が直列部214に示されているが、直列部214は多くの質量分析計104、210を有していてもよく、あるいは単一の質量分析計104でもよい。
【0027】
第1の継ぎ手204は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202の隣接した部分を相互に連結させる。一実施例では、継ぎ手204は継ぎ手106(図1に示される)と同じか、又は類似している。別の実施例では、継ぎ手204は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202のいずれにも真空を維持しない点で、継ぎ手204が継ぎ手106と相違する。加えて、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202の直列部206は、質量分析計104と相互連結される。直列部206は、第2の継ぎ手208を介して、質量分析計104と相互連結される。第2の継ぎ手208は、継ぎ手106および第1の継ぎ手204と同じか類似している。第3の継ぎ手212は、質量分析計104、210の隣接した部分を相互に連結させる。一実施例では、継ぎ手212は継ぎ手106(図1に示される)と同じか類似している。
【0028】
操作では、サンプル108は、直列部206中の第1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102へ導入される。上に説明されるように、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102はサンプル108から1組のサンプル分子を得て、それらをイオン化し、イオン易動度スペクトル810を生成し、イオン易動度スペクトル810(図8に示される)で1つ以上の関係あるイオンの存在を決定する。イオン易動度スペクトル810は計算装置112に伝えられる。一実施例では、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、イオンの一組から少なくともあるイオンをろ過して取り除く。第1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、関係あるイオンでないイオンの少なくともいくつかをろ過して取り除く。
【0029】
その後、第1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、イオンの流れ110のイオンを第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器202へ渡す。第1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器202に継ぎ手204を通してイオンの流れ110を渡す。
【0030】
第1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102と同様に、第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器202は、第2のイオン易動度スペクトル810を生成するように、イオンの流れ110から受け取った1つ以上の関係あるイオンの存在を検知する。その後、第2のイオン易動度スペクトル810は計算装置112に伝達される。第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器202は、セットから少なくともあるイオンをろ過して取り除く。第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器202は、関係あるイオンでないイオンの少なくともいくつかをろ過して取り除く。その後、第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器202は、イオンの流れ110の一組中の残余のイオンを質量分析計104へ渡す。第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器202は、質量分析計104に継ぎ手208を通してイオンの流れ110を渡す。
【0031】
直列部206が2つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202を有する場合、第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器202は、イオンの流れ110を直列部206中の次のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器へ渡す。直列部206中のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器の各々は、関係あるイオンでないイオンをろ過して取り除き、イオン易動度スペクトル810に関係あるイオンの存在を検知する。加えて、直列部206中のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器の各々は、計算装置112にイオン易動度スペクトル810を伝える。一実施例では、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202はすべて、関係あるイオンでないイオンをろ過して取り除くが、しかし、それらのすべてがイオン易動度スペクトル810を生成するとは限らない。例えば、第1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、イオン易動度スペクトル810を生成せずに、関係あるイオンでないイオンをろ過して取り除く。フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202の直列部206は、残余のイオンからイオン易動度スペクトル810を生成するフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器へ残余のイオンを渡す前に、関係あるイオンでないイオンを連続してろ過して取り除いてもよい。代替例として、第1のイオン易動度分光測定式探知器102はイオン易動度スペクトル810を生成し、次に、イオンを1つ以上の追加のイオン易動度分光測定式探知器102、202へ渡してもよい。追加のイオン易動度分光測定式探知器102、202は、関係あるイオンでないイオンをろ過して取り除き、そして、最後のイオン易動度分光測定式探知器202だけがイオン易動度スペクトル810を生成する。その後、残余のイオンは、質量分析計104に伝えられる。
【0032】
質量分析計104、210の直列部214は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202の直列部206からイオンを受け取る。質量分析計104、210の1つ以上は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202の直列部206から受け取られ、及び/又は、中立のサンプル分子から第1の質量分析計中で作成したイオンに基づき、マススペクトル810を生成する。フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202と同様に、1以上の質量分析計104、210は、イオンのマススペクトル810をろ過して取り除き、及び/又は、生成する。例えば、第1の質量分析計104は、関係あるイオンでないイオンをろ過して取り除き、マススペクトル810を生成する。その後、第2の質量分析計210は、関係あるイオンでないイオンをさらにろ過して取り除き、別のマススペクトル810を生成する。別の例において、第1の質量分析計104は、関係あるイオンでないイオンをろ過して取り除いてもよいが、マススペクトル810を生成しない。その後、第2の質量分析計210はマススペクトル810を生成する。
【0033】
特別の被分析物がサンプル108にあることを決定するか確認するために、直列部206中のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202によって生成された1つ以上のイオン易動度スペクトル810と、直列部214中の質量分析計104、210によって生成された1つ以上のマススペクトル810は、計算装置112によって使用される。変形実施例では、検出システム200は、質量分析計104、210の直列部214を含んでいない。例えば、検出システム200は、1つ以上の継ぎ手204によって相互に連結した複数のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202を有する。フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202の各々は、各分光計102、202によって受け取られるイオンのイオン易動度スペクトル810を生成する。その後、分光計102、202はそれぞれ計算装置112にスペクトル810を報告する。特別の被分析物がサンプル108にあることを決定し、又は確認するために、直列部206中のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202によって生成されたスペクトル810の1つ以上は、計算装置112によって使用される。
【0034】
代替例として、検出システム200は直列部206に2つの異なるフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器を有する。例えば、図2中の参照番号102、202は2つの異なるフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202を表わしている。上に説明されると共に図1に示されるような第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、104と同様に、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202は、異なる分離距離330によって分離される電極プレート316、318(図3に示される)を有する点で異なる。第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202の間の継ぎ手204は、図1に示される継ぎ手106と同様である。上に説明されるように、第1と第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、202の直列部206は、直列部214中の1つ以上の質量分析計104と接続しているか、あるいは、図1中の102、104のような質量分析計のない状態で使用される。
【0035】
図3は、図1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102の構成図である。一実施例では、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、小型化された場イオン分光計(「FIS」)、横断面のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器(「TFCIMS」)、差動移動度分光計(「DMS」)あるいは高電界非対称波形のイオン易動度分光測定式探知器(「FAIMS」)である。例えば、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、シオニクス(Sionex)社によって製造されたマイクロ・ディーエム・エックス(microDMx)(登録商標)センサー、次の両方ともオゥルストーン・ナノテック(Owlstone Nanotech)社によって製造されたローンスター(Lonestar)(登録商標)モニター、又はツーリスト(Tourist)(登録商標)テスト・プラットフォーム中で使用されるFAIMSセンサーである。
【0036】
フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、サンプル108から得られたイオンの一組に関係あるイオンの存在を検知する。上に説明されるように、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102はイオンの一組から関係あるイオンでない少なくとも若干のイオンをろ過して取り除く。フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、フィルタステージ302および採取ステージ304を通してイオンを通過することにより、イオンをろ過して取り除き、検知する。関係あるイオンでないイオンの少なくともいくつかは、フィルタステージ302でろ過して取り除かれる。関係あるイオンの一部は、採取ステージ304でフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102によってコレクタ310上に集められ検知される。また、残余の少なくとも一部はイオンの流れ110として出口306を通して継ぎ手106まで通過する。代替例として、ほぼどのイオンもコレクタ310によって検知されずに、実質的にイオンは全イオンの流れ110として継ぎ手106まで通過する。例えば、全イオンがイオンの流れ110として継ぎ手106まで通過するようにして、全イオンがフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102によってろ過して取り除かれないことを可能にするために、コレクタ310は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102で修正される。
【0037】
フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、入り口334と出口306の間で配置された室内部312を有する。室内部312は、イオン化ステージ300、フィルタステージ302および採取ステージ304の3ステージに分割される。イオン化ステージ300はイオン化装置336を有する。イオン化装置336は、例えば正イオン338のような、1組のイオンを生成するために気体サンプル340をイオン化する器具又は装置である。気体サンプル340は、気相のサンプル108中の被分析物の少なくとも一部分である。サンプル108中の被分析物は、被分析物を気化させるためにサンプル108を加熱することにより気体に変換できる。気体サンプル340は入り口334を通ってイオン化ステージ300へ導入される。一実施例では、イオン化装置336はコロナ放電針である。代替例として、イオン化装置336は、放射性線源、紫外域放射ランプ又は実時間直接分析(「DART」)イオン源である。放射能線源の一例はニッケル63である。イオン338は正イオン338と呼ばれているが、正イオンと負イオンは、とりわけ、イオン化装置が気体サンプル340をイオン化するのに用いる物質に基づいて、イオン化装置336中で形成される。
【0038】
イオン化ステージ300は、また第1の直流(「DC」)電源314に接続された第1の検知電極308を有する。第1の検知電極308および第2の検知電極310は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102の室内部312の少なくとも一部分にわたって電場を加える。この電場によって、イオン338が第2の検知電極310へ駆動される。一実施例では、気体サンプル340は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102へ流れ込み、この結果第1検知電極308から、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器を通って、第2の検知電極310に気体サンプル340が流れる。そのような一実施例では、電場と気体サンプル340の流れの両方によって、イオン338が第2の検知電極310の方へ駆動される。第1の検知電極308は開口部326を有する。開口部326は、気体サンプル340が第1の検知電極308を通過することを可能にする。
【0039】
例示のためだけの目的で、フィルタステージ302は、分離距離330によって分離された少なくとも2枚の並列の電極プレート316、318を有する。フィルタステージ302はさらに幾つかの電極プレート316、318を有していてもよい。第1の電極プレート316は交流(「AC」)源320に接続される。交流電源320は第1の電極プレート316に非対称のAC波形を加える。交流電源320によって第1の電極プレート316に加えられた電圧の一組は、分散電圧(dispersion voltage)である。下記に述べられるように、イオン338がコレクタ電極310に近づくように、イオン338が分散電圧によって第1又は第2の電極プレート316、318のいずれかの方へ押し流されて、若干のイオン338は第1又は第2の電極プレート316、318のいずれかと結合する。
【0040】
第2の電極プレート318は第2のDC電源322に接続される。第2のDC電源322は第2の電極プレート318に直流を加える。DC電源322によって第2の電極プレート318に加えられた電圧は、補正電圧(compensation voltage)である。下記に述べられるように、補正電圧はイオン338がコレクタ電極310に近づくときに、若干のイオン338が第1又は第2の電極プレート316、318の方へ押し流されて、かつ結合するのを防ぐ。代替例として、第2のDC電源322は第2の電極プレート318の代わりに第1電極プレート316に接続される。
【0041】
採取ステージ304は第2の検知電極310を有する。第2の検知電極310は、下記に述べられるように、サンプル108から得られた関係あるイオンを集める。一実施例では、第2の検知電極310はファラデー・プレートである。第2の検知電極310は開口部324を有する。開口部324は、あるイオン338が第2の検知電極310で検知されずに、第2の検知電極310を通過することを可能にする。
【0042】
操作では、気体サンプル340は、第1の検知電極308の入り口334および開口部326を通ってイオン化ステージ300へ導入される。気体サンプル340はイオン化装置336によってイオン化される。イオン化装置336は、回り回って気体サンプル340をイオン化する反応イオンを形成するエネルギー328を放射する。1組のイオン338は気体サンプル340のイオン化により生成される。別の実施例では、イオン化装置336は、反応イオンの使用なしで、気体サンプル340を直接イオン化するエネルギー328を放射する。
【0043】
一実施例では、上で引用されたように、1つ以上のドーパント332が入り口334を通ってイオン化ステージ300へ導入される。ドーパント332は、実施例中の高電子か陽子親和力を備えた化学種である。ドーパント332がイオン化ステージ300へ導入される場合、ドーパント332はイオン化され、次に、気体サンプル340中の被分析物でクラスターになるか、化学的に反応する。例えば、ドーパント332のイオンは関係ある中性の被分析物と反応する。ドーパント332のイオンと関係ある被分析物の間の反応は、より大きな質量でより大きなイオンを生成する。これらのイオンには、もとの被分析物の直接イオン化によって生成されたイオンと比較して、異なる質量及び/又は質量電荷比を有する。一実施例では、ドーパント332は、関係ある被分析物でない被分析物で反応しないため、干渉するイオン化と誤認警報を防ぐ。例えば、ドーパント332は、望ましくは、関係ある被分析物でない被分析物で反応せず、また関係あるイオンの検知に干渉するイオンをフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102中に生成しない。
【0044】
一実施例では、ドーパント332と関係ある被分析物の組み合わせから生成されたイオンは、分散電圧に関して旨く定義された狭い幅(ウィンドウ)の補正電圧内のピークとして現われる。したがって、ドーパント332は、関係ある特別のイオンの一種のマーカーとして使用される。これらのイオンが所与の分散電圧に対する既知の補正電圧で現われる場合、スペクトル上のこれらのイオンに関連したピークの位置もまた、実施例の中で知られている。
【0045】
第1と第2の検知電極308、310によって生成された電場と、気体サンプル340の流れによって、イオン338はイオン化ステージ300からフィルタステージ302に突っ込む。イオン338は第1と第2の電極プレート316、318の間に移動する。非対称のAC波形(すなわち分散電圧)は交流電源320によって第1の電極プレート316に加えられる。加えて、補正電圧は、第2のDC電源322によって第2の電極プレート318又は第1の電極プレート316に加えられる。
【0046】
図4は、図3のフィルタステージ302において、第1と第2の電極プレート316、318の間を移動する正イオン338の横断面の構成図である。矢印110は、第1と第2の電極プレート316、318間のイオン338と気体サンプル340の流れの方向を表わす。図4中のグラフ464は、交流電源320が第1の電極プレート316に加える非対称のAC波形の単純化された表現を提供する。グラフ464中の非対称のAC波形は、第2の期間t2の間続く第2の電圧成分V2に後続する第1の期間t1の間続く第1の電圧成分V1を有する。非対称のAC波形は周期的なやり方でこれらの成分と期間を繰り返す。各全サイクルに関しては、積分されたフィールドと時間の積は0である。例えば、V1とt1の積の合計とV2とt2の積の合計は0である。
【0047】
第1と第2電圧成分V1、V2は正反対の極性である。例えば、第1の電圧成分V1は負電圧である。その一方で第2の電圧成分V2は正電圧である。第1の期間t1は第2の期間t2より大きい。一実施例では、第2の電圧成分V2の振幅は、第1の電圧成分V1の振幅より大きい。例えば、非対称の波形は、10μ秒の第2の期間t2に対して、分離距離330につき+2000Vの第2の電圧成分V2と、20μ秒の第1の期間t1に対して、分離距離330につき−1000Vの第1の電圧成分V1とを含む。別の例では、第1と第2の電圧成分V1、V2の間の電圧差は、分離距離330につき20,000V/cmを超過する。当該電圧差は、オゥルストーン・ナノテック(Owlstone Nanotech)社によって製造されたFAIMSセンサーに見合う、分離距離330につき100,000V/cmの値に達してもよい。
【0048】
図4を継続して参照して、図5は、様々な電界の強さにおける3つのイオン種の各々に対するイオン移動度カーブ502、504、506を提供するグラフ500である。グラフ500は縦軸508と横軸510を有する。縦軸508はイオンの標準化された移動度を表わす。横軸510は一連の電界の強さを表わすもので、1cm当りのkVで表現される。イオン移動度カーブ502、504、506は、電場の強度によるイオンの移動度の依存性を図示する。例えば、その移動度がイオン移動度カーブ502によって表わされる第1のイオン種には、増加する電界の強さにつれて増加する、より大きな移動度がある。加えて、第1のイオン種には、より大きな電界の強さでの第2と第3のイオン種の移動度より大きい移動度がある。ここで、第2と第3のイオン種は、各々のイオン移動度カーブ504、506の1つによって表される移動度を有する。反対に、第3のイオン種は、その移動度がイオン移動度カーブ506によって表わされるもので、より大きな電界の強さでより小さな移動度を有しており、電界の強さが増加するとき移動度が減少する。
【0049】
第1と第2の電極プレート316、318の間で移動する、正に帯電したイオン338に対する非対称のAC波形の影響は、図4でパス460によって表わされる。パス460は、第1と第2の電極プレート316、318に対して正に帯電したイオン338の変位を表わす。第1の期間t1では、正に帯電したイオン338は、第1の電極プレート316の方へ引きつけられる。第1の期間t1では、第1の電極プレート316に加えられる電圧成分V1は、負電圧である。イオン338が変位する距離は、イオン338の質量、電荷、形状に依存する。イオン338のより小さな質量及び/又はより大きな電荷は、より大きな質量及び/又はより小さな電荷を備えた別のイオン338よりも、第1の電極プレート316の方へイオン338を更に変位させる。
【0050】
第1の期間t1の最後に、第1の電極プレート316に加えられる電圧は第2の電圧V2へ変化する。第2の電圧V2は第2の期間t2に対して適用される。第2の電圧V2が正電圧であるので、正に帯電したイオン338は第1の電極プレート316から遠くに跳ね除けられる。正に帯電したイオン338は、第1の期間t1より第2の期間t2の間で大きな割合で跳ね除けられる。例えば、第2の電圧V2の大きさが第1の電圧V1の大きさより大きいので、イオン338はより高速の速さで第1の電極プレート316から立ち去る。V1t1+V2t2=0という事実にもかかわらず、第2の期間t2中のイオン338の変位は高電圧V2でのイオンの移動度に依存する。例えば、上に説明され、図5のグラフ500に図示されたように、異なる高電界は異なるイオン種に対して互いに関して異なる移動度を持たせる場合がある。その結果、異なる被分析物のイオンは、第1と第2の電極プレート316、318の間で異なる変位を経験する。特定の移動度に達するイオンのこの現象は、図5に示すようなすべての種の移動度が同じである低電界の強度では生じない。特別の被分析物に関連したイオンが第1又は第2の電極プレート316、318で再結合するのを防ぐために、異なる補正電圧が第2の電極プレート318に加えられる。次の第1の期間t1が始まり、第1の電圧V1が第1の電極プレート316にもう一度印加されるまで、イオン338は第1の電極プレート316から遠くに跳ね除けられる。
【0051】
非対称のAC波形を第1の電極プレート316に加えることで、イオン338に第2の電極プレート318への正味の変位、又はドリフトを経験させることになる。イオン338が十分に遠くに変位することを許されれば、イオン338は第2の電極プレート318に移動し結合する。イオン338が第2の電極プレート318と結合する場合、イオン338は採取ステージ304(図3に示される)に達しない。イオン338が採取ステージ304に達しない場合、イオン338はフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102で測定されないし検知もされず、また出口306を通ってフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102を出ない。
【0052】
イオン338が第2の電極プレート318と結合するのを防ぐために、補正電圧が電極プレート316又は318に加えられる。例えば、正に帯電したイオン338が非対称のAC波形によって第2の電極プレート318の方へ漂流させられる場合、イオン338を第1の電極プレート316の方へ追い返すために、正電圧が第2の電極プレート318に加えられ、または負電圧が第1の電極プレート316に加えられる。この補正電圧によって、イオン338の第2の電極プレート318への漂流に対して、逆にするか補正する。もし補正電圧はイオン338が第2の電極プレート318と結合するのを防ぐ場合、イオン338は採取ステージ304に達する。
【0053】
イオン338が第2の電極プレート318の方へ漂流し、かつ結合することを防ぐのに必要な補正電圧の大きさは、異なるイオン338に対して変わる。気体サンプル340から様々なイオン338のスペクトルを得るために、第2の電極プレート318に加えられる補正電圧は走査されるか、又は一定範囲の電圧にわたって変更される。例えば、補正電圧は、−50Vから0V、又は0Vから+50Vまで走査される。別の例において、補正電圧は、−5Vから0V又は0Vから+5Vまで走査される。与えられた補正電圧に関しては、イオン338の部分集合はフィルタステージ302を通過し、第2の電極プレート318と結合しない。イオン338の部分集合が第2の電極プレート318と結合しない場合、イオン338は採取ステージ304に達する。
【0054】
加えて、第1の電極プレート316に印加される非対称のAC波形は、特別のイオン338が第2の電極プレート318と結合するのを防ぎ、かつ異なる被分析物のピーク間の分離を増加させるために変更されてもよい。イオン338セット中の様々なイオンのスペクトルを得るために、非対称のAC波形は変更されるが、与えられた解析の間は一定に維持される。波形は第1と第2の電圧成分V1、V2の1つ以上と、第1と第2の期間t1、t2を増加させるか減少させることにより、変更できる。加えて、波形は第1と第2の電圧成分V1、V2の一方又は両方の極性を変えることにより変更できる。第1と第2の電圧成分V1、V2の1つ以上と、第1と第2の期間t1、t2が変更されると、異なるイオン338は採取ステージ304に向けてフィルタステージ302を通過する。
【0055】
一旦イオン338が採取ステージ304(図3に示される)に達すれば、イオン338は第2の検知電極310に集められるか、又は第2の検知電極310中の開口部324を通過する。イオン338が第2の検知電極310に集められるとき、電流はイオン338によって生成される。第2の検知電極310に集められたイオン338の数が増加すると、電流が増加する。フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、イオン338によって生成された電流に基づいて、第2の検知電極310に集められたイオン338のスペクトルを生成できる。第2の検知電極310に達するイオン338の数が増加すると、スペクトル中の対応するピークはより大きくなる。第2の検知電極310を通過するイオン338は継ぎ手106へ渡される。解析時間を短くすると共に、関係ある被分析物に対応付けられないイオン338をろ過して取り除くために、関係あるイオンに関連したピークの位置に対応する補正電圧値だけが、一実施例の中で第1の電極316又は第2の電極318に加えられる。
【0056】
図6は図1の継ぎ手106の構成図である。図示された一実施例では、継ぎ手106はイオン漏斗である。別の実施例では、継ぎ手106は、採取器とイオン・スキマーコーンの一組である。継ぎ手106は、ハウジング602の対立する両側に入り口616と出口600を有するハウジング602を有している。イオンの流れ110は入り口616を通ってハウジング602へ受け取られる。ハウジング602は部分的に複数の同心円状の輪形状の電極604を囲む。電極604はハウジング602の縦軸614に沿って配置される。電極604の各々は電極604の中央を貫通する開口部612を有する。電極604中の開口部612のサイズは電極604の近隣において減少する。例えば、入り口616に最も近い電極604は最大の開口部608があるが、一方で出口600に最も近い電極604には最も小さな開口部610がある。
【0057】
一実施例では、電極604の各々は無線周波数(「RF」)電極である。縦軸614に沿った電極604の穴612を通って導通通路を生成するために、電極604の各々に交流が加えられる。例えば、電極604は、縦軸614に沿った導通通路606を生成するために、ハウジング602中と開口部612に沿った大気又はガスをイオン化する。イオンの流れ110は、入り口616から出口600へ、導通通路606中の縦軸614に沿って移動する。開口部612のサイズが電極604において減少するとき、導通通路606のサイズも減少する。導通通路606のサイズが減少するとき、イオンの流れ110のサイズか直径は減少する。その結果、イオンの流れ110が入り口616に入り、出口600を通してハウジング602を出るので、イオンの流れ110のサイズは減少するか又は集中される。上に説明されるように、イオンの流れ110は、出口600から質量分析計104(図1に示される)まで通過させられる。
【0058】
図7は、図1の質量分析計104の構成図である。一実施例では、質量分析計104は小型化された質量分析計である。小型化された質量分析計の具体例は、インフィニコン・ホールデング社(INFICON Holding AG)によって製造されるハプサイト(HAPSITE)(登録商標)化学同定システム、コンステレーション・テクノロジー社(Constellation Technology Corp.)によって製造されるCT−1128ポータブルGCMS、ミクロザイク(Microsaic)システムズ株式会社によって製造されるイオンチップ(Ionchip)(登録商標)、並びにCMSフィールド製品(Field Products)のOIアナリティカル事業部製のイオンカメラ(Ion-Camera)(登録商標)と、グリフィン・アナリティカル・テクノロジーズ有限責任会社(Griffin Analytical Technologies, LLC)によって製造される円筒状のイオントラップ又はそのシリーズを有する小型の質量分析計を含む。質量分析計104はイオン源700を有する。イオン源700は、イオン源700の入口開口部704からイオンと中性分子の流れ110を受け取る、内側空洞部702を有する。一実施例では、入り口704は、継ぎ手106(図1に示される)の出口600に結合される。
【0059】
イオン源700は、空洞部702の内側に電子エミッター706を有する。電子エミッター706は、一実施例では、フィラメントに電流を流すことにより、真空の中で加熱されるフィラメントである。電子エミッター706が加熱されるとき、電子710が生成され、空洞部702の電子エミッター706から陽極708へ放射される。電子エミッター706と陽極708は、イオンと中性粒子の流れ110が電子エミッター706と陽極708の間を通過するように、空洞部702に位置する。電子710は電子エミッター706から放射され、イオンと中性粒子の流れ110を通過する。電子710がイオンの流れ110を通過するとき、少なくとも電子710のうちのいくつかは、流れ110中の中性粒子とイオン338にぶつかり、電子710から中性粒子とイオン338へエネルギーを伝える。代替例として、イオンの流れ110はイオン源700を回避して、そして、中性の試料キャリアガス340とイオン流れ110の中性ドーパント332(図3に示される)だけがイオン源700へ導入される。その後、分析するべき質量分析計104に関して新しいイオンの流れ110を作るために、中性の試料キャリアガスは、FCIMSイオンの当初の流れ110のイオンと一緒に、イオン源700によってイオン化される。
【0060】
電子710が中性粒子とイオン338にぶつかるとき、中性粒子とイオンの338はばらばらにされイオン化される。分子イオン、イオン破片、ドーパント関連のイオン、若しくは関係ある被分析物や当初のイオン338又は別のイオンに関連づけられた別のイオンは、イオンビーム712として空洞部702を貫通して延びる。イオンビーム712はイオン源700の出口714を通してイオン源700を出る。別の実施例では、イオン源700は質量分析計104の中で使用されない。そして、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102中のイオン源によって作り上げられたイオン流れ110が、イオンビーム712として形成される。
【0061】
イオンビーム712は移動方向716に沿って磁場718に向かって移動する。磁場718は1つ以上の磁石又は電磁石(図示せず)によって質量分析計104の室内部に生成される。磁場718は、イオンビーム712中のイオン338と別のイオンの各々に力を加える。磁場718によって加えられた力は、方向720にある。磁場718によって加えられた力の方向720は、イオンビーム712の移動方向716と垂直である。別の例において、イオンの移動を制御するために磁場を利用しない、異なるタイプの質量分析計が使用されてもよい。
【0062】
磁場718によって加えられた力は、イオンビーム712中のイオン338と別のイオンをそらす。この力はイオン338と別のイオンをそらし、イオン338と別のイオンの移動方向716を変更する。イオン338と別のイオンに対する移動方向716の偏差の量は、イオン338と別のイオンの質量電荷比および速度によって異なる。イオン338とより小さな質量を備えた別のイオンは、イオン338とより大きな質量を備えた別のイオン以上にそらされる。イオン338とイオンビーム712中の別のイオンの変化する質量によって、イオンビーム712は複数の二次的イオンビーム724に分割される。二次的イオンビーム724の各々は、一群のイオン338と同じ又は同様の質量電荷比および速度がある別のイオンのグループの異なる移動方向を表わす。二次的イオンビーム724の各々は検知器722に衝突し、検知器722によって集められる。
【0063】
検知器722は、各二次的イオンビーム724に含まれたイオン338と別のイオンの存在を検知する装置である。二次的イオンビーム724のイオン338と別のイオンの各々が検知器722の異なる位置と接触する時に、検知器722は、誘起された電荷又は生成された電流を測定する。検知器722は、各二次的イオンビーム724が検知器722と衝突した場所、並びに各二次的イオンビーム724によって誘起された電荷又は生成された電流の相対強度に基づいて、異なるイオン338と別のイオンの存在を検知する。質量分析計104は、検知器722によって検知された様々なイオン338と別のイオンの検知に基づいてスペクトル810(図8に示される)を生成する。質量分析計104は計算装置112にスペクトルを伝える。検知器722の一例は、CMSフィールド製品(Field Products)のOIアナリティカル事業部製のイオンカメラ(Ion-Camera)(登録商標)又はイオン−CCDと呼ばれるリニア・アレイ電荷結合素子を有する。別の例において、異なるタイプの質量分析計が異なるタイプの検知器と共に使用されてもよい。
【0064】
図8は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102、又は図1の質量分析計104によって生成されたスペクトル810の実施例である。上に説明されるように、スペクトル810はフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102又は質量分析計104で測定された様々なイオン338及び/又は別のイオンの相対数を表わす。イオン338及び/又は別のイオンの各々の相対数は、1又は複数のピーク828〜840によって表わされる。
【0065】
スペクトル810は2つの軸812、842に沿ってプロットされる。第1の軸812は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102(図1に示される)中の第1の電極プレート316又は第2の電極プレート318に加えられた補正電圧、又は検知器722(図7に示される)で受け取られた、様々なイオン338と別のイオンの質量電荷比のいずれかを表わす。例えば、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102によって生成されたスペクトル810に関しては、第1の軸812は、第1の電極プレート316又は第2の電極プレート318に加えられた補正電圧を表わす。質量分析計104によって生成されたスペクトル810に関しては、第1の軸812が、質量分析計104の検知器722で受け取られるイオン338と別のイオンの質量電荷比を表わす。第2の軸842又はy軸は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102又は質量分析計104で測定された様々なイオン338及び/又は別のイオンの相対数を表わす。
【0066】
サンプル108(図1に示される)中の様々な被分析物の存在は、被分析物に関連したピークが、スペクトル810中で第1の軸812に沿う既知の位置で存在することによって決定できる。例えば、ピーク828〜840は、第2の軸842に沿ったピーク828〜840の高さを備えた一続きの被分析物ピークを表わす。関係ある被分析物に対応付けられるか、被分析物から得られる、イオン338と別のイオンは、第1の軸812に沿って既知の位置814〜826で1つ以上のピーク828〜840を有する。例えば、第1のイオン338に対するピーク832の位置は、第1の軸812上の位置818にあると知られている。第2のイオン338に対する別のピーク840の位置は、位置826にあると知られている。
【0067】
加えて、第1の軸812に沿ったピーク828〜840の位置は、ドーパント332(図3に示される)と結合する被分析物で知られている。例えば、ピーク840のうちの1つは、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102中のドーパント332と結合した被分析物の検知に対応している。サンプル108(図1に示される)中の被分析物の存在は、第1の軸812に沿う位置826のピーク840の高さ、幅および位置を調べることにより決定される。
【0068】
ある場合には、ドーパント332の使用が、特別の被分析物又はイオン338の検知の見逃し数と、特別の被分析物又はイオン338の誤検出の数を減らす。例えば、特別の被分析物から得られる関係あるイオンは、スペクトル810中の第1の軸812に沿う位置822の中にピーク836を有する。この関係あるイオンのピーク836は、第1の軸812に沿った第2のイオンの別のピークに接近している。当該第2のイオンは、関係ある被分析物でない被分析物から得られる。関係あるイオンのピーク836と第2のイオンのピークが、第1の軸812に沿ってともにあまりにも接近している場合、関係あるイオンの存在は見逃されるか、又は第2のイオンの存在と誤認される。しかし、関係ある被分析物とドーパント332を組み合わせることで、関係あるイオンのピークの位置を第1の軸812に沿って移動させる。加えて、関係ある被分析物とドーパント332を組み合わせることで、関係ないイオンのピークを隠してもよい。例えば、関係ある被分析物とドーパント332を組み合わせることで、第1の軸812に沿う位置826で関係あるイオンに関連したピーク840を構成するに至る。この別の位置826は、他のピーク828〜836から十分にはるか遠くに関係あるイオンの存在を見逃さないようにする。
【0069】
同様に、第1の軸812に沿ったピーク832の位置818は、質量分析計104で測定されたイオン破片から知られる。例えば、イオン338及び/又は中性粒子が(図1に示される)質量分析計104中の電子エミッター706によって放射された電子710によってぶつけられる場合、中性粒子とイオン338の一定のものは特別のイオン破片を生成する。特別のイオン338に関連したイオン破片の1つに対応するピーク832の形状と位置818が知られており、且つイオン338に対応するピークがスペクトル810で見つかる場合、特別のイオン338の存在は、別の破片と分子イオンの特徴的パターン(もし存在する場合には)と組み合わせて、イオン破片のピークに基づいて確認される。分子イオンが存在しない場合、他の全ての関連するイオンと破片(イオンに関連したドーパントを含む)で明確に定義されたパターンが使用される。このパターンは、フィールド補正イオン移動度分光分析又は質量分析計によって識別される。
【0070】
分子イオン、イオン破片、そしてドーパント332と被分析物の組み合わせから形成されたイオン338、また関係ある被分析物と関係のある他の任意のイオン338を含む、既知のイオン338の828〜840のピークの相対的な高さに基づいて、サンプル108(図1に示される)に様々な関係ある被分析物の存在が決定される。上に説明されるように、計算装置112は特別のピークが各スペクトル810で見つかるかどうか判断するために、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102と質量分析計104によって生成されたスペクトル810を比較する。ピークは特別の関係ある被分析物から得られたイオンに対応する。計算装置112は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102と質量分析計104の各々で生成されたスペクトル810を調べて、両方のスペクトル810に関係ある被分析物のピークと一致するピークがある場合か決定する。例えば、関係ある被分析物のピークとして、同じ又は同様の高さ、幅及び/又は形状、並びに (多数のピークの検知が可能な場合に)同じパターンのピークであるかと共に、スペクトル810がそれぞれ同じ位置でピークを有するかどうか判断するために、計算装置112はスペクトル810を調べる。分光計102、104の各々で生成されたスペクトル810で、関係ある被分析物に対応付けられる特別のピーク840が見つかる場合かを、計算装置112は使用者に通知する。両方の分光計からのスペクトル中で、(利用可能な場合に)分子のピークを識別することは特別の重点を置かれる。
【0071】
オプション的に、関係ある被分析物のためのピーク840が分光計102、104(例えば質量分析計スペクトル上で)によって生成された2つのスペクトル810の一方だけで見つかる場合には、ピークが被分析物の分子イオンを表わす場合で、且つマススペクトル810中に追加の破片やドーパント関連のピーク、又は別の関係ある被分析物と関連づけたピークがある場合、関係ある被分析物はサンプル108にある。分子イオンピークが存在しない場合で、マススペクトル810中の1つ以上の別のピークが関係ある被分析物に関係しているピークの既知のパターンに対応する場合に、関係ある被分析物はサンプル108に存在すると決定される。例えば、マススペクトル810中のイオン破片及び/又はドーパント関連のピークは、関係ある被分析物に共通に関連したイオン破片及び/又はドーパント関連のピークの既知のパターンに対応する。関係ある被分析物に対応付けられるピークのパターンは、一実施例では、前もって関係ある被分析物から得られた1つ以上の質量スペクトルとイオン易動度スペクトルから得られるパターンである。
【0072】
図9は、一実施例によるサンプル中に関係ある被分析物の存在を検知する方法950のフローチャートである。方法950の様々な機能的ブロックが、1つ以上の順序でここに示され説明されるが、方法950の様々な実施例は2つ以上の機能的ブロックの順序を切り替えてもよく、及び/又は1つ以上の機能的ブロックをスキップしてもよい。加えて、2つ以上の機能的ブロックが、同時にあるいは互いに時を同じくして生じてもよい。952で、第1のスペクトルは、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器によって、1組のイオンとして得られる。例えば、サンプル108から得られたイオンのために、イオン易動度スペクトル810はフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102によって得られる。954で、第2のスペクトルは、上に説明されるように、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器から放射されたイオンとして得られる。例えば、マススペクトル810は、952の後にフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102を出るイオンの少なくともいくつかとして、質量分析計104によって得られる。上に説明されるように、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器は関係ある被分析物と関係ないイオンをろ過して取り除く。
【0073】
方法950は、複数の解析パス956、958により、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器と質量分析計によって952と954で得られたスペクトルを分析する。マススペクトル解析パス958が質量分析計によって得られたスペクトルを分析する間に、イオン易動度スペクトル解析パス956は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器によって得られたスペクトルを分析する。一実施例では、計算装置112は、図9に示され、下記に述べられた、機能的ブロック960、962、964、966、968、970、972及び974に説明されたアクションの1つ以上を行なう。
【0074】
解析パス956、958中の機能的ブロックに関連して説明された複数のアクションは、一実施例では同時に行なわれる。例えば、イオン易動度スペクトル解析パス956中の機能的ブロック960、962の少なくとも一方が、マススペクトル解析パス958中の機能的ブロック964、966の少なくとも一方が生じる期間と、重なるような期間に生じてもよい。代替例として、解析パス956、958中の機能的ブロックに関連して説明された複数のアクションは、一実施例では同時に行なわれる。例えば、イオン易動度スペクトル解析パス956中の機能的ブロック960、962の少なくとも一方が、マススペクトル解析パス958中の機能的ブロック964、966の少なくとも一方が生じる期間と、同じ期間中に生じる。別の実施例では、イオン易動度スペクトル解析パス956に説明されたアクションが、マススペクトル解析パス958に説明されたアクションに先立って生じる。
【0075】
イオン易動度スペクトル解析パス956では、分子のピークが960のイオン易動度スペクトルにあるかどうかに関しての決定がなされる。例えば、952で得られたイオン易動度スペクトルは、関係ある分子のピークがスペクトルにあるかどうか判断し、かつピークパターンが続くか、又はピークが確認されるかどうか判断するために調べられる。関係ある分子のピークは、関係ある特別の被分析物のための分子のピークに対応する。例えば、960中でなされた決定では、関係ある被分析物に対応付けられる特別の分子のピークはイオン易動度スペクトルにあるか、ピークパターンが続くか、又はピークが確認されるかどうかを、検査する。960でのイオン易動度スペクトル中の分子のピークの検知は、一実施例中の図12と図15で図示され下記に説明された方法1250、1550(またはその下位区分)の1つ以上を使用して確認される。960でイオン易動度スペクトル中に、関係ある分子のピークが見つかり、パターンが続くか、又はピークが確認された場合、方法950は960と968の間のAに進む。関係ある分子のピークが960で見つからなかったか、或いは、ピークが見つかったが、しかし、パターンは続かなかったか、又はピークを確認できない場合には、その後、方法950は960と962の間を進む。
【0076】
962で、複数のドーパント関連のピーク、イオン破片ピーク、および別の関係ある被分析物に対応するピークが、952で得られたイオン易動度スペクトルで見つかるかどうかに関して、決定がなされる。例えば、962で、952で得られたイオン易動度スペクトルは、少なくとも1つのドーパント関連のピーク、少なくとも1つのイオン破片ピーク、少なくとも1つの別の関係ある被分析物のピーク、複数のドーパント関連のピーク、及び/又は複数のイオン破片ピーク、及び/又は複数の別の関係ある被分析物と関連づけたピークが、イオン易動度スペクトルに現われるかどうか、並びにピークパターンが続くか、又はピークが確認されるか、判断するために調べられる。上に説明されるように、イオン易動度スペクトル中の1つ以上のピークが、調査中のサンプルに関係ある被分析物と選択的に化学的に反応するか、結合するような1つ以上のドーパントと、対応付けられる。イオン破片ピークは、関係ある被分析物のイオン破片に関係している、イオン易動度スペクトル中のピークを有する。加えて、イオン易動度スペクトルに関連するピークの別の関係ある被分析物があってもよい。962でイオン易動度スペクトル中の、複数のドーパント関連のピーク、及び/又はイオン破片ピーク、及び/又は関係ある被分析物に関連づけた別のピークの検知は、一実施例中の関係あるに図示され下記に説明された方法1250、1550(またはそれらの下位区分)の1つ以上を使用して確認される。イオン易動度スペクトル中の、複数のドーパント関連のピーク、及び/又はイオン破片ピーク、及び/又は関係ある被分析物に関連づけた別のピークが見つかった場合で、962でピークのパターンが続いたか、又はピークが確認されると決定した場合、方法950は962と968の間のAに進む。962で、複数のドーパント関連の破片ピーク及び/又はイオン破片ピーク、及び/又は関係ある被分析物に関連づけた別のピークが見つからなかった場合か、これらのピークがパターンに従わず、これらのピークの存在を確認できない場合には、方法950は962と970の間のBに進む。
【0077】
マススペクトル解析パス958では、(i)関係ある分子のピーク、並びにイオン破片ピーク又は関係あるドーパントのピーク、又は関係ある被分析物に関連づけた別のピークの少なくとも1つは、954で得られたマススペクトルに存在するか、および(ii)関係ある被分析物に関連づけた分子のピーク並びにイオン破片ピーク、関係あるドーパントのピーク又は別のピークは、既知のピークパターンに一致するかどうか、に関しての決定は964でなされる。例えば、関係ある被分析物に対応する分子のピーク、並びに、関係ある被分析物に関連づけたイオン破片ピーク、関係あるドーパントのピーク、又は別のピークが、954で得られたマススペクトルにあるかどうか、決定するためにマススペクトルが調べられる。分子のピークとイオン破片ピーク、関係あるドーパントのピーク、又は別のピークが見つかる場合、分子のピークとイオン破片ピーク、関係あるドーパントのピーク、又は別のピークは、関係ある被分析物に関連したピークのパターンと関連するか、一致するかの決定もなされる。上に説明されるように、関係ある被分析物は、分子のピークのパターン、イオン破片ピークのパターン、及び/又はドーパント関連ピークのパターン、関係ある被分析物の別のピークのパターンと対応付けられてもよい。このパターンは関係ある被分析物のためにピーク「指紋」と考えられる。このパターンは、互いに関するピークの相対的位置とピークの相対強度又は相対高さを有する。分子、並びにイオン破片、ドーパント関連又は別のピークがマススペクトルにある場合で、このピークが関係ある被分析物に関連したピークパターンと対応するか一致する場合、方法950は964と968の間のAに進む。分子、並びにイオン破片、ドーパント関連又は別のピークがマススペクトルにない場合、又は、このピークが関係ある被分析物に関連したピークパターンと対応しないか一致しない場合、方法950は964から966に進む。
【0078】
966で、関係ある被分析物に対応する分子のピーク、又は関係ある被分析物に対応するイオン破片、ドーパント関連又は別の複数のピークが、954で得られたマススペクトルにあるか、そして、関係ある被分析物に対応する分子のピーク、又はイオン破片、ドーパント関連又は別の複数のピークが、関係ある被分析物に対応するピークのパターンと関連するか、の決定がなされる。関係ある被分析物に対応する分子のピーク、又はイオン破片、ドーパント関連又は別の複数のピークが見つかる場合で、関係ある被分析物に対応する分子のピーク又はイオン破片、ドーパント関連又は別の複数のピークが関係ある被分析物に関連したピークパターンと関連する場合、方法950は966と968の間のAに進む。関係ある被分析物に対応する分子のピーク、又はイオン破片、ドーパント関連又は別の複数のピークが見つからない場合、又は分子のピーク並びにイオン破片、ドーパント関連又は別の複数のピークが関係ある被分析物に関連したピークパターンと関連しない場合、方法950は966と970の間のBに進む。
【0079】
968で、関係ある被分析物が方法950によって調べられるサンプル中にあるかどうかに関しての決定がなされる。この決定は、960、962、964及び966の1つ以上で下された決定と、決定からの結果の1つ以上に基づいている。一実施例の中で、関係ある被分析物に対応する分子及びイオン破片、ドーパント関連又は別の複数のピークは、964で決定されるように、マススペクトル中と、関係ある被分析物に対応するピークパターンに対応するこれらのピーク中で見つかる。すると、関係ある被分析物は968のサンプル中にあると決定され、方法950は972に進む。952でフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器によって得られ、960及び/又は962で調べられるイオン易動度スペクトル810は、サンプル中に関係ある被分析物の検知を確認するか補強するためにマススペクトル810と共に使用することができる。例えば、分子のピーク及び/又はドーパント関連のピーク、イオン破片ピーク、又は別の関係ある被分析物に対応するピークが、960及び/又は962で、イオン易動度スペクトル810中に見つかる場合には、964のマススペクトル中での分子のピーク及びイオン破片、ドーパント関連又は別の複数のピークの発見がさらに強化される。他方では、964と966で決定されるように、関係ある被分析物に対応する分子及びイオン破片、ドーパント関連又は別の複数のピークが、マススペクトルで見つからない場合や、これらのピークは関係ある被分析物に関連したピークパターンに対応しない場合は、970で関係ある被分析物はサンプル中にあると決定されず、また、方法950は970と974の間に進む。
【0080】
別の実施例では、(i)(960で決定されたように)イオン易動度スペクトル810で分子のピーク又は分子のピークのクラスタが見つかり、分子のピーク又は分子のピークのクラスタの存在は、図12と図15で示され下記に述べられた方法1250、1550の1つ以上を使用して確認されることが、968で決定され、(ii)(966で決定されたように)分子のピーク又は関係ある被分析物に関連した複数のイオン破片、ドーパント関連又は別のピークが、マススペクトルで見つかり、そして、(iii)マススペクトル中で分子のピーク又は関係ある被分析物に関連した複数のイオン破片、ドーパント関連又は別のピークが、関係ある被分析物の既知のピークパターンに対応する場合には、968で関係ある被分析物はサンプル中にあると決定され、方法950は968と972の間に進む。例えば、分子のピーク又はそのクラスタのイオン易動度スペクトル810中での存在、および分子のピーク又はイオン破片、ドーパント関連又は別のピークのマススペクトル810中での存在は、イオン易動度スペクトル810に関係ある被分析物に対応するパターンに従う追加のピークが検知されることによって補強される。他方では、(i)(960で決定されたように)関係ある被分析物に対応する分子のピークがイオン易動度スペクトルで見つからない場合、(ii)イオン易動度スペクトル中の分子のピークが関係ある被分析物のピークパターンに一致しない場合、(iii)(964と966で決定されたように)関係ある被分析物に関連した分子のピーク又は複数のイオン破片、ドーパント関連又は別のピークがマススペクトルで見つからない場合、又は(iv)(964と966で決定されたように)マススペクトルの分子のピーク又は複数のイオン破片、ドーパント関連又は別のピークが関係ある被分析物のピークパターンに対応しない場合には、970で、関係ある被分析物はサンプル中に存在しないと決定され、方法950は970〜974に進む。例えば、966で行なわれた工程は、分子イオンピークがマススペクトルで見つからない場合のシナリオを可能にする。そのような状況で、マススペクトル中で複数のイオン破片ピーク及び/又はドーパント関連のピーク又は関係ある被分析物に対応する別のピークは、それらが既知のピークパターンと一致する場合であるか、決定するために、調べられる。そして、分子のピークも含んで、イオン易動度スペクトルで裏付ける確認されたピークが必要とされる。一実施例では、イオン易動度スペクトルで見つかったピークは、図12と図15に関して下記に述べられた方法1250、1550の1つ以上によって確認される。
【0081】
別の実施例の中で、(962で決定されたように)関係ある被分析物に対応する複数のドーパント関連のピーク、イオン破片ピークおよび関係ある被分析物に対応する別のピークがイオン易動度スペクトルで見つけられると、968で決定される場合、イオン易動度スペクトルでドーパント関連のピーク及び/又はイオン破片ピークまたは関係ある被分析物に対応する別のピークは、関係ある被分析物に関連したピークパターンに対応する。また、(966で決定されたように)関係ある被分析物に関連した分子のピーク、或いは関係ある被分析物に関連した複数のイオン破片、ドーパント関連又は別のピークがマススペクトルにある。そして、(966で決定されたように)マススペクトル中の分子のピークまたはイオン破片、ドーパント関連又は関係ある被分析物の任意の可能なピークも、関係ある被分析物に関連したピークパターンに対応する。すると、968で、関係ある被分析物は、サンプル中にあると決定されると共に、方法950は968と972の間に進む。他方では(962で決定されたように)、関係ある被分析物に対応する複数のドーパント関連のピーク、イオン破片ピーク、および関係ある被分析物の任意の可能なピークが、イオン易動度スペクトルで見つからない場合、イオン易動度スペクトル中のドーパント関連のピーク、及び/又はイオン破片ピークあるいは関係ある別のピークは、関係ある被分析物に関連したピークパターンに対応しない。また(966で決定されたように)、関係ある被分析物に関連した分子のピーク、或いは関係ある被分析物に関連した複数のイオン破片、ドーパント関連又は別のピークは、マススペクトルにない。あるいは(966で決定されたように)、マススペクトル中の分子のピーク及び/又はイオン破片、ドーパント関連又は別のピークは、関係ある被分析物に関連したピークパターンに対応しない。すると、970で、関係ある被分析物はサンプル中に存在しないと決定して、方法950は970と974の間に進む。
【0082】
一実施例では、(i)(分子のピークのモノマー、二量体および三量体を含む) 関係ある被分析物の分子のピーク又はドーパント関連のピーク、イオン破片ピーク、並びに別の関係あるピークが、960と962で行なわれた工程中にイオン易動度スペクトルで見つからない場合で、(ii)964と966で行なわれた工程中にマススペクトルで、分子のピーク又はイオン破片、ドーパント関連又は別のピークが見つからない場合に、970で関係ある被分析物がサンプル中に存在しないと決定する。別の例において、970で、960と962で行なわれた工程中にイオン易動度スペクトルに検知されたピークと、964と966で行なわれた工程中にマススペクトルに検知されたピークが、それらの既知のパターンに従わない場合で、イオン移動度ピークは、図12と図15に示される方法1250、1550を使用して確認することができない場合に、関係ある被分析物がサンプル中に存在しないと決定する。
【0083】
別の実施例では、少なくとも分子と1つのイオン破片、ドーパント関連又は別のピークが存在する場合、あるいは、分子イオンピークが存在しない場合ではあるが、少なくとも3つの関係ある被分析物と関係するイオン破片、ドーパント関連又は別のピークが、964と966で行なわれた工程中にマススペクトルで見つかる場合で、それらが既知の関係あるパターンに従う場合に、968で関係ある被分析物がサンプル中に存在すると決定する。イオン易動度スペクトル中で、既知のパターンに従い及び/又は確認される、あらゆる追加のピークの存在は、この実施例中の肯定的な決定を補強する。
【0084】
972で、使用者は、関係ある被分析物が調べられているサンプル中に存在すると通知される。例えば、計算装置112は、関係ある被分析物がサンプル108中で見つかると、検出システム100の使用者に通知するために聴覚警報及び/又は視覚警報を起動する。974で、使用者は、関係ある被分析物が調べられているサンプル中に存在しないと通知される。例えば、計算装置112は、関係ある被分析物がサンプル108で見つからないと、検出システム100の使用者に通知するために聴覚警報及び/又は視覚警報を起動する。
【0085】
図10は、別の実施例によるサンプル中の関係ある被分析物の存在を検知する方法1050のフローチャートである。一実施例では、計算装置112のような計算装置は、図10に図示され下記に述べられた機能的ブロック1052、1054、1056、1058、1060、1064に説明されたアクションの1つ以上を行なう。図10に図示される機能的ブロックに関連して説明された複数のアクションは、一実施例では、同時に行なわれる。例えば、機能ブロック1052が機能ブロック1054と重なる時間に生じ、及び/又は機能ブロック1056が、機能ブロック1058で重なる時間に生じる。代替例として、図10に示される機能的ブロックに関連して説明された複数のアクションは、一実施例では、同時に行なわれる。
【0086】
1052で、1つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器が、サンプルから得られた1組のイオンから1つ以上のイオンをろ過して取り除くために各々使用される。例えば、1つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102が、サンプルから関係あるイオンでない1つ以上のイオンをろ過して取り除くために使用される。各フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、関係あるイオンでない追加のイオンを除去してもよい。例えば、一実施例では、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は、互いに直列に結合される。
【0087】
1054で、1つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器が、イオンの一組に残るイオンの1つ以上のスペクトルを得る。例えば、1つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102が関係あるイオンでないイオンの少なくとも幾つかをろ過して取り除いた後で、1つ以上の追加のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102の各々で、残余のイオンのスペクトルを得る。関係あるイオンでないイオンをろ過して取り除くために使用される1つ以上のイオンフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器と、スペクトルを得るために使用される1つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器は、同じフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器である。
【0088】
1056で、1つ以上の関係あるピークが1054で得られた単数のスペクトルまたは複数のスペクトルにあるかどうかに関して、決定がなされる。例えば、1054で得られたスペクトルの各々は、各スペクトルが1つ以上の関係あるピークを含むかどうか判断するために調べられる。別の例において、1054で得られたスペクトルの部分集合の各々は、スペクトルの部分集合の各々が1つ以上の関係あるピークを含むかどうか判断するために調べられる。別の例において、得られた最後のスペクトルのような、1054で得られた単一のスペクトルは、スペクトルが1つ以上の関係あるピークを含むかどうか判断するために調べられる。上に説明されるように、関係あるピークは分子のピーク、イオン破片ピーク、ドーパント関連のピーク、および関係ある被分析物に関係している別のピークを有する。1つ以上の関係あるピークが単数のスペクトルか複数のスペクトルで見つかる場合、方法1050は1056と1058の間に進む。関係あるピークが単数のスペクトルか複数のスペクトルで見つからない場合、方法1050は1056と1064の間に進む。
【0089】
1058で、1056で見つかった関係あるピークが関係ある被分析物に関連したピークのパターンに対応するかどうかに関して、決定がなされる。ピークのパターンは、既知の相対的位置と強度又は高さ、および関係ある被分析物に関連した複数の関係あるピークの形状を有する。関係あるピークがピークのパターンに対応する場合、方法1050は1058と1062の間に進む。関係あるピークがピークのパターンに対応しない場合、方法1050は1058と1060の間に進む。例えば、関係ある被分析物に関連した分子のピークと、関係ある被分析物に関連した少なくとも1つのイオン破片ピークと、及び/又はドーパント関連のピーク、関係ある被分析物に関連した別のピークが、1056でスペクトル中に見つかると共に、これらのピークがピークのパターンに対応する場合、そのとき方法は1058と1062の間に進む。別の例では、(i)関係ある被分析物に関連した複数のイオン破片ピークの少なくとも1つ、並びに、(ii)関係ある被分析物に関連した複数のドーパント関連のピークの少なくとも1つが、1056でスペクトル中に見つかる場合で、これらのピークがピークのパターンに一致する場合、そのとき方法は1058と1062の間に進む。別の例において、1056で関係ある被分析物に関連した分子のピークがスペクトルで見つかり、1060で分子のピークの存在が確認される場合、方法1050は1060と1062の間に進む。一実施例では、分子のピークの存在は、図12と図15で図示され下記に説明された方法1250、1550(またはそれらの下位区分)の1つ以上を使用して確認される。
【0090】
1056で見つかり、1058でピークのパターンに対応しないと決定された、関係あるピークが、確認されるかどうかに関しての決定が1060でなされる。例えば、複数の関係あるピークの存在が1056で見つかったが、1058でピークのパターンに対応しないことが確認される場合、方法1050は1060から1062に進む。1056で見つかった関係あるピークが確認されない場合、方法1050は1060から1064に進む。一実施例では、関係あるピークの存在は図12と図15で示され下記に説明された方法1250、1550(またはそれらの下位区分)の1つ以上を使用して確認される。
【0091】
1062で、使用者は、関係ある被分析物が調べられているサンプル中にあると通知される。例えば、計算装置112は、関係ある被分析物がサンプル108で見つかると、検出システム100の使用者に通知するために聴覚警報及び/又は視覚警報を起動する。1064で、使用者は、関係ある被分析物が調べられているサンプル中に存在しないと通知される。例えば、計算装置112は、関係ある被分析物がサンプル108で見つからないと、検出システム100の使用者に通知するために聴覚警報及び/又は視覚警報を起動する。
【0092】
図11は、別の実施例によるサンプル中に関係ある被分析物の存在を検知する方法1150のフローチャートである。一実施例では、計算装置112のような計算装置は、図11に示され、下記に述べられる、機能的ブロック1152、1154、1156、1158、1160、1162、1164、1166、1168、1170及び1172に説明されたアクションの1つ以上を行なう。図11に図示される機能的ブロックに関連して説明された複数のアクションは、一実施例の中で同時に行なわれる。例えば、機能的ブロック1158、1160、1162、1164の1つ以上が、機能的ブロック1158、1160、1162、1164の別の一つの期間と重なる期間に、生じる。代替例として、図11に示される機能的ブロックに関連して説明された複数のアクションは、一実施例の中で同時に行なわれる。例えば、機能的ブロック1158、1160、1162、1164の1つ以上が、機能的ブロック1158、1160、1162、1164の別の1つが生じるのと同じ期間に生じてもよい。
【0093】
1152で、1つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器が、1組のイオンから1つ以上のイオンをろ過して取り除くために各々使用される。例えば、直列状態に接続されている1つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102が、1組のイオンから関係あるイオンでない1つ以上のイオンをフィルターし、かつイオン易動度スペクトルを集めるために使用される。イオンの一組は方法1150によって調べられるサンプルから得られる。上に説明されるように、関係あるイオンは、関係ある被分析物又は関係ある被分析物とドーパントの組み合わせに関係しているイオンを有する。フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102の各々は、関係あるイオンでない追加のイオンを除去する。
【0094】
1154で、スペクトル810のようなスペクトルはフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器の1つ以上を使用して得られる。例えば、いくつかのフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102が、関係あるイオンでないイオンの少なくともいくつをろ過して取り除いた後に、1以上の追加のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102の各々は、イオンのサンプルをさらにフィルターし、残余のイオンのスペクトルを得る。上に引用されるように、このスペクトルはイオン易動度スペクトルと呼ばれる。
【0095】
1156で、質量分析計は、1152と1154でフィルターされた残りのイオンの少なくともいくつかのスペクトルを得る。一実施例では、質量分析計104はフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102と直列に接続され、最後のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102からイオンの一組中の残りのイオンを受け取る。その後、質量分析計104は、スペクトル810のような、残りのイオンのスペクトルを得る。上に引用されるように、このスペクトルはマススペクトルと呼ばれる。
【0096】
1158で、マススペクトル中の複数のピークが関係あるピークを有するかどうかに関して、決定がなされる。関係あるピークは、1156で得られたマススペクトル中のピークであり、上に説明されるような分子のピーク又はイオン破片ピーク、又は関心ある被分析物に関連するドーパント関連又は別のピークに対応付けられる。1158で、関係あるピークがマススペクトル中で見つからない場合、方法1150は1158と1164の間に進む。1つ以上の関係あるピークがマススペクトルで見つかる場合、方法1150は1158と、1160と1162の少なくとも1つの間に進む。例えば、関係ある分子のピーク並びに、関係あるドーパント関連のピーク及び/又は関係あるイオン破片ピーク又は別の関係あるピークの任意の1つの中で少なくとも1つが、マススペクトルで見つかる場合、方法1150は1158、1160、1168の間に進む。また、これらの関係あるピークは、関係ある被分析物に関連したピークのパターンに従う。ピークのパターンは、関係ある被分析物に関連しているマススペクトル中の既知のピークのパターンである。例えば、既知のパターンは、上に説明されたような関係ある被分析物に関連しているものとして知られている複数のピークの形状と、相対的な位置、強度あるいは高さを有する。別の例において、複数の関係ある非分子のピークがマススペクトルで見つかり、関係ある非分子のピークが、関係ある被分析物に関連したピークのパターンに従う場合、方法1150は1158、1162、1168の間に進む。一実施例では、関係ある非分子のピークは、少なくとも関係あるドーパント関連とイオン破片ピークの2つを有する。別の例において、関係あるピークがマススペクトルで見つからない場合、あるいは1つ以上の関係あるピークがマススペクトルで見つかるが、ピークは関係ある被分析物に関連したピークパターンに従わない場合には、方法1150は1158と1164の間に進む。
【0097】
1164で、関係ある分子のピークが1154で得られたイオン易動度スペクトルで見つかるかどうかに関して、決定がなされる。例えば、関係ある被分析物に関連している1つ以上の分子のピークが、1154で得られたイオン易動度スペクトルの1つ以上で見つかるかどうかに関して決定がなされる。1つ以上の関係ある分子のピークがイオン易動度スペクトルかその複数のスペクトルで見つかる場合、方法1150は1164と1166の間に進む。反対に、関係ある分子のピークがイオン易動度スペクトルかその複数のスペクトルで見つからない場合、方法1150は1164と1170の間に進む。
【0098】
1166で、1164でイオン易動度スペクトルかその複数のスペクトルで見つかった分子のピークが確認されるかどうかに関して、決定がなされる。例えば、イオン易動度スペクトルに関係ある分子のピークの存在は、一実施例中の図12と図15で図示され下記に説明された方法1250、1550(またはそれらの下位区分)の1つ以上を使用して確認される。イオン易動度スペクトルかその複数のスペクトルに関係ある分子のピークの存在が確認される場合、方法1150は1166と1168の間に進む。反対に、イオン易動度スペクトルかその複数のスペクトルに関係ある分子のピークの存在が確認されない場合、方法1150は1166と1172の間に進む。ある状況では、1164で分子のピークだけが存在し、1166でその確認が存在することは、方法1150が1166から1168に進むのに十分である。
【0099】
1168で、使用者は、関係ある被分析物が調べられているサンプル中に存在すると通知される。例えば、計算装置112は、関係ある被分析物がサンプル108で見つかると、検出システム100の使用者に通知するために聴覚警報及び/又は視覚警報を起動する。複数の確認された、非分子、ドーパント関連、破片および別の関係あるピークがイオン易動度スペクトルにある場合、1170である決定がなされる。これらのピークの複数がイオン易動度スペクトルにある場合、方法1150は1168に進む。反対に、これらのピークが存在しない場合、方法1150は1172に進む。1172で、使用者は、関係ある被分析物が調べられているサンプル中に存在しないと通知される。例えば、計算装置112は、関係ある被分析物がサンプル108で見つからないと、検出システム100の使用者に通知するために聴覚警報及び/又は視覚警報を起動する。
【0100】
図12は、一実施例によるスペクトル中に関係あるピークの存在を確認する方法1250のフローチャートである。方法1250は、単独で、あるいは一実施例では、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器によって得られたスペクトル中に関係あるピークの存在を確認する1つ以上の他の方法と共に使用される。例えば、方法1250は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102を使用して得られるスペクトル810中に、関係あるピークの存在を確認するために使用される。上に説明されるように、関係あるピークは分子のピーク、ドーパント関連のピーク、イオン破片ピーク、および方法1250によって調べられるサンプル中に関係ある被分析物と関連する別のピークを有する。一実施例では、計算装置112のような計算装置は、図12に図示され、下記に述べられる機能的ブロック1252、1254、1256、1258、1260、1262、1264に説明されたアクションの1つ以上を行なう。
【0101】
1252で、関係あるピークの少なくとも一部分がスペクトルに現われるまで、スペクトルはフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器によって得られる。例えば、関係ある分子のピークの少なくとも一部分がスペクトルで見つかるまで、スペクトルの測定はフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102によって集められる。関係あるピークの部分は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器中の初期のフィールド補正電圧と初期の分散電圧を使用して得られる。
【0102】
1254で、関係あるピークの最大の強度が得られた後、1252で部分的に得られるスペクトルの測定の収集は止められる。例えば、スペクトルおよび関係あるピークは、関係あるピークの測定強度が最大に達して減少し始めるまで、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器によって得られるか生成されることを継続する。その後、一実施例では、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器は関係あるピークを集めるか得ることをやめる。
【0103】
図12の参照を継続すると共に、図13は、本発明の一実施形態によるフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器を使用して得られるスペクトル1302中の関係あるピーク1300である。関係あるピーク1300は、方法1250の1252で、初期の分散電圧と初期の補正電圧にて、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器を使用して、図13の左から右まで集められる。関係あるピーク1300の第1の部分1304は1252で集められる。第1の部分1304は、関係あるピーク1300の増加側1312、最大強度部1306、および減少側1314の一部を有する。最大強度部1306は、垂直軸1308に沿って測定されている関係あるピーク1300の強度であると同時に、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器で測定される関係あるピーク1300の最大の強度である。増加側1312は、関係あるピーク1300の最大強度部1306を集める前にフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器によって集められる関係あるピーク1300の部分である。減少側1314は、関係あるピーク1300の増加側1312と最大強度部1306を集めた後に、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器によって集められる関係あるピーク1300の部分である。
【0104】
関係あるピーク1300は、方法1250の1252で集められるもので、増加側1312、最大強度部1306および減少側1314の一部が得られる。方法1250の1254で、関係あるピーク1300の収集は停止点1310で止まる。停止点1310での関係あるピーク1300の強度は、最大強度部1306よりも小さい。一実施例では、停止点1310での関係あるピーク1300の強度は、最大強度部1306のおよそ75%である。代替例として、停止点1310での関係あるピーク1300の強度は、最大強度部1306を基準とする異なる百分率か別の割合である。
【0105】
方法1250は1254と1256の間に進む。1256で、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器中の分散電圧と補正電圧の少なくとも1つは、1252で関係あるピーク1300の一部を集めるために使用される分散電圧及び/又は補正電圧から調整される。例えば、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102によって使用される分散電圧と補正電圧の少なくとも1つは変更される。
【0106】
1258で、関係あるピーク1300の追加部分は集められる。例えば、関係あるピーク1300の追加部分又は残余部1316は、1256で変更された分散電圧及び/又は補正電圧を使用して、1258で集められる。図13では、追加部分又は残余部1316が関係あるピーク1300の残りの部分を含むとして図示しているが、追加部分又は残余部1316は関係あるピーク1300の残りの部分より少ない部分を含んでいてもよい。
【0107】
1260で、関係あるピーク1300の追加部分又は残余部1316が、関係あるピーク1300に一致するかどうかに関して、決定がなされる。例えば、追加部分又は残余部1316が関係あるピーク1300の減少側1314を継続するので、図13に示される追加部分又は残余部1316は、関係あるピーク1300に一致する。反対に、停止点1310の後の関係あるピーク1300の強度が、停止点1310での強度と実質的に異なり、及び/又は、減少側1314に沿って関係あるピーク1300の測定強度の減少を継続しなかった場合には、追加部分又は残余部1316は関係あるピーク1300に一致しない。
【0108】
図12と図13への参照を継続すると共に、図14は、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器を使用して得られるスペクトル1402のピーク1400である。ピーク1400は、ピーク1400の強度が関係あるピーク1300の追加部分又は残余部1316を含んでいないという例外を除いて、関係あるピーク1300と同様である。例えば、ピーク1400は関係あるピーク1300と同様のやり方で方法1250に従って集められる。増加側1404、最大強度部1406、および最大強度部1406と停止点1410の間の減少側1408の一部は、1252で集められる。増加側1404、最大強度部1406、および最大強度部1406と停止点1410の間の減少側1408の部分は、増加側1312、最大強度部1306、および最大強度部1306と停止点1310の間の減少側1314の部分と同様である。対照的に、ピーク1400の追加部分が1258で集められるために試みられる場合、(垂直軸1412に沿って測定された)ピーク1400の強度は垂直降下し、図13の関係あるピーク1300の追加部分又は残余部1316が行うような、減少側1408に沿った強度の逓減を継続しない。
【0109】
図12中の方法1250の1260まで戻り、1252で使用されたものと異なる補正電圧及び/又は分散電圧を使用して、関係あるピークの追加部分又は残余部が1258で得られない場合には、方法1250は1260と1264の間に進む。例えば、1252〜1258で得られたピークが、(図13に示される)関係あるピーク1300よりも、(図14に示される)関係あるピーク1400により類似に見える場合、一実施例として、方法1250は1260と1264の間に進む。反対に、関係あるピークの追加部分又は残余部が1258で得られる場合、方法1250は1260と1262の間に進む。
【0110】
1262で、使用者は、関係ある被分析物が調べられているサンプル中にあると通知される。例えば、計算装置112は、関係ある被分析物がサンプル108で見つかると、検出システム100の使用者に通知するために聴覚警報及び/又は視覚警報を起動する。1264で、使用者は、関係ある被分析物が調べられているサンプルにないと通知される。例えば、計算装置112は、関係ある被分析物がサンプル108で見つからないと、検出システム100の使用者に通知するために聴覚警報及び/又は視覚警報を起動する。
【0111】
図15は、別の実施例によるサンプルに関係ある被分析物の存在を検知する方法1550のフローチャートである。一実施例では、計算装置112のような計算装置は、図15に図示され、下記に述べられる機能的ブロック1552、1554、1556、1558、1560、1562、1564、1566、1568、1570、1572、1574、1576に説明されたアクションの1つ以上を行なう。図15に図示される機能的ブロックに関連して説明された複数のアクションは、一実施例では、同時に行なわれる。例えば、機能的ブロック1552、1554、1556、1558、1560、1562、1564、1566、1568、1570、1572、1574、1576の1つ以上が、機能的ブロック1552、1554、1556、1558、1560、1562、1564、1566、1568、1570、1572、1574、1576の別の1つが生じる期間と重なるような期間に生じてもよい。代替例として、一実施例では、図15に示される機能的ブロックに関連して説明された複数のアクションは、同時に行なわれる。例えば、機能的ブロック1552、1554、1556、1558、1560、1562、1564、1566、1568、1570、1572、1574、1576の1つ以上が、機能的ブロック1552、1554、1556、1558、1560、1562、1564、1566、1568、1570、1572、1574、1576の別の1つが生じる同じ期間で生じてもよい。
【0112】
1552で、1つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器が各々、サンプルから得られた1組のイオンから1つ以上のイオンをろ過して取り除くために使用される。例えば、1つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102が、サンプルから関係あるイオンでない1つ以上のイオンをろ過して取り除くために使用される。フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102の各々は、関係あるイオンでない追加のイオンを除去してもよい。例えば、一実施例では、フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102は互いに直列状態で結合される。
【0113】
1554で、1つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器が、初期の電界の強さでイオンの一組に残るイオンの1つ以上のスペクトルを得る。例えば、1つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102が関係あるイオンでないイオンの少なくとも幾つかをろ過して取り除いた後、1つ以上の追加のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器102の各々が、(図4に示される)第1と第2の電極プレート316、318の間の初期の電界の強さを使用して、残りのイオンのスペクトルを得る。関係あるイオンでないイオンをろ過して取り除くために使用される1つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器と、スペクトルを得るために使用される1つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器は、同じフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器である。
【0114】
1556で、複数の関係あるピークが1554で得られたスペクトルかその複数のスペクトルにあり、これらの関係あるピークが、関係ある被分析物に関連したピークのパターンに従うかどうかに関して、決定がなされる。例えば、1554で得られたスペクトルの各々は、スペクトルのそれぞれが複数の関係あるピークを含むかどうか判断するために調べられる。別の例において、1554で得られたスペクトルの部分集合の各々は、スペクトルの部分集合のそれぞれが複数の関係あるピークを含むかどうか判断するために調べられる。別の例において、得られた最後のスペクトルのような、1554で得られた単一のスペクトルは、スペクトルが複数の関係あるピークを含むかどうか判断するために調べられる。上に説明されたように、関係あるピークは、分子のピーク、イオン破片ピーク、ドーパント関連のピーク、および関係ある被分析物に関連する別のピークの1つ以上を有する。複数の関係あるピークがスペクトルかその複数のスペクトルで見つかり、ピークがピークのパターンに従う場合、方法1550は1558と1560の1つ以上を通って1556と1564の間に進む。他方では、複数の関係あるピークがスペクトルかその複数のスペクトルで見つからない場合、方法1550は1556から1576に移る。別の例において、ピークがスペクトルで見つかるが、ピークがピークのパターンに従わない場合、方法1550は1556と1562の間に進む。
【0115】
例えば、関係ある分子のピーク並びに、関係あるドーパント関連のピーク、及び/又は関係あるイオン破片ピーク及び/又は別の関係あるピークの少なくとも1つが、1554で得られたイオン易動度スペクトルで見つかり、これらの関係あるピークが、関係ある被分析物に関連したピークのパターンに従う場合、方法1550は1556、1558、1564の間に進む。別の例において、複数の関係ある非分子のピークが1554で得られたイオン易動度スペクトルで見つかり、これらの関係あるピークが、関係ある被分析物に関連したピークのパターンに従う場合、方法1550は1556、1560、1564の間に進む。非分子のピークは、複数のドーパント関連ピーク、イオン破片ピーク、および関係ある被分析物に関連した別のピークが含まれる。別の例で、一つの関係ある分子のピークが、1554で得られたスペクトルかその複数のスペクトルで見つかり、または、複数の関係あるピークが1554で得られたスペクトルかその複数のスペクトルで見つかるが、これらのピークが関係ある被分析物に関連したピークのパターンに従わない場合、そのとき、方法1550は1556と1562の間に進む。
【0116】
1562で、1556で見つけたか関係ある単一の分子のピーク、又はピークのパターンに従わない複数の関係あるピークが確認されることに関して、決定がなされる。関係ある分子のピーク又は複数の関係あるピークは、一実施例中で上記に記述された、図12に示される方法1250によって確認される。そのような確認手続き1250は、1554のピークの収集と同時に、又は一斉に実行することができ、ここで、ピークが関係ある補正電圧を使用して得られる。分子のピーク又は複数の関係あるピークが確認される場合、方法1550は1562と1564の間に進む。分子のピーク又は複数の関係あるピークが確認されない場合、方法1550は1562と1576の間に進む。
【0117】
1564で、1つ以上のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器が、大幅に高い電界強度で1つ以上のスペクトルを得る。例えば、初期の電界の強さで1554のスペクトルかその複数のスペクトルを得るために使用される、同じ又は異なるフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器は、1554で使用される初期の電界の強さより少なくとも4倍大きい電界の強さで別のイオンのスペクトルかその複数のスペクトルを得るために使用される。一実施例では、第2の電界の強さは初期の電界の強さより少なくとも4倍大きい。例えば、1554で使用される初期の電界の強さは1センチメートルにつき約20,000ボルトである。その一方で、1564で使用される電界の強さは1センチメートルにつき約100,000ボルトである。代替例として、異なる電界の強さは、初期の及び/又は大幅に高い電界強度に使用されてもよい。別の確認方法が使用される場合には、1554で使用される第2の電界の強度は、初期の電界の強さから、1564で使用した第2の電界の強度と同じ量だけ異なる必要はない。
【0118】
別の実施例では、1564で行なわれた分析は、初期のFCIMS中で形成されたイオンの一部を使用している間、初期のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器と直列状態にある同一又は異なるフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器を使用して、1554で行なうことができる。さらに別の実施例において、ピークの同一性が大幅に高い電界強度で予想される場合、分析1564は図12に説明された部分的なピーク収集の確認方法1250を使用して、1554で行うことができる。そのような場合、大幅に高い電界強度は第2の電場となり、ピークの残りの部分を集めるために使用される。
【0119】
1566で、複数の関係あるピークが1564で得られたスペクトルかその複数のスペクトルにあり、これらの関係あるピークが、関係ある被分析物に関連したピークのパターンに従うか関して、決定がなされる。例えば、1564で得られたスペクトルの各々は、各スペクトルが複数の関係あるピークを含むかどうか判断するために調べられる。別の例において、1564で得られたスペクトルの部分集合の各々は、各スペクトルの部分集合が複数の関係あるピークを含むかどうか判断するために調べられる。別の例において、得られた最後のスペクトルのような、1564で得られた単一のスペクトルはスペクトルが複数の関係あるピークを含むかどうか判断するために調べられる。関係あるピークは、上に説明されたような関係ある被分析物に関連する分子のピーク、イオン破片ピーク、ドーパント関連のピーク、および別のピークの1つ以上を有する。複数の関係あるピークがスペクトルかその複数のスペクトルで見つかり、ピークがピークのパターンに従う場合、方法1550は1568と1570の1つ以上を通って1566と1574の間に進む。他方では、複数の関係あるピークがスペクトルかその複数のスペクトルで見つからない場合、方法1550は1566と1576の間に進む。別の例において、1566でピークがピークのパターンに従わない場合、方法1550は1566と1572の間に進む。
【0120】
例えば、関係ある分子のピーク、並びに、関係あるドーパント関連のピーク、及び/又は関係あるイオン破片ピーク及び/又は別のピークの少なくとも1つが、1564で得られたイオン易動度スペクトルで見つかり、これらの関係あるピークが関係ある被分析物に関連したピークのパターンに従う場合、方法1550は1566、1568、1574の間に進む。別の例において、複数の関係ある非分子のピークが1564で得られたイオン易動度スペクトルで見つかり、これらの関係あるピークが関係ある被分析物に関連したピークのパターンに従う場合、方法1550は1566、1570、1574の間に進む。非分子のピークは、複数のドーパント関連とイオン破片ピーク、および関係ある被分析物に関連した別のピークも有する。別の例で、単一の関係ある分子のピークが、1564で得られるスペクトルかその複数のスペクトルで見つかる場合、または、複数の関係あるピークが1564で得られたスペクトルかその複数のスペクトルで見つかるが、これらのピークが関係ある被分析物に関連したピークのパターンに従わない場合、方法1550は1566と1572の間に進む。
【0121】
1572で、1566で見つけられた、関係ある単一の分子のピーク、又は複数の関係あるピークであって、ピークのパターンに従わないピークが、図12に説明された方法1250によって確認されたかに関して、決定がなされる。一実施例では、関係ある分子のピーク又は複数の関係あるピークは、上で記述されると共に図12に示される方法1250によって確認される。分子のピークあるいは複数の関係あるピークが確認される場合、方法1550は1572と1574の間に進む。分子のピークあるいは複数の関係あるピークが確認されない場合、方法1550は1572と1576の間に進む。
【0122】
1574で、使用者は、関係ある被分析物が調べられているサンプルにあると通知される。例えば、計算装置112は、関係ある被分析物がサンプル108で見つかると、検出システム100の使用者に通知するために聴覚警報及び/又は視覚警報を起動する。1576で、使用者は、関係ある被分析物が調べられているサンプルにないと通知される。例えば、計算装置112は、関係ある被分析物がサンプル108で見つからないと、検出システム100の使用者に通知するために聴覚警報及び/又は視覚警報を起動する。一実施例では、方法1550は、スペクトルの中で1つ以上のピークの存在を確認する処理を提供する。例えば、機能的ブロック1556〜1572は初期の電界の強さでフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器のピークを検出することで1つ以上のピークの存在を確認するために使用され、次に、大幅に高い電界強度で異なる又は同じフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器中にピーク(または、初めに検知されたピークと関係のあるピークで、それは大幅に高い電界強度条件だけで形成される新しい特定の分子を表わす) を検知する。
【0123】
図16は、本発明の実施例がコンピュータ可読媒体上に記憶され、頒布され、インストールされる具体例のブロック図を図示する。図16では、「アプリケーション」は、上に議論された方法とプロセスの工程の1つ以上を表わす。例えば、そのアプリケーションは、上に議論されるように図1から図15に関連して行なわれたプロセスを表わす。図16に示されるように、アプリケーションは、ソースコンピューター読取り可能な媒体1602上のソースコード1600として初めに生成され記憶される。その後、ソースコード1600は経路1604上に伝達され、オブジェクトコード1608を生成するためにコンパイラー1606によって処理される。オブジェクトコード1608は経路1610上に伝達され、1つ以上のアプリケーション・マスターとしてマスターコンピュータ読取り可能な媒体1612上に保存される。別々のプロダクションコンピュータ可読媒体1618上に保存されるプロダクションアプリケーション1616を生成するために、経路1614によって表示されるように、その後、オブジェクトコード1608は何度もコピーされる。その後、プロダクションコンピュータ可読媒体1618は、経路1620によって表示されるように、様々なシステム、装置、ターミナルおよびその他同種のものに伝達される。図16の具体例では、使用者端末1622、デバイス1624およびシステム1626は、プロダクションコンピュータ可読媒体1618が(1628から1632までに表示される)アプリケーションとしてインストールされるハードウェア構成機器の具体例として示される。例えば、プロダクションコンピュータ可読媒体1618は、図1に示されるコンピュータデバイス112にインストールされる。
【0124】
ソースコードは、スクリプトとして、あるいは任意の高水準言語か低水準言語で書かれる。ソース、マスター、プロダクションのコンピュータ可読媒体1602、1612、1618の具体例は、CDROM、RAM、ROM、フラッシュ・メモリー、RAIDドライブ、計算機装置上のメモリ、その他同種のものを有するが、しかしこれらに制限されない。パス1604、1610、1614、1620の具体例は、ネットワークパス、インターネット、ブルートゥース、GSM、赤外線無線LAN、HIPERLAN、3G、衛星、および同種のものを有するが、しかしこれに制限されない。またパス1604、1610、1614、1620は、ソース、マスター、プロダクションのコンピュータ可読媒体1602、1612、1618の1つ以上の物理的なコピーを2つの地理的な位置間で輸送する、一般運送事業者又は自家用運送者の役務を表わしてもよい。パス1604、1610、1614、1620は、1台以上のプロセッサーによって並行して実行されるスレッド(thread)を表わしてもよい。例えば、1つのコンピュータはソースコード1600、コンパイラー1606およびオブジェクトコード1608を保持する。多数のコンピュータがプロダクションアプリケーションコピー1616の生成と並行して処理をする。パス1604、1610、1614、1620は州内部、各州間、国家内部、国家間、大陸内部、大陸間、および同種のものである。
【0125】
図16に図示された工程は、その一部分だけがアメリカ合衆国で行なわれる態様で、全世界に広く分散した手法で行なわれてもよい。例えば、アプリケーション・ソースコード1600はアメリカ合衆国で書かれ、アメリカ合衆国でソースコンピューター読取り可能な媒体1602上に保存されるが、コンパイル、複写および設置の前に別の国に(経路1604に対応して)輸送される。代替例として、アプリケーション・ソースコード1600はアメリカ合衆国の国内又は国外で書かれて、アメリカ合衆国内のコンパイラー1606でコンパイルされ、アメリカ合衆国内でマスターコンピュータ読取り可能な媒体1612上に保存されるが、オブジェクトコード1608は複写と設置の前に別の国へ (経路1614に対応して)輸送される。代替例として、アプリケーション・ソースコード1600とオブジェクトコード1608はアメリカ合衆国の国内又は国外で生成されるが、プロダクションアプリケーションコピー1616が、アメリカ合衆国の国内又は国外に位置する使用者ターミナル1622、装置1624及び/又はシステム1626にアプリケーション1628〜1632としてインストールされる前に、プロダクションアプリケーションコピー1616は(例えば操作段階の一部分として)アメリカ合衆国内で生成されるか、あるいは輸送される。
【0126】
明細書と請求項の全体にわたって使用されるように、用語「コンピュータ可読媒体」と「構成された命令」は、
(i)ソースコンピューター読取り可能な媒体1602とソースコード1600、
(ii)マスターコンピュータ読取り可能な媒体とオブジェクトコードの1608、
(iii)プロダクションコンピュータ可読媒体1618とプロダクションアプリケーションコピー1616、及び/又は
(iv)ターミナル1622、デバイス1624およびシステム1626のメモリ中で保存された、アプリケーション1628〜1632、
の任意のもの又はすべてを参照するものとする。
【0127】
上記の記述は実施例であり、かつ制限的でないように意図されることが理解される。例えば、上記実施例またはその態様は、互いに他と結合して使用されてもよい。その上に、本発明の範囲から外れることなく、多くの修正が本発明の教えを特別の状況か材料に適応させるためになされる。様々な構成部材の寸法、材料の種類、幾何学的な配置、ここに説明された様々な構成部材の位置や数は、一定の実施例のパラメーターを定義するように意図され、決して制限ではなく、単なる実施例である。当業者が上記の記述を検討することで、別の多くの実施例と修正が請求の範囲と本発明の精神に含まれることが当業者に明らかになる。したがって、本発明の範囲は、本請求項の権利が付与される等価物の完全な範囲に加えて、添付された請求項に基づいて決定されるべきである。添付された請求項で、用語「含む」と「その中で」は、夫々の用語「構成される」と「ここで、その中で」の分かりやすい表現の相当物として使用される。さらに、以下の請求項において、用語「第1の」、「第2の」、そして「第3の」、その他は、単にラベルとして使用され、それらの対象物に数的な必要条件を課するようには意図されない。さらに、以下の請求項の制限は手段プラス機能の形式で記載されておらず、そのような請求項の制限がさらなる構造を欠く機能表現に従った句である『するための手段』を明示的に使用した場合を除くと共にこの場合以外は、米国特許法第112条第6段落に基づいて解釈されるようには意図されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の関係ある被分析物を検知する方法であって、
関係あるイオンでないイオンをろ過して取り除き、かつイオン易動度スペクトルを生成するために、前記サンプルからイオン易動度分光測定式探知器を通して得られた1組のイオンを通過するステップと、
質量分析計を使用して、少なくともいくつかの前記イオンのマススペクトルを生成するステップと、
関係あるピークが前記イオン易動度スペクトルと前記マススペクトルの1つ以上で見つかると共に、前記関係あるピークが前記関係ある被分析物と関連するピークの所定パターンに従う場合に、前記関係ある被分析物が前記サンプル中にあると決定するステップと、
を備えることを特徴とする方法
【請求項2】
前記通過するステップは、互いに直列に接続された複数のイオン易動度分光測定式探知器を通して前記イオンを通過させることを含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
前記生成するステップは、互いに直列に接続された複数の質量分析計を通して前記イオンを通過させることを含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項4】
前記関係あるピークは、前記関係ある被分析物中の分子に関連するイオンから生成された分子のピークと、前記関係ある被分析物から得られたイオン破片から生成されたイオン破片ピークと、前記関係ある被分析物とドーパントとの間の反応から形成された化学種から生成されたドーパント関連のピークと、前記関係ある被分析物を表わす任意の別のピークとの、1つ以上で構成されることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項5】
前記決定するステップは、前記関係あるピークが前記分子のピーク並びに、前記イオン破片ピーク、前記ドーパント関連のピーク、および前記マススペクトル中で前記関係ある被分析物と関係する別のピークの少なくとも1つを含んでいる場合に、前記関係ある被分析物が前記サンプル中にあることを決定することを特徴とする請求項4の方法。
【請求項6】
フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器中で分散電圧と補正電圧を使用して、前記関係あるピークの最初の部分を得ると共に、前記フィールド補正イオン易動度分光測定式探知器中で異なる補正電圧と異なる分散電圧の少なくとも1つを使用して前記関係あるピークの追加部分を得ることにより、前記関係あるピークの少なくとも1つの存在を確認するステップを、さらに含む請求項1の方法。
【請求項7】
サンプル中の関係ある被分析物を検知するためのシステムにおいて、
関係あるイオンでないイオンをろ過して取り除き、かつイオン易動度スペクトルを生成するために、前記サンプルから得られた1組のイオンを受け取るように構成されたイオン易動度分光測定式探知器と、
前記イオン易動度分光測定式探知器から前記イオンの少なくともいくつかを受け取り、かつ前記イオン易動度分光測定式探知器から受け取られた前記イオンのマススペクトルを生成するように、前記イオン易動度分光測定式探知器と直列に接続された質量分析計と、
前記関係あるピークが前記イオン易動度スペクトルと前記マススペクトルの1つ以上で見つかると共に、前記関係あるピークが前記関係ある被分析物に関連したピークの所定パターンに従う場合、前記関係ある被分析物がサンプルにあると決定する計算装置と、
を備えるシステム。
【請求項8】
前記イオン易動度分光測定式探知器と前記質量分析計とに直列に接続された少なくとも1つの追加のイオン易動度分光測定式探知器を有すると共に、関係あるイオンでないイオンをろ過して取り除くと共に、イオン易動度スペクトルを生成するために、前記イオンは前記イオン易動度分光測定式探知器と前記追加のイオン易動度分光測定式探知器の各々を通過するように構成された前記追加のイオン易動度分光測定式探知器をさらに含むことを特徴とする請求項7のシステム。
【請求項9】
前記イオン易動度分光測定式探知器と前記質量分析計とに直列に接続された少なくとも1つの追加の質量分析計をさらに含むと共に、マススペクトルを生成するように前記質量分析計と前記追加の質量分析計の各々に前記イオンが受け取られることを特徴とする請求項7のシステム。
【請求項10】
前記関係あるピークは、前記関係ある被分析物中の分子に関係するイオンから生成された分子のピーク、並びに、前記関係ある被分析物から得られたイオン破片から生成されたイオン破片ピークと、前記関係ある被分析物とドーパントと間の反応から形成された化学種から生成されるドーパント関連のピークと、前記関係ある被分析物に関連づけられた別のピークの1つ以上を含むことを特徴とする請求項7のシステム。
【請求項11】
前記関係あるピークが前記分子のピーク、並びに前記イオン破片ピーク、前記ドーパント関連のピーク、および前記マススペクトルに前記関係ある被分析物と関係する別のピークの少なくとも1つを含んでいる場合に、前記関係ある被分析物が前記サンプルにあることを前記計算装置は決定することを特徴とする請求項10のシステム。
【請求項12】
前記イオン易動度分光測定式探知器は、分散電圧と補正電圧を使用して前記関係あるピークの最初の部分を得ると共に、異なる分散電圧と異なる補正電圧の少なくとも1つを使用して、前記関係あるピークの追加部分を得ることによって、前記関係あるピークの少なくとも1つの存在を確認するように構成されたフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器を含むことを特徴とする請求項7のシステム。
【請求項13】
関係ある被分析物がサンプルにあるか決定するように構成された計算装置用のコンピュータ可読記憶媒体であって、前記計算装置に対して命令する次のステップの命令:
前記サンプルから得られたイオンのマススペクトルとイオン易動度スペクトルの1つ以上を生成するステップと、
前記イオン易動度スペクトルと前記マススペクトルの1つ以上に関係あるピークを検知するステップと、
前記関係あるピークが前記関係ある被分析物に関連したピークの所定パターンに従うかどうか決定するステップと、
前記関係あるピークが前記ピークの所定パターンに従う場合、前記関係ある被分析物が前記サンプルにあるという通知を提供するステップと、
を含むことを特徴とする前記コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
前記関係あるピークは、前記関係ある被分析物中の分子に関係するイオンから生成された分子のピークと、前記関係ある被分析物から得られたイオン破片から生成されたイオン破片ピークと、前記関係ある被分析物とドーパントと間の反応から形成された化学種から生成されるドーパント関連のピークと、前記関係ある被分析物に関連づけられた別のピークの1つ以上を含むことを特徴とする請求項13のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
前記命令は、前記関係あるピークの1つ以上が前記イオン易動度スペクトルにある場合で、前記所定のピークパターンが続けられるか、若しくは、前記イオン易動度スペクトル中に前記関係あるピークの少なくとも1つの存在が確認される場合に、前記通知を提供するように前記計算装置に命令する、請求項13のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
関係ある分子のピーク、並びに関係あるイオン破片ピーク、ドーパント関連の関係あるピーク、および関係ある被分析物と関係する別のピークの少なくとも1つが、前記マススペクトルで見つかり、且つ、前記所定のピークパターンに従う場合に、前記命令は前記通知を提供するように前記計算装置に命令することを特徴とする請求項15のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
前記命令は前記イオン易動度分光測定式探知器中の第1の分散電圧と第1の補正電圧で前記関係あるピークの一部を得て、且つ、前記イオン易動度分光測定式探知器中の第2の分散電圧と第2の補正電圧の1つ以上で前記関係あるピークの追加部分を得ることにより、前記関係あるピークの存在を確認するように前記計算装置に命令することを特徴とする請求項15のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記命令は、前記イオン易動度分光測定式探知器の中で第1の電場を使用して前記関係あるピークを得ると共に、前記イオン易動度分光測定式探知器の中で第2の電場を使用して、前記関係あるピークあるいは異なる関係あるピークを得る場合であって、前記第2の電場が前記第1の電場より少なくとも4倍大きい場合に、前記関係あるピークの存在を確認するように前記計算装置に命令することを特徴とする請求項15のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前記関係あるピークは、イオン易動度スペクトル中の関係ある分子のピーク、並びに関係あるイオン破片ピーク、関係あるドーパント関連のピーク、別の関係あるピークの少なくとも1つで構成され、
さらに前記命令は、前記イオン易動度スペクトル中の関係ある別のピークの存在を確認するように、前記計算装置に命令することを特徴とする請求項13のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
サンプル中の関係ある被分析物を検知するためのシステムにおいて、
前記サンプルから生成された1組のイオンを受け取り、一組から関係あるイオンでないイオンをろ過して取り除き、第1のイオン易動度スペクトルを生成する第1のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器(「第1のFCIMS」)と、
前記第1のFCIMSと接続された第2のフィールド補正イオン易動度分光測定式探知器(「第2のFCIMS」)であって、第2のイオン易動度スペクトルを生成するために前記第1のFCIMSからイオンを受け取る第2のFCIMSと、
関係あるピークが前記第1と第2のイオン易動度スペクトルの1つ以上にある場合に、前記サンプルに前記関係ある被分析物の存在を決定するために前記第1と第2のイオン易動度スペクトルを分析するための計算装置と、
を備えるシステム。
【請求項21】
前記関係あるピークは、前記関係ある被分析物中の分子に関係するイオンから生成された分子のピークと、前記関係ある被分析物から得られたイオン破片から生成されたイオン破片ピークと、前記関係ある被分析物とドーパントと間の反応から形成された化学種から生成されるドーパント関連のピークと、前記関係ある被分析物に関連づけられた別のピークの1つ以上を含むことを特徴とする請求項20のシステム
【請求項22】
前記関係あるピークが前記関係ある被分析物に関連したピークの所定パターンに従う場合に、前記計算装置は前記関係ある被分析物の存在を決定することを特徴とする請求項20のシステム。
【請求項23】
前記関係あるピークが前記第1と第2のFCIMSの少なくとも1つによって確認される場合に、前記計算装置は前記関係ある被分析物の存在を決定することを特徴とする請求項20のシステム。
【請求項24】
第1の電場を使用して、少なくとも1つの前記関係あるピークの第1の部分を得ると共に、第2の電場を使用して前記関係あるピークの追加部分を得ることにより、前記第1と第2のFCIMSの少なくとも1つは前記関係ある被分析物の存在を確認することを特徴とする請求項23のシステム。
【請求項25】
前記第1と第2のFCIMSの各々は、前記第1と第2のFCIMSによって検知されるかフィルターされる前に、イオンが通り抜ける電場を生成するように構成された対向する電極プレートを有し、前記第1のFCIMSの電極プレートは前記第2のFCIMSの電極プレートとは異なる距離だけ離れていることを特徴とする請求項20のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2011−516828(P2011−516828A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550678(P2010−550678)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/001464
【国際公開番号】WO2009/114109
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(510242200)スコット・テクノロジーズ・インク (3)
【Fターム(参考)】